(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸気通路に備えられた吸気冷却部と、排気の一部を前記吸気冷却部の上流側の前記吸気通路に還流する排気環流部と、を有する内燃機関に設けられた凝縮水排出装置であって、
前記吸気冷却部を通過した吸気から発生した凝縮水を捕集する凝縮水捕集部と、
前記凝縮水捕集部と前記内燃機関の排気通路とを連通し、前記凝縮水捕集部に捕集されている凝縮水を前記排気通路に排出する排水路と、
前記排水路を開閉する開閉弁と、
前記凝縮水捕集部における凝縮水捕集量を検出する捕集量検出部と、
前記凝縮水捕集量に応じて、前記排気通路から凝縮水を排出するか否かの排出許可条件を変更し、前記排出許可条件が成立した際に、前記開閉弁の開弁制御を行なう制御部と、を備えることを特徴とする内燃機関の凝縮水排出装置。
前記内燃機関は、前記排水路による前記凝縮水の排出位置より下流の前記排気通路に設けられた排気浄化触媒と、前記排気浄化触媒に流入する排気の温度または空燃比を制御して前記排気浄化触媒を再生処理する触媒再生制御部と、を有し、
前記排出許可条件は、前記再生処理が実施していない第3の許可条件を更に含むことを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の凝縮水排出装置。
前記制御部は、前記外気温度が前記凍結温度より高い所定温度以下では前記第1の許可条件のみを前記排出許可条件とし、前記外気温度が前記所定温度より高い場合には前記第2の許可条件での前記閾値と前記第3の許可条件での前記閾値とを異なる値に設定することを特徴とする請求項5に記載の内燃機関の凝縮水排出装置。
前記制御部は、前記外気温度が前記所定温度より高い場合には、前記第2の許可条件での前記閾値と前記第3の許可条件での前記閾値を、前記外気温度に基づいて連続的に変化させて設定することを特徴とする請求項6に記載の内燃機関の凝縮水排出装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の排気浄化装置が適用されたディーゼルエンジン(以下、エンジン1という)の吸排気系の概略構成図である。
エンジン1は、走行駆動源として車両に搭載されており、ターボチャージャ2(過給機)を備えた多気筒の筒内直接噴射式エンジン(例えばコモンレール式ディーゼルエンジン)である。詳しくは、エンジン1は、シリンダブロック3の上部にシリンダヘッド4が設けられている。エンジン1の気筒毎にシリンダヘッド4に燃料噴射ノズル5が設けられており、燃料ポンプ6によってコモンレール7に蓄圧された高圧燃料を、当該燃料噴射ノズル5に供給し、任意の噴射時期及び噴射量で当該燃料噴射ノズル5から各気筒の燃焼室8内に噴射可能な構成を成している。
【0013】
エンジン1の燃焼室8には、インテークポート10とエキゾーストポート11とが連通されている。
インテークポート10には、燃焼室8と当該インテークポート10との連通と遮断を行うインテークバルブ12が設けられている。また、エキゾーストポート11には、燃焼室8と当該エキゾーストポート11との連通と遮断とを行うエキゾーストバルブ13が設けられている。
【0014】
インテークポート10の上流には、吸入した空気を各気筒に分配するインテークマニフォールド14が連通するように設けられている。そして、エキゾーストポート11の下流には、各気筒から排出される排気をまとめるエキゾーストマニフォールド15が連通するように設けられている。
インテークマニフォールド14には、吸気通路である吸気管20が接続され、吸気管20には、上流側からインテークマニフォールド14に向かって順番に、新気中のゴミを取り除くエアークリーナ21と、新気の流量を調整しつつ、後述する低圧排気還流通路45(排気還流部)により導入される低圧の排気の流量を調整するための電子制御スロットルバルブ22と、ターボチャージャ2のコンプレッサ23と、コンプレッサ23により圧縮され高温となった吸気を冷却するインタークーラ24(吸気冷却部)と、インタークーラ24通過後の吸気の流量を調整するための電子制御スロットルバルブ25が介装されている。
【0015】
エキゾーストマニフォールド15の下流の排気通路である排気管30には、上流側より順番に、ターボチャージャ2のタービン31、排気中の被酸化成分を酸化する酸化触媒32と、排気中の黒鉛を主成分とする微粒子状物資を捕集し燃焼させるディーゼルパティキュレートフィルタ33と、排気中の窒素酸化物(以下、NOx)を捕集、浄化するNOxトラップ触媒34(排気浄化触媒)とが設けられている。なお、酸化触媒32とディーゼルパティキュレートフィルタ33は、同一のケーシング内に収納されている。
【0016】
また、エンジン1のシリンダヘッド4と、エアークリーナ21と電子制御スロットルバルブ22との間の吸気管20との間には、エンジン1のブローバイガスを吸気管20に戻すブローバイガス通路35が設けられている。
電子制御スロットルバルブ25より下流側の吸気管20と、タービン31より上流側の排気管30との間には、排気の一部を吸気へ戻す、即ち高温・高圧の排気を吸気に導入する高圧排気還流通路40が設けられている。また、高圧排気還流通路40と吸気管20との接続部には、高温・高圧の排気が吸気に戻る量を調整する排気還流バルブ41が設けられている。更に、高圧排気還流通路40には、インテークマニフォールド14に導入する排気を冷却する排気還流クーラ42が設けられている。
【0017】
また、電子制御スロットルバルブ22とコンプレッサ23との間の吸気管20と、ディーゼルパティキュレートフィルタ33とNOxトラップ触媒34との間の排気管30とを連通する低圧排気還流通路45が設けられている。低圧排気還流通路45は、タービン31、酸化触媒32及びディーゼルパティキュレートフィルタ33を通過した低温・低圧の排気の一部を吸気に導入する(還流する)機能を有する。
【0018】
低圧排気還流通路45には、還流する排気を冷却する排気還流クーラ47が設けられている。また、低圧排気還流通路45と吸気管20との接続部には、低圧排気還流通路45を開閉する排気還流バルブ48が設けられている。
更に、本実施形態では、インタークーラ24より下流の吸気管20から排気管30に凝縮水を排水する凝縮水排出装置を備えている。凝縮水排出装置は、インタークーラ24と電子制御スロットルバルブ25との間の吸気管20と、低圧排気還流通路45との接続部とNOxトラップ触媒34との間の排気管30とを接続し、当該吸気管20から当該排気管30へ凝縮水を排水する排水路50を備えている。排水路50には、電子制御の開閉弁51が設けられている。吸気管20と排水路50との接続部には、凝縮水を貯留可能な凝縮水捕集タンク52(凝縮水捕集部)が設けられている。
【0019】
インテークマニフォールド14には、吸気圧を検出するブーストセンサ55が設けられている。また、インタークーラ24と電子制御スロットルバルブ25との間の吸気管20には、インタークーラ24通過後の吸気の圧力を検出する吸気圧センサ56(圧力検出部)が設けられている。
低圧排気還流通路45との接続部とNOxトラップ触媒34との間の排気管30には、排気圧を検出する排気圧センサ57(圧力検出部)が設けられている。
【0020】
更に、排水路50と排気管30との接続部には、排水路50の出口温度を検出する出口温度センサ58が設けられている。
また、エンジン1を搭載した車両には、外気温度Tを検出する外気温度センサ59(外気温度検出部)が備えられている。
そして、ブーストセンサ55、吸気圧センサ56(圧力検出部)、排気圧センサ57、出口温度センサ58、外気温度センサ59や図示しないエンジン回転速度センサ、吸気温度センサ、その他排気温度センサ、空燃比センサ等の各種センサと、燃料噴射ノズル5、電子制御スロットルバルブ22、25、排気還流バルブ41、48及び開閉弁51等の各種機器は、エンジンコントロールユニット70(制御部)に電気的に接続されている。
【0021】
図2は、排水路50と排気管30との接続部の詳細な構造を示す断面図である。
図2に示すように、出口温度センサ58は、排水路50と排気管30との接続位置よりも排水路50の上流側(吸気管20側)に若干遡った位置に設けられている。出口温度センサ58は、排気管30内を通過する排気を直接検出するのではなく、排気管30を伝う熱伝導、あるいは排水路50を遡った排気の温度を検出する。これにより、出口温度センサ58は、高温側の検出範囲を抑えることができ、部品コストを低減することができる。
【0022】
エンジンコントロールユニット70は、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、タイマ及び中央演算処理装置(CPU)等を含んで構成され、上記各センサからの検出情報及びアクセル操作量等の情報を入力し、当該各種情報に基づいて目標トルクを演算し、燃料噴射量、燃料噴射時期、電子制御スロットルバルブ22、25及び排気還流バルブ41、48の開度を演算して、上記各種機器の作動制御を行うことで、エンジン1の運転制御を行う。
【0023】
エンジンコントロールユニット70は、エンジン1の目標トルクに基づいて、高圧排気還流通路40による排気還流と、低圧排気還流通路45による排気還流とを切換える。
例えば、目標トルクが適宜設定された所定値より低い低負荷では高圧排気還流通路40により排気を還流させ、目標トルクが当該所定値以上の高負荷では低圧排気還流通路45により排気を還流させる。
【0024】
以上のように低圧排気還流通路45による排気還流装置(低圧排気還流装置)を備えたエンジン1では、高負荷時に低圧排気還流装置により吸気管20に排気を還流させた際に、当該吸気管20に還流した排気がインタークーラ24を通過して吸気管20内で凝縮水が発生する可能性がある。この凝縮水は凝縮水捕集タンク52に貯留される。ところで、排水路50の開閉弁51は、通常は吸気が排水路50を介して排気管30に流出しないように閉弁制御されており、高負荷運転が継続されることで凝縮水が凝縮水捕集タンク52から溢れて、インテークマニフォールド14を介してエンジン1の燃焼室8に流入してしまう虞がある。
【0025】
そこで、エンジンコントロールユニット70は、凝縮水捕集タンク52における凝縮水捕集量に基づいて、開閉弁51の開閉制御、即ち排水路50による凝縮水の排出制御を行なう。
図3は、エンジンコントロールユニット70において実行する凝縮水の排出制御の制御要領を示すフローチャートである。
図4は、排出許可条件設定制御要領を示すフローチャートである。
図5は、排出制御の終了判定制御要領を示すフローチャートである。
【0026】
図3に示す凝縮水の排出制御、
図4に示す排出許可条件設定制御、
図5に示す排出制御の可否判定制御は、エンジン1の運転中に夫々所定時間(例えば数msec)毎に繰り返し行なわれる。
図3に示すように、始めにステップS10では、凝縮水捕集タンク52における凝縮水捕集量Mを演算する。凝縮水捕集量Mは、例えば外気の飽和水蒸気量からインタークーラ通過水分量を減算して求めればよい。インタークーラ通過水分量は、吸入空気中水分量と排気還流ガス中水分量を加算して求められる。排気還流ガス中水分量は、吸入空気中水分量、燃焼生成水分量、吸入空気量、投入燃料量、排気還流ガス質量に基づいて求められる。吸入空気中水分量は、外気の飽和水蒸気量と相対湿度を用いて求められ、燃焼生成水分量は投入燃料量に基づいて求められる。なお、本ステップにおける凝縮水捕集量Mの演算は、エンジンコントロールユニット70における捕集量推定部71(捕集量検出部)によって演算される。
【0027】
なお、このような演算の代わりに、凝縮水捕集タンク52に凝縮水捕集量Mを検出するレベルセンサを設け、このレベルセンサの検出値を用いてもよい。そして、ステップS20に進む。
ステップS20では、ステップS10で算出した凝縮水捕集量Mが排出要求値Mcより大きいか否かを判別する。排出要求値Mcは、凝縮水捕集タンク52における凝縮水の最大可能捕集量Mmaxより小さい値に設定すればよい。凝縮水捕集量Mが排出要求値Mcより大きい場合には、ステップS30に進む。凝縮水捕集量Mが排出要求値Mc以下の場合には、ステップS40に進む。
【0028】
ステップS30では、排水路50による凝縮水の排出制御の要求フラグをONにする。そして、ステップS40に進む。
ステップS40では、凝縮水の排出許可条件が成立したか否かを判別する。排出許可条件は、後述する
図4に示す排出制御の許可判定制御によって設定された排出許可条件である。排出許可条件が成立した場合には、ステップS50に進む。排出許可条件が成立しない場合には、ステップS60に進む。
【0029】
ステップS50では、排水路50による凝縮水の排出制御の許可フラグをONにする。そして、ステップS60に進む。
ステップS60では、排出制御の要求フラグがONであるか否かを判別する。排出制御の要求フラグがONである場合には、ステップS70に進む。排出制御の要求フラグがOFFである場合には、本ルーチンを終了する。
【0030】
ステップS70では、排出制御の許可フラグがONであるか否かを判別する。排出制御の許可フラグがONである場合には、ステップS80に進む。排出制御の許可フラグがOFFである場合には、本ルーチンを終了する。
ステップS80では、排出制御を実施する。具体的には、開閉弁51を開弁制御する。そして、本ルーチンを終了する。
次に、
図3に示す凝縮水の排出制御と並行して行なわれる排出許可条件設定制御について、
図4を用いて説明する。なお、この排出許可条件設定制御については、
図3のステップS40において排出許可条件が成立したか否かを判別する際に、その判別前に都度行なってもよい。
【0031】
図4に示すように、排出許可条件設定制御は、はじめにステップS100では、ステップS10で演算した直近の凝縮水捕集量Mが閾値Maより大きいか否かを判別する。閾値Maは、排出要求値Mcより大きく、凝縮水捕集タンク52における凝縮水の最大可能捕集量Mmaxより小さい値である。凝縮水捕集量Mが閾値Maより大きい場合には、ステップS120に進む。凝縮水捕集量Mが閾値Ma以下の場合には、ステップS110に進む。
【0032】
ステップS110では、ステップS10で演算した直近の凝縮水捕集量Mが閾値Mbより大きいか否かを判別する。閾値Mbは、排出要求値Mcより大きく、閾値Maより小さい値である。凝縮水捕集量Mが閾値Mbより大きい場合には、ステップS130に進む。凝縮水捕集量Mが閾値Mb以下の場合には、ステップS140に進む。
なお、閾値Ma、閾値Mb、排出要求値Mcは、本発明の閾値に該当する。
【0033】
ステップS120では、凝縮水の排出許可条件として、許可条件(1)に設定する。
第1の許可条件である許可条件(1)は、下記式(A)に示すように吸気管20と排気管30との間で凝縮水排出に必要な圧力差があることと、下記式(B)に示すように外気温度センサ59により検出した外気温度Tが0℃(凝縮水の凍結温度)より高いことの2つの条件である。凝縮水排出に必要な圧力差があることについては、詳しくは、吸気圧センサ56によりインタークーラ24下流の吸気圧Pinを検出するとともに、排気圧センサ57により排気管30の圧力Poutを検出し、その差圧(Pin−Pout)が排出可能差圧Pa以上である場合に凝縮水排出に必要な圧力差があると判定する。排出可能差圧Paは、排水路50によって凝縮水が吸気管20から排気管30に排出可能な値に適宜設定すればよい。
【0034】
Pin−Pout≧Pa・・・(A)
T>0(℃)・・・(B)
そして、本ルーチンを終了する。
ステップS130では、凝縮水の排出許可条件として、許可条件(1)+(2)に設定する。
【0035】
第2の許可条件である許可条件(2)は、下記式(C)に示すように、目標過給圧Ptgtとブーストセンサ55により検出したインマニ圧Pimとの差が所定圧Pb以下であることである。所定圧Pbは、開閉弁51の開弁により吸気の一部が排気管30に流出してしまってもトルク立ち上がりやレスポンスの悪化が許容範囲内になるような状況、例えば車両加速時を除く状況が判定できるような値に設定すればよい。
【0036】
Ptgt−Pim≦Pb・・・(C)
そして、本ルーチンを終了する。
ステップS140では、凝縮水の排出許可条件として、許可条件(1)+(2)+(3)に設定する。
第3の許可条件である許可条件(3)は、NOxトラップ触媒34の再生制御をしていないことである。
【0037】
NOxトラップ触媒34の再生制御は、エンジンコントロールユニット70の触媒再生制御部72において実行される。NOxトラップ触媒34の再生制御とは、エンジン1の運転時間経過とともに低下するNOxトラップ触媒34によるNOxの吸着性能を回復させるための制御であって、公知のNOx浄化制御及び硫黄除去制御である。これらのNOx浄化制御及び硫黄除去制御では、NOxトラップ触媒34に流入する排気の空燃比をストイキ以下に制御する。このようなNOxトラップ触媒34の再生制御の実行中に開閉弁51を開弁すると、吸気の一部が排水路50を通過して排気管30に流入し、NOxトラップ触媒34に流入する排気の空燃比が上昇して再生制御を阻害してしまうので、許可条件(3)はこのような再生制御の機能を確保するためのものである。そして、本ルーチンを終了する。
【0038】
図5に示す排出制御の終了判定制御は、
図3に示す凝縮水の排出制御と並行して行なわれる。
始めにステップS200では、開閉弁51が開弁しているか否か、即ち排出制御の実行中であるか否かを判別する。開閉弁51が開弁している場合には、ステップS210に進む。開閉弁51が開弁していない場合には、ステップS200を繰り返して待機する。
【0039】
ステップS210では、出口温度センサ58により検出した温度が高温側へ移行したか否かを判別する。凝縮水の排出が完了して凝縮水が凝縮水捕集タンク52や排水路50からなくなると、出口温度センサ58により検出した凝縮水排出出口温度Toutが上昇するので、ここでは当該凝縮水排出出口温度Toutが所定値(例えば100℃)より高くなった場合に高温側へ推移したとして、ステップS220に進む。出口温度センサ58により検出した凝縮水排出出口温度Toutが当該所定値以下の場合には、高温側へ推移していないとして、ステップ210を繰り返して待機する。
【0040】
ステップS220では、開閉弁51を閉弁して排出制御を終了させる。そして、本ルーチンを終了する。
なお、この
図5に示す排出制御の終了判定制御を行なわず、排出制御の実行を開始してから所定時間経過したら排出制御を終了させるように制御してもよい。
更に、エンジンコントロールユニット70は、排水制御を実施した際に、出口温度センサ58によって検出される凝縮水排出出口温度Toutに基づいて、排出の可否を判定する機能を有している。
【0041】
図6は、凝縮水の排出制御を実行した際の各種フラグ、凝縮水捕集量M、凝縮水排出出口温度Toutの推移の一例を示すグラフである。
図6に示すように、排出制御許可フラグがONになっている状態で、凝縮水捕集量Mが排出要求値Mc以上となると、排出制御要求フラグがONになり、排出制御が実施される。これにより、正常であれば凝縮水が排気管30に排出されて凝縮水排出出口温度Toutが低下する。そして、凝縮水排出出口温度Toutが排出可否判定温度Ta(例えば100℃)以下になれば、排出可否判定がONになり、排出制御が継続される。ここで、凝縮水排出出口温度Toutが排出可否判定温度Ta以下にならなければ、排水路50での閉塞、開閉弁51の故障が考えられるので、排出制御を中止する。なお、このように、排出制御が中止された場合には、排出制御が開始してから排出制御が中止されるまでは、実際には凝縮水が排水されていないとして、凝縮水捕集量Mを演算している場合には、凝縮水捕集量Mの減算はしない。
【0042】
また、排出制御が中止された場合には、再度排出制御を試みて、排出制御の中止が数回繰り返された場合には、開閉弁51の故障等の凝縮水の排出制御システムの故障として、ドライバに異常を警告すればよい。
以上のように、本実施形態では凝縮水捕集量Mが排出要求値Mc以上になれば、排出要求されるが、凝縮水捕集量Mに基づいて設定される排出許可条件を満たさないと、排出制御されない。
【0043】
そして、本発明の第1の実施形態では、凝縮水の排出許可条件としては、凝縮水捕集量Mに基づいて3種類の許可条件が設定される。
図7は、第1の実施形態における凝縮水捕集量Mと排出許可条件との関係を示すマップである。
図7に示すように、凝縮水捕集量Mが閾値Maより大きい場合、即ち凝縮水捕集量Mが最大可能捕集量Mmaxに近く排出要求が高い場合には、許可条件(1)のみとしている。許可条件(1)は、凝縮水排出に必要な圧力差があることと、凝縮水が凍結してないことであるので、排出制御の必須要件である。このように、排出要求が高い場合には、排出制御の必須要件を満たした上で、比較的容易に排出制御が実行される。
【0044】
凝縮水捕集量Mが閾値Ma以下、閾値Mbより大きい場合には、即ち排出要求が中程度の場合には、排出許可条件として許可条件(1)と(2)を必要とする。許可条件(2)は、目標過給圧Ptgtとインマニ圧Pimとの差が所定圧Pb以下、即ち車両加速時ではないことを排出許可条件としている。これにより、排出要求が中程度では、車両加速時に排出制御を許可せずに、車両加速性能を確保することができる。
【0045】
凝縮水捕集量Mが閾値Mb以下の場合、即ち排出要求が低い場合には、排出許可条件として許可条件(1)、(2)更に(3)を必要とする。許可条件(3)は、NOxトラップ触媒34の再生制御を実施していないことを条件としている。再生制御の実施時に排水制御を行なうと、排水路50を介して排気管30に流入する吸気によって、NOxトラップ触媒34に流入する排気の空燃比が上昇してしまい、再生制御の効率が低下してしまうので、本実施形態では排出要求が低い場合に再生制御が実行していないことを排出許可条件として加えて、再生制御の効率を確保することができる。
【0046】
このように、排出許可判定される凝縮水捕集量Mの閾値を複数有し、凝縮水捕集量Mに基づいて凝縮水の排出許可条件を変更することで、排出要求(排水必要度合い)に応じた排出許可条件に設定される。したがって、凝縮水捕集量Mが凝縮水捕集タンク52の最大可能捕集量Mmaxを超えることを抑制しつつ、凝縮水捕集量Mに余裕がある場合には、排出制御を段階的に抑制して、車両加速性能及び再生制御の効率を確保することができる。これにより、凝縮水の排出機能と車両の加速や再生制御等の内燃機関の運転への影響の抑制とを両立できるような、効率的な排水が可能となる。
【0047】
なお、以上の実施形態では、凝縮水捕集量Mに基づいて排出許可条件を設定しているが、凝縮水捕集量Mと外気温度Tに基づいて排出許可条件を設定するとよい。
図8は、第2の実施形態における凝縮水捕集量M及び外気温度Tと排出許可条件との関係を示すマップである。
図8に示すように、第2の実施形態では、外気温度Tが排出可否判定温度Tb(本発明の所定温度)以上である場合には、上記第1の実施形態と同様に、凝縮水捕集量Mに基づいて排出許可条件を3段階に設定しているが、外気温度Tが排出可否判定温度Tb未満である場合には、排出許可条件を(1)のみとする。なお、排出可否判定温度Tbは、低圧排気還流装置(低圧排気還流通路45)による排気の導入を禁止する温度にすればよい。この低圧排気還流装置による導入を禁止する温度は、0℃よりも高く、かつ0℃に近い低温域に設定されている。
【0048】
このように、第2の実施形態では、外気温度Tが排出可否判定温度Tbよりも低下した場合には、排出許可条件を(1)のみとすることで、0℃に近い低温域で排水制御が実行され易くなる。これにより、例えば外気温度Tが0℃以下に向かって徐々に低下していくような場合に、外気温度Tが0℃以下に低下する手前で、排水制御が積極的に行なわれ、排水制御が不能となる外気温度が0℃以下になったときに、凝縮水捕集量Mをあらかじめ少なくしておき、凝縮水の凍結を抑制することができる。
【0049】
図9は、第3の実施形態における凝縮水捕集量M及び外気温度Tと排出許可条件との関係を示すマップである。
図9に示すように、第3の実施形態では、第2の実施形態と同様に、外気温度Tが排出可否判定温度Tb未満である場合には、排出許可条件を(1)のみとする。また、外気温度Tが排出可否判定温度Tb以上である場合には、上記第2の実施形態と同様に凝縮水捕集量Mに基づいて排出許可条件を3段階に設定するが、外気温度Tに基づいて排出許可条件を切換える閾値Ma、Mbが変化する。詳しくは、外気温度Tが低下するに伴って排出許可条件を切換える閾値Ma、Mbが低下する。なお、外気温度Tが排出可否判定温度Tbである場合には、排出許可条件を切換える閾値Ma、Mbはいずれも排出要求値Mcと同一であり、排出可否判定温度Tbから外気温度Tが上昇するに伴って、閾値Maの方が閾値Mbよりも大きくなる。
【0050】
このように第3の実施形態では、外気温度Tが排出可否判定温度Tb以上である場合でも、外気温度Tが低下するに伴ってより少ない凝縮水捕集量Mで許可条件(1)となる。したがって、第3の実施形態では、第2の実施形態よりも、外気温度が0℃に低下するまでに凝縮水捕集量Mをより少なくしておくことができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定するものではない。本発明は、低圧排気還流装置と排水路を有する内燃機関に広く適用することができる。