特許第6551679号(P6551679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6551679
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】配線部材
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/027 20060101AFI20190722BHJP
   B62D 1/10 20060101ALI20190722BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   B60R16/027 S
   B62D1/10
   H05K1/02 B
   H05K1/02 D
   H05K1/02 P
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-223943(P2015-223943)
(22)【出願日】2015年11月16日
(65)【公開番号】特開2017-88089(P2017-88089A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】岩本 修治
(72)【発明者】
【氏名】森 紀夫
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−73545(JP,A)
【文献】 特開平8−2425(JP,A)
【文献】 特開2001−106090(JP,A)
【文献】 特開平8−216893(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0204857(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02−16/027
B62D 1/00− 1/14
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも運転者が把持するリム部に実装される1以上の機能デバイスと車体側に設けられたコネクタとを電気的に接続する配線部材であって、
前記コネクタに電気的に接続される接続部と、
フィルム状に延びる可撓性フィルム部であって、前記機能デバイスと前記接続部とを電気的に接続する配線パターンが内部に形成された可撓性フィルム部と、
前記可撓性フィルム部の一方の面の一部に圧着される補強板と、
前記補強板とは反対側の前記可撓性フィルム部の他方の面に実装される制御回路と、
を備えたことを特徴とする配線部材。
【請求項2】
前記制御回路及び前記補強板は、複数の機能デバイスに対応して複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の配線部材。
【請求項3】
前記制御回路及び前記補強板の外部を覆う遮蔽層をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線部材に係り、特にステアリング装置のリムに実装される機能デバイスのための配線部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車には様々な付加的機能が求められており、車両の操舵を行うステアリング装置にも様々な機能デバイスが実装され多機能化が進められている。例えば、ステアリング装置のリム部に様々なスイッチやセンサを設けてカーナビゲーションシステムやオーディオシステム、運転支援システムなどの操作や設定を可能としたり、リム部に表示器を設けて各種車両情報の表示を可能としたり、リム部にヒータを設けて把持部分の加温を可能とすることがなされている。これらのスイッチやセンサなどリム部に実装された機能デバイスは、電源の供給や信号の伝達のために車体側と配線ケーブルで接続する必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これらの配線ケーブルはステアリング装置のボス部を通って車体側に接続されるが、このボス部にはエアバッグ装置が配置されており、これらの配線ケーブルはエアバッグ装置の動作を阻害しないように配置する必要がある。したがって、配線ケーブルを限られたスペースの中で取り回す必要が生じ、配線ケーブルの敷設作業が難しいという問題がある。特に、ステアリング装置の多機能化に伴って配線ケーブルの数が増えると、配線ケーブルの敷設作業がより一層難しくなる。
【0004】
また、機能デバイスのための制御回路をステアリング装置のボス部の内部に配置しようとする場合、機能デバイスからの配線ケーブルを制御回路のコネクタに接続する必要がある。したがって、制御回路のコネクタに対応するコネクタを配線ケーブルに設ける必要があるばかりでなく、配線ケーブルの敷設作業が煩雑になるという問題がある。
【0005】
さらに、ステアリング装置のリム部は、運転者が把持する部分であるため、表面に凹凸が形成されることを防止する必要があるが、特許文献1に開示されるように、リム部に実装された機能デバイスに配線ケーブルを接続する場合には、リム部の表面に凹凸が形成されないようにするためにリム部に配線ケーブルを収容する構造を設ける必要がある。このような複雑な構造をリム部に形成することはステアリング装置の製造コストを増大させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−241203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、実装される機能デバイスからの配線を敷設する作業が極めて簡単になるとともに、既存のリム部を加工することなくリム部に実装される機能デバイスと車体側に設けられたコネクタとを容易かつ安価に接続することができる配線部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、実装される機能デバイスからの配線を敷設する作業が極めて簡単になるとともに、既存のリム部を加工することなくリム部に実装される機能デバイスと車体側に設けられたコネクタとを容易かつ安価に接続することができる配線部材が提供される。この配線部材は、少なくとも運転者が把持するリム部に実装される1以上の機能デバイスと車体側に設けられたコネクタとを電気的に接続するために使用される。上記配線部材は、上記コネクタに電気的に接続される接続部と、フィルム状に延びる可撓性フィルム部とを備える。上記可撓性フィルム部の内部には、上記機能デバイスと上記接続部とを電気的に接続する配線パターンが形成されている。上記配線部材は、上記可撓性フィルム部の一方の面の一部に圧着される補強板と、上記補強板とは反対側の上記可撓性フィルム部の他方の面に実装される制御回路とを備える。
【0009】
本発明によれば、ステアリング装置のリム部に実装される機能デバイスと車体側に設けられるコネクタとが配線部材により接続される。この配線部材は、薄くて可撓性のある可撓性フィルム部を含んでいるため、例えばボス部内の限られたスペースであっても、エアバッグ装置の動作を阻害することなくステアリング装置内に配線を敷設することが可能となる。また、ステアリング装置上に複数の機能デバイスが実装される場合であっても、1つの配線部材をボス部内で取り回すだけで済むため、配線の敷設作業が極めて簡単になる。また、機能デバイスと車体側に設けられたコネクタとを配線部材だけで接続することができるので、追加のコネクタを必要とせず、配線の敷設作業も極めて簡単になる。
【0010】
また、本発明によれば、薄くて柔らかい可撓性フィルム部を用いて配線することができるので、配線部材をそのままの形で既存のリム部に組み込んでもリム部の表面に凹凸が生じることがほとんどない。このように、既存のリム部を加工することなく、リム部に実装された機能デバイスと車体側に設けられたコネクタとを簡単かつ安価に接続することができる。
【0011】
上記制御回路及び上記補強板は、複数の機能デバイスに対応して複数設けられていてもよい。また、外部からのノイズの影響を低減するために、上記配線部材が、上記制御回路及び上記補強板の外部を覆う遮蔽層をさらに備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ステアリング装置のリム部に実装される機能デバイスと車体側に設けられるコネクタとが配線部材により接続される。この配線部材は、薄くて可撓性のある可撓性フィルム部を含んでいるため、例えばボス部内の限られたスペースであっても、エアバッグ装置の動作を阻害することなくステアリング装置内に配線を敷設することが可能となる。また、ステアリング装置上に複数の機能デバイスが実装される場合であっても、1つの配線部材をボス部内で取り回すだけで済むため、配線の敷設作業が極めて簡単になる。また、機能デバイスと車体側に設けられたコネクタとを配線部材だけで接続することができるので、追加のコネクタを必要とせず、配線の敷設作業も極めて簡単になる。
【0013】
また、本発明によれば、薄くて柔らかい可撓性フィルム部を用いて配線することができるので、配線部材をそのままの形で既存のリム部に組み込んでもリム部の表面に凹凸が生じることがほとんどない。このように、既存のリム部を加工することなく、リム部に実装された機能デバイスと車体側に設けられたコネクタとを簡単かつ安価に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態におけるステアリング装置を示す模式図である。
図2図1のステアリング装置のアッパーカバーを取り外した状態を示す模式図である。
図3図2のステアリング装置に配置された配線部材を展開した平面図である。
図4図3の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るステアリング装置の実施形態について図1から図4を参照して詳細に説明する。なお、図1から図4において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図1から図4においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態におけるステアリング装置1を示す模式図である。図1に示すように、ステアリング装置1は、運転者が操舵時に把持する円環状のリム部10と、リム部10の中央に配置されるボス部12と、ボス部12からリム部10に向かって外側に延びるスポーク部14A,14B,14Cとを備えている。ボス部12及びスポーク部14A,14B,14Cは、運転者側に配置されるアッパーカバー20と、ステアリングシャフト側に配置されるロアカバー22(図2参照)とにより構成されている。なお、リム部10は円環形状に限られるものではなく、運転者が把持できる形状であればどのような形状であってもよい。
【0017】
図1に示すように、ボス部12から左右に延びるスポーク部14A,14Bには、カーナビゲーションシステムやオーディオシステム、運転支援システムなどの操作や設定を行うためのスイッチ16が設けられている。また、リム部10の内部には、リム部10を加温するためのヒータ18が埋設されている。さらに、アッパーカバー20の裏側には、ボス部12の中央の位置にエアバッグ装置19が取り付けられている。
【0018】
図2は、ステアリング装置1のアッパーカバー20を取り外した状態を示す模式図である。図2に示すように、アッパーカバー20を取り外すとロアカバー22が露出するようになっている。このロアカバー22の内側に形成される空間には配線部材30が配置されている。
【0019】
図3は、この配線部材30を展開した平面図、図4はその正面図である。この配線部材30は、フレキシブルプリント基板を利用して形成されるものであり、図3及び図4に示すように、フィルム状に延びる可撓性フィルム部50(50A〜50D)と、可撓性フィルム部50上に形成される制御回路41〜45とを含んでいる。中央に位置する制御回路43は、車体側に設けられたコネクタに接続される接続部56を含んでいる。本実施形態では、制御回路45には、リム部10における把持状態を検出するためのフィルム状のセンサ部55が接続されている。例えば静電容量センサをフレキシブルプリント基板に組み込んだものをセンサ部55として用いることができる。
【0020】
このような配線部材30は、ステアリング装置1上に実装された1以上の機能デバイスと電気的に接続されている。本実施形態における機能デバイスは、スポーク部14A,14Bに設けられたスイッチ16、リム部10に設けられたヒータ18、及び配線部材30に内蔵されたセンサ部55である。図3に示すように、可撓性フィルム部50の内部には、これらの機能デバイス(スイッチ16、ヒータ18、及びセンサ部55)と制御回路41〜45とを電気的に接続する配線パターン51が形成されている。これらの配線パターン51によって接続部56と制御回路41〜45との間も接続される。
【0021】
本実施形態では、スイッチ16は、配線部材30の制御回路41及び制御回路45に直接接続され、ヒータ18及びセンサ部55は、可撓性フィルム部50の配線パターン51を介していずれかの制御回路42〜44に接続される。なお、本実施形態では、センサ部55を配線部材30に内蔵しているが、このようなセンサ部55を配線部材30から分離して設け、配線部材30に接続するように構成してもよい。
【0022】
可撓性フィルム部50は、ポリイミドなどからなるベースフィルム上に銅箔を所定の配線パターンで形成し、この銅箔に絶縁フィルムを圧着することにより形成される。また、制御回路41〜45を形成する際には、可撓性フィルム部50の一方の面(ベースフィルム)の一部に補強板61〜65を圧着する。そして、これらの補強板61〜65とは反対側の面(絶縁フィルム)上に電子部品を実装することによって制御回路41〜45が形成される。
【0023】
図2に戻って、ロアカバー22は、ボス部12を規定するボス外周壁24を有している。配線部材30の制御回路41はスポーク部14Aに配置され、制御回路45はスポーク部14Bに配置されている。制御回路41から延びる可撓性フィルム部50Aは折曲部57A(図3参照)で約90度折り曲げられており、制御回路45から延びる可撓性フィルム部50Dは折曲部57B(図3参照)で約90度折り曲げられている。これにより、可撓性フィルム部50Aから制御回路42、可撓性フィルム部50B、制御回路43、可撓性フィルム部50C、制御回路44、可撓性フィルム部50Dに至るまでをロアカバー22のボス外周壁24に沿って配置することができる。
【0024】
上述したように、本実施形態では、ステアリング装置1上に実装されるスイッチ16、ヒータ18、及びセンサ部55などの機能デバイスと車体側に設けられるコネクタとが上述した配線部材30により接続される。この配線部材30は、薄くて可撓性のある可撓性フィルム部50を含んでいるため、ボス部12内の限られたスペースであっても、ロアカバー22のボス外周壁24に沿って配置することができ、エアバッグ装置19の動作を阻害することなくステアリング装置1内にこれらの配線を敷設することが可能となる。また、複数の機能デバイス(スイッチ16、ヒータ18、及びセンサ部55)に対して1つの配線部材30をボス部12内で取り回すだけで済むため、配線の敷設作業が極めて簡単になる。また、これらの機能デバイスと車体側に設けられたコネクタとを配線部材30だけで接続することができるので、追加のコネクタを必要とせず、配線の敷設作業も極めて簡単になる。
【0025】
また、本実施形態によれば、薄くて柔らかい可撓性フィルム部50を用いて配線することができるので、配線部材30をそのままの形で既存のリム部に組み込んでもリム部の表面に凹凸が生じることがほとんどない。このように、既存のリム部を加工することなく、リム部10に実装される機能デバイスと車体側に設けられたコネクタとを簡単かつ安価に接続することができる。
【0026】
ここで、配線部材30の制御回路41〜45は、外部からのノイズの影響を受けることがあるので、制御回路41〜45及び補強板61〜65の外部を例えば金属薄膜からなる遮蔽層で覆うことが好ましい。
【0027】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0028】
1 ステアリング装置
10 リム部
12 ボス部
14A,14B,14C スポーク部
16 スイッチ
18 ヒータ
19 エアバッグ装置
20 アッパーカバー
22 ロアカバー
24 ボス外周壁
30 配線部材
41〜45 制御回路
50(50A〜50D) 可撓性フィルム部
51 配線パターン
55 センサ部
56 接続部
57A,57B 折曲部
61〜65 補強板
100 遮蔽層
図1
図2
図3
図4