(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガスコンプレッサの動作の停止中、前記燃料ガス供給システムの前記圧縮機構それぞれの前記高圧ガス流路の圧力は、前記低圧ガス流路の圧力に比べて高い状態を維持している、請求項2〜4のいずれか1項に記載の燃料ガス供給方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記エンジン(MC−GIエンジン)は、陸上発電用エンジンであり、基本的に略一定負荷の運転を前提とした低速ディーゼルエンジンであり、多段のガスコンプレッサも略一定の燃料ガスを供給すればよい。
一方、このような多段のガスコンプレッサを船舶推進用の低速ディーゼルエンジンに適用した場合、このエンジンの負荷は時間変化するため、多段のコンプレッサの運転も変化する必要がある。例えば、エンジンの負荷を低減させ、さらには停止させる場合、使用される燃料ガスが少なくなり、あるいはゼロになるため、燃料ガスの供給方向における下流側において燃料ガスの圧力が高くなり易い。この場合、ガスコンプレッサに付随して設けられる吐出スナッバ内の燃料ガスの圧力が、吐出スナッバよりも下流側に位置する別のガスコンプレッサに付随して設けられる吸引スナッバ内の燃料ガスの圧力に比べて低くなり、下流側の吸引スナッバから上流側の吐出スナッバにガス供給ラインを通して燃料ガスが逆流する場合がある。
【0007】
また、多段のガスコンプレッサを、停止から再起動をさせるとき、ガスコンプレッサに付随した吸引スナッバと吐出スナッバ内の燃料ガスの圧力が同じ状態で停止している場合、ガスコンプレッサの駆動により、吸引スナッバと吐出スナッバ内の燃料ガスの圧力差を生じさせて、燃料ガスを定常的に供給するまでには、長い時間を必要とする。このため、燃料ガスをエンジンに定常状態で供給できるまでの時間を短縮するには、ガスコンプレッサに付随した吸引スナッバに対して吐出スナッバ内の燃料ガスの圧力を高くした状態で停止しておくことが好ましい。しかし、このような燃料ガス供給システムは知られていない。
【0008】
そこで、本発明は、多段の圧縮機構を用いて加圧した燃料ガスのエンジンへの供給を停止するとき、多段の圧縮機構の間で、燃料ガスが逆流することを阻止することができる燃料ガス供給システム及び燃料ガス供給方法、及び、圧縮機構を再起動するとき、多段の圧縮機構からエンジンへの燃料ガスの安定した供給を短時間に実現することができる燃料ガス供給システム及び燃料ガス供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、船舶の推進エンジンに燃料ガスを供給する燃料ガス供給システムである。当該燃料ガス供給システムは、
燃料ガス源と、
前記燃料ガス源から供給される燃料ガスを、船舶の推進エンジンに供給するガス供給ラインに直列に設けられ、前記燃料ガスを圧縮して前記推進エンジンの側に流す複数の圧縮機構と、を備える。
前記圧縮機構のそれぞれは、前記燃料ガスを圧縮するガスコンプレッサと、前記ガスコンプレッサに付随するように、前記燃料ガスの前記推進エンジンへの供給方向における前記ガスコンプレッサの上流側に設けられ、前記ガスコンプレッサの圧縮室に向けて前記燃料ガスを供給する低圧ガス流路と、前記供給方向における、前記ガスコンプレッサの下流側に設けられ、前記ガスコンプレッサの圧縮室で圧縮された前記燃料ガスを前記推進エンジンに向けて供給する高圧ガス流路と、前記圧縮室を経由することなく前記低圧ガス流路と前記高圧ガス流路の間を繋ぐバイパス管と、前記バイパス管における前記燃料ガスの流量を制御する制御バルブと、
前記燃料ガスの流れを、前記低圧ガス流路と前記圧縮室との間の双方方向の流れを許容するアンロード状態と、前記燃料ガスの流れを、前記低圧ガス流路から前記圧縮室への一方向の流れに制限するロード状態とを、切り替えることができるアンローダと、前記アンローダの動作を制御する制御部と、を備え、
前記複数の圧縮機構の間を結ぶガス供給ラインのそれぞれに、前記燃料ガスが前記供給方向の逆方向に向かって逆流することを阻止する逆止弁が設けられ
、
前記制御部は、前記ガスコンプレッサの動作の停止前に、前記ロード状態から前記アンロード状態に切り替える制御信号を前記アンローダに送る。
【0012】
本発明の他の一態様は、船舶の推進エンジンに燃料ガスを供給する燃料ガス供給システムを用いた燃料ガス供給方法である。
前記燃料ガス供給システムは、
燃料ガス源と、
前記燃料ガス源から供給される燃料ガスを、船舶の推進エンジンに供給するガス供給ラインに直列に設けられ、前記燃料ガスを圧縮して前記推進エンジンの側に流す複数の圧縮機構と、を備える。
前記圧縮機構のそれぞれは、前記燃料ガスを圧縮するガスコンプレッサと、前記ガスコンプレッサに付随するように、前記燃料ガスの前記推進エンジンへの供給方向における、前記ガスコンプレッサの上流側に設けられ、前記ガスコンプレッサの圧縮室に向けて前記燃料ガスを供給する低圧ガス流路と、前記供給方向における、前記ガスコンプレッサの下流側に設けられ、前記ガスコンプレッサの圧縮室で圧縮された前記燃料ガスを前記推進エンジンに向けて供給する高圧ガス流路と、前記圧縮室を経由することなく前記低圧ガス流路と前記高圧ガス流路の間を繋ぐバイパス管と、前記バイパス管における前記燃料ガスの流量を制御する制御バルブと、を備える。
前記燃料ガス供給方法は、前記ガスコンプレッサの動作を停止するとき、
前記圧縮機構のそれぞれは、前記燃料ガスの流れを、前記低圧ガス流路から前記圧縮室への一方向の流れに制限するロード状態から、前記燃料ガスの流れを、前記低圧ガス流路と前記圧縮室との間の双方方向の流れを許容するアンロード状態に切り替えるステップと、
前記アンロード状態により、前記高圧ガス流路の燃料ガスが前記バイパス管を介して前記低圧ガス流路に流れて前記高圧ガス流路の圧力が減圧することにより生じる、前記供給方向の下流側に位置する前記圧縮機構の1つの低圧ガス流路から前記供給方向と逆方向に向かう前記燃料ガスの逆流を阻止するステップと、
前記逆流を阻止する間に、前記制御バルブを閉じて、前記バイパス管における前記燃料ガスの流量を0にするステップと、
前記燃料ガスの流量を0にした後、前記ガスコンプレッサの動作を停止するステップと、を備える。
【0013】
前記ガスコンプレッサの動作の停止から前記ガスコンプレッサの動作を開始する時、
前記制御バルブを閉じた状態で、かつ前記アンロード状態で前記ガスコンプレッサの動作を開始するステップと、
前記ガスコンプレッサの動作が定常状態になったとき、前記制御バルブを開くとともに、前記アンロード状態から前記ロード状態に切り替えるステップと、を備える、ことが好ましい。
【0014】
本発明のさらに他の一態様も、船舶の推進エンジンに燃料ガスを供給する燃料ガス供給システムを用いた燃料ガス供給方法である。
前記燃料ガス供給システムは、
燃料ガス源と、
前記燃料ガス源から供給される燃料ガスを、船舶の推進エンジンに供給するガス供給ラインに直列に設けられ、前記燃料ガスを圧縮して前記推進エンジンの側に流す複数の圧縮
機構と、を備える。
前記圧縮機構のそれぞれは、前記燃料ガスを圧縮するガスコンプレッサと、前記ガスコンプレッサに付随するように、前記燃料ガスの前記推進エンジンへの供給方向における、前記ガスコンプレッサの上流側に設けられ、前記ガスコンプレッサの圧縮室に向けて前記燃料ガスを供給する低圧ガス流路と、前記供給方向における、前記ガスコンプレッサの下流側に設けられ、前記ガスコンプレッサの圧縮室で圧縮された前記燃料ガスを前記推進エンジンに向けて供給する高圧ガス流路と、前記圧縮室を経由することなく前記低圧ガス流路と前記高圧ガス流路の間を繋ぐバイパス管と、前記バイパス管における前記燃料ガスの流量を制御する制御バルブと、を備える。
前記圧縮機構のそれぞれは、前記ガスコンプレッサの動作の停止中、前記燃料ガスの流れを、前記低圧ガス流路と前記圧縮室との間の双方方向の流れを許容するアンロード状態にあり、かつ前記制御バルブが閉じた状態であり、前記アンロード状態及び前記閉じた状態で前記ガスコンプレッサの動作を開始するステップと、
前記ガスコンプレッサの動作が定常状態になったとき、前記制御バルブを開くとともに、前記アンロード状態から前記ロード状態に切り替えるステップと、を前記燃料ガス供給方法は備える。
【0015】
前記ガスコンプレッサの動作の停止中、前記燃料ガス供給システムの前記圧縮機構それぞれの前記高圧ガス流路の圧力は、前記低圧ガス流路の圧力に比べて高い状態を維持している、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上記態様の燃料ガス供給システム及び燃料ガス供給方法によれば、多段の圧縮機構の間で、燃料ガスが逆流することを阻止することができる。また、多段の圧縮機構からエンジンへの燃料ガスの安定した供給を短時間に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の燃料ガス供給システム及び燃料ガス供給方法を詳細に説明する。
図1は、本実施形態の船舶の推進エンジンに液化ガスのボイルオフガスを燃料ガスとして供給する燃料ガス供給システム10の構成の一例を示す図である。燃料ガス供給システム10の液化ガスとして液化天然ガスを用いるが、液化天然ガスに限定されず、純メタンガスや純エタンガス等を用いることができる。ボイルオフガスは、タンク内で自然入熱によって気化したガスの他に、LNGを意図的に加熱して強制的に気化したガスも含まれる。
【0019】
燃料ガス供給システム10は、液化天然ガスを運搬するLNG船において、液化天然ガスを貯留するLNGタンク12内で気化したボイルオフガスを燃料ガスとして推進エンジン14に供給するのに用いられる。LNGタンク12は、燃料ガス源である。本実施形態では、ボイルオフガスがLNGタンク12から推進エンジン14に供給される方向を下流方向、その反対方向を上流方向といい、ある基準とする位置から下流方向の側を下流側といい、ある基準とする位置から上流方向の側を上流側という。
【0020】
本実施形態の燃料ガス供給システム10は、燃料ガスの供給を受けて船舶を推進させる推進エンジン14に、燃料ガスを供給するために、燃料ガスを加圧してLNGタンク12の側から推進エンジン14の側に流す複数のガス圧縮機構13a〜13eを備える。複数のガス圧縮機構13a〜13eはガス供給ライン上に直列に設けられている。
ガス圧縮機構13a〜13eは、ガスコンプレッサ16a〜16eと、吸引スナッバ18a〜18eと、吐出スナッバ20a〜20eと、熱交換器22a〜22eと、バイパス管24a〜24eと、制御バルブ26a〜26eと、制御装置28a〜28eと、逆止弁32a〜32eアンローダ付の逆止弁34a〜34e(
図3,
図4(a),(b)参照)と、を主に備える。ガス圧縮機構13a〜13eの間を繋ぐガス供給ラインには、逆止弁32a〜32eが設けられている。
【0021】
LNGタンク12には、LNG船により運搬される貨物である液化天然ガスが貯留される。ここで、天然ガスは、天然に産する化石燃料である炭化水素ガス、又は、原油精製プラントから生まれるガスであり、メタン、エタン、プロパン等の炭素化合物を含む。液化天然ガス(LNG)は天然ガスを冷却して液化したものである。なお、
図1では球型のタンクが図示されているが、本実施形態はこれに限らず、メンブレン方式のタンクであってもよい。
本明細書において、「ボイルオフガス」は、LNGタンク12内において気化した天然ガスであるが、LNGタンク12外で液化天然ガスが気化したものも含む。また、本実施形態を適用する船舶はLNG船であるが、液化天然ガスをタンクに貯留して、そのボイルオフガスを加圧して燃料ガスとしてエンジンに供給するLNG船以外の船舶に適用することもできる。
【0022】
推進エンジン14は供給されるボイルオフガスを燃料ガスとして燃焼室で燃焼させて動力を取り出し、主軸15aおよびプロペラ15bを回転させる。推進エンジン14には、例えば2ストロークサイクルの低速ディーゼルエンジンを用いることができる。
推進エンジン14は、ガバナ15cと接続されて、駆動が制御されている。ガバナ15cは、主軸15aの回転を計測するように設けられた回転計15dにより計測された主軸回転数が目標回転数になるように、推進エンジン14に燃料ガスを供給する供給ラインに設けられた図示しない流量制御弁の開度を制御することで、推進エンジン14の駆動を制御する。すなわち、ガバナ15cは、推進エンジン14と推進用のプロペラ15bを接続した主軸15aの主軸回転数が目標回転数になるように、推進エンジン14の負荷を定め、これに基づいて燃料ガスの燃料供給量を制御する装置である。ガバナ15cは、気象、海象の風、波高等の自然状況が変化しても主軸回転数が目標回転数に維持されるように、推進エンジン14の負荷を定める他、オペレータの減速、加速、旋回等の指示によって提供されるプロペラ回転数の操作指令値に応じて、推進エンジン14の負荷を定めることもできる。ガバナ15cは、定めた負荷に基づいて、最下流に位置するガスコンプレッサ16eの吐出側の目標圧力を設定し、この目標圧力を制御装置28eに送るように構成されている。この目標圧力は、推進エンジン14が要求する燃料供給圧力である。
【0023】
ガスコンプレッサ16a〜16eは、LNGタンク12で発生したボイルオフガスを燃料ガスとして圧縮して推進エンジン14へ供給するガス供給ライン上で直列に接続された多段のコンプレッサである。ガスコンプレッサ16a〜16eは、吸引スナッバ18a〜18eから供給される燃料ガスを加圧する部分である。ガスコンプレッサ16a〜16eは、例えば、ガスコンプレッサ16a〜16e内の可動部(プランジャ又はピストン)が直線往復運動をすることによって気体を吸い込み、その後圧縮する、往復圧縮機を用いることができる。ガスコンプレッサ16a〜16eのうち、ガスコンプレッサ16a〜16dは、無給油式圧縮機が用いられ、高圧に燃料ガスを加圧するガスコンプレッサ16eには給油式圧縮機が用いられる。ガスコンプレッサ16a〜16eの可動部は、上述した図示されない駆動源(例えば電動モータ)の動力で回転するクランク軸を介して連動して駆動される。ガスコンプレッサ16a〜16eにおいて、燃料ガスはそれぞれ同程度の圧縮率で段階的に圧縮されることで、燃料ガスは圧縮率の5乗まで圧縮される。例えば、ガスコンプレッサ16a〜16eのそれぞれにおいて3〜4倍に圧縮することで、燃料ガスは3
5〜4
5倍に圧縮される。例えば、ガスコンプレッサ16aの吸引側における燃料ガスの圧力が0.1MPaであれば、ガスコンプレッサ16aの吐出側の圧力は約0.39MPa、ガスコンプレッサ16bの吐出側の圧力は約1.24MPa、ガスコンプレッサ16cの吐出側の圧力は約4.00MPa、ガスコンプレッサ16dの吐出側の圧力は約11.3MPaとなる。そして、ガスコンプレッサ16eの吐出側の圧力は設定された目標圧力まで上昇される。
【0024】
吸引スナッバ18a〜18eは、ガスコンプレッサ16a〜16eそれぞれに付随して設けられ、ガスコンプレッサ16a〜16eそれぞれの上流側に設けられる、圧縮前の燃料ガスを一時貯留し、さらに、ガスコンプレッサ16a〜16eの圧縮室に向けて燃料ガスを供給する容器である。すなわち、吸引スナッバ18a〜18eは、ガスコンプレッサ16a〜16eの圧縮室に向けて燃料ガスを供給する低圧ガス流路を構成する。したがって、吸引スナッバ18a〜18e内の圧力は、ガスコンプレッサ16a〜16eそれぞれで加圧する直前の燃料ガスの圧力に相当する。
吐出スナッバ20a〜20eは、ガスコンプレッサ16a〜16eそれぞれに付随して設けられ、ガスコンプレッサ16a〜16eそれぞれの下流側に設けられる、圧縮後の燃料ガスを一時貯留し、さらに、推進エンジン14に向けて燃料ガスを供給する容器である。吐出スナッバ20a〜20eには、内部に貯留する燃料ガスの圧力を計測する圧力計19a〜19eが設けられている。圧力計19a〜19eの計測結果は、後述する制御装置28a〜28eに送られる。吸引スナッバ18a〜18e及び吐出スナッバ20a〜20eには、予め定めた圧力で弁が開放する図示されない安全弁が設けられている。
【0025】
熱交換器22a〜22eは、ガスコンプレッサ16a〜16eそれぞれで燃料ガスが圧縮されることにより高温になった燃料ガスを、冷媒と熱交換することにより所定の温度に冷やすための装置である。冷媒として、特に制限されないが、LNGタンク12で生成された直後の冷えたボイルオフガスを用いることができる。熱交換器22a〜22dは、それぞれの下流側に位置する吸引スナッバ18b〜18eにガス供給ラインで接続される。
吐出スナッバ20a〜20e及び熱交換器22a〜22eは、ガスコンプレッサ16a〜16eの圧縮室で圧縮された燃料ガスを推進エンジン14に向けて供給する高圧ガス流路を構成する。
【0026】
逆止弁32a〜32eは、後述するように、ガスコンプレッサ16a〜16eの停止時、あるいは再起動時、燃料ガスが上流方向に逆流することを阻止するために設けられる。
【0027】
ガスコンプレッサ16a〜16eそれぞれに付随した吸引スナッバ18a〜18eと、熱交換器22a〜22eと逆止弁32a〜32eを繋ぐ高圧ガス流路の配管との間には、バイパス管24a〜24eが設けられている。バイパス管24a〜24eは、低圧ガス流路と高圧ガス流路を繋ぎ、高圧ガス流路である熱交換器22a〜22eの下流側のガス出力部から低圧ガス流路である吸引スナッバ18a〜18eに向かって加圧した燃料ガスが流れるようになっている。燃料ガスの、下流側から上流側への流れを逆流という。
バイパス管24a〜24eには、燃料ガスが流れる量を制御する制御バルブ26a〜26eが設けられている。
【0028】
図2は、ガスコンプレッサ16a〜16eが下流方向に吐出する燃料ガスの吐出量と、バイパス管24a〜24eを上流方向に向かって逆流する燃料ガスの流量を説明する図である。
図2では、2段目のガスコンプレッサ16bとバイパス管24bの流れを説明しているが、これ以外のガスコンプレッサとバイパス管においても同様の挙動をする。
図2に示されるように、例えば、上流側から1時間当たり1500kgの燃料ガスが供給され、ガスコンプレッサ16bが1時間当たり2000kgの燃料ガスを圧縮して下流側に吐出する時、吐出スナッバ20bから流れ出て熱交換器22bを通過した燃料ガスを、1時間当たり500kg逆流させて吸引スナッバ18bに戻す。このように、吐出スナッバ20bからの燃料ガスが1時間当たり500kg逆流するように、制御バルブ26bの開度は制御されている。これにより、熱交換器22bから下流側に1時間当たり1500kgの燃料ガスを定常的に流すことができる。したがって、吐出スナッバ20b、いいかえると高圧ガス流路における燃料ガスの圧力は一定に保つことができる。
【0029】
しかし、吸引スナッバ18b中の燃料ガスの圧力が変化し、燃料ガスの吐出量が、1時間当たり2000kgから変化するとき、吐出スナッバ20bの圧力が安全弁により設定された圧力を超えることがないように、燃料ガスの吐出量の変化に応じてバイパス管24bを逆流する燃料ガスの量も制御されなければならない。また、上流側から吸引スナッバ18bに供給される燃料ガスの量が増加したとき、さらに、吐出スナッバ20bから下流側に流すべき燃料ガスの必要量が変化した時、吐出スナッバ20bの圧力が安全弁により設定された圧力を超えることがないように、バイパス管24bを逆流する燃料ガスの量を調整させなければならない。バイパス管24bを逆流する燃料ガスの量を調整しなければ、吐出スナッバ20bの安全弁が開放し、開放時の大きな圧力変動は各段の圧力の制御外乱となり、圧力の制御が不安定になる虞がある。
【0030】
このような点を考慮して、本実施形態では、バイパス管24a〜24eに設けられる制御バルブ26a〜26eの開度は、燃料ガスの吐出スナッバ20a〜20eの燃料ガスの圧力に応じて制御される。この制御バルブ26a〜26eの開度の制御は、制御装置28a〜28eが設定する開度指令値によって行われる。すなわち、制御バルブ26a〜26eそれぞれに対して設定される開度指令値が、制御バルブ26a〜26eの開度を制御する。
制御装置28a〜28eでは、圧力計19a〜19eによって計測された計測結果と定められた目標圧力との圧力差に応じて指令値が設定される。なお、制御装置28eで定められる目標圧力は、上述したように、ガバナ15cから送られたものである。
【0031】
アンローダ付の逆止弁34a〜34eは、圧縮機構13a〜13eの吸引スナッバ18a〜18eとガスコンプレッサ16a〜16eの間に、アンローダ41a〜41eが設けられた逆止弁である。逆止弁34a〜34eは、後述するロード状態では、燃料ガスの流れを、吸引スナッバ18a〜18eからガスコンプレッサ16a〜16eの圧縮室17a〜17eへの一方向の燃料ガスの流れに制限し、アンローダ41a〜41eの作用によるアンロード状態では、吸引スナッバ18a〜18eと圧縮室17a〜17eとの間の双方方向の燃料ガスの流れを許容する。
図3は、本実施形態のアンローダ付きの逆止弁34a〜34eを説明する図である。
図4(a),(b)は、逆止弁34a〜34eと、アンローダ41a〜41eの構成の一例を説明する図である。以降、逆止弁34a〜34eを代表して説明する場合、逆止弁34と称し、アンローダ付の逆止弁34を構成する各部材も符号a〜eを付さずに番号のみで記す。本実施形態では、
図4(a),(b)に示す構成のアンローダ41を用いるが、アンローダ41は、逆支弁34の機能を、上記ロード状態と上記アンロード状態に切り替えることができる機構であれば特に制限されない。
【0032】
図4(a),(b)に示す逆止弁34は、弁座51、弁受59、および、弁座51と弁受59の間に配される複数の弁板53,55,57を有している。弁座51は圧縮室17a側に配置され、弁受59はガス供給ラインの吸引スナッバ18a〜18e側に配置される。弁座51、弁板53〜57、弁受59はいずれも板状部材である。弁座51の中心には、弁受59側に延びる軸52が設けられている。弁板53〜57、弁受59には軸52が貫通して配置されように構成されている。逆止弁34は、さらに、コイルばね等の図示されない付勢部材を有しており、逆止弁34に外力が作用していない状態(例えば後述するアンロード状態)では、弁座51、弁板53〜57、弁受59は互いに間隔をあけて配置される。軸52より外周側の弁座51の領域には、燃料ガスの通路となる複数の凹部51aが形成されており、弁板53〜57、弁受59にはそれぞれ、燃料ガスの通路となる複数の凹部53a,55a,57a,59aが形成されている。凹部53a、55a、57a、59aは、弁板53〜57,弁受59が、
図4(a)に示されるように互いに接触するよう重なった状態では、軸52の延びる方向に一体の孔の空間を形成し、この一体の孔の空間は弁座51によって閉塞するようになっている。このため、逆止弁22が閉じた状態では、
図4(a)に示す矢印で示される方向(圧縮室17a〜17eから吸引スナッバ18a〜18eに向かう方向)に流れることができず、逆流を阻止できる。一方、吸引スナッバ18a〜18eから圧縮室17a〜17eに向かう方向には、燃料ガスは図示されない上述の付勢部材の付勢力に打ち勝って弁座51と弁板53が離間して上記一体の孔の空間は開放され、燃料ガスが流れる。
一方、逆止弁22が開いた状態では、燃料ガスは、例えば
図4(b)に示す矢印(圧縮室21aから吸引スナッバ23の側)に流れることができ、上記矢印と反対方向にも流れることができる。
【0033】
このような逆止弁34に、アンローダ41が設けられている。アンローダ41は、
図4(b)に示すように、ケーシング61と、ケーシング61内で動くことのできるダイヤフラム63と、ダイヤフラム63に接続されたロッド65と、ケーシング61に空気圧を供給する図示されない空気圧供給装置と、を有している。ダイヤフラム63は、ケーシング61内で、図示されない付勢部材によって、ロッド65を突出させるよう(
図4(a),(b)の下方に突出するよう)付勢されている。ロッド65の先端(
図4(a),(b)において下端)は、逆止弁34の弁座51に取り付けられた部材67に当接しており、ロッド65が突出することによって、部材67,68を介して圧接力が逆止弁22に作用する。部材67,68は、ロッド65からの圧接力を、弁座51のより広い領域に伝達するための部材である。このような構成により、ロッド65が前進してロッド65の圧接力で弁座51と弁受59が閉じることにより、逆止弁34の機能を正常な状態(ロード状態)にすることができる。一方、ロッド65が後退することにより弁座51と弁受59が開いて、逆止弁34の機能を発揮させない状態(アンロード状態)にすることができる。アンローダ41による逆止弁34のロード状態及びアンロード状態の切り替えは、制御装置28a〜28eの制御によって行われる。このとき、制御装置28a〜28eは、アンローダ41の動作を制御し、制御装置28a〜28eは、ガスコンプレッサ16a〜16eの動作の停止前に、ロード状態からアンロード状態に切り替える制御信号をアンローダ41に送る、ことが好ましい。
【0034】
このような燃料ガス供給システム10において、推進エンジン14の停止のために、あるいは、推進エンジン14の使用する燃料を別の燃料に切り替えるために、使用する燃料ガスの量をゼロにする場合がある。この場合、ガスコンプレッサ16a〜16eの駆動も燃料ガスの使用ゼロの切り替えに対応して瞬時に切り替えることが難しいため、燃料ガスは下流側で圧力が高くなる場合がある。例えば、推進エンジン14への燃料ガスの供給を停止した場合、ガスコンプレッサ16a〜16eの駆動停止の動作は遅れて開始し、さらに、制御バルブ26a〜26eも遅れて開度の変更の動作を開始する。このため、これらの遅れ時間の間に、下流側の圧縮機構の吸引スナッバ内の燃料ガスの圧力が、上流側の隣接する圧縮機構の吐出スナッバ内の燃料ガスの圧力よりも高くなり易い。この燃料ガスの高低によって生じる燃料ガスの逆流を阻止するために、圧縮機構13a〜13eの間を繋ぐガス供給ラインに逆止弁32a〜32eが設けられている。逆止弁32a〜32eは、
バイパス管24a〜24eの分岐位置と下流側の吸引スナッパ18b〜18eの間のガス供給ラインに設けられている。
【0035】
図5は、本実施形態の燃料ガス供給方法の一例である、燃料ガスの供給の停止のフローを説明する図である。
まず、燃料ガス供給システム10が推進エンジン14への燃料ガスの供給を停止する場合、燃料ガス供給システム10は、推進エンジン14への燃料ガスの供給バルブを閉じるとともに、逆止弁34を、アンローダ41の作用により
図4(b)に示すように、アンロード状態にする(ステップS10)。具体的には、燃料ガスの流れを、吸引スナッバ18a〜18eから圧縮室17a〜17eへの一方向の流れに制限するロード状態から、燃料ガスの流れを、吸引スナッバ18a〜18eと圧縮室17a〜17eとの間の双方方向の流れを許容するアンロード状態に切り替える。ロード状態からアンロード状態への切り替えは、短時間に行うことができる。これにより、ガスコンプレッサ16a〜16eが駆動しても吐出スナッバ20a〜20eには、ガスコンプレッサ16a〜16eから燃料ガスは供給されない。このため、吐出スナッバ20a〜20eにおける燃料ガスの圧力は上昇し難い。
【0036】
さらに、逆止弁32a〜32dは、上記アンロード状態のとき、吐出スナッバ20a〜20eから熱交換器22a〜22eを通って流れる燃料ガスの一部がバイパス管24a〜24eを介して吸引スナッバ18a〜18eに流れて吐出スナッバ20a〜20eの圧力が減圧することにより生じる燃料ガスの逆流を阻止する。燃料ガスの逆流は、燃料ガスの供給方向の下流側に位置する圧縮機構13b〜13eの吸引スナッバ18b〜18eから上流側に位置する吐出スナッバ20a〜20eに向かって(燃料ガスの供給方向と逆方向に向かって)流れる燃料ガスの流れである。
【0037】
上記逆流を阻止する間に、燃料ガス供給システム10は、制御バルブ26a〜26eを閉じて、バイパス管24a〜24eにおける燃料ガスの流量を0にする(ステップS12)。
燃料ガスの流量を0にした後、ガスコンプレッサ16a〜16eの動作を停止する(ステップS14)。
このように、逆止弁32a〜32dは、多段の圧縮機構13a〜13eの間で、燃料ガスが逆流することを阻止することができる。
また、吐出スナッバ20a〜20eは、逆止弁32a〜32e、制御バルブ26a〜26e、及び停止したガスコンプレッサ16a〜16eにより、空間が閉塞されるので、吐出スナッバ20a〜20eと同じ圧縮機構13a〜13eに付随した吸引スナッバ18a〜18eとは、燃料ガスの圧力差がある状態で保持される。すなわち、ガスコンプレッサ16a〜16eの動作の停止中、燃料ガス供給システム10の圧縮機構13a〜13eそれぞれの吐出スナッバ20a〜20eの圧力は、吸引スナッバ18a〜18eの圧力に比べて高い状態を維持している。このため、ガスコンプレッサ16a〜16eを再起動するとき、推進エンジン14への燃料ガスの安定した供給を短時間に実現することができる。
【0038】
図6は、本実施形態の燃料ガス供給方法の他の一例である、ガスコンプレッサ16a〜16eの再起動のフローを説明する図である。
まず、燃料ガス供給システム10は、ガスコンプレッサ16a〜16eの駆動を開始させる(ステップS20)。具体的には、ガスコンプレッサ16a〜16eの駆動前、逆止弁34a〜34eはアンロード状態にあり、制御バルブ26a〜26eは閉じた状態である。この状態で、圧縮機構13a〜13eのそれぞれは、ガスコンプレッサ16a〜16eの動作を開始する。
【0039】
次に、ガスコンプレッサ16a〜16eの動作が定常状態になったとき、制御バルブ26a〜26eを開く(ステップS22)。さらに、制御バルブ26a〜26eを開くとともに、逆止弁34a〜34eの状態を、アンローダ41の作用により、アンロード状態からロード状態に切り替えて、アンロード状態を解除する(ステップS24)。
ガスコンプレッサ16a〜16eの再起動前のガスコンプレッサ16a〜16eの動作の停止中、燃料ガス供給システム10の圧縮機構13a〜13eそれぞれの吐出スナッバ20a〜20eの圧力は、吸引スナッバ18a〜18eの圧力に比べて高い状態を維持していることが好ましい。これにより、ガスコンプレッサ16a〜16eを再起動するとき、推進エンジン14への燃料ガスの安定した供給を短時間に実現することができる。
【0040】
以上、本発明の燃料ガス供給システム及び燃料ガス供給方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。