(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6551687
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】3D形状生成のための被写体全周囲撮像装置
(51)【国際特許分類】
G03B 17/56 20060101AFI20190722BHJP
H04N 5/222 20060101ALI20190722BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20190722BHJP
G03B 35/02 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
G03B17/56 E
H04N5/222 100
G06T1/00 400M
G03B17/56 B
G03B35/02
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-211095(P2016-211095)
(22)【出願日】2016年10月11日
(65)【公開番号】特開2018-63411(P2018-63411A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2017年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】508180172
【氏名又は名称】株式会社CUBIC
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宣春
【審査官】
高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−193796(JP,A)
【文献】
特開昭57−155531(JP,A)
【文献】
特開昭57−044137(JP,A)
【文献】
特開2009−188831(JP,A)
【文献】
特表2015−516585(JP,A)
【文献】
特開2001−326833(JP,A)
【文献】
米国特許第06834960(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/56
G03B 35/02
G06T 1/00
H04N 5/222
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の全周囲撮影を行うための被写体全周囲撮像装置において、
ベース板および該ベース板に取り付けられベース板に対して回転可能に取り付けられた回転アームを有する回転アームユニットと、
前記回転アームユニットのベース板の中央に固定され、前記被写体を載置する被写体ユニットと、
回転アームの一方端に取り付けられ、回転アームとともに回転する撮像手段を有する撮像ユニットおよび
前記回転アームの他方端に取りつけられ、前記被写体の背景が撮像手段によって撮像されるのを遮るバックスクリーンとからなり、
前記被写体ユニットが、XY軸を形成する矩形の辺を持つ被写体テーブルと、Z軸を形成する垂直座標軸から構成され、前記Z軸を形成する垂直座標軸はZ方向に延在する略棒状の部材であり、前記被写体テーブルの面上に設置されており、前記被写体と、寸法の付いたXY軸を形成する矩形の辺を持つ被写体テーブルと、Z軸を形成する寸法の付いた垂直座標軸を持つ前記被写体ユニットを同時に撮影した画像を用いて、前記X軸、Y軸、Z軸によって作られる寸法を持ったXYZ軸空間の中に前記被写体の3D形状を生成し、前記XYZ軸を利用して、前記被写体の正面図であるZX面、側面図であるYZ面、上面図であるXY面などの展開図を作成し、かつ、前記被写体の寸法を計測することを特徴とする被写体全周囲撮像装置。
【請求項2】
前記撮像ユニットは前記被写体に対する撮像手段の位置を調整する位置調整手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の被写体全周囲撮像装置。
【請求項3】
前記位置調整手段は被写体との距離を調整する前後方向距離調整手段と撮像手段の高さおよび撮像方向を調整する高さおよび方向調整手段とを含むことを特徴とする請求項1あるいは2に記載の被写体全周囲撮像装置。
【請求項4】
前記回転アームユニットのベース板に固定された被写体ユニットの周囲を、回転アームユニットの回転アームが回転することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の被写体全周囲撮像装置。
【請求項5】
回転アームユニットが、回転角度制御モータ、或いは、手動により、一定間隔の回転角度毎に回転、停止することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の被写体全周囲撮像装置。
【請求項6】
回転アームユニットの片方の一端に取り付けられた撮像手段が、回転アームユニットと常時同期して回転しながら被写体を撮影することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の被写体全周囲撮像装置。
【請求項7】
回転アームユニットに取り付けられた照明ユニットが、撮像手段と常時同期して回転しながら被写体を照らすことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の被写体全周囲撮像装置。
【請求項8】
回転アームユニットの撮像ユニットの反対側の一端に取り付けられたバックスクリーンが、撮像手段と常時同期して回転し、被写体以外の背景が画像に写ることを妨げることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の被写体全周囲撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【001】
被写体の3D形状を生成する方法として、被写体の全周囲を複数写真撮影し、これらの画像から3D形状を生成するソフトウェア Agisoft LLC 製 Agisoft PhotoScanなどが近年開発されている。本発明は、3D形状生成に用いられる被写体の全周囲を撮影する装置に関するものである。
【背景技術】
【002】
被写体の全周囲を撮影には大別して2つの目的がある。
一つ目は、撮影者、或いは、撮影手段を中心として、中心から見た周囲の空間を被写体として撮影するものある。その目的としては、Google Inc.製ストリートビューの画像や、自動車の周囲画像を撮影するものなどがある。この撮影手段には、全方位カメラと呼ばれ、複数のカメラを各方面の周囲に向けて設置し、一度に最大周囲360度の空間を撮影するものや、魚眼カメラと呼ばれ、特定方位の空間をできるだけ広角で撮影するものがある。これらの撮影手段は、中心から見た周囲の空間を被写体としていることから、本発明技術とは異なる。
【003】
二つ目は、被写体の外側を撮影するものである。その目的としては、人体、商品、試作品、美術品、考古学遺物などの外側形状を撮影するものである。これらの撮影手段には、被写体をその中心に置き、その周囲に複数のカメラを被写体に向けて固定して配置し、一度に全周囲を撮影するもの(特許文献1)や、回転テーブルに被写体を載置し、被写体を回転しながら1台から複数台の固定したカメラで撮影するものがある。(特許文献2)
【004】
一方、前述の3D形状生成ソフトウェア Agisoft PhotoScanは、画像処理の方式として、被写体と被写体周囲にある基準点や基準軸或いは基準形状の相対位置から計算するもので、更に、2枚の画像を用いるステレオカメラとも異なり、被写体と基準点を含み、連続し、かつ、隣同士が70%以上重なる複数の画像を必要とする。
このため、これら画像の撮影では、人がカメラを持ち、細心の注意をして被写体の回りを移動しながら、連続した、かつ、70%以上の重なりを持つ画像を撮影している。
しかしながら、人が持つカメラの位置と方向にはバラツキがあり、連続しなかったり、70%以上の重なりがない画像が撮影され、その結果、3D形状が生成できなかったり、歪んだ3D形状が生成されることが多くある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特許第5966256号明細書
【特許文献2】特開2003−030635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【005】
課題の一つ目は、被写体の周囲を、連続的に、かつ、70%以上の重なりを持つ画像を、安定して、容易に撮影することである。
【006】
又、生成した3D形状はいろいろな用途に用いられるが、その中の一つに、展開図を作成する用途がある。例えば、考古学では、土器、石器、陶磁器など遺物の展開図面を多く作成する。この展開図の作成には、被写体の正面、側面、上面、下面の配置を設定するためのXYZ軸の設定が必要である。
【007】
そこで課題の二つ目は、生成した3D形状の配置を設定するための座標軸を作ることである。
【課題を解決するための手段】
【008】
被写体の周囲の、連続的、かつ、70%以上の重なりを持つ画像は、撮像手段を、被写体の回りで、一定の回転角度毎に停止させ、撮影することで、得ることができる。
【009】
被写体の全周囲の撮影を行う被写体全周囲撮像装置は、ベース板および該ベース板に取り付けられベース板に対して回転可能に取り付けられた回転アームを有する回転アームユニットと、前記回転アームユニットのベース板中央に固定され、前記被写体を載置する被写体ユニットと、回転アームの一方端に取り付けられ、回転アームとともに回転する撮像手段を有する撮像ユニットおよび前記回転アームの他方端に取りつけられ、前記被写体の背景が撮像手段によって撮像されるのを遮るバックスクリーンとから構成される。
【010】
回転アームユニットは、最下端にあるベース板の上に、被写体ユニットと、撮像ユニットと,照明ユニットと,バックスクリーンを安定的に搭載している。
【011】
回転アームユニットは、下段にあるベース板と、上段にある回転アームと、これらを連結するベアリングにて構成されている。回転アームは、本ベアリングにより、ベース板の上で、自由に回転できる。
又、回転アームは、回転角度制御モータ付きベアリングで、電動にて、一定回転角度毎に停止させることができる。
或いは、ベース板に貼り付けされた角度表示板を参照しながら回転アームを手動で回転、停止させることもでき、或いは、より安定して固定するには、回転角度ロックピンで、一定角度毎回転毎にロックすることもできる。
【012】
被写体ユニットの被写体テーブルは、該ベアリングの中空部を通る被写体テーブル用固定軸により回転アームユニットのベース板に取り付けられ、固定されている。このため、回転アームが回転しても、被写体テーブルとその上に載せた被写体は、動かない。
【013】
撮像ユニットは、撮像手段と、撮像手段の高さ及び方向調整機構と、撮影手段を前後に移動する機構から構成されている。撮像ユニットは、回転アームユニットの片方の一端に取り付けられており、回転アームユニットが一定角度回転し、停止した後、被写体を撮影する。これを順次繰り返すことにより、被写体の全周囲を撮影する。
【014】
照明ユニットは、回転アームユニットに取り付けられ、撮像手段と常時同期して回転しながら被写体を照らす。被写体の表面に凹凸が多い場合に、被写体を隈無く照らし、欠落部分のない3D形状を生成することができる。
【015】
バックスクリーンは、回転アームユニットの、撮像ユニットから見て、被写体の後ろ側の位置に取り付けられる。バックスクリーンは、撮像手段と常時同期して回転し、被写体以外の、撮影場所の壁や天井などの背景が画像に写り込むのを制限し、3D形状生成ソフトウェアの処理機能を向上させ、処理時間を短縮する。
【016】
生成する3D形状の姿勢は、座標軸を作ることにより、任意に姿勢を設定することができる。このために、被写体の回りにXYZ軸を設定する基準軸を配置し、被写体と基準軸を一緒に撮影して、画像処理ソフトウェアにて、座標軸が付加された3D形状を生成する。
【017】
基準軸として、被写体テーブルの前面の上辺をX軸とし、側面の上辺をY軸とする。又、被写体テーブルに垂直に取り付けられている垂直座標軸をZ軸とする。垂直座標軸は、被写体テーブルの中央に被写体を載せるため、被写体テーブルの端部の四隅や、場合によっては、被写体の回りのいずれかの位置に取り付けられる。
又、被写体テーブルや垂直座標軸には、生成する3D形状に縮尺を入れるための、寸法目盛が付いている。
【発明の効果】
【018】
全周囲撮影装置で被写体を撮影し、連続し、かつ、隣同士70%以上の重なりのある複数の画像を得ることができ、3D形状生成ソフトウェアにより、欠落のない、良い精度の3D形状を生成できる。
【019】
全周囲撮影装置で被写体を撮影し、XYZ軸を設定する基準軸を含んだ画像を得ることができ、3D形状生成ソフトウェアにより、XYZ軸に置かれた3D形状の配置を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【
図3】は、回転角度制御モータ付き回転アームユニットの図である。
【
図4】は、回転角度ロックピン付き回転アームユニットの図である。
【
図6】は、各回転角度の視点から見た被写体の正面図である。
【
図7】は、両サイド配置の垂直座標軸付き被写体ユニットの図である。
【
図8】は、四隅置の垂直座標軸付き被写体ユニットの図である。
【
図9】は、斜め配置の垂直座標軸付き被写体ユニットの図である。
【
図10】は、XYZ軸を含んだ3D形状の図である。
【
図11】は、XYZ軸を用いて配置設定をした3D形状の展開図である。
【実施例】
【020】
図1の被写体テーブル16の上に、被写体1の正面を回転角度表示板11のゼロ位置に合わせて置く。垂直座標軸20は、
図7に示すように、両サイドに2本立てる。
【021】
次に、
図3或いは
図4の回転アーム8を必要角度回転させる。
撮影要件である、連続し、隣同士の画像の重なりが70%以上を満足させる画像を撮影するためには、回転アーム8を、式1より得られる角度54°以下毎の一定角度で回転させればよい。
回転角度 <180°X (100%−70%)/100 =54°・・・・・式1
但し、カメラ視野角度を180°とする。
従って、例えば、45°で順次回転させる場合では、8枚の撮影を行うことにより、連続し、隣同士の画像の重なりが70%以上の全周囲の画像を撮影できる。
【022】
回転アーム8を回転させるためには、2つの形式がある。
形式の一つ目は、
図3のギア付き回転角度制御モータ10が付いた回転アーム8で、設定角度ずつ、電動で回転し、停止する。
形式の二つ目は、
図4のベース板7に貼られた回転角度表示板11を参照して、回転アーム8を一定角度分、手動で回転させ、回転角度ロックピン13がベース板7に一定角度毎に空けられたロックピン固定凹穴14に入ることにより固定される。
いずれの形式でも、被写体1の正面位置と回転角度表示板11のゼロ位置に合わせ、撮影手段15により1枚目の写真を撮影する。この後、回転アーム8を設定角度ずつ、順次回転し、停止し、撮影を行う。
【023】
図5の撮像手段15にて被写体1の撮影を行うが、被写体1のサイズや形状に応じて、被写体1に対する撮影手段15の位置を最適に調整する。
撮影手段15の位置調整では 高さと方向調整を、高さ及び方向向調整手段16で行い、被写体1との距離調整を、回転アームの溝や外形に沿って移動する前後移動調整手段17により行う。
【024】
前述の方法で撮影した被写体1の全周囲の撮影画像を
図6に示す。例えば、円筒形状の被写体において、その側面の8等分の位置に、文字A〜Hが記載されている場合、45°で順次回転させ撮影すると、a視〜h視のような8枚の画像が得られる。
それぞれの隣同士の画像の重複度は、(45°x3)/180°=75%で、70%以上の重複した画像が得られる。
【025】
被写体テーブル18には、垂直座標軸20を設置する。垂直座標軸の本数は最小限1本でもよいが、
図7に示す被写体1の両サイド、
図8に示す被写体1の四隅、
図9に示す被写体1の前後に立てると、後処理における3D形状の姿勢制御時で便利である。
【026】
図1の被写体テーブル18の中央位置に被写体1を置き、被写体1を撮影すると、被写体テーブル18と垂直座標軸20が同時に写り込んだ画像が得られる。
3D形状生成ソフトウェアで本撮影画像を処理すると、被写体1に、被写体テーブル18と、垂直座標軸20が付加された
図10に示す3D形状が生成される。3D形状の中の被写体テーブル18の前面上辺をX軸、側面上辺をY軸、垂直座標軸20をZ座軸と見なすことにより、XYZ軸空間の中で、
図11に示すように、各軸面の3D形状を任意に設定し、各面の展開図を作成できる。
【027】
被写体1の形状に凹凸が多い場合で、上方にある室の照明のみでは被写体1の一部に陰ができる。必要に応じ、
図1に示す照明ユニット5を用いる。照明ユニット5は、回転アームユニット2に取り付けられており、撮影手段15の移動に同期して、常時、被写体1を照らす。
【028】
被写体1の後方の背景は、通常、3D形状化する必要がない場合が多い。この場合、
図1に示すように、被写体1の後方に、バックスクリーン6を配置する。バックスクリーン6は、回転アームユニット2に取り付けられており、撮影手段15の移動に同期して、常時、被写体1の背景を遮る。
【符号の説明】
1:被写体
2:回転アームユニット
3:被写体ユニット
4:撮像ユニット
5:照明ユニット
6:バックスクリーン
7:ベース板
8:回転アーム
9:ギア付きベアリング
10:ギア付き回転角度制御モータ
11:回転角度表示板
12:ベアリング
13:回転角度ロックピン
14:ロックピン固定凹穴
15:撮像手段
16:高さ及び方向調整手段
17:前後移動調整手段
18:被写体テーブル
19:被写体テーブル用固定軸
20:垂直座標軸