(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6551716
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】マイクロフォン用の電子回路およびマイクロフォン
(51)【国際特許分類】
H03M 3/02 20060101AFI20190722BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20190722BHJP
H04R 19/04 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
H03M3/02
H04R3/00 320
H04R19/04
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-513786(P2018-513786)
(86)(22)【出願日】2015年10月9日
(65)【公表番号】特表2018-535575(P2018-535575A)
(43)【公表日】2018年11月29日
(86)【国際出願番号】EP2015073416
(87)【国際公開番号】WO2017059927
(87)【国際公開日】20170413
【審査請求日】2018年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ロッカ, ジーノ
(72)【発明者】
【氏名】ザッセネ, ダイフィ ハウエス
(72)【発明者】
【氏名】コンソ, ファブリツィオ
(72)【発明者】
【氏名】デ ブラシ, マルコ
(72)【発明者】
【氏名】グラッシ, マルコ
(72)【発明者】
【氏名】マルコヴァティ, ピエロ
(72)【発明者】
【氏名】バスキロット, アンドレア
【審査官】
阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/053949(WO,A1)
【文献】
特開2006−211045(JP,A)
【文献】
特開2012−039406(JP,A)
【文献】
特表2004−529518(JP,A)
【文献】
特開2009−071872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 3/02
H04R 3/00
H04R 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロフォン用(1)の電子回路(5)であって、
当該電子回路(5)は、1つの前段増幅器(40)と、1つのシグマ−デルタ変調器(20)と、モードセレクタ(30)と、を備え、
前記前段増幅器(40)は、前記電子回路(5)の電気入力信号を処理し、前記シグマ−デルタ変調器(20)に前段処理された出力信号を提供するように構成され、
前記前段増幅器(40)は、1つの設定可能な電流源を備え、そして少なくとも2つの動作モードにおいて選択的に動作することが可能であり、
前記モードセレクタ(30)は、決定された前記動作モードに対応して、前記前段増幅器(40)の電源電流を選択するように構成され、
前記シグマ−デルタ変調器(20)は、少なくとも2つの動作モードで選択的に動作可能であり、前記モードセレクタ(30)は、外部から供給される制御信号(Ctrl)に依存して所望の動作モードを決定し、そして当該決定された動作モードに応じて当該シグマ−デルタ変調器(20)のデジタル出力信号の分解能を選択するように構成されている、
ことを特徴とする電子回路。
【請求項2】
請求項1に記載の電子回路において、
前記シグマ−デルタ変調器(20)は、1つの第1のシグマ−デルタ変調器(21)および1つの第2のシグマ−デルタ変調器(22)を備え、
前記第1のシグマ−デルタ変調器(21)と前記第2のシグマ−デルタ変調器(22)とはカスケード接続可能である、
ことを特徴とする電子回路。
【請求項3】
前記第1のシグマ−デルタ変調器(21)および前記第2のシグマ−デルタ変調器(22)は、同じ変調器アーキテクチャを備えることを特徴とする、請求項2に記載の電子回路。
【請求項4】
請求項2または3に記載の電子回路において、
前記シグマ−デルタ変調器(20)は、第1の動作モードおよび第2の動作モードで動作することができ、
前記シグマ−デルタ変調器(20)の第1の動作モードにおいては、前記第1のシグマ−デルタ変調器(21)のみかまたは前記第2のシグマ−デルタ変調器(22)のみが用いられて前記シグマ−デルタ変調器(20)の出力にデジタル出力信号(DATA)がnビットの分解能で出力され、そして
前記シグマ−デルタ変調器(20)の第2の動作モードにおいては、前記第1のシグマ−デルタ変調器(21)および前記第2のシグマ−デルタ変調器(22)がカスケード接続されて、前記シグマ−デルタ変調器(20)の出力に、デジタル出力信号(DATA)がmビットの分解能で出力され、
mはnより大きい、
ことを特徴とする電子回路。
【請求項5】
前記シグマ−デルタ変調器(20)は、前記第1の動作モードと前記第2の動作モードにおいて、異なるクロック周波数で動作するように構成されていることを特徴とする、請求項4に記載の電子回路。
【請求項6】
前記シグマ−デルタ変調器(20)は、前記第1の動作モードにおいては、前記第2の動作モードにおけるよりも低いクロック周波数で動作するように構成されていることを特徴とする、請求項5に記載の電子回路。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電子回路において、
前記電子回路(5)は、前記シグマ−デルタ変調器(20)および/または前記前段増幅器(40)に、少なくとも1つの電源電圧(VDD1,VDD2)を供給するための1つの設定可能なパワーマネージメントユニット(60)を備え、
前記パワーマネージメントユニット(60)は、少なくとも1つの設定可能な電源電圧(VDD1,VDD2)を供給するように構成されており、そして少なくとも2つの動作モードで選択的に動作可能となっており、
前記モードセレクタ(30)は、前記パワーマネージメントユニット(60)から供給される少なくとも1つの電源電圧(VDD1,VDD2)を、前記決定された動作モードに応じて選択するように構成されている、
ことを特徴とする電子回路。
【請求項8】
前記モードセレクタ(30)は、1つの周波数弁別器を備え、そして前記外部から供給される制御信号(Ctrl)はクロック信号であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電子回路。
【請求項9】
前記モードセレクタ(30)は、1つのメモリ(90)を備え、当該メモリは、前記シグマ−デルタ変調器(20)の分解能、および/または前記前段増幅器(40)の電源電流、および/または前記パワーマネージメントユニット(60)から供給される少なくとも1つの電源電圧(VDD1,VDD2)を設定するように構成されていることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電子回路。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の電子回路(5)を備え、1つのトランスデュー(10)を備えることを特徴とするマイクロフォン。
【請求項11】
前記トランスデューサ(10)は、MEMS(micro-electrical-mechanical systems)技術で製造されていることを特徴とする、請求項10に記載のマイクロフォン。
【請求項12】
請求項10または11に記載のマイクロフォンを駆動する方法であって、当該方法は前記第1のモードまたは前記第2のモードを選択するステップと、この選択されたモードで前記マイクロフォンを駆動するステップと、を備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロフォン用の電子回路に関する。さらに本発明は、この電子回路を備えるマイクロフォンに関する。このマイクロフォンは、MEMS(micro-electrical-mechanical systems)技術で製造することができる。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、タブレット、カメラ、ラップトップのような最近の携帯機器用のデジタルマイクロフォンは、様々な使用状況に対応しなければならない。たとえばこのデジタルマイクロフォンは、音声命令も、また高品質ビデオの録音用にも使用される。音声命令の録音は、帯域幅およびダイナミックレンジに対する要求が低い、低性能アプリケーションである。しかしながら、このマイクロフォンは、この場合連続して動作しなければならず、こうしてこの携帯機器のバッテリーが枯渇しないようにするには、電力消費が重要となる。高品質ビデオの場合には、オーディオ品質は最も重要であるが、電力消費に対する要求は厳しくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、性能および電力消費を設定可能な電子回路およびマイクロフォンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、独立請求項の特徴によって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属項に記載されている。
【0005】
第1の態様によれば、本発明は、 マイクロフォン用の1つの電子回路によって特徴づけられる。この電子回路は、設定可能な分解能およびモードセレクタを有する、1つのシグマ−デルタ変調器を備える。このシグマ−デルタ変調器は、少なくとも2つの動作モードで選択的に動作可能である。このモードセレクタは、外部から供給される制御信号に依存して所望の動作モードを決定し、そしてこの決定された動作モードに応じてこのシグマ−デルタ変調器の分解能を選択するように構成されている。
【0006】
これは上記の電子回路が、必要なチップ面積、複雑さ、および電力商品の観点から、柔軟かつ経済的に再構成可能であるという利点を有する。このマイクロフォンの必要なチップ面積および電子回路の電力消費に主に寄与するデバイスは、前段増幅器、シグマ−デルタ変調器、およびパワーマネージメントユニットであり、このパワーマネージメントユニットは、たとえばバンドギャップ半導体、内部電圧レギュレータ、等を備えている。このシグマ−デルタ変調器は、2つ以上の動作モードで動作するように設計されている。このシグマ−デルタ変調器のダイナミックレンジは、動作モードに依存して異なる値に設定することができる。上記の設定可能な分解能は、信号対ノイズ比(SNR)に関係している。上記のモードセレクタは、外部の制御信号に依存して所望の動作モードを決定し、そして上記の電子回路の再構成可能な回路ユニット、具体的には上記のシグマ−デルタ変調器の動作モードを設定するように構成されている。このようにして、上記の性能および電力消費は、容易に与えられた仕様に合わせて調整することができる。
【0007】
上記の第1の態様の1つの実施形態によれば、上記のシグマ−デルタ変調器は、1つの第1のシグマ−デルタ変調器および1つの第2のシグマ−デルタ変調器を備え、ここでこの第1のシグマ−デルタ変調器とこの第2のシグマ−デルタ変調器とはカスケード接続可能である。このようにして様々な種類のシグマ−デルタ変調器を容易に構成することができる。
【0008】
上記の第1の態様のもう1つの実施形態によれば、上記のシグマ−デルタ変調器は、第1の動作モードおよび第2の動作モードで動作することができ、ここでこのシグマーデルタ変調器の第1の動作モードにおいては、上記の第1のシグマ−デルタ変調器のみかまたは上記の第2のシグマ−デルタ変調器のみが用いられて上記のシグマ−デルタ変調器の出力にデジタル出力信号がnビットの分解能で出力され、そして上記のシグマ−デルタ変調器の第2の動作モードにおいては、上記の第1のシグマ−デルタ変調器および上記の第2のシグマ−デルタ変調器がカスケード接続されて、上記のシグマ−デルタ変調器の出力に、デジタル出力信号がmビットの分解能で出力される。ここでmはnより大きい。この第2の動作モードにおいては、上記の第1のシグマ−デルタ変調器の出力に出力される第1の出力信号と上記の第2のシグマ−デルタ変調器の出力に出力される第2の出力信号とが結合される。このようにして上記の第2の動作モードにおいて、高次ノイズシェーピングが達成され、上記のシグマ−デルタ変調器の出力に出力されるデジタル出力信号の高い分解能を達成することができる。
【0009】
上記の第1の態様のもう1つの実施形態によれば、上記のシグマ−デルタ変調器は、上記の第1の動作モードと上記の第2の動作モードにおいて、異なるクロック周波数で動作するように構成されている。これは、さらにマイクロフォンのダイナミックレンジおよび電力消費を調整することを可能とする。
【0010】
上記の第1の態様のもう1つの実施形態によれば、上記のシグマ−デルタ変調器は、上記の第1の動作モードにおいては、上記の第2の動作モードにおけるよりも低いクロック周波数で動作するように構成されている。こうして、上記の第1の動作モードにおけるダイナミックレンジおよび電力消費をさらに低減することができる。
【0011】
上記の第1の態様のもう1つの実施形態によれば、上記の第1のシグマ−デルタ変調器および上記の第2のシグマ−デルタ変調器は、同じ変調器アーキテクチャを備える。このようにして開発コストおよび製造コストを低減することができる。
【0012】
上記の第1の態様のもう1つの実施形態によれば、上記の電子回路は、この電子回路の電気入力信号を処理するための1つの前段増幅器を備える。この前段増幅器は、1つの設定可能な電流源を備え、そして少なくとも2つの動作モードにおいて選択的に動作することが可能である。上記のモードセレクタは、上記の決定された動作モードに対応して、この前段増幅器の電源電流を選択するように構成されている。好ましくは、上記のシグマ−デルタ変調器が上記の低分解能モードで動作している場合に、この前段増幅器の電源電流は小さくなっている。これは上記の電子回路およびマイクロフォンの、ダイナミックレンジおよび電力消費をさらに調整することを可能とする。
【0013】
上記の第1の態様のもう1つの実施形態によれば、上記の電子回路は、上記のシグマ−デルタ変調器および/または上記の前段増幅器に、少なくとも1つの電源電圧を供給するための1つの設定可能なパワーマネージメントユニットを備える。このパワーマネージメントユニットは、少なくとも1つの設定可能な電源電圧を供給するように構成されており、そして少なくとも2つの動作モードで選択的に動作可能となっている。上記のモードセレクタは、上記のパワーマネージメントユニットから供給される少なくとも1つの電源電圧を、決定された動作モードに応じて選択するように構成されている。好ましくは、上記のパワーマネージメントユニットが供給する電源電圧あるいは複数の電源電圧は、上記のシグマ−デルタ変調器が低分化能モードで動作する場合に低くなっている。これは上記の電子回路およびマイクロフォンの、ダイナミックレンジおよび電力消費をさらに調整することを可能とする。
【0014】
上記の第1の態様のもう1つの実施形態によれば、上記のモードセレクタは、1つの周波数弁別器を備え、そして上記の外部から供給される制御信号はクロック信号である。これは上記の電子回路のコスト効率の良い製造を可能とするので、有利である。
【0015】
上記の第1の態様のもう1つの実施形態によれば、上記のモードセレクタは、1つのメモリを備え、このメモリは、上記のシグマ−デルタ変調器の分解能、および/または上記の前段増幅器の電源電流、および/または上記のパワーマネージメントユニットから供給される少なくとも1つの電源電圧を設定するように構成されている。
【0016】
1つの第2の態様によれば、本発明は、1つのトランスデューサ(MEMS)および上記の第1の態様による1つの電子回路を備えるマイクロフォンを特徴とする。
【0017】
この電子回路は、上述したどのような構造的特徴および機能的特徴を備えてもよい。上記の本発明によるマイクロフォンに関して説明した特徴はこの電子回路に関しても開示されているものであり、この逆もまた成立するものである。これはそれぞれの特徴が顕わにそれぞれの態様に関連して記述されていなくとも成立するものである。
【0018】
上記の第2の態様の1つの実施形態によれば、上記のトランスデューサは、微小電気機械システム技術で製造されている。このトランスデューサは、1つのキャパシタを備えてよい。具体的には、1つの音響入力信号は、このトランスデューサのキャパシタンスの変化を生じ得る。これよりこのマイクロフォンは、1つのコンデンサマイクロフォンすなわちキャパシタマイクロフォンであってよい。このトランスデューサは、1つのダイヤフラムおよび1つ以上のバックプレートを備えてよい。
【0019】
第3の態様によれば、本発明は、上記の第2の態様によるマイクロフォンを駆動する方法を特徴とし、この方法は上記の第1または第2のモードを選択するステップ、およびこの選択されたモードでこのマイクロフォンを駆動するステップを備える。
【0020】
さらなる特徴、変形例および実施例が、図に関連した例示的な実施形態の以下の説明で明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】1つのマイクロフォンの第1の例示的な実施形態のブロック図を示す。
【
図2】1つのマイクロフォンの第2の例示的な実施形態のブロック図を示す。
【0022】
図1は、1つの電子回路5を備える1つのマイクロフォン1の概略図を示す。電子回路5は、1つの特的用途向け電子回路(ASIC)であってよい。この電子回路5は、1つのダイとして製造されていてよい。
【0023】
マイクロフォンアセンブリ1は、1つの音響入力信号を1つの電気信号に変換するための1つのトランスデューサ10、具体的には1つのMEMSトランスデューサを備える。一例として、このトランスデューサ10は、シリコンまたはガリヒ素のような半導体材料を備えてよい。このトランスデューサ10は、1つのダイヤフラムおよび1つ以上のバックプレートを備えてよい。一例として、このダイヤフラムと1つのバックプレートとの間の距離は、1μm〜10μmの範囲にあってよい。このトランスデューサ10は、たとえば、1つの差動トランスデューサまたは1つのシングルエンドトランスデューサとして構成されていてよい。
【0024】
マイクロフォン1は、1つのMEMSダイ、および電子回路5を備える1つのASICダイを備えてよい。ここに示す電子回路5は、MEMSトランスデューサ以外のトランスデューサと共に使用することもできる。このマイクロフォン1は、たとえば、1つのヘッドセットに使用することができる。
【0025】
トランスデューサ10は、電子回路5に電気的に接続されている。具体的にはこの電子回路5は、トランスデューサ10の信号を処理することができる。
【0026】
電子回路5は、たとえば、1つの前段増幅器40,1つのフィルタ50,1つのシグマ−デルタ変調器20,1つのパワーマネージメントユニット60,および1つのモードセレクタ30を備える。
【0027】
シグマ−デルタ変調器20は、前段増幅器40によって、そして任意に追加のフィルタ50によって前段処理された信号を受信し、そして電子回路5の出力にデジタル出力信号DATAを出力する。
【0028】
シグマ−デルタ変調器20は、1つの設定可能な分解能を備え、そして少なくとも2つの動作モードにおいて、外部から供給される制御信号Ctrlに依存して、選択的に動作可能である。
【0029】
たとえば、このシグマ−デルタ変調器20は、1つの第1のシグマ−デルタ変調器21および1つの第2のシグマ−デルタ変調器22を備え、ここでこの第1のシグマ−デルタ変調器21およびこの第2のシグマ−デルタ変調器22はカスケード接続可能である。
【0030】
このシグマ−デルタ変調器20は、1つの多段ノイズシェーピング(MASH)アーキテクチャを備える。
【0031】
上記の第1のシグマ−デルタ変調器21および第2のシグマ−デルタ変調器22は、各々1つの2次変調器を備える。この第1および第2のシグマ−デルタ変調器21,22は、1つの2次連続時間シグマ−デルタ変調器を備える1つの連続時間シグマ−デルタ変調器として構成することができる。
【0032】
このような2次連続時間シグマ−デルタ変調器は、2つの変調器段211,212を備え、これらは各々1つのアナログ積分器と、入力信号およびフィードバック信号の様々な重み付け用の重み付け素子(複数)と、この入力信号とこのアナログ積分器の入力部でのこのフィードバック信号との差分信号を出力するための差分素子と、を備える。
【0033】
上記の第1のシグマ−デルタ変調器21および上記の第2のシグマ−デルタ変調器22は、たとえばその出力に1つの変換器出力を供給する1つのクロック制御の量子化器220、および上記のそれぞれの変調器段211,212の入力部に1つのアナログフィードバック信号を供給するための、1つのクロック制御のデジタルアナログ変換器230を備える。
【0034】
シグマ−デルタ変調器20の第1の動作モードにおいては、このシグマ−デルタ変調器20は、上記の第1のシグマ−デルタ変調器21のみが用いられて、このシグマ−デルタ変調器20の出力にnビットの分解能を有するデジタル出力信号DATAを出力するように構成されており、ここでこの分解能は上記のSNRに関係している。このようにしてたとえば−40dB/decのスロープを有する2次ノイズシェーピングが達成される。
【0035】
シグマ−デルタ変調器20の第2の動作モードにおいては、このシグマ−デルタ変調器20は、上記の第2のシグマ−デルタ変調器22と上記の第1のシグマ−デルタ変調器21とがカスケード接続されて、このシグマ−デルタ変調器20の出力にmビットの分解能を有するデジタル出力信号DATAを出力するように構成されており、ここでmはnより大きくなっている。このようにしてたとえば−80dB/decのスロープを有する4次ノイズシェーピングが達成される。
【0036】
この第2の動作モードにおいては、シグマ−デルタ変調器20のデジタル出力信号DATAの分解能は、上記の第1の動作モードにおけるものよりも高くなっている。この第2の動作モードにおいては、上記の第2のシグマ−デルタ変調器22の出力が上記の第1のシグマ−デルタ変調器21の入力にカップリングされている。さらにこの第2のシグマ−デルタ変調器22の出力に出力される第2の出力信号HMBと、この第1のシグマ−デルタ変調器21の出力に出力される第1の出力信号LMBとが、たとえば再結合フィルタ80によって結合されている。
【0037】
この再結合フィルタの目的は、上記の第2のシグマ−デルタ変調器22の量子化ノイズを、上記の第1のシグマ−デルタ変調器21の出力に基づいて相殺することである。
【0038】
上記の第1の出力信号LMBおよび上記の第2の出力信号HMBは、たとえば1ビット信号である。上記の再結合フィルタ80の出力でのビット数は、上記の動作モードに依存する。たとえば、第1の出力信号LMBのみが用いられる低分解能モードにおいては、上記の再結合フィルタ80は、この再結合フィルタ80の入力と同じものを出力する。これはこの再結合フィルタ80をバイパスすることによっても実現することができる。
【0039】
高分解能モードにおいては、上記の第1のシグマ−デルタ変調器21の出力および上記の第2のシグマ−デルタ変調器22の出力が共に上記の再結合フィルタ80に入力される。ただし、たとえば、5つの出力レベルがあるので、この出力は2ビットでなく実際は3ビットであり得るので、こうして3ビットが必要となる。これはこの再結合フィルタ80のフィルタ動作のためである。高分解モードにおいては、上記のSNRは改善される。これはこの変換器の量子化ノイズが、これらの2つの2次変換器によって4次ノイズシェーピングされるからである。
【0040】
さらにシグマ−デルタ変調器20は、異なるクロック周波数を有する第1の動作モードおよび第2の動作モードで動作するように構成されていてよい。これはマイクロフォン1の、ダイナミックレンジおよび電力消費をさらに調整することを可能とする。
【0041】
電子回路5のモードセレクタ30は、外部から供給される制御信号Ctrlに依存して、シグマ−デルタ変調器20の分解能を選択するように構成されている。
【0042】
電子回路5の前段増幅器40は、たとえばトランスデューサ10から供給される、この電子回路5の電気入力信号を処理するように構成されている。
【0043】
好ましくは、この前段増幅器40は、1つの設定可能な電流源を備え、そして外部から供給される制御信号Ctrlに依存して、少なくとも2つの動作モードで選択的に動作可能となっている。この観点から、モードセレクタ30は、さらに、選択された動作モードに依存して、この前段増幅器40の電源電流を選択するように構成されている。
【0044】
パワーマネージメントユニット60は、少なくとも1つの電源電圧VDD1,VDD2をシグマ−デルタ変調器20および/または前段増幅器40に供給するように構成されている。このパワーマネージメントユニット60は、少なくとも1つの設定可能な電源電圧VDD1,VDD2を供給するように構成されており、そして少なくとも2つの動作モードで選択的に動作可能となっている。この観点から、モードセレクタ30は、パワーマネージメントユニット60から供給される上記の少なくとも1つの電源電圧VDD1,VDD2を、決定された動作モードに応じて選択するように構成されている。
【0045】
このモードセレクタ30は、外部から供給される制御信号Ctrlに依存したモード制御信号opmodを出力することによって、電子回路5の所与の設定スイッチS1,S2,S3の設定を制御するように構成されている。この電子回路5は、上記の第1および第2のシグマ−デルタ変調器21,22をカップリングまたはデカップリングするためのこのような設定スイッチS1,S2,S3を備えてよく、そして前段増幅器40の電源電流を調整するための、この前段増幅器40の切り替え抵抗アレイ(
図1には不図示)における1つ以上の設定スイッチを備えてよい。
【0046】
上記の電子回路5および最終的に上記のマイクロフォン1は、高分解能モードであり得る第2のモードで動作可能となり、ここで上記のシグマ−デルタ変調器20のデジタル出力信号DATAの分解能は高くなっている。さらに上記の前段増幅器40の電源電流を増加することができ、こうして低ノイズで低歪みが実現される。このシグマ−デルタ変調器20は、さらに高い周波数、たとえば4MHzでクロッキングされてよい。これは4次のノイズシェーピングおよびより大きなSQNRをもたらすが、より大きな電流消費ももたらす。
【0047】
上記の電子回路5および最終的に上記のマイクロフォン1は、低電力モードであり得る第1のモードで動作可能となり、ここで上記のシグマ−デルタ変調器20のデジタル出力信号DATAの分解能は低くなっており、そして上記の前段増幅器の電源電流を低減することができ、たとえば上記の第2のモードと比較して20%低減することができる。このシグマ−デルタ変調器20は、低周波数、たとえば700kHzでクロッキングされてよい。これは2次のノイズシェーピングおよび低電力消費をもたらす。
【0048】
上記のモードセレクタ30は、1つの周波数弁別器を備えてよく、そして上記の外部から供給される制御信号Ctrlはクロック信号であってよい。この周波数弁別器は、所与の周波数閾値を用いて上記の第1および第2の動作モードを設定することができる。たとえば、上記のクロック信号の周波数がこの所与の周波数閾値よりも低ければ、このモードセレクタ30は、上記の第1の動作モードに設定してよい。たとえば、上記のクロック信号の周波数がこの所与の周波数閾値よりも高ければ、このモードセレクタ30は、上記の第2の動作モードに設定してよい。
【0049】
代替として、または追加として、上記のモードセレクタ30は、
図2に示すようにメモリ90を備えてよい。このメモリ90は、電子回路5を上記の第1または第2のモードに設定するように構成することができる。具体的には、このメモリ90は、これらのモードの1つを選択するためにプログラマブルであってよい。このメモリ90は、たとえば上記のシグマ−デルタ変調器20の分解能および/または上記の前段増幅器40の電源電流および/または上記のパワーマネージメントユニット60から出力される少なくとも1つの電源電圧VDD1,VDD2、を設定するように構成されている。
【0050】
このメモリ90は、1つの制御入力と1つのクロック入力を備えてよい。このメモリ90は、外部からこの制御入力にアクセスすることによって、具体的には1つの制御ピンを介して、プログラマブルとなっている。この制御入力に供給される入力信号に依存して、このメモリ90は、電子回路5を第1または第2のモードで動作するように切り替える。このメモリ90は、たとえば1つのワンタイムプログラマブルメモリを備える。
【符号の説明】
【0051】
1 : マイクロフォン
5 : 電子回路
10 : トランスデューサ
20 : シグマ−デルタ変調器
21 : 第1のシグマ−デルタ変調器
22 : 第2のシグマ−デルタ変調器
30 : モードセレクタ
40 : 前段増幅器
50 : フィルタ
60 : パワーマネージメントユニット
80 : 再結合フィルタ
90 : メモリ
211,212 : 変調器段
220 : 量子化器
230 : デジタルアナログ変換器
Ctrl : 制御信号
DATA : 電子回路のデジタル出力信号
HMB : 第2の出力信号
LMB : 第1の出力信号
opmode : モード制御信号
S1,S2,S3 : 設定スイッチ
VDD1,VDD2 : 電源電圧