(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の画素を有するとともに、動的に変化するフレーム期間ごとに画素電圧を前記画素に印加し、前記画素電圧を前記画素に印加する際に、前記動的に変化するフレーム期間ごとに第一のレベルと第二のレベルとのどちらかのレベルを採り得る極性反転信号に応じて前記画素電圧の極性を反転させる液晶パネルに対して、
前記極性反転信号が前記第一のレベルの時の前記動的に変化するフレーム期間を連続的に多数積算した積算値と前記極性反転信号が前記第二のレベルの時の前記動的に変化するフレーム期間を連続的に多数積算した積算値との差が小さくなるように前記極性反転信号の前記レベルを切り替える、
液晶表示用の極性反転制御装置であって、
垂直同期信号及びクロック信号を入力し、連続する二つの前記垂直同期信号で前記フレーム期間を特定し、特定された当該フレーム期間における前記クロック信号をカウントすることにより、前記フレーム期間を検出するフレーム期間検出部と、
このフレーム期間検出部によって検出された前記フレーム期間について、前記極性反転信号が前記第一のレベルの時の前記フレーム期間の積算値と前記極性反転信号が前記第二のレベルの時の前記フレーム期間の積算値との差である書き込み積算値を算出し、当該書き込み積算値に基づいて前記極性反転信号の前記レベルを切り替える書き込み積算値演算部と、
を備えたことを特徴とする液晶表示用の極性反転制御装置。
複数の画素を有するとともに、動的に変化するフレーム期間ごとに画素電圧を前記画素に印加し、前記画素電圧を前記画素に印加する際に、前記動的に変化するフレーム期間ごとに第一のレベルと第二のレベルとのどちらかのレベルを採り得る極性反転信号に応じて前記画素電圧の極性を反転させる液晶パネル、
を備えた液晶表示装置を駆動する方法であって、
垂直同期信号及びクロック信号を入力し、連続する二つの前記垂直同期信号で前記フレーム期間を特定し、特定された当該フレーム期間における前記クロック信号をカウントすることにより、前記動的に変化するフレーム期間を検出し、
検出した前記動的に変化するフレーム期間について、前記極性反転信号が前記第一のレベルの時の前記動的に変化するフレーム期間を連続的に多数積算した積算値と前記極性反転信号が前記第二のレベルの時の前記動的に変化するフレーム期間を連続的に多数積算した積算値との差が小さくなるように前記極性反転信号の前記レベルを切り替え、
切り替えた前記極性反転信号を前記液晶パネルへ供給する、
ことを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
複数の画素を有するとともに、動的に変化するフレーム期間ごとに画素電圧を前記画素に印加し、前記画素電圧を前記画素に印加する際に、前記動的に変化するフレーム期間ごとに第一のレベルと第二のレベルとのどちらかのレベルを採り得る極性反転信号に応じて前記画素電圧の極性を反転させる液晶パネル、
を備えた液晶表示装置を駆動するプログラムであって、
垂直同期信号及びクロック信号を入力し、連続する二つの前記垂直同期信号で前記フレーム期間を特定し、特定された当該フレーム期間における前記クロック信号をカウントすることにより、前記動的に変化するフレーム期間を検出する手順と、
検出した前記動的に変化するフレーム期間について、前記極性反転信号が前記第一のレベルの時の前記動的に変化するフレーム期間を連続的に多数積算した積算値と前記極性反転信号が前記第二のレベルの時の前記動的に変化するフレーム期間を連続的に多数積算した積算値との差が小さくなるように前記極性反転信号の前記レベルを切り替える手順と、
切り替えた前記極性反転信号を前記液晶パネルへ供給する手順と、
をコンピュータに実行させるための液晶表示装置の駆動プログラム。
【背景技術】
【0002】
一般的な液晶表示装置は、過去のCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイの流れを引き継ぎ、主に60Hz固定のfpsで駆動される。
【0003】
一方、ビデオゲーム等の動画は、ホストプロセッサ(主にGPU(Graphic Processer Unit))のレンダリング処理によって生成される。このレンダリング処理が完了する度に液晶表示装置へ出力される動画データのfpsは、固定ではなく動的に変化するとともに、エンドユーザの操作に同期させることもある。
【0004】
図21は、ビデオゲームの動画を表示する一般的な液晶表示装置及びその周辺の構成を示すブロック図である。
図21においてGPU102は、レンダリング処理を用いてビデオゲーム表示用の画像データ102aを生成する。また、GPU102は、エンドユーザ101の操作信号101aに同期したレンダリング処理を行うこともある。レンダリング処理のfpsは、固定ではなく動的に変化する。表示コントローラ103は、液晶パネルへ画像データを書き込むための信号処理装置であり、液晶パネル104へ向けて60Hz固定のfpsで画像データ103aを出力する。表示コントローラ103の一例としては、タイミングコントローラや電源回路を含む信号処理回路がある。液晶パネル104は、表示コントローラ103から入力した画像データ103aを動画として表示するものであり、ドライバ部品なども含む。液晶パネル104の一例としては、ソースドライバ及びゲートドライバを実装したTFTパネルがある。液晶表示装置100は、表示コントローラ103と液晶パネル104とを含むものである。
【0005】
このとき、動的に変化するfpsの画像データ102aを、固定されたfpsの画像データ103aに変換し、これを液晶パネル104に表示すると、両者のfpsのズレによって下記(1),(2),(3)のような不具合が発生する。これらの不具合はエンドユーザ101にとっては不快となる。
【0006】
(1)動画のいわゆるカクツキ。入力画像の表示速度が出力画像の表示速度に比べて早すぎる場合に、コマ落ちを起こすことにより、滑らかに動画を表示できなくなる現象である。
(2)フレーム・ティアリング。一画面の表示期間内に、二画面分以上の複数画面が表示されることにより、歪んで見えたり、ちらついて見えたりする現象である。
(3)ユーザ操作から表示までのタイムラグ。ユーザが操作してから液晶パネルに表示されるまでの時間遅れである。
【0007】
これらの不具合に対策を施した液晶表示装置(以下「関連技術1」という。)が既に市販されている(非特許文献1)。この関連技術1は、通常の液晶表示装置に比べて、部材点数が多くコストも高くなる。具体的に言えば、関連技術1は、通常の液晶表示装置に比べて、大規模FPGA(Field Programmable Gate Array)一つとメモリ三つが必要になるとともに、販売価格が1.5万円程度高くなる。
【0008】
関連技術1以外の技術で、前述の不具合を抑制するためには、入力したfpsに伴って表示用のfpsも動的に変化させることが考えられる(以下「関連技術2」という。)。ところが、関連技術2の場合は、液晶パネルへの充電極性の偏りが問題となる。
【0009】
すなわち、一般の液晶パネルでは、充電極性が偏ることで起こる焼き付き防止のため、1フレームごとに書き込み極性を反転させて駆動している。しかし、関連技術2では、異なるfpsのフレームを表示することにより、液晶パネルへの充電時間がフレームごとで異なるので、1フレームごとに書き込み極性を反転させても、充電極性が偏ってしまうのである。
【0010】
他の関連技術として特許文献1〜4について説明する。
【0011】
特許文献1は、表示パターンによって発生する液晶パネルの焼き付きを抑制するために、データ入力fpsの2倍のfpsで書き込む倍速駆動技術であり、画像データを一時保存する「フィールドメモリ」と、それを制御する「制御回路」と、「制御回路」の駆動に用いる同期信号を生成する「同期分離回路」とを必要とする。
【0012】
特許文献2〜4は、高fps駆動をした場合の電力消費を抑えるため、極性反転レートを低くして駆動することを特徴に含んだ技術であり、同期信号を検出してその数を計数する「カウンタ」を必要とする。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については同一の符号を用いる。
【0025】
<実施形態1>
図1は、実施形態1の液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態1の液晶表示装置11は、液晶パネル30と極性反転制御装置としての極性反転制御回路50とを備えている。
【0026】
極性反転制御回路50は、液晶パネル30に対して、極性反転信号POLを供給するものである。液晶パネル30は、複数の画素36を有するとともに、フレーム期間の異なる画素電圧Vdを画素36に印加し、画素電圧Vdを画素36に印加する際に、フレーム期間FPごとに第一のレベルと第二のレベルとのどちらかのレベルを採り得る極性反転信号POLに応じて、画素電圧Vdの極性を反転させる。そして、極性反転制御回路50は、極性反転信号POLが第一のレベルの時のフレーム期間FPの積算値と極性反転信号POLが第二のレベルの時のフレーム期間FPの積算値との差が小さくなるように、極性反転信号POLのレベルを切り替える。具体的には、次のような構成にしてもよい。
【0027】
極性反転制御回路50は、フレーム期間FPを検出するフレーム期間検出部51と、フレーム期間検出部51によって検出されたフレーム期間FPについて、極性反転信号POLが第一のレベルの時のフレーム期間FPの積算値と極性反転信号POLが第二のレベルの時のフレーム期間FPの積算値との差である書き込み積算値WTを算出し、書き込み積算値WTに基づいて極性反転信号POLのレベルを切り替える書き込み積算値演算部52と、を備えている。
【0028】
フレーム期間検出部51は、垂直同期信号VSYNC及びクロック信号としての基準クロック信号DCLKを入力し、連続する二つの垂直同期信号VSYNCでフレーム期間FPを特定し、特定されたフレーム期間FPにおける基準クロック信号DCLKをカウントすることにより、フレーム期間FPを検出する。
【0029】
書き込み積算値演算部52は、書き込み積算値WTが積算閾値0に達した場合に、極性反転信号POLのレベルを切り替える。積算閾値0は零の値である。このとき、書き込み積算値演算部52は、極性反転信号POLが第一のレベルの時のフレーム期間FPを正の値(+)、極性反転信号POLが第二のレベルの時のフレーム期間FPを負の値(−)として書き込み積算値WTを算出し、その書き込み積算値WTが正側(+)又は負側(−)から零の値(0)に達した場合に極性反転信号POLのレベルを切り替える。
【0030】
なお、第一のレベルをハイレベルかつ第二のレベルをローレベルとしてもよいし、第一のレベルをローレベルかつ第二のレベルをハイレベルとしてもよい。なぜなら、フレーム反転駆動の場合は、書き込み積算値WTが正側(+)から零の値(0)に達した場合に全ての画素36の画素電圧Vdが負側(−)から正側(+)に反転し、逆に書き込み積算値WTが負側(−)から零の値(0)に達した場合に全ての画素36の画素電圧Vdが正側(+)から負側(−)に反転すればよいからである。
【0031】
また、ドット反転駆動の場合は、書き込み積算値WTが正側(+)から零の値(0)に達した場合に各画素36ごとに画素電圧Vdが負側(−)から正側(+)又は正側(+)から負側(−)のどちらかに反転し、逆に書き込み積算値WTが負側(−)から零の値(0)に達した場合に各画素36ごとに画素電圧Vdが正側(+)から負側(−)又は負側(−)から正側(+)のどちらかに反転する。更にライン反転駆動の場合は、書き込み積算値WTが正側(+)から零の値(0)に達した場合に各ラインごとに画素電圧Vdが負側(−)から正側(+)又は正側(+)から負側(−)のどちらかに反転し、逆に書き込み積算値WTが負側(−)から零の値(0)に達した場合に各ラインごとに画素電圧Vdが正側(+)から負側(−)又は負側(−)から正側(+)のどちらかに反転する。ドット反転駆動とは、例えば上下左右隣り合うドットの画素電圧の極性が反転するように電圧を書き込む駆動方法である。ライン反転駆動とは、例えば隣り合うラインの画素電圧の極性が反転するように電圧を書き込む駆動方法である。
【0032】
次に、本実施形態1について更に詳しく説明する。なお、以下の説明では、画像入力開始後n番目のフレーム(第nフレーム)を基準とする。また、第一のレベルをハイレベルかつ第二のレベルをローレベルとし、かつフレーム反転駆動とする。
【0033】
換言すると、液晶表示装置11は、表示コントローラ21と液晶パネル30とを備えている。表示コントローラ21は、表示制御信号生成回路40と極性反転制御回路50とを有する。液晶パネル30は、複数の画素36を有するとともに、フレーム期間FPの異なるデータ信号dataを連続して入力し、データ信号dataに対応する画素電圧Vdを画素36に印加し、極性反転信号POLに応じて画素電圧Vdの極性を反転させる機能を有する。表示コントローラ21は、正の極性の画素電圧Vdを印加する時間と負の極性の画素電圧Vdを印加する時間とが等しくなるように極性反転信号POLを生成し、その極性反転信号POLを液晶パネル30へ出力する。
【0034】
ホストプロセッサ60の概念には、前述したGPUを含む。ホストプロセッサ60からは、データ信号data、垂直同期信号VSYNC、基準クロック信号DCLKが出力される。データ信号dataはソースドライバ33へ、垂直同期信号VSYNC及び基準クロック信号DCLKは表示制御信号生成回路40へ、それぞれ出力される。データ信号dataは、ソースドライバ33へ直接出力されるのではなく、表示制御信号生成回路40を経由してソースドライバ33へ出力されるようにしてもよい。
【0035】
液晶パネル30は、ゲートドライバ31、ソースドライバ33及び画素部35を有する。画素部35は複数の画素36を有する。画素36において、ゲートドライバ31からゲート線32に供給される走査信号により、ソースドライバ33からソース線34に供給される画像信号の書き込み(画素電圧Vd)が制御される。
【0036】
表示制御信号生成回路40は、ホストプロセッサ60から入力される同期信号をもとに、ゲートドライバ31及びソースドライバ33を動作させるための信号を出力する回路である。同期信号としては、例えば、水平同期信号HSYNC(図示せず)、垂直同期信号VSYNC、基準クロック信号DCLKがある。
【0037】
ゲートドライバ31を動作させるための信号としては、ゲート線側スタートパルスGSP、ゲート線側クロック信号GCLK等がある。なお、ゲート線側クロック信号GCLKの概念は、基準クロック信号DCLKの位相をシフトすることで複数のゲート線側クロック信号となったものを含む。
【0038】
ソースドライバ33を動作させるための信号としては、ソース線側スタートパルスSSP、ソース線側クロック信号SCLK等がある。なお、ソース線側クロック信号SCLKの概念は、基準クロック信号DCLKの位相をシフトすることで複数のソース線側クロック信号となったものを含む。
【0039】
また、ソースドライバ33には、外部からデータ信号data、極性反転制御回路50から極性反転信号POLがそれぞれ供給される。ソースドライバ33は、極性反転信号POLに基づいて、データ信号dataをアナログ値の画像信号に変換する。この変換は、例えばラダー抵抗回路とスイッチとを組み合わせた回路で行えばよく、同時にγ補正等を行う構成とすればなおよい。
【0040】
なお、ソースドライバ33におけるこの機能を有する回路は、入力する極性反転信号POLに従って、画素36へ出力する画像信号の極性を反転可能な回路であればどのようなものでもよい。例えば、極性反転信号POLに従って、画素36へ出力する画像信号の極性を反転させる反転アンプを用いてもよい。
【0041】
極性反転信号POLは、データ信号dataをアナログ値の画像信号に変換する際、コモン電位に対して高い電位(正の極性)とするか、低い電位(負の極性)とするかを決定する信号である。
【0042】
画像信号は、データ信号dataに基づいた電位である。画像信号は、ソース線34を介して液晶素子の一方の電極に印加される電位(画素電圧Vd)からなる。液晶素子への画像信号の印加は、画素36への画像信号の書き込みともいう。液晶表示装置11に入力されるデータ信号dataが一定であれば、画像信号の電位とコモン電圧の電位との差の絶対値も一定となる。
図2を用いて説明する。
図2において画像信号の電位Vd1,Vd2,Vd3はそれぞれ異なる電位であるが、それらに対応するコモン電圧Vcomの電位との差|Vd|は全て一定である。よって、画像信号の電位Vd1,Vd2,Vd3はそれぞれ同じデータ信号の値(画素電圧Vd)を示す。
【0043】
なお、画像信号は、画像信号の電位がコモン電圧の電位よりも高い場合、液晶素子に正の極性の画像信号が印加されるという。逆に、画像信号の電位がコモン電圧の電位よりも低い場合、液晶素子に負の極性の画像信号が印加されるという。
【0044】
極性反転制御回路50は、フレーム期間検出部51と、書き込み積算値演算部52と、フレーム期間レジスタ54及び書き込み積算値レジスタ55を有するレジスタ53とからなる。
【0045】
フレーム期間検出部51は、ホストプロセッサ60より入力した垂直同期信号VSYNCの周期をフレーム期間FPとして検出しつつ、その検出結果をフレーム期間レジスタ54へ格納する。ここでフレーム期間FPとは、液晶パネル30に1フレーム分の画像を表示する期間のことであり、fpsの逆数となる。
【0046】
また、極性反転信号POLがハイレベルの時のフレーム期間FPは正(+)の数値として扱い、極性反転信号POLがローレベルの時のフレーム期間FPは負(−)の数値として扱うこととする。
【0047】
フレーム期間FP及び書き込み積算値WTについて、
図3に示す。書き込み積算値演算部52は、現在書き込んでいるフレームを第nフレームとしたとき、第n−1フレームまでの各フレーム期間FPを積算し、その値を書き込み積算値WTとして書き込み積算値レジスタ55へ格納する。ここで、フレーム期間FPは上述のように正負の数値として積算される。例えば、入力画像のfpsが一定である場合の書き込み積算値WTは、上記n−1が偶数であれば正のフレーム数と負のフレーム数とが同数となるので相殺されて0(ゼロ)となり、上記n−1が奇数であれば最後の1フレーム分が残ってフレーム期間FPと等しくなる。
【0048】
書き込み積算値演算部52からは、極性反転信号POLが出力される。極性反転信号POLの値は、書き込み積算値WTの符号によってハイレベルかローレベルかが決まる。すなわち、書き込み積算値WTが負の値の場合はハイレベルの極性反転信号POLが出力され、書き込み積算値WTが正の値の場合はローレベルの極性反転信号POLが出力される。ただし、これとは逆に、書き込み積算値WTが負の値の場合はローレベルの極性反転信号POLが出力され、書き込み積算値WTが正の値の場合はハイレベルの極性反転信号POLが出力されるとしてもよい。
【0049】
次に、液晶表示装置11の動作について詳しく説明する。
【0050】
図4は、液晶表示装置11の動作を示すタイミング図である。
図4では、第n−1フレーム、第nフレーム、第n+1フレームにおける、同期信号(基準クロック信号DCLK及び垂直同期信号VSYNC)、フレーム期間検出部51の動作状態、フレーム期間レジスタ54の値、書き込み積算値演算部52の演算内容、書き込み積算値レジスタ55の値、極性反転信号POLの状態、液晶パネル30への書き込み状態を示している。
【0051】
前述したように、書き込み積算値演算部52は、書き込み積算値WTを用いて、極性反転信号POLをハイレベルとするかローレベルとするかを決めている。ソースドライバ33は、極性反転信号POLを受けて、そのハイレベル/ローレベルに従った極性で、液晶パネル30へ画像信号を書き込む。
【0052】
フレーム期間FPは、垂直同期信号VSYNCの立ち上がり(又は立ち下がり)から次の垂直同期信号VSYNCの立ち上がり(又は立ち下がり)までの期間に入力した基準クロック信号DCLKの立ち上がり(又は立ち下がり)を計数することで検出する。また、検出中のフレーム期間FPの値は、基準クロック信号DCLKの立ち上がり(又は立ち下がり)を基準にフレーム期間レジスタ54へ順次保持される。
【0053】
書き込み積算値WTは、第n−1フレームまでの各フレーム期間FPの積算値に第nフレームのフレーム期間FPを加算することで得られる。フレーム期間FPはフレーム期間レジスタ54へ順次保持される値であるから、これに基づき書き込み積算値WTの値も順次演算される。書き込み積算値WTの演算結果は、基準クロック信号DCLKの立ち上がり(又は立ち下がり)を基準に、書き込み積算値レジスタ55へ順次保持される。
【0054】
極性反転信号POLは、前述したように、書き込み積算値レジスタ55の値に従ってその状態が決定される。例えば、書き込み積算値レジスタ55に保持されている書き込み積算値WTが負の値である場合にハイレベルの極性反転信号POLが出力され、書き込み積算値WTが正の値である場合にローレベルの極性反転信号POLが出力される。
【0055】
液晶パネル30への書き込み状態は、極性反転信号POLの出力状態に従って決定される。例えば、極性反転信号POLの出力状態がローレベルである場合の書き込みはコモン電圧に対して低い電位(負の極性)で行われ、極性反転信号POLの出力状態がハイレベルの場合の書き込みはコモン電圧に対して高い電位(正の極性)で行われる。以上の関係をまとめると、「書き込み積算値WTが正→極性反転信号POLがローレベル(フレーム期間FPが負)→書き込み極性が負」、「書き込み積算値WTが負→極性反転信号POLがハイレベル(フレーム期間FPが正)→書き込み極性が正」、となる。
【0056】
換言すると、「書き込み積算値」とは、今書き込もうとしているフレームの1つ前のフレームまでの積算値のことである。「書き込み極性」とは、今書き込もうとしているフレームの書き込み極性のことである。また、「正極性の書き込み」及び「負極性の書き込み」という表現は、反転駆動方式によって着目すべき画素が異なる。例えば、ドット反転駆動の場合は着目した1画素あたり、ライン(ゲート又はドレイン)反転駆動の場合は着目した1ゲート線又はデータ線あたり、フレーム反転駆動の場合は全画素あたり、ということである。
【0057】
前述の動作における書き込み積算値レジスタ55の値(書き込み積算値WT)の符号と液晶パネル30への書き込み極性との関係を、
図5に示す。単純なイメージとして説明すれば、本実施形態1では「書き込み積算値レジスタの値=0」を積算閾値0として、「書き込み積算値レジスタの値>0」の範囲では負の極性で、「書き込み積算値レジスタの値<0」の範囲では正の極性で書き込むように動作する。
【0058】
なお、極性反転信号POLは、前述した動作と逆の論理であってもよい。すなわち、書き込み積算値レジスタ55に保持されている値が負である場合にローレベルの極性反転信号POLを出力し、書き込み積算値レジスタ55に保持されている値が正である場合にハイレベルの極性反転信号POLを出力してもよい。
【0059】
液晶パネル30への書き込み状態も、前述した動作と逆の論理であってもよい。すなわち、極性反転信号POLの出力状態がハイレベルである場合はコモン電圧に対して低い電位(負の極性)で書き込み、極性反転信号POLの出力状態がローレベルの場合はコモン電圧に対して高い電位(正の極性)で書き込んでもよい。
【0060】
本実施形態1のように動作することで、入力fpsが動的に変化した場合でも、そのfpsのまま液晶パネル30へ画像信号を書き込むことができるため、前述した不都合(1),(2),(3)の全てを抑制できる上、液晶パネル30への充電極性の偏りを防ぐことができる。
【0061】
フレーム数とフレーム期間及び書き込み積算値との関係について、
図6に本実施形態1のグラフを示し、
図7に比較例のグラフを示す。各グラフにおいて、横軸は書き込んだフレーム数である。左縦軸は各フレームのフレーム期間FPを示し、フレーム期間FPは棒グラフに対応する。右縦軸は書き込み積算値WTを示し、書き込み積算値WTは折れ線グラフに対応する。
図7の比較例では、関連技術2と同様に、1フレームごとに交互に書き込み極性を反転させている。
【0062】
図6及び
図7から明らかなように、本実施形態1は、比較例に比べて、書き込み積算値WTの偏りが発生していないことが分かる。すなわち、本実施形態1によれば、液晶パネル30への充電極性の偏りを抑制できるという効果を奏する。
【0063】
液晶パネル30への充電極性の偏りを抑制できるという点に限れば、特許文献1で示された倍速駆動を利用した場合と同等である。しかし、この効果を得るために、特許文献1では「フィールドメモリ」、「同期分離回路」、「制御回路」等の回路構成が必要となるのに対し、本実施形態1の回路構成では「制御回路」のみがあればよい。すなわち、本実施形態1によれば、倍速駆動よりも小規模の回路で前述の不都合(1),(2),(3)を抑制でき、かつ、液晶パネル30への充電極性の偏りも抑制できることで、液晶パネル30の劣化も防ぐことができる。
【0064】
更に、特許文献1では、入力fpsの2倍の速度で液晶パネルに書き込むため、一般的な液晶表示装置に比べて約2倍程度の消費電力が必要になる。これに対して、本実施形態1によれば、入力fpsと同じ速度又はそれ以下で液晶パネルへ書き込むため、消費電力の増加量を、特許文献1の場合に比べて少なく抑えることができる。
【0065】
以上のように、本実施形態1によれば、正の極性の画素電圧Vdを印加する時間と負の極性の画素電圧Vdを印加する時間とが等しくなるように極性反転信号POLを生成することにより、メモリデバイス等の追加が不要であるため部材点数の増加を抑えつつ、かつ倍速での極性反転も不要であるため消費電力の増大を抑えつつ、充電極性の偏らないフレームごとの書き込み極性を実現できるので、液晶パネル30の焼き付きを防止できる。
【0066】
本実施形態1における極性反転制御装置は、極性反転制御回路50として表示コントローラ21内に設けているが、液晶パネル30側に設けてもよく、ホストプロセッサ60側に設けてもよい。
【0067】
本実施形態1における液晶表示装置の駆動方法は、極性反転制御回路50の動作を方法の発明として捉えたものである。すなわち、本実施形態1における駆動方法は、液晶パネル30を備えた液晶表示装置11を駆動する方法であって、フレーム期間FPを検出し、検出したフレーム期間FPについて、極性反転信号POLが第一のレベルの時のフレーム期間FPの積算値と極性反転信号POLが第二のレベルの時のフレーム期間FPの積算値との差が小さくなるように極性反転信号POLのレベルを切り替え、切り替え極性反転信号POLを液晶パネル30へ供給する、ことを特徴とする。
【0068】
本実施形態1における液晶表示装置の駆動プログラムは、極性反転制御回路50の動作をプログラムの発明として捉えたものである。すなわち、本実施形態1における駆動プログラムは、液晶パネル30を備えた液晶表示装置11を駆動するプログラムであって、フレーム期間FPを検出する手順と、検出したフレーム期間FPについて、極性反転信号POLが第一のレベルの時のフレーム期間FPの積算値と極性反転信号POLが第二のレベルの時のフレーム期間FPの積算値との差が小さくなるように極性反転信号POLのレベルを切り替える手順と、切り替えた極性反転信号POLを液晶パネル30へ供給する手順と、をコンピュータに実行させるためのものである。このコンピュータとしては、例えばFPGAやDSP(digital signal processor)などが挙げられる。本プログラムは、非一時的な記録媒体(non-transitory storage medium)、例えば光ディスク、半導体メモリなどに記録されてもよい。その場合、本プログラムは、記録媒体からコンピュータによって読み出され、実行される。
【0069】
本実施形態1の駆動方法及び駆動プログラムのその他の構成は、本実施形態1の極性反転制御装置の構成に準ずる。
【0070】
次に、本実施形態1を更に具体化した実施例について説明する。
【0071】
図8A、
図9A、
図9B及び
図10は実施形態1の実施例を示す。
図8Aは、垂直同期信号VSYNC、フレーム期間FP、書き込み積算値WT及び極性反転信号POLを示すタイミング図である。
図9Aは、フレーム期間検出部の動作を示すフロー図である。
図9Bは、書き込み積算値演算部の動作の前半を示すフロー図である。
図10は、書き込み積算値演算部の動作の後半を示すフロー図である。以下、これらの図面に
図1を加えて、更に詳しく説明する。
【0072】
図1、
図8A及び
図9Aに基づき、フレーム期間検出部51の動作の一例を説明する。
図8Aに示すように、垂直同期信号VSYNCはホストプロセッサ60から間欠的に出力される。このとき、フレーム期間検出部51は次のように動作する。まず、垂直同期信号VSYNCを入力したか否かを判断し(ステップS11)、垂直同期信号VSYNCを入力したら、検出したフレーム期間FPをフレーム期間レジスタ54へ書き込み(ステップS12)、フレーム期間FPを「0」にリセットする(ステップS13)。垂直同期信号VSYNCを入力しなければ、又はフレーム期間FPを「0」にリセットしたら、フレーム期間FPに「1」を加えてステップS11へ戻る。この「1」は、基準クロック信号DCLKから得られる単位時間に相当する。すなわち、
図8Aに示す垂直同期信号VSYNC及びフレーム期間FPのように、フレーム期間検出部51は垂直同期信号VSYNCからフレーム期間FPを検出する。
【0073】
図1、
図8A及び
図9Bに基づき、書き込み積算値演算部52の動作の一例の前半を説明する。書き込み積算値演算部52は次のように動作する。n番目の垂直同期信号VSYNCによってフレーム期間検出部51からフレーム期間レジスタ54へ書き込まれたフレーム期間FPを、例えばn番目の垂直同期信号VSYNCをトリガとして、フレーム期間レジスタ54から読み出す(ステップS21)。そして、現在出力中の極性反転信号POLがハイレベルであるか否かを判断する(ステップS22)。極性反転信号POLがハイレベルであれば、符号Sを「1」にする(ステップS23)。極性反転信号POLがハイレベルでなければ、ローレベルであるから符号Sを「−1」にする(ステップS24)。そして、書き込み積算値レジスタ55から書き込み積算値WTを読み出し、演算式「WT←WT+FP×S」によって新たな書き込み積算値WTを求め、その新たな書き込み積算値WTを書き込み積算値レジスタ55に書き込む(ステップS25)。
図8Aに示す書き込み積算値WTのように、書き込み積算値演算部52は、極性反転信号POLがハイレベルの時のフレーム期間FPの積算値と極性反転信号POLがローレベルの時のフレーム期間FPの積算値との差である書き込み積算値WTを算出する。
【0074】
図1及び
図8A及び
図10に基づき、書き込み積算値演算部52の動作の一例の後半を説明する。続いて、書き込み積算値演算部52は次のように動作する。まず書き込み積算値レジスタ55から書き込み積算値WTを読み出し、出力中の極性反転信号POLがハイレベルかつ書き込み積算値WTが0以上であるか否かを判断する(ステップS31)。極性反転信号POLがハイレベルかつ書き込み積算値WTが0以上であれば、書き込み積算値WTが負側から積算閾値0に達したことになるので、極性反転信号POLをハイレベルからローレベルに切り替える(ステップS32)。極性反転信号POLがハイレベルかつ書き込み積算値WTが0以上でなければ、極性反転信号POLがローレベルかつ書き込み積算値WTが0以下であるか否かを判断する(ステップS33)。極性反転信号POLがローレベルかつ書き込み積算値WTが0以下であれば、書き込み積算値WTが正側から積算閾値0に達したことになるので、極性反転信号POLをローレベルからハイレベルに切り替える(ステップS34)。極性反転信号POLがローレベルかつ書き込み積算値WTが0以下でなければ、書き込み積算値WTが積算閾値0に達していないことになるので、極性反転信号POLを切り替えずにそのままとする。最後に、切り替えた又はそのままとした極性反転信号POLを出力する(ステップS35)。
図8Aに示す書き込み積算値WT及び極性反転信号POLのように、書き込み積算値演算部52は、書き込み積算値WTが正側(+)又は負側(−)から零の値(0)に達した場合に、極性反転信号POLのレベルを切り替える。
【0075】
なお、
図9AのステップS11で垂直同期信号VSYNCを入力してから
図10のステップS35で極性反転信号POLを出力するまでには、ある程度の時間差が存在する。しかし、その値は僅かであるので、
図8Aでは垂直同期信号VSYNCの入力と極性反転信号POLの出力とを同時に描いている。また、動作開始時の初期値は、フレーム期間FP及び書き込み積算値WTがそれぞれ「0」、極性反転信号POLがハイレベルであるとする。
図10において、ステップS31,S32を先、ステップS33,S34を後として説明したが、これとは逆にステップS33,S34を先、ステップS31,S32を後としてもよい。
【0076】
また、
図9A、
図9B及び
図10のフロー図に従って、本実施形態1の駆動プログラムを作成することもできる。また、
図9A、
図9B及び
図10のフロー図をハードウェア記述言語(HDL:Hardware Description Language)で表現することにより、本実施形態1の極性反転制御回路50を設計することもできる。
【0077】
<実施形態2>
次に、実施形態2の液晶表示装置について説明する。
図11は、実施形態2の液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【0078】
本実施形態2の液晶表示装置12は、クロック信号としての内部クロック信号CLKを生成するクロック信号生成部としての内部クロック発振器62を更に備えている。詳しく言えば、表示コントローラ22が内部クロック発振器62を搭載し、フレーム期間検出部51及び書き込み積算値演算部52が基準クロック信号DCLKを入力せずに内部クロック発振器62から内部クロック信号CLKを入力する構成としている。すなわち、フレーム期間検出における基準クロック信号DCLKの役割を、内部クロック信号CLKで代用する構成である。内部クロック発振器62は、例えば水晶振動子及びその発振回路などからなる。本実施形態2における極性反転制御装置、液晶表示装置、その駆動方法及び駆動プログラムのその他の構成については、実施形態1のそれらと同じである。
【0079】
図12に、本実施形態2の動作を説明するタイミング図を示す。基準クロック信号が内部クロック信号に置き換わっている点を除き、その動作は実施形態1と同様である。
【0080】
本実施形態2によれば、基準クロック信号DCLKを外部から極性反転制御回路50へ入力することが不可能な場合でも、内部クロック信号CLKで代用できるので、実施形態1と同様の作用及び効果を奏する。
【0081】
<実施形態3>
次に、実施形態3の液晶表示装置について説明する。
図13は、実施形態3の液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【0082】
本実施形態3の液晶表示装置13では、表示コントローラ23のフレーム期間検出部51及び書き込み積算値演算部52において、垂直同期信号VSYNCをホストプロセッサ60側から直接入力するのではなく表示制御信号生成回路40を介して入力する。本実施形態3における極性反転制御装置、液晶表示装置、その駆動方法及び駆動プログラムのその他の構成については、実施形態1のそれらと同じである。
【0083】
極性反転制御回路50は、垂直同期信号VSYNCを外部から入力することが不可能な場合でも、垂直同期信号VSYNCを表示制御信号生成回路40から入力できる。したがって、本実施形態3によれば実施形態1と同様の作用及び効果を奏する。
【0084】
<実施形態4>
次に、実施形態4の液晶表示装置について説明する。
図14は、実施形態4の液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【0085】
本実施形態4の液晶表示装置14における極性反転信号POLは、書き込み積算値演算部52からソースドライバへ直接出力されるのではなく、書き込み積算値演算部52から表示制御信号生成回路40を介してソースドライバ33へ出力される。本実施形態4における極性反転制御装置、液晶表示装置、その駆動方法及び駆動プログラムのその他の構成については、実施形態1のそれらと同じである。
【0086】
極性反転制御回路50は、極性反転信号POLをソースドライバ33へ直接出力することが不可能な場合でも、極性反転信号POLを表示制御信号生成回路40を介してソースドライバ33へ出力できる。したがって、本実施形態4によれば実施形態1と同様の作用及び効果を奏する。
【0087】
<実施形態5>
次に、実施形態5の液晶表示装置について説明する。
図15は、実施形態5の液晶表示装置の動作を示すタイミング図である。
【0088】
本実施形態5の液晶表示装置では、極性反転信号POLを切り替えるタイミングを遅らせる。詳しく言えば、本実施形態5では、極性反転信号POLを切り替える際に用いる書き込み積算値WTを「(第n−1フレームまでの各フレーム期間FPの積算値)+(第nフレームのフレーム期間)」とするのではなく、「(第n−mフレームまでの各フレーム期間FPの積算値)+(第n−m+1フレームのフレーム期間FP)」とする。ここで、n,mはn>m>0を満たす整数である。タイミングを遅らせるには、例えば数ms遅らせるというように時間そのもので遅らせてもよいし、数フレーム分遅らせるというようにフレーム数で遅らせてもよい。本実施形態5によれば、ある時点より以前で任意の期間における書き込み積算値WTでも極性反転信号POLの判断に用いることができる。
【0089】
次に、本実施形態5を更に具体化した実施例について説明する。
【0090】
図16Aは、実施形態5の実施例における垂直同期信号、フレーム期間、書き込み積算値及び極性反転信号を示すタイミング図である。本実施例は、m=2の場合すなわち極性反転信号POLを切り替えるタイミングを1フレーム遅らせる場合である。
【0091】
図16Aに示す本実施例では、第nフレーム期間FPで書き込み積算値WTが正側(+)から積算閾値0に達した場合に第n+2フレーム期間FPの立ち上がりで極性反転信号POLがローレベルからハイレベルに遷移し、逆に第nフレーム期間FP書き込み積算値WTが負側(−)から積算閾値0に達した場合に第n+2フレーム期間FPの立ち上がりで極性反転信号POLがハイレベルからローレベルに遷移する。
【0092】
図17Aは、実施形態5の実施例におけるフレーム期間検出部の動作を示すフロー図である。
図17Bは、実施形態5の実施例における書き込み積算値演算部の動作の後半(一部)を示すフロー図である。
図17Aでは、
図9Aにおける「垂直同期信号VSYNCを入力したか否かを判断するステップS11」が、「第n垂直同期信号VSYNCを入力したか否かを判断するステップS11a」に置き換わる点が示されている。
図17Bでは、
図10における「極性反転信号POLを出力するステップS35」の前に、「第n+1垂直同期信号VSYNCを入力するステップS35a」が挿入される点が示されている。その他のステップSは、
図9A、
図9B及び
図10に示す実施形態1と同じである。
【0093】
図16Aの本実施例と
図8Aの実施形態1とで、垂直同期信号VSYNC及びフレーム期間FPは同一である。
図16Aの本実施例と
図8Aの実施形態1とで、両方とも極性反転信号POLのハイレベルHとなる時間とローレベルLとなる時間とが等しくなるものの、極性反転信号POLの切り替え頻度は
図16Aの本実施例の方が少なくなる。その理由は、極性反転信号POLを切り替えるタイミングを1フレーム遅らせることにより、書き込み積算値WTの絶対値が1フレーム分多くなるので、積算閾値0に達するまでの時間が長くなるからである。
【0094】
したがって、本実施例によれば、極性反転信号POLの切り替え頻度を低減できるので、書き込み極性の反転を低減でき、これにより省電力化を達成できる。また、
図17Aの「第n垂直同期信号VSYNCを入力したか否かを判断するステップS11a」から
図17Bの「極性反転信号POLを出力するステップS35」までの時間差(1フレーム分)が十分にあるので、その点において高速化が要求されないという利点もある。
【0095】
本実施形態5における極性反転制御装置、液晶表示装置、その駆動方法及び駆動プログラムのその他の構成、作用及び効果については、実施形態1のそれらと同様である。
【0096】
<実施形態6>
次に、実施形態6の液晶表示装置について説明する。
図18は、実施形態6における書き込み積算値レジスタの符号と液晶パネルへの書き込み極性との関係を示す説明図である。
【0097】
本実施形態6の液晶表示装置では、積算閾値が正側閾値t+と負側閾値t−とからなり、書き込み積算値WTが正側から負側閾値t−に達した場合又は書き込み積算値WTが負側から正側閾値t+に達した場合にのみ、極性反転信号POLのレベルを切り替える。
【0098】
換言すると、本実施形態6の液晶表示装置では、書き込み極性を判断する閾値を「書き込み積算値レジスタの値=0」とせず、正側及び負側にそれぞれ「t+」及び「t−」という任意の値で設定している。これらの正側閾値t+及び負側閾値t−を用いた場合の書き込み極性の判定は、次のようになる。すなわち、「書き込み積算値レジスタの値>t+」の範囲では負の極性で、「書き込み積算値レジスタの値<t−」の範囲では正の極性で、「t−<書き込み積算値レジスタの値<t+」の範囲では第n−1フレームでの極性から変更せず、それぞれ液晶パネルへ書き込むように動作する。
【0099】
図19Aは実施形態1における書き込み積算値WTと極性反転信号POLとの関係を示すグラフである。
図19Bは本実施形態6における書き込み積算値WTと極性反転信号POLとの関係を示すグラフである。
図19Aに示す実施形態1では、書き込み積算値WTが正側(+)から積算閾値0に達した場合に極性反転信号POLがローレベルからハイレベルに遷移し、逆に書き込み積算値WTが負側(−)から積算閾値0に達した場合に極性反転信号POLがハイレベルからローレベルに遷移する。これに対し、
図19Bに示す本実施形態6では、書き込み積算値WTが正側(+)から積算閾値0を過ぎて負側閾値t−に達してから極性反転信号POLがローレベルからハイレベルに遷移し、逆に書き込み積算値WTが負側(−)から積算閾値0を過ぎて正側閾値t+に達してから極性反転信号POLがハイレベルからローレベルに遷移する。
【0100】
図20は、実施形態6における書き込み積算値演算部の動作を示すフロー図である。
図20では、
図10における「極性反転信号POLがハイレベルかつ書き込み積算値WTが0以上であるか否かを判断するステップS31」及び「極性反転信号POLがローレベルかつ書き込み積算値WTが0以下であるか否かを判断するステップS33」が、それぞれ「極性反転信号POLがハイレベルかつ書き込み積算値WTがt+以上であるか否かを判断するステップS41」及び「極性反転信号POLがローレベルかつ書き込み積算値WTがt−以下であるか否かを判断するステップS43」に置き換わる点が示されている。その他のステップSは、
図9A、
図9B及び
図10に示す実施形態1と同じである。なお、実施形態1と同様に、
図20において、ステップS43,S34を先、ステップS41,S32を後としてもよい。
【0101】
図8Bは、実施形態6における垂直同期信号VSYNC、フレーム期間FP、書き込み積算値WT及び極性反転信号POLの一例を示すタイミング図である。
図8Aの実施形態1と
図8Bの本実施形態6とで、垂直同期信号VSYNC及びフレーム期間FPは同一である。
図8Aの実施形態1と
図8Bの本実施形態6とで、両方とも極性反転信号POLのハイレベルHとなる時間とローレベルLとなる時間とが等しくなるものの、極性反転信号POLの切り替え頻度は
図8Bの本実施形態6の方が少なくなる。
【0102】
したがって、本実施形態6によれば、極性反転信号POLの切り替え頻度を低減できるので、書き込み極性の反転を低減でき、これにより省電力化を達成できる。
【0103】
次に、本実施形態6を更に具体化した実施例について説明する。
【0104】
図16Bは、実施形態6の実施例における垂直同期信号、フレーム期間、書き込み積算値及び極性反転信号を示すタイミング図である。本実施例は、実施形態6に実施形態5を組み合わせた構成であり、実施形態6においてm=1の場合すなわち極性反転信号POLを切り替えるタイミングを1フレーム遅らせる場合である。
【0105】
図16Bに示す本実施例では、第nフレーム期間FPで書き込み積算値WTが正側(+)から積算閾値0を過ぎて負側閾値t−に達してから第n+2フレーム期間FPの立ち上がりで極性反転信号POLがローレベルからハイレベルに遷移し、逆に第nフレーム期間FPで書き込み積算値WTが負側(−)から積算閾値0を過ぎて正側閾値t+に達してから第n+2フレーム期間FPの立ち上がりで極性反転信号POLがハイレベルからローレベルに遷移する。
【0106】
図16Bの本実施例と
図8Bの実施形態6とで、垂直同期信号VSYNC及びフレーム期間FPは同一である。極性反転信号POLの切り替え頻度は、
図16Bの本実施例の方が
図8Bの実施形態6よりも少なくなる。その理由は、極性反転信号POLを切り替えるタイミングを1フレーム遅らせることにより、書き込み積算値WTの絶対値が1フレーム分多くなるので、積算閾値0に達するまでの時間が長くなるからである。
【0107】
したがって、本実施例によれば、極性反転信号POLの切り替え頻度を更に低減できるので、書き込み極性の反転を更に低減でき、これにより省電力化を更に達成できる。
【0108】
本実施形態6における極性反転制御装置、液晶表示装置、その駆動方法及び駆動プログラムのその他の構成、作用及び効果については、実施形態1のそれらと同様である。
【0109】
<総括>
以上、上記各実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。また、本発明には、上記各実施形態の構成の一部又は全部を相互に適宜組み合わせたものも含まれる。
【0110】
本発明は、次のように要約できる。本発明の目的は、液晶パネルへの書き込みフレームレートが動的に変化しても、液晶パネルへの充電極性が偏らない液晶表示装置を、比較的小規模な回路構成の追加及び、比較的省電力で提供することにある。本発明の構成は、外部から入力される同期信号及びクロック信号を検知して、ある時点における液晶パネルへの充電極性の偏りを算出し、その偏りの大きさに応じて、次のフレームを液晶パネルへ書き込む際の書き込み極性を、充電極性の偏りが小さくなるように制御する、というものである。本発明の効果は、部材点数を極力増やさずかつ、一般的に知られている「倍速駆動」に比べて省電力で、毎フレームの書き込み極性を充電極性が偏らないようにでき、焼き付きを防止できる、というものである。
【0111】
上記の実施形態の一部又は全部は以下の付記のようにも記載され得るが、本発明は以下の構成に限定されるものではない。
【0112】
[付記1]複数の画素を有するとともに、フレーム期間の異なる画素電圧を前記画素に印加し、前記画素電圧を前記画素に印加する際に、前記フレーム期間ごとに第一のレベルと第二のレベルとのどちらかのレベルを採り得る極性反転信号に応じて前記画素電圧の極性を反転させる液晶パネルに対して、
前記極性反転信号が前記第一のレベルの時の前記フレーム期間の積算値と前記極性反転信号が前記第二のレベルの時の前記フレーム期間の積算値との差が小さくなるように前記極性反転信号の前記レベルを切り替える、
ことを特徴とする液晶表示用の極性反転制御装置。
【0113】
[付記2]前記フレーム期間を検出するフレーム期間検出部と、
このフレーム期間検出部によって検出された前記フレーム期間について、前記極性反転信号が前記第一のレベルの時の前記フレーム期間の積算値と前記極性反転信号が前記第二のレベルの時の前記フレーム期間の積算値との差である書き込み積算値を算出し、当該書き込み積算値に基づいて前記極性反転信号の前記レベルを切り替える書き込み積算値演算部と、
を備えた付記1記載の液晶表示用の極性反転制御装置。
【0114】
[付記3]前記書き込み積算値演算部は、前記書き込み積算値が積算閾値に達した場合に、前記極性反転信号の前記レベルを切り替える、
付記2記載の液晶表示用の極性反転制御装置。
【0115】
[付記4]前記積算閾値は零の値であり、
前記書き込み積算値演算部は、前記極性反転信号が前記第一のレベルの時の前記フレーム期間を正の値、前記極性反転信号が前記第二のレベルの時の前記フレーム期間を負の値として前記書き込み積算値を算出し、当該書き込み積算値が正側又は負側から前記零の値に達した場合に前記極性反転信号の前記レベルを切り替える、
付記3記載の液晶表示用の極性反転制御装置。
【0116】
[付記5]前記積算閾値は正側閾値と負側閾値とからなり、
前記書き込み積算値演算部は、前記極性反転信号が前記第一のレベルの時の前記フレーム期間を正の値、前記極性反転信号が前記第二のレベルの時の前記フレーム期間を負の値として前記書き込み積算値を算出し、前記書き込み積算値が正側から前記負側閾値に達した場合又は前記書き込み積算値が負側から前記正側閾値に達した場合にのみ、前記極性反転信号の前記レベルを切り替える、
付記3記載の液晶表示用の極性反転制御装置。
【0117】
[付記6]前記書き込み積算値演算部は、前記極性反転信号の前記レベルを切り替えるタイミングを遅らせる、
付記4又は5記載の液晶表示用の極性反転制御装置。
【0118】
[付記7]前記フレーム期間検出部は、垂直同期信号及びクロック信号を入力し、連続する二つの前記垂直同期信号で前記フレーム期間を特定し、特定された当該フレーム期間における前記クロック信号をカウントすることにより、前記フレーム期間を検出する、
付記2乃至6のいずれか一つに記載の液晶表示用の極性反転制御装置。
【0119】
[付記8]前記クロック信号を生成するクロック信号生成部を、
更に備えた付記7記載の液晶表示用の極性反転制御装置。
【0120】
[付記9]付記1乃至8のいずれか一つに記載の液晶表示用の極性反転制御装置と、
前記液晶パネルと、
を備えた液晶表示装置。
【0121】
[付記10]複数の画素を有するとともに、フレーム期間の異なる画素電圧を前記画素に印加し、前記画素電圧を前記画素に印加する際に、前記フレーム期間ごとに第一のレベルと第二のレベルとのどちらかのレベルを採り得る極性反転信号に応じて前記画素電圧の極性を反転させる液晶パネル、
を備えた液晶表示装置を駆動する方法であって、
前記フレーム期間を検出し、
検出した前記フレーム期間について、前記極性反転信号が前記第一のレベルの時の前記フレーム期間の積算値と前記極性反転信号が前記第二のレベルの時の前記フレーム期間の積算値との差が小さくなるように前記極性反転信号の前記レベルを切り替え、
切り替えた前記極性反転信号を前記液晶パネルへ供給する、
ことを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【0122】
[付記11]複数の画素を有するとともに、フレーム期間の異なる画素電圧を前記画素に印加し、前記画素電圧を前記画素に印加する際に、前記フレーム期間ごとに第一のレベルと第二のレベルとのどちらかのレベルを採り得る極性反転信号に応じて前記画素電圧の極性を反転させる液晶パネル、
を備えた液晶表示装置を駆動するプログラムであって、
前記フレーム期間を検出する手順と、
検出した前記フレーム期間について、前記極性反転信号が前記第一のレベルの時の前記フレーム期間の積算値と前記極性反転信号が前記第二のレベルの時の前記フレーム期間の積算値との差が小さくなるように前記極性反転信号の前記レベルを切り替える手順と、
切り替えた前記極性反転信号を前記液晶パネルへ供給する手順と、
をコンピュータに実行させるための液晶表示装置の駆動プログラム。