(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
木質廃材その他の木質バイオマス等を、燃料として有効利用することへの関心が、近年高まっている。
特に、木質バイオマスを熱分解してバイオマスガスを生成し、もって燃料ガスとしてエンジンに供給して発電等に利用する、バイオマスのガス化システムが、最近注目を集めている。
【0003】
《従来技術》
図3は、従来のガス化システム1の説明図である。同図にも示したように、この種従来例の代表的ガス化システム1は、熱分解炉2と改質炉3とを備えていた。
そして、バイオマスAが原料ホッパー4から熱分解炉2に投入され、熱分解炉2で生成されたバイオマスガスBが、管路5
1を経由して改質炉3に供給され、改質炉3でタールCが処理された後、燃料ガスDとして、管路5
2にてエンジン6に供給されていた。
熱分解炉2で生成されたバイオマスガスB中には、多量のタールCが含有されており、そのままエンジン6の燃料として供給すると、エンジン6の弁,その他に液化,付着して、汚れやコーキングの原因となり、各種トラブルの要因となってしまう。
そこでバイオマスガスBについて、含有されていたタールCを、改質炉3で燃料成分に改質し、もって燃料ガスDとしていた。改質炉3におけるタールCの改質には、熱分解炉2での燃焼に際し生成された炭化物粒(チャー)Eが、タールCの吸着分解用,触媒用として使用されると共に、自らも燃料成分に改質されていた。
図中7は、エンジン6にて駆動される発電機である。図中5
3は、エンジン6の排気ガスGを、熱分解炉2の熱源として利用するための管路である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような従来のバイオマスAのガス化システム1については、次の問題が課題として指摘されていた。
《第1の問題点》
第1に、熱効率面に問題が指摘されていた。まず熱分解炉2は、450℃〜650℃程度の熱分解温度域に維持されており、投入されたバイオマスAを熱分解する。改質炉3は、700℃以上の改質温度域に維持され、タールCや炭化物粒Eを改質する。
他方、熱分解炉2から改質炉3へのバイオマスガスBの供給は、管路5
1を経由して行われていた。熱分解炉2頂部と改質炉3下部間に配設された、管路5
1を経由して行われていた。
又、熱分解炉2から改質炉3への炭化物粒Eの供給は、供給手段8を使用して行われていた。熱分解炉2下部の排出部9から排出された炭化物粒Eを、供給手段8を使用して、改質炉3頂部へと供給していた。
【0006】
もって熱損失が大きく、熱効率に問題が指摘されていた。
450℃〜650℃で熱分解炉2から排出されたバイオマスガスBの熱量が、管路5
1による供給途中で熱伝達等により失われ、もってバイオマスガスBの温度低下が著しく、その分、改質炉3において改質温度域への加熱熱量の増加を招いていた。管路5
1の短縮化や断熱材による被覆等の対策も取られていたが、十分ではなかった。
炭化物粒Eについても同様であり、450℃〜650℃で熱分解炉2から排出された炭化物粒Eの熱量が、途中の供給手段8で熱伝達等により失われ、温度低下が著しく、その分、改質炉3での改質温度域への加熱熱量の増加を招いていた。
【0007】
《第2の問題点》
第2に、タールC付着による不具合発生も指摘されていた。
熱分解炉2と改質炉3間に配設された管路5
1について、バイオマスガスB中に含有されたタールCが、上述した温度低下により液化,固化し(高温での気化タールから液化タール化)、内部に付着して、汚れやコーキングの原因となり、各種トラブルを惹起していた。
炭化物粒Eの供給手段8についても同様であり、熱分解炉2から改質炉3へと供給される炭化物粒Eについても、付随帯同されていたタールCが、供給手段8に液化,固化,付着して、汚れ,コーキングの原因となり、トラブルを惹起していた。
従来例では、このような問題が課題として指摘されていた。
【0008】
《本発明について》
本発明のバイオマスのガス化装置は、このような実情に鑑み、上記従来技術の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、熱効率が向上し、第2に、タール付着による不具合発生も防止され、第3に、しかもこれらが簡単容易に実現される、バイオマスのガス化装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
《請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、特許請求の範囲の請求項1に記載したように、次のとおりである。
本発明に係るバイオマスのガス化装置は、バイオマスから燃料ガスを得る装置であって、一体構成された熱分解部と改質部とを、有してなる。
そして該熱分解部は、投入されたバイオマスを熱分解する。該改質部は、該熱分解部で生成されたバイオマスガスと炭化物粒とが、該熱分解部から直接供給され、バイオマスガスに含有されたタールを、炭化物粒を利用しつつ共に燃料成分に改質し、もって燃料ガスとする。
該熱分解部は、横型炉よりなり、若干傾斜して回転する円筒状のリフタードラム、又はスクリューコンベア,スクリューキルンのいずれかを備えた押し出し方式よりなり、バイオマスを低温乾留して、バイオマスガスと炭化物粒とを共に供給口から流下せしめる。
該改質部は、該熱分解部に連設された縦型炉よりなり、上部の流入口が、該熱分解部端部の供給口に連通接続されると共に、下部の吸引口から、カロリーアップされた燃料ガスを排出する。
【0010】
そして該熱分解部は、450℃以上〜650℃以下の熱分解温度域に維持されており、バイオマスガスおよび炭化物粒は、上記熱分解温度をほぼ保持しつつ該改質部へと供給され、もってタールの温度低下による液化,周囲付着も回避される。
該改質部は、まず上部にて、空気つまり酸素が供給されてバイオマスガスを部分燃焼させ、もって700℃以上の改質温度域へと高熱化される。
該改質部の700℃以上の上記改質温度域から排出された燃料ガスは、管路により、該熱分解部の450℃〜650℃の上記熱分解温度域への熱源用に途中利用された後、燃料用に提供される。
該熱源用の途中利用は、該改質部と該熱分解部とが一体的に近接連設されており、該管路により至近距離で熱損失,温度低下が少なく実現されること、を特徴とする。
【0011】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)ガス化装置では、熱分解部にバイオマスが投入されて、バイオマスガス,炭化物粒等が生成される。熱分解部は、リフタードラム,スクリューコンベア,スクリューキルンのいずれかを、備えている。
(2)生成されたバイオマスガスと炭化物粒は、改質部に供給され、バイオマスガスに含有されていたタールが、炭化物粒を利用しつつ、共に燃料成分に改質され、もって、燃料ガスとされる。
(3)そして本発明のガス化装置は、熱分解部と改質部が一体構成され連設されている。熱分解部端部の供給口に、改質部上部の流入口が連通接続されており、改質部下部の吸引口から燃料ガスが排出される。
(4)もって、バイオマスガスや炭化物粒が、熱分解部から改質部へ、熱分解温度をほぼ保持しつつ、流下,吸引,供給される。供給時での熱量損失,温度低下は、ほぼ回避される。
(5)そこで、バイオマスガスに含有されたタールが、液化,固化して周囲に付着することも、回避される。
(6)このように作用する本発明のガス化装置は、上記記載したように、簡単な構成よりなる。
(7)そして、改質部から排出された燃料ガスの熱量,顕熱を、管路により、熱分解部の熱源に途中利用することが、至近距離であり、熱損失,温度低下が少なく実現される。
(8)燃料ガスは代表例では、発電機付のエンジンに供給される。
(9)そこで、本発明に係るバイオマスのガス化装置は、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0012】
《第1の効果》
第1に、熱効率が向上する。
本発明に係るバイオマスのガス化装置では、バイオマスガスや炭化物粒が、熱分解部から改質部へ、熱分解温度をほぼ保持しつつ供給される。供給時に熱が逃げ熱量が失われること、つまり温度低下は、ほぼ回避される。このように熱損失が防止され、熱効率が向上する。
前述したこの種従来例のように、途中の管路や供給手段において、バイオマスガスや炭化物粒の熱分解炉での熱分解温度が大きく失われ、もって改質炉での改質温度域への加熱熱量の増加を招くような事態は、確実に回避される。
更に、改質部の改質温度域から排出された燃料ガスを、熱分解部の熱分解温度域への熱源用に、管路により途中利用するようにしたので、この面からも熱効率,エネルギー効率が向上する。
【0013】
《第2の効果》
第2に、タール付着による不具合発生も防止される。
本発明に係るバイオマスのガス化装置では、上述したように、バイオマスガスや炭化物粒は、熱分解部から改質部へ熱分解温度をほぼ保持しつつ供給される。
もって、バイオマスガスに含有されていたタール(含.炭化物粒に付随帯同されたタール)が、供給途中での温度低下により周囲に付着することは回避される。もって汚れ,コーキング,トラブル等の原因となることもない。
前述したこの種従来例のように、途中の管路や供給手段に、タールが液化,固化,付着して、汚れ,コーキング,トラブル等の不具合を引き起こす事態は、確実に回避される。熱分解部と改質部間では、管路や供給手段は用いられず、不用化されている。
【0014】
《第3の効果》
第3に、しかもこれは簡単容易に実現される。
本発明に係るバイオマスのガス化装置は、熱分解部と改質部を一体的に連設し、熱分解部の供給口に、改質部上部の流入口を連通接続して、改質部下部の吸引口から燃料ガスを排出する構成よりなる。
このような簡単な構成により、上述した第1,第2の効果を容易に実現でき、コスト面等にも優れている。
このように、この種従来技術に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、
図1,
図2を参照して詳細に説明する。
《熱分解部10について》
本発明に係るバイオマスAのガス化装置11は、一体構成された熱分解部10と改質部12とを、有している。
まず、熱分解部10について説明する。本発明のガス化装置11では、まず、熱分解部10にバイオマスAが投入され、もってバイオマスAが熱分解されて、バイオマスガスBや炭化物粒E等が生成される。
すなわち、熱分解部10は横型炉よりなり、450℃〜650℃の熱分解温度域に維持されており、バイオマスAを低温乾留し、もって生成したバイオマスガスBと炭化物粒Eとを、共通の供給口13から流下せしめる。
【0017】
このような熱分解部10について、更に詳述する。まずバイオマスAは、原料ホッパー4,乾燥機,定量フィーダー(図示せず)等を介し、常温で熱分解部10に投入される。
投入されるバイオマスAとしては、チップ化された木質廃材等の木質バイオマスが代表的であるが、これに加え、紙材,プラスチック材,廃材(廃棄物系),作物系(植物系,生物系),その他のバイオマス材も、熱分解可能,バイオマスガスB化可能である。
450℃〜650℃の熱分解温度域は、熱分解されるバイオマスAからタール(気化タール)Cの発生が完了してしまう温度を下限とし、炭化物粒(木炭粒,チャー)E生成可能な温度を上限とする。
投入されたバイオマスAは、このような熱分解温度域で低温乾留により熱分解され、もって炭化物粒E,灰分,その他の燃焼残等の固形分と共に、バイオマスガスBが生成される。
バイオマスガス(熱分解ガス,乾留ガス)Bは、水素(H
2)と一酸化炭素(CO)とを主成分とするが、メタン(CH
4),エチレン(C
2H
4),プロパン(C
3H
8)等の高発熱量の低級炭化水素を、含有することも多い。
更に、これらの燃料成分と共に、窒素(N
2),二酸化炭素(CO
2),水蒸気(H
2O)等の不燃成分も、含有している。そしてタール(気化タール,タール蒸気)Cも、含有している。
なお熱分解部10は、若干傾斜して回転する円筒状のリフタードラム14,又はスクリューコンベア,スクリューキルン等を備えた押し出し方式よりなる。そして供給口13から、バイオマスガスBと炭化物粒Eとを排出して、改質部12へと流下せしめる。図示例では、リフタードラム14下流端が、供給口13から改質部12の流入口15に臨んでいる。
熱分解部10については、以上のとおり。
【0018】
《改質部12について》
次に、本発明のガス化装置11の改質部12について、説明する。改質部12は、熱分解部10で生成されたバイオマスガスBと炭化物粒Eとが、直接流下され、もって、バイオマスガスBに含有されたタールCを、炭化物粒Eを利用しつつ、共に燃料成分に改質して、燃料ガスDを得る。
そして改質部12は、熱分解部10に連設された縦型炉よりなり、700℃以上の改質温度域に維持されており、上部の流入口15が、熱分解部10端部の供給口13に直接連通接続されると共に、下部の吸引口16から、カロリーアップされた燃料ガスDを排出する。
【0019】
このような改質部12について、更に詳述する。まず、改質部12は700℃以上の改質温度域に維持されている。
すなわち、450℃〜650℃の熱分解温度域の熱分解部10から直接供給されるバイオマスガスBの顕熱に、部分燃焼の反応熱を加えることにより、改質を実施可能な改質温度域に維持されている。
すなわち改質部12は、まず上部にて、一定供給量に制御された空気Hつまり酸素が供給されて、バイオマスガスBを部分燃焼させる。もって、このような直接加熱方式による熱量を、バイオマスガスB自体の熱量に加えることにより、700℃以上の改質温度域へと高熱化される。
そして、このような改質温度域のもと、バイオマスガスB中に含有されたタールC(含.炭化物粒Eに付随,帯同していたタールC)が、炭化物粒Eの吸着分解機能と触媒機能によりコーク化し、もって熱の作用により水蒸気をガス化剤として反応して、水素,一酸化炭素,メタン等に水蒸気改質される。
【0020】
水蒸気改質は、バイオマスガスB中に含有された水蒸気を利用して実施されるが、付設されたスチーム供給手段(図示せず)からも、補足的に供給可能となっている。
炭化物粒Eは、前述した熱分解部10において、焦げた未燃焼分,多孔質残留物として得られる。そして炭化物粒Eは、バイオマスガスBに含有されたタールCの捕捉,吸着,担持,一体化層として機能すると共に、タールCのコーク化,水蒸気改質反応促進用の触媒層としても機能する。又、炭化物粒E自体も水蒸気改質されて、水素や一酸化炭素等にガス化される。
バイオマスガスBは、このようにタールCや炭化物粒Eが、改質により上述したように燃料成分にガス化され、もってカロリーアップされた燃料ガス(改質ガス)Dとなる。
そして燃料ガスDは、下部に内装された吸引口16からブロワ17が介装された管路18
1(
図1の参考例)、又は18
2(
図2の実施例)へと導出される。もって、管路18
1又は18
2を経由してロータリーエンジン等のエンジン6に、エアー混合器(図示せず)等を経て供給され、エンジン6の燃料となりエンジン6を駆動する。エンジン6は、発電機7に連結されており、その駆動が発電用に出力される。
図中、19は格子である。Jは、灰分等の燃焼残であり、炭化物粒E等の残渣として改質部12の下部から、排出される。
【0021】
ところで、
図1の参考例において、燃料ガスDは、管路18
1により改質部12からエンジン6へと直接供給される。
これに対し、
図2の実施例において、燃焼ガスDは、管路18
2により、改質部12に近接一体連設された熱分解部10の熱源として利用されてから、エンジン6へと供給される。
すなわち、改質部12の700℃以上の改質温度域から排出された燃料ガスDは、熱分解部10の450℃〜650℃の熱分解温度域への熱源用に利用された後、燃料用に提供される。
改質部12については、以上のとおり。
【0022】
《作用等》
本発明のバイオマスAのガス化装置11は、以上説明したように構成されている。そこで以下のようになる。
(1)ガス化装置11では、まず、熱分解部10にバイオマスAが投入されて熱分解され、もってバイオマスガスB,炭化物粒E等が生成される。熱分解部10は、図示したリフタードラム14,スクリューコンベア,スクリューキルンのいずれかを備えた、押し出し方式よりなる。
【0023】
(2)熱分解部10で生成されたバイオマスガスBと炭化物粒Eは、改質部12に供給される。そして、バイオマスガスBに含有されたタールC(含.炭化物粒Eに付随帯同していたタールC)が、炭化物粒Eを利用しつつ共に燃料成分に改質される。もってバイオマスガスBは、改質されて燃料ガスDとされる。
【0024】
(3)本発明のガス化装置11は、このような熱分解部10と改質部12とを備えると共に、両者が一体構成され連接されている。
すなわち、横型の熱分解部10端部の供給口13に、縦型の改質部12上部の流入口15が、直接連通接続されており、改質部12下部の吸引口16から、燃料ガスDが排出される。
【0025】
(4)もって、バイオマスガスBや炭化物粒Eが、熱分解部10から改質部12へ、450℃〜650℃の熱分解温度をほぼ保持しつつ、流下,吸引される。
従って、このように直接供給されるバイオマスガスBや炭化物粒Eについて、供給途中での熱量損失,温度低下は、ほぼ回避される。
【0026】
(5)又、上述したようにバイオマスガスBや炭化物粒Eは、熱分解部10から改質部12へ、ほぼ450℃〜650℃の熱分解温度で供給される。途中に管路や供給手段が介在する(
図3の従来例を参照)ことなく、直接供給される。
もって、バイオマスガスBに含有されたタールC(含.炭化物粒Eに付随帯同されるタールC)が、温度低下により液化,固化して周囲に付着することは、回避される。
【0027】
(6)そして、このように作用する本発明のガス化装置11は、熱分解部10と改質部12とを一体的に連設し、熱分解部10の供給口13に改質部12の流入口15を、連通接続して、改質部12の吸引口16から燃料ガスDを排出するという、簡単な構成よりなる。
【0028】
(7)そして、
図2の実施例のように、改質部12の700℃以上の改質温度域から排出された燃料ガスDの熱量,顕熱を、熱分解部10の450℃〜650℃の熱分解温度域の熱源用に途中利用することも、確実かつ簡単容易に実現される。改質部12と熱分解部10は、一体的に近接連接されており、管路18
2により至近距離で熱損失,温度低下が極めて少なく実現される。
【0029】
(8)このようにガス化装置11で得られた燃料ガスDは、参考例では管路18
1により、実施例では管路18
2によりエンジン6に供給される。エンジン6の出力軸には、発電機7が接続されている。