(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記切換機構は、前記鏡面反射光学系を構成する対物レンズ系と前記第2撮像部とを一体的に移動させる機構を有することを特徴とする請求項1に記載の移植用角膜の観察装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記先行技術には、次のような課題があった。すなわち、観察容器の垂直方向の下方に鏡面反射光学系が配置されているが、全体画像を撮影するカメラは、観察容器の斜め下方向から撮影を行っている。この場合、観察位置を変えるために左右・前後方向に観察容器を移動させ、その後、焦点合わせのために上下方向に観察容器を移動させると、角膜全体の画像の位置がずれるという問題があり、撮影カメラのファインダーとしての位置表示機能が満足のいくものではなかった。また、斜め方向から観察しているので、画像が歪んだり、焦点が全面に合わない、という問題もあった。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、移植用角膜を含む全体画像を撮影するための撮像部のファインダー機能を向上させて、品質の良い画像を表示させることが可能な移植用角膜の観察装置及び観察システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明に係る移植用角膜の観察装置は、
観察対象となる移植用角膜を収容した観察容器を支持する支持台と、第1光源および第1撮像部を含み、前記観察容器の垂直上方または下方から鏡面反射法により前記移植用角膜の拡大画像を取得して観察するための、照明光学系及び撮像光学系を含む鏡面反射光学系と、前記観察容器の垂直上方又は下方から、移植用角膜が収容される領域を含む全体画像を撮像するための第2撮像部と、前記拡大画像と前記全体画像の何れかを取得するために第1撮像部と第2撮像部を選択的に切り換えるための切換機構と、を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
かかる構成による移植用角膜の観察装置の作用・効果を説明する。観察容器に収容された移植用角膜は、鏡面反射光学系を用いて拡大画像が第1撮像部を用いて撮影される。また、移植用角膜を含む全体画像が第2撮像部を用いて撮影される。操作者は、第1撮像部と第2撮像部のいずれを用いた画像を取得するのかを選択することができ、選択したほうの撮像部に切り換えるための切換機構が設けられている。第1撮像部を選択したときは、観察容器の垂直上方または下方から拡大画像を撮影することができ、第2撮像部を選択したときは、同じく、観察容器の垂直上方または下方から全体画像を撮影することができる。従って、斜め方向から全体画像を撮影するときの問題点、すなわち、角膜全体の画像の位置ずれや画像歪等の問題が解消される。その結果、全体画像を撮影するための第2撮像部のファインダー機能を向上させて、品質の良い画像を表示させることが可能になる。
【0009】
本発明に係る前記切換機構は、前記第2撮像部と前記鏡面反射光学系の少なくとも一部を一体的に移動させる機構を有することが好ましい。
【0010】
切換機構の構成としては種々の構成が考えられる。第2撮像部と鏡面反射光学系の少なくとも一部を一体的に移動させることで、鏡面反射光学系の少なくとも一部が配置される空間に第2撮像部を移動させることができ、観察容器の垂直上方または下方に第2撮像部を位置させることができる。
【0011】
本発明に係る前記切換機構は、前記鏡面反射光学系を構成する対物レンズ系と前記第2撮像部とを一体的に移動させる機構を有することが好ましい。
【0012】
この構成によると、鏡面反射光学系の光路内に第2撮像部を進退させる構成になり、移動させるべきユニットの大きさを抑制することができる。
【0013】
本発明に係る前記切換機構は、前記鏡面反射光学系の全体と前記第2撮像部とを一体的に移動させる機構を有することが好ましい。
【0014】
鏡面反射光学系を移動させる場合に、全体を移動させることでも、観察容器の垂直上方または下方に第2撮像部を位置させることができる。
【0015】
本発明に係る前記切換機構は、前記鏡面反射光学系の光路内に前記第2撮像部を進退させる機構を有することが好ましい。
【0016】
この構成によると、第2撮像部のみを移動させればよいので、切換機構の構成を簡素化することができる。
【0017】
本発明に係る前記切換機構は、前記観察容器を移動させる機構を有することが好ましい。
【0018】
第2撮像部や鏡面反射光学系を移動させるのではなく、観察容器を移動させる構成でも切り換え可能である。鏡面反射光学系を移動させなくてよいので、切換機構を大型化しなくても済む。
【0019】
前記切換機構による撮像部の切り換えを検知する切換検知手段を有することが好ましい。この構成により、いずれの撮像部が選択されているかを認識することができ、モニター表示の制御を行うことができる。
【0020】
本発明において、前記移植用角膜を前記観察容器の上方側または下方側から照明するための第2光源と、
前記移植用角膜の厚み方向に沿って前記観察容器を移動させるための観察容器移動機構と、を備え、前記移植用角膜の内皮、上皮、内皮と上皮の間を観察可能に構成したことが好ましい。
【0021】
かかる観察容器移動機構を設けることで、内皮や上皮に鏡面反射光学系の焦点を合わせることができ、内皮、上皮あるいは、内皮と上皮の間の組織を観察することができる。また、鏡面反射光学系が有する照明光学系では、上皮の観察が困難になる場合があるので、第2光源を別に設けることで、内皮だけでなく、上皮や内皮と上皮の間の組織の観察も容易に行うことが可能になる。
【0022】
本発明に係る移植用角膜の観察システムは、本発明に係る移植用角膜の観察装置と、この観察装置の各部の動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、上皮観察のために前記観察容器移動機構による観察容器の所定量の移動を検出したとき、前記第2光源を点灯又は増光させる光源制御手段を有することを特徴とするものである。
【0023】
内皮を観察している状態から上皮を観察状態に移行するために、観察容器移動機構により観察容器を移動させる必要がある。上皮の観察のためには、前述のように第2光源を用いる必要がある。内皮と上皮の間隔は、角膜の標準的な厚さを勘案し、あらかじめ入力しておくことが可能である。そこで所定量だけ観察容器が移動したことを検知して第2光源を点灯又は増光させることで、観察作業を効率よく行うことができる。なお、内皮観察時に第2光源を消灯しておれば、上皮観察時には第2光源を点灯させ、内皮観察時に第2光源を少ない光量で点灯しておれば、上皮観察時には第2光源を増光させればよい。
【0024】
本発明に係る前記光源制御手段は、前記第2撮像部による観察時に前記第2光源を消灯又は減光させることが好ましい。
【0025】
第2撮像部により全体画像を撮影するとき、第2光源が点灯していると、その直接光により画像が見にくくなることがある。そこで、第2撮像部が選択されているときは、第2光源を消灯させるか、減光させる。これにより、品質の良い全体画像を得ることができる。
【0026】
本発明において、前記移植用角膜の温度を検出する温度検出部を備え、前記光源制御手段は、前記移植用角膜の温度が所定値より低い時に前記第2光源を点灯又は増光させることが好ましい。
【0027】
移植用角膜の温度が低いと、角膜細胞像を得ることが困難になることがある。これは角膜の表面に凹凸が生じるため、鏡面反射法による観察ではスリット光の反射を第1撮像部で捉えることが難しくなるためである、と考えられている。そこで、温度が所定値(例えば、20℃)より低い場合は、第2光源を点灯又は増光させるように制御する。これにより、移植用角膜を背後から散乱光で照明することができるため、角膜細胞像を見やすくすることができる場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の移植用角膜の観察装置及び観察システムの実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、各図は模式図であり、図面の寸法比と実際の寸法比は必ずしも一致しない。
【0030】
<第1実施形態に係る移植用角膜の観察装置の構成>
図1は、第1実施形態に係る移植用角膜の観察装置の構成の一例を示す模式図である。この観察装置は、大きく分けて、鏡面反射光学系A、観察容器保持部B、ファインダーカメラC(第2撮像部に相当する。)を備えている。また、
図1においてXは前後方向(紙面に垂直方向)、Yは左右方向、Zは垂直上下方向を示す。他の実施形態も同様である。ファインダーカメラCと鏡面反射光学系Aは、一体的に左右に移動可能なユニットUを構成する。
【0031】
まず、鏡面反射光学系Aの構成について説明する。鏡面反射光学系Aは、照明光学系と撮像光学系を備える。照明光学系は、光源10、コンデンサレンズ11、ミラー12a,12b,12c、スリット13及び対物レンズ系14を備える。また、撮像光学系は、対物レンズ系14、ミラー12d及び角膜観察カメラ15(第1撮像部に相当)を備え、角膜観察カメラ15は、例えば、CMOSカメラやCCDカメラ等で構成され、モニター(後述)で移植用角膜の拡大画像の観察をすることができる。
図1に示す観察装置では、対物レンズ系14として、照明光学系のものと撮像光学系のものを共通利用することで、鏡面反射光学系Aの小型化を実現している。なお、ミラーの配置方法やその数、コンデンサレンズの数等は、適宜変更可能である。
【0032】
光源10としては、ハロゲンランプやLED等を用いることができる。光源10からの光は、スリット13を通過した後、対物レンズ系14を介して、移植用角膜100中の所定の観察点に入射される。このスリット光は、対物レンズ系14を通過する際、光線は対物レンズ系14の光軸20から一方向にずれた位置(
図1では、対物レンズ系14における左半分)を通過し、対物レンズ系14の光軸20に対して若干斜めから、小さい入射角を有して、実効の照明光軸21を有した光束として移植用角膜100に入射される。このスリット光は、移植用角膜100において、対物レンズ系の光軸20に対して対称方向に鏡面反射される。この鏡面反射された光(移植用角膜100の反射像)は、対物レンズ系14に入射され、対物レンズ系14において対物レンズ系の光軸20に対してスリット光と対称の位置(
図1では、対物レンズ系14における右半分)を通過し、すなわち実効の撮像光軸22を有した光束としてミラー12dで反射した後、角膜観察カメラ15上に結像する。対物レンズ系14の上側端部に遮蔽板16が設けられており、入射光と反射光の干渉を防いでいる。
【0033】
図1において、観察容器保持部Bは、模式的に斜め下方向から見た状態を3次元的に示している。移植用角膜100の中央部にスリット光Sが投影された状態を示しており、このスリット光Sの長手方向がLで示されている。LはX方向と平行である。
【0034】
実効の照明光軸21と実効の撮像光軸22の交点の位置が、観察点を構成し、この観察点においてスリット光Sによるスリット画像が結像するように、鏡面反射光学系Aが構成されている。従って、この観察点に観察対象である移植用角膜100を位置させることが重要である。
【0035】
なお、本明細書では、実効の照明光軸21と実効の撮像光軸22の交差角を2等分する軸を「観察基本軸23」と定義する。本実施形態では、対物レンズ系14の光軸20が観察基本軸23に一致するように、対物レンズ系14が配置されている。両者は完全に一致するのが望ましいが、微小にずれた配置を本発明から排除する趣旨ではない。
【0036】
ファインダーカメラCは、CMOSカメラやCCDカメラ等で構成され、移植用角膜100を含む全体画像を撮影することができる。
【0037】
第1実施形態において、鏡面反射光学系A(対物レンズ系14)が観察容器31の垂直直下に位置する状態と、ファインダーカメラCが観察容器31の垂直直下に位置する状態とを切り換える切換機構が設けられている。切換機構としては、ファインダーカメラCと鏡面反射光学系AのユニットUを左右方向(Y方向)に移動させる機構を採用している。具体的な切換機構は、モーター等のアクチュエータと、ギヤ等の動力伝達機構を用いることができる。なお、切換機構は、自動で切り換える機構でもよいし、手動で切り換える機構のいずれでもよい。
【0038】
また、観察容器31の下方に鏡面反射光学系Aが位置しているのかファインダーカメラCが位置しているのかを検知するための切換検知スイッチ18が設けられている。
図1の構成例では、鏡面反射光学系Aが位置しているときに切換検知スイッチ18がONになり、ファインダーカメラCが位置しているときはOFFになる。なお、このオン/オフ関係は逆にしてもよい。また、切換検知スイッチ18は、機械的なスイッチでもよいし、光学的、磁気的な検知機構を用いてもよい。切換検知スイッチ18を設ける場所も適宜決めることができる。
【0039】
また、ファインダーカメラCの近傍に照明部材17が設けられており、ファインダーカメラCによる撮影を行うときに用いられる。照明部材17は、移植用角膜100を含む領域を照明するものであり、LEDや蛍光ランプ等が用いられる。特に周囲の暗いときに照明部材17を用いることが好ましい。照明部材17の点灯・消灯は操作者が手動で行ってもよいし、周囲の明るさを検知して自動で制御されるようにしてもよい。
【0040】
また、切換検知スイッチ18による検知に連動して、ファインダーカメラCを使用するときに自動的に照明部材17が点灯されるようにしてもよい。周囲の明るさ検知と合わせて適宜操作者が使いやすいように制御することができる。
【0041】
鏡面反射光学系Aを構成するミラー12aとミラー12bの間の光路に光学フィルター19を進退させることができる。角膜を染色して解析するとき等に、この光学フィルター19を光路内に進入させることができる。使用しない時は、光路から退避させておく。
【0042】
<観察容器保持部>
図1に示す観察容器保持部Bのもう少し詳細な構成を
図2に示す。保持台30は、移植用角膜100を収容する観察容器31を保持する台であり、所定の箇所に観察容器31を載置した状態で保持する。保持台30は、鏡面反射光学系Aの光路を妨げないよう開口している。観察容器31は、移植用角膜100を収容するための容器であり、例えば保存液などの所定の液体を介して移植用角膜100が収容される。通常、移植用角膜100は、
図2の状態では観察容器31中に上が上皮側、下が内皮側の向きで収容されている。従って、角膜全体は上向きの略球面状である。観察容器31は、一例として、略円筒形状とすることができ、保持台30に設けられた載置面30aの上に載置することができる。
【0043】
支持台32は、不図示の調整機構(観察容器移動機構)によって、観察基本軸23に対して前後左右上下(XYZの3軸方向)に移動することができる構成である。これにより、観察容器31を3軸方向に移動させることができる。この調整機構を備えることで、移植用角膜の観察位置の設定や、観察点(合焦位置)への移植用角膜の位置調整を行う。この調整機構の一例としては、ネジ送りの摺動機構を挙げることができる。また、3軸方向のそれぞれの移動量を検出するためのエンコーダ(不図示)も設けられている。なお、調整機構による3軸方向の移動は、手動で行うようにしてもよいし、アクチュエータを用いて自動で行うようにしてもよい。また、3軸のうち特定の方向のみを自動で行うようにしてもよい。例えば、Z方向(垂直上下方向)のみを自動で行うようにしてもよい。
【0044】
また、支持台32はメス型球面を有した台、保持台30はオス型球面を有した台とし、保持台30と支持台32とが球面嵌合することで、保持台30を支持台32に対して傾動自在となる。保持台30を傾動させることにより、移植用角膜100上のより良好な鏡面反射を探し出すことも可能になる。保持台30を支持台32に組み込んだ状態で、支持台32が3軸方向に移動することで、保持台30も支持台32と一体的に同方向に移動する。
【0045】
保持台30と支持台32とが嵌合する具体的な形態は、保持台30が傾動自在に支持されれば上記形状に限定されない。以上のように、観察容器31は保持台30を介して支持台32に支持されることになる。
【0046】
<補助光源ユニット>
観察容器保持部Bは、保持台30の上に載置される補助光源ユニットを備えている。この補助光源ユニットは、筐体40を備え、更にこの筐体40は、円筒形本体40aと、円筒形本体40aの一端側に形成される開口部40bと、円筒形本体40aの他端側に形成される天板部40cとで構成される。筐体40の開口部40bは、保持台30に設けられた嵌合面30bに嵌合する。これにより、筐体40は、保持台30に対して回動自在に取り付けられる。回転軸は、円筒形本体40aの円筒軸になる。
【0047】
また、天板部40cには細長い円筒形の補助光源4がその軸が傾斜した状態で取り付けられる。なお、補助光源4の形状は、上記に限定されるものではない。
【0048】
筐体40は全体的にキャップ状の形状をしており、観察容器31をその内部に収容するようにして、保持台30に載置される。また、筐体40は透光性の低い材質で構成することで、室内照明や日射光などの外乱光の影響を排除することができる。なお、筐体40の具体的な形状は、
図2に限定されるものではない。
【0049】
以上の構成により、筐体40を保持台30に対して回動操作することで、補助光源4も一体的に回動操作される。また、筐体40は保持台30の上に載置するだけなので、着脱操作も簡単である。
【0050】
筐体40の円筒軸40dは、観察基本軸23と一致するように配置されている。両者の軸心は、完全に一致しているのが好ましいが、多少ずれた配置になってもよい。また、保持台30を傾けて使用する場合には、円筒軸40dが傾いた状態になることもある。
【0051】
補助光源4は、観察基本軸23に対して傾斜した補助照明光軸4aを有し、移植用角膜100を鏡面反射光学系Aの背後から照明する構成である。上述したように、筐体40をこの円筒軸40d周りに回動させることにより、補助照明光軸4aの観察基本軸23に対する相対的な傾斜方向を連続的に変化させることができる。
【0052】
なお補助光源4および補助光源ユニットの具体的な構成は、
図2の構成に限定されるものではない。例えば、特開2015−35999号公報に開示されるような種々の実施形態を採用することができる。
【0053】
<制御機能>
図3は、主として観察装置内の制御機能について説明するブロック図である。観察装置は各部の制御を行うための制御基板60(制御装置)を備えている。制御基板60は、商用電源から電源が供給される。
【0054】
制御基板60は、エンコーダ61からパルス信号を受信する。エンコーダ61へは制御基板60から電源供給される。エンコーダ61は、観察容器31(観察容器保持部B)の垂直上下方向(Z方向)の移動量を検出する機能を有する。温度計62(温度検出部に相当)は、移植用角膜100の温度を計測するためのセンサーである。観察装置内に観察容器31を載置するエリアがあり、そこに移植用角膜100が収容された観察容器31をセットすることで移植用角膜100の温度を測定する。温度計62は、保持台上の観察容器31の観察部を臨むように、対物レンズ付近に設けられていてもよい。これにより、観察準備状態で温度測定ができる。温度信号は温度計62から制御基板60へ送信される。温度計62は、制御基板60から電源供給される。鏡面反射光学系Aの光源10には制御基板60から電源供給される。切換検知スイッチ18からの切り換え信号は制御基板60に送信される。補助光源4には、USBコネクタを介して制御基板60から電源供給される。照明部材17には、制御基板60から電源供給される。
【0055】
制御部50は、例えば、パソコン(パーソナルコンピュータ)と専用のソフトウェアにより構成される。観察装置の各部は、制御部50により制御される。制御基板60と制御部50は、USBコネクタを介して接続される。制御基板60からは各種の信号データ(例えば、温度データ、エンコーダからのZ位置信号等)が制御部50に対して送信される。また、制御部50から制御基板60へは各種の制御信号(例えば、光源10や補助光源4に対する点灯、消灯、減光、増光等)が送信される。
【0056】
ファインダーカメラC及び角膜観察カメラ15は、それぞれUSBコネクタを介して制御部50と接続されている。これらの撮像部からのカメラ映像信号は、それぞれのUSBコネクタを介して制御部50に送信される。また、制御部50は、同じくUSBコネクタを介して、それぞれの撮像部(ファインダーカメラCおよび角膜観察カメラ15)に対する制御信号を送信する。
【0057】
図4は、制御部50の有する機能と、観察装置の各要素との制御関係を示すブロック図である。画像表示手段55は、モニターであり、代表的には液晶モニターを使用することができる。画像制御手段51は、角膜観察カメラ15やファインダーカメラCにより取得した画像をモニターに表示させたり、表示させるときの画像の大きさや画像の位置などを制御する。ファインダーカメラCから取得した全体画像と、角膜観察カメラ15から取得した移植用角膜の拡大画像を取得し、必要に応じてハードディスク等の記憶装置に記憶させる。画像解析手段52は、取得した画像に基づいて移植用角膜の細胞やキズ等の状態を解析する機能を有する。
【0058】
光源制御手段53は、光源10と補助光源4に対する制御を行う。光源10は、観察容器31の下方に鏡面反射光学系Aが位置しているときに点灯させる。観察容器31の下方にファインダーカメラCが位置するときは、光源10を点灯する必要はないので、消灯するように制御する。どちらが下方に位置しているかは、切換検知スイッチ18からの信号に基づいて判断することができる。
【0059】
補助光源4は、主として移植用角膜100の上皮の観察を行うときに使用する。内皮の観察を行うときは、鏡面反射光学系Aの光源10を用いてスリット光を移植用角膜100に投影して、指定された箇所の拡大画像を撮影することができる。しかし、内皮の観察を行う場合、鏡面反射光学系Aのスリット光が得られないことがある。そこで、移植用角膜100を背後から照明して内皮の画像を取得するようにする。なお、この点に関する詳細は特開2015−35999号公報に開示されている。
【0060】
移植用角膜100の一般的な観察手順は以下の通りである。まず、角膜観察カメラを内皮の位置に合焦させて内皮の観察を行う。取得された拡大画像(内皮の細胞画像)を記録し、
図4に示す画像解析手段52により後で解析を行う。内皮の合焦位置は垂直上下(Z)方向の原点になるので、エンコーダのZ方向を0にリセットする。なお、角膜観察カメラの合焦動作は、本実施形態では観察容器31をZ方向に移動させることで行っているが、鏡面反射光学系A全体をZ方向に移動させることでも行うことができる。
【0061】
次に、観察容器31(観察容器保持部)を垂直上方に移動させる。移動は前述の調整機構(観察容器移動機構)により行う。なお、移植用角膜100の平均的な厚さは予めわかっており、かかる厚みデータは制御部50の記憶装置に入力されている。この平均的な厚みに相当する分だけ観察容器31を上方に移動させせた位置の近傍に上皮が存在すると推定できる。この上皮の位置に角膜観察カメラ15を合焦させることで、実際の移植用角膜の厚みを測定することができる。そこで、内皮を観察した後に、観察容器31を上方に移動させるときにエンコーダ61により移動量を検出し、所定量の移動量を検出したときに、補助光源4を点灯させるようにする。補助光源4を点灯させることで散乱光による画像を取得して上皮に合焦させやすくなる。
点灯させるタイミングは、移植用角膜100の平均的な厚みの50%、75%、100%等、適宜設定することができる。上皮の合焦できた時、その時のエンコーダのZ位置の表示に基づき、移植用角膜の厚みを計測することができる。
【0062】
なお、補助光源4は内皮の観察を行うときには消灯または減光させた状態である。内皮の観察時に消灯していたときは、上皮観察時には点灯させるように制御する。また、内皮の観察時に、少ない光量で補助光源4を点灯していたときは、上皮観察時に増光するように制御する。
【0063】
また、ファインダーカメラCにより全体画像の撮影を行うときは、補助光源4を消灯または減光させる。補助光源4からの照明光がファインダーカメラCに直接入り込むと、非常に見づらい画像になる。そこで、補助光源4を消灯させるか、画質に影響のないレベルで減光させるようにする。
【0064】
なお、ファインダーカメラCによる撮像を行うときは、照明部材17を点灯させるようにする。照明部材17は、観察容器31の下面側全体を照明するように点灯制御される。特に、観察容器31の下面側が暗い時に(あるいは、観察装置が設置されている部屋が所定の明るさより暗いとき)照明部材17を点灯させることで、明瞭な画像を得ることができる。
【0065】
内皮の観測を行う場合は、基本的に補助光源4を使用しなくてもよいが、移植用角膜の温度が低い時は、補助光源4を使用することが好ましい。移植用角膜の温度が低い場合は、角膜表面に凹凸が形成されることがあり、そのため、鏡面反射法による観察方法では、スリット光が角膜表面で理想的に反射されず、角膜観察カメラ15で画像を捉えられなくなることがある。そこで、補助光源4を点灯あるいは増光させることで、角膜の内皮部分を背後から照明して、明瞭な画像を得ることができる。
【0066】
各部制御手段54は、エンコーダ61からの移動量の信号を受け取り、光源制御手段53が光源に対する点灯・消灯・減光・増光の制御を行えるようにする。また、温度計62からの温度データを受け取り、光源制御手段53による光源に対する制御を行えるようにする。また、切換検知スイッチ18からの信号を受け取り、ファインダーカメラCからの画像信号と角膜観察カメラ15からの画像信号の切り換え制御を行う。いずれかの画像信号をモニターに表示させるようにする。
【0067】
調整機構63は、観察容器31(観察容器保持部B)のXYZ方向の位置調整を行う観察容器移動機構である。
【0068】
<切り換え動作>
つぎに、拡大画像の撮像と全体画像の撮像の切り換え動作について
図5により説明する。
図5の左側は、観察装置の状態を示している。右側は、モニター画面の表示例を示している。
【0069】
まず、
図5A(a)の状態になるように、ユニットUをセットする。この状態では、ファインダーカメラCが観察容器31の垂直下方に位置している。
【0070】
まず、ファインダーカメラCで観察容器31を見る(S1)。その状態はモニター画面上で例えば、全体画像M1のように表示される。この画面上において、二重円で示されるのが移植用角膜全体の画像である。この画像では、全体画像M1の中心に移植用角膜が位置していない。モニターで全体画像を見ながら、XY方向の位置調整を行う(S2)。
【0071】
例えば、移植用角膜100の中央を全体画像の中央(基準位置)に移動させる(S3)。移動操作が完了した状態をモニターに表示される全体画像M2に示す。なお、撮影された画像は記憶装置に記憶させることができ、所定の操作を行うことで記憶できる。このように、全体画像を撮影する際に、ファインダーカメラCは観察容器31の垂直下方に配置されるので、例えば、観察容器31を垂直上下方向に移動させたとしても画像の位置がずれるような不都合が生じない。また、撮影された画像が歪むような問題も生じない。
【0072】
つぎに、カメラを角膜観察カメラに切り換える(S4)。
図5A(b)は、ユニットUを移動させて、鏡面反射光学系Aが観察容器31の垂直下方に配置された状態を示す。ユニットUを移動させて切換検知スイッチ18による切り換えを検出することで、カメラからの画像が切り換えられて表示される。このときZ位置があっていない(合焦していない)場合は、何も見えない。Z方向を上下何れかに移動して内皮の位置(合焦位置)を探す(S5)。ここで、観察される内皮が暗い場合は、保持台30を傾けて調整する。内皮表面が光軸20に垂直になった時が最も明るく明瞭な画像になる。モニターには、拡大画像M3として表示されている。
【0073】
内皮に合焦できた後(S6)、ファインダーカメラCに切り換える(S7)。この時の状態を
図5A(c)に示す。ユニットUを移動させ、再び、ファインダーカメラCが観察容器31の直下に位置する。このときモニターに全体画像M4が表示される。この画像により観察位置の確認を行う。これは、保持台30の傾動で、観察位置がずれることがあるためである。ずれている場合は、(S2)に戻る。
【0074】
観察位置が正しい場合は、ユニットUを移動させて、角膜観察カメラに切り換える(S8)。この状態を
図5B(d)に示す。ここで内皮の拡大画像M5が合焦しているかどうかを確認し、その画像を記憶する。記憶させた画像は、モニター画面の左側に小さな画像m1として表示される。また、エンコーダによるZ方向の位置表示をリセットする(S9)。Z方向の位置は、モニター画面の表示エリア5に表示されている。リセットすると数値は0になる。
【0075】
つぎに、移植用角膜100の上皮に角膜観察カメラを合焦させるため、観察容器31を垂直下方に移動させる(S10)。この時の状態を
図5B(e)に示す。Z方向の移動に伴い、表示エリア5の数値も連動して変化する。上皮を観察するときは、補助光源4を点灯させて、移植用角膜100を背後から照明する。Z方向に移動する途中で補助光源4を点灯(増光)させることで観察しやすくなる。撮影された上皮の画像は拡大画像M6として表示される。上皮に合焦できた時、表示エリア5によりZ方向の位置を確認する(S11)。この数値は移植用角膜100の厚さに相当する。合焦した上皮の拡大画像を記憶させる。記憶させた場合は、m2のように表示される。角膜厚さデータも合わせて記憶される。
【0076】
つぎに、観察容器31を再びZ方向(垂直上方)に移動し、内皮が合焦した位置に戻す(S12)。この状態を
図5B(f)に示す。モニターには再び内皮の拡大画像M7が表示される。
【0077】
つぎに、ユニットUを移動させて、ファインダーカメラCに切り換える。この状態は、
図5C(g)に示される。モニターには全体画像M8が表示されている。この全体画像M8を記憶する。記憶された画像はm3として表示される。この画像は、撮影した角膜細胞位置情報に相当する。
【0078】
なお、移植用角膜の観察は、角膜の中央のみを観察するのではなく、角膜の周辺部の観察も行うことができる。観察容器保持部Bの保持台30と支持台32は球面嵌合しているので、移植用角膜全体は上向きの略球面状に保持されているので、保持台30を傾動させることで、角膜周辺も合焦した状態を保持しながら観察できる。
【0079】
また、上皮を観察するときに補助光源4を点灯(増光)しているが、移植用角膜の温度が低い場合(例えば、20℃以下)の時も補助光源4を点灯(増光)することが好ましい。
【0080】
どのタイミングで画像を記憶させるか否かについては、操作者が適宜決めることができるものである。また記憶させる画像の枚数についても適宜決めることができる。
【0081】
なお、全体画像の中心と拡大画像の中心が合致するように、予め、ファインダーカメラCと角膜観察カメラ15の相対的位置関係が調整される。
【0082】
<第2実施形態>
図6により第2実施形態に係る移植用角膜の観察装置の構成例を示す。この構成において、ユニットUは、ファインダーカメラCと鏡面反射光学系Aを構成する対物レンズ系14(鏡面反射光学系Aの一部に相当する。)により構成されている。ユニットUの切り換えを検知する切換検知スイッチ18も第1実施形態と同様に設けられている。観察装置の構成要素は基本的に第1実施形態と同じであるので、同じ符号を付すことにして、その説明を省略する。第1実施形態に比べて、ユニットUの大きさは小さくなり、移動負荷も小さくなる。
【0083】
<第3実施形態>
図7により第3実施形態に係る移植用角膜の観察装置の構成例を示す。この構成において、ユニットUは、ファインダーカメラCと鏡面反射光学系Aを構成するミラー12c(鏡面反射光学系Aの一部に相当する。)により構成されている。ユニットUの切り換えを検知する切換検知スイッチ18は第1スイッチ18aと第2スイッチ18bの2つが設けられている。2つのスイッチは、ユニットUが移動する範囲の終端を検知している。スイッチを2つ設ける構成は、他の実施形態において採用してもよい。
図7の状態からユニットUを左方向に移動させることで、ファインダーカメラCを観察容器31の垂直下方向にセットすることができる。
【0084】
<第4実施形態>
図8により第4実施形態に係る移植用角膜の観察装置の構成例を示す。この構成において、ユニットUは、観察容器31を含めた観察容器保持部Bである。
図8の状態から、ユニットU(観察容器保持部B)を左側に移動させることで、ファインダーカメラCを観察容器31の垂直下方にセットすることができる。この場合の切換機構は、観察容器移動機構がその機能を果たすことになる。観察容器移動機構上で、あるいは観察容器移動機構全体を、2つのカメラの光軸間距離だけ、定量動かすように構成すればよい。観察を切り換えても、観察位置の相互関係を保持することができる。
【0085】
<第5実施形態>
図9により第5実施形態に係る移植用角膜の観察装置の構成例を示す。この実施形態は、
図1に示す第1実施形態において、鏡面反射光学系AとファインダーカメラCが上側に、観察容器保持部B(観察容器31)が下側に配置される構成である。第1実施形態と上下が反転した構成であり、部材構成や機能において変わりはない。
図9において、観察容器31の垂直上方に鏡面反射光学系Aがセットされており、この状態からユニットUを左側に移動させることで、ファインダーカメラCを観察容器31の垂直上方にセットすることができる。なお、第1実施形態以外の実施形態においても、上下が反転した構成を採用することができる。
【0086】
<第6実施形態>
図10により第6実施形態に係る移植用角膜の観察装置の構成例を示す。この実施形態は、第1〜第5実施形態とは異なり移動する要素がない。鏡面反射光学系Aの対物レンズ系14の下部に小さなミラー20が設けられており、光の一部を反射してファインダーカメラCへと導く。この構成によれば、拡大画像の観察光路を邪魔することなく、全体画像を取得することができる。この構成の場合、機械的な構造による切換機構はなく、機械的な移動を伴わない切換機構を実現することができる。例えば、モニター画面上で、拡大画像か全体画像化の観察をソフト的に切り換えることができる。このような切り換えも本発明における切換機構に含まれる。この場合は、例えば、ファインダーカメラCには赤外フィルターを付加し、遮蔽板16は可視光遮断・赤外透過フィルターを使用し、照明部材17は赤外光、などとして、全体画像に遮蔽板16が邪魔にならないようにする。
【0087】
<第7実施形態>
図11により第6実施形態に係る移植用角膜の観察装置の構成例を示す。この実施形態も、第6実施形態と同様に移動する要素がない。ミラー12bとミラー12cの間にハーフミラー12eが設けられており、光の一部をファインダーカメラCに取り込む。ファインダーカメラCの前面側にレンズ21が配置される。ハーフミラー12eの透過度は50%等、拡大画像の観察に影響を及ぼさない程度に適宜設定することができる。この実施形態の場合もファインダーカメラCには赤外フィルターを付加し、遮蔽板16は可視光遮断・赤外透過フィルターを使用し、照明部材17は赤外光、などとして、全体画像に遮蔽板16が邪魔にならないようにする。
【0088】
<別実施形態>
図5におけるモニター画面の表示は一例を示すものであって、この表示例に限定されるものではない。