(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように車両の前方側に取り付けられた従来のリッドの場合、リッドを開いた状態において、リッドが車両の側方に大きく張り出した状態となる。このため、例えば、充電中に歩行者等が車両の側方を通過する際に通行の妨げになる虞がある。また充電が終了した後リッドを閉じ忘れてしまうと、リッドが開いていることに気付かずに歩行者等と接触してしまう虞もある。特に、充電口に普通充電用のインレットと、急速充電用のインレットとが設けられている場合は、その面積が比較的大きい。つまりリッドの面積が比較的大きく、側方へのリッドの張り出し量がより大きくなるため、より一層歩行者等の通行の妨げになり易い。
【0006】
また従来構造のリッド装置の場合、リッドを開いた状態では充電口が大きく露出される。このため、充電中の降雨や降雪等により、充電口や充電コネクタが汚れ易く、さらには充電口や充電コネクタが凍結するといった問題が生じる虞がある。例えば、家庭用電源等で普通充電を行う場合、充電コネクタを普通充電用インレットに接続した状態(充電状態)で数時間程度放置することもあり、充電口や充電コネクタの汚れや凍結等の問題が生じ易い。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、充電口を開いた状態でのリッドの張り出し量を抑制できると共に、充電状態における充電口内への雨や雪の侵入を抑制することができる充電口のリッド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、車両の充電口を開閉するリッドと、前記充電口に連結され、前記充電口を閉じる全閉位置と前記充電口を開放する全開位置との間で前記リッドを前記車両の上下方向に移動可能に支持する支持アームと、を備え、前記支持アームは、一端側が前記充電口内に揺動可能に取り付けられる第1の揺動アームと、一端側が前記第1の揺動アームに揺動可能に連結されると共に他端側が前記リッドに揺動可能に取り付けられる第2の揺動アームと、を有し、前記リッドは、前記全開位置において
は前記充電口の上方で当該リッドが車体表面に沿うよう
に保持され、前記全閉位置と前記全開位置との間の中間位置において
は当該リッドの下端が前記車体表面から離れる方向に傾倒された半開状態とされ
て前記充電口に差し込まれた充電コネクタの上を覆うように
保持され、前記全閉位置においては前記充電口を閉じた状態で保持されることを特徴とする充電口のリッド装置にある。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様の充電口のリッド装置において、前記支持アームは、前記車両の前後方向における前記リッドの両端部にそれぞれ設けられ、各支持アームは、前記車両の前方側に傾斜して設けられ、且つ前記車両の後方側の前記支持アームの長さが、前方側の前記支持アームの長さよりも長いことを特徴とする充電口のリッド装置にある。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様の充電口のリッド装置において、前記支持アームは、前記リッドの上部に取り付けられるアームアッパーと、前記リッドの下部に取り付けられ前記アームアッパーとは独立するアームロアと、を含み、前記アームアッパー及び前記アームロアのそれぞれが、前記第1の揺動アームと前記第2の
揺動アームと、を含むことを特徴とする充電口のリッド装置にある。
【0011】
本発明の第4の態様は、第3の態様の充電口のリッド装置において、前記アームアッパーを構成する前記第1の揺動アームは、当該第1の揺動アームの揺動中心である一端部を中心とする円弧状の係合面部と、該係合面部の円弧に沿って当該係合面部に並設される複数の穴部と、を有し、前記穴部に係合ピンを係合させることで前記
第1の揺動アームの動作を規制するロック機構部を有することを特徴とする充電口のリッド装置にある。
本発明の第5の態様は、第
1から4の何れか一つの態様の充電口のリッド装置において、前記第1の揺動アームは、車体表面に対して平行に設けられた連結ピンによって一端側が前記充電口内に揺動可能に取り付けられ、前記第2の揺動アームは、一端側が前記連結ピンによって前記第1の揺動アームに揺動可能に連結されると共に他端側が前記連結ピンによって前記リッドに揺動可能に取り付けられていることを特徴とする充電口のリッド装置にある。
【発明の効果】
【0012】
かかる本発明のリッド装置によれば、車体表面に対して略平行な状態でリッドを充電口の上方まで移動させることができる。このため、充電口を開いた状態でリッドの張り出し量が小さく抑えられる。またリッドは車両の上下方向に回動可能であるため、充電時に充電コネクタを覆うように充電口の上部にリッドを配置することで、充電口や充電コネクタの汚れや、凍結といった問題を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、
図1〜
図8を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、充電口を開閉するリッド装置を備えた車両の一例を示す外観図である。
図2は、本発明に係るリッド装置を示す概略図であり、リッドが全開位置にある状態を示す図である。
図3は、本発明に係るリッドが全開位置にある状態を示す断面図であり、
図4は、リッドが全閉位置にある状態を示す断面図である。また
図5は、リッドが中間位置にある状態を示す概略図であり、
図6は、リッドが中間位置にある状態を示す断面図である。なお
図3、
図4及び
図6において(a)は車両後方側の支持アームに対応する部分を示し、(b)は車両前方側の支持アームに対応する部分を示している。また
図7は、ロック機構部を説明する概略図であり、
図8は、ロック機構部を構成する係合ピンの動作を説明する概略図である。
【0016】
本実施形態に係る車両1は、バッテリ(蓄電手段)の電力によって駆動する走行用モータを備える電動車両であり、
図1及び
図2に示すように、車両1のアウタパネル2には、充電口3が形成されている。充電口3の位置は特に限定されないが、本実施形態では、車両1の車体後方側部に設けられている。この充電口3内には、図示しない充電コネクタが接続される充電用のインレット4が設けられている。本実施形態では、充電口3内に、普通充電用インレット4Aと、急速充電用インレット4Bとが並設されている(
図2参照)。
【0017】
この普通充電用インレット4Aには、家庭用電源(コンセント)に繋がる普通充電用コネクタ(充電コネクタ)が接続され、急速充電用インレット4Bには、商業施設の駐車場等に設置される急速充電設備の急速充電用コネクタ(充電コネクタ)が接続される。これら普通充電用コネクタ又は急速充電用コネクタから供給される電力によってバッテリの充電が行われる。
【0018】
なお普通充電用インレット4Aは、未使用時にはキャップ5で塞がれており、充電時にはキャップ5が外されて普通充電用コネクタが接続される。急速充電用インレット4Bも同様に、未使用時にはキャップ6によって塞がれている。
【0019】
このような充電口3にはリッド装置10が設けられ、このリッド装置10により充電口3が開閉可能に構成されている。すなわち充電口3の開口部には、リッド20が開閉可能に設けられている。
【0020】
そして本発明は、このような充電口3を開閉するリッド装置10の構成に特徴がある。本実施形態に係るリッド装置10は、充電口3の開口部に設けられるリッド20と、このリッド20を、充電口3を閉塞する全閉位置と充電口3を開放する全開位置との間で車両1の上下方向に移動可能に支持する支持アーム30と、を備える。すなわちリッド装置10は、リッド20を車両1の上下方向に移動させることで、充電口3を開閉可能に構成されている。
【0021】
支持アーム30は、本実施形態では、車両1の前後方向におけるリッド20の両端部付近にそれぞれ取り付けられている。詳しくは、支持アーム30は、車両1の前方側端部近傍でリッド20に取り付けられる第1の支持アーム30Aと、車両1の後方側端部近傍でリッド20に取り付けられる第2の支持アーム30Bと、を含む。また第1の支持アーム30Aは、リッド20の上部側に接続されるアームアッパー31Aと、リッド20の下部側に接続されるアームロア32Aと、を含む。同様に、第2の支持アーム30Bは、アームアッパー31Bと、アームロア32Bと、を含む。これらアームアッパー31A,31Bと、アームロア32A,32Bとは、連結されることなく独立して設けられている。
【0022】
さらに、アームアッパー31A,31B及びアームロア32A,32Bのそれぞれは、複数本のアーム部材で構成されている。本実施形態では、
図4に示すように、アームアッパー31A,31Bは、第1の揺動アームである第1のアームアッパー33(33A,33B)と、第2の揺動アームである第2のアームアッパー34(34A,34B)と、で構成されている。第1のアームアッパー33は、その一端部が充電口3の上部に連結ピン35によって回動可能に取り付けられている。この第1のアームアッパー33の先端部(他端部)に第2のアームアッパー34が連結ピン36によって回動可能に連結されている。第2のアームアッパー34の先端部(他端部)は、連結ピン37によってリッド20の上部に回動可能に取り付けられている。
【0023】
アームロア32は、アームアッパー31A,31Bと同様に、第1の揺動アームである第1のアームロア38(38A,38B)と、第2の揺動アームである第2のアームロア39(39A,39B)と、で構成されている。そして第1のアームロア38の一端部が車両1の充電口3内の上部に連結ピン40によって回動可能に取り付けられ、この第1のアームロア38の先端部(他端部)に第2のアームロア39が連結ピン41によって回動可能に連結されている。第2のアームロア39の先端部(他端部)は、連結ピン42によってリッド20の下部に回動可能に取り付けられている。
【0024】
このように本実施形態に係るリッド装置10では、リッド20が、例えば、第1のアームアッパー33と第2のアームアッパー34のように連結ピンで連結された二本のアーム部材からなる支持アーム30で支持されている。
【0025】
これによりリッド20は、充電口3を閉じる全閉位置から充電口3の開口よりも上方に位置されて充電口3を開放する全開位置まで、車両1の車体表面に沿って移動可能となっている。具体的には、リッド20は、車両1の車体表面に対して略平行に保持した状態で、
図4に示す全閉位置から
図3に示す全開位置まで上方に移動させることができる。
【0026】
そして、このように車両1の車体表面に対して略平行に保持した状態でリッド20を全開位置まで移動させることで、つまり全開位置でリッド20が車両1の車体表面に対して略平行に保持されていることで、リッド20の車体表面からの突出量を小さく抑えることができる。例えば、車両の前後方向でリッドを揺動させることで充電口を開閉する従来の構造に比べても、リッド20の突出量を小さく抑えることができる。したがって、充電中など、リッド20が開いた状態でも、リッド20は、車両1の側方を通過する歩行者等の妨げになりにくい。
【0027】
ところで、本実施形態に係る第1のアームアッパー33は、側面視において略U字形状をなす湾曲部33aを一端側(車体側)に有する(
図3,
図4参照)。第1のアームアッパー33の一端部は充電口3よりも上方に取り付けられているため、第1のアームアッパーが直線状に形成されていると、リッドを上下方向に移動させて充電口3を開閉する際、第1のアームアッパーが車両1のアウタパネル2に干渉してしまう。このため、第1のアームアッパー33が湾曲部33aを有するようにし、リッド20を上下方向に移動させて充電口3を開閉する際、第1のアームアッパー33が車両1のアウタパネル2に干渉することがないようにしている。つまり湾曲部33aは、充電口3を開閉する際に第1のアームアッパー33が車両1のアウタパネル2に干渉しない形状に形成されている。
【0028】
また本実施形態では、
図3(a)に示すように、全開位置において第1のアームロア38Bが第1のアームアッパー33の湾曲部33aに当接する。これにより、リッド20の上方への移動が規制されている。
【0029】
また本実施形態では、各支持アーム30(第1の支持アーム30A,第2の支持アーム30B)は、車両の上下方向(鉛直方向)から車両1の前方側に所定角度で傾斜して設けられ、さらに車両1の後方側の第2の支持アーム30Bの長さが、車両1の前方側の第1の支持アーム30Aの長さよりも長くなっている。
【0030】
このため、全閉位置から全開位置までリッド20を移動させる際の開閉軌跡、すなわち車両1の側面視(
図2参照)におけるリッド20の開閉軌跡は、リッド20よりも車両前方側に中心を有する円弧状となる。したがって、全開位置にあるリッド20は、上述のように車両1の車体表面(アウタパネル2)に対して略平行であるが、リッド20の表面は若干だけ車両1の前方側を向いた状態となる。これにより車両1の前方側から車両1の側方を歩行者が通過する際、歩行者がリッド20に接触する場合でも、リッド20の表面に接触するだけで済み、リッド20の端部に引っかかる等の問題は生じにくい。よって歩行者等のダメージを抑制することができる。
【0031】
またリッド20は、全閉位置(
図3)と全開位置(
図4)との間の中間位置では、さらに車両1の上下方向で回動可能となっている。具体的には、リッド20が車両1の車体表面(アウタパネル2)に対して略平行な状態から、リッド20の下端部が車両1から離れる方向に移動された姿勢に回転させることができる。例えば、リッド20を全開位置からリッド20を下方に移動させる際、
図5及び
図6に示すように、リッド20を回転させ、リッド20の下端側が車両1の車体表面から離れる方向に傾倒された半開状態とすることができる。
【0032】
したがって、例えば、
図3に示すようにリッド20が全開位置にある状態で、普通充電用インレット4Aに普通充電用コネクタを接続し、その後、リッド20の下端部が車体表面から離れる方向にリッド20を回転させながらリッド20の下端部が普通充電用コネクタ100(
図6参照)に当接する中間位置まで下方に移動させる。これにより、充電口3や、普通充電用インレット4Aに接続された普通充電用コネクタ100(
図6参照)の上部をリッド20で覆って保護することができる。例えば、充電中に降雨や降雪があった場合でも、リッド20によって充電口3や普通充電用コネクタ100への雨や雪の付着が抑えられる。したがって、充電口や充電コネクタの汚れや凍結を防止することができる。勿論、急速充電用インレット4Bに急速充電用コネクタが接続されている場合にも、同様の効果が得られる。
【0033】
さらにリッド装置10は、充電中に中間位置にあるリッド20の開閉動作を規制し、リッド20を、充電コネクタ(普通充電コネクタ、急速充電コネクタ)を覆う半開状態にロックするロック機構部50を備えるようにしてもよい。このロック機構部50は、リッド20を中間位置にロックすることで、リッド20によって充電コネクタの引き抜き方向への移動が阻止されるよう構成されている。
図7は、ロック機構部50を備えるリッド装置の一例を示す概略図であり、
図8は、ロック機構部を構成する係合ピンの動作を説明する図である。
【0034】
図7及び
図8に示すように、この例では、第1のアームアッパー33Bの湾曲部33aより第2アームアッパー34B側の部位の側面には、ロック機構部50が係合される係合面部33bが設けられている。係合面部33bは、第1のアームアッパー33Bの揺動中心である連結ピン35から同一距離となるよう連結ピン35を中心とする円弧状に形成されている。そして、この係合面部33bには、複数の穴部43が係合面部33bの円弧に沿って並んで形成されている。つまり複数の穴部43は、リッド20を開閉する際の第1のアームアッパー33Bの軌跡に沿って円弧状に並べられている。これらの穴部43の間隔は特に限定されないが、極力近接して設けられていることが好ましい。
【0035】
ロック機構部50は、この係合面部33bに設けられた穴部43に係合する係合ピン51と、係合ピン51を穴部43に対して離接する方向に移動させるアクチュエータ装置(駆動手段)52と、で構成されている。
【0036】
このロック機構部50は、例えば、リッド20が半開状態となる中間位置で(
図6参照)、係合ピン51が係合面部33bの穴部43に対向するように配置されている。言い換えれば、穴部43は、リッド20が中間位置(半開状態)にあるときに、ロック機構部50の係合ピン51と対向するように、第1のアームアッパー33Bの係合面部33bに形成されている。
【0037】
そして、この係合ピン51は、通常時(解錠時)は、
図8(a)に示すように、その先端が第1のアームアッパー33Bから離れた位置で保持されている。例えば、車内に設けられたスイッチ操作等により施錠の指示があると、ロック機構部50は、アクチュエータ装置52を駆動させ、
図8(b)に示すように、係合ピン51を前進させて穴部43に係合させる。これにより、第1のアームアッパー33Bの動作が規制される。つまりリッド20の開閉動作が規制される(施錠時)。
【0038】
例えば、
図6に示すように普通充電用コネクタ100が接続された状態で、ロック機構部50によってリッド20が中間位置にロックされると、普通充電用コネクタ100は、リッド20によって引き抜き方向への移動が阻止される。すなわち普通充電用コネクタ100の引き抜きが禁止される。従って、充電中に不用意に普通充電用コネクタ100が抜けることがない。また、いたずら等によって普通充電用コネクタ100が抜かれることを防止することができ、防犯の面でも効果を発揮することができる。勿論、急速充電用インレット4Bに急速充電用コネクタが接続された状態であっても、同様の効果が得られる。
【0039】
また本実施形態では、上述のように係合面部33bには複数の穴部43が近接して設けられている。このため、施錠時には、特定の穴部43と係合ピン51とを高精度に位置合わせしなくても、係合ピン51を何れかの穴部43に係合させることができる。また、充電コネクタ(普通充電用コネクタ、急速充電用コネクタ)の形状や大きさに応じて中間位置でのリッド20の位置や傾斜角度が変化するが、この変化に合わせて適宜係合する穴部43を選択することができる。
【0040】
また本実施形態では、リッド20が半開状態にある中間位置だけでなく、
図7に仮想線で示すようにリッド20が全閉位置にある状態においても、係合ピン51に対向する位置に穴部43が形成された係合面部33bが存在する。すなわち第1のアームアッパー33Bの係合面部33bは、リッド20が全閉位置にある状態においても、係合ピン51に対向する位置に穴部43が存在するように所定の長さで形成されている。
【0041】
したがって、リッド20が全閉位置にある状態でも、このロック機構部50によってリッド20の開閉動作を規制(ロック)することができる。
【0042】
なおロック機構部50は、上述のように車内に設けたスイッチ操作により作動するようにしてもよいし、例えば、車両1のドアロックに連動して作動するようにしてもよい。
【0043】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、勿論、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。