特許第6551857号(P6551857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6551857優れた過酸化水素保存性を示すプレフィルドシリンジ
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  • 特許6551857-優れた過酸化水素保存性を示すプレフィルドシリンジ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6551857
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】優れた過酸化水素保存性を示すプレフィルドシリンジ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/28 20060101AFI20190722BHJP
   A61M 5/31 20060101ALI20190722BHJP
   A61J 1/06 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   A61M5/28
   A61M5/31 530
   A61J1/06 Z
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-22388(P2019-22388)
(22)【出願日】2019年2月12日
【審査請求日】2019年2月13日
(31)【優先権主張番号】特願2018-215913(P2018-215913)
(32)【優先日】2018年11月16日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518408785
【氏名又は名称】株式会社KORTUC
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】山下 正悟
【審査官】 和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−008874(JP,A)
【文献】 特表2004−537340(JP,A)
【文献】 特開2014−057632(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/041514(WO,A1)
【文献】 特開2003−267706(JP,A)
【文献】 特開2001−206334(JP,A)
【文献】 特開2001−341794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/28
A61J 1/06
A61M 5/31
B65D 1/09
B65D 1/00
B65D 1/02
C01B 15/01
A61L 31/04
A61L 31/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素溶液がプレフィルドされた過酸化水素溶液用シリンジであって、
前記シリンジと前記過酸化水素溶液とが直接接触する部分のシリンジ材質がシクロオレフィンポリマー(COP)又はシクロオレフィンコポリマー(COC)であり、
前記過酸化水素溶液は、過酸化水素を水に溶かした溶液であって、必要に応じて、添加物を含有することができる溶液である、シリンジ。
【請求項2】
前記過酸化水素溶液の前記過酸化水素の濃度は、0.01から40%(v/v)である、請求項に記載のシリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジ、特に、過酸化水素溶液の分解能がガラスよりも低いシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
過酸化水素溶液は、工業的には漂白剤として使用され、食品分野では殺菌剤として使用されている。過酸化水素を2.5から3.5 w/v%含むオキシドールは、消毒剤として医療用に用いられている。
【0003】
過酸化水素溶液は、ヒアルロン酸と組み合わせることで放射線増感剤として用いることができる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2008/041514
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように過酸化水素溶液を放射線増感剤で使用する場合、容易に分解される過酸化水素溶液の特性上、過酸化水素溶液は、使用時に容器から量り取る必要があった。
【0006】
また、過酸化水素溶液は従来のガラス(材質はホウケイ酸ガラス等)製シリンジを用いてプレフィルド化すると、保存中に膨張したり、ガスケットが押し戻されたりする問題が生じ、長期保存が不可能であった。この課題を解決するために本発明は、長期保存可能な過酸化水素溶液用プレフィルドシリンジを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、
過酸化水素溶液用シリンジであって、
上記シリンジと上記過酸化水素溶液とが直接接触する部分のシリンジ材質が樹脂であって、
上記樹脂は、上記過酸化水素溶液中の過酸化水素の分解能がガラスよりも低い、シリンジを提供することである。
【0008】
このシリンジを用いることで、過酸化水素溶液中の過酸化水素の分解を抑制することが可能になり、例えば、過酸化水素溶液をプレフィルドしたシリンジであっても長期間の保存が可能になると考えられる。
【発明の効果】
【0009】
この発明により、過酸化水素溶液を長期保存可能な放射線増感剤用プレフィルドシリンジが提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態による、過酸化水素溶液が充填されたプレフィルドシリンジの概略図を示している。
図2図2は、実施例における各シリンジ材質の過酸化水素残存率のグラフを示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
便宜上、本願で使用される特定の用語は、ここに集めている。別途規定されない限り、本願で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。文脈で別途明記されない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の言及を含む。
【0012】
本発明で示す数値範囲及びパラメーターは、近似値であるが、特定の実施例に示されている数値は可能な限り正確に記載している。しかしながら、いずれの数値も本質的に、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含んでいる。また、本明細書で使用する「約」という用語は、一般に、所与の値又は範囲の10%、5%、1%又は0.5%以内を意味する。或いは、用語「約」は、当業者が考慮する場合、許容可能な標準誤差内にあることを意味する。
【0013】
シリンジ
本実施形態にかかるシリンジは、
過酸化水素溶液用シリンジであって、
上記シリンジと上記過酸化水素溶液とが直接接触する部分のシリンジ材質が樹脂であって、
上記樹脂は、上記過酸化水素溶液中の過酸化水素の分解能がガラスよりも低い。
【0014】
図1は、本実施形態による、過酸化水素溶液50が充填されたプレフィルドシリンジ1の概略図を示している。本実施形態において、シリンジ10、特にバレル20の形状は、一般的には、円筒形であり、シリンジ10の一端には、過酸化水素溶液50が排出される針装着部30を備え、シリンジ10の他端には、プランジャーロッド70を挿入するための開口部80を備え、開口部80周辺には、フランジ90を備える。図1に示すプレフィルドシリンジ1は、充填された過酸化水素溶液50を密閉するために、針装着部30にはキャップ40が備わり、開口部80からガスケット60を備えるプランジャーロッド70が挿入されている。
【0015】
本実施形態において、過酸化水素溶液用シリンジとは、過酸化水素溶液中の過酸化水素の分解能が低いシリンジを意味する。本実施形態において、過酸化水素溶液は、過酸化水素を溶媒(例えば、水)に溶かした溶液を意味し、必要に応じて、添加物(例えば、リン酸及びフェナセチン)を含有していてもよい。本実施形態において、シリンジは、単一の材質から製造されていてもよく、複数の材質(コーティング等の多層構造を含む)から構成されていてもよい。単一の材質から製造されたシリンジの場合、シリンジ全体が上記樹脂でできている。複数の材質から構成されたシリンジの場合、シリンジと過酸化水素溶液とが直接接触する部分が上記樹脂でできており、他の部分は、ガラス等の過酸化水素の分解能が高い材質でできていてもよい。また、過酸化水素溶液と接触するすべての部分が上記樹脂でできている必要はなく、シリンジ本体のバレルの内面を始めとする主な部分が上記樹脂で出来ていればよい。すなわち、他にも過酸化水素溶液と接触する可能性がある、プランジャーロッド、ルアーロック、キャップ、ガスケットなどは、上記樹脂でできている必要はない。また、シリンジ本体のバレルの内面に塗布されることもある、シリコーンオイルなどの潤滑剤についても、上記樹脂でできている必要はない。
【0016】
過酸化水素の分解能は、保存開始前の過酸化水素溶液中の過酸化水素の濃度に対する特定の温度条件下での特定の保存期間後の過酸化水素溶液中の過酸化水素の濃度の割合(過酸化水素残存率)から決定することができる。保存は、密閉状態で行われる。温度条件は、限定するものではないが、35℃、37℃、40℃、又は60℃であってもよい。保存期間は、限定するものではないが、1週間、2週間、3週間又は4週間であってもよく、4週間以上であってもよい。保存開始前の過酸化水素溶液中の過酸化水素の濃度は、例えば、0.01から40%(v/v)の範囲の任意の濃度で試験してもよい。実施形態において、上記樹脂の過酸化水素の分解能は、ガラスよりも低ければよい。上記樹脂の過酸化水素残存率は、過酸化水素2.5〜3.5w/v%を含有する溶液を60℃4週間密閉保管する条件下で、70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは78%以上、更に好ましくは80%以上であればよい。過酸化水素溶液中の過酸化水素量は、日本薬局方のオキシドール定量法に従い、過マンガン酸カリウム液で滴定することによって求めることができる。
【0017】
本実施形態において、上記樹脂は、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)及びポリプロピレンを例示することができるが、上記樹脂は、ガラスよりも低い過酸化水素の分解能を有するのであれば、これらに限定するものではない。
【0018】
本実施形態のシリンジは、過酸化水素溶液がプレフィルドされたシリンジとして提供してもよい。過酸化水素溶液がプレフィルドされたシリンジは、シリンジの摺動可能に備えられたガスケットを備える。また、過酸化水素溶液がプレフィルドされたシリンジは、針装着部は(例えば、キャップなどによって)封止されている。
【0019】
本実施形態において、プレフィルドされたシリンジにおける過酸化水素溶液中の過酸化水素の濃度は、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35又は40%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよく、例えば、0.01から40%(v/v)、好ましくは、0.05から30%(v/v)である。
【実施例】
【0020】
過酸化水素溶液の安定性試験
ガラス製シリンジ、COP製シリンジ及びCOC製シリンジを用いて、過酸化水素溶液の安定性試験を行った。各シリンジに過酸化水素溶液を1mL加えて密閉し、60℃4週間にて保管した。保管後の過酸化水素溶液中の過酸化水素の残存率を測定した。過酸化水素溶液は、健栄製薬社製オキシドール「ケンエー」(過酸化水素2.5〜3.5w/v%を含有。リン酸、フェナセチン含有)を用いた。過酸化水素溶液中の過酸化水素量は、日本薬局方のオキシドール定量法に従い、過マンガン酸カリウム液で滴定にて検出した。
【0021】
結果を図2に示す。ガラスの場合は、過酸化水素残存率が70%未満である一方で、COP及びCOCは70%以上であった。以上の結果、COP製及びCOC製シリンジは、ガラス製シリンジよりも過酸化水素の分解を抑制することができた。
【符号の説明】
【0022】
1 プレフィルドシリンジ
10 シリンジ
20 バレル
30 針装着部
40 キャップ
50 過酸化水素溶液
60 ガスケット
70 プランジャーロッド
80 開口部
90 フランジ
【要約】      (修正有)
【課題】過酸化水素の分解を抑制するシリンジを提供する。
【解決手段】過酸化水素溶液用シリンジ10であって、上記シリンジと上記過酸化水素溶液50とが直接接触する部分のシリンジ材質が樹脂であって、上記樹脂は、上記過酸化水素溶液中の過酸化水素の分解能がガラスよりも低い、シリンジ。
【選択図】図1
図1
図2