(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
挿通穴が形成され支持体の一部であるロッドが前記挿通穴に挿通されて前記支持体に支持されるカップ部と、前記カップ部に連接し外周縁であるエッジ部を有するボウ部と、を有するアコースティックシンバルを有するシンバル型打楽器であって、
少なくとも一部が前記アコースティックシンバルから上方に露出するように前記アコースティックシンバルに装着され、前記アコースティックシンバルの打撃音を低減させる弱音部材と、
前記支持体に固定された固定部と、
前記固定部の一部として構成されるかまたは前記固定部に固定され、前記アコースティックシンバルに装着された前記弱音部材と係合することで前記アコースティックシンバルの回転を規制する規制部と、を有し、
前記弱音部材は、前記アコースティックシンバルにおける、前記挿通穴、前記支持体、または前記支持体に対して固定された部分である第1の係合部と、前記ボウ部の前記エッジ部自身、または前記ボウ部における前記カップよりも前記エッジ部に近い位置に設けられた係合機能部である第2の係合部と、を接続する接続部を有し、
前記接続部は、前記第1の係合部と前記第2の係合部とを接続したとき、前記第1の係合部と前記第2の係合部とを互いに近づける方向に付勢すると共に、前記ボウ部に対向する領域のうち少なくとも一部の領域においては前記ボウ部に対して非当接状態となることを特徴とするシンバル型打楽器。
挿通穴が形成され支持体の一部であるロッドが前記挿通穴に挿通されて前記支持体に支持されるカップ部と、前記カップ部に連接し外周縁であるエッジ部を有するボウ部と、を有するアコースティックシンバルを有するシンバル型打楽器であって、
少なくとも一部が前記アコースティックシンバルから上方に露出するように前記アコースティックシンバルに装着され、前記アコースティックシンバルの打撃音を低減させる弱音部材と、
前記支持体に固定された固定部と、
前記固定部の一部として構成されるかまたは前記固定部に固定され、前記アコースティックシンバルに装着された前記弱音部材と係合することで前記アコースティックシンバルの回転を規制する規制部と、を有し、
前記弱音部材は、前記アコースティックシンバルにおける、前記エッジ部のうち円周方向における任意の箇所、または、前記カップ部よりも前記エッジ部に近い位置に設けられた係合機能部である、複数の係合部の各々を、前記複数の係合部のうち他の係合部の少なくとも1つに対して接続関係にする接続部を有し、
前記接続部は、前記複数の係合部の各々を前記他の係合部の少なくとも1つに対して接続関係にしたとき、接続関係にした係合部同士を互いに近づける方向に付勢すると共に、前記ボウ部に対向する領域のうち少なくとも一部の領域においては前記ボウ部に対して非当接状態となることを特徴とするシンバル型打楽器。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1(a)は、本願発明の第1の実施の形態に係るシンバル型打楽器の模式的断面図である。
図1(b)は、斜め上側(表側)から見たシンバル型打楽器の模式的斜視図である。このシンバル型打楽器は、主として金属で成るアコースティックシンバル10(以下、シンバル10と略記する)を有し、演奏者によって打撃されることで振動して演奏音を発することで演奏されるアコースティックの打楽器としての基本特性を有すると共に、後述するように打撃センサで検出した打撃に応じた楽音を電子的に発音する電子楽器としての特性も有する。
【0021】
シンバル10は、カップ部11とカップ部11に連接するボウ部12とを有し、円盤状に一体に形成される。カップ部11はボウ部12よりも上方に椀状に少し盛り上がっており、カップ部11の中央には挿通穴14が形成される。ボウ部12の外周縁はエッジ部13である。ボウ部12は、水平状態にしたとき、半径方向外側にいくにつれて下方に傾斜するよう緩やかに湾曲している。ボウ部12は表面12aと裏面12bとを有し、表面12aが主に打撃される面となる。このほか、エッジ部13やカップ部11も打撃の対象となり得る。
【0022】
シンバル10は、ロッド21を有する支持体であるスタンド100(
図1(b))に支持される。シンバル10には、シンバル10の打撃音を低減させる弱音装置として、弱音具30が装着される。上側の緩衝材24と、台座22の上に配置された下側の緩衝材23との間にカップ部11及び弱音具30の接続部31が介在する。ロッド21がカップ部11の挿通穴14に下方から挿通され、緩衝材24を介して蝶ナットである締め付け具25で締め付けられることで、ロッド21に対してシンバル10が支持される。ロッド21は挿通穴14に遊嵌状態であり、シンバル10はロッド21に対してある程度までの揺動が可能である。また、回転については、シンバル10は後述する規制部52による規制の範囲で回転が可能である。なお、緩衝材23は円筒形状であってもよい。
【0023】
ボウ部12の裏面12bには打撃センサ42が配設される。打撃センサ42は、圧電素子等で成り、シンバル10の振動を検出する。打撃センサ42の構成に限定はない。図示はしないが、本打楽器は、音源を有する楽音発生部、CPUを含む楽音制御部を有し、打撃センサ42の検出結果に基づいて楽音制御部が楽音発生部から音響を発生させる。なお、打撃センサ42の検出結果に基づく楽音を発生させるか否かは、モード切り替えにより演奏者が任意に指定できる。
【0024】
台座22の下方においてロッド21には、固定部51が固定される。固定部51の固定の態様は問わず、ロッド21と一体に形成されてもよい。固定部51に、規制部52が固定されている。
図1(a)の例では、規制部52は側面視でL字型の突設棒であるが、外観形態は問わない。規制部52の固定部51に対する固定の態様は問わず、規制部52は固定部51と一体に形成されていてもよい。いずれにしても、規制部52は固定部51を介してスタンド100に対して固定関係となっている。固定部51及び規制部52は金属や硬質樹脂等の剛性の高い材料で形成される。
【0025】
規制部52の上端が、弱音具30の接続部31に形成された係止穴である係止部Hに挿入されており、弱音具30の回転が規制される。弱音具30はシンバル10に対して自由に回転できないので、弱音具30を介してシンバル10の回転範囲が規制される。
【0026】
図1(c)は、弱音具30の斜視図である。
図1(a)では、弱音具30の厚みは誇張して厚く描かれている。弱音具30は、接続部31を有して、ゴム、弾性樹脂、バネ等の弾性部材で一体に形成される。なお、弱音具30における接続部31以外の部分を接続部31よりも硬い部材で構成してもよい。接続部31の長手方向における一端部31aに取付穴32が形成されると共に、他端部31bに鉤状の取付部33が形成される。取付穴32は、ロッド21が貫通可能な大きさである。接続部31には、規制部52が係止されるための係止部Hが形成されている。係止部Hは、取付穴32と取付部33との間に形成される。
【0027】
ボウ部12には、係合穴15が形成されている(
図1(a)、(b))。係合穴15は、半径方向においてカップ部11よりもエッジ部13に近い位置に設けられた係合機能部であり、本実施の形態では係合穴15が「第2の係合部」の一例となる。
【0028】
弱音具30は、ロッド21の、カップ部11と緩衝材23とに挟まれた部分21bと、係合穴15とを接続する。本実施の形態ではロッド21の特に部分21bが、「第1の係合部」の一例となる。すなわち、ロッド21にシンバル10を支持させる際に、カップ部11と緩衝材23との間に弱音具30の一端部31aが挟まれるように、弱音具30の取付穴32にロッド21を挿通し、緩衝材24を介してカップ部11と弱音具30の一端部31aとを締め付け具25で締め付ける。さらに、弱音具30の他端部31bの取付部33を下方から係合穴15に挿通係合する。
【0029】
自由状態における接続部31の長さ(取付穴32から取付部33までの長さ)は、部分21bと係合穴15との距離よりも少し短く設定されている。従って、取付穴32を部分21bに係合し、取付部33を係合穴15に係合すると、接続部31は引っ張り状態となり、その弾性によって部分21bと係合穴15とを互いに近づける方向に付勢する。部分21bはスタンド100に固定されたロッド21の一部であるので、係合穴15には、相対的に、挿通穴14のあるシンバル10の半径方向中心に向かう付勢力F1が作用する(
図1(b))。その結果、シンバル10としては、挿通穴14と係合穴15とが互いに近づく方向に付勢される。
【0030】
ところで、接続部31は、ボウ部12の裏面12bに対向する領域のうち少なくとも一部の領域においてはボウ部12に対して非当接状態となるようになっている。
図1(a)の例では、ボウ部12が上方に凸となるように湾曲しているので、接続部31は、ほぼ全領域に亘ってボウ部12に対して非当接状態となる。
【0031】
シンバル10の表側には、弱音具30の取付部33が露出する。そのため、演奏者としては、取付部33が邪魔にならないよう取付部33のない領域を打撃したい。また、打撃センサ42により打撃検出の精度を安定化させるためには、円周方向における打撃センサ42の配置位置に近い領域が打撃されることが望ましい。そこで、本実施の形態では、挿通穴14を挟んで係合穴15と反対側の領域に打撃センサ42を配置している。仮に、シンバル10が自由に回転する構成であると、円周方向における打撃位置が随時変化し、打撃している領域に取付部33が近づいてくることがある一方、打撃センサ42が遠ざかることもあり、適切な位置を打撃できないおそれが生じる。
【0032】
そこで本実施の形態では、シンバル10に装着される装着部材である弱音具30を利用し、接続部31の係止部Hと規制部52との挿通係合によって、シンバル10の回転を間接的に規制している。演奏者は、シンバル10の回転方向における位置設定については、打撃センサ42がある付近を自身による打撃想定範囲に位置させて演奏すればよい。シンバル10の回転が規制されるので、取付部33を避けて打撃できると同時に打撃センサ42がある付近を打撃できる。なお、回転規制といっても、シンバル10の回転を完全に止める必要はないので、係止部Hと規制部52との関係は遊嵌であってもよい。
【0033】
係止部Hに規制部52を係止するのは、シンバル10に弱音具30が装着された状態で行える。すなわち、弱音具30は弾性を有するので、接続部31の弾性を利用して係止部Hに規制部52を挿通するのは容易である。なお、規制部52にも上下方向に撓む弾性特性を設けてもよい。
【0034】
図2は、弱音具の装着の有無による打撃音量の時間的変化を示す図である。
図2において、横軸に打撃後の経過時間(sec)をとり、縦軸に音量(dB)をとる。弱音具なしの場合は、約1.0秒経過しても音量は0dBまで低下しない。一方、従来の弱音具を装着し、ほぼ完全にミュートした場合は、約0.2秒経過前に音が減衰しきってしまう。これに対し、本実施の形態の弱音具30を装着した場合は、約0.5秒程度経過する頃に音量が0dBまで減衰する。また、最大レベルに着目すると、弱音具なしや従来の弱音具を装着した場合のいずれと比べても、本実施の形態の弱音具30を装着した場合は、最大レベルが低く抑えられている。すなわち、音の減衰時間が適度に保たれつつも、音量が低く抑えられている。
【0035】
出願人の解析によると、このような作用効果は、シンバル10において挿通穴14と係合穴15とが互いに近づく方向に付勢されることで得られることが判明した。柔らかい弱音具をシンバル上に載せる従来の構成とは異なり、本実施の形態では、シンバル10の一部において圧縮方向のテンションがかけられることで、高周波の豊かな音を減衰させ過ぎることなく音量を低く抑えることができる。
【0036】
また、弱音具30の接続部31は、ボウ部12に対向する領域のうちボウ部12に非当接状態となる領域を有するので、従来のように、全て領域でボウ部に接触する構成のように広い面積でボウ部の振動が抑制されることがない。これにより、打撃音が、元々のシンバルの音から大きく変化してしまうことがない。
【0037】
本実施の形態によれば、スタンド100のロッド21に固定された固定部51に規制部52を固定し、弱音具30の係止部Hに規制部52を係止することによって、シンバル10の回転を規制することができる。回転規制によって常に決まった適切な領域を打撃できる。従って、弱音具30が打撃の邪魔にならないようにすることができる。また、打撃センサ42による検出精度が安定する。しかも、回転規制のために、シンバル10に装着される弱音具30を利用するので、シンバル10に穴や係止部等を設けるための追加工を回転規制のためだけに施す必要がなく、汎用的なシンバルに対して適用が容易となる。よって、アコースティックシンバルに特別な加工等を施すことがないためアコースティックシンバルとしての音量・音色等で発音ができるようにし、なおかつシンバルの回転範囲を規制することができ、打撃検出の精度を高めると共に、弱音具30が打撃の邪魔にならないようにすることができる。また、弱音具30を利用することから、構成部品を増やさなくて済む。
【0038】
本実施の形態によればまた、弱音具30を装着したことで、打撃音に過大な影響を与えることなく音量を低減させることができる。
【0039】
また、弱音具30については、シンバル10の表側に露出する部分は取付部33だけであるので、弱音具でシンバルを上側から大きく覆う従来構成に比べ、弱音具30を直接打撃しなくて済む領域、すなわち、打撃感触が変わらない打撃領域を大きく確保できる。従って、打撃感触を損ねるおそれが小さい。しかもシンバル10の外観が大きく変化することもない。また、弱音具30の接続部31は弾性部材で構成され、その弾性によって付勢力を発揮するので、簡単な構成で付勢力を発生させることができる。
【0040】
なお、弱音具30におけるシンバル10に取り付けられる部分の構成は、例示したものに限られない。後にもいくつか変形例を説明するが、例えば、本実施の形態では
図1(d)、(e)に示す変形例を採用してもよい。すなわち、弱音具30の取付部33を、鉤状でなく、幅広形状に形成してもよい(
図1(d))。この幅広の取付部33を係合穴15に挿通して係合することでも、
図1(c)のものと同様の機能を果たすことができる。あるいは、
図1(e)に示すように、弱音具30を一体に形成するのではなく、他端部31bに金具34を取り付け、金具34に鉤状の取付部33を形成してもよい。なお、弱音具30のうち少なくとも一部(主に接続部31)に弾性を有すればよいので、一端部31aにおいても、取付穴32を形成した金具等を取り付ける構成であってもよい。
【0041】
なお、シンバル10に形成した係合穴15は1つでなくてもよく、上記した特許文献4に採用される小孔の1つを利用してもよい。
【0042】
(第2の実施の形態)
図3(a)は、第2の実施の形態に係るシンバル型打楽器の模式的断面図である。
図3(b)は、斜め上側から見たシンバルの模式的斜視図である。
図3(c)は、弱音具30の斜視図である。
図3(a)、(b)では、緩衝材24や締め付け具25等の図示を省略している。
【0043】
第1の実施の形態では、シンバル10に形成された係合穴15に弱音具30の取付部33が係合される構成であった。これに対し第2の実施の形態では、ボウ部12の外周縁であるエッジ部13に弱音具30を接続する。また、第1の実施の形態に対し、弱音具30の形状及び、弱音具30に係合する規制部52の形状を異ならせる。
【0044】
本実施の形態では、弱音具30は、ロッド21の部分21bとエッジ部13xとを接続する。エッジ部13xは、ボウ部12の外周縁であるエッジ部13のうち円周方向における任意の箇所であり、その位置は限定されない。本実施の形態ではエッジ部13xが「第2の係合部」の一例となる。
【0045】
弱音具30の長手方向中間部に取付穴32が形成される。弱音具30における取付穴32と取付部33との間の長さについては、部分21bとエッジ部13xとの距離よりも少し短く設定されている。弱音具30の一端部31eに係止部Hが形成されている(
図3(a)、(c))。シンバル10の表側には、弱音具30の取付部33が露出する。挿通穴14を挟んで打撃センサ42と反対側の領域に取付部33が位置するように弱音具30を装着するのが望ましい。
【0046】
図3(a)に示すように、弱音具30の取付穴32にロッド21を挿通して係合する。一方、弱音具30の他端部31bの鉤状の取付部33については、エッジ部13xに対して下方外周側から上方へ掛けるように係合する。取付穴32を部分21bに係合し、取付部33をエッジ部13xに係合すると、接続部31は引っ張り状態となり、その弾性によって部分21bとエッジ部13xとを互いに近づける方向に付勢する。その結果として、挿通穴14とエッジ部13xとが互いに近づく方向に付勢され、エッジ部13xには、挿通穴14に向かう付勢力F2が作用する(
図3(b))。また、第1の実施の形態と同様に、接続部31は、ほぼ全領域に亘ってボウ部12に対して非当接状態となる。
【0047】
シンバル10において挿通穴14とエッジ部13xとが互いに近づく方向に付勢されることで、
図2で説明したような、音の減衰時間が適度に保たれつつも、音量が低く抑えられるという作用効果が得られる。
【0048】
また、弱音具30における取付穴32よりも一端部31eの側は、下方に湾曲して垂下して配置される。第1の実施の形態に対し、固定部51及び規制部52の形状は異なるが基本構成は同様である。規制部52が、弱音具30の一端部31eに形成された係止部Hに挿入されており、弱音具30の回転が規制される。従って、シンバル10の回転範囲が規制される。
【0049】
本実施の形態によれば、シンバルに特別な加工等を施すことなく回転範囲を規制することができ、打撃検出の精度を高めると共に、弱音具30が打撃の邪魔にならないようにすることに関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0050】
本実施の形態によればまた、打撃音に過大な影響を与えることなく音量を低減させることに関し、第1の実施の形態を同様の効果を奏することができる。また、シンバル10は係合穴15を有する必要がないので、弱音具30の汎用性がより高い。
【0051】
なお、弱音具30の形状及び係止部Hを設ける位置については、本実施の形態と第1の実施の形態とを相互に入れ替えてもよい。すなわち、第1の実施の形態において、弱音具30における取付穴32の位置からさらに延びて下方に垂下した位置に係止部Hを設け、係止部Hに規制部52を係止してもよい。あるいは、第2の実施の形態において、取付穴32と取付部33との間に係止部Hを設けて規制部52を係止してもよい。
【0052】
(第3の実施の形態)
図4(a)は、第3の実施の形態に係るシンバル型打楽器の模式的断面図である。
図4(b)は、斜め上側から見たシンバルの模式的斜視図である。
図4(c)は、弱音具30の斜視図である。
図4(a)、(b)では、緩衝材24や締め付け具25等の図示を省略している。
【0053】
第3の実施の形態では、シンバル10に形成された2つの係合穴15A、15Bを弱音具30で接続する。係合穴15A、15Bはいずれも、半径方向においてカップ部11よりもエッジ部13に近い位置に設けられた係合機能部である。
図4(c)に示す弱音具30は、
図1(c)に示す構成の弱音具30における取付部33を接続部31の両端に設けた構成に相当する。すなわち、接続部31の長手方向における一端部31aに鉤状の取付部33Aが形成されると共に、他端部31bに鉤状の取付部33Bが形成される。接続部31の長さ(取付部33A、33B間の長さ)については、係合穴15A、15B間の距離よりも少し短く設定されている。
【0054】
弱音具30の長手方向における取付部33A寄りの位置に係止部Hが形成されている(
図4(c))。シンバル10の表側には、弱音具30の取付部33A、33Bが露出する。シンバル10の円周方向において係合穴15A、15Bの双方から遠い領域に打撃センサ42が配置される(
図4(b))。
【0055】
ロッド21にシンバル10を支持させる時間的前後を問わず、弱音具30の一端部31aの取付部33Aを下方から係合穴15Aに挿通係合すると共に、他端部31bの取付部33Bを下方から係合穴15Bに挿通係合する。すると、接続部31は引っ張り状態となり、その弾性によって係合穴15A、15Bが互いに近づく方向に付勢される。係合穴15A、15Bには、互いに向き合う付勢力F3が作用する(
図4(b))。このように、弱音効果を得る上で、付勢力の方向はシンバル10の半径方向中心を向く必要はない。
【0056】
第1の実施の形態に対し、固定部51及び規制部52の形状は異なるが基本構成は同様である。規制部52の上端が、弱音具30の接続部31に形成された係止部Hに挿入され、弱音具30の回転が規制される。従って、シンバル10の回転範囲が規制される。規制部52及び弱音具30が協働して、シンバル10の回転範囲を規制する回転規制装置として機能する。
【0057】
本実施の形態によれば、シンバルに特別な加工等を施すことなく回転範囲を規制することができ、打撃検出の精度を高めると共に、弱音具30が打撃の邪魔にならないようにすることに関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0058】
本実施の形態によればまた、打撃音に過大な影響を与えることなく音量を低減させることに関し、第1の実施の形態を同様の効果を奏することができる。
【0059】
ところで、弱音具30によって接続される対象となる係合穴15A、15Bは、エッジ部13に極力近い位置に設けられるのが望ましい。これは、圧縮方向のテンションを受ける領域がエッジ部13に近い方が、音量低減効果が高いからである。第1の実施の形態において、係合穴15がエッジ部13に近いのが望ましいこと、及び、第2の実施の形態において、エッジ部13xが係合の対象とされることも、同様の理由による。
【0060】
なお、本実施の形態において、弱音具30に関して
図4(d)に示す変形例を採用してもよい。すなわち、
図1(d)に示した例を応用し、弱音具30の取付部33A、33Bの一方または双方を、鉤状でなく幅広形状に形成してもよい。なお、
図1(e)に示した例を応用し、取付部33Aを形成した金具または取付部33Bを形成した金具の一方または双方を設けてもよい。
【0061】
第1、第2の実施の形態では、弱音具30の一部をロッド21に接続し、他の一部をシンバル10の係合穴15またはエッジ部13に接続する構成を説明した。また、第3の実施の形態では、係合穴15同士を接続する構成を例示した。しかし、弱音具30による接続の対象となる係合部はこれまで例示したもの限定されない。
【0062】
例えば、第1、第2の実施の形態で、接続対象の一方となる第1の係合部を、シンバル10の挿通穴14、スタンド100、スタンド100に対して固定された部分(ロッド21等)であると考えると、接続対象の他方となる第2の係合部は、エッジ部13自身、または、ボウ部12におけるカップ部11よりもエッジ部13に近い位置に設けられた係合機能部であればよい。第3の実施の形態で考えると、接続対象となる複数の係合部は、シンバル10における、エッジ部13自身、または、ボウ部12におけるカップ部11よりもエッジ部13に近い位置に設けられた係合機能部であればよい。そして、弱音具30によって、これら複数の係合部の各々を、複数の係合部のうち他の係合部の少なくとも1つに対して接続関係にする構成であればよい。以下、これらの条件を満たす変形例を
図5、
図6で説明する。
【0063】
図5(a)、(b)、(c)は、変形例の弱音具が適用されるシンバルの模式的断面図である。
図5(a)、(c)では、緩衝材24や締め付け具25等の図示を省略している。
【0064】
まず、
図5(a)に示す例は、主に第1の実施の形態に適用でき、ボウ部12の裏面12bにフック16が形成される。フック16の位置は係合穴15(
図1(a))と同じである。フック16が「第2の係合部」の一例となる。弱音具30の一端部31aの取付穴32にロッド21を挿通して係合する点は第1の実施の形態と同様である。一方、弱音具30の他端部31bに、取付穴32と同様の取付穴を設け、それをフック16に係合する。
【0065】
図5(b)に示す例は、主に第1の実施の形態に適用でき、弱音具30をシンバル10の裏側でなく表側に配置する。弱音具30の構成は、
図3(c)に示すものを基本的に採用できるが、弱音具30の接続部31において、取付穴32よりも他端部31bに近い側には、上側に凸の湾曲部31cが形成される。弱音具30の取付穴32より一端部31e寄りの側は上方に湾曲して延びている。弱音具30の一端部31eに係止部Hが形成される。
【0066】
弱音具30の取付穴32を、ロッド21の、カップ部11より上側の部分21aに係合させる。部分21aが、「第1の係合部」の一例となる。弱音具30の他端部31bの取付部33を上方から係合穴15に挿通係合する。湾曲部31cがボウ部12の表面12aに対して非当接状態となる。なお、接続部31は、ボウ部12に対向する領域のうち少なくとも一部の領域においてボウ部12に対して非当接状態となる形状であればよく、湾曲部31cのような形状に限定されない。また、シンバル10の半径方向における接続部31の途中に湾曲部31cのような形状を設けてもよい。
【0067】
締め付け具25の上方おいてロッド21に、固定部51が固定される。固定部51は例えば、ネジ53によって着脱可能に固定される。固定部51に規制部52が固定されている。規制部52が、弱音具30の一端部31eに形成された係止部Hに挿入され、弱音具30の回転が規制される。従って、シンバル10の回転範囲が規制される。
【0068】
図5(c)に示す例は、主に第1の実施の形態に適用できる。弱音具30としては、
図4(c)に示す構成が好適である。ロッド21にシンバル10を支持させる前に、弱音具30の一端部31aの取付部33Aを下方から挿通穴14に挿通係合すると共に、他端部31bの取付部33Bを下方から係合穴15に挿通係合する。取付部33Aが「第1の係合部」の一例となり、係合穴15が「第2の係合部」の一例となる。
【0069】
なお、
図5(b)、
図5(c)の例において、
図3(a)の例のように、取付部33、取付部33Bをエッジ部13に対して掛けるように係合してもよい。これらの場合、エッジ部13が「第2の係合部」となる。一方、
図4(a)に示す例で、弱音具30をシンバル10の表側に配置してもよい。
【0070】
図6(a)〜(k)は、変形例の弱音具30を装着したシンバル10の模式図である。各図において、シンバル10に設けられた係合穴15(
図1(a)等)に相当する穴を白い丸で示したが、これはフック16(
図5(a))であってもよい。また、弱音具30に設けられた係止部Hも白い丸で示した。エッジ部13xは、エッジ部13のうち弱音具30が係合する箇所である。弱音具30における、係合部と係合される部分の形状については、係合部の形状に合わせて適宜、鉤状または穴等を採用できる。弱音具30による接続対象となる係合部は、3つ(
図6(a)〜(d)、(j))、4つ()
図6(e)〜(h))、5つ(
図6(i))でもよく、6つ以上でもよい。また、弱音具30は単独で3つ以上の係合部の全てを接続する構成であってもよい(
図6(a)、(d)、(e)、(h)、(i)、(j))。あるいは、複数の係合部のうち一部の係合部同士を接続する弱音具30を2つ以上設けてもよい(
図6(b)、(c)、(f)、(g))。 係止部Hについては、弱音具30の適切な位置に形成する。また、弱音具30に突設片31fを一体に形成し、この突設片31fに係止部Hを形成してもよい(
図6(a)、(e)、(g))。各図において打撃センサ42の図示は省略しているが、打撃センサ42は、弱音具30が上方に露出しない領域においてシンバル10の裏側に設けるのが好ましい。
【0071】
なお、
図6(a)〜(j)では弱音具30をシンバル10の裏側に配置したが、シンバル10の表側に配置してもよい。また、これまで、本発明をシンバルに適用する例を説明したが、
図6(k)に例示するように、ハイハットシンバルに適用してもよい。その場合、例えば、上側シンバル10Aまたは下側のシンバル10Bのいずれかまたは双方に、上述したいずれかの弱音具30の装着を適用する。なお、上側シンバル10Aと下側のシンバル10Bとの間に弱音具30の肉部が介在する構成となる場合があるが、弱音具30の肉部は円周方向の一部であれば問題ない。すなわち、両シンバルの衝突時に、弱音具30の肉部の無い箇所で適切に衝突し、音が発生するからである。また、
図6(k)の例においては、規制部52と係止部Hとの係合の構成については、上側シンバル10Aの上方において、
図5(b)で例示した構成を採用可能である。
【0072】
なお、これまで説明した例は、接続部の長さは、適切な付勢力が発揮されるよう予め設定されていた。しかし、
図7(a)〜(d)に例示するように、接続部の長さを調整する調整機構を設けてもよい。
【0073】
例えば、
図7(a)に示すように、ワイヤ131に対するロック位置を切り替え可能なロック機構39を設け、ワイヤ131のうち接続部31に該当する長さを段階的に切り替えできるように構成してもよい。ロック機構39の構成は問わず、角度を変えることでワイヤ131をロックしたり解放したりする構成が考えられる。長さ調節機構は無段階にできるものであってもよい。なお、
図7(a)の構成を第2の実施の形態(
図3(a))に適用する場合は、
図7(b)に示すように、取付穴32から延長した部分の先端に係止部Hを設ければよい。また、
図7(c)に示すように、接続部31にターンバックルの機構を採用してもよい。割り枠式やパイプ式、いずれの様式のターンバックルを採用してもよい。あるいは、
図7(d)に示すように、接続部31を2つの板部材131A、131Bで構成し、板部材131Aに設けた長穴40を介してボルト41で板部材131Aを板部材131Bに締結する構成であってもよい。長穴40に対するボルト41の締め付け位置で接続部31の全長を調節できる。このような調節機構を有すれば、弱音の度合いを調整することができる。また、弱音具30を、弾性を有さない金属等だけで構成することも可能となる。例えば、
図7(a)、(b)の構成であれば、係合対象の係合部に弱音具30の両端部を係合した後に、接続部31の長さを手作業にて容易に調節できるから、金属製の弱音具30でもシンバル10に適切なテンションを与えることができる。
【0074】
ところで、上記各実施の形態においては、規制部52は1本の棒、係止部Hは穴という組み合わせであった。しかし、弱音具30に係合して回転方向の変位を規制できればよいので、両者の組み合わせは例示に限定されない。例えば、
図7(e)に示すように、弱音具30をシンバル10の回転方向における両側から挟む形で規制部52が配置される構成であってもよい。例えば、
図1(c)に示す弱音具30に改変を加えて、接続部31に切欠部としての係止部H2を形成する。一方、規制部52には、2本で一対の棒状部52aを突出形成する。そして一対の棒状部52a間に係止部H2が位置するように規制部52を配置する。係止部H2は少し余裕を持って棒状部52aに挟まれてもよい。このような構成は、上記各実施の形態は変形例に適用可能である。
【0075】
(第4の実施の形態)
これまで説明した構成では、弱音具30は、シンバル10の表側または裏側のいずれかに配置するものであった。しかし、弱音具30は、シンバル10の表側及び裏側の双方に個別に配置してもよい。また、第4の実施の形態として説明するように、シンバル10の表側及び裏側に配設される一体の弱音具30を採用してもよい。
【0076】
図8(a)は、第4の実施の形態に係るシンバル型打楽器の模式的断面図である。
図8(b)は、弱音具30の斜視図である。
【0077】
図8(b)に示すように、この弱音具30は、接続部31として、上側接続部31Bと下側接続部31Aとを有する。接続部31の一端部でもある下側接続部31Aの端部31Aaに取付穴32Aが形成され、接続部31の他端部でもある上側接続部31Bの端部31Baに取付穴32Bが形成される。上側接続部31Bと下側接続部31Aとが連接部分36で繋がっている。なお、接続部31は連接部分36で予め曲げ癖が付けられている必要はなく、自由状態では端部31Aaから連接部分36を介して端部31Baにかけて平坦であってもよい。
【0078】
下側接続部31Aには、規制部52が係止される係止部Hが形成されている。係止部Hは、取付穴32Aと連接部分36との間に形成される。固定部51及び規制部52の構成は第1の実施の形態と同様である。規制部52の上端が係止部Hに挿入され、弱音具30の回転が規制される。従って、シンバル10の回転範囲が規制される。ロッド21に対して打撃センサ42が配置される側とは反対側の領域に弱音具30が位置するように弱音具30を装着するのが望ましい。
【0079】
図8(a)に示すように、ロッド21の、カップ部11の上側は、緩衝材24を介して締め付け具25で締め付けられている。取付穴32Aは、カップ部11と緩衝材23とに挟まれた部分21b(下側係合部)に係合される。取付穴32Bは、ロッド21の、カップ部11と緩衝材24とに挟まれた部分21a(上側係合部)に係合される。
【0080】
かかる構成において、まず、ロッド21にシンバル10を支持させる際に、カップ部11と緩衝材23との間に下側接続部31Aの端部31Aaが挟まれるように、取付穴32Aにロッド21を下方から挿通する。次に、連接部分36をエッジ部13xに掛け回して、カップ部11と緩衝材24との間に上側接続部31Bの端部31Baが挟まれるように、取付穴32Bにロッド21を挿通する。その後、カップ部11の上側から端部31Baと緩衝材24とを締め付け具25で締め付ける。
【0081】
接続部31の長さ(取付穴32A、32B間の長さ)は、部分21bからエッジ部13xを介して部分21aに亘る距離よりも少し短い。これにより、下側接続部31A及び上側接続部31Bはそれぞれ引っ張り状態となり、それらの弾性によって、エッジ部13xが、部分21b、21aのある方向、すなわち、シンバル10の半径方向中心の方向に付勢される。第1の実施の形態と対比して考えると、部分21b、21aがそれぞれ「第1の係合部」に相当し、エッジ部13xが、「第2の係合部」に相当する。
【0082】
なお、シンバル10の半径方向における上側接続部31Bの途中に湾曲部31c(
図5(b))に相当する湾曲部の形状を採用してもよい。
【0083】
本実施の形態によれば、シンバルに特別な加工等を施すことなく回転範囲を規制することができ、打撃検出の精度を高めると共に、弱音具30が打撃の邪魔にならないようにすることに関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0084】
本実施の形態によればまた、打撃音に過大な影響を与えることなく音量を低減させることに関し、第1の実施の形態を同様の効果を奏することができる。特に、シンバル10は、弱音具30を装着するための係合穴を有する必要がないので、弱音具30の汎用性も高い。また、弱音具30の構成が簡単であるので製造コストが低減でき、しかも表裏両側から弱音するので弱音効果が高い。
【0085】
また、本実施形態の装着部材は、弱音具として説明したが、一般的なミュートのように音色に変化をつけるために用いるものとしてもよい。例えば、張力の大きさと装着部位の接触面積を所望のものとすることで音色を変えるようにすればよい。また、張力の大きさと装着部位の接触面積について、複数のバリエーションを用意しておき、その中から所望のものを選んで用いるようにしてもよい。
【0086】
なお、
図8の構成において、下側接続部31Aの端部31Aa、上側接続部31Bの端部31Baのいずれかまたは双方について、取付穴32A、32Bに代えて、鉤状の取付部33A(
図5(c))を採用してもよい。
【0087】
なお、本実施の形態においても、規制部52と係止部Hとの係合の構成については、シンバル10の上方において、
図5(b)で例示した構成を採用可能である。
【0088】
なお、上記各実施の形態において、シンバルの弱音効果を必要とせず、打撃検出の精度を高めると共に装着部材が打撃の邪魔にならないようにするという効果を主として求める場合は、規制部52と係合する装着部材は弱音具30でなくてもよい。例えば、アクセサリ等のようにシンバル10に固定的に装着される部材であってもよい。
【0089】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施形態や変形例の一部を適宜組み合わせてもよい。また、本発明においては、回転範囲を規制するものとして説明しているが、その回転方向が限定されるものではなく、ロッドを軸にしてどちらの方向にも回転(すなわち回動)できるシンバルであれば、回動規制として働くものである。