特許第6551864号(P6551864)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6551864
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】鍵盤装置および鍵盤楽器
(51)【国際特許分類】
   G10B 3/10 20060101AFI20190722BHJP
   G10C 3/16 20190101ALI20190722BHJP
   G10B 3/12 20060101ALI20190722BHJP
   G10H 1/34 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   G10B3/10
   G10C3/16
   G10B3/12 130
   G10H1/34
【請求項の数】10
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-59459(P2016-59459)
(22)【出願日】2016年3月24日
(65)【公開番号】特開2016-200811(P2016-200811A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2018年10月15日
(31)【優先権主張番号】特願2015-80988(P2015-80988)
(32)【優先日】2015年4月10日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(72)【発明者】
【氏名】西村 雄一
【審査官】 千本 潤介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−110451(JP,A)
【文献】 特開2004−347815(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0307942(US,A1)
【文献】 特開2003−044037(JP,A)
【文献】 特開2004−101953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10B 1/00−3/24
G10C 1/00−9/00
G10H 1/00−1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鍵と、
格子状にリブが形成された複数の格子状リブ部を有し、前記鍵の押鍵操作に応じて変位する伝達部材と、
前記押鍵操作された鍵に対応する前記伝達部材の変位に応じて上下方向に変位することにより、前記押鍵操作されている鍵に対してアクション荷重を付与するハンマー部材と、
を有し、
前記複数の格子状リブ部は、前記伝達部材の内部を第1方向に延びる複数の第1リブと、前記伝達部材の内部を前記第1方向と異なる第2方向に延びて前記複数の第1リブそれぞれと交差する複数の第2リブとで形成され、
前記複数の格子状リブ部により形成された複数の格子のうちの一部の格子内には、前記第1リブおよび前記第2リブのいずれとも異なる第3リブ、または他の格子内の板部より重量の大きい板部が形成されている、鍵盤装置。
【請求項2】
前記一部の格子内には、前記第1リブと前記第2リブとで形成される升目よりも細かい升目を形成するように前記第3リブが設けられている、請求項1に記載の鍵盤装置。
【請求項3】
前記複数の第1リブは、前記伝達部材の内部を横断するように設けられており、
前記複数の第2リブは、前記複数の第1リブそれぞれと直交して前記伝達部材の内部を縦断するように設けられており、
前記第3リブは、前記一部の格子内を横断する横リブと前記一部の格子内を縦断する縦リブとを有する、請求項1または2に記載の鍵盤装置。
【請求項4】
前記一部の格子内には、他の格子内の板部より厚みの大きい板部が形成されている、請求項1に記載の鍵盤装置。
【請求項5】
前記一部の格子内には、他の格子内の板部より重量の大きい材質の板部が形成されている、請求項1に記載の鍵盤装置。
【請求項6】
前記伝達部材に形成されるリブの本数または前記伝達部材に形成されるリブの位置に応じて、前記伝達部材の重心位置を変更することが可能である、請求項1乃至5のいずれかに記載の鍵盤装置。
【請求項7】
複数の鍵と、
格子状にリブが形成された複数の格子状リブ部を有し、前記鍵の押鍵操作に応じて変位する伝達部材と、
前記押鍵操作された鍵に対応する前記伝達部材の変位に応じて上下方向に変位することにより、前記押鍵操作されている鍵に対してアクション荷重を付与するハンマー部材と、
前記伝達部材を回転自在に保持する伝達保持軸と、
を有し、
前記伝達部材は、前記伝達部材の一端に形成されて前記伝達保持軸に回転自在に取り付けられる伝達嵌合部を有し、
前記複数の格子状リブ部は、升目状に複数のリブが形成された複数の第1の格子状リブ部と、前記第1の格子状リブ部よりも升目が細かくなるようにして升目状に複数のリブが形成された複数の第2の格子状リブ部とを含み、
前記複数の第2の格子状リブ部夫々は、前記伝達部材の中心部の下側に位置する格子内と、伝達嵌合部からの距離が前記伝達部材の中心部までの距離より長い位置にある格子内とに形成される、鍵盤装置。
【請求項8】
前記伝達部材は、更に、前記複数の格子状リブ部の周囲に設けられた外周リブ部を有し、
前記複数の第1リブは、前記外周リブ部の内部を横断するように設けられ、
前記複数の第2リブは、前記外周リブ部の内部を縦断するように設けられている、請求項1乃至6のいずれかに記載の鍵盤装置。
【請求項9】
前記伝達部材は、縦板部と、前記縦板部上に格子状に形成されたリブと、を有する、請求項1乃至8のいずれかに記載の鍵盤装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれかに記載された鍵盤装置と、
前記鍵盤装置の前記鍵の操作に応じて楽音を発生する発音部と、
を備えていることを特徴とする鍵盤楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ピアノなどの鍵盤楽器に用いられる鍵盤装置およびそれを備えた鍵盤楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ピアノなどの鍵盤装置においては、特開2002−258835号公報に記載されているように、鍵の押鍵操作によって回転するウイペンと、このウイペンの回転動作に応じて駆動されるジャックと、このジャックによって駆動されて弦を打撃するハンマー部材とを備え、これらが複数の鍵それぞれに対応して設けられた構成のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−258835号公報
【0004】
この種の鍵盤装置は、鍵が押鍵操作されると、その押鍵操作された鍵によってウイペンが回転し、このウイペンに搭載されているジャックがウイペンによって駆動されてハンマー部材を押し上げることにより、ハンマー部材が回転して弦を打撃するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような鍵盤装置では、ウイペンにジャックを搭載するために、レペティションレバーが必要であるばかりか、このレペティションレバーをウイペン上に支持する支柱が必要となるため、部品点数が多く、構造が複雑になるという問題があるほか、最適な鍵タッチ感を得るためには、ハンマー部材の重量を調整する必要があるため、更に構造が複雑になるという問題がある。
【0006】
こうした鍵タッチ感は、押鍵してから鍵に加わる反力の状態で決まる。図13は、一般的なアコースティックピアノの反力の状態を示すグラフである。横軸は押鍵してからの経過時間、縦軸は反力の大きさを表わす。
特に押鍵してからどのタイミングで反力のピークを迎えるかによって鍵タッチ感は大きく変わる(図13においては、時間t=b)。
この反力のピークを迎えるタイミングは、ウイペンとハンマー部材との位置関係、構造、重量及び材質等のいろいろな要素が関係して決まるため、簡単に調整することは困難であった。
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、良好な鍵タッチを得ることができる鍵盤装置およびそれを備えた鍵盤楽器を提供することである。
【0008】
この発明は、複数の鍵と、格子状にリブが形成された複数の格子状リブ部を有し、前記鍵の押鍵操作に応じて変位する伝達部材と、前記押鍵操作された鍵に対応する前記伝達部材の変位に応じて上下方向に変位することにより、前記押鍵操作されている鍵に対してアクション荷重を付与するハンマー部材と、を有し、前記複数の格子状リブ部は、前記伝達部材の内部を第1方向に延びる複数の第1リブと、前記伝達部材の内部を前記第1方向と異なる第2方向に延びて前記複数の第1リブそれぞれと交差する複数の第2リブとで形成され、前記複数の格子状リブ部により形成された複数の格子のうちの一部の格子内には、前記第1リブおよび前記第2リブのいずれとも異なる第3リブ、または他の格子内の板部より重量の大きい板部が形成されている、鍵盤装置である。
【0009】
またこの発明は、複数の鍵と、格子状にリブが形成された複数の格子状リブ部を有し、前記鍵の押鍵操作に応じて変位する伝達部材と、前記押鍵操作された鍵に対応する前記伝達部材の変位に応じて上下方向に変位することにより、前記押鍵操作されている鍵に対してアクション荷重を付与するハンマー部材と、前記伝達部材を回転自在に保持する伝達保持軸と、を有し、前記伝達部材は、前記伝達部材の一端に形成されて前記伝達保持軸に回転自在に取り付けられる伝達嵌合部を有し、前記複数の格子状リブ部は、升目状に複数のリブが形成された複数の第1の格子状リブ部と、前記第1の格子状リブ部よりも升目が細かくなるようにして升目状に複数のリブが形成された複数の第2の格子状リブ部とを含み、前記複数の第2の格子状リブ部夫々は、前記伝達部材の中心部の下側に位置する格子内と、伝達嵌合部からの距離が前記伝達部材の中心部までの距離より長い位置にある格子内とに形成される、鍵盤装置である。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、伝達本体部表面上の位置に応じて、形成されているリブの重量を異ならせることにより、伝達部材の重量を設定することができるので、この設定された伝達部材の重量を鍵に静的荷重として付与することができる。これによって鍵の初期荷重を最適化することができると共に、押鍵時にその鍵の押鍵力を静的荷重としてハンマー部材に良好に伝えることができる。このため、簡単な構造で、良好な鍵タッチを得ることができる。
【0011】
さらに、伝達本体部表面上の位置に応じて、形成されているリブの重量を異ならせることにより、伝達部材の重心位置を設定することができる。これによって押鍵操作された鍵によって伝達部材が回転変位する際に、設定された伝達部材の重心位置によって、鍵に動的荷重を付与することができると共に、押鍵時にその鍵の押鍵力を動的荷重としてハンマー部材に良好に伝えることができる。
【0012】
また、この発明によれば、伝達本体部に形成された複数のリブの形成位置に応じて伝達部材の重心位置を設定することができるので、押鍵操作された鍵によって伝達部材が変位する際に、伝達本体に形成された複数のリブの形成位置に応じて設定された伝達部材の重心位置によって、鍵に動的荷重を付与することができると共に、押鍵時にその鍵2の押鍵力を動的荷重としてハンマー部材11に良好に伝えることができる。このため、簡単な構造で、良好な鍵タッチを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明を電子鍵盤楽器に適用した一実施形態における鍵盤装置を示した平面図である。
図2図1に示された鍵盤装置のA−A矢視における拡大断面図である。
図3図2に示された鍵盤装置における要部を拡大して示した断面図である。
図4図3に示された伝達部材および伝達保持部材の各一部を示し、図4(a)はその拡大平面図、図4(b)はそのB−B矢視における要部の拡大断面図である。
図5図3に示された伝達部材を示し、図5(a)はその拡大側面図、図5(b)はそのC−C矢視における拡大断面図である。
図6図3に示されたハンマー部材およびハンマー保持部材の各一部を示し、図6(a)はその拡大平面図、図6(b)はそのD−D矢視における要部の拡大断面図である。
図7図3に示されたハンマー部材を示し、図7(a)は白鍵に対するハンマー部材の拡大側面図、図7(b)はその拡大平面図、図7(c)は黒鍵に対するハンマー部材の拡大側面図、図7(d)はその拡大平面図である。
図8図3に示された連動制御部を示し、図8(a)はそのE−E矢視における拡大断面図、図8(b)はその連動突起部を示した拡大側面図、図8(c)はその連動突起部を分解して示した拡大側面図である。
図9図3に示された鍵盤装置において、鍵が押鍵された際の状態を示した要部の拡大断面図である。
図10】この発明を適用した鍵盤装置における伝達部材の変形例を示した拡大側面図である。
図11】この発明を適用した鍵盤装置における伝達部材の別の変形例を示し、図11(a)はその拡大側面図、図11(b)はそのC−C矢視における拡大断面図である。
図12】この発明を適用した鍵盤装置における伝達部材のさらに別の変形を示し、図12(a)はその拡大側面図、図12(b)はそのC−C矢視における拡大断面図である。
図13】一般的なアコースティックピアノの反力の状態を示すグラフ図である。
図14】伝達部材と反力の特性を表わす図であり、図14(a)は、升目の細かいリブ部を設けていない伝達部材を示し、図14(b)は、この伝達部材を用いて押鍵がなされた場合に鍵に加わる反力の特性を表わす図である。
図15】別の伝達部材と反力の特性を表わす図であり、図15(a)は、図5に示される伝達部材のように、リブを下側に位置する2つの格子内と、伝達嵌合部からの距離が、伝達部材の中心部までの距離より長い位置にある格子内とに設けられている場合であり、図15(b)は、この伝達部材を用いて押鍵がなされた場合に鍵に加わる反力の特性を表わす図である。
図16】さらに別の伝達部材と反力の特性を表わす図であり、図16(a)は、伝達部材10の下側にリブ部を升目の大きい格子状に形成し、上側に形成されるリブの本数を増やすことにより、下側のリブ部より升目の小さい格子状に形成した構成としたものであり、図16(b)は、一般的なアコースティックピアノの反力の状態を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1図16を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した一実施形態について説明する。
この電子鍵盤楽器は、図1および図2に示すように、鍵盤装置1を備えている。この鍵盤装置1は、楽器ケース(図示せず)内に組み込まれるものである。この鍵盤装置1は、並列に配列された複数の鍵2と、これら複数の鍵2の押鍵操作に応じて各鍵2それぞれにアクション荷重を付与するアクション機構3と、を備えている。
【0015】
複数の鍵2は、図1および図2に示すように、白鍵2aおよび黒鍵2bを有し、これら白鍵2aおよび黒鍵2bが例えば88個並列に配列されている。これら複数の鍵2は、その前後方向(図2では左右方向)におけるほぼ中間部がそれぞれバランスピン4a、4bによって上下方向に回転可能に支持され、この状態でベース板5上に並列に配列されている。すなわち、白鍵2aと黒鍵2bとは、その前後方向の長さが異なり、白鍵2aの長さが黒鍵2bの長さよりも長く形成されている。
【0016】
これに伴って、ベース板5上には、図2に示すように、複数の鍵2の各前端部(図2では右端部)の各下面がそれぞれ接離可能に当接するクッション材6a、6bが鍵2の配列方向に沿って設けられている。また、このベース板5上には、複数の鍵2の各後端部(図2では左端部)の各下面がそれぞれ接離可能に当接するクッション材7が鍵2の配列方向に沿って設けられている。
【0017】
これにより、複数の鍵2は、図2に示すように、前部側のクッション材6a、6bと後部側のクッション材7とによって、各鍵ストロークが設定されている。さらに、このベース板5上には、複数の鍵2がその配列方向に横振れするのを防ぐためのガイドピン8a、8bがそれぞれ起立して設けられている。
【0018】
アクション機構3は、図1図3に示すように、複数の鍵2の押鍵操作に応じてそれぞれ上下方向に回転する複数の伝達部材10と、これら複数の伝達部材10の各回転動作に応じてそれぞれ上下方向に回転して複数の鍵2それぞれにアクション荷重を付与する複数のハンマー部材11と、を備えている。この場合、複数の鍵2は、複数の伝達部材10の各重量によって、バランスピン4a、4bを中心に反時計回りに回転し、各鍵2それぞれを初期位置に押し上げて、各鍵2に初期荷重が付与されるように構成されている。
【0019】
また、このアクション機構3は、図2および図3に示すように、複数の伝達部材10をそれぞれ回転自在に保持する複数の伝達保持部材12と、複数のハンマー部材11をそれぞれ回転自在に保持する複数のハンマー保持部材13と、を備えている。複数の伝達保持部材12は、鍵2の配列方向に沿って配置された伝達支持レール14上に取り付けられている。また、複数のハンマー保持部材13は、鍵2の配列方向に沿って配置されたハンマー支持レール15上に取り付けられている。これら伝達支持レール14およびハンマー支持レール15は、複数の支持部材16に支持されて、複数の鍵2の上方に配置されている。
【0020】
複数の支持部材16は、図1図3に示すように、鍵2の配列方向の全長における予め定められた複数個所にそれぞれ位置した状態で、ベース板5上に起立して取り付けられている。この場合、複数の鍵2は全体で例えば88個配列されている。これに応じて、複数の支持部材16は、複数の鍵2の配列方向における両端部と、例えば20個の鍵2ごとに位置する3箇所の各鍵2間と、の個所に配置されている。すなわち、この実施形態では、支持部材16が鍵2の配列方向の全長における5箇所に配置されている。
【0021】
この支持部材16は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、図2および図3に示すように、ベース板5上に取り付けられる取付部16aと、この取付部16a上に一体に形成されたブリッジ部16bと、を有している。これにより、支持部材16は、取付部16aがベース板5上に取り付けられることにより、ブリッジ部16bが鍵2の上方に突出した状態で、複数の鍵2の後部間に配置されるように構成されている。
【0022】
この場合、ブリッジ部16bの後端下部、つまり取付部16aの後側上部(図2では左側上部)には、図2および図3に示すように、伝達支持レール14を支持する後側レール支持部16cが設けられている。また、ブリッジ部16bの前側上部(図2では右側上部)には、ハンマー支持レール15を支持する前側レール支持部16dが設けられている。さらに、ブリッジ部16bの後側上部(図2では左側上部)には、ストッパレール支持部16eが設けられており、ブリッジ部16bの上部には、基板レール支持部16fが設けられている。
【0023】
伝達支持レール14は、図2および図3に示すように、帯板の両側部をその長手方向に沿って下側に向けて折り曲げた形状に形成され、複数の鍵2の配列方向の全長に亘る長さに形成されている。この伝達支持レール14は、鍵2の配列方向における所定箇所が複数の支持部材16の各後側レール支持部16c上に取り付けられるように構成されている。
【0024】
この伝達支持レール14上には、図2および図3に示すように、複数の伝達保持部材12および複数のストッパ支持部17が鍵2の配列方向に沿って取り付けられている。この場合、複数のストッパ支持部17は、金属板からなり、複数の支持部材16に対応する伝達支持レール14上の5箇所に、複数の伝達保持部材12の上方に突出した状態で取り付けられている。
【0025】
伝達保持部材12は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、図4(a)および図4(b)に示すように、本体板12a上に複数の軸支持部18が例えば10個程度の各鍵2に対した状態で鍵2の配列方向に沿って一体に形成されている。この軸支持部18は、伝達部材10が回転自在に取り付けられて伝達部材10の横触れを防ぐように構成されている。
【0026】
すなわち、軸支持部18は、図4(a)および図4(b)に示すように、一対のガイド壁20と、これら一対のガイド壁20間に形成された伝達保持軸21と、を有している。一対のガイド壁20は、伝達保持部材12の本体板12a上の後端部(図4(a)では左端部)に、複数の伝達部材10それぞれと対応して形成されている。
【0027】
これら一対のガイド壁20は、図4(a)に示すように、伝達部材10の後述する伝達嵌合部23を両側から摺動可能に挟んだ状態で、伝達部材10の伝達嵌合部23を回転可能にガイドするガイド部を構成している。伝達保持軸21は、図4(b)に示すように、ほぼ丸棒状をなし、その外周面の両側が切り欠かれていることにより、断面形状が非円形状に形成されている。
【0028】
また、この伝達保持部材12は、図2図4に示すように、梱包輸送時に伝達部材10の横触れを規制する規制部19を有している。この規制部19は、伝達保持部材12の本体板12aの前部(図4(a)では右側部)上に各伝達部材10と対応して形成された一対の規制壁である。この規制部19は、伝達部材10の後側下部を挟んだ状態で、伝達部材10を回転可能にガイドするほか、梱包輸送時に伝達部材10の横振れを規制するように構成されている。
【0029】
伝達部材10は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、図2図5に示すように、鍵2の押鍵操作に応じて上下方向に回転してハンマー部材11を上下方向に回転させる伝達本体部22と、この伝達本体部22に一体に形成されて伝達保持部材12の伝達保持軸21に回転自在に取り付けられる伝達嵌合部23と、を有している。
【0030】
伝達本体部22は、本実施形態においては、図2図3および図5に示すように、ほぼワッフル形状に形成されている。すなわち、この伝達本体部22は、図5に示すように、厚みの薄い板部材22aと、この板部材22aと一体に形成されたほぼ格子状に形成された複数の第1の格子状リブ部22bと、この複数の第1の格子状リブ部22bの外周部に形成された外周リブ部22eを有し、これらがワッフル形状に形成されている。この場合、伝達本体部22は、板部材22aの形状や厚みおよび複数の第1の格子状リブ部22bの形成密度によって、伝達部材10の重量及び重心位置が調整されるように構成されている。
【0031】
例えば、複数の第1の格子状リブ部22bは、図5(a)および図5(b)に示すように、板部材22aの両側面にほぼ格子状に設けられていると共に、これら格子状のうち、一部の格子内に、本発明の重心位置設定部材としての更に升目の細かい複数の第2の格子状リブ部22cが設けて、その一部の格子内に形成されたリブの本数を増やした構成になっている。すなわち、これら升目の細かい複数の第2の格子状リブ部22cは、板部材22aの中心部の下側に位置する2つの格子内と、伝達嵌合部23からの距離が、板部材22aの中心部までの距離より長い位置にある格子内とに設けられている。
【0032】
これにより、この伝達部材10は、図5(a)に示すように、伝達本体部22の板部材22aの形状や厚みおよび複数の第1及び第2の格子状リブ部22b、22cの形成密度によって、重量が設定されている。また、この伝達部材10は、複数の第1及び第2の格子状リブ部22b、22cの形成状態、つまり複数の第1の格子状リブ部22bの一部に設けられた升目の細かい複数の第2の格子状リブ部22cの形成位置によって伝達部材10の重心位置Gが伝達本体部22の中心部からずれた位置に設定されている。
【0033】
この重心位置Gと伝達嵌合部23の中心位置との距離は、図13のグラフで示される反力特性と関係がある。
図14図16は、伝達部材10の重心位置と反力特性との関係を示した図である。 図14(a)は、図5に示された伝達部材10と比較して、より升目の細かい格子状の第2の格子状リブ部22cを設けていない場合を示し、重心位置Aと伝達嵌合部23の中心位置との距離はL1となる。そして反力特性は図14(b)に示すようになり、反力のピークを迎えるタイミングは押鍵からa時間経過してからである。
【0034】
一方、図15(a)は、図5に示される伝達部材10と同じように、第2の格子状リブ部22cが、伝達部材10の中心部の下側に位置する2つの升目内と、伝達嵌合部23からの距離が、中心部までの距離より長い位置にある枡目内とに設けられている場合である。この場合の重心位置Bは変更され、重心位置Aと伝達嵌合部23の中心位置との距離はL1より長いL2となる。
【0035】
この結果、押鍵により伝達部材10が回動された場合、重心位置Bが回動の支点である伝達嵌合部23の中心位置からの距離が図14の場合と比べて遠くなるため、慣性モーメントが大きくなり、反力のピークがくるタイミング(時間b)を図14の場合と比べて遅れさせることができる(b>a)。本実施形態においては、この時間bは、図13図16(b)のアコースティックピアノの特性と同じにすることにより、アコースティックピアノと同じ鍵タッチ感を得ることが可能となる。
【0036】
図16(a)は、伝達部材10の下側にリブ部を升目の大きい格子状に形成し、上側に形成されるリブの本数を増やして升目の小さい格子状に形成した構成としたものである。この場合の重心位置Cと伝達嵌合部23の中心位置との距離はL1、L2より長いL3となる。この結果、押鍵により伝達部材10が回動された場合、図14及び図15の場合と比べて慣性モーメントがさらに大きくなり、反力のピークがくるタイミングを、図14及び図15の場合と比べてさらに遅れさせることができる。
【0037】
このように、本実施形態においては、伝達部材10上に形成されるリブの本数及び形成される位置に応じて、伝達部材10の重心位置を変更することができ、これにより、押鍵よって鍵に加わる反力特性を変更して、より最適な鍵タッチ感を得ることができる。
【0038】
また、この伝達部材10は、その伝達本体部22の板部材22aの厚みが薄く形成されていても、複数の第1及び第2の格子状リブ部22b、22cによって強度が確保されている共に、合成樹脂で成形する際に、複数の第1及び第2の格子状リブ部22b、22cによって板部材22aにヒケが発生するのを防ぐように構成されている。
【0039】
伝達嵌合部23は、図2図3および図5に示すように、全体が逆C字形状に形成され、伝達本体部22の後端部に後方に突出して形成されている。すなわち、この伝達嵌合部23は、図4(a)に示すように、鍵2の配列方向の厚みが軸支持部18の一対のガイド壁20間の長さとほぼ同じ長さに形成されて、一対のガイド壁20間に摺動可能に挿入されるように構成されている。
【0040】
また、この伝達嵌合部23は、図5(a)に示すように、その中心部に伝達保持部材12の伝達保持軸21が嵌合する嵌合孔23aが形成され、この嵌合孔23aの周囲における一部、つまり嵌合孔23aの周囲における後部に伝達保持軸21が挿脱可能に挿入される挿入口23bが形成され、この挿入口23bを通して伝達保持軸21が嵌合孔23aに挿入されることにより、伝達保持軸21に回転可能に取り付けられるように構成されている。
【0041】
この場合、伝達嵌合部23は、図5(a)に示すように、挿入口23bを通して伝達保持軸21が嵌合孔23aに挿入される際に、伝達部材10を伝達保持軸21の上方に起立させて挿入口23bを伝達保持軸21の両側が切り欠かれた個所に対応させ、この状態で挿入口23bを伝達保持軸21に圧入する際に、挿入口23bが伝達保持軸21で少し押し広げられることにより、伝達保持軸21が嵌合孔23aに挿入されて嵌合するように構成されている。
【0042】
ところで、伝達部材10の伝達本体部22における後側下部には、図2図5に示すように、伝達保持部材12の規制部19に規制される肉厚の薄い係合部24が設けられている。この係合部24は、図4および図5に示すように、伝達本体部22の後側下部の両側面が切り欠かれている。
【0043】
このため、係合部24は、図4および図5に示すように、その厚みが規制部19の一対の規制壁間とほぼ同じ長さに形成されている。これにより、係合部24は、規制部19の一対の規制壁間に挿入されることにより、伝達部材10を回転可能にガイドするほか、梱包輸送時に伝達部材10の横振れを規制するように構成されている。
【0044】
また、この伝達部材10の伝達本体部22は、図2図5に示すように、その下部が鍵2の上面に向けて突出して形成されている。この伝達本体部22の下端部には、伝達フェルト25が設けられている。この伝達フェルト25は、鍵2の後側上部に設けられたキャプスタン26が下側から当接するように構成されている。
【0045】
これにより、伝達部材10は、図2および図3に示すように、鍵2が押鍵された際に、伝達フェルト25に下側から当接する鍵2のキャプスタン26によって押し上げられて、伝達保持軸21を中心に反時計回りに回転するように構成されている。また、伝達部材10の伝達本体部22は、その前端上部が後端上部よりも高く形成され、これにより上辺部が後部下がり(図2では左下がり)に傾斜するように形成されている。
【0046】
この伝達本体部22の前端上部には、図2図5に示すように、支持部22dが上方に向けて突出して設けられている。すなわち、この支持部22dは、後述するハンマー部材11に当接することなく、ハンマー部材11の側面に沿って上下方向に移動するように構成されている。また、この支持部22dの側面には、後述する連動制御部27の連動突起部28が設けられている。
【0047】
一方、ハンマー支持レール15は、図1図3に示すように、伝達支持レール14と同様、帯板の両側部をその長手方向に沿って下側に向けて折り曲げた形状に形成され、複数の鍵2の配列方向の全長に亘る長さに形成されている。このハンマー支持レール15は、鍵2の配列方向における所定箇所が複数の支持部材16の各前側レール支持部16d上に取り付けられるように構成されている。このハンマー支持レール15上には、複数のハンマー保持部材13が鍵2の配列方向に沿って取り付けられている。
【0048】
ハンマー保持部材13は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、図6および図7に示すように、上方が開放されたレール状の本体板13aの後端部に軸支持部13bが例えば10個程度の各鍵2に対した状態で鍵2の配列方向に沿って一体に形成されている。この軸支持部13bは、ハンマー部材11が回転自在に取り付けられて、ハンマー部材11の横振れを防ぐように構成されている。
【0049】
すなわち、この軸支持部13bは、図2図3図6および図7に示すように、一対のガイド壁30と、これら一対のガイド壁30間にそれぞれ形成されたハンマー保持軸31と、を有している。一対のガイド壁30は、本体板13aの後端部(図6(b)では左端部)に、複数のハンマー部材11それぞれと対応して形成されている。
【0050】
これら一対のガイド壁30は、図6(a)および図6(b)に示すように、ハンマー部材11の後述するハンマー嵌合部34を両側から摺動可能に挟んだ状態で、ハンマー部材11のハンマー嵌合部34を回転可能にガイドするガイド部を構成している。ハンマー保持軸31は、図6(b)に示すように、ほぼ丸棒状をなし、伝達保持軸21と同様、その外周面の両側が切り欠かれていることにより、断面形状が非円形状に形成されている。
【0051】
ハンマー部材11は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、図6および図7に示すように、ハンマー部32とハンマーアーム33とを有し、これらが一体に形成された構成になっている。この場合、ハンマー部材11は、図7(a)〜図7(d)に示すように、鍵2における白鍵2aと黒鍵2bとで、その構成の一部、つまり後述する上限ストッパ37に当接するストッパ当接部43a、43bが異なるように構成されている。
【0052】
ハンマー部32は、図6および図7に示すように、杓子形状の板部材32aを有し、その外周部およびその両側面に複数のリブ部32bが形成された構成になっている。ハンマー部32は、杓子形状の板部材32aの形状および複数のリブ部32bの形成密度によって、ハンマー部材11の重量が調整されるように構成されている。
【0053】
ハンマーアーム33は、図6および図7に示すように、前後方向の長さが伝達部材10とほぼ同じ長さの横板部33aを有し、その外周部および両側面にリブ部33bが形成された構成になっている。このハンマーアーム33の前端部(図7では右端部)には、ハンマー保持部材13に回転自在に取り付けられるハンマー嵌合部34が形成されている。
【0054】
このハンマー嵌合部34は、図7に示すように、伝達嵌合部23と同様、全体がC字形状に形成され、ハンマーアーム33の前端部に前方に突出して形成されている。すなわち、このハンマー嵌合部34は、図6(a)に示すように、鍵2の配列方向の厚みが一対のガイド壁30間とほぼ同じ長さに形成されて、一対のガイド壁30間に摺動可能に挿入されるように構成されている。
【0055】
また、このハンマー嵌合部34は、図7に示すように、その中心にハンマー保持部材13のハンマー保持軸31が嵌合する嵌合孔34aが形成され、この嵌合孔34aの周囲における一部、つまり嵌合孔34aの周囲における前部にハンマー保持軸31が挿脱可能に挿入される挿入口34bが形成され、この挿入口34bを通してハンマー保持軸31が嵌合孔34aに挿入されることにより、ハンマー保持軸31に回転可能に取り付けられるように構成されている。
【0056】
この場合、ハンマー嵌合部34は、図7に示すように、挿入口34bを通してハンマー保持軸31が嵌合孔34aに挿入される際に、ハンマー保持部材13をハンマー部材11の前方(図7では右側)に後部下りに傾けて、挿入口34bをハンマー保持軸31の両側が切り欠かれた個所に対応させ、この状態で挿入口34bがハンマー保持軸31に圧入される際に、挿入口34bがハンマー保持軸31で少し押し広げられることにより、ハンマー保持軸31が嵌合孔34aに挿入されて嵌合するように構成されている。
【0057】
すなわち、ハンマー保持部材13は、図3に示すように、ハンマー部材11が取り付けられる前に、後述する連動制御部27によって伝達部材10に連結されていることにより、図7においてハンマー嵌合部34の挿入口34bをハンマー保持軸31に対応させるために、ハンマー保持部材13を後部下りに傾け、この状態でハンマー保持軸31を嵌合孔34aに挿入して嵌合させた後に、ハンマー支持レール15上に取り付けられるように構成されている。
【0058】
また、ハンマーアーム33の前端下部には、図3および図8に示すように、取付部33cが下方に向けて突出して設けられている。すなわち、この取付部33cは、伝達部材10の支持部22dの側面に対面し、この状態で支持部22dの側面に沿って上下方向に移動するように構成されている。また、この取付部33cには、後述する連動制御部27の連動突起部28をガイドするガイド孔29が設けられている。
【0059】
また、このハンマーアーム33は、図2および図3に示すように、その後端下部が下限ストッパ35に上方から当接することにより、初期位置である下限位置に規制されるように構成されている。すなわち、この下限ストッパ35は、伝達支持レール14上に設けられた複数のストッパ支持部17に支持された下限ストッパレール36上に取り付けられている。これにより、ハンマー部材11は、ハンマーアーム33の後端下部が下限ストッパ35に上方から当接することにより、後部下がりに傾斜した状態で、初期位置に位置規制されるように構成されている。
【0060】
また、このハンマーアーム33は、図7および図9に示すように、その後端上部に設けられた白鍵用のストッパ当接部43aと黒鍵用のストッパ当接部43bとのそれぞれが上限ストッパ37に下方から当接することにより、上限位置が規制されるように構成されている。すなわち、白鍵2aと黒鍵2bとは、その前後方向の長さが異なり、白鍵2aの長さが黒鍵2bの長さよりも長く形成されている。
【0061】
このため、白鍵2aと黒鍵2bとの各鍵ストロークが前部側のクッション材6a、6bと後部側クッション材7とによって調整されているが、白鍵2aが伝達部材10を押し上げる長さと、黒鍵2bが伝達部材10を押し上げる長さとが異なる。すなわち、白鍵2aに対応するハンマー部材11は、ハンマー保持部材13のハンマー保持軸31を中心に回転する際、その回転量(つまり回転角)が、黒鍵2bに対応するハンマー部材11の回転量(つまり回転角)よりも小さい。
【0062】
これに伴って、白鍵2aに対応するハンマー部材11と黒鍵2bに対応するハンマー部材11とを同じ回転量(つまり同じ回転角)で上限ストッパ37に当接させるためには、白鍵用のストッパ当接部43aの突出高さと、黒鍵用のストッパ当接部43bの突出高さとを調整する必要がある。このため、白鍵用のストッパ当接部43aは、ハンマーアーム33の上面とほぼ同じ高さで形成されている。また、黒鍵用のストッパ当接部43bは、ハンマーアーム33の上面から突出した高さで形成されている。
【0063】
この場合、上限ストッパ37は、図9に示すように、複数の支持部材16の各ストッパレール支持部16eに取り付けられた上限ストッパレール38の下面に取り付けられている。これにより、ハンマー部材11は、ハンマーアーム33がハンマー保持部材13のハンマー保持軸31を中心に時計回りに回転した際に、ハンマーアーム33の後端上部が上限ストッパ37に下方から当接することにより、上限位置が規制されるように構成されている。
【0064】
さらに、ハンマーアーム33の前端上部には、図2および図9に示すように、スイッチ押圧部39が形成されている。このハンマーアーム33のスイッチ押圧部39に対応する上方には、スイッチ基板40が一対の基板支持レール41によって配置されている。これら一対の基板支持レール41は、それぞれ断面がL字形状に形成された長板であり、鍵2の配列方向の全長に亘る長さに形成されている。
【0065】
これら一対の基板支持レール41は、図1図3に示すように、その各水平部が複数の支持部材16の各基板レール支持部16f上に所定間隔離れた状態で取り付けられている。スイッチ基板40は、図1に示すように、複数に分割されている。すなわち、この実施形態では、スイッチ基板40が例えば4つに分割されて20個程度の各鍵2に対応する長さで、一対の基板支持レール41上に取り付けられている。
【0066】
これらスイッチ基板40の下面には、図2および図9に示すように、ゴムスイッチ42がそれぞれ設けられている。このゴムスイッチ42は、鍵2の配列方向に長いゴムシートに逆ドーム状の膨出部42aが複数のハンマーアーム33にそれぞれ対応して形成された構成になっている。この膨出部42aの内部には、スイッチ基板40の下面に設けられた複数の固定接点(図示せず)に接離可能に接触する複数の可動接点42bがハンマーアーム33の前後方向に沿って設けられている。
【0067】
これにより、ゴムスイッチ42は、図9に示すように、ハンマー部材11がハンマー保持部材13のハンマー保持軸31を中心に時計回りに回転して、ハンマーアーム33のスイッチ押圧部39によって下側から押圧された際に、逆ドーム状の膨出部42aが弾性変形して、複数の可動接点42bが時間を持って順次、複数の固定接点に接触することにより、鍵2の押鍵強さに応じたスイッチ信号を出力するように構成されている。そして、このスイッチ信号は、音源部40aに供給され、鍵2の押鍵強さに応じた楽音が生成される。
【0068】
ところで、連動制御部27は、図2および図3に示すように、伝達部材10の支持部22dに設けられた連動突起部28と、ハンマー部材11の取付部33cに設けられて連動突起部28をガイドするガイド孔29とを有している。これにより、連動制御部27は、押鍵操作された鍵2に対応する伝達部材10の回転動作に伴うハンマー部材11の回転動作を、ガイド孔29に対する連動突起部28の相対的な動作によって制御するように構成されている。
【0069】
すなわち、連動制御部27の連動突起部28は、図5および図8に示すように、棒状の突起本体28aと、この突起本体28aの外周に設けられた円筒状の緩衝部28bと、を備えている。突起本体28aは、図8(a)〜図8(c)に示すように、丸棒状に形成されている。
【0070】
この突起本体28aは、図3図5に示すように、伝達部材10の伝達本体部22に設けられた支持部22dの前端上部に、鍵2の配列方向に向けて突出した状態で、一体に形成され、ハンマー部材11の取付部33cに設けられたガイド孔29に移動可能に挿入するように構成されている。この突起本体28aは、その先端外周にフック部28cが環状に形成されている。
【0071】
緩衝部28bは、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの弾力性を有する合成樹脂からなり、図8(a)〜図8(c)に示すように、ほぼ円筒状に形成されている。この緩衝部28bは、その内径が突起本体28aの外径とほぼ同じ大きさで、かつその軸方向の長さが突起本体28aの軸方向の長さ、つまり支持部22dとフック部28cとの間の長さと同じ長さに形成されている。
【0072】
また、この緩衝部28bの一端部には、図8(a)〜図8(c)に示すように、支持部22dに当接する摺動突起28dが鍔状に形成されている。これにより、緩衝部28bは、突起本体28aの外周に装着された際に、鍔状の摺動突起28dが支持部22dに当接し、反対側に位置する端部が突起本体28aのフック部28cに当接することにより、支持部22dとフック部28cとの間に挟まれた状態で、突起本体28aに取り付けられるように構成されている。
【0073】
一方、連動制御部27のガイド孔29は、図3図8(a)および図9に示すように、連動突起部28が移動可能に挿入する長孔であり、ハンマー部材11のハンマーアーム33の前端下部に設けられた取付部33cに設けられている。このガイド孔29は、伝達部材10が伝達保持軸21を中心に回転動作し、かつハンマー部材11がハンマー保持軸31を中心に回転動作する際における、連動突起部28の相対的な動作軌跡(つまり移動軌跡)に沿って長く形成された長孔である。
【0074】
すなわち、このガイド孔29は、図3図8(a)および図9に示すように、その長手方向の中心線が、後下がり(図3では左下がり)に傾斜して設けられている。また、このガイド孔29は、その長手方向と直交する方向の長さ(孔幅)が、連動突起部28の外径つまり緩衝部28bの外径とほぼ同じ大きさで、その長手方向の長さが連動突起部28の外径の1.5倍〜2倍程度の長さに形成されている。
【0075】
この場合、ガイド孔29は、図3図8(a)および図9に示すように、その内部に連動突起部28が挿入された状態で移動する際に、ガイド孔29の内周面に連動突起部28の緩衝部28bが弾力的に接触して移動すると共に、ガイド孔29の側縁部つまりハンマー部材11の取付部33cの側面に緩衝部28bの摺動突起28dが弾力的に接触して摺動することにより、ハンマー部材11の取付部33cが伝達部材10の支持部22dに直接接触しないように構成されている。
【0076】
これにより、連動制御部27は、図3および図9に示すように、押鍵操作された鍵2に対応する伝達部材10が回転動作し、この伝達部材10の回転動作に伴ってハンマー部材11を連動させて回転動作させる際に、そのハンマー部材11の回転動作を、ガイド孔29に対する連動突起部28の相対的な動作によって制御するように構成されている。
【0077】
すなわち、この連動制御部27は、図3に示すように、鍵2が押鍵操作されて伝達部材10が伝達保持軸21を中心に反時計回りに回転する際に、伝達部材10の回転に伴って連動突起部28がガイド孔29の前端上部に当接してガイド孔29の前端上部を押し上げることにより、ハンマー保持軸31を中心にハンマー部材11を時計回りに回転させるように構成されている。
【0078】
また、この連動制御部27は、図9に示すように、ハンマー部材11が押し上げられる際に、連動突起部28がガイド孔29に沿って移動可能な状態になることにより、伝達部材10の回転速度とハンマー部材11の回転速度とが同じであっても、また異なっていても、伝達部材10とハンマー部材11とを連動させて回転動作させるように構成されている。
【0079】
また、この連動制御部27は、図9に示すように、押鍵操作された鍵2が初期位置に戻る際に、連動突起部28がガイド孔29に対して相対的に移動可能な状態であることにより、伝達部材10がその自重によって伝達保持軸21を中心に時計回りに回転すると共に、ハンマー部材11がその自重によってハンマー保持軸31を中心に反時計回りに回転するように構成されている。
【0080】
さらに、この連動制御部27は、図3に示すように、伝達部材10およびハンマー部材11が初期位置に戻った際に、連動突起部28がガイド孔29の前端上部に向けて移動することにより、連動突起部28がガイド孔29の前端上部に当接または接近するように構成されている。
【0081】
次に、このような電子鍵盤楽器の鍵盤装置1の作用について説明する。
この鍵盤装置1では、鍵2が押鍵操作されていない初期状態のときに、伝達部材10がその自重で伝達保持部材12の伝達保持軸21を中心に時計回りに回転して、伝達本体部22の下面に設けられた伝達フェルト25が鍵2のキャプスタン26に上方から当接する。
【0082】
このときには、伝達部材10の重量、つまり伝達本体部22の板部材22aの形状や厚みおよび複数の第1及び第2の格子状リブ部22b、22cの形成密度によって設定されている重量が鍵2のキャプスタン26に上方から加わる。これにより、鍵2が伝達部材10によって押されてバランスピン4a、4bを中心に反時計回りに回転し、鍵2の後端部がクッション材6a、6bに当接して、鍵2が初期位置に規制されると共に、伝達部材10も初期位置に規制されている。
【0083】
また、このときには、ハンマー部材11がその自重でハンマー保持部材13のハンマー保持軸31を中心に反時計回りに回転して、ハンマーアーム33が下限ストッパ36に当接して下限位置に位置規制されている。この状態では、ハンマー部材11のスイッチ押圧部39がスイッチ基板40のゴムスイッチ42から下側に離れた位置に配置される。このため、ゴムスイッチ42は、その膨出部42aが膨張した自由状態になり、複数の可動接点42bが固定接点(図示せず)から離れることにより、オフ状態になっている。
【0084】
次に、このような状態の鍵2を押鍵操作して演奏する場合について説明する。
この場合には、鍵2が押鍵操されると、鍵2がバランスピン4a、4bを中心に図3において時計回りに回転し、鍵2のキャプスタン26が伝達部材10を押し上げる。このときには、伝達部材10の重量である伝達本体部22の板部材22aの形状や厚みおよび複数の第1及び第2の格子状リブ部22b、22cの形成密度によって設定されている重量が、鍵2に初期荷重として付与される。
【0085】
これにより、伝達部材10がその自重に抗して伝達保持部材12の伝達保持軸21を中心に図3において反時計回りに回転する。すると、伝達部材10の回転動作が連動制御部27によってハンマー部材11に伝達され、ハンマー部材11がその自重に抗して押上げられる。すなわち、伝達部材10が図3において反時計回りに回転すると、この伝達部材10の回転に伴って連動突起部28がガイド孔29の前端上部に当接してガイド孔29の前端上部を押し上げる。
【0086】
これにより、ハンマー部材11がハンマー保持部材13のハンマー保持軸31を中心に図3において時計回りに回転して、鍵2にアクション荷重を付与する。すなわち、ハンマー部材11がハンマー保持軸31を中心に図3において時計回りに回転する際には、ハンマー部材11の慣性モーメントによって鍵2にアクション荷重が付与される。この場合、ハンマーアーム33は、図3および図9に示すように、鍵2の前後方向の長さが伝達部材10とほぼ同じ長さに形成され、このハンマーアーム33の後端部にハンマー部32が形成されている。
【0087】
この状態で、ハンマーアーム33のハンマー嵌合部34がハンマー保持軸31に回転可能に取り付けられているので、ハンマー部材11がハンマー保持軸31を中心に時計回りに回転する際には、ハンマー部材11に慣性モーメントが発生する。この慣性モーメントによる負荷が連動制御部27および伝達部材10を介して鍵2にアクション荷重として付与される。これにより、アコースティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感が得られる。
【0088】
このようにハンマー部材11がハンマー保持軸31を中心に時計回りに回転すると、図9に示すように、ハンマーアーム33のスイッチ押圧部39がスイッチ基板40に設けられたゴムスイッチ42の逆ドーム状の膨出部42aを下側から押圧する。これにより、逆ドーム状の膨出部42aが弾性変形して、膨出部42a内の複数の可動接点42bが時間間隔を持って順次、複数の固定接点に接触する。
【0089】
このときには、押鍵された鍵2に応じたスイッチ信号が音源部40aに供給され、この音源部40aで楽音データが生成され、この生成された楽音データに基づいて発音部としてのスピーカ(図示せず)から楽音を発生する。そして、ハンマー部材11がハンマー保持軸31を中心に更に時計回りに回転すると、ハンマーアーム33が上限ストッパ37に下側から当接して、ハンマー部材11の回転が規制されて停止する。
【0090】
このとき、例えば、白鍵2aに対応するハンマー部材11が回転した際には、ハンマーアーム33の白鍵用のストッパ当接部43aが上限ストッパ37に下側から当接する。また、黒鍵2bに対応するハンマー部材11が回転した際には、ハンマーアーム33の黒鍵用のストッパ当接部43bが上限ストッパ37に下側から当接する。
【0091】
この場合、白鍵用のストッパ当接部43aは、ハンマーアーム33の上面とほぼ同じ高さで形成されており、黒鍵用のストッパ当接部43bは、ハンマーアーム33の上面から突出した高さで形成されている。このため、白鍵2aと黒鍵2bとは、その前後方向の長さが異なり、白鍵2aの長さが黒鍵2bの長さよりも長く形成されていても、白鍵2aに対応するハンマー部材11と黒鍵2bに対応するハンマー部材11とが同じ回転量(回転角)で上限ストッパ37に当接する。また、通常のピアノのように白鍵の回転量を黒鍵の回転量よりわずかに大きくしてもよい。
【0092】
この後、鍵2が初期位置に戻る離鍵動作(復帰動作)を開始する際には、連動突起部28がガイド孔29に対して相対的に移動可能な状態で、伝達部材10がその自重で時計回りに回転して初期位置に戻ると共に、ハンマー部材11がその自重で反時計回りに回転して初期位置に戻る。これにより、鍵2が初期位置に戻り、連動制御部27の連動突起部28がガイド孔29の前端上部に当接または接近した状態になる。
【0093】
ところで、このような鍵盤装置1において、鍵2を軽い力(弱い力)で押鍵操作した場合には、鍵2がバランスピン4a、4bを中心に時計回りにゆっくり回転し、鍵2のキャプスタン26が伝達部材10をゆっくり押し上げる。このときには、伝達部材10の重量である伝達本体部22の板部材22aの形状や厚みおよび複数の第1及び第2の格子状リブ部22b、22cの形成密度によって設定されている重量が、静的荷重として鍵2に付与される。
【0094】
これにより、伝達部材10がその自重に抗して伝達保持部材12の伝達保持軸21を中心に反時計回りにゆっくり回転し、連動制御部27の連動突起部28がガイド孔29の前端上部をゆっくり押し上げる。これに伴って、ハンマー部材11がハンマー保持部材13のハンマー保持軸31を中心に時計回りにゆっくり回転して、鍵2にアクション荷重を付与する。
【0095】
そして、ハンマー部材11のスイッチ押圧部39がスイッチ基板40に設けられたゴムスイッチ42を押圧してスイッチ動作させ、ハンマー部材11の後端上部が上限ストッパ37に下側から当接して、ハンマー部材11の回転が停止される。
【0096】
このときには、連動制御部27の連動突起部28がガイド孔29の前端上部に当接した状態を維持する。この状態で、鍵2が初期位置に戻る離鍵動作(復帰動作)を開始すると、連動制御部27の連動突起部28がガイド孔29の前端上部に当接または接近した状態で、伝達部材10がその自重で時計回りに回転して初期位置に戻ると共に、ハンマー部材11がその自重で反時計回りに回転して初期位置に戻り、鍵2を初期位置に戻す。
【0097】
一方、このような鍵盤装置1において、鍵2を強い力で押鍵操作した場合には、鍵2がバランスピン4a、4bを中心に時計回りに速い速度で回転し、鍵2のキャプスタン26が伝達部材10を速い速度で押し上げる。このときには、伝達部材10の伝達本体部22に加速度が生じる。
【0098】
このため、伝達本体部22の板部材22aの形状や厚みおよび複数の第1及び第2の格子状リブ部22b、22cの形成密度によって設定されている重量、および板部材22aの形状や厚みおよび複数の第1及び第2の格子状リブ部22b、22cの形成位置によって設定されている重心位置Gに応じて、動的荷重が発生し、この動的荷重が鍵2に付与されると共に、ハンマー部材11にも付与される。
【0099】
これにより、伝達部材10が伝達保持部材12の伝達保持軸21を中心に反時計回りに速い速度で回転する。このときには、連動制御部27の連動突起部28がガイド孔29の前端上部を速い速度で急激に押し上げる。このため、ハンマー部材11がハンマー保持部材13のハンマー保持軸31を中心に時計回りに速い速度で急激に回転して、鍵2にアクション荷重を付与する。このとき、ハンマー部材11の回転速度が伝達部材10の回転速度よりも速い場合には、連動制御部27のガイド孔29の前端上部が連動突起部28から離れ、連動突起部28がガイド孔29内をその後端下部に向けて相対的に移動する。
【0100】
そして、ハンマー部材11のスイッチ押圧部39がスイッチ基板40に設けられたゴムスイッチ42を急激に押圧してスイッチ動作させ、ハンマー部材11の後端上部、つまり白鍵用のストッパ当接部43aまたは黒鍵用のストッパ当接部43bが上限ストッパ37に下側から急激に当接する。このため、ハンマー部材11は、上限ストッパ37で撥ね返される。
【0101】
このときには、図9に示すように、連動制御部27の連動突起部28がガイド孔29の前端上部から相対的に離れているため、ハンマー部材11がハンマー保持軸31を中心に反時計回り方向に回転し、連動制御部27のガイド孔29の前端上部が連動突起部28に当接または接近する。このため、ハンマー部材11は、上限ストッパ37から離れた位置で停止するか、または伝達部材10を時計回り方向に僅かに回転させる。これにより、ハンマー部材11の撥ね返りが抑制される。
【0102】
そして、鍵2が初期位置に戻る離鍵動作(復帰動作)を開始すると、連動制御部27の連動突起部28がガイド孔29に沿って移動可能な状態でガイド孔29の前端上部に当接し、この状態で伝達部材10がその自重で時計回りに回転して初期位置に戻ると共に、ハンマー部材11がその自重で反時計回りに回転して初期位置に戻り、鍵2を初期位置に戻す。
【0103】
また、この鍵盤装置1で1つの鍵2を続けて押鍵操作する所謂連打操作した場合には、一度、鍵2が押鍵操作され、ハンマー部材11が押し上げられて上限位置に到達し、ハンマー部材11、伝達部材10、および鍵2が初期位置に戻る途中で、同じ鍵2が再び押鍵操作される。
【0104】
このときには、連動制御部27の連動突起部28がガイド孔29に沿って移動可能である。このため、ハンマー部材11の戻り方向への回転速度と、伝達部材10の戻り方向への回転速度とが、同じ速度であっても、また異なる速度であっても、ハンマー部材11および伝達部材10がそれぞれ自重によって初期位置に向けて戻り動作し、これに伴って鍵2も初期位置に向けて戻り動作する。この鍵2の戻り動作の途中で鍵2が再び押鍵操作されると、初期位置への戻り途中の伝達部材10が鍵2のキャプスタン26によって再び押し上げられる。
【0105】
すると、戻り途中の伝達部材10が伝達保持軸21を中心に再び反時計回りに回転する。このときには、連動制御部27の連動突起部28がガイド孔29に沿って移動してガイド孔29の前端上部を押し上げる。これにより、初期位置への戻り途中のハンマー部材11がハンマー保持軸31を中心に再び時計回りに回転して、鍵2にアクション荷重を付与して、ゴムスイッチ42を押圧してスイッチ動作させる。
【0106】
このため、1つの鍵2を連打操作する際に、連動制御部27のガイド孔29に対する連動突起部28の相対的な移動によって、ハンマー部材11の戻り動作および伝達部材10の戻り動作を制御する。これにより、1つの鍵2を続けて押鍵する連打操作が良好にでき、連打性能の向上が図れる。
【0107】
このように、この電子鍵盤楽器の鍵盤装置1によれば、複数の鍵2それぞれに対応して設けられ、これら複数の鍵2それぞれの押鍵操作に応じて変位する複数の伝達部材10と、複数の鍵2それぞれに対応して設けられ、押鍵操作された鍵2に対応する伝達部材10の変位に応じて回転動作することにより、押鍵操作されている鍵2に対してアクション荷重を付与する複数のハンマー部材11と、を備え、伝達部材10は、伝達本体部22に形成された複数の第1及び第2の格子状リブ部22b、22cの形成密度に応じて重量が設定されていることにより、簡単な構造で、良好な鍵タッチを得ることができる。
【0108】
すなわち、この電子鍵盤楽器の鍵盤装置1では、伝達本体部22に形成された複数の第1及び第2の格子状リブ部22b、22cの形成密度に応じて伝達部材10の重量を設定することができるので、この設定された伝達部材10の重量を鍵2に静的荷重として付与することができ、これにより鍵2の初期荷重を最適化することができると共に、押鍵時にその鍵2の押鍵力を静的荷重としてハンマー部材11に良好に伝えることができる。このため、構造が簡単で、良好な鍵タッチを得ることができる。
【0109】
この場合、伝達本体部22は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、厚みの薄い板部材22aと、この板部材22aの外周部および両側面にほぼ格子状に形成された複数の第1の格子状リブ部22bと、これら格子状のうち、一部の格子内に更に設けられた升目の細かい複数の第2の格子状リブ部22cと、を有する構成であるから、複数の第1及び第2の格子状リブ部22b、22cの形成密度によって伝達部材10の重量を設定することができると共に、成型用金型で容易に製作することができる。
【0110】
また、この電子鍵盤楽器の鍵盤装置1によれば、複数の鍵2それぞれに対応して設けられ、これら複数の鍵2それぞれの押鍵操作に応じて変位する複数の伝達部材10と、複数の鍵2それぞれに対応して設けられ、押鍵操作された鍵2に対応する伝達部材10の変位に応じて回転動作することにより、押鍵操作されている鍵2に対してアクション荷重を付与する複数のハンマー部材11と、を備え、伝達部材10は、伝達本体部22に形成された複数の第1及び第2の格子状リブ部22b、22cの形成位置に応じて重心位置Gが設定されていることにより、簡単な構造で、良好な鍵タッチを得ることができる。
【0111】
すなわち、この電子鍵盤楽器の鍵盤装置1では、伝達本体部22に形成された複数の第1及び第2の格子状リブ部22b、22cの形成位置に応じて伝達部材10の重心位置Gを設定することができるので、押鍵操作された鍵2によって伝達部材10が変位する際に、伝達本体部22に形成された複数の第1及び第2の格子状リブ部22b、22cの形成位置に応じて設定されている伝達部材10の重心位置Gによって、鍵2に動的荷重を付与することができると共に、押鍵時にその鍵2の押鍵力を動的荷重としてハンマー部材11に良好に伝えることができる。このため、簡単な構造で、良好な鍵タッチを得ることができる。
【0112】
この場合にも、伝達本体部22は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、厚みの薄い板部材22aと、この板部材22aの外周部および両側面にほぼ格子状に形成された複数の第1の格子状リブ部22bと、これら格子状のうち、一部の格子内に更に設けられた升目の細かい複数の第2の格子状リブ部22cと、を有する構成であるから、複数の第1及び第2の格子状リブ部22b、22cの形成状態、つまり複数の第1の格子状リブ部22bの一部に設けられた細かい複数の第2の格子状リブ部22cの形成位置によって伝達部材10の重心位置Gを伝達本体部22の中心部からずれた位置に設定することができると共に、成型用金型で容易に製作することができる。
【0113】
このように、この電子鍵盤楽器の鍵盤装置1では、伝達本体部22に形成された複数の第1及び第2の格子状リブ部22b、22cの形成密度に応じて伝達部材10の重量を設定することができると共に、伝達本体部22に形成された複数の第1及び第2の格子状リブ部22b、22cの形成位置に応じて伝達部材10の重心位置Gを設定することができる。
【0114】
このため、この鍵盤装置1では、設定された伝達部材10の重量を鍵2に静的荷重として鍵2に付与することができると共に、押鍵時にその鍵2の押鍵力を静的荷重としてハンマー部材11に良好に伝えることができ、また押鍵操作された鍵2によって伝達部材10が変位する際に、設定された伝達部材10の重心位置Gによって、鍵2に動的荷重を付与することができると共に、押鍵時にその鍵2の押鍵力を動的荷重としてハンマー部材11に良好に伝えることができる。
【0115】
なお、上述した実施形態では、伝達本体部22が、厚みの薄い板部材22aの両側面にほぼ格子状に形成された複数の第1の格子状リブ部22bと、これら格子状のうち、一部の格子内に形成されるリブの本数を増やして更に升目の細かい複数の第2の格子状リブ部22cと、を有する構成である場合について述べたが、この発明は、これに限らず、例えば、図10に示す変形例のように構成しても良い。
【0116】
すなわち、この変形例の伝達本体部22は、厚みの薄い板部材45aの両側面における中心部よりも下側に複数のリブ部45bを升目の大きい格子状に形成し、板部材45aの両側面における中心部よりも上側に複数のリブ部45cを形成されるリブの本数を増やして升目の小さい格子状に形成した構成になっている。
【0117】
このような伝達本体部22では、複数のリブ部45b、45cの形成密度に応じて伝達部材10の重量を設定することができるので、この設定された伝達部材10の重量を鍵2に静的荷重として付与することができると共に、伝達本体部22に形成された複数の第1及び第2の格子状リブ部22b、22cの形成位置に応じて伝達部材10の重心位置Gを上述した実施形態のものよりも高い位置に設定することができ、これにより上述した実施形態と異なる動的荷重を鍵2に付与することができる。
【0118】
また、この発明は、これに限らず、伝達本体部22の板部材22a、45aの全体の厚みを変えることにより、伝達部材10の重量を設定しても良い。
【0119】
また図11(a)および図11(b)に示すように、格子内に形成されるリブの本数を増やすのではなく、重量を大きくしたい部分にある格子内には、他の格子内の板部材22aより厚みを厚くした板部22eを、本発明の重心位置設定部材として設けることにより、伝達部材10の重量および重心位置Gを設定しても良い。さらには、重量を大きくしたい部分にある格子内の板部材22aをより重量の重い材質の部材に変更することも可能である。
【0120】
また、図12(a)及び図12(b)に示すように、伝達本体部22を格子状に形成された複数の第1の格子状リブ部22bのみで形成し、重量を大きくしたい部分にある格子内にのみ、本発明の重心位置設定部材としての板部材22aを設ける一方、その他の格子内には板部を設けない構成とすることも可能である。
【0121】
また、本実施形態においては、一部の格子内に形成されるリブの本数を増やして更に升目の細かい複数のリブ部を形成することにより、リブ部の重量を増加させているが、形成されるリブの本数を増やすのではなく、個々のリブを太くしてリブ部全体の重量を増加させるようにしてもよい。
【0122】
さらに、上述した実施形態では、連動制御部27の連動突起部28を伝達部材10に設け、ガイド孔29をハンマー部材11に設けた場合について述べたが、これに限らず、例えば連動突起部28をハンマー部材11の取付部33cに設け、ガイド孔29を伝達部材10の支持部22dに設けた構成であっても良い。
【0123】
この場合には、鍵2が弱い力で押鍵された際に、伝達部材10のガイド孔29の後端下部にハンマー部材11の連動突起部28が当接した状態でハンマー部材11をゆっくり押し上げて回転させることができ、また鍵2が初期位置に戻る際にも、連動突起部28がガイド孔29の後端下部に当接した状態で、伝達部材10およびハンマー部材11を初期位置に戻すことができる。
【0124】
また、鍵2が強い力で押鍵された際には、伝達部材10のガイド孔29の後端下部がハンマー部材11の連動突起部28を勢いよく当接して押し上げて、ハンマー部材11を勢いよく回転させることができる。このときには、ハンマー部材11が上限ストッパ37に勢いよく当接して撥ね返されると、連動突起部28をガイド孔29に沿って移動させることができる。
【0125】
このため、この連動制御部27においても、ハンマー部材11が伝達部材10よりも早く初期位置に向けて回転する際に、ハンマー部材11の連動突起部28を伝達部材10のガイド孔29の後端下部に向けて移動させることができるので、ハンマー部材11の回転動作をガイド孔29に対する連動突起部28の相対的な動作によって制御することができる。これにより、上述した実施形態と同様、ハンマー部材11の不自然で不必要な動作を抑制することができるので、アコ―スティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感を得ることができる。
【0126】
さらに、1つの鍵2を連続して押鍵操作する連打操作の際にも、連動制御部27のガイド孔29に対する連動突起部28の相対的な動作によって、ハンマー部材11の戻り動作および伝達部材10の戻り動作を制御することができ、これにより1つの鍵2を続けて押鍵する連打操作を確実にかつ良好に行うことができるので、連打性能を向上させることができる。
【0127】
なおまた、上述した実施形態では、連動制御部27の連動突起部28をガイドするガイド部が、ガイド孔29である場合について述べたが、必ずしもガイド孔29である必要はなく、ガイド壁を有するガイド溝部であっても良い。この場合にも、ガイド溝部は、連動突起部28の相対的な動作軌跡に沿って長く形成されていれば良い。
【0128】
また、上述した実施形態およびその変形例では、連動制御部27の連動突起部28が伝達部材10の支持部22dまたはハンマー部材11の取付部33cに片持ち梁状に設けられている場合について述べたが、これに限らず、例えば両端支持梁状に設けられていても良い。
【0129】
さらに、上述した実施形態では、伝達部材が回転動作する構成である場合について述べたが、これに限らず、例えば押鍵に伴って上下方向に変位する(移動する)ことにより、押鍵の力をハンマー部材11に伝達する構造であっても良い。
【0130】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0131】
(付記)
請求項1に記載の発明は、複数の鍵と、
前記複数の鍵それぞれに対応して設けられた複数のアクション機構と、
を備え、
前記複数のアクション機構のそれぞれは、
格子状に形成された複数の格子状リブ部と、前記複数の格子状リブ部の周囲に設けられた外周リブ部とを有し、前記鍵の押鍵操作に応じて変位する伝達部材と、
前記押鍵操作された鍵に対応する前記伝達部材の変位に応じて上下方向に変位することにより、前記押鍵操作されている鍵に対してアクション荷重を付与するハンマー部材と、
を有し、
さらに前記複数の格子状リブ部は、前記外周リブ部の内部を横断する複数の第1横リブと、前記横リブに直交して前記外周リブ部の内部を縦断する複数の第1縦リブとを有する複数の第1の格子状リブ部と、
前記複数の第1の格子状リブ部により形成された複数の格子のうち、一部の格子内を横断する第2横リブと前記格子内を縦断する第2縦リブとを有する第2の格子状リブ部と、を有する、鍵盤装置である。
【0132】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鍵盤装置において、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記伝達部材を回転自在に保持する伝達保持軸をさらに備え、
前記伝達部材はさらに、前記伝達本体部の一端に形成されて前記伝達保持軸に回転自在に取り付けられる伝達嵌合部を有する鍵盤装置である。
【0133】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の鍵盤装置において、前記伝達嵌合部からの距離が異なる前記伝達部材の位置に応じて、形成される前記複数の格子状リブ部の単位面積あたりの重量を異ならせた鍵盤装置である。
【0134】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の鍵盤装置において、前記複数の格子状リブ部は前記第2の格子状リブ部を複数有し、前記複数の第2の格子状リブ部夫々は、前記伝達部材の中心部の下側に位置する2つの格子内と、前記伝達嵌合部からの距離が、前記伝達部材の中心部までの距離より長い位置にある格子内とに形成される、鍵盤装置である。
【0135】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の鍵盤装置において、単位面積あたりに形成される前記複数の格子状リブ部の重さを、前記伝達部材の位置に応じて異ならせた鍵盤装置である。
【0136】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の鍵盤装置において、単位面積あたりに形成される複数の格子状リブ部の形成密度を前記伝達部材の位置に応じて異ならせた鍵盤装置である。
【0137】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記複数の格子のうちの少なくとも一部の格子内を埋める板部材を設けた鍵盤装置である。
【0138】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の鍵盤装置において、前記板部材は、前記板部材を囲む複数の前記格子状リブ部と一体に形成した鍵盤装置である。
【0139】
請求項9に記載の発明は、複数の鍵と、
前記複数の鍵それぞれに対応して設けられた複数のアクション機構と、
を備え、
前記複数のアクション機構のそれぞれは、
格子状に形成された複数の格子状リブ部と、前記複数の格子状リブ部の周囲に設けられた外周リブ部とを有し、前記鍵の押鍵操作に応じて変位する伝達部材と、
前記押鍵操作された鍵に対応する前記伝達部材の変位に応じて上下方向に変位することにより、前記押鍵操作されている鍵に対してアクション荷重を付与するハンマー部材と、
を有し、
さらに前記複数の格子状リブ部は、前記外周リブ部の内部を横断する複数の第1横リブと、前記第1の横リブに直交して前記外周リブ部の内部を縦断する複数の第1縦リブとを有し、
前記複数の格子状リブ部により形成された複数の格子のうち、少なくとも一部の格子内に板部材を設けた、鍵盤装置である。
【0140】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の鍵盤装置において、前記板部材は、前記板部材を囲む複数の前記格子状リブ部と一体に形成した鍵盤装置である。
【0141】
請求項11に記載の発明は、請求項9又は10に記載の鍵盤装置において、前記複数の格子状リブ部により形成された複数の格子夫々の内部に板部材が設けられ、前記複数の格子のうち、一部の前記格子内に設けられた前記板部材の重量を他の前記格子内に設けられた前記板部材と異ならせた鍵盤装置である。
【0142】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載された鍵盤装置と、前記鍵盤装置の前記鍵の操作に応じて楽音を発生する発音部と、を備えている鍵盤楽器である。
【符号の説明】
【0143】
1 鍵盤装置
2 鍵
3 アクション機構
10 伝達部材
11 ハンマー部材
12 伝達保持部材
13 ハンマー保持部材
21 伝達保持軸
22 伝達本体部
22a、32a、45a 板部材
22b、22c、45b、45c リブ部
23 伝達嵌合部
27 連動制御部
28 連動突起部
28a 突起本体
28b 緩衝部
28c フック部
28d 摺動突起
29 ガイド孔
31 ハンマー保持軸
32 ハンマー部
33 ハンマーアーム
33c 取付部
34 ハンマー嵌合部
43a、43b ストッパ当接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16