特許第6551878号(P6551878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6551878リチウムイオン電池の正極材料の製造方法及びこの方法で製造した電極材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6551878
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池の正極材料の製造方法及びこの方法で製造した電極材料
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20190722BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20190722BHJP
   C01G 51/00 20060101ALI20190722BHJP
   C01G 23/00 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   H01M4/525
   H01M4/36 C
   C01G51/00 A
   C01G23/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-25824(P2015-25824)
(22)【出願日】2015年2月12日
(65)【公開番号】特開2016-149270(P2016-149270A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2017年11月24日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年8月25日 日本セラミックス協会第27回秋季シンポジウム予稿集用のウェブサイト(http://www.ceramic.or.jp/ig−syuki/27th/index.html#program)に公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年9月11日 鹿児島大学 郡元キャンパスにおいて開催、日本セラミックス協会第27回秋季シンポジウムで発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年10月24日 東京工業大学 大岡山キャンパス西9号館において開催、第34回エレクトロセラミックス研究討論会で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年11月15日 島根大学 総合理工学部1号館において開催、第21回ヤングセラミスト・ミーティングin中四国で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年11月19日 国立京都国際会館において開催、第55回電池討論会で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年12月10日 横浜情報文化センター 横浜市開港記念会館講堂において開催、第24回日本MRS年次大会で発表
(73)【特許権者】
【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
(72)【発明者】
【氏名】寺西 貴志
(72)【発明者】
【氏名】岸本 昭
(72)【発明者】
【氏名】吉川 祐未
【審査官】 松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−028231(JP,A)
【文献】 特表2012−531010(JP,A)
【文献】 特開平04−362014(JP,A)
【文献】 特開2014−116129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/36
C01G 23/00
C01G 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池の正極を構成する活物質の粉末状とした活物質原料と、第1元素と第2元素とを含有した強誘電体を構成するための第1元素を含有する粉末状とした第1元素原料と、第2元素を含有する粉末状とした第2元素原料とを溶液に分散させて分散液を作製する分散液作製工程と、
前記分散液をゲルとするゲル化工程と、
前記ゲルを加熱して前記活物質原料に前記強誘電体を担持させる加熱工程と
を有するリチウムイオン電池の正極材料の製造方法において、
前記活物質原料はコバルト酸リチウムとし、前記第1元素原料は酢酸バリウムとし、前記第2元素原料はチタンブトキシドとして、リチウムイオン電池の正極を構成する活物質にチタン酸バリウムを担持させ、
前記ゲル化工程では、前記分散液を70℃において6時間撹拌しながら乾燥させることでゲル化させ、前記加熱工程では、600℃で20時間加熱しているリチウムイオン電池の正極材料の製造方法。
【請求項2】
前記第1元素原料と前記第2元素原料は、前記加熱工程で前記強誘電体となった場合に、前記活物質原料に対して5mol%以下としている請求項1に記載のリチウムイオン電池の正極材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の正極材料の製造方法及びこの方法で製造した電極材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン電池では、正極として活物質の粒子表面に強誘電体を担持させ、焼結させている複合正極を用いている。
【0003】
このような複合正極として、LiCoO2系の正極粉末の粒子表面に、強誘電体であるチタン酸バリウムBaTiO3を0.1mol%〜5mol%の添加量範囲であって、100nm〜5μm以下の粒子径範囲で担持させ、なおかつ400℃〜750℃の温度範囲で焼結させた複合正極が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この複合正極は、低温での出力特性の改善を目的としており、具体的には、活物質であるLi1.1Ni0.5Co0.2Mn0.3O2粒子に、1mol%のBaTiO3を700℃においてメカニカルに混合することで担持させた複合正極とし、この複合正極において-30℃の低温での出力特性が未処理品に対して139.5%改善されたとの報告がある。
【0004】
上記の複合正極は、リチウムイオン電池の電解質として非水系電解液を用いたものであるが、電解質を硫化物系固体とした全固体リチウムイオン電池の複合正極とし、活物質に対して1wt%量で、平均粒径50nmの強誘電体チタン酸バリウムBaTiO3を液相中分散させることで複合化させた複合正極も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この複合正極は、放電容量の向上を目的としており、固体電解質と活物質との界面での抵抗を約20%減少させ,放電容量を約5%向上可能であることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−210694号公報
【特許文献2】特開2014−116129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リチウムイオン電池では、低温での出力特性の改善や、放電容量の向上も重要な性能向上の項目ではあるが、高速充放電レートにおける容量特性の向上も重要な項目であるものの、従来の複合正極では、高速充放電レートにおける容量特性の向上が期待できなかった。
【0007】
リチウムイオン電池の正極では、正極を構成している活物質と電解液との界面でのLiイオンの挿入脱離反応が生じているが、活物質の粒子表面に強誘電体を担持させた複合正極では、強誘電体の分極を利用することによりLiイオンの挿入脱離反応を促進させる効果を狙いとしており、強誘電体はできるだけ微粒子状態で活物質に担持させることで、特に高速充放電レートにおける容量特性の向上が期待できる可能性があった。
【0008】
しかし、従来の強誘電体をメカニカルに活物質に被覆させて加熱処理する方法では、加熱にともなって強誘電体の粒成長が生じることで、強誘電体をできるだけ微粒子状態で活物質に担持させることが困難となっていた。
【0009】
本発明者らは、このような現状に鑑み、強誘電体をできるだけ微粒子状態で活物質に担持させた複合正極とすることで、高速充放電レートにおける容量特性を向上させるべく研究を行って、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のリチウムイオン電池の正極材料の製造方法は、リチウムイオン電池の正極を構成する活物質の粉末状とした活物質原料と、第1元素と第2元素とを含有した強誘電体を構成するための第1元素を含有する粉末状とした第1元素原料と、第2元素を含有する粉末状とした第2元素原料とを溶液に分散させて分散液を作製する分散液作製工程と、分散液をゲルとするゲル化工程と、ゲルを加熱して活物質原料に強誘電体を担持させる加熱工程とを有するものである。特に、活物質原料はコバルト酸リチウムとし、第1元素原料は酢酸バリウムとし、第2元素原料はチタンブトキシドとして、リチウムイオン電池の正極を構成する活物質にチタン酸バリウムを担持させ、ゲル化工程では、分散液を70℃において6時間撹拌しながら乾燥させることでゲル化させ、加熱工程では、600℃で20時間加熱しているものである。
【0011】
さらに、本発明のリチウムイオン電池の正極材料の製造方法では、第1元素原料と第2元素原料は、加熱工程で強誘電体となった場合に、活物質原料に対して5mol%以下としていることにも特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ソフトケミカルな液相法により活物質表面に強誘電体をナノ粒子状として合成・付着させることができ、強誘電体の均質化・均一膜厚化が可能となることで、Liイオンの活物質内への挿入脱離をよりスムーズに生じさせることができ、高速充放電レートにおける容量特性を改善できる.
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】加熱工程後の粉末のSTEM像及びSTEM-EDS像である。
図2】加熱工程後の粉末のXRDパターンである。
図3】加熱工程で600℃にて熱処理した試料のSTEM像である。
図4】高速充放電レートにおける容量特性のグラフである。
図5】加熱工程(600℃)後の粉末のXRDパターンである。
図6】加熱工程(600℃)後のSTEM像及びSTEM-EDS像である。
図7】高速充放電レートにおける容量特性のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明では、活物質表面にメカニカルな方法で強誘電体粒子を付着させるのではなく、ソフトケミカルな液相法により、活物質表面に強誘電体をナノ粒子状として合成・付着させているものである。
【0016】
すなわち、本発明のリチウムイオン電池の正極材料の製造方法は、リチウムイオン電池の正極を構成する活物質の粉末状とした活物質原料と、第1元素と第2元素とを含有した強誘電体を構成するための第1元素を含有する粉末状とした第1元素原料と、第2元素を含有する粉末状とした第2元素原料とを溶液に分散させて分散液を作製する分散液作製工程と、分散液をゲルとするゲル化工程と、ゲルを加熱して活物質原料に強誘電体を担持させる加熱工程とを有している。
【0017】
以下において実施例を示しながら、具体的に説明する。
【実施例1】
【0018】
<正極材料の製造>
使用した活物質は、リチウムイオン電池に実用化されているコバルト酸リチウム(LiCoO2)とした。コバルト酸リチウムは粉末状としており、平均粒径3μmであった。コバルト酸リチウムに担持させる強誘電体はチタン酸バリウム(BaTiO3)とし、第1元素原料はBa源としての酢酸バリウムとし、第2元素原料はTi源としてのチタンブトキシドとした。
【0019】
コバルト酸リチウムは、エタノールに分散させたコバルト酸リチウム溶液とし、酢酸バリウムは、酢酸に溶解させた酢酸溶液とし、チタンブトキシドは、2−メトキシエタノールに溶解させたメトキシエタノール溶液とし、コバルト酸リチウム溶液に所定量の酢酸溶液とメトキシエタノール溶液を加えて、超音波分散させて分散液とした。これが分散液作製工程である。ここで、コバルト酸リチウム溶液は、5gのコバルト酸リチウムを40mLのエタノールに分散させた溶液とし、酢酸溶液は、20mlの酢酸に1.31gの酢酸バリウムを溶解させた溶液とし、メトキシエタノール溶液は、20mlの2−メトキシエタノールに1.76gのチタンブトキシドを溶解させた溶液として、コバルト酸リチウムに対してチタン酸バリウムが10mol%となるように調整した。
【0020】
分散液を70℃において6時間撹拌・乾燥させることでゲルを得た。これがゲル化工程である。
【0021】
得られたゲルを400℃、500℃、600℃、700℃、800℃でそれぞれ20時間熱処理した。これが加熱工程である。加熱工程後の各粉末のSTEM像及びSTEM-EDS像を図1に示す。図1において、「LC-BT-400」が400℃の場合、「LC-BT-500」が500℃の場合、「LC-BT-600」が600℃の場合、「LC-BT-700」が700℃の場合、「LC-BT-800」が800℃の場合を示している。後述する図2及び図4においても同じである。「bare LC」は、未処理LC、すなわちBaTiO3を担持していないLiCoO2のみの状態である。
【0022】
得られた粉末のXRDパターンを図2に示す。図2より、熱処理温度が500℃以下では、BaTiO3(BT)が十分には形成されておらず、BaCO3(BC)が主成分であり、600℃以上で主成分としてBaTiO3(BT)が得られることが分かる。
【0023】
特に、図1のSTEM-EDS像からも明らかなように、全ての熱処理温度においてLC相とBT相(またはBC相)ナノ粒子の2相コンポジット構造となっていることが確認できた。
【0024】
さらに、熱処理温度の増大に伴い、BaTiO3粒子の粒成長が見られた。BaTiO3粒子が形成されているもののうち、もっとも粒径が小さくなったものは600℃にて熱処理した試料であった。そのSTEM像を図3に示す。図3より、均一粒径のナノ粒子が活物質の表面に被覆されていることが分かる。BaTiO3粒子の粒径を確認したところ、平均粒径65nmであった。
【0025】
<正極材料の性能評価方法>
上記の方法で製造したコンポジット粉末が正極材料としての性能を有しているかを評価すべく、以下の方法で性能評価を行った。
【0026】
まず、コンポジット粉末と、導電助剤(アセチレンブラック)と、結着ポリマー(PVDF)を7:2:1の質量比の割合で混合して正極シートを作製した。
【0027】
対極は金属Liとし、電解液はエチレンカーボネートとジエチルカーボネートを3:7の体積比の溶媒中に溶解させた1mol/Lのフッ化リン酸リチウムLiPF6とした。そして、2023型コインセルを用いて3.3V−4.5Vの電位範囲において充放電試験を行った。充放電レートは、電流密度を0.1Cから最大5Cまたは10C [1C = 160 mA/g (LC理論容量換算)]の範囲において、各レート5サイクルずつ段階的にレートを引き上げることで制御した。
【0028】
高速充放電レートにおける容量特性の結果を図4に示す。400℃及び500℃で熱処理した試料については、初期容量及び高速充放電レートでの放電容量は、コバルト酸リチウムのみ(未処理品)に比べ極端に低くかった。これはBaCO3(BC)が強誘電体ではない不純物相となっていることが起因していると考えられる。一方、熱処理温度が600℃以上の場合には,ほぼ単相のBaTiO3粒子が形成されていることから、BaTiO3粒子による効果が期待できるので、熱処理温度600℃以上のものについて比較した。
【0029】
【表1】
上表の「0.1C-1サイクル目の容量」を「初期容量」とし、「10C-5サイクル目(計35サイクル目)における初期容量に対する容量保持率」を算出している。
また、「未処理品に対する改善割合」は、「5C-5サイクル目(計30サイクル目)の容量」での未処理品の容量と600℃加熱品の容量との比較、及び未処理品の容量と800℃加熱品の容量との比較である。
【0030】
表1に示されるように、初期容量は、600℃加熱品と800℃加熱品で、いずれも未処理品に比べ少し低下したが、これは容量に寄与しないBaTiO3の質量分率の効果である。
【0031】
高速充放電レートでの容量は、5C-5サイクル目の計30サイクル後では、600℃加熱品で優れた容量(122mAh/g)を示しており、平均粒径158nmとなっている800℃加熱品と比較して大幅に改善していることが分かる。特に、「122mAh/g」という値は、未処理品の放電容量(78mAh/g)を大きく逆転しており、改善割合は158%となっている。このことから、強誘電体の粒子径を100nm未満まで微粒子化することで、高速充放電レートの特性がより改善されることが分かる。
【0032】
このように、実施例1では、最適熱処理温度を600℃とすることでBaTiO3粒子の粒径を最小化できることを確認したが、BaTiO3粒子のLiCoO2に対する最適量についての検討が必要であり、下記の実施例2を実施した。
【実施例2】
【0033】
上述した<正極材料の製造>で、加熱工程の温度を600℃とし、BaTiO3となった際に、LiCoO2に対して1mol%、2.5mol%、5mol%、10mol%、15mol%のBaTiO3が生じるように分散液を調整して、各粉末を作製した。ここで、コバルト酸リチウム溶液に加える酢酸溶液及びメトキシエタノール溶液は、単にコバルト酸リチウム溶液への添加量を調整するのではなく、酢酸溶液のバリウム濃度及びメトキシエタノール溶液のチタン濃度を適宜調整し、コバルト酸リチウム溶液に必要以上に酢酸及び2−メトキシエタノールが加えられることを抑制した。具体的には、酢酸溶液は、2ml〜20mlの酢酸に0.13g〜1.96gの酢酸バリウムを溶解させた溶液とし、メトキシエタノール溶液は、2ml〜20mlの2−メトキシエタノールに0.18g〜2.63gのチタンブトキシドを溶解させた溶液とした。
【0034】
図5に、得られた粉末のXRDパターンを示す。粉末中に含まれるBaTiO3の量の減少にともなって、BaTiO3(BT)のピーク強度が減少しているが、これはLiCoO2に対する相対量の減少の影響であると考えられ、いずれの場合であってもBaTiO3が形成できていると考えてよい。
【0035】
図6に、BaTiO3(BT)1mol%の場合の試料と、BaTiO3(BT)5mol%の場合の試料のSTEM-EDS像を示す。図6よりBT相-LC相の2相コンポジット構造をとっていることが確認できる。図示しないが、他の全ての試料において、BT相とLC相の2相コンポジット構造をとっていることが確認できた。
【0036】
図7に、BaTiO3(BT)1mol%の場合の試料と、BaTiO3(BT)5mol%の場合の試料、及びLiCoO2のみ(未処理品)の試料での、高速充放電レートにおける容量特性の結果を示す。この容量特性に基づき、諸特性の比較を下表に示す。
【0037】
【表2】
上表の「0.1C-1サイクル目の容量」を「初期容量」とし、「10C-5サイクル目(計35サイクル目)における初期容量に対する容量保持率」を算出している。
また、「未処理品に対する改善割合」は、「10C-5サイクル目(計35サイクル目)の容量」での未処理品の容量とBT1mol%品の容量との比較、及び未処理品の容量とBT5mol%品の容量との比較である。
【0038】
表2に示されるように、初期容量は、BaTiO3添加量の増大にともなって減少したが、これは容量に寄与しない強誘電体BaTiO3の質量分率の効果である。
【0039】
また、表2に示されるように、BaTiO3添加量の高速充放電レートにおける容量特性への影響は大きく、BaTiO3添加量は1mol%の方が5mol%よりも効果的であり、特にBaTiO3添加量が1mol%の場合には、35サイクル後(10Cでの5サイクル目)において、比較対象の未処理品、すなわちLiCoO2のみでの容量が62mAh/gであるのに対して、146 mAh/gと238%もの改善が見られた。さらに、高速充放電レートにおける容量保持率についても、BaTiO3添加量が1mol%の場合には、35サイクル目において対初期容量値78%であるのに対して、未処理品、すなわちLiCoO2のみでは33%であり、大幅に向上することが確認できた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7