【実施例】
【0024】
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
【0025】
[実施例1〜9、比較例1〜9]
水素生成装置として、
図1に示すようなシングルモードの水素生成装置1(導波管23の断面:38.1×102.5mm)を用い、マイクロ波発振器21として、半導体式のマイクロ波発振器(富士電波工機株式会社製:GNU−201AE)を用いた。マイクロ波の周波数は、2.45GHzとした。
【0026】
反応容器11として、石英管(管長25cm、内径4mm)を使用し、活性炭にパラジウムを2wt%担持させた金属担持触媒(平均粒径:97.5μm、メッシュサイズ:45〜150μm)を0.5g投入し、その上下にガラスウールを詰めて反応容器11内に充填した。
導波管23の反応容器設置部24の内部において電場が最大となる位置に反応容器11を固定し、マイクロ波発振器21を起動させて、表1に示す出力でマイクロ波を照射しつつ、反応容器11に有機ハイドライド供給部12からデカリン3mLを表1に示す流速で供給して水素を生成した。その後、デカリンの脱水素反応による生成物であるナフタレン及びテトラリンと、未反応のデカリンを反応系から回収して定量し、ナフタレンのモル比[%]を求め、その結果から単位時間あたりのナフタレンの生成率[%/分]を算出した。その結果を表1に記すとともに、
図3にグラフで示す。
なお、
図3に示すグラフは、横軸に流速[mL/分]、縦軸にナフタレンの生成率[%/分]をとったグラフである。
【0027】
【表1】
【0028】
ここで算出したナフタレンの生成率は、ナフタレンの生成に伴う水素の生成率に対応し、
図3に示すグラフから、各マイクロ波出力のいずれにおいても、流速が0.5mL/分のときに水素の生成率が最大となり、0.3〜0.7mL/分の範囲で効率よく水素を生成することができることが確認できる。また、反応容器11の筒状の内径が4mmであるので、より効率よく水素を生成する観点から、当該筒状の径方向断面における単位断面積あたりの有機ハイドライドの流量は、0.0060〜0.0139mL/分・mm
2とするのが好ましいことが確認できる。
【0029】
[実施例10]
活性炭にパラジウムを2wt%担持させた金属担持触媒(平均粒径:97.5μm、メッシュサイズ:45〜150μm)を2.5g充填した石英管に、流速0.2mLでメチルシクロヘキサンを供給しつつマイクロ波を照射した。このとき、反応系の温度を測定したところ、約330°であった。
マイクロ波の照射開始から、時間経過に伴う水素の収率の変化を求めた。その結果をグラフ化したものを
図4に示す。
【0030】
[比較例10]
活性炭にパラジウムを2wt%担持させた金属担持触媒(平均粒径:97.5μm、メッシュサイズ:45〜150μm)を2.5g充填した石英管に、流速0.2mLでメチルシクロヘキサンを供給しつつセラミックスヒーターにより加熱した。加熱条件は、反応系の温度が実施例10と同等の約330°となるようにした。
セラミックスヒーターによる加熱開始から、時間経過に伴う水素の収率の変化を求めた。その結果をグラフ化したものを
図4に示す。
【0031】
図4に示すグラフからも分かるように、本実施形態の水素生成システムによれば、短時間で高収率の水素を生成することができ、所定量の水素を必要な都度生成させる小規模な水素生成システムとして、例えば、家庭用などの用途に好適に利用することができる。
【0032】
以上、本発明の水素生成システムの好ましい実施形態について説明したが、本発明に係る水素生成システムは上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0033】
例えば、前述した実施形態では、導波管23を利用して、一種の共振状態にあるマイクロ波が反応容器11に照射されるように構成した水素生成装置1を用いたが、水素生成装置の構成は、これに限定されない。水素生成装置は、
図5に示す構成としてもよい。
なお、
図5は、本変形例に係る水素生成装置の概略を示す説明図である。
【0034】
図5に示す水素生成装置は、前述した装置と同様に、石英管などのようなマイクロ波を透過可能な材料で形成された筒状の反応容器111を備え、反応容器111の内部には、前述したのと同様の金属担持触媒が充填されている。
【0035】
また、反応容器111は、マイクロ波が漏洩しないように形成された処理室100内に、鉛直方向に立設するように設置され、その下方から有機ハイドライドが供給されるようになっている。これにより、反応容器111に供給された有機ハイドライドは、マイクロ波供給部102から照射されたマイクロ波によって加熱された金属担持触媒の隙間を通って反応容器111の内部を上昇しつつ、金属担持触媒の触媒作用によって脱水素反応が進行するようにしてある。そして、有機ハイドライドの脱水素反応によって水素が生成されると、反応容器111の上方から、生成した水素ガスを捕集するとともに、有機ハイドライドの脱水素化物を回収できるようになっている。
【0036】
このとき、有機ハイドライドは、通常、常温で供給されるため、金属担持触媒から有機ハイドライドへの熱移動によって金属担持触媒に温度分布が生じてしまい、有機ハイドライドが供給される側の温度が低くなる傾向がある。
金属担持触媒の触媒作用によって有機ハイドライドの脱水素反応を促進するにあたっては、効率良く反応を進行させるための好ましい温度範囲がある。このため、金属担持触媒に温度分布が存在するのは好ましくなく、全体として均一な温度に維持することが望まれる。
本変形例は、このような金属担持触媒の温度分布を少なくして、効率よく脱水素化反応を進行させるためのものである。
【0037】
このため、本変形例に係る水素生成装置は、金属担持触媒の存在下にマイクロ波を照射して、有機ハイドライドから水素を生成する水素生成装置であって、前記金属担持触媒が充填された反応容器と、前記マイクロ波を前記反応容器に照射するマイクロ波供給部とを備え、前記マイクロ波供給部が、前記反応容器の長手方向に沿って配設された複数のアンテナ素子と、前記アンテナ素子のそれぞれに対応して接続された位相制御回路とを含み、前記アンテナ素子のそれぞれから位相が制御されて放射されたマイクロ波の合成波が、所定の指向性を以て前記反応容器に照射される構成としてある。
【0038】
マイクロ波供給部102は、反応容器111の長手方向に沿って配設された複数のアンテナ素子103と、これらのアンテナ素子103のそれぞれに対応して接続された位相制御回路104とを含んでおり、
図5に示す例では、各アンテナ素子103が、位相制御回路104を介して分波回路105に接続されている。分波回路105には、マイクロ波発振器106が接続されており、マイクロ波発振器106で生成されたマイクロ波は、分波回路105によって各アンテナ素子103に分波される。
【0039】
また、
図5に示す例において、反応容器111には、金属担持触媒中に埋設されるように温度センサー101が取り付けられている。これによって、金属担持触媒の温度分布を随時モニターできるようになっており、温度センサー101によってモニターされた金属担持体の温度分布情報は、演算処理部107に入力される。
温度センサー101は、赤外線などを利用した非接触式のセンサーでもよいが、マイクロ波の影響を考慮すると、図示するような接触式のセンサーであるのが好ましい。
【0040】
演算処理部107には、反応容器111に対するアンテナ素子103の位置情報が予め入力されており、この位置情報と、温度センサー101からの温度分布情報に基づいて、それぞれのアンテナ素子103に対応して接続された位相制御回路104における位相変位量を演算する。そして、その演算結果に基づいて、それぞれのアンテナ素子103から放射されるマイクロ波の位相を制御して、各アンテナ素子103から位相が制御されて放射されたマイクロ波がホイヘンス・フレネルの原理により合成され、その合成波が、所定の指向性を以て反応容器111に照射されるようにしている。
【0041】
これにより、反応容器111に充填された金属担持触媒の温度の低い部分にマイクロ波が集中するようにマイクロ波の指向性を制御したり、マイクロ波を掃引したりすることによって、反応容器111に充填された金属担持触媒の加熱温度を均一に維持して、有機ハイドライドの脱水素反応が効率よくなされるようにしている。
【0042】
各アンテナ素子103には、位相制御回路104とともに、必要に応じて増幅回路を接続して位相制御されたマイクロ波を増幅するようにしてもよく、アイソレータを接続して反射マイクロ波を遮断するようにしてもよい。アンテナ素子103としては、マイクロストリップアンテナ(パッチアンテナ)などの平面アンテナを用いることができるが、フェーズドアレイアンテナを用いてマイクロ波供給部102を構成してもよい。フェーズドアレイアンテナを用いる場合、アクティブ型、パッシブ型のいずれでもよい。
【0043】
また、
図5に示す例では、反応容器111の長手方向に沿って四つのアンテナ素子103を一列に配設しているが、アンテナ素子103の配列は、反応容器111の大きさによって任意に選択できる。反応容器111の長さに応じて、所定数のアンテナ素子103を放射されるマイクロ波の波長の半分以下の間隔で配設することができ、さらに、アンテナ素子103は、反応容器111の周りを囲むように複数列としてもよい。
【0044】
マイクロ波発振器106は、半導体素子を用いて構成されたマイクロ波発生部を備える半導体式マイクロ波発振器であって、マイクロ波発生部は、例えば、トランジスタなどの半導体増幅素子と、タンク回路などの共振回路で構成されている。かかるマイクロ波発生部には、ハートレー型発振回路又はコルピッツ型発振回路などを用いることができる。
【0045】
マイクロ波は、一般に、300MHz〜30GHzの周波数(1m〜1cmの波長)の電磁波をいうが、例えば、2.45GHz又は5.80GHzのマイクロ波MWを発振することができる。
また、マイクロ波出力は特に限定されないが、例えば、数十ワットから数百ワットの範囲内で設定してもよいし、更に大出力としてもよい。