(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
常温固化油脂を加熱溶解する工程、粉末状原料を混合した後、粉砕機でメジアン径を260μm以下に微粉化する工程、溶解した該油脂に微粉化した粉末状原料を加水せずに混合分散させることにより、該粉末状原料が該油脂中に不溶状態で混合分散して存在するスラリー液を得る工程、該スラリー液をブロック状に成型固化させる工程、を含み、組成物中の油脂含有割合を28〜86重量%とすることを特徴とする、ブロック状インスタント食品組成物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
食生活の多様化が進む中、熱湯などを注いですぐに、あるいは数分待つだけで食べられる非常に手軽な食品であるインスタントスープのニーズは高まっており、その市場も拡大している。現状では、流通しているインスタントスープ類は、粉末状か顆粒状のスープに必要に応じて乾燥具材が混合されたものか、FDブロック状のものがほとんどである(特許文献1、2)。
【0003】
インスタントスープ類がこのような性状・形状である理由は、熱湯や水を注いですぐにあるいは数分待つだけで喫食できるようにするため、特にスープの溶解性を重視しているからである。しかし、この粉末状、顆粒状、あるいはFDブロック状のスープは、油脂分を多く配合することが困難であった。
【0004】
すなわち、粉末状あるいは顆粒状のスープに油脂分を多く配合するためには、粉末油脂を使用しなければならない。粉末油脂は、油脂分を賦形剤に含浸させて粉末状としたもので、本来スープには不要な賦形剤を多く配合しなければならず、嵩が多くなりすぎるばかりか、原料費も高くなってしまい、また、風味への影響も懸念される。そして、FD(フリーズドライ)は、凍結させた食品を真空状態に置き、水分を昇華させ乾燥させる技術であって、乾燥食品の内部は水分が抜けて多孔質となっているため、熱湯や水などによる復元が容易であるが、このような技術特徴からそもそも油脂を多く配合することが困難な製法であるため、油脂分を多く配合したFDブロック状のスープは現状では見当たらない。
【0005】
一方、油脂分を多く配合する方法としては固形ルウ状とすることも考えられるが(例えば特許文献3など)、従来の固形ルウの製造方法は、粉末原料を最低限の水やブイヨン等でペースト状にしたものと油脂分を混合するのが一般的であり、油脂高含有のスープの素としての一応の目的は達成できるものの、これは一定時間(通常5〜15分以上)煮込んで溶解するものであって、熱湯などで速やかに完全溶解させることは困難であった。
【0006】
したがって、油脂分が豊富な固形状インスタントスープを提供することはこれまで困難であり、油脂配合量を減らして即溶性を担保した固形状食品とするか、即溶性を断念して煮込み専用の固形ルウとするしかなかった。
【0007】
このような背景技術の中、当業界では、インスタントスープにも適用可能な(例えば90℃以上に加熱された溶媒で速やかに溶解するような)、油脂を高含有する固形状食品組成物、及び、その製造方法の開発が強く望まれていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、インスタントスープにも適用可能な、油脂を高含有する固形状食品組成物、及び、その製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を行った結果、粉末状原料と、常温固化油脂とを含有してなり、且つ、該粉末状原料が該常温固化油脂中に不溶状態で分散して存在する固形状食品組成物とすることで、90℃以上に加熱された溶媒で速やかに溶解し、インスタントスープにも適用可能であり、且つ、煮込み食品にも使用できる油脂高含有固形状食品組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の実施形態は次のとおりである。
(1)粉末状原料と、常温固化油脂とを含有してなり、該粉末状原料が該常温固化油脂中に不溶状態で分散して存在することを特徴とする固形状食品組成物。
(2)粉末状原料のメジアン径が400μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは260μm以下であることを特徴とする(1)に記載の組成物。
(3)組成物中の油脂含有割合が20重量%以上、より好ましくは30重量%以上であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の組成物。
(4)更に、乾燥具材が常温固化油脂中に存在する(固定化されている)ことを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載の組成物。
(5)煮込み調理を必要とせず、90℃以上に加熱された溶媒により溶解させ喫食する固形状インスタントスープであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1つに記載の組成物。
(6)常温固化油脂を溶解する工程、溶解した該油脂に粉末状原料を加水せずに混合分散してスラリー液を得る工程、該スラリー液を固化させる工程、を含むことを特徴とする固形状食品組成物の製造方法。
(7)メジアン径を400μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは260μm以下に微粉化した粉末状原料を混合分散することを特徴とする(6)に記載の方法。
(8)組成物中の油脂含有割合を20重量%以上、より好ましくは30重量%以上とすることを特徴とする(6)又は(7)に記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フリーズドライ製法などでは実現が難しかった油脂を高含有する固形状食品組成物を簡便に得ることができ、さらに、この固形状食品組成物は調理時に煮込む必要がなく、90℃以上に加熱された溶媒で速やかに溶解し、固形状インスタントスープとしても適用可能である。また、該固形状食品組成物は、煮込み食品で使用することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、油脂を高含有する固形状食品組成物及びその製造方法に関するものであり、当該固形状食品組成物には水や熱湯などで溶解してすぐに、あるいは2〜3分で喫食するもの(固形状インスタントスープ(例えばシチュー、チャウダー、ボルシチ、フォンデュ等)など)が包含される。
【0014】
そして、本発明では、固形状食品組成物の粉末状原料を、同じ固形状食品組成物の原料である常温固化油脂に不溶状態で分散させる。ここでいう常温固化油脂とは、常温(10〜40℃程度)で固体である油脂を示し、ショートニング、マーガリン、バター、硬化パーム油等が例示される。油脂の配合割合としては、固形状食品組成物中の20重量%以上とするのが好ましく、25重量%以上が更に好ましく、例えば30〜90重量%程度がより好適である。
【0015】
また、使用する粉末状原料は、食品に用いることができ且つ粉末状に加工できるものであれば特段限定されず、例えば、食塩、糖類(砂糖、グルコース、マルトース、トレハロース、乳糖、オリゴ糖、デキストリンなど)、澱粉類、穀類、調味料(アミノ酸、有機酸、核酸など)、蛋白加水分解物、多糖類(食物繊維など)、野菜粉末、野菜エキス、肉類粉末、肉エキス、魚介類粉末、魚介エキス、香辛料、油脂類、乳製品、酵母エキス、ビタミン類、ミネラル類(カルシウム、鉄など)、着香料、着色料、甘味料などが示される。特に、即溶性を高めることを考慮すれば、乳糖、麦芽糖、クリーミングパウダー、難消化性デキストリン、加工澱粉から選ばれる1以上を配合するのが効果的である。
【0016】
そして、これらのような粉末状原料を、加水せずに常温固化油脂中に分散させるが、この際、粉末状原料を粉砕等によりメジアン径(粉体を2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量となる粒子径)400μm以下、例えば300μm以下、更に260μm以下としておくのがより好ましい。これより大きなメジアン径の粉末状原料を用いると、固形状食品組成物の溶解性や成型性に悪い影響を与える可能性がある。
【0017】
なお、本発明においては、ごく少量の液体原料(香料、常温液状油脂など)も使用可能であるが、液体原料の添加・配合を必須とするものではない。また、小麦粉を使用することも可能であるが、固形ルウのように小麦粉を必須の原料とするものではなく、よって、固形ルウの製造でみられるような一定量の加水をしたペースト状の小麦粉と油脂を混合して加熱調理する工程も必須でない。
【0018】
さらに、本発明では、乾燥具材を粉末状原料とともに溶解した常温固化油脂中に混合分散させることができる。乾燥具材としては、野菜類、肉類、魚介類、きのこ類、果実類、海藻類などをフリーズドライ、熱風乾燥、減圧乾燥、マイクロ波乾燥、フライ、バキュームフライから選ばれる1以上の製法により得られたものが例示される。
【0019】
このように、本発明では粉末状原料を加水せずに油脂と混合して固形状食品組成物を製造するため、得られる固形状食品組成物の水分や水分活性が低いことが特徴である。例えば、得られる固形状食品組成物の水分活性(Aw)は0.3未満、例えば0.28以下程度であることが通常であるが、この範囲に限定はされない。
【0020】
また、本発明の固形状食品組成物の形状は、限定はされないが、ブロック状で、薄い板状のブロックとするのが好ましい。例えば、1人分で給湯量150〜200mlの場合、縦及び横の長さを15cm未満、好ましくは3〜10cm程度とし、高さは5cm以下、好ましくは3cm以下、例えば0.5〜2.5cm程度のブロックとすることが例示される。これ以外の人数分や給湯量についても、上記範囲を参考にして換算によりサイズを設計すればよい。
【0021】
このようにして得られた固形状食品組成物は、煮込み調理を行う食品で使用することも可能であるが、煮込み調理を必須とせず、90℃以上に加熱された溶媒により溶解させ喫食する固形状インスタントスープとしても使用することができることが大きな特徴である。例えば、90℃以上のお湯150〜200mlで300秒未満、特に固形状インスタントスープで通常求められる180秒以内、更に言えば120秒以内や100秒以内でも完全に溶解させることができる製品の製造も可能である。また、本発明は、このような即溶性の高い固形状食品組成物において油脂含量を高めることができるのが特徴であり、一般的な煮込み調理用食品や、健康志向という点で注目されている低脂肪食品とは解決課題及び奏される効果が大きく異なる。
【0022】
なお、本発明において「粉末状原料が常温固化油脂中に不溶状態で分散して存在する」とは、粉末状原料に加水せずに(水溶性粉末原料に水分を加えてペースト状とすることなく)常温固化油脂中に混合分散させた状態を意味し、水分を加えてペースト状とした原料を油脂中に混合して得られる状態は除外される。但し、少量の液体原料の使用を除外するものではない。
【0023】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内においてこれらの様々な変形が可能である。
【実施例1】
【0024】
固形状食品組成物の製法の違いによる溶解性の差異を比較確認するため、以下の試験を実施した。
【0025】
下記表1に記載の配合(ブロック重量30g)で、規定量の常温固化植物油脂(硬化パーム油)を溶かした状態でトレイ容器に充填した後に規定量の粉砕した粉末状原料を添加して冷却する製法(区分A)、規定量の粉砕した粉末状原料をトレイ容器に充填した後に規定量の溶かした植物油脂を添加して冷却する製法(区分B)、規定量の粉砕した粉末状原料を規定量の溶かした植物油脂中に不溶状態で分散させた後にトレイ容器に充填して冷却する製法(区分C:本発明)、の3種類の製法で固形状食品組成物(固形状スープ)を製造した。
【0026】
【表1】
【0027】
そして、得られた固形状スープについて溶解試験を実施した。具体的には、200mlのビーカーに各ブロックを入れ、熱湯を150ml注いで1分間あるいは2分間放置してから10秒攪拌後、及び、熱湯を150ml注いで10秒間静置後に1秒に1回転の速さでスプーンにより20秒間あるいは40秒間混ぜた後の状態を観察し、溶け残り重量も確認した。
【0028】
この結果を下記表2に示した。この結果から、本発明である区分Cが、他の区分と比較して全体的に溶け残りが極めて少ない傾向であった。また、区分A、Bはダマが残る傾向であったが、区分Cではダマは形成されず、粘性の高いペースト状になり、再溶解でも溶かすことが出来た。
【0029】
【表2】
【実施例2】
【0030】
粉末状原料に加水して製造することによる製品の溶解性への影響を確認するため、以下の試験を実施した。
【0031】
実施例1の表1に記載の配合(ブロック重量は40gに増量)で、加熱溶解した植物油脂に粉砕した粉末状原料を混合してトレイ充填し、冷却することでブロック化させたもの(区分I)、加熱溶解した植物油脂に粉砕した粉末状原料を混合し、更に少量の水を添加し、蒸発させた後にトレイ充填し、冷却することでブロック化させたもの(区分II)、粉砕した粉末状原料をお湯で溶解した後、加熱溶解した植物油脂と混合してトレイ充填し、冷却することでブロック化させたもの(区分III)、粉砕した粉末状原料を冷水で溶解した後、常温固化植物油脂と混合して加熱し、これをトレイ充填し、冷却することでブロック化させたもの(区分IV)、下記表3に記載の配合(ブロック重量40g)で、加熱溶解した植物油脂に粉砕した粉末状原料を混合し、更に少量の水を添加し、蒸発させた後にトレイ充填し、冷却することでブロック化させたもの(区分V)の5種類の固形状スープを製造した。これらを200mlのビーカーに入れ、熱湯を150ml注いで30秒間静置し、その後スプーンの上にブロックを乗せ、1秒間に1回程度湯中を上下させ、完全に溶解するまでの時間を測定した。
【0032】
【表3】
【0033】
この結果を下記表4に示した。まず、区分IIIと区分IVについては、正常なブロック成型ができず、且つ完全な溶解をさせることもできなかった。区分Vについては、ブロック成型は良好であるものの、完全溶解までにやや多くの時間を要した。区分IIについては、区分Vよりは短かったものの、一部ゲル化して完全溶解にやや時間を要し、ブロック成型も可であるもののやや不十分であった。これに対し、区分Iは非常に短い時間で完全溶解し、且つ、ブロック成型も非常に良好であった。
【0034】
【表4】
【実施例3】
【0035】
粉末状原料のメジアン径の違いによる溶解性の差異を比較確認するため、以下の試験を実施した。
【0036】
実施例1の表1に記載の配合(ブロック重量は40gに増量)で、流動層造粒機で粉末状原料を加工した造粒品と加熱溶解した植物油脂を混合してトレイ充填し、冷却することでブロック化させたもの(区分A)、流動層造粒機で粉末状原料を加工した造粒品の粗粉砕物と加熱溶解した植物油脂を混合してトレイ充填し、冷却することでブロック化させたもの(区分B)、粉末状原料を単純に混合した後、加熱溶解した植物油脂と混合してトレイ充填し、冷却することでブロック化させたもの(区分C)、粉末状原料を混合した後に粉砕機で微粉化し、これを加熱溶解した植物油脂と混合してトレイ充填し、冷却することでブロック化させたもの(区分D)の4種類の固形状スープを製造した。なお、各区分に用いた粉末状原料の加工方法及びメジアン径を下記表5に示した。これらを200mlのビーカーに入れ、熱湯を150ml注いで30秒間静置し、その後スプーンの上にブロックを乗せ、1秒間に1回程度湯中を上下させ、完全に溶解するまでの時間を測定した。
【0037】
【表5】
【0038】
この結果を下記表6に示す。まず、区分Aは、溶解時間は短かったものの、少しの衝撃で崩壊してしまうブロックであり、ブロックの成型性に難があることが明らかとなった。区分B〜Dは、この順で溶解時間は短縮され、区分Dが最も溶解性が良好であった。また、区分Bはブロックに空洞が発生して形状が安定せず、ブロックの成型性は可であるものの若干難があると思われた。したがって、粉末原料のメジアン径を400μm以下とすることが良く、溶解性やブロック成型性の点で260μm以下とすることが最も好適であることが明らかとなった。
【0039】
【表6】
【実施例4】
【0040】
ブロック成型性等について、粉末状原料の容積と油脂の容積の適正な比率を確認するため、以下の試験を実施した。
【0041】
実施例1の表1に記載の配合で、流動層造粒機で粉末状原料混合品(粉末原料プレミックス)を加工した造粒品と、その粗粉砕物のいずれかを用いて、加熱溶解した植物油脂に混合してトレイ充填し、冷却することでブロック化させた固形状スープを製造した(区分1〜17)。なお、各原料の比重、1g当たりの容積、メジアン径を測定し(表7)、製品容積が45cm
3となるように設計し、ブロックサイズも55mm×55mm×11mmとなるように製造した。これらの製品を200mlのビーカーに入れ、熱湯を150ml注いで30秒間静置し、その後スプーンの上にブロックを乗せ、1秒間に1回程度湯中を上下させ、完全に溶解するまでの時間を測定した。
【0042】
【表7】
【0043】
結果を下記表8に示した(ブロック成型の評価は表4及び表6と同様の基準)。この結果、粉末状原料の造粒品を用いた場合は全体容積に油脂原料が占める割合20%〜80%(重量割合33〜89%)でブロック成型可能であったが、30%〜80%(重量割合45〜89%)が溶解性も含めて非常に好適であった。また、粉末状原料の粉砕品を用いた場合は全体容積に油脂原料が占める割合10%〜80%(重量割合15〜86%)でブロック成型可能であったが、20%〜80%(重量割合28〜86%)が溶解性も含めて非常に好適であった。したがって、粉末状原料の粉砕品を用いるのが油脂との容積比を広い範囲で設計できるという点でより好適であることが明らかとなった。
【0044】
【表8】
【実施例5】
【0045】
原料の種類による溶解性への影響を比較確認するため、以下の試験を実施した。
【0046】
常温固化植物油脂を加温し、溶解したところに各粉末状原料(加工澱粉、デキストリン、じゃがいもパウダー、乳糖、冷水可溶性澱粉、麦芽糖、クリーミングパウダー)を混合してトレイ充填し、冷却することでブロック化させた固形食品(ブロック重量50g)を製造した(区分A〜G、下記表9参照)。これらを300mlのビーカーに入れ、熱湯を200ml注いで3分間静置し、その後1秒間に1回程度の速さで攪拌させ、10秒間攪拌した後の状態を観察した。
【0047】
結果を下記表9に示した。なお、溶解性評価は、非常に良好−◎、良好−○、可−△、不良−×の4段階で行った。この結果、乳糖、麦芽糖、クリーミングパウダーは非常に溶解性が優れていることが明らかとなり、加工澱粉も良好な溶解性であった。一方、じゃがいもパウダーと冷水可溶性澱粉は使用量が多いとやや溶け残る傾向にあるが使用量の調整により対応可能な状態であること、及び、デキストリンは使用量が多いと溶解性がかなり悪いことも示された。
【0048】
【表9】
【0049】
次に、スープの配合で、各種賦形剤(トレハロース、乳糖、難消化性デキストリン、デキストリン、酸化でん粉、サイクロデキストリン)の違いによる溶解性への影響を比較確認した。具体的には、下記表10に記載の各配合(ブロック重量40g)で、粉末状原料を混合した後に粉砕機で微粉化し、これを加熱溶解した植物油脂と混合してトレイ充填し、冷却することでブロック化させた7種類の固形状スープを製造した(区分1〜7)。これらを200mlのビーカーに入れ、熱湯を150ml注いで30秒間静置し、その後スプーンの上にブロックを乗せ、1秒間に1回程度湯中を上下させ、完全に溶解するまでの時間を測定した。その結果、表10に示す通り、乳糖を配合した区分3が最も溶解性が好適であり、酸化澱粉やサイクロデキストリンは、賦形剤無添加である区分1よりは短いものの、やや溶解時間が長くなる傾向であった(区分4〜7)。また、トレハロースも溶解時間が長くなることが明らかとなった(区分2)。
【0050】
【表10】
【0051】
さらに、加工澱粉や乳糖の配合量の溶解性への影響を比較確認した。具体的には、下記表11に記載の各配合(ブロック重量40g)で、粉末状原料を混合した後に粉砕機で微粉化し、これを加熱溶解した植物油脂と混合してトレイ充填し、冷却することでブロック化させた5種類の固形状スープを製造した(区分I〜V)。これらを200mlのビーカーに入れ、熱湯を150ml注いで30秒間静置し、その後スプーンの上にブロックを乗せ、1秒間に1回程度湯中を上下させ、完全に溶解するまでの時間を測定した。その結果、表11に示す通り、いずれの区分も溶解性は良好であった。
【0052】
【表11】
【実施例6】
【0053】
本発明に係る固形状食品組成物と一般的な固形ルウの加温耐性を比較確認するため、以下の試験を実施した。
【0054】
下記表12に記載の各配合(ブロック重量40g)で、粉末状原料を混合した後に粉砕機で微粉化し、これを加熱溶解した植物油脂と混合してトレイ充填し、冷却することでブロック化させた3種類の固形状インスタントスープを製造した(区分A〜C)。また、対照区分として、粉末状原料を最低限の水やでペースト状にしてから植物油脂と混合して、一般的な固形カレールウも製造した(区分D)。これらをアルミパウチに個包装し、35℃、45℃、60℃に設定した恒温槽で静置し、1〜5時間の間に1時間おきに外観を確認した。
【0055】
【表12】
【0056】
結果を下記表13に示した。なお、評価は○(変化なし)、△(油脂と粉の部分分離)、▲(油脂と粉の分離)、×(油脂と粉の完全分離)の4段階で行った。この結果、35℃及び45℃保管では各区分に差異は認められなかったが、60℃で一般的な固形カレールウよりも本発明の固形状インスタントスープのほうが高い耐熱性の傾向が認められた。
【0057】
【表13】
【0058】
さらに、市販固形ルウとの溶解性を比較確認した。具体的には、実施例1の区分Cと同様にして製造した本発明品(区分I:30gで規定湯量150ml)と、市販固形ルウ3種類(区分II:19.2gで規定湯量125ml、区分III:24.8gで規定湯量187ml、区分IV:23gで規定湯量112ml)について、200mlのビーカーに入れ、熱湯を注いで30秒間静置し、その後スプーンの上にブロックを乗せ、1秒間に1回程度湯中を上下させ、完全に溶解するまでの時間を測定した。なお、湯量は比較する市販固形ルウの規定量を使用し、本発明品の重量を湯量から換算して増減して比較した(区分IIとの比較では25g、区分IIIとの比較では37.4g、区分IVとの比較では22.4g)。
【0059】
結果を下記表14に示した。この結果、本発明品は、いずれの市販固形ルウと比較しても溶解性がより高いことが明らかとなった。
【0060】
【表14】
【実施例7】
【0061】
本発明に係る固形状食品組成物のブロックサイズによる溶解性の違いを比較確認するため、以下の試験を実施した。
【0062】
粉砕したインスタントスープの粉末状原料ミックスと、加熱溶解した常温固化植物油脂を油脂含量が33.3重量%となるように混合して各種サイズのトレイに充填し、冷却することでブロック化させたもの(区分A〜D、ブロック重量40g)、粉砕したインスタントスープの粉末状原料ミックスと、加熱溶解した常温固化植物油脂を油脂含量が50重量%となるように混合して各種サイズのトレイに充填し、冷却することでブロック化させたもの(区分E〜H、ブロック重量35g)、粉砕したインスタントスープの粉末状原料ミックスと、加熱溶解した常温固化植物油脂を油脂含量が66.7重量%となるように混合して各種サイズのトレイに充填し、冷却することでブロック化させたもの(区分I〜L、ブロック重量35g)、粉砕したインスタントスープの粉末状原料ミックスと、加熱溶解した常温固化植物油脂を油脂含量が25重量%となるように混合して各種サイズのトレイに充填し、冷却することでブロック化させたもの(区分M〜P、ブロック重量45g)、粉砕したインスタントスープの粉末状原料ミックスと、加熱溶解した常温固化植物油脂を油脂含量が33.3重量%となるように混合して各種サイズのトレイに充填し、冷却することでブロック化させたもの(区分Q〜S、ブロック重量は区分Qが30g、区分Rが40g、区分Sが50g)の19種類の固形状インスタントスープを製造した。各区分のブロックサイズは下記表15に示した(粉末状原料は実施例1の表1粉配合に示したものと同じ原料を使用しているが、各区分の詳細な配合は省略)。これらを200mlのビーカーに入れ、熱湯を150ml注いで30秒間静置し、その後スプーンの上にブロックを乗せ、1秒間に1回程度湯中を上下させ、完全に溶解するまでの時間を測定した。
【0063】
結果を下記表15に示した。この結果、ブロックサイズについて、ブロックの縦及び横が3.7〜7.5cm、高さが0.8〜2.4cmの範囲において概ね良好な溶解性であることが示された。
【0064】
【表15】
【実施例8】
【0065】
具材入り固形状インスタントスープの溶解性を確認するため、以下の試験を実施した。
【0066】
下記表16に記載の配合(ブロック重量30g)で、加熱溶解した植物油脂に粉砕した粉末状原料及び乾燥具材(FDコーン、FDクラム、乾燥パン)を混合して5.5cm×3.7cmのトレイに充填し、冷却することでブロック化させた12種類の具材入り固形状インスタントスープを製造した(区分1〜12)。これらを200mlのビーカーに入れ、熱湯を150ml注いで30秒間静置し、その後スプーンの上にブロックを乗せ、1秒間に1回程度湯中を上下させ、完全に溶解するまでの時間を測定した。
【0067】
【表16】
【0068】
結果を下記表17に示した。この結果、乾燥具材を含む固形状インスタントスープにおいても、概ね2分以内に溶解し、いずれも溶解性が高いことが明らかとなった。
【0069】
【表17】
【0070】
以上の試験結果から、粉末状原料を加水せずに溶解した常温固化油脂中混合分散させ、これを固化させて固形状食品組成物とすることで、90℃以上に加熱された溶媒により溶解させ喫食する固形状インスタントスープとしても使用可能な、即溶性及びブロック成型性の高い油脂高含有固形状食品組成物を得ることができることが明らかとなった。
【0071】
本発明を要約すれば、以下の通りである。
【0072】
本発明は、インスタントスープとしても適用可能な、油脂を高含有する固形状食品組成物、及び、その製造方法等を提供することを目的とする。
【0073】
そして、粉末状原料と、常温固化油脂とを含有してなり、該粉末状原料が該常温固化油脂中に不溶状態で分散して存在してなる固形状食品組成物を製造することで、90℃以上に加熱された溶媒で速やかに溶解し、インスタントスープとしても適用可能であり、且つ、煮込み食品にも使用できる油脂高含有固形状食品組成物を得ることができる。