特許第6551908号(P6551908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6551908
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】難燃性発泡スチレン系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/04 20060101AFI20190722BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   C08L25/04
   C08J9/04
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-518172(P2015-518172)
(86)(22)【出願日】2014年4月25日
(86)【国際出願番号】JP2014061703
(87)【国際公開番号】WO2014188848
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2016年12月26日
【審判番号】不服2018-8044(P2018-8044/J1)
【審判請求日】2018年6月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-106034(P2013-106034)
(32)【優先日】2013年5月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西浦 聖人
(72)【発明者】
【氏名】瀬森 久典
(72)【発明者】
【氏名】豊島 菜穂美
【合議体】
【審判長】 須藤 康洋
【審判官】 渕野 留香
【審判官】 大島 祥吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−131719(JP,A)
【文献】 特開2003−327736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J9/00-9/42
C08L25/04-25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)スチレン系樹脂、(B)含臭素有機化合物、(C)酸化亜鉛および(D)発泡剤を
含み、
前記(C)酸化亜鉛の添加量が、前記(A)スチレン系樹脂100重量部に対して2重量部未満であり、
前記(B)含臭素有機化合物が、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)を含む
ことを特徴とする難燃性発泡スチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)含臭素有機化合物が、重量比基準で、前記テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)を60重量%以上含有することを特徴とする請求項1に記載の難燃性発泡スチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の難燃性発泡スチレン系樹脂組成物を押出発泡して得られる発
泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱安定性良好な難燃性発泡スチレン系樹脂組成物及びその発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂発泡体は軽量であることから家電製品や建材などの断熱用途や盛土工法などの土木用途など、多様な分野で使用されている。
【0003】
スチレン系樹脂は炭素と水素のみから出来ており、一旦着火すれば黒煙を発して激しく燃える性質がある。そのため、用途によっては難燃剤を添加して難燃化する必要がある。このような難燃剤としては、含臭素化合物が広く用いられており、少ない添加量で高い難燃性を付与するには、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)のような全ての臭素原子が脂肪族炭素へ結合した難燃剤が有効であるが、これらの難燃剤は熱安定性が低く、樹脂の劣化、樹脂への着色、臭化水素ガスの発生に起因する装置腐食などの問題を引き起こす。またHBCDは難分解性で生態蓄積性が高いことから、HBCDの使用量削減や代替難燃剤の開発が求められている。
【0004】
HBCDと同添加量で同レベルの難燃性を付与できる化合物として、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)が提案されている(特許文献1)。しかし近年、環境意識の高まりから、使用済み、あるいは製品化時に切削により生じた端材のスチレン系樹脂発泡体を再び原料として使用することが求められている。このような再生スチレン系樹脂発泡体の使用においては、前回製造時に既に加熱溶融工程を経たスチレン系樹脂発泡体をさらに加熱溶融して用いることから、これまで以上の熱安定性が必要とされる。テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)では、十分な熱安定性であるとはいえなかった。
【0005】
熱安定性に優れる化合物として、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)やトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートなども知られているが、HBCDなどの難燃剤と比較して難燃化効果が低いことから添加量を大幅に増やす必要がある。そのため、スチレン系樹脂発泡体の物性が低下するだけでなく、スチレン系樹脂発泡体の大幅なコストアップとなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−139356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のとおり、比較的難燃効果の高いヘキサブロモシクロドテカンなどの脂環族含臭素有機化合物や、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)などの第3級炭素原子へ結合した臭素(これを「第3級臭素」という。)を有する含臭素有機化合物は熱安定性が低く、スチレン系樹脂発泡体に添加するとそのリサイクリングを妨げるという問題がある。そのため本発明が解決しようとする課題は、高い難燃性を付与することが可能であり、かつ熱安定性も優れる難燃性発泡スチレン系樹脂組成物およびその発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、脂環族含臭素有機化合物や第3級臭素を有する含臭素有機化合物に比較して難燃効果が低いが、その代わりに熱安定性が高い含臭素有機化合物でも、酸化亜鉛と組み合わせてスチレン系樹脂発泡体の難燃化に使用すると、優れた熱安定性に悪影響することなく、難燃効果を脂環族含臭素有機化合物や第3級臭素を有する含臭素有機化合物と少なくとも同等のレベルまで向上することができるという予想外の知見を基礎としている。そこで本発明は、(A)スチレン系樹脂、(B)含臭素有機化合物、(C)酸化亜鉛および(D)発泡剤を含み、前記(C)酸化亜鉛の添加量が、前記(A)スチレン系樹脂100重量部に対して、2重量部未満であり、前記(B)含臭素有機化合物が、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)を含むことを特徴とする難燃性発泡スチレン系樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、(C)酸化亜鉛を(B)含臭素有機化合物と併用することにより、優れた難燃性を付与することが可能であり、かつ熱安定性も優れる難燃性発泡スチレン系樹脂組成物及びその発泡体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の(A)スチレン系樹脂は、例えば、スチレンの単独重合体、スチレンと、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレン、p−(N,N−ジエチルアミノエチル)スチレン、p−(N,N−ジエチルアミノメチル)スチレンなどとの共重合物、さらにはその混合物であり、好ましくはスチレン単量体を50重量%以上含有するもの、典型的にはポリスチレンである。
【0011】
さらには、上記スチレン系樹脂にゴム状重合体を配合しても良い。ゴム状重合体としては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−イソブチレン−ブタジエン系共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、ブチルゴム、エチレン−α−オレフィン系共重合体(エチレン−プロピレンゴム)、エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)、シリコーンゴム、アクリル系ゴム、水添ジエン系ゴム(水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化ブタジエン系重合体など)などが挙げられる。これらのゴム状重合体は単独もしくは2種以上を混合して使用できる。その使用量は、単量体成分中に好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。
【0012】
本発明の(B)含臭素有機化合物は、例えば、2,3−ジブロモ−2−アルキルプロピル基を有する非脂環式含臭素有機化合物、臭素含有量50重量%以上であり分子中に第3級臭素を持たない非脂環式含臭素有機化合物、臭素含有量50重量%以上であり、分子中に2,3−ジブロモプロピル基を有する非脂環式含臭素有機化合物が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
2,3−ジブロモ−2−アルキルプロピル基を有する非脂環式含臭素有機化合物としては、ビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ-2−メチルプロピルエーテル)、ビスフェノールS−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、ビスフェノールF−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)などのビスフェノール化合物の2,3−ジブロモ−2−アルキルプロピルエーテル、ポリブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ-2−メチルプロピルエーテル)、ポリブロモビスフェノールS−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、ポリブロモビスフェノールF−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)などのポリブロモビスフェノール化合物の2,3−ジブロモ−2−アルキルプロピルエーテル、トリス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピル)イソシアヌレートなどの2,3−ジブロモ−2−アルキルプロピル基含有イソシアヌレートおよびトリス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピル)シアヌレートなどの2,3−ジブロモ−2−アルキルプロピル基含有シアヌレートが挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
臭素含有量50重量%以上であり、分子中に第3級臭素を持たない非脂環式含臭素有機化合物としては、臭素系難燃剤として広く知られている化合物が使用できる。例えば、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS−ビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールF−ビス(2−ブロモエチルエーテル)、ビストリブロモネオペンチルマレート、ビストリブロモネオペンチルフマレート、ビストリブロモネオペンチルアジペート、ビストリブロモネオペンチルフタレート、ビストリブロモネオペンチルテレフタレート、トリストリブロモネオペンチルピロメリテートなどの脂肪族臭素含有化合物、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、1,2−ビストリブロモフェノキシエタン、1,2−ビスペンタブロモフェノキシエタン、テトラブロモビスフェノールA、ポリブロモジフェニルエーテル、ポリブロモジフェニルエタン、トリスポリブロモフェノキシトリアジン、ポリブロモフェニルインダン、テトラブロモビスフェノールA−エポキシオリゴマー、テトラブロモビスフェノールA−エポキシオリゴマー末端トリブロモフェノール付加物、テトラブロモビスフェノールA−カーボネートオリゴマー、ポリ臭素化−ポリスチレン、ポリ−ポリブロモスチレン、ポリ臭素化ポリフェニレンオキサイド、ポリペンタブロモベンジルアクリレート、エチレンビステトラブロモフタルイミドなどの脂肪族臭素を含有しない芳香族臭素化合物が挙げられる。
【0015】
臭素含有量50重量%以上であり、分子中に2,3−ジブロモプロピル基を有する非脂環式含臭素有機化合物としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールF−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートおよびトリス(2,3−ジブロモプロピル)シアヌレート、ビス−2,3−ジブロモプロピルフタレート、ビス−2,3−ジブロモプロピルテレフタレート、トリス−2,3−ジブロモプロピルピロメリテートなどが挙げられる。
【0016】
これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、難燃性、熱安定性の観点から、臭素含有量50重量%以上であり、分子中に第3級臭素を持たない非脂環式含臭素有機化合物を含有することが好ましく、2,3−ジブロモプロピル基を有する非脂環式含臭素有機化合物を含有することがより好ましく、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−プロピルエーテル)を含有することが好ましい。
【0017】
(B)含臭素有機化合物として、臭素含有量50重量%以上であり、分子中に第3級臭素を持たない非脂環式含臭素有機化合物と他の含臭素有機化合物を併用する場合は、(B)含臭素有機化合物が、重量比基準で、臭素含有量が50重量%以上である、第3級炭素原子へ結合した臭素を持たない非脂環式含臭素有機化合物を60%以上含有することが好ましく、70%以上含有することがより好ましく、80%以上含有することが最も好ましい。60%未満であれば、スチレン系樹脂発泡体の耐熱性が悪くなり、スチレン系樹脂押出発泡体が着色する。
【0018】
(B)含臭素有機化合物の含有量はスチレン系樹脂100重量部あたり、1〜10重量部が好ましく、1〜6重量部であることがより好ましい。上記範囲であれば、難燃性、スチレン系樹脂発泡体の物性、スチレン系樹脂発泡体のコストがいずれも良好なものとなる。
【0019】
本発明の最大の特徴は、スチレン系樹脂押出発泡体を(B)含臭素有機化合物で難燃化するに当たり、(C)酸化亜鉛をスチレン系樹脂100重量部に対して2重量部未満、好ましくは1.5重量部未満添加することである。これにより、(B)含臭素有機化合物を含む樹脂組成物の熱安定性を維持しつつ、難燃性が高まることが見出された。これまで酸化亜鉛は赤外線反射能を有す熱伝導率調整剤として使用することが知られているが、(B)含臭素有機化合物を含む発泡スチレン系樹脂組成物の難燃性が向上することは知られていない。2重量部以上であると、顕著な難燃性向上効果が失われる。
【0020】
本発明の難燃性発泡スチレン樹脂組成剤は、押出発泡法によって発泡成形体に形成することができる。押出発泡法の場合は、(B)含臭素有機化合物および他の添加剤をスチレン系樹脂(A)と押出機内で溶融混合し、発泡剤(D)を圧入した後押出機口金から大気中へ押出すことによって発泡成形される。
【0021】
ここで、発泡剤(D)としては、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタン、モノクロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテルなどの揮発性有機発泡剤、水、窒素、炭酸ガスなどの無機発泡剤、アゾ化合物などの化学発泡剤などが挙げられる。これらは単独または2種以上を併用して用いることができる。発泡剤の配合量は必要な発泡体の性能や成形方法により変わってくるため限定することはないが、好ましくは、ポリスチレン系樹脂100重量部に対し0.01〜0.5モル、より好ましくは0.05〜0.3モルである。
【0022】
本発明の難燃性スチレン系樹脂発泡体組成物には、さらに(E)熱安定剤を配合することができる。熱安定剤を配合することにより、熱安定性をさらに向上させることができる。このような熱安定剤としては、例えば、ホスファイト化合物、チオエーテル化合物、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、有機スズ化合物、リン酸エステルおよびハイドロタルサイトなどが挙げられる。
【0023】
ホスファイト化合物としては、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビスステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチル−1−フェニルオキシ)(2−エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、テトラ(トリデシル)−4,4’−ブチリデン−ビス(2−t−ブチル−5−メチルフェニル)ジホスファイト、ヘキサトリデシル−1,1,3−トリス(3−t−ブチル−6−メチル−4−オキシフェニル)−3−メチルプロパントリホスファイト、モノ(ジノニルフェニル)モノ−p−ノニルフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、テトラアルキル(C=12〜16)−4,4’−イソプロピリデン−(ビスフェニル)ジホスファイト、亜リン酸モノ又はジフェニルモノ又はジアルキル(又はアルコキシアルキル,C=8〜13)、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリスデシルホスファイト、トリフェニルホスファイトなどが挙げられる。
【0024】
チオエーテル化合物としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリストリルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾールなどが挙げられる。
【0025】
ヒンダードフェノール化合物としては、例えば、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、グリセリントリス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネート、カルシウムジエチルビス[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネート、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス[(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノールなどが挙げられる。
【0026】
ヒンダードアミン化合物の例は、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリニジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−2−n−ブチルマロネート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどを含む。
【0027】
有機スズ化合物の例はジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズマレエートを含み、リン酸エステルの例はトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェートなどを含む。
【0028】
上記熱安定剤(E)を使用する場合の添加量はスチレン系樹脂(A)100重量部あたり0.01〜0.5重量部であることが好ましい。
【0029】
また、本発明の難燃性スチレン系樹脂発泡成形体を製造する際には、発泡剤(D)に加えて、さらに発泡核剤(F)を配合してすることもできる。このような発泡核剤としては、例えば、タルク、ベントナイト、カオリン、マイカ、シリカ、クレー、珪藻土などが挙げられる。発泡核剤を使用する場合に使用量は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対し0.01〜20重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましい。
【0030】
また、本発明の難燃性発泡スチレン系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、光安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定化剤、重金属不活性剤、耐衝撃改良剤、着色剤、滑剤、滴下防止剤、結晶核剤、帯電防止剤、相溶化剤などの公知の樹脂添加剤を配合することができる。
【実施例】
【0031】
以下に実施例および比較例について本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定するものではない。
【0032】
実施例および比較例に用いた原料は以下の通りである。
(A)スチレン系樹脂
GP-PS;PSJポリスチレン G9305(PSジャパン(株)製)
(B)含臭素有機化合物:
(B1)テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル);商品名ピロガードSR720N(第一工業製薬(株)製)
(B2)テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル);商品名ピロガードSR−130(第一工業製薬(株)製)
(B3)トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート;商品名ピロガードSR−750(第一工業製薬(株)製)
(B4)トリス(トリブロモフェキシ)トリアジン;商品名ピロガードSR245(第一工業製薬(株)製)
(B5)ヘキサブロモシクロドデカン;商品名ピロガードSR−103(第一工業製薬(株)製)
難燃助剤(C)酸化亜鉛;商品名酸化亜鉛2種(堺化学工業(株)製)
(C1)(リン酸エステル)トリフェニルホスフェート;商品名TPP(大八化学工業(株)製)
(C2)MgZnAl(OH)12CO・mHO;商品名ZHT−4A(協和化学工業(株)製)
(C3)合成ゼオライト;商品名ゼオラムA−3(東ソー(株)製)
(C4)合成ハイドロタルサイトMg4.3Al(OH)12.6CO・mHO;商品名DHT−4A(協和化学工業(株)製)
(C5)ステアリン酸亜鉛;1.5μmGR(和光純薬工業(株)製)
(C6)硼酸亜鉛;商品名ファイヤーブレークZB(RIO TINTO製)
(C7)三酸化錫亜鉛;商品名FlamtardS(williamblythe製)
(C8)炭酸亜鉛;透明性亜鉛白MH(堺化学工業(株)製)
(C9)2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン;ノフマーBC−90(日油(株)製)
(C10)三酸化アンチモン;商品名ピロガードAN−800(T)(第一工業製薬(株)製)
(D)発泡剤
(D−1)イソブタン
(D−2)ジメチルエーテル
(E)熱安定剤
(E−1)ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェート;商品名アデカスタブPEP−36(ADEKA(株)製)
(F1)発泡核剤
タルクMS(日本タルク工業(株)製)
【0033】
<試験片作成方法>
(押出発泡成形体)
口径65mmから口径90mmに直列連結した二段押出機の口径65mmの押出機に、発泡剤を除く表1および表2に記載の原料を投入し、200℃に加熱して溶融、可塑化、混練することによりスチレン系樹脂組成物とした。続いて、65mm押出機先端(口径90mmの押出機の口金と反対側)に別ラインで所定量の発泡剤を圧入し、口径90mmの押出機で樹脂温度を120℃に冷却して、口径90mmの押出機の先端に設けた厚さ方向2.5mm、幅方向45mmの長方形断面のダイリップより大気中へ押し出すことにより、直方体状のスチレン系樹脂の押出発泡成形体を得た。
【0034】
なお、発泡成形体の評価は下記の方法により行った。
<難燃性>
JIS K−7201に従って酸素指数を測定した。
○:酸素指数が26以上
×:酸素指数が26未満
【0035】
<分子量低下率>
発泡成形前のスチレン系樹脂と難燃性スチレン系樹脂発泡成形体の分子量をGPC分析にて測定し、ポリスチレン系樹脂の成形前後の重量平均分子量(Mw)の低下率(%)を計算した。
【0036】
<耐熱性>
試験中の押出発泡成形体をカッターでスライスしてボードとし、2軸ロールで圧縮した後粉砕機で粗砕した。粗砕物をラボプラストミルに投入し、200℃で溶融混練後すぐ取り出して冷却プレスにて3.2mm厚の板状に成形した。得られた板状成形品を220℃の熱プレスにて40分加熱後、冷却プレスにて冷却し、耐熱試験サンプルとした。日本電色工業(株)製の分光色彩計SD6000を使用し、標準白板を基準とした耐熱試験サンプルのΔEを求めた。ΔEが小さいほど耐熱性が高いことを示す。
【0037】
実施例および比較例の樹脂組成物の配合と試験結果を表1および表2に示す。表中の成分の数値は重量部である。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
表1および表2から明らかなように、実施例1〜11の押出発泡体は、難燃性、分子量低下率および耐熱性のいずれの項目でも満足であるが、比較例1〜10の押出発泡体は難燃性について満足な性能を得られなかった。比較例11の押出発泡体は難燃性は満足するものの、分子量低下率および耐熱性において劣り、リサイクリングに適しないものであった。