(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記杭側金物の水平プレートの形状が、半円筒部の筒芯側が頂点となり半円筒内面の左右両側に向かって延びる2つ線分で囲まれる略扇形状をなしている、請求項1記載の杭基礎構造。
前記杭側金物の各半割部材のフランジ部同士が、各フランジ部の外側面にそれぞれ配置された板厚がフランジ部板厚の1.5倍以上厚く、縦横寸法がフランジ部の縦寸法の50%以上かつ横寸法の70%以上である矩形平ワッシャを介在させてボルトで締め付けられている、請求項2記載の杭基礎構造。
前記杭側金物の各半割部材における両側のフランジ部の外面の上下位置にそれぞれ水平な補強リブが、フランジ部の外面及び半円筒部の端部近傍の外面に溶接固定される態様で固定されている、請求項2記載の杭基礎構造。
前記土台側金物の土台に対する位置合わせ手段として、板状本体の上面に、土台の下面側に形成したスリットに挿入されるリブを鉛直に固定するとともに、土台との位置合わせのためのドリフトピン孔を設けた、請求項1〜4のいずれか1項に記載の杭基礎構造。
前記土台側金物に、柱に取り付けたホールダウン金物のアンカーボルトの下端近傍部を通すアンカーボルト挿通用のY軸方向長孔を設けるとともに、前記土台側金物の土台に対する位置合わせ手段として、その板状本体の上面に、土台の下面側に形成した位置合わせ用の孔に挿入される丸鋼を鉛直に固定した、請求項1〜4のいずれか1項に記載の杭基礎構造。
前記土台側金物の板状本体の上面に、中央部を挟むX軸方向の両側、及びY軸方向の両側にリブを固定し、前記リブに土台を直接載せるための板状カバーを被せた、請求項6記載の杭基礎構造。
前記土台側金物の高さ位置を調整する高さ位置調整手段が、前記位置調整金物の板状本体と土台側金物の板状本体との間に所望厚み寸法のスペーサを介在させることによる高さ位置調整手段である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の杭基礎構造。
前記土台側金物の高さ位置を調整する高さ位置調整手段が、前記杭側金物の杭頭部への取付高さ位置を調整する高さ位置調整手段である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の杭基礎構造。
前記杭側金物の杭頭部への取付高さ位置を規定するための補助ベルトをその上端縁が、取り付けようとする杭側金物の下端縁に位置するように鋼管外周面に巻き付け固定した、請求項9記載の杭基礎構造。
【背景技術】
【0002】
建築構造物その他の構造物の基礎として、従来より、
図25Aに示すように、鋼管製の杭3を打ちその上に布基礎またはベタ基礎のようなコンクリート基礎51を施工する杭基礎構造が広く採用されている。そして、コンクリート基礎51に土台(土台梁)4を設置する。
しかし、そのコンクリート基礎51は、型枠設置及び除去、コンクリートの打設及び養生が必要で、煩雑で施工コストが高くなるとともに工期が長くなる。
また、その精度に関しても作業者の技量に左右される。例えば基礎上端の水平性(レベル)が確保されないと、上部構造物が傾いてしまう問題がある。
【0003】
このようなことから、
図25Bに示すように鋼管製の杭3と上部構造物の土台4とを複数の金物からなる接合金物62を介して直接接合することが行われている。
しかし、一般的に杭の施工は、寸分の狂いもなく設計上の正確な位置に施工することは難しく、
図26A及び
図26Bに示すように、水平方向の施工誤差(
図26A)、及び高さ方向の施工誤差(
図26B)が例えば数十mm程度発生する場合が多々ある。
したがって、コンクリート基礎を省き、接合金物を介して杭と上部構造物の土台とを接合する杭基礎構造を実現するためには、この施工誤差を吸収できる機構を設ける必要がある。
【0004】
特許文献1は、特許文献1中の
図1及び符号を参照して説明すると、鋼管杭2を把持する把持金物32と、把持金物32に昇降自在に設置された鉛直ネジ30と、鉛直ネジ30に支持されている環状の底板4と、底板4に載置され、水平ネジ50が設置された鞘管51と、鞘管51に固定された天板52と、天板51に設置された上部構造物71と、鞘管51と鋼管杭2との間に充填されたコンクリート6とを有する構造である。
そして、鉛直ネジ30によって高さ位置を調整し、水平ネジ50によって水平方向の位置を調整する。
【0005】
特許文献2は、特許文献2中の
図1、2、3、4及び符号を参照して説明すると、鋼管杭3と架台(構造物)との接合金物であり、鋼管杭3の杭頭面6の裏面にボルト挿通孔6aに連通するナット7を固定し、かつ、架台を支持する受け部10に固定プレート10aを設け、鋼管杭3と受け部10との間に角筒状の連結ブロック4を設け、かつ、前記連結ブロック4の下面プレート4aの中央に第一長孔12を形成し、上面プレート4bの四隅に第一長孔12の長手方向に直交する方向に延在する第二長孔16を形成し、そして、前記杭頭面6のボルト挿通孔6aと下面プレート4aの第一長孔12、受け部10の固定プレート10aに設けたボルト挿通孔18と上面プレート4bの第二長孔16の位置ズレをそれぞれ調整し、ボルト13とナットで固定するというものである。
そして、連結ブロック4の下面プレート4aに設けた第一長孔12に締結ボルト13を通しナットを螺合させ締め付け、上面プレート4bに設けた第二長孔16に他の締結ボルト13を通しナットを螺合させ締め付けることで、連結ブロック4を介して杭3と架台(構造物)とを接合するが、鋼製の杭の頭部と構造物とが相対的に位置ズレしていた場合は、下面プレート4aの第一長孔12と上面プレート4bの第二長孔16によって位置調整を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の接合金物は、大型の上部構造物を想定していると思われるが、複雑であり、例えば住宅程度の構造物の基礎構造に採用するには不向きである。
【0008】
特許文献2の接合金物は、鋼管杭3と架台とを接合する連結ブロック4が角筒状であり、ボルト連結する操作が容易とは言い難い。
【0009】
本発明は上記従来の欠点を解消するためになされたもので、上部構造が例えば住宅程度の構造物以下の杭基礎構造として好適であり、施工が簡単で施工コストの低減及び工期の短縮を図ることができるとともに杭の施工誤差を吸収するための位置調整操作が容易な杭基礎構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の一態様は、鋼管製の杭とその上部構造物の木製の土台とを複数の金物からなる接合金物を介して接合してなる杭基礎構造であって、
上記接合金物は、杭の頭部と接合する杭側金物と、土台と直接接合する土台側金物と、上記杭側金物と土台側金物との間に介在して上記杭側金物と土台側金物とを、互いに直交するX軸方向及びY軸方向の水平2方向に位置調整可能に接合するための位置調整金物とを備え、かつ、上記土台側金物の高さ位置を調整する高さ位置調整手段を備え、
上記杭側金物は、半円筒部の両側にフランジ部を持ちそれぞれの半円筒部内面側の上部に水平プレートを固定した一対の半割部材と、上記各水平プレートに鉛直に固定された対位置調整金物接合用の第1接合用ボルトとを備え、上記一対の半割部材で杭頭部を両側から挟み、上記フランジ部同士をボルトで締め付けて杭頭部に接合される構成であり、
上記位置調整金物は、その板状本体に、上記杭側金物の2つの第1接合用ボルトがそれぞれ挿入されるY軸方向に長い2つの第1長孔を有し、かつ、Y軸方向に間隔をあけて鉛直に固定された対土台側金物接合用の2つの第2接合用ボルトを有する構成であり、
上記土台側金物は、その板状本体に、上記位置調整金物の上記2つの第2接合用ボルトがそれぞれ挿入されるX軸方向に長い2つの第2長孔を有し、かつ、土台に対する位置合わせ手段を有する構成である、杭基礎構造である。
【0011】
上記杭基礎構造において、上記杭側金物の水平プレートの形状が、半円筒部の筒芯側が頂点となり半円筒内面の左右両側に向かって延びる2つ線分で囲まれる略扇形状をなしていてもよい。
【0012】
上記杭基礎構造において、上記杭側金物の各半割部材のフランジ部同士が、各フランジ部の外側面にそれぞれ配置された板厚がフランジ部板厚の1.5倍以上厚く、縦横寸法がフランジ部の縦寸法の50%以上かつ横寸法の70%以上である矩形平ワッシャを介在させてボルトで締め付けられていてもよい。
【0013】
上記杭基礎構造において、上記杭側金物の各半割部材における両側のフランジ部の外面の上下位置にそれぞれ水平な補強リブが、フランジ部の外面及び半円筒部の端部近傍の外面に溶接固定される態様で固定されていてもよい。
【0014】
上記杭基礎構造において、上記土台側金物の土台に対する位置合わせ手段として、板状本体の上面に、土台の下面側に形成したスリットに挿入されるリブを鉛直に固定するとともに、土台との位置合わせのためのドリフトピン孔を設けてもよい。
【0015】
上記杭基礎構造において、上記土台側金物に、柱に取り付けたホールダウン金物のアンカーボルトの下端近傍部を通すアンカーボルト挿通用のY軸方向長孔を設けるとともに、上記土台側金物の土台に対する位置合わせ手段として、その板状本体の上面に、土台の下面側に形成した位置合わせ用の孔に挿入される丸鋼を鉛直に固定してもよい。
【0016】
上記杭基礎構造において、上記土台側金物の板状本体の上面に、中央部を挟むX軸方向の両側、及びY軸方向の両側にリブを固定し、上記リブに土台を直接載せるための板状カバーを被せてもよい。
【0017】
上記杭基礎構造において、上記土台側金物の高さ位置を調整する高さ位置調整手段が、上記位置調整金物の板状本体と土台側金物の板状本体との間に所望厚み寸法のスペーサを介在させることによる高さ位置調整手段であってもよい。
【0018】
上記杭基礎構造において、上記土台側金物の高さ位置を調整する高さ位置調整手段が、上記杭側金物の杭頭部への取付高さ位置を調整する高さ位置調整手段であってもよい。
【0019】
上記杭基礎構造において、上記杭側金物の杭頭部への取付高さ位置を規定するための補助ベルトをその上端縁が、取り付けようとする杭側金物の下端縁に位置するように鋼管外周面に巻き付け固定してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、杭頭部に設置した杭側金物と土台側金物と位置調整金物とからなる接合金物を介して杭の頭部と土台とを接合するものであり、コンクリート基礎の施工を不要にするので、工期を大幅に短縮できるとともに施工コストを抑えることができる。
【0021】
土台側金物の水平方向の位置調整は、第1長孔を持つ位置調整金物の杭側金物に対するY軸方向位置調整、及び第2長孔を持つ土台側金物の位置調整金物に対するX軸方向位置調整により容易に行うことができ、さらに、土台側金物の高さ位置調整手段を有するので、杭施工の施工誤差すなわち杭頭部位置の水平方向及び高さ方向の施工誤差を、接合金物の調整によって容易に吸収することができ、作業者の技量による杭施工誤差が問題となることは少ない。
また、接合金物を取り付ける接合金物取付作業は、杭側金物を杭頭部に取り付け、その上に位置調整金物を取り付け、その上に土台側金物を取り付ける作業が、いずれもボルト・ナット締め操作という簡単な作業によって行うことができ、施工性が良好である。
また、杭側金物は、上端に第1接合用ボルトを固定した水平プレートを持つ一対の半割部材を杭頭部に両側から挟み込みボルト・ナット締めして杭頭部に固定するという簡単な構造であり、この簡単な構造によって第1長孔を持つ位置調整金物の水平なY軸方向の位置調整手段が実現されている。
【0022】
請求項2の杭側金物16によれば、水平プレート16cが扇形をなしており、半円筒部6aの両側のフランジ部6bの近傍部分との接合部分が存在しないので、半月形の水平プレート6cの場合と異なり、水平プレート16cが半円筒部6aの両端近傍(左右のフランジ部6bの近傍)を拘束することはない。したがって、対向するフランジ部6b同士をボルト12とナット13で締め付けたとき、半円筒部6aの左右の端部近傍が柔軟に撓むことができ、半円筒部6aの全体を杭外面に強く密着させて大きな摩擦力を生じさせることができ、十分高い接合力を確保できる。
【0023】
請求項3の杭側金物16’によれば、厚板で縦横寸法の大きな矩形平ワッシャ17を介在させてボルト12で締め付けることで、大きなボルト張力をフランジ部6bを介して半円筒部6aに伝達することができる。これにより、半円筒部6aと杭外面との密着力をさらに強めて、半円筒部6aと杭外面との摩擦力を増大させ、接合力を増大させることができる。
【0024】
請求項4の杭側金物16”によれば、フランジ部6bの上下位置に、単にフランジ部6bの外面に溶接固定するのではなく、半円筒部6aの端部近傍の外面にも溶接固定しているので、実質的にフランジ部6bの剛性が顕著に高くなり、ボルト12を強力に締め付けた場合でも、引抜き力によってフランジ部6bが傾くことなく、大きなボルト張力をフランジ部6bを介して半円筒部6aに伝達することができる。これにより、半円筒部6aと杭外面との密着力をさらに強めて、半円筒部6aと杭外面との摩擦力を増大させ、接合力を増大させることができる。
【0025】
接合金物の高さ位置調整は、請求項8のように位置調整金物と土台側金物との間にスペーサを介在させる手段、又は、請求項9のように杭側金物の杭頭部への取付高さ位置を調整する高さ位置調整手段を採用することができるが、いずれも煩雑にならない高さ位置調整手段を実現している。
請求項9のように杭側金物の杭頭部への取付高さ位置を調整することによる高さ位置調整手段を採用する場合、請求項10のように、杭側金物の杭頭部への取付高さ位置を規定するための補助ベルトを杭側金物の下端縁に位置するように鋼管外周面に巻き付け固定すると、杭側金物を杭頭部の所定の高さ位置に正確にかつ容易に取り付けることができる。
【0026】
杭と土台(土台梁)とを接合するのみである梁接合タイプの場合、請求項5のように、土台側金物の板状本体の上面に鉛直なリブを固定するとよい。このリブを土台の下面側に形成したスリットに挿入することで、かつ、ドリフトピンを用いることで、土台との位置合わせが可能になる。
【0027】
杭と柱及び土台(土台梁)とを接合する柱梁接合タイプの場合、請求項6のように、土台側金物の板状本体の上面に丸鋼を鉛直に固定するとよい。この丸鋼を土台の下面に設けた位置合わせ用孔に挿入することで、土台側金物と土台との位置合わせが可能であるが、この構成は、柱に取り付けたホールダウン金物により柱と土台とを接合する場合に好適である。
すなわち、ホールダウン金物のアンカーボルトを土台に設けたアンカー挿入孔に挿入することで、柱と土台と接合することができるので、杭と柱及び土台(土台梁)とを一体に接合することができる。
上記の通り、本発明の杭基礎構造によれば、梁接合タイプの場合と柱梁接合タイプの場合とで、土台側金物を取り換えるだけで対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例(杭と土台(土台梁)とを接合するのみである梁接合タイプの場合)の杭基礎構造を、その接合金物に土台を接合する前の状態で示した斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のX軸方向と反対側(手前側)から見た側面図ある。
【
図6】
図6は、
図2における接合金物の上に木製の土台(土台梁)を設置した状態を示した図であるが、土台の部分のみ断面で示している。
【
図7】
図7は、
図3における接合金物の上に木製の土台(土台梁)を設置した状態を示した図(=
図6の左側面図)であるが、土台の部分のみ断面で示している。
【
図8A】
図8Aは、杭側金物の杭頭部への取付高さ位置を規定するための補助ベルトの使用態様を説明する平面図である。
【
図8B】
図8Bは、杭側金物の杭頭部への取付高さ位置を規定するための補助ベルトの使用態様を説明する側面図である。
【
図9】
図9は、本発明の他の実施例(杭と柱及び土台(土台梁)とを接合する柱梁接合タイプの場合)の杭基礎構造を、その接合金物に土台及び柱を接合する前の状態で示した斜視図である。
【
図14】
図14は、
図13Aにおける杭側金物及び位置調整金物を除いて土台側金物のみを示した図である(土台と柱を2点鎖線で示している)。
【
図15】
図15は、
図10における接合金物の上に土台及び柱を設置した状態を示した図である。
【
図16】
図16は、
図11における接合金物の上に土台及び柱を設置した状態を示した図である。
【
図17A】
図17Aは、
図9〜
図16に示した接合金物31における土台側金物37の他の実施例を示すもので、
図12における位置調整金物と土台側金物7の部分に対応する図である。
【
図18】
図18は、上述した各実施例における杭側金物の他の実施例の杭側金物16を説明する図であり、
図4において位置調整金物8と土台側金物7の部分を除いて示した斜視図に相当する図である。
【
図19A】
図19Aは、
図18の杭側金物16が杭頭部にボルトで接合される直前の状態を示した斜視図(但し、第1接合用ボルト6eは図示略)である。
【
図19B】
図19Bは、杭側金物16を杭頭部にボルトでした状態を示した平面図である。
【
図25A】
図25A及び
図25Bは、鋼管杭上に施工したコンクリート基礎に上部構造物の土台を設置する杭基礎構造(
図25A)と、鋼管杭と上部構造物の土台とを複数の金物からなる接合金物を介して直接接合する杭基礎構造(
図25B)とを対比して説明する図である。
【
図25B】
図25A及び
図25Bは、鋼管杭上に施工したコンクリート基礎に上部構造物の土台を設置する杭基礎構造(
図25A)と、鋼管杭と上部構造物の土台とを複数の金物からなる接合金物を介して直接接合する杭基礎構造(
図25B)とを対比して説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の杭基礎構造を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0030】
本発明の杭基礎構造は、杭と土台(土台梁)とを接合するのみである梁接合タイプの場合、及び杭と柱及び土台(土台梁)とを接合する柱梁接合タイプの場合のいずれにも適用できる。
図1〜
図8Bに杭と土台(土台梁)とを接合するのみである前記梁接合タイプの場合の本発明の一実施例の杭基礎構造1を示す。
図1は杭基礎構造1における接合金物2に土台を接合する前の状態で示した斜視図、
図2は
図1の杭基礎構造のX軸方向と反対側(手前側)から見た側面図、
図3は
図1の杭基礎構造のY軸方向と反対側(手前側)から見た側面図、
図4は
図1の分解斜視図である。
これらの図に示すように、この杭基礎構造1は、鋼管製の杭3とその上部構造物の木製の後述する土台4とを前記接合金物2を介して接合してなる杭基礎構造である。
前記接合金物2は、杭3の頭部3aと接合する杭側金物6と、土台4と接合する土台側金物7と、前記杭側金物6と土台側金物7との間に介在して前記杭側金物6と土台側金物7とを、互いに直交するX軸方向及びY軸方向の水平2方向に位置調整可能に接合するための位置調整金物8を備え、かつ、前記土台側金物の高さ位置を調整するため高さ位置調整手段を備えている。この実施例での高さ位置調整手段は後述するスペーサ20である。
【0031】
杭側金物6と位置調整金物8との結合関係、位置調整金物8と土台側金物7との結合関係を、
図5A、
図5B、
図5Cに補足して示す。
図5Aは
図2の平面図(=
図1の平面図)、
図5Bは
図5Aにおける土台側金物7を外して見た平面図、
図5Cは
図5Bにおける位置調整金物8を外して見た平面図である。
【0032】
前記杭側金物6は、半円筒部6aの両側にフランジ部6bを持ち、それぞれの半円筒部内面側の上部に水平プレート6cを固定した一対の可撓性金属板からなるバンド状の半割部材6dと、前記各水平プレート6cに鉛直に固定された対位置調整金物接合用(位置調整金物と接合するための)の第1接合用ボルト6eとを備えている。この杭側金物6における水平プレート6cを除いた部分は、電柱用バンド等と称されるものの中で、両側にフランジを持つ一対の半割部材をボルトで結合するタイプのものと概ね同様である。
第1接合用ボルト6eは、水平プレート6cにあけた孔にプレート下面側から通し、下面側のボルト頭を水平プレート6cに溶接固定している(スポット溶接による仮付け固定程度でよい)。
そして、前記一対の半割部材6dで杭頭部3aを両側から挟み、前記フランジ部6b同士を、そのボルト挿通孔6fに通したボルト12及びこれに螺合させたナット13で締め付けて杭頭部3aに接合する。
【0033】
前記位置調整金物8は、矩形の板状本体8aに、前記杭側金物6の2つの第1接合用ボルト6eがそれぞれ挿入されるY軸方向に長い2つの第1長孔8bを有し、かつ、Y軸方向に間隔をあけて鉛直に固定された対土台側金物接合用(土台側金物と接合するための)の2つの第2接合用ボルト8cを有する構成である。前記第1接合用ボルト6eに螺合させるナットを6e’で示す。
前記第2接合用ボルト8cは、板状本体8aにあけた孔にそのボルト軸部を挿入し板状本体8aの下面側にあるボルト頭8dを、当該ボルト8cが抜け落ちないように溶接固定している(スポット溶接による仮付け固定程度でよい)。
なお、図示例では板状本体8aの下面に、前記ボルト頭8dを交わすスペースを設けるための板状脚8eを設けている。
【0034】
前記土台側金物7は、矩形の板状本体7aに、前記位置調整金物8の前記2つの第2接合用ボルト8cがそれぞれ挿入されるX軸方向に長い2つの第2長孔7bを有し、かつ、その上面に土台に対する位置合わせ手段であるリブ7cを有する構成である。リブ(位置合わせ手段)7cは、土台4と位置合わせするためのドリフトピン挿通孔7dを有し、板状本体7aに鉛直に固定されている。前記第2接合用ボルト8cに螺合させるナットを8c’で示す。
【0035】
図2、
図3において、符号20は、土台側金物7の高さ位置調整手段として、土台側金物7の板状本体7aと位置調整金物8の板状本体8aとの間にスペーサを介在させる場合のそのスペーサである。
【0036】
上記の杭基礎構造1を施工する施工手順について説明する。
この実施例は、例えば住宅等の構造物を構築する施工において、既に打設された杭とその上に設置される上部構造物の木製の土台とを接合する場合を想定しており、構造物構築に必要な杭3がすべて打設された後に接合金物2を杭頭部3aに取り付ける。
まず、杭3の頭部3aに杭側金物6を取り付ける。この場合、可撓性を有する2つのバンド状の半割部材6dで杭頭部3aを両側から挟み、対向するフランジ部6b同士をボルト12とナット13で締め付けることで、杭側金物6を杭頭部3aに固定する。
【0037】
この場合、前記スペーサ20を土台側金物7の高さ位置調整手段として用いる場合には、杭側金物6を、その水平プレート6cを杭3の上端面に直接載せた状態で杭頭部3aに固定する。
【0038】
次いで、前記杭側金物6の上に位置調整金物8を取り付ける。この場合、位置調整金物8を、その第1長孔8bに杭側金物6の第1接合用ボルト6eが挿入されるようにして杭側金物6上に載せ、ナット6e’を第1接合用ボルト6eに螺合させる(この段階ではまだナット6e’を本締めしない)。
次いで、土台側金物7を、その第2長孔7bに位置調整金物8の第2接合用ボルト8cが挿入されるようにして位置調整金物8上に載せ、ナット8c’を第2接合用ボルト8cに螺合させる(この段階ではまだナット8c’を本締めしない)。
この段階では、杭側金物6上に位置調整金物8と土台側金物7とを組み立てた状態である。
【0039】
杭側金物6上に位置調整金物8と土台側金物7とを組み立てる上記の作業が終了した後、土台側金物7の水平方向(X軸方向及びY軸方向)、及び高さ方向の位置調整をする。
【0040】
Y軸方向の位置調整は、位置調整金物8を杭側金物6に対してY軸方向に移動調整する。この場合、杭側金物6の第1接合用ボルト6eが挿入されている位置調整金物8の第1長孔8bがY軸方向の長孔であるから、位置調整金物8をY軸方向に移動調整できる。
X軸方向の位置調整は、土台側金物7を位置調整金物8に対してX軸方向に移動調整する。この場合、位置調整金物8の第2接合用ボルト8cが挿入されている土台側金物7の第2長孔7bがX軸方向の長孔であるから、土台側金物7をX軸方向に移動調整できる。
【0041】
高さ位置調整は、
図2、
図3、
図5Bに一点鎖線で示したように、位置調整金物8の板状本体8aと土台側金物7の板状本体7aとの間に所定厚み寸法のスペーサ20を挿入する(介在させる)。この場合、種々の厚みのスペーサを用意して、それらを適宜選択して所定厚み寸法とすることができる。
図示のスペーサ20は
図5Bに示すように、平面視でコ字形をなしているが、位置調整金物8の板状本体8aと土台側金物7の板状本体7aとの間に存在するボルトやナットと干渉しない形状にするとよい。また、平面視でコ字形に限らず、ボルトやナットと干渉しないように横に並ぶ複数の部材等、位置調整金物8の板状本体8aと土台側金物7の板状本体7aとが水平の状態を維持したまま、高さを調節できる部材が望ましい。
【0042】
なお、土台側金物7の高さ位置調整手段として、杭側金物6の杭頭部3aへの取付高さ位置を調整する高さ位置調整手段を採用する場合には、例えば
図8A及び
図8Bに示すような補助ベルト21を用いると好適である。図示例の補助ベルト21は、一端側のバックル21aに他端を通し、他端側を引き絞って締め付け固定するものである。
この場合、補助ベルト21を、その上端縁21bが、取り付けようとする杭側金物6の下端縁6gに位置するようにして、杭3の外周に巻き付け固定した後、杭側金物6を、その下端縁6gが補助ベルト21の上端縁21bに当たるように位置させた上で、杭頭部3aに固定する。
この補助ベルト21としては、いわゆる電柱バンドと称されているものを用いることができるが、必ずしも金属バンドでなくてもよいし、また、可撓性を持つものでなくてもよい。杭側金物6の下端縁6gの位置決めができるものであればよい。
【0043】
上記のように接合金物2を各杭3の頭部3aに正しく位置調整して取り付けた後、
図6、
図7に示すように、上部構造物の土台4を接合金物2の上に設置する。
この実施例では、土台4の下面に設けた溝4aに土台側金物7のリブ7cが入るように、土台4を土台側金物7上に載せる。そして、土台4の長手方向の位置合わせとして、土台4に設けた横向きのドリフトピン嵌合孔4bの開口端からドリフトピン22を差し込み、土台側金物7のドリフトピン挿通孔7dを貫通させる。ドリフトピン嵌合孔4bは貫通ではなく片側のみに開口している。
この場合、接合金物2(土台側金物7)の水平方向及び鉛直方向の位置調整が正しくされているので、ドリフトピン22は、正しく位置合わせされたドリフトピン嵌合孔4bとドリフトピン挿通孔7dとに差し込まれる。
【0044】
この杭基礎構造1によれば、上述の通り、コンクリート基礎の施工を不要にするので、工期を大幅に短縮できるとともに施工コストを抑えることができる。
【0045】
また、接合金物2は、位置調整金物8を杭側金物6に対してY軸方向に移動調整する操作と、土台側金物7を位置調整金物8に対してX軸方向に移動調整する操作で水平方向の位置調整を行うことができ、また、スペーサ20を位置調整金物8と土台側金物7との間に介在させる手段、又は杭側金物6自体の取り付け位置調整によって高さ位置調整を行うことができるので、杭施工の施工誤差を、容易に吸収することができ、作業者の技量による杭施工誤差が問題となることは少ない。
また、位置調整操作は、いずれもボルト・ナット締め操作という簡単な作業によって行うことができ、施工性が良好である。
また、位置調整構造として極めて簡単であり、安価に製作することができる。
特に、杭側金物6は、上端に第1接合用ボルト6eを固定した水平プレート6cを持つ一対の半割部材6dからなる簡単な構造でもって、水平なY軸方向の位置調整手段を実現している。
【実施例2】
【0046】
図9は本発明の他の実施例の杭基礎構造31における接合金物32に土台を接合する前の状態で示した斜視図である。この実施例は、杭と柱及び土台(土台梁)とを接合する柱梁接合タイプの場合であり、後述するように柱40は土台4から抜けるのを防ぐためのホールダウン金物41を用いて土台に接合する。
図10は
図9の杭基礎構造31のX軸方向と反対側(手前側)から見た側面図、
図11は
図9の杭基礎構造31のY軸方向から見た側面図、
図12は
図9の分解斜視図である。
これらの図に示すように、この杭基礎構造1は、鋼管製の杭3とその上部構造物の木製の土台4及び柱40とを前記接合金物32を介して接合してなる杭基礎構造である。
前記接合金物32は、杭3の頭部3aと接合する杭側金物6と、土台4と接合する土台側金物37と、前記杭側金物6と土台側金物37との間に介在して前記杭側金物6と土台側金物37とを、互いに直交するX軸方向及びY軸方向の水平2方向に位置調整可能に接合するための位置調整金物8を備え、かつ、前記土台側金物の高さ位置を調整するため高さ位置調整手段を備えている。図示例の高さ位置調整手段はスペーサ20である。
【0047】
杭側金物6と位置調整金物8との結合関係、位置調整金物8と土台側金物37との結合関係を、土台4及び柱40との関係も含めて、
図13A、
図13B、
図13C、及び
図14に補足して示す。
図13Aは
図10の平面図(=
図9の平面図)、
図13Bは
図13Aにおける土台側金物37を外して見た平面図、
図13Cは
図13Bにおける位置調整金物8を外して見た平面図である。また、
図14は
図13Aにおける土台側金物37と土台4及び柱40のみを示した図である。
この実施例は、隅柱における柱梁接合タイプの杭基礎構造であり、土台4及び柱35が図示されている
図13A〜
図16において、X軸方向に延びる土台を単に符号4で示し、それと直交するY軸方向に延びる土台を符号4’で示す。
【0048】
この実施例の杭基礎構造31において、杭3、杭側金物6、位置調整金物8は、梁接合タイプの場合である実施例1の杭基礎構造1と共通であり、土台側金物37が異なる。
【0049】
土台側金物37について説明する。この土台側金物37は、矩形の板状本体37aに、前記位置調整金物8の前記2つの第2接合用ボルト8cがそれぞれ挿入されるX軸方向に長い2つの第2長孔37bを有している点は実施例1の杭基礎構造1と共通である。
しかし、この土台側金物37は、板状本体37aの上面の中心位置に、土台4との位置合わせ用の丸鋼37eを鉛直の固定し、板状本体37aのX軸方向両端部にその端縁に沿って(Y軸方向に)延びる第1リブ37fを固定し、前記丸鋼37eを挟むY軸方向両側において前記両側の第1リブ37f間に突き当る態様の第2リブ37gを固定し、さらに、板状本体37aの前記両側の第1リブ37fのそれぞれ内側に、ホールダウン金物41のアンカーボルト41aの下端近傍を通すアンカーボルト挿通用のY軸方向長孔37hを設けている。
なお、板状本体37aの上面の前記リブ37f、37gは、
図17Aに示した土台側金物37’のように、これを設けない構造としてもよい。この場合、板状本体37aの剛性を高くし、かつ板状本体37bの上面に突出する第2接合用ボルト8c及びこれに螺合するナット8c’が土台4に干渉しないような構成とする。土台4、4’は土台側金物37’の板状本体37aに直に設置するので、例えば
図17Bに示すように、直交方向に位置する土台4’の端部の下部に、第2接合用ボルト8c及びナット8c’と干渉しないような切欠き4d’を形成する等とするとよい。切欠き4d’は、土台幅方向に突き抜ける切欠き、又は、ボルト8c、ナット8c’の部分だけの切欠きとすることができる。
【0050】
前記ホールダウン金物41は、アンカーボルト41aを螺合させた雌ねじ部材41bを固定した取付プレート41cを柱40にボルトで固定した構成であり、アンカーボルト41aの下端近傍(先端近傍)を土台側金物37の前記アンカーボルト挿通用のY軸方向長孔37hに通し、その下端部に螺合させたナット43を締め付けて、柱40を土台4に接合する。41dはアンカーボルト41aの上部に螺合させたナットである。
また、この実施例では、土台側金物37の前記第2リブ37gの上に、平板部39aの両端に下方に折り曲げられた突片39bを持ち、中央にアンカーボルト挿通孔39cを持つ、土台を直接受けるための板状カバー39を載せている。
【0051】
上記の杭基礎構造31を施工する施工手順について説明する。
杭3の頭部3aに杭側金物6を取り付け、その杭側金物6の上に位置調整金物8を取り付ける作業は、実施例1の杭基礎構造1の場合と同じである。
また、土台側金物37を位置調整金物8の上に取り付ける作業も作業自体は、実施例1の場合と同じである。すなわち、土台側金物37を、その第2長孔37bに位置調整金物8の第2接合用ボルト8cが挿入されるようにして位置調整金物8上に載せ、ナット8c’を第2接合用ボルト8cに螺合させる(この段階ではまだナット8c’を締め付けない)。
【0052】
杭側金物6上に位置調整金物8と土台側金物37とを組み立てる上記の作業が終了した後、土台側金物37の水平方向(X軸方向及びY軸方向)、及び高さ方向の位置調整をする。この位置調整作業も、作業自体は実施例1と同様であり、位置調整金物8を杭側金物6に対して位置調整金物8の第1長孔8bに沿うY軸方向に移動調整し、土台側金物37を位置調整金物8に対して土台側金物37の第2長孔37bをX軸方向に移動調整する。
高さ位置調整も、その作業自体は実施例1と同様であり、位置調整金物8の板状本体8aと土台側金物37の板状本体37aとの間に所定厚み寸法のスペーサ20を挿入する(介在させる)か、又は、杭側金物6の杭頭部3aへの取り付け高さ位置を調整して行う。
【0053】
上記のように接合金物32を各杭3の頭部3aに正しく位置調整して取り付けた後、
図15、
図16に示すように、上部構造物の土台4を接合金物32の上に設置する。
この場合、土台4の下面に設けた孔4cに土台側金物37の丸鋼37eが入るように、土台4を土台側金物37上に載せる。これにより土台側金物37の土台4に対する長手方向の位置合わせが行われる。
なお、土台側金物37の第2リブ37gの上に土台4を直接載せると、木製の土台4にのめり込みが発生する惧れがあるので、図示の通り、第2リブ37g上に載せた板状カバー39の上に土台4を載せている。
【0054】
次いで、前記ホールダウン金物41のアンカーボルト41aの下端近傍(先端近傍)を土台側金物37の前記アンカーボルト挿通用のY軸方向長孔37hに通し、その下端部に螺合させたナット43を締め付けて、柱40を土台4に接合する。
以上により、柱梁接合タイプの杭基礎構造31が施工される。
【0055】
この杭基礎構造31は、柱梁接合タイプの場合であるが、実施例1の場合と同様な種々の効果が得られる。
また、上記の通りであり、本発明の杭基礎構造によれば、梁接合タイプの場合(杭基礎構造1)と柱梁接合タイプの場合(杭基礎構造31)とで、土台側金物を取り換える(7と37)だけで対応することができる。
【実施例3】
【0056】
図18〜
図20Bに、上述した各実施例における杭側金物についての他の実施例の杭側金物16を示す。
図18は
図4において位置調整金物8と土台側金物7の部分を除いて示した図に相当する斜視図である。
図19Aは
図18の杭側金物16が杭頭部にボルトで接合される直前の状態を示した斜視図(但し、第1接合用ボルト6eを通す孔6hを示して第1接合用ボルト6e自体は図示略)、
図19Bは杭側金物16を杭頭部にボルトで接合した状態を示した平面図である。
図20Aは
図19Bの正面図、
図20Bは
図20Aの左側面図である。
これらの図に示すように、この実施例の杭側金物16は、
図1〜
図7(以下、
図1等ともいう)で示した実施例の杭側金物6とは半割部材の水平プレートが異なる。すなわち、この実施例の杭側金物16の半割部材16dは、
図1等の半割部材6dとは、半円筒部6a、フランジ部6b、第1接合用ボルト6eについては同じであるが、その水平プレート16cが
図1等の水平プレート6cとは異なる。
図1等の実施例の水平プレート6cの平面視の形状は、杭内面に沿う円弧と円弧の両端を結ぶ直線とからなる半月形をなしているが、この実施例の水平プレート16cの形状は、半円筒部6aの筒芯側が頂点となり半円筒内面の左右両側に向かって延びる2つ直線16ckで囲まれる扇形状をなしている。図示例の水平プレート6cは、中心角θが120°の扇形である。すなわち、
図1等の半月形の水平プレート6cの直線部の両側を30°(角度α)ずつカットした扇形である。
したがって、この水平プレート16cは、
図1等の水平プレート6cと比較して、半月形の円弧部分が短くなり、半円筒部6aの両側のフランジ部6bの近傍部分との溶接接合部分が存在しない。
【0057】
杭には引抜き力が作用する場合があるが、引抜き力が生じた時、この実施例の符号で説明すると、杭側金物16は第1接合ボルト6eを介してボルト軸方向の引張力を受ける。その引張力に対して杭側金物16と鋼管杭間の摩擦力で対抗する。
杭側金物16を杭頭部に接合する場合、2つの半割部材16dで杭頭部3aを両側から挟み、対向するフランジ部6b同士をボルト12とナット13で締め付けることで、杭頭部を挟む2つの半円筒部6aが杭外面に密着する。所定の摩擦力が発揮されるためには、半円筒部6aと杭外面とが十分強く密着している必要がある。
この実施例の杭側金物16では、水平プレート16cが扇形をなしており、半円筒部6aの両側のフランジ部6bの近傍部分との接合部分が存在しないので、半月形の水平プレート6cの場合と異なり、水平プレート16cが半円筒部6aの両端近傍(左右のフランジ部6bの近傍)を拘束することはない。したがって、対向するフランジ部6b同士をボルト12とナット13で締め付けたとき、半円筒部6aの左右の端部近傍が柔軟に撓むことができ、半円筒部6aの全体を杭外面に強く密着させて大きな摩擦力を生じさせることができ、十分高い接合力を確保できる。
なお、FEM解析により、半月形と扇形との2つの場合について、要求性能値の引張力を第1接合ボルト6eに与えた場合の水平プレートの発生応力と変形との関係を調べたところ、発生応力は弾性限度内に抑えられ、かつ、残留変形も生じないことが分かった。したがって、半月形から扇形に変えたことによる悪影響はないと言える。
【実施例4】
【0058】
図21A、
図21B、
図22A、及び
図22Bに杭側金物についてのさらに他の実施例の杭側金物16’を示す。
この杭側金物16’は、
図18〜
図20Bの実施例の杭側金物16において、各半割部材16dのフランジ部6b同士が、各フランジ部6bの外側面にそれぞれ配置された矩形平ワッシャ17を介在させてボルト12で締め付けた構成である。実施例の矩形平ワッシャ17の板厚はフランジ部6bの板厚の2倍である。矩形の横寸法はフランジ部6bの幅と同程度、縦寸法はフランジ部6bの縦寸法の約60%である。
【0059】
例えば建物の四隅部や耐力壁が位置する箇所に設置される杭の場合、建物の内側に設置される杭と比較して大きな引抜き力を受ける。したがって、そのような箇所の杭基礎構造では、杭側金物と杭頭部との接合力をさらに大にする必要がある。
この実施例の杭側金物16’は、そのような場合に適用して好適な高強度仕様の杭側金物であり、厚板で縦横寸法の大きな矩形平ワッシャ17を介在させてボルト12で締め付けることで、大きなボルト張力をフランジ部6bを介して半円筒部6aに伝達することができる。これにより、半円筒部6aと杭外面との密着力をさらに強めて、半円筒部6aと杭外面との摩擦力を増大させ、接合力を増大させることができる。
なお、矩形平ワッシャ17を介在させないで、ボルト12を強力に締め付けた場合、例えば板厚が6mm程度のフランジ部6bの場合、引抜き力により、フランジ部6bがその付け根から傾いてしまって、高いボルト張力が半円筒部6aに伝達されないことも生じる。しかし、フランジ部6bに厚板で面積の広い矩形平ワッシャ17を添わせてボルト締めすることで、実質的にフランジ部6bの剛性が高くなり、引抜き力により、フランジ部6bが傾くことなく高いボルト張力が半円筒部6aに伝達される。したがって、半円筒部6aと杭外面との密着力を強め、半円筒部6aと杭外面との摩擦力を増大させ、接合力を増大させることができる。
【実施例5】
【0060】
図23A、
図23B、
図24A、及び
図24Bに杭側金物についてのさらに他の実施例の杭側金物16”を示す。
この実施例の杭側金物16”は、前記杭側金物16’と同様に高強度仕様の杭側金物であり、例えば建物の四隅部や耐力壁が位置する箇所に設置される杭に適用して好適なものである。
この実施例の杭側金物16”は、その各半割部材16d”における両側のフランジ部6dの外面の上下位置にそれぞれ水平な補強リブ18が、フランジ部6bの外面及び半円筒部6aの端部近傍の外面に溶接固定される態様で固定されている。
この実施例の杭側金物16”の場合、フランジ部6bの上下位置にて、単にフランジ部6bの外面に溶接固定するのではなく、半円筒部6aの端部近傍の外面にも溶接固定しているので、実質的にフランジ部6bの剛性が顕著に高くなり、ボルト12を強力に締め付けた場合でも、引抜き力によりフランジ部6bが傾くことなく、大きなボルト張力をフランジ部6bを介して半円筒部6aに伝達することができる。これにより、半円筒部6aと杭外面との密着力をさらに強めて、半円筒部6aと杭外面との摩擦力を増大させ、接合力を増大させることができる。