特許第6551970号(P6551970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6551970
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】配設経路形成装置及び配設経路構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/00 20060101AFI20190722BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   F16L5/00 Q
   H02G3/22 260
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-60787(P2015-60787)
(22)【出願日】2015年3月24日
(65)【公開番号】特開2016-180453(P2016-180453A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2017年8月9日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 雅弘
【審査官】 吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−008077(JP,U)
【文献】 特開2010−065735(JP,A)
【文献】 特開2011−052831(JP,A)
【文献】 特開2006−320155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/00
H02G 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の基礎壁に貫通形成された貫通孔に設置される配線・配管材用の配設経路形成装置であって、
1又は複数の配線・配管材を内挿し、前記基礎壁の厚みよりも長尺に形成された中空筒部と、
前記基礎壁の一面側の貫通孔周縁に当接するように、前記中空筒部の一端側で外方に張り出す張出部と、を備え、
前記中空筒部の少なくとも一部には屈曲自在且つ切断可能な蛇腹部が形成され、
前記中空筒部の他端には、他の配設経路形成装置において一端側が蛇腹部で切除された中空筒部の切断部を接続可能な接続部が設けられていることを特徴とする配設経路形成装置。
【請求項2】
前記接続部は、前記蛇腹部に内挿可能な縮径筒部と、前記縮径筒部の外面に突出し、前記蛇腹部の内面に係合する係止突起とを有することを特徴とする請求項1に記載の配設経路形成装置。
【請求項3】
建物の基礎壁の貫通孔と建物外部に設置された外部機器との間に配線・配管材の配設経路が第1筒体及び第2筒体によって形成された配設経路構造であって、
前記第1筒体は、請求項1又は2に記載の配設経路形成装置からなり、
前記第1筒体は、1又は複数の配線・配管材を内挿し、前記基礎壁の厚みよりも長尺に形成され、前記貫通孔を貫通する中空筒部、前記中空筒部の一端側で外方に張り出し、前記基礎壁の内面側の貫通孔周縁に当接する張出部、及び、前記中空筒部の他端に形成された接続部を備え、
前記第2筒体は、前記第1筒体と別体の長尺体であり、且つ、前記第1筒体の中空筒部の蛇腹部と同一構造の蛇腹部を備え、
前記張出部が前記基礎壁内面の貫通孔周縁に固定され、前記中空筒部の前記基礎壁外面側に突出した箇所で前記第1筒体の前記蛇腹部が前記外部機器へ向けて屈曲し、前記接続部に前記第2筒体の前記蛇腹部が接続されて、前記基礎壁と前記外部機器との間に前記配線・配管材を保護するための配設経路を形成したことを特徴とする配設経路構造。
【請求項4】
前記中空筒部と前記貫通孔内面との間には止水手段が設けられていることを特徴とする請求項に記載の配設経路構造。
【請求項5】
前記張出部は、矩形状をなし、各辺のそれぞれに沿う直線状の粘着テープによって前記基礎壁に固着されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の配設経路構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物等の壁に穿設された貫通孔に対して設置され、配線・配管材用の配設経路を形成するための配設経路形成装置及び配設経路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、建物の内部に設置された水洗やユニットバス等の屋内設備は、建物の外部に設置されたヒートポンプ式給湯器等の外部機器と配線・配管材(配管材や信号線)によって接続されている。配線・配管材は、建物の基礎壁に形成された貫通孔を貫通して屋内設備と外部機器との間に配設される。そして、建物内部から建物外部に配線・配管材を引き出して、該配線・配管材で屋内設備と外部機器とを接続する際、配線・配管材の配設経路の見栄えを良くしたり、屋外における配線・配管材の劣化を防ぐために、屋外側の配線・配管材をカバーで覆うことが行われている。従来、このような屋外の配線・配管材の被覆目的で、配線・配管材の配設経路を形成するための種々の配設経路形成装置が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1は、建物の屋外に面する壁(1)を貫通する貫通孔(1a)の屋外(J)側に設置される屋外貫通孔カバー(4)と、該屋外用貫通孔カバー(4)に接続され、配線・配管材(2)を内挿して保護する保護管(3)とからなる配設経路形成装置を開示する。より具体的には、屋外貫通孔カバー(4)は、壁(1)の屋外(J)側の壁面(1b)に当接するフランジ(501)と、フランジ(501)の裏面から突出形成されて貫通孔(1a)に嵌合するガイド筒部(6)と、ガイド筒部(6)よりも小径な充填空間形成部(7)と、を備える。この屋外貫通孔カバー(4)は、周囲側がフランジ(501)となっているプレート(5)を有するカバー部(11)と、カバー部(11)から前側に突出し、配線・配管材(2)が挿通される複数の内筒(12)と、カバー部(11)から内筒(12)を囲むように前側に突出し、内筒(12)との間に配線・配管材(2)を保護する保護管(3)が挿入可能となっている複数の外筒(13)とをさらに備える。これら複数の内筒(12)及び外筒(13)が壁(1)の外方に突出し、複数の保護管(3)が屋外(J)から屋外貫通孔カバー(4)の複数の外筒(13)に内挿されて接続される。なお、()内に特許文献1の符号を示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−13124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の装置において、貫通孔から建物外部に引き出された配線・配管材が外部機器へ向けて配設されるが、屋外貫通孔カバーの内筒及び外筒などの部材が壁の外面から突出するとともに外部に露出するため、見栄えが損なわれることが考えられる。特に、外部機器の設置箇所が壁の貫通孔形成位置から離れている場合、外部に露出した屋外貫通孔カバーの凹凸がより一層目立つため、その外観を改善することが1つの課題として挙げられる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、外部機器と貫通孔との位置関係に柔軟に対応して見栄え良く配線・配管材を配設できる配設経路形成装置及び配設経路構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の配設経路形成装置は、建物の基礎壁に貫通形成された貫通孔に設置される配線・配管材用の配設経路形成装置であって、
1又は複数の配線・配管材を内挿し、基礎壁の厚みよりも長尺に形成された中空筒部と、
基礎壁の一面側の貫通孔周縁に当接するように、中空筒部の一端側で外方に張り出す張出部と、を備え、
中空筒部の少なくとも一部には屈曲自在且つ切断可能な蛇腹部が形成され、
中空筒部の他端には、他の配設経路形成装置において一端側が蛇腹部で切除された中空筒部の切断部を接続可能な接続部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の配設経路形成装置は、請求項1に記載の配設経路形成装置において、接続部は、蛇腹部に内挿可能な縮径筒部と、縮径筒部の外面に突出し、蛇腹部の内面に係合する係止突起とを有することを特徴とする。
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
請求項に記載の配設経路構造は、建物の基礎壁の貫通孔と建物外部に設置された外部機器との間に配線・配管材の配設経路が第1筒体及び第2筒体によって形成された配設経路構造であって、
第1筒体は、請求項1又は2に記載の配設経路形成装置からなり、
第1筒体は、1又は複数の配線・配管材を内挿し、基礎壁の厚みよりも長尺に形成され、貫通孔を貫通する中空筒部、中空筒部の一端側で外方に張り出し、基礎壁の内面側の貫通孔周縁に当接する張出部、及び、中空筒部の他端に形成された接続部を備え、
第2筒体は、第1筒体と別体の長尺体であり、且つ、第1筒体の中空筒部の蛇腹部と同一構造の蛇腹部を備え、
張出部が基礎壁内面の貫通孔周縁に固定され、中空筒部の基礎壁外面側に突出した箇所で第1筒体の蛇腹部が外部機器へ向けて屈曲し、接続部に第2筒体の蛇腹部が接続されて、基礎壁と外部機器との間に配線・配管材を保護するための配設経路を形成したことを特徴とする。
【0014】
請求項に記載の配設経路構造は、請求項に記載の配設経路構造において、中空筒部と貫通孔内面との間には止水手段が設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項に記載の配設経路形成装置は、請求項3又は4に記載の配設経路形成装置において、張出部は、矩形状をなし、各辺のそれぞれに沿う直線状の粘着テープによって基礎壁に固着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の配設経路形成装置によれば、貫通孔を貫通する長尺の中空筒部、及び、基礎壁の一面側の貫通孔周縁に当接する張出部が設けられていることを特徴とする。すなわち、基礎壁の一面側に張出部が固定されることにより、貫通孔から延び出る中空筒部のみが基礎壁の他面側に露出する。これにより、基礎壁の他面からの外観がすっきりし、見栄えが改善される。さらに、中空筒部が内挿する配線・配管材が接続される外部機器の位置に応じて、中空筒部の長さを短縮又は延長することが可能であり、柔軟に対応することができる。すなわち、基礎壁の貫通孔形成位置と外部機器とが近接し、必要な配線・配管材の長さよりも中空筒部が長尺である場合、蛇腹部で中空筒部を切断することによって、中空筒部の他端側を切除して該中空筒部の長さを調節することが可能である。他方、基礎壁の貫通孔形成位置と外部機器とが離隔し、必要な配線・配管材の長さよりも中空筒部が短尺である場合、(当該配設経路形成装置と同一形状を有する)他の配設経路形成装置を準備し、その一端側が蛇腹部で切除された中空筒部の切断片を当該配設経路形成装置の接続部に接続することにより、配線・配管材の配設経路を延長することができる。これにより、配線・配管材が外部に露出する面積が効果的に抑えられる。したがって、本発明によれば、外部機器と貫通孔との位置関係に柔軟に対応して見栄え良く配線・配管材を配設できる。
【0017】
請求項2に記載の配設経路形成装置によれば、請求項1の発明の効果に加えて、接続部は、蛇腹部に内挿可能な縮径筒部と、縮径筒部の外面に突出し、蛇腹部の内面に係合する係止突起とを有する。これにより、蛇腹部で切断した切断片の切断部開口に接続部を挿入して、両者を簡単に嵌合(係合)させて連結することができる。
【0018】
本発明の一形態の配設経路形成装置によれば、貫通孔を貫通する長尺の中空筒部、及び、基礎壁の内面側の貫通孔周縁に当接する張出部が設けられていることを特徴とする。すなわち、基礎壁の内面側に張出部が固定されることにより、貫通孔から延び出る中空筒部のみが基礎壁の外面側に露出する。これにより、基礎壁の外面からの外観がすっきりし、見栄えが改善される。また、基礎壁の貫通孔形成位置と外部機器とが近接し、必要な配線・配管材の長さよりも中空筒部が長尺である場合、蛇腹部で中空筒部を切断することによって、中空筒部の他端側を切除して該中空筒部の長さを調節することが可能である。さらに、張出部が基礎壁の内面側の貫通孔周縁に固定され、且つ、基礎壁の外面側に中空筒部が突出するように配置された状態で、貫通孔から延び出た中空筒部が基礎壁外面に向けて座屈することなく蛇腹部を介して屈曲する。そして、中空筒部が基礎壁外面に沿って配設され得る。すなわち、貫通孔形成位置と外部機器との間の配設経路を基礎壁外面に沿うように定めることが可能であり、外部機器と基礎壁との間で見栄え良く配線・配管材を配設できる。
【0019】
本発明のさらなる形態の配設経路形成装置によれば、上記発明の効果に加えて、張出部が基礎壁の他面側で貫通孔を閉鎖することにより、貫通孔を介して基礎壁の他面側に水やゴミ等が侵入することを防止することができる。
【0020】
本発明のさらなる形態の配設経路形成装置によれば、上記発明の効果に加えて、基端部が蛇腹部と比べて屈曲しにくいことにより、蛇腹部の屈曲によって張出部にかかる応力を軽減し、張出部の姿勢をより安定的に維持することが可能である。
【0021】
本発明の一形態の配設経路構造によれば、筒体に設けられた長尺の中空筒部が貫通孔を貫通し、且つ、張出部が基礎壁の内面側の貫通孔周縁に当接するように固定されている。すなわち、基礎壁の内面側に張出部が固定されることにより、貫通孔から延び出る中空筒部のみが基礎壁の外面側に露出している。これにより、基礎壁の外面からの外観がすっきりし、見栄えが改善される。そして、張出部が基礎壁内面の貫通孔周縁に固定され、中空筒部における少なくとも基礎壁外面側に突出した箇所に形成された屈曲自在な蛇腹部が外部機器へ向けて屈曲するように配設されて、基礎壁と外部機器との間に配線・配管材を保護するための配設経路を形成した。これにより、配設経路構造では、配線・配管材が外部に露出する面積が効果的に抑えられている。
【0022】
本発明の一形態の配設経路構造によれば、第1筒体に設けられた長尺の中空筒部が貫通孔を貫通し、且つ、張出部が基礎壁の内面側の貫通孔周縁に当接するように固定されている。すなわち、基礎壁の内面側に張出部が固定されることにより、貫通孔から延び出る中空筒部のみが基礎壁の外面側に露出している。これにより、基礎壁の外面からの外観がすっきりし、見栄えが改善される。そして、配設経路構造では、第1筒体の接続部に第2筒体の蛇腹部が接続されていることにより、第1筒体の中空筒部が効果的に延長されている。すなわち、第1筒体及び第2筒体が協働して、基礎壁の貫通孔形成位置と外部機器の距離(配線・配管材の長さ)に合わせて配設経路が延長されている。これにより、配線・配管材が外部に露出する面積が効果的に抑えられる。したがって、本発明によれば、外部機器と貫通孔との位置関係に柔軟に対応して見栄え良く配線・配管材を保護及び配設できる。
【0023】
本発明のさらなる形態の配設経路構造によれば、上記発明の効果に加えて、止水手段によって、貫通孔内部に水やゴミ等が侵入することを防止することができる。
【0024】
本発明のさらなる形態の配設経路構造によれば、上記発明の効果に加えて、粘着テープによって張出部を貫通孔の周縁に簡単に固着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る一実施形態の配設経路形成装置の概略斜視図。
図2図1の配設経路形成装置の(a)正面図、(b)側面図、及び(c)背面図。
図3図1の配設経路形成装置の中空筒部を蛇腹部で切断した形態を示す概略側面図。
図4】一の配設経路形成装置の中空筒部を他の配設経路形成装置の切断残片で延長した形態を示す概略断面図。
図5】本発明の配設経路形成装置の一使用例による配設経路構造の概略斜視図。
図6図5の配設経路構造の概略平面図。
図7図5の配設経路構造の概略正面図。
図8図5の配設経路構造の基礎壁内面から見た背面図。
図9図6の配設経路構造のA−A断面図。
図10】本発明の配設経路形成装置の別使用例による配設経路構造の概略斜視図。
図11図10の配設経路構造の概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0027】
本発明の配設経路形成装置は、建物の内部から外部に引き出された1又は複数の配線・配管材Pを建物外部で保護すべく配設経路を形成することに用いられる。特には、本実施形態の配設経路形成装置100では、配線・配管材Pで屋内設備(図示せず)と外部機器13とを接続する際、建物の基礎壁11の外部に貫通孔12を介して複数本の配線・配管材Pが引き出され、貫通孔12から外部機器13までの間で配線・配管材Pのための配設経路を形成することに用いられる。しかしながら、以下に説明する配設経路形成装置100は例示にすぎず、本発明は、当該用途に限定されない。
【0028】
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態の配設経路形成装置100の構造について説明する。図1は、本発明の一実施形態の配設経路形成装置100の概略斜視図である。図2(a)、(b)、(c)は、配設経路形成装置100の概略正面図、側面図及び背面図である。
【0029】
図1及び図2に示すとおり、配設経路形成装置100は、1又は複数本の配線・配管材Pを内挿可能に形成された長尺の筒体である。該配設経路形成装置(以下、「筒体、第1筒体」とも称される)100は、1又は複数の配線・配管材Pを内挿し、基礎壁11の厚みよりも長尺に形成された中空筒部110と、基礎壁11の内面側の貫通孔12周縁に当接するように、中空筒部110の一端側で外方に張り出す張出部120と、中空筒部110の他端に設けられた接続部130と、を備えてなる。
【0030】
中空筒部110は、その一端側で張出部120に連設された短筒状の基端部111と、該基端部111の他端側から延びる(基端部111よりも)長尺の蛇腹部112とから構成されている。中空筒部110の全長は、少なくとも基礎壁11の厚みよりも長尺に形成される。そして、張出部120が基礎壁11の内面側の貫通孔12周縁に固定され、且つ、基礎壁11の外面側に中空筒部110が突出するように配置された状態で、貫通孔12から延び出た中空筒部110が基礎壁11外面に向けて座屈することなく蛇腹部112を介して屈曲し、中空筒部110が基礎壁11外面に沿って配設され得る長さで中空筒部110が形成されることが好ましい。なお、「座屈」とは、中空筒部110が折れて、内部の配線・配管空間が狭まったり、閉鎖されたりする状態を示す。また、中空筒部110の内径は、その最も縮径した部分で複数本の配線・配管材Pを内挿及び保護できるように、定められることが好ましい。
【0031】
基端部111は、中空筒部110における張出部120と蛇腹部112との間を直状に連結するように円筒形状を有している。つまり、該基端部111は、蛇腹状に形成されていないため、基端部111は可撓性をほとんど有していない。換言すると、基端部111は、蛇腹部112よりも屈曲しにくいことを特徴とする。基端部111の長さは、設置時に貫通孔12内に収容されるように、基礎壁11の厚みよりも短尺であることが好ましい。本実施形態では、基端部111の外径(内径)は、蛇腹部112の山部の外径(内径)とほぼ同一であり、複数本の配線・配管材Pを内挿及び保護可能である。そして、蛇腹部112の山部の外径は、貫通孔13の径とほぼ同一の径か近い径であることが好ましい。基礎壁11外面において、貫通孔13内面と蛇腹部112外面との間の隙間が目立たなくなるからである。
【0032】
蛇腹部112は、基端部111の他端に連設されている。該蛇腹部112は、山部及び谷部が交互に連なった一般的な可撓性の蛇腹構造を有し、長手方向に沿って座屈することなく屈折又は屈曲自在であることを特徴とする。また、蛇腹部112は、中空筒部110の長手方向の大部分を占めており、配線・配管材Pを内挿及び保護するための屈折可能な配設経路を定めるものである。
【0033】
さらに、蛇腹部112は、切断可能に形成されている。特には、蛇腹部112の谷部で切断し易くなっている。図3に示すとおり、中空筒部110は蛇腹部112で切断可能であり、切断部112a,112bを介して筒体100を一端側の第1切断片100aと他端側の第2切断片100bの2つに分割することが可能である。筒体100の第1接続片100aには、中空筒部110の一端側及び張出部120が残され、その他端側の第1切断部112aにおいて、蛇腹部112が開口している。他方、筒体100の第2接続片100aには、中空筒部110の他端側及び接続部130が残され、その一端側の第2切断部112bにおいて、蛇腹部112が開口している。例えば、配設経路を短縮する際、第1切断片100aが切断残片として用いられ、第2切断片100bが切除される。すなわち、基礎壁11の貫通孔12形成位置と外部機器13とが近接し、必要な配線・配管材Pの長さよりも中空筒部110が長尺である場合、蛇腹部112で中空筒部110を切断することによって、中空筒部110の他端側を切除して配設経路の長さを調節することが可能である。他方、配設経路を延長する際、第2切断片100bが切断残片として第2筒体として用いられ、第1切断片100bが切除される。
【0034】
張出部120は、中空筒部110一端で基端部111外周から外方に張り出して形成されている。該張出部120は、平板状且つ正面視矩形状(本実施形態では略正方形)に形成され、その4隅で面取り加工されている。そして、張出部120の裏面(中空筒部110の他端側を向いた面)には、貫通孔12の周縁(基礎壁11内面)に当接する当接面121が定められる。矩形状の張出部120は、貫通孔12に挿通された中空筒部110外面と貫通孔12内面との間を閉鎖する大きさで形成されている。換言すると、張出部120の一辺(少なくとも短辺)の長さが貫通孔12の内径よりも長い。これにより、張出部120の当接面121が貫通孔12周縁に当接した状態で、張出部120が貫通孔12の端縁を覆うことが可能である。
【0035】
接続部130は、中空筒部110の他端に一体的に形成されている。接続部130は、蛇腹部112に内挿可能な縮径筒部131と、該縮径筒部131の外面に突出し、蛇腹部112の内面に係合する係止突起132とを有する。縮径部分131の外径は蛇腹部112の谷部の内径とほぼ同じか、あるいは、それよりも小さい。また、係止突起132は、縮径部分131の外周に沿って突出した環状の突起であり、蛇腹部112の内面側に突出する谷部の間に嵌まり込むように構成されている。つまり、係合部材142の外径は、蛇腹部112の谷部の内径よりも大きく、且つ、山部の外径よりも小さい。すなわち、接続部130は、中空筒部110の蛇腹部112を外挿して互いに接続可能に構成されている。さらに、接続部130は、筒体110の切断片100a,100bの切断部112a、112b開口を介して切断された蛇腹部112をも接続可能である。すなわち、接続部130は、他の配設経路形成装置100’において一端側が蛇腹部112’で切除された中空筒部110’の切断部112b’を接続可能である。
【0036】
なお、本実施形態の配設経路形成装置(筒体)100は、合成樹脂の一体成型により成形されたものである。しかしながら、蛇腹部の可撓性を維持できれば、金属等の他の材質で形成されてもよい。あるいは、別体の部品を固着してもよい。
【0037】
図4は、配設経路形成装置(第1筒体)100に(配設経路形成装置100と同一の)他の配設経路形成装置100’の第2切断片100b’(第2筒体)を連結して、配設経路を延長した配設経路形成装置の形態を示す概略断面図である。図4に示すとおり、第1筒体100の接続部130に第2筒体100b’の第2切断部112b’が接続されている。より詳細には、接続部130の縮径筒部131が第2切断部112b’開口を介して蛇腹部112’内に内挿されている。そして、接続部130の係合突起132が蛇腹部112’の谷部間に配置されることにより、これらが互いに嵌合し、接続部130がその長さ方向に係止されている。また、第2筒体100b’の第2切断部112b’が第1筒体100の接続部130根元まで外挿されているので、その外観において、蛇腹部112、112’が長手方向に連続しているように見える。つまり、第1筒体100が第2筒体100b’によって延長されたことによる外観の劣化が抑えられている。結果として、第1筒体100及び第2筒体100b’を連結した延長した配設経路形成装置が構成される。そして、第2筒体100b’の接続部130’に他の配設経路形成装置の第2切断片を連結することにより、その配設経路をさらに延長することも可能である。すなわち、本実施形態の配設経路形成装置100では、必要な配設経路の長さに応じて、中空筒部110の長さを自在に短縮及び延長することが可能である。
【0038】
次に、図5から図9を参照して、配設経路形成装置100の一使用例として、基礎壁11と外部機器13との間に本実施形態の配設経路形成装置100を設置した配設経路構造10について説明する。図5乃至図9は、配設経路構造10を示している。図5は、配設経路構造10の概略斜視図である。図6は、配設経路構造10の概略平面図である。図7は、配設経路構造10の概略正面図である。図8は、配設経路構造10の基礎壁11内面から見た背面図である。図9は、配設経路構造10の貫通孔12近傍の構造を示すA−A断面図である。
【0039】
図5から図7に示すとおり、基礎壁11には貫通孔12が穿設され、該貫通孔12の形成位置から比較的近接した位置に外部機器13が配置されている。具体的には、本配設経路構造10では、外部機器13はヒートポンプ式給湯器であり、そして、配線・配管材Pは、追い炊き用の行き戻り管(図8、9のP1)、給水管や信号線(図8、9のP2)である。外部機器13は、基礎壁11の貫通孔12が形成された外面の前に設置されている。また、本実施形態の配設経路構造10では、基礎壁11と外部機器13との間で配線・配管材Pをその全域(又はほぼ全域)に亘って保護する配設経路を形成されている。すなわち、1体の配設経路形成装置(筒体)100が貫通孔12を介して外部機器13まで到達している。なお、「到達」とは、配設経路形成装置(第1筒体及び第2筒体の連結体も含む)が貫通孔を介して基礎壁と外部機器との間に配設又は配置されていることを意味し、配設経路形成装置(筒体)の先端又は第2筒体の先端が外部機器に当接していることを含んでいる。しかしながら、現実的には、配設経路形成装置(筒体)又は第2筒体の先端と外部機器との間にある程度の大きさの隙間が生じてもよい。
【0040】
本実施形態の配設経路構造10では、基礎壁11の貫通孔12と外部機器13との間に配線・配管材P(追い炊き用の行き戻り管、給水管や信号線等)の配設経路が形成されている。より具体的には、図6及び図7に示すとおり、中空筒部110の基礎壁11外面側に突出した箇所で配設経路形成装置100の蛇腹部112が外部機器13の接続箇所へ向けて屈曲している。詳細には、貫通孔12から外方に略直状に延び出た中空筒部110が基礎壁11外面に向けて座屈することなく蛇腹部112を介して屈曲し、中空筒部110が基礎壁11外面に沿うように配設されている。そして、外部機器13近傍において、中空筒部110が壁面に沿いながら、配設経路形成装置100他端の接続部130が外部機器13に到達している。すなわち、配設経路構造10では、基礎壁11と外部機器13との間に配線・配管材Pを保護するための配設経路が形成されている。
【0041】
当該配設経路構造10では、配設経路形成装置100の張出部120が基礎壁11内面の貫通孔12周縁に固定されている。図8及び図9に示すように、張出部120の当接面121が基礎壁11内面に当接した状態で、各辺のそれぞれに沿う直線状の粘着テープ122によって基礎壁11に固着されている。そして、矩形状の張出部120によって、貫通孔12に挿通された中空筒部110外面と貫通孔12内面との間が閉鎖されている。これにより、中空筒部110外面と貫通孔12内面との間の隙間から水やゴミ等が基礎壁11内方に侵入することが防止されている。他方、基礎壁11の外面においては、貫通孔12から延び出る中空筒部110のみが露出している。なお、図8及び図9において、配線・配管材Pとして複数のケーブル及び配管が内挿されている。すなわち、任意に配線・配管材Pの数量を増減したり、その種類を変更可能である。
【0042】
また、図9に示すように、貫通孔12内における基礎壁11内面近傍の空間において、短尺の中空筒部110の基端部111が延在している。基端部111が蛇腹部112と比べて屈曲しにくいことにより、蛇腹部112の屈曲によって張出部120に直接かかる応力を軽減し、張出部120の姿勢がより安定的に維持されている。他方、貫通孔12の基礎壁11外面側の残りの大部分の空間において、蛇腹部112が延在している。すなわち、配設経路形成装置100が基礎壁11に設置された状態で、貫通孔12内に基端部111が収容され、基礎壁11外面に延び出る中空筒部110の部分が蛇腹部112となる。これにより、中空筒部110を基礎壁11外面から延び出た直後から屈折させることが可能である。
【0043】
そして、貫通孔12の基礎壁11外面側の開口端において、蛇腹部112(中空筒部110)外面と貫通孔12内面との間に止水手段140が設けられている。当該止水手段140は、パテ材やOリングなどから任意に選択され得る。結果として、基礎壁11外面側から貫通孔12内に水やゴミ等が侵入することが抑えられる。本実施形態において、止水手段140が外部(屋外)に露出しており、劣化の虞があるが、基礎壁11内部側で張出部120を矩形状として粘着テープ140で固定したことで、基礎壁11の貫通孔12内面と蛇腹部112との間に侵入した雨水等が基礎壁11より内部(屋内)に入り込むことが防止される。
【0044】
なお、外部機器13が基礎壁11の貫通孔12により近い位置にある場合には、図3に示したように、蛇腹部112で中空筒部110の他端側を切除し、張出部120を含む第1切断片100aを配設経路形成装置として使用してもよい。
【0045】
次に、配設経路形成装置の別使用例として、基礎壁11と外部機器13との間に第1筒体100及び第2筒体100b’を設置した配設経路構造20について説明する。図10は、配設経路構造20の概略斜視図である。図11は、配設経路構造20の概略平面図である。
【0046】
図10及び図11に示すとおり、基礎壁11には貫通孔12が穿設され、外部機器13が基礎壁11の貫通孔12が形成された面とは異なる面の前に設置されている。つまり、基礎壁11の貫通孔12形成位置から比較的離れた位置に外部機器13が位置している。この場合、図5の配設経路構造10のように、1本の筒体(配設経路形成装置)100で貫通孔12を介して外部機器13まで到達することができない。なお、図10及び図11では、説明の便宜上、第1筒体100及び第2筒体100b’を区別して描写しているが、蛇腹部112、112’は同一構造を有している。
【0047】
本実施形態の配設経路構造20は、第1筒体100に第2筒体100b’が接続されることにより、基礎壁11の貫通孔12と外部機器13との間に配線・配管材Pの配設経路が形成されている。より具体的には、当該配設経路構造20では、第1筒体100の張出部120が基礎壁11内面の貫通孔12周縁に固定されている。なお、張出部120の固着手段及び貫通孔12における断面構造は、図8図9で説明した形態と同様である。
【0048】
図11に示すとおり、第1筒体100の中空筒部110の基礎壁11外面側に突出した箇所で蛇腹部112が外部機器13へ向けて屈曲している。より詳細には、貫通孔12から外方に略直状に延び出た中空筒部110の蛇腹部112が基礎壁11外面に向けて座屈することなく緩やかなカーブを描きながら屈曲し、中空筒部110が基礎壁11外面に沿うように配設されている。そして、基礎壁11の貫通孔12が形成された外面で、第1筒体100先端の接続部130に第2筒体100b’の蛇腹部112’(又は中空筒部110’)が第2切断部112b’を介して接続されている。同様に、第2筒体100b’は蛇腹部112’を介して外部機器13に向けて屈曲している。具体的には、蛇腹部112’が当該貫通孔12が形成された基礎壁11外面から隣接する基礎壁11外面に座屈することなく緩やかなカーブを描きながら屈曲し、外部機器13近傍で基礎壁11外面に沿うように配設されている。その結果、第2筒体100b’の他端の接続部130’が外部機器13に到達している。すなわち、配設経路構造20では、基礎壁11と外部機器13との間に配線・配管材Pを保護するための延長された配設経路が形成されている。
【0049】
以下、本発明に係る一実施形態の配設経路形成装置及び配設経路構造における作用効果について説明する。
【0050】
本実施形態の配設経路形成装置100によれば、貫通孔12を貫通する長尺の中空筒部110、及び、基礎壁11内面の貫通孔12周縁に当接する張出部120が設けられている。すなわち、基礎壁11内面の貫通孔12周縁に張出部120が固着されることにより、貫通孔12から延び出る中空筒部110のみが基礎壁の他面側に露出する。これにより、基礎壁11の他面からの外観がすっきりし、見栄えが改善される。さらに、中空筒部110が内挿する配線・配管材Pが接続される外部機器13の位置に応じて、中空筒部110の長さを短縮又は延長することが可能であり、柔軟に対応することができる。すなわち、基礎壁11の貫通孔12形成位置と外部機器13とが近接し、必要な配線・配管材Pの長さよりも中空筒部110が長尺である場合、蛇腹部112で中空筒部110を切断することによって、中空筒部110の他端側を切除して該中空筒部110の長さを調節することが可能である。他方、基礎壁11の貫通孔12形成位置と外部機器13とが離隔し、必要な配線・配管材の長さよりも中空筒部110が短尺である場合、他の配設経路形成装置100’を準備し、その一端側が蛇腹部112’で切除された中空筒部110’の第2切断片(第2筒体)112b’を当該配設経路形成装置(第1筒体)100の接続部130に接続することにより、配線・配管材Pの配設経路を簡単に延長することができる。これにより、配線・配管材Pが外部に露出する面積が効果的に抑えられる。したがって、本実施形態によれば、外部機器13と貫通孔12との位置関係に柔軟に対応して見栄え良く配線・配管材Pを保護及び配設できる。
【0051】
[変形例]
本発明の配設経路形成装置は、上記実施形態に限定されずに、例えば、以下のように変形可能である。
【0052】
(1)本発明の配設経路形成装置は、上記実施形態の形状に限定されない。上記実施形態では、中空筒部断面は円形であるが、例えば、中空筒部断面は楕円、長円、多角形であってもよい。また、張出部が矩形状であるが、円形状等の他の形状であってもよい。
【0053】
(2)上記実施形態では、第2筒体は他の配設経路形成装置の第2切断片であるが、本発明はこれに限定されない。すなわち、第2筒体は、同構造の蛇腹部を有する筒体であればよく、配設経路形成装置の切断片でなくてもよい。例えば、第2筒体は、別個に成形した蛇腹状筒体であってもよい。
【0054】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0055】
10 配設経路構造
11 基礎壁
12 貫通孔
13 外部機器
20 延長した配設経路構造
100 配設経路形成装置(筒体、第1筒体)
100a 第1切断片
100b 第2切断片
110 中空筒部
111 基端部
112 蛇腹部
112a 第1切断部
112b 第2切断部
120 張出部
121 当接面
122 粘着テープ
130 接続部
131 縮径筒部
132 係合突起
140 止水手段
100’ 他の配設経路形成装置
100b’ 第2筒体
P 配線・配管材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11