(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552004
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】畦防水壁の施工方法と畦防水壁の施工装置
(51)【国際特許分類】
A01B 35/00 20060101AFI20190722BHJP
E02F 3/36 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
A01B35/00 Z
E02F3/36 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-249109(P2016-249109)
(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公開番号】特開2018-102136(P2018-102136A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2018年2月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516385376
【氏名又は名称】野原工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】竹田 実
【審査官】
小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−084985(JP,A)
【文献】
特開2004−337017(JP,A)
【文献】
特開2012−029582(JP,A)
【文献】
実公昭49−003375(JP,Y1)
【文献】
特開2012−000092(JP,A)
【文献】
特開昭60−253613(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3050908(JP,U)
【文献】
特開平10−046577(JP,A)
【文献】
特開平11−075415(JP,A)
【文献】
実開平05−057024(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B27/00−31/00
A01B35/00−49/06
E02B 9/00−13/02
E02F 3/28− 3/413
E02F 5/00− 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックホウのブレーカアタッチメントに取り付けられ畦に打ち込むことにより前記畦に溝を形成する掘削プレートを設け、
前記掘削プレートは、一定の厚みを有する平板の板体から成り、前記板体の上端部には前記ブレーカアタッチメントのロッドが摺動可能に嵌合される取付部が設けられ、
前記掘削プレートは、前記ブレーカアタッチメントにチェーン又はワイヤで吊り下げられ、前記板体の側面が垂直となるように保持されるとともに、前記ブレーカアタッチメントに揺動可能に設けられ、
前記畦に対して前記掘削プレートを起立状体で配置し、前記掘削プレートの下端縁部を前記畦の長手方向に平行に配置して、前記バックホウの前記ブレーカアタッチメントで前記掘削プレートを前記畦に打ち込み、前記掘削プレートにより前記畦に溝を形成し、前記バックホウで前記掘削プレートを揺動して前記溝の内壁を固め、前記溝を前記掘削プレートの表面と平行に形成し、前記溝の中に漏水防止材料を投入することを特徴とする畦防水壁の施工方法。
【請求項2】
前記漏水防止材料は粒状のベントナイトを含む請求項1記載の畦防水壁の施工方法。
【請求項3】
バックホウのブレーカアタッチメントに取り付けられ畦に打ち込むことにより前記畦に溝を形成する掘削プレートを備え、
前記掘削プレートは、一定の厚みを有する平板の板体から成り、前記板体の側面が垂直となるように保持され、前記板体の上端部には前記ブレーカアタッチメントのロッドが摺動可能に嵌合される取付部が設けられ、
前記掘削プレートを前記ブレーカアタッチメントに吊り下げるチェーン又はワイヤを備え、
前記掘削プレートは、前記ブレーカアタッチメントに揺動可能に吊り下げられて設けられていることを特徴とする畦防水壁の施工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水田の畦に設けられた畦防水壁の施工方法と畦防水壁の施工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ほ場基盤整備事業が完工後40年ほど経過したほ場では、漏水による保水機能の低下による稲作収量の低下が著しくなる。特に乾田直撒方法では、秋季に荒耕し、代播きをし、春季にほ場全体を天日乾燥させトラクターにより種播きをするものであり、ほ場全体に日割れが生じ、発芽後に灌漑水を満たしたときに漏水することがある。その他、ほ場に灌水した後、日割れや畦に浸水し、隣接する低いほ場へ浸水したり、畦が崩壊することもある。畦にモグラの穴が形成され、そこから漏水することもある。
【0003】
これらを防ぐためには、ほ場の基盤土及び表土自体に手を入れる漏水止め工事が行われる。しかし、これは経費面と作業量の観点で負担が大きいものであり、また工期が長く稲作に影響を及ぼすものである。また、畦をコンクリートで形成することもあるが、コンクリートは高価であり割れると、そこから漏水するものである。そこで、畦畔からの漏水を止めることに着目し畦に沿って地中に漏水防止材料を投入し遮水壁を作る方法がある。このような遮水壁は、従来いろいろなものが開示されている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されている水田圃場漏水防止作業機は、水田ほ場における漏水を防止するためにほ場の畦部分の表面以下部分に防水壁を形成するものである。これは、トラクタに装着されて使用される作業機であり、トラクタのトレッド方向に延びる支持フレームと、この支持フレームの端部に搭載されている硬化剤積載槽と、この支持フレームに積載されている溝堀りロータと、この溝堀機の移動軌跡内に位置して支持フレームに積載されている混合ロータが設けられている。この水田圃場漏水防止作業機の動作は、硬化剤積載槽から硬化剤の供給を受けながら溝堀りロータにより形成された溝中において混合ロータが回転させられ、溝堀りの際に掘削された土と硬化剤との混合により畦際に漏水防止壁を形成するものである。
【0005】
また、近年市場に流通している漏水防止材料としてベントナイトがあり、ベントナイトを含む遮水材等も開示されている。例えば、特許文献2に開示されている地中遮水壁構築材料は、汚染地盤を囲むように掘削溝を形成し、該掘削溝内にソイルセメントを打設、充填して地下遮水壁を構築するものであり、ソイルセメントにはベントナイトが混合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−337017号公報
【特許文献2】特開2015−172319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ほ場からの漏水を防止する構造として特許文献1に示すような畦畔に、特許文献2に開示されているように掘削溝を形成しベントナイトを含む漏水防止材料を充填して、畦防水壁を形成することも考えられる。しかし、畦畔は土が柔らかく、所望の幅と深さの掘削溝を形成することが困難である。また掘削溝の形成にバックホウを使用すると畦畔が崩れることがあり、畦畔の修復作業に時間とコストが掛かるという課題がある。
【0008】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、畦畔の形状を維持したまま任意の大きさの畦防水壁を形成することができ、簡単で確実に水田の水漏れを防ぐ畦防水壁の施工方法と畦防水壁の施工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、畦に対して掘削プレートを起立状体で配置し、
前記掘削プレートの下端縁部を前記畦の長手方向に平行に配置して、バックホウのブレーカアタッチメントで
前記掘削プレートを前記畦に打ち込み、
前記掘削プレートにより前記畦に溝を形成し、
前記バックホウで前記掘削プレートを揺動して前記溝の内壁を固め、前記溝を前記掘削プレートの表面と平行に形成し、前記溝の中に漏水防止材料を投入する畦防水壁の施工方法である。前記漏水防止材料は
粒状のベントナイトを含むものである。前記漏水防止材料を投入する際は、前記バックホウに前記漏水防止材料を入れた容器を取り付け、前記バックホウを操作して前記溝の上方に前記容器を保持し、前記容器に設けられた取出口から前記漏水防止材料が落下して前記溝に投入されるものである。
【0010】
また本発明は、バックホウのブレーカアタッチメントに取り付けられ
畦に打ち込むことにより前記
畦に溝を形成する掘削プレートを備え、前記掘削プレートは、一定の厚みを有する
平板の板体
から成り、下端縁部が鋭利に形成され、前記板体の側面が
地面に対して垂直となるように保持され、前記板体の上端部には前記ブレーカアタッチメントのロッドが摺動可能に嵌合される取付部が設けられ、
前記掘削プレートを前記ブレーカアタッチメントに吊り下げるチェーン又はワイヤを備え、前記掘削プレートは、前記ブレーカアタッチメントに吊り下げられて設けられている畦防水壁の施工装置である。前記取付部は、上方に開口する筒部である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の畦防水壁の施工方法と畦防水壁の施工装置は、畦畔の形状を維持したまま任意の大きさの畦防水壁を形成することができ、簡単で確実に水田の水漏れを防ぐものである。作業効率が良好であり、短時間で小さい労力により施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明の一実施形態の畦防水壁の縦断面図である。
【
図2】この実施形態の畦防水壁の施工方法の掘削工程を示す部分破断正面図である。
【
図3】この実施形態の畦防水壁の施工方法の投入工程を示す部分破断正面図である。
【
図4】この実施形態の畦防水壁の施工装置を示す上面図(a)と正面図(b)、右側面図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の畦防水壁10は、平坦なほ場12と、ほ場12よりも低い位置にある平坦なほ場14の間に設けられた畦16の地中に設けられ、漏水防止材料11が固められて構築されている。なお、ほ場12,14は、例えば水田であり、稲の栽培時期には灌漑水18が貯められる。ほ場12,14は、表面の耕土20の下にすき床22があり、その下に心土24がある。すき床22は、トラクタや耕耘機の重さで押し固められた部分であり、漏水を抑制する役割を有している。
【0014】
畦防水壁10は、畦16のほ場12側の法面に設けられ、垂直方向に所定の深さで形成され、下端部はすき床22付近に達し、なおかつすき床22を破壊しない深さに位置している。例えば、ほ場12の表面より約20cm上がった畦16の法面に、深さ80〜100cmで形成されている。畦防水壁10は、畦16の長手方向に沿って長く連続して設けられている。畦16の長手方向に交差する幅は狭くてもよく、例えば5〜10cm程度の幅である。漏水防止材料11の上端部は耕土20の表面よりわずかに下に位置し、耕土20aで薄く覆われている。
【0015】
漏水防止材料11はベントナイト13である。ベントナイト13は、海底・湖底に堆積した火山灰や溶岩が変質することで出来上がった粘土鉱物の一種である。成分構成としてはモンモリナイトという鉱物を主成分とし、他に石英や雲母、長石、ゼオライト等の鉱物を含んでいる。膨潤性、増粘性、吸水性等を有しており、吸水によって膨潤し高い遮水性を持つ。ベントナイトは完全無機鉱物であり腐敗することがない。ベントナイト13は、耕土20に含まれる水分を吸収し膨潤し、固形状態となり高い不透水性を有するものとなる。
図1に示すように、高いほ場12から低いほ場14へ流れる耕土20中の灌漑水18や雨水の流れをせき止めることができる。
【0016】
次に、畦防水壁10の施工方法について
図2に基づいて説明する。畦16のほ場12側の法面に、掘削プレート32を垂直に、バックホウ28のブレーカアタッチメント30で打ち込む。その後掘削プレート32を引き上げ、掘削プレート32を引き上げた跡に溝26が形成され、この溝26の中に粉末または粒状の漏水防止材料11を投入する。漏水防止材料11はベントナイト13であり、耕土20の水分を吸収し膨潤し、固形状態となり不透水性が高くなる。そして、投入した漏水防止材料11の表面に耕土20aをかけ、畦16の表面の耕土20と連続するように整える。工期は、例えば施工長が150mで2〜3日であり、極めて短いものである。
【0017】
次に、畦防水壁10の施工装置27について説明する。畦16に畦防水壁10の溝26を掘削する時は、ブレーカ仕様のバックホウ28を使用し、バックホウ28のブレーカアタッチメント30に、
図4に示す掘削プレート32を吊り下げる。吊り下げる手段はチェーンやワイヤ等である。バックホウ28は、例えば0.45m
3級バックホウである。
【0018】
ここで、掘削プレート32について
図4に基づいて説明する。掘削プレート32は鉄製であり、一定の厚みを有する矩形の板体34が設けられ、板体34の側面が垂直となるように保持して使用される。板体34の大きさは、例えば高さ110cm、幅75cm、厚さ5cmである。板体34の、下端縁部34aと、下端縁部34aに連続する一対の側縁部34b,34cは、耕土20に打ち込みやすいように厚み方向の一対の角部が面取りされて、端面が鋭利に形成されている。上端縁部34dの中心には、ブレーカアタッチメント30の打ち込み用のロッド36が摺動可能に嵌合される円筒部38が溶接されている。円筒部38は、中心軸が上端縁部34dに対して直角に、上方に突出して取り付けられている。円筒部38の基端部には、硬い金属で作られたフランジ部40が溶接され、円筒部38の側周面の外側を一周して溶接され、ロッド36が撃ち込まれたときの衝撃に耐える補強の役割をする。円筒部38の、側面の一部には、スリット42が形成され、ロッド36を円滑に摺動させる。
【0019】
施工装置27の使用方法について詳しく説明する。掘削プレート32の円筒部38にバックホウ28のロッド36を差し込んだ状態で、チェーンやワイヤ等で、掘削プレート32をブレーカアタッチメント30に吊り下げる。そして、掘削プレート32を吊り下げたバックホウ28を運転して、
図2に示すようにほ場12の畦16に近い位置を、畦16の長手方向に対して平行に走行する。畦防水壁10を設ける所望の位置で停止させ、ブレーカアタッチメント30を降下し、掘削プレート32の板体34下端縁部34aが畦16の長手方向に対して平行となるようにして、耕土20表面に下ろす。そしてブレーカアタッチメント30を作動させて、ロッド36を打ち込み、ロッド36が掘削プレート32の円筒部38の内側を摺動して板体34の上端縁部34dを打ち付け、その打撃エネルギーで板体34を耕土20に垂直方向に打ち込む。所定の深さに打ち込んだ後、バックホウ28を操作して掘削プレート32を引き上げる。引き上げた板体34の跡に、溝26が形成される。掘削プレート32を引き上げる前に、前後左右にバックホウ28で揺らすと、溝26の内壁が掘削プレート32に押し付けられて固まり、崩れにくくなる。また溝26の幅を少し広げることができる。溝26の底部は、打ち込みの衝撃で固められる。1つの溝26を形成した後、バックホウ28を操作して溝26に隣接する位置に再度掘削プレート32を打ち込んで新たに溝26を形成する。これを繰り返して溝26を連続させ、畦16に沿って長く形成する。バックホウ28を畦16に沿って走行させて、長い任意の距離で溝26を形成することができる。
【0020】
畦16に形成した溝26に、漏水防止材料11を投入する時は、バックホウ28からブレーカアタッチメント30と掘削プレート32を外し、漏水防止材料11が収容された容器44を取り付けたものを使用する。容器44の形状は、袋やバケット等何でもよい。容器44の底部には、粉末状の漏水防止材料11を少量ずつ落とす取出口46が形成されている。取出口46は、透孔やノズル等である。バックホウ28を操作して容器44を溝26の上方に位置し、溝26に漏水防止材料11を落下させて投入する。バックホウ28を畦16に沿って走行させて、溝26の長手方向に沿って連続して漏水防止材料11を投入することができる。漏水防止材料11の溝26への投入が終了した後、漏水防止材料11の上端部に、耕土20aをかけて畦16の表面の耕土20と連続するように修復する。修復には、バックホウ28を使用するとよい。
【0021】
この実施形態の畦防水壁10の施工方法と畦防水壁の施工装置27によれば、畦16の形状を維持したまま、任意の大きさの畦防水壁10を形成することができ、簡単で確実に、ほ場12に隣接する低いほ場14への水漏れを防ぐものである。耕土20中の灌漑水18や雨水の流れを効果的にせき止め、ほ場12の灌漑水18を保持することができ、水の流れによる畦16の崩壊も防ぐ。さらに、ほ場12の保水能力を向上させ、収穫量を維持することができる。溝26の掘削工程では、柔らかい耕土20で形成された畦16に、任意の深さで均一な幅の溝26を崩れることなく簡単に掘削することができる。掘削する際に畦16自体の変形がなく、大規模な補修作業が不要である。固い地盤や転石等の悪条件下においても溝26を容易に形成することができ、漏水防止材料11の投入工程も、容易である。また畦防水壁10の施工期間が短くて安価であり、軽敏な工事である。そして継続的で確実な効果を有するものである。漏水防止材料11に使用するベントナイト13は、安価で無害、自然劣化がなく、高い遮水効果を有し、環境に与える影響も小さい。稲作に与える影響がなく、安全である。
【0022】
なお、この発明の畦防水壁の施工方法と畦防水壁の施工装置は、上記実施の形態に限定されるものではなく、漏水防止材料の材料は、ベントナイトと他の材料を混合したものでもよく、ベントナイト以外のものでもよい。掘削プレートに、バックホウのオペレータが掘削プレートの垂直を確認するための基準棒等を設けてもよい。掘削プレートの大きさは適宜変更可能であり、ブレーカアタッチメントのロッドを受ける構造は、円筒部以外の形状でもよく、ロッドの衝撃を受けるためさらに補強されたものでもよい。また掘削プレートをブレーカアタッチメントに吊り下げる構造は、ワイヤやチェーン以外でも良い。畦防水壁を形成する位置は畦の法面以外でも良く、畦の頂部や畦の端部でもよい。また、畦以外に池の周囲等、どこに設けてもよい。
【符号の説明】
【0023】
10 畦防水壁
11 漏水防止材料
12,14 ほ場
13 ベントナイト
16 畦
26 溝
27 畦防水壁の施工装置
28 バックホウ
30 ブレーカアタッチメント
32 掘削プレート
34 板体
38 円筒部
44 容器
46 取出口