(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
地球温暖化問題は深刻度を増しており、二酸化炭素排出の削減が強く求められ、自動車、飛行機等において石油系燃料の使用を制限する動きもある。このような背景からバイオマスの液体燃料化(BTL:Biomass To Liquid)が求められている。BTLは水素と一酸化炭素を適正な比率で反応させる必要があるので、水素の一酸化炭素に対するモル比(H
2/CO)が目標値である合成ガスを容易に生成する方法が求められている。
特許文献1には、バイオマスを糖化処理して糖化液を生成し、この糖化液をメタン発酵処理してメタン発酵バイオガスを生成し、このメタン発酵バイオガスから水蒸気改質法や部分酸化法等を用いて水素と一酸化炭素を主成分とする合成ガスを生成し、この合成ガスをFT合成処理してFT合成油を生成することが記載されている。
特許文献2には、バイオマス原料から熱分解ガスを生成する熱分解炉と、熱分解ガスからH
2ガスとCOガスを別個に選択分離するガス分離器と、そのH
2ガスとCOガスを各々別個に貯蔵する貯蔵タンクと、各ガスを一定の流量比に保つ弁及び調節装置と、このガスを重合反応させる触媒反応器を有する液状炭化水素を合成する液状油製造装置が記載されている。
特許文献3には、水素及び一酸化炭素を含む混合ガスを水素分離膜に接触させて、前記水素を分離する水素分離工程と、前記水素分離膜に接触した後のオフガスを一酸化炭素分離膜に接触させて、前記一酸化炭素を分離する一酸化炭素分離工程と、を有する、ガス分離方法が記載されている。
特許文献4には、バイオマス原料を熱分解してバイオマスガスとする熱分解装置と、バイオマスガスを精製する精製装置と、精製したバイオマスガスを炭化水素合成触媒の存在下で炭化水素オイルとする炭化水素合成装置とから構成された
BTL製造システムにおいて、精製装置と炭化水素合成装置との間に、水素ガスを計量添加する水素供給系と、炭素と水素とのモル比が所定値となるように、バイオマスガスと水素を混合調整する調整装置とを備えることが記載されている。
特許文献5には、廃棄物やバイオマスをガス化処理して生成されるガス化可燃ガスは、原料の入荷が不安定であるので、ガス化可燃ガスを製鉄所で発生する副生可燃ガスと混合して、ボイラーや加熱炉の燃料ガスとして使用することが記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.第1の
参考例の構成
第1の
参考例に係る低炭素FT合成油製造用合成ガス製造システム1は、
図1に示すように、COリッチガス化ガス供給装置10と、H
2リッチ副生ガス供給装置20と、混合装置30と、水素分離装置40と、一酸化炭素分離装置50と、調合装置60とによって構成されている。
【0010】
低炭素FT合成油製造用合成ガス製造システム1の最終段となる調合装置60には、公知のFT合成油製造装置2が接続されている。FT合成油製造装置2は、供給された一酸化炭素に対する水素のモル比が目標値である合成ガスから公知のフィッシャー・トロプシュ法(FT法:Fischer−Tropsch process)を用いて触媒反応で所望のFT合成油(液体炭化水素)を生成する。FT合成油製造装置2は公知であり、各種の触媒が充填された反応器に組成(H
2/COモル比)を調整した合成ガスを導入し、化学式(1)に示す合成反応を行わせてFT合成油(液体炭化水素)を生成する。
(2n+1)H
2 +nCO → CnH
2n+2 +nH
2O (1)
式(1)より、水素(H
2)と一酸化炭素(CO)とを適正な比率で反応させる必要があり、調合装置60では、水素の一酸化炭素に対するモル比が式(1)から求められる目標値となるように調合される。FT合成油の生成において、化学式(1)のnは、5から20であるので、目標値はほぼ2である。
【0011】
COリッチガス化ガス供給装置10は、ガス化ガスを生成するガス化炉および生成されたガス化ガスを精製する精製装置を含む。ガス化炉は、燃料として間伐材、廃木材、稲わら、麦わら、もみがら、コーン等のバイオマス、好ましくは、木質バイオマスを供給されると、バイオマス由来ガス化ガス100%のガス化ガスを生成する。バイオマス由来ガス化ガスは一酸化炭素リッチなガスであり、組成の一例を容積%で示すと、一酸化炭素(CO)48%、水素(H
2)16%、メタン(CH
4)16%、炭酸ガス(CO
2)13%、炭化水素(CmHn)7%である。
ガス化炉は、バイオマスと石炭との混合物を混合燃料として供給されると、バイオマス由来ガス化ガスと石炭由来ガス化ガスとが混ざった混合燃料由来のガス化ガスを生成する。さらに、ガス化炉は、バイオマスと廃プラスチック(塩化ビニールを含まない)との混合物を混合燃料として供給されると、バイオマス由来ガス化ガスと廃プラスチック由来ガス化ガスとが混ざった混合燃料由来のガス化ガスを生成する。このように、ガス化炉は、供給される燃料に応じて、少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含み一酸化炭素の含有率(割合)が高い、一酸化炭素リッチな少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスを生成する。そして、COリッチガス化ガス供給装置10は、混合装置30に接続され、ガス化炉で生成された少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスを精製装置で精製して混合装置30に供給する。
少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスをガス化炉で生成し、精製装置で精製した少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスをガスホルダーに貯蔵するようにした場合は、COリッチガス化ガス供給装置10は、一酸化炭素リッチな少なくともバイオマス由来ガス化ガス含むガス化ガスを貯蔵し、混合装置30に供給するガスホルダーであってもよい。
【0012】
H
2リッチ副生ガス供給装置20は混合装置30に接続され、コークス炉ガスおよび製油所ガスの少なくとも一方からなる水素リッチな副生ガスを混合装置30に供給する。水素リッチな副生ガスは、水素の含有率(割合)が高く、水素を提供可能なガスである。コークス炉ガスは、コークス製造に伴い発生する水素リッチな乾留ガスである。製油所ガスは原油の精製プロセスで発生する水素リッチなオフガスである。水素リッチな副生ガスの一つであるコークス炉ガスの組成の一例を容積%で示すと、一酸化炭素(CO)7%、水素(H
2)56%、メタン(CH
4)27%、炭酸ガス(CO2)7%、炭化水素(CmHn)3%である。コークス炉ガスおよび製油所ガスの少なくとも一方からなる水素リッチな副生ガスをガスホルダーに貯蔵するようにした場合は、H
2リッチ副生ガス供給装置20は、水素リッチな副生ガスを貯蔵し、混合装置30に供給するガスホルダーであってもよい。
【0013】
混合装置30は、COリッチガス化ガス供給装置10から一酸化炭素リッチな少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスを供給されるとともに、H
2リッチ副生ガス供給装置20から水素リッチな副生ガスが供給され、少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスと水素リッチな副生ガスとを混合し、混合ガス(第1混合ガス)を生成するように構成されている。このように、混合装置30は、少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガス(一酸化炭素リッチな燃料ガス)と水素リッチな副生ガス(水素を提供可能な燃料ガス)との2種類の燃料ガスを供給される。
【0014】
低炭素FT合成油製造用合成ガス製造システム1で製造する合成ガスは、一酸化炭素に対する水素のモル比を目標値のほぼ2とするガスであるので、混合装置30は、少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスと水素リッチな副生ガスとを、標準状態での容量比が、少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスおよび水素リッチな副生ガスに含まれる一酸化炭素の割合および水素の割合と、目標値とに基づいて設定された値となるように混合する。少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスは一酸化炭素リッチであるので、水素リッチな合成ガスの製造において水素を補充するために水素リッチな副生ガスを混合する。
【0015】
例えば、上述の組成のバイオマス由来ガス化ガスと水素リッチな副生ガスとを2種類の燃料ガスとすると、標準状態でバイオマス由来ガス化ガスに含まれる一酸化炭素の割合は48%、水素の割合は16%であり、水素リッチな副生ガスに含まれる一酸化炭素の割合は7%、水素の割合は56%である。従って、バイオマス由来ガス化ガスと水素リッチな副生ガスとを容量比(1:x)で混合すると、混合ガスに含まれる一酸化炭素の割合は、0.48+0.07xとなり、水素の割合は、0.16+0.56xとなる。混合ガスに含まれる一酸化炭素に対する水素の容量比を目標値、例えば2とするための水素リッチな副生ガスの容量は式(2)から、
(0.16+0.56x)/(0.48+0.07x)=2 (2)
x=80/42≒2となる。
従って、例えば、H
2リッチ副生ガス供給装置20から混合装置30に供給される水素リッチな副生ガスの量を、COリッチガス化ガス供給装置10から混合装置30に供給されるバイオマス由来ガス化ガスの量の2倍にして混合装置30で混合すると、バイオマス由来ガス化ガスおよび水素リッチな副生ガスを無駄なく利用することができる。
上記例では、バイオマス由来ガス化ガスと水素リッチな副生ガスとを、標準状態での容量比が、バイオマス由来ガス化ガスおよび水素リッチな副生ガスに含まれる一酸化炭素の割合(48%と7%)および水素の割合(16%と56%)と、目標値(2)とに基づいて設定された値となるように混合している。
これにより、一酸化炭素リッチな少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスに水素リッチな副生ガスを混合された混合ガスは水素の含有量が多くなり、低炭素FT合成油を製造するのに適した合成ガス製造の歩留まりを向上することができる。
【0016】
水素分離装置40は、混合装置30に接続され、供給された第1混合ガスを、水素と第1オフガスとに分離する。水素分離装置40は、公知の圧力変動吸着法(PSA:Pressure Swing Adsorption)、水素分離高分子膜、水素分離金属膜、深冷分離法等を用いたものでよい。
【0017】
一酸化炭素分離装置50は、水素分離装置40に接続され、供給された第1オフガスを一酸化炭素と第2オフガスとに分離する。一酸化炭素分離装置30は、公知の圧力変動吸着法(PSA)、一酸化炭素分離高分子膜、一酸化炭素分離金属膜、深冷分離法等を用いたものでよい。
【0018】
調合装置60は、水素分離装置40と一酸化炭素分離装置50とに接続され、水素分離装置40から供給される水素と一酸化炭素分離装置50から供給される一酸化炭素の容量を同温、同圧でそれぞれ計測し、一酸化炭素の容量に対する水素の容量が、目標値になるように調合するものである。これにより、水素分離装置40で分離された水素と一酸化炭素分離装置50で分離された一酸化炭素は、一酸化炭素に対する水素のモル比が目標値になるように調合されて合成ガスとなる。
【0019】
一酸化炭素分離装置50には、オフガス利用装置3が接続され、一酸化炭素ガス分離装置50から供給された第2オフガスを燃料として利用する。オフガス利用装置3は、ボイラーの燃焼炉等である。
【0020】
2.第1の
参考例の作動
COリッチガス化ガス供給装置10は、一酸化炭素リッチな少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスを混合装置30に供給し、H
2リッチ副生ガス供給装置20は水素リッチな副生ガスを混合装置30に供給する。混合装置30は少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスと水素リッチな副生ガスとを混合して第1混合ガスを生成し、水素分離装置40に供給する。水素分離装置40は供給された第1混合ガスを水素と第1オフガスに分離し、第1オフガスを一酸化炭素分離装置50に、水素を調合装置60に供給する。一酸化炭素分離装置50は供給された第1オフガスを一酸化炭素と第2オフガスに分離し、一酸化炭素を調合装置60に供給する。調合装置60は、供給された水素および一酸化炭素を水素の一酸化炭素に対するモル比が目標値になるように調合して、低炭素FT合成油の製造に適した合成ガスにする。
【0021】
FT合成油製造装置2は、低炭素FT合成油製造用合成ガス製造システム1から供給された合成ガスからFT合成油を生成する。オフガス利用装置3は、供給された第2オフガスを燃焼して燃焼熱を利用する。これにより、2種類の燃料ガスを有効に利用することができる。
【0022】
3.第1の
参考例の効果
第1の
参考例に係る低炭素FT合成油製造用合成ガス製造システム1によれば、2種類の燃料ガスである一酸化炭素リッチな少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスと水素リッチな副生ガスとの標準状態での容量比を、前記2種類の燃料ガスに含まれる一酸化炭素の割合および水素の割合と、製造する合成ガスの一酸化炭素に対する水素のモル比の目標値とに基づいて設定された値とするので、前記2種類の燃料ガスを無駄なく利用することができる。さらに、前記2種類の燃料ガスの量が必要以上に増大することがなく、システム自体、特に水素分離装置や一酸化炭素分離装置の大型化および設置費やランニングコストの増大を防止することができる。また、少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスの製造は、炭酸ガスの排出量が少ないので、炭酸ガス排出を削減して低炭素FT合成油製造用合成ガスを製造することができる。
【0023】
4.第
1の実施形態の構成
第
1の実施形態は、
図2に示すように、水素分離装置40がH
2リッチ副生ガス供給装置20と混合装置30との間に接続され、混合装置30が一酸化炭素分離装置50に直接接続された点、およびCOリッチガス化ガス供給装置10から混合装置30に供給される少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスとH
2リッチ副生ガス供給装置20から水素分離装置40に供給される水素リッチな副生ガスとの標準状態での容量比を、前記少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスおよび前記水素リッチな副生ガスに含まれる一酸化炭素の割合と、前記水素リッチな副生ガスに含まれる水素の割合と、前記目標値とに基づいて設定する点が第1
参考例と異なる。従って、第1の
参考例と同じ構成要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0024】
H
2リッチ副生ガス供給装置20が水素分離装置40に接続され、水素リッチな副生ガスを水素分離装置40に供給する。水素分離装置40は調合装置60に接続され、分離した水素を調合装置60に供給するとともに、第3オフガスを混合装置30に供給する。COリッチガス化ガス供給装置10は混合装置30に接続され、一酸化炭素リッチな少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスを混合装置30に供給する。混合装置30は、少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスと第3オフガスとを混合して第2混合ガスとし、一酸化炭素分離装置50に供給する。
【0025】
第2混合ガスには、少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスに含まれる水素が含まれ、第2混合ガスに含まれる水素は一酸化炭素分離装置50から第4オフガスに含まれてオフガス利用装置3に送出され、調合装置60に供給されない。従って、少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスおよび水素リッチな副生ガスに含まれる一酸化炭素は、調合装置60に供給されるが、少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスに含まれる水素は調合装置60に供給されない。従って、2種類の燃料ガスとして供給される少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスと水素リッチな副生ガスの量は、標準状態での容量比が少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスおよび前記水素リッチな副生ガスに含まれる一酸化炭素の割合と、水素リッチな副生ガスに含まれる水素の割合と、前記目標値とに基づいて設定された値となるように設定する。
例えば、2種類の燃料ガスとして前述の組成と同じバイオマス由来ガス化ガスおよび水素リッチな副生ガスを用いると、第2混合ガスに含まれる一酸化炭素に対する水素の容量比を目標値、例えば2とするための水素リッチな副生ガスの容量xは、バイオマス由来ガス化ガスの容量を1とすると、式(3)から、
(0.56x)/(0.48+0.07x)=2 (3)
x=96/42≒2.3となる。
従って、例えば、H
2リッチ副生ガス供給装置20から水素分離装置40に供給される水素リッチな副生ガスの量を、COリッチガス化ガス供給装置10から混合装置30に供給されるバイオマス由来ガス化ガスの量の2.3倍にすると、バイオマス由来ガス化ガスおよび水素リッチな副生ガスを無駄なく利用することができる。
【0026】
5.第
1の実施形態の効果
第
1の実施形態では、第1の
参考例が奏する効果に加え、水素分離装置40には水素リッチな副生ガスのみが供給されるので、水素分離装置を小型化し、設置費やランニングコストを低減することができる。
【0027】
6.第2の実施形態の構成
第
2の実施形態は、
図3に示すように、一酸化炭素分離装置50がCOリッチガス化ガス供給装置10と混合装置30との間に接続され、水素分離装置40にオフガス利用装置4が接続された点、およびCOリッチガス化ガス供給装置10から一酸化炭素分離装置50に供給される前記少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスとH
2リッチ副生ガス供給装置20から混合装置30に供給される前記水素リッチな副生ガスとの標準状態での容量比を、少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスに含まれる一酸化炭素の割合と、少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスおよび前記水素リッチな副生ガスに含まれる水素の割合と、前記目標値とに基づいて設定する点が第1
の参考例と異なる。従って、第1の
参考例と同じ構成要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0028】
COリッチガス化ガス供給装置10が一酸化炭素分離装置50に接続され、一酸化炭素リッチな少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスを一酸化炭素分離装置50に供給する。一酸化炭素分離装置50は、分離した一酸化炭素を調合装置60に供給し、第5オフガスを混合装置に供給する。混合装置30は、H
2リッチ副生ガス供給装置20から供給された水素リッチな副生ガスと第5オフガスとを混合して第3混合ガスとし、水素分離装置40に供給する。水素分離装置40は、第3混合ガスを供給され、分離した水素を調合装置60の供給し、第6オフガスをオフガス利用装置4に供給する。オフガス利用装置4は、供給された第6オフガスを燃焼して燃焼熱を利用する。これにより、2種類の燃料ガスを有効に利用することができる。
【0029】
第3混合ガスには、水素リッチな副生ガスに含まれる一酸化炭素が含まれ、第3混合ガスに含まれる一酸化炭素は水素分離装置40から第6オフガスに含まれてオフガス利用装置4に送出され、調合装置60に供給されない。従って、少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスおよび水素リッチな副生ガスに含まれる水素は、調合装置60に供給されるが、水素リッチな副生ガスに含まれる一酸化炭素は調合装置60に供給されない。
従って、2種類の燃料ガスとして供給する少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスと水素リッチな副生ガスの量は、標準状態での容量比が少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスに含まれる一酸化炭素の割合と、少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスおよび水素リッチな副生ガスに含まれる水素の割合と、前記目標値とに基づいて設定された値となるように設定する。
例えば、2種類の燃料ガスとして前述の組成と同じバイオマス由来ガス化ガスおよび水素リッチな副生ガスを用いると、合成ガスに含まれる一酸化炭素に対する水素の容量比を目標値、例えば2とするための水素リッチな副生ガスの容量xは、バイオマス由来ガス化ガスの容量を1とすると、次式(4)から、
(0.16+0.56x)/(0.48)=2 (4)
x=0.80/0.56≒1.4となる。
従って、例えば、H
2リッチ副生ガス供給装置20から混合装置30に供給される水素リッチな副生ガスの量を、COリッチガス化ガス供給装置10から一酸化炭素分離装置50に供給されるバイオマス由来ガス化ガスの量の1.4倍にすると、バイオマス由来ガス化ガスおよび水素リッチな副生ガスを無駄なく利用することができる。
【0030】
7.第
2の実施形態の効果
第
2の実施形態では、第1の
参考例が奏する効果に加え、一酸化炭素分離装置50には少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスのみが供給されるので、一酸化炭素分離装置50を小型化し、設置費やランニングコストを低減することができる。
【0031】
8.第
2の参考例の構成
第
2の参考例は、
図4に示すように、2種類の燃料ガスとして少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスと水素とを用いる点が第1の
参考例と異なるので、第1の
参考例と同じ構成要素には同一の参照番号を付して、この相違点を中心に説明する。この場合、水素が、水素を提供可能な燃料ガスであり、その組成は水素の割合が100%である。
【0032】
水素供給装置25が調合装置60に接続され、水素を調合装置60に供給する。水素供給装置25から供給される水素としては、ソーダ電解水素、水電解水素、天然ガス改質水素、バイオガス改質水素、CO
2フリー水素のいずれか一種又は複数種を混合したものでもよい。一酸化炭素分離装置50は、COリッチガス化ガス供給装置10から供給された一酸化炭素リッチな少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスから一酸化炭素を分離して調合装置60に供給し、第7オフガスをオフガス利用装置3に供給する。調合装置60は、水素供給装置25から供給された水素と一酸化炭素分離装置50から供給された一酸化炭素とを一酸化炭素に対する水素のモル比が目標値になるように調合して合成ガスにする。
【0033】
2種類の燃料ガスとして供給される少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスと水素ガスの量は、標準状態での容量比が少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスに含まれる一酸化炭素の割合と、燃料ガスとして供給される水素に含まれる水素の割合と、前記目標値とに基づいて設定された値となるように設定する。
例えば、前述の組成と同じバイオマス由来ガス化ガスおよび水素を用い、バイオマス由来ガス化ガスの容量を1とすると、混合ガスに含まれる一酸化炭素に対する水素の容量比を目標値、例えば2とするための水素の容量xは、式(5)から、
x/0.48=2 (5)
x=0.48×2=0.96となる。
従って、例えば、水素供給装置25から調合装置60に供給される水素の量を、COリッチガス化ガス供給装置10から一酸化炭素分離装置50に供給されるバイオマス由来ガス化ガスの量とほぼ同じにすると、バイオマス由来ガス化ガスおよび水素を無駄なく利用することができる。
【0034】
9.第
2の参考例の効果
第
2の参考例では、第1の
参考例が奏する効果に加え、一酸化炭素分離装置50には少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスのみが供給されるので、一酸化炭素分離装置50を小型化できるとともに水素分離装置が不要となるので、設置費やランニングコストを低減することができる。
【0035】
10.第
3の参考例の構成
第
3の参考例は、
図5に示すように、2種類の燃料ガスとして少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスと水蒸気とを用いた点が第1の
参考例とことなるので、第1の
参考例と同じ構成要素には同一の参照番号を付してこの相違点を中心に説明する。この場合、水蒸気が水素を提供可能な燃料ガスである。
【0036】
COリッチガス化ガス供給装置10は分配装置70に接続され、一酸化炭素リッチな少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスを分配装置70に供給する。水蒸気供給装置27が、一酸化炭素変成装置80に接続され、水蒸気を一酸化炭素変成装置80に供給する。分配装置70は一酸化炭素分離装置50と一酸化炭素変成装置80とに接続され、供給された少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスを所定割合に分配し、分配した少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスの一方部分を一酸化炭素分離装置50に供給し、他方部分を一酸化炭素変成装置80に供給する。一酸化炭素分離装置50は供給された少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスの他方部分を一酸化炭素と第8オフガスとに分離し、分離した一酸化炭素を調合装置60に供給し、第8オフガスをオフガス利用装置3に供給する。
【0037】
一酸化炭素変成装置80は、分配装置70から供給されたた少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスの他方部分に含まれる一酸化炭素と水蒸気供給装置27から供給された水蒸気とを触媒の存在下で化学式(2)に示すように発熱反応させて水素と炭酸ガスからなる水素リッチな変成ガス含有ガスを生成する。
CO+H
2O → H
2+CO
2 (発熱反応) (2)
一酸化炭素変成装置80は水素分離装置40に接続され、生成した水素リッチな変成ガス含有ガスを水素分離装置40に供給する。一酸化炭素変成装置80は放熱装置81を備え、発熱反応で生じた熱を放熱装置81で放熱する。水素分離装置40は調合装置60とオフガス利用装置4とに接続され、分離した水素を調合装置60に供給し、第9オフガスをオフガス利用装置4に供給する。オフガス利用装置3、4をボイラーの燃焼炉とし、このボイラーで生成した水蒸気を水蒸気供給装置27に供給すると炭酸ガスの発生を抑制することができる。その他、FT合成油製造装置2でのFT合成(発熱反応)の排熱、COリッチガス化ガス供給装置10での排熱を利用可能である。
【0038】
2種類の燃料ガスとして供給される少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスと水蒸気の量は、標準状態での容量比が少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスに含まれる一酸化炭素の割合および水素の割合と、分配装置70で分配されたバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスの一方部分に対する他方部分の分配比pと、前記目標値とに基づいて設定された値となるように設定する。例えば、2種類の燃料ガスとして前述の組成と同じバイオマス由来ガス化ガスおよび水蒸気を用い、目標値を2とした場合について、分配比pを算出する。一酸化炭素変成装置80に分配装置70から供給される一酸化炭素の量と水蒸気供給装置27から供給される水蒸気の量は化学式(2)から同じである。COリッチガス化ガス供給装置10から供給されるバイオマス由来ガス化ガスの容量を1とすると、一酸化炭素分離装置50から調合装置60に供給される一酸化炭素の量は[0.48×1/(1+p)]であり、水素分離装置40から調合装置60に供給される水素の量は、バイオマス由来ガス化ガスの他方部分に含まれる一酸化炭素から変成された水素の量[0.48×p/(1+p)]と他方部分に含まれる水素の量[0.16×p/(1+p)]である。従って、分配比pは、次式(5)から、
[0.48×p/(1+p)+0.16×p/(1+p)]/[0.48×1/(1+p)]=2 (5)
p=0.96/ 0.64=1.5となる。
これにより、例えば、COリッチガス化ガス供給装置10から供給されるバイオマス由来ガス化ガスを、一方部分に対する他方部分の分配比が1.5となるように分配装置70で分配し、水蒸気供給装置80から一酸化炭素変成装置80に供給される標準状態に換算した水蒸気の量を、COリッチガス化ガス供給装置10から供給されるバイオマス由来ガス化ガスの量のp/(1+p)=0.6倍にすると、バイオマス由来ガス化ガスおよび水蒸気を無駄なく利用することができる。
【0039】
11.第
3の参考例の効果
第
3の参考例では、第1の
参考例が奏する効果に加え、一酸化炭素分離装置50には少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスのみが供給されるので、一酸化炭素分離装置50を小型化できるので、設置費やランニングコストを低減することができる。さらに、2種類の燃料ガスがともに炭酸ガスの排出量が少ないので、炭酸ガス排出を極めて削減して低炭素FT合成油製造用合成ガスを製造することができる。
【0040】
12.第
3の実施形態の構成
第
3の実施形態は、
図6に示すように、一酸化炭素分離装置50に混合装置30をオフガス利用装置3に代えて接続し、混合装置30を一酸化炭素変成装置80と水素分離装置40との間に接続した点のみが第
3の参考例と異なるので、相違点のみについて説明する。
【0041】
一酸化炭素分離装置50は、分配装置70から供給された一酸化炭素リッチな少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスの一方部分から一酸化炭素を分離し、分離した一酸化炭素を調合装置60に供給し、第8オフガスを混合装置30に供給する。混合装置30は、一酸化炭素変成装置80から供給された変成ガス含有ガスと一酸化炭素分離装置50から供給された第8オフガスとを混合して第4混合ガスを生成して水素分離装置40に供給する。水素分離装置40は第4混合ガスから水素を分離して調合装置60に供給し、第10オフガスをオフガス利用装置4に供給する。
【0042】
第
3の実施形態において、例えば、2種類の燃料ガスとして前述の組成と同じバイオマス由来ガス化ガスおよび水蒸気を用い、目標値を2とした場合について、分配装置70による分配比pを算出する。バイオマス由来ガス化ガスの量を1とすると、分配装置70によって分配されたバイオマス由来ガス化ガスの一方部分に含まれる一酸化炭素の量は、0.48×1/(1+p)であり、一酸化炭素分離装置50で分離されて調合装置60に供給される。一方部分に含まれる水素の量は、0.16×p/(1+p)であり、第8オフガスに含まれて混合装置30に供給される。分配装置70によって分配されたバイオマス由来ガス化ガスの他方部分に含まれる一酸化炭素の量は、0.48×p/(1+p)であり、一酸化炭素変成装置80で同量の水蒸気と変成反応して同量の水素を含む水素リッチな変成ガス含有ガスとなる。変成ガス含有ガスには、バイオマス由来ガス化ガスの他方部分に含まれる水素が含まれるので、第8オフガスと変成ガス含有ガスとを混合した第4混合ガスには、[0.16+0.48×p/(1+p)]の水素が含まれており、この水素は水素分離装置40で分離されて調合装置60に供給される。従って、分配比pは、次式(5)から、
[0.16+0.48×p/(1+p)]/[0.48×1/(1+p)]=2 (5)
p=0.80/0.64=1.25となる。
これにより、例えば、COリッチガス化ガス供給装置10から供給されるバイオマス由来ガス化ガスを、一方部分に対する他方部分の分配比が1.25となるように分配装置70で分配し水蒸気供給装置27から一酸化炭素変成装置80に供給される標準状態に換算した水蒸気の量を、COリッチガス化ガス供給装置10から供給されるバイオマス由来ガス化ガスの量のp/(1+p)=0.56倍にすると、バイオマス由来ガス化ガスおよび水蒸気を無駄なく利用することができる。
【0043】
11.第
3の実施形態の効果
第
3の実施形態では、第
3の
参考例が奏する効果に加え、少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスに含まれる炭素と水素の全てを合成ガスの製造に使用することができる。
【0044】
12.第
4の参考例の構成
第
4の参考例は、
図7に示すように、2種類の燃料ガスとして一酸化炭素リッチな副生ガスと炭酸ガスフリー水素とを用いる点が第
2の参考例と異なるので、第
2の参考例と同じ構成要素には同一の参照番号を付して、この相違点を中心に説明する。この場合、炭酸ガスフリー水素が、水素を提供可能な燃料ガスであり、その組成は水素の割合が100%である。
炭酸ガスフリー水素は、炭酸ガスの排出量を低減して生成した水素であり、CCS付石炭ガス化ガス由来水素、再生可能電力利用水電解水素、バイオマス由来水素、原子力水素等のいずれか一種又は複数種を混合したものでよい。CCS付石炭ガス化ガス由来水素は、CCS(Carbon−Dioxide Capture and Storage)付石炭ガス化ガス装置によって製造された石炭ガス化ガスから水素を分離して生成した水素である。再生可能電力利用水電解水素は、太陽光発電、風力発電、地熱発電、波力発電、潮力発電等によって得られた電力を使用して水を電気分解して生成した水素である。バイオマス由来水素は、メタン発酵で得たバイオガスを改質して生成した水素、或はバイオマスガス化ガスの一酸化炭素を変成反応させて生成した水素である。原子力水素は、原子力電力で水を電気分解して生成した水素、 原子炉熱によって水を熱化学分解して生成した水素等がある。
一酸化炭素リッチな副生ガスとしては、炭酸ガス排出係数の大きい、転炉ガス、高炉ガス等を使用する。転炉ガスは、転炉における鉄の精錬工程で生じる副生ガスで、一酸化炭素が約70%ほど含まれる。高炉ガスは、高炉で鉄鉱石を還元して銑鉄を製造する際に生じる副生ガスで、一酸化炭素が約25%含まれる。
【0045】
COリッチ副生ガス供給装置15が一酸化炭素分離装置50に接続され、一酸化炭素の含有率(割合)が高い一酸化炭素リッチな副生ガスを一酸化炭素分離装置50に供給する。一酸化炭素分離装置50は、COリッチ副生ガス供給装置15から供給された一酸化炭素リッチな副生ガスから一酸化炭素を分離して調合装置60に供給し、第11オフガスをオフガス利用装置3に供給する。第11オフガスをフレア処理して無害化し、外部に排出してもよい。炭酸ガスフリー水素供給装置29が調合装置60に接続され、炭酸ガスフリー水素を調合装置60に供給する。
【0046】
2種類の燃料ガスとして供給される一酸化炭素リッチな副生ガスと炭酸ガスフリー水素ガスの量は、第
2の参考例と同様に標準状態での容量比が一酸化炭素リッチな副生ガスに含まれる一酸化炭素の割合と、燃料ガスとしての炭酸ガスフリー水素に含まれる水素の割合と、前記目標値とに基づいて設定された値となるように設定する。
【0047】
13.第
4の参考例の効果
第
4の参考例では、第1の
参考例が奏する効果に加え、一酸化炭素分離装置50には一酸化炭素リッチな副生ガスのみが供給されるので、一酸化炭素分離装置50を小型化できる。さらに、水素分離装置が不要となるので、設置費やランニングコストを低減することができる。一方の燃料ガスとして一酸化炭素リッチな少なくともバイオマス由来ガス化ガスを含むガス化ガスに代えて一酸化炭素リッチな副生ガスを用いる点では、第1の実施例より炭酸ガス排出が多くなるが、他方の燃料ガスとして炭酸ガスフリー水素を用いるので、炭酸ガス排出を低減して低炭素FT合成油製造用合成ガスを製造することができる。
低炭素FT合成油製造用合成ガス製造システムにおいて、一酸化炭素リッチな燃料ガスと水素を提供可能な燃料ガスとを2種類の燃料ガスとし、2種類の燃料ガスから一酸化炭素を分離するとともに水素を確保し、前記分離された一酸化炭素と前記確保された水素とを一酸化炭素に対する水素のモル比が目標値になるように調合して合成ガスにする調合装置を設け、前記2種類の燃料ガスの標準状態での容量比を、前記一酸化炭素リッチな燃料ガスおよび水素を提供可能な燃料ガスに含まれる一酸化炭素の割合および水素の割合と、前記目標値とに基づいて設定する。