特許第6552032号(P6552032)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6552032内容物放出用のジョイント伸縮構造ならびにこのジョイント伸縮構造を備えたポンプ式製品およびエアゾール式製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552032
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】内容物放出用のジョイント伸縮構造ならびにこのジョイント伸縮構造を備えたポンプ式製品およびエアゾール式製品
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/00 20060101AFI20190722BHJP
   B65D 83/30 20060101ALI20190722BHJP
   B65D 47/34 20060101ALI20190722BHJP
   B05B 9/04 20060101ALN20190722BHJP
【FI】
   B65D83/00 K
   B65D83/30 200
   B65D47/34 100
   !B05B9/04
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-252754(P2014-252754)
(22)【出願日】2014年12月15日
(65)【公開番号】特開2016-113174(P2016-113174A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144463
【氏名又は名称】株式会社三谷バルブ
(74)【代理人】
【識別番号】100097593
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 治幸
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 敏夫
【審査官】 田中 佑果
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/126366(WO,A1)
【文献】 特開2004−218556(JP,A)
【文献】 特開平08−229491(JP,A)
【文献】 特開2014−001008(JP,A)
【文献】 特開2000−296351(JP,A)
【文献】 特表2014−509258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
B65D 47/34
B65D 83/30
B05B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁機能を持つステムと連通して放出対象内容物が通過する上流側通路域および内容物放出操作面備えた筒状のスパウト側に、前記上流側通路域からその下流の放出孔部へ連続する筒状延長部が、その前進した形の伸状態と後退した形の縮状態との間をシフトする直線状の伸縮態様で取り付けられ内容物放出用のジョイント伸縮構造において、
前記筒状のスパウト側は、
前記筒状延長部の伸縮方向への移動を案内するガイド部と、
前記ガイド部の案内作用にともない、前記伸状態または前記縮状態の任意の一方の位置にシフトした状態での前記筒状延長部に対するその長手方向軸回りの回動操作を許容し、かつ、この回動操作後の周方向位置での前記筒状延長部との当接作用により前記ガイド部から周方向へ離間した位置における前記筒状延長部の前記一方に対する他方の位置へのシフト動作を阻止する移動阻止部と、を備え、
前記筒状延長部は、
前記伸縮方向に沿う形状であって前記ガイド部に案内される被ガイド部と、
前記移動阻止部と当接して前記伸状態から前記縮状態へのシフト動作が阻止される第1の移動被阻止部と、
前記移動阻止部と当接して前記縮状態から前記伸状態へのシフト動作が阻止される第2の移動被阻止部と、を備え、
弾性作用により前記伸状態に付勢されている、
ことを特徴とする内容物放出用のジョイント伸縮構造。
【請求項2】
前記被ガイド部および前記第2の移動被阻止部は、
前記筒状延長部の周面部分に形成された共通部材である、
ことを特徴とする請求項1記載の内容物放出用のジョイント伸縮構造。
【請求項3】
前記筒状のスパウト側は、
前記上流側通路域を有するスパウトと、
前記ガイド部としての前後方向溝状部が形成され、かつ、前記移動阻止部として作用する態様で前記スパウトの前端側に取り付けられた筒状のスパウトブッシュと、を備え、
前記筒状延長部は、
前記被ガイド部および前記第2の移動被阻止部のそれぞれとして作用する前後方向のリブ状部を備え、
前記リブ状部は、
前記前後方向溝状部に案内され、前記スパウトブッシュの後端部分に当接することにより前記縮状態から前記伸状態への移動が阻止される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の内容物放出用のジョイント伸縮構造。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれかに記載の内容物放出用のジョイント伸縮構造を備え、かつ、放出対象内容物を収容した、
ことを特徴とするポンプ式製品。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれかに記載の内容物放出用のジョイント伸縮構造を備え、かつ、噴射剤および放出対象内容物を収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物放出用のジョイント伸縮構造(以下、必要に応じて単に「ジョイント伸縮構造」という。)などに関する。
【0002】
特に容器本体内容物を外部空間域に放出するポンプ式製品やエアゾール式製品の流出側に取り付けられて、当該流出側からの内容物放出通路域の長さをその伸状態と縮状態とに選択できるようにしたジョイント伸縮構造などに関する。
【0003】
外部空間域への内容物放出機能を備えた各種のポンプ式製品やエアゾール式製品の場合、その使用環境(例えば隙間部分への内容物放出など)によっては、利用者の放出操作部から内容物放出口までの離間状態を簡単に変更できることが望ましい。
【0004】
本発明は、このような要請に応えるべく、ポンプ式製品やエアゾール式製品の流出側通路であるスパウトにそれと連続する態様のジョイント伸縮構造を設定し、その伸縮操作により当該スパウトに対する伸状態と縮状態とを選択できるようにしたものである。
【0005】
また、このスパウトに対する伸状態と縮状態との選択に加えて当該選択後の伸縮状態をロックし、これによりジョイントの伸状態または縮状態の設定が不用意に変更されないようにしている。
【0006】
本明細書では必要に応じて、内容物放出用のジョイント伸縮構造の長手方向における放出口側(図1図5の各(a)の左側)を「前」といい、その反対側(同じく各(a)の右側を「後」という。また、この前後方向(図1図5の各(a)の左右方向)を「横」とし、同じく各(a)の上下方向を「縦」とする。
【背景技術】
【0007】
従来、エアゾール式製品の噴出口(本発明のスパウト流出部分に相当)に筒体からなる伸縮チューブ機構(本発明のジョイント機構に相当)を取り付けて、その伸状態と縮状態とが設定されるようにしたエアゾール噴射装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−296351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この従来の、噴出口に続く内容物通路域の筒体からなる伸縮チューブ機構の長さを調整するエアゾール噴射装置の場合、その伸縮の程度は任意に設定可能である。
【0010】
そして、伸状態または縮状態の伸縮チューブがその位置に積極的にロックされる構造をとっていないため、当該伸縮チューブの設定位置が不用意に変化してしまうという問題点があった。
【0011】
例えば特許文献1の図1の最長伸状態の伸縮チューブも利用者が不用意に図示右方向に押したりすると、当該伸縮チューブは縮状態方向(図示右側方向)に移動してしまうという問題点があった。
【0012】
本発明では、特許文献1の場合と同じように、スパウト流出部分に内容物通路域延長用のジョイント伸縮構造が配設されることを前提とした上で、新たに、
(11)前後方向に移動可能な筒状ジョイントの伸状態および縮状態それぞれの前後方向位置がロックされ、
(12)この前後方向の例えば伸ロック状態が、筒状ジョイントの、自長手方向軸に対する回り方向(いわば自転方向)への単なる回動操作により解除され、
(13)このロック解除後の筒状ジョイントを前後方向に移動させることにより伸縮の逆状態、例えば縮状態に設定してから、筒状ジョイントの、自長手方向軸回りの単なる回動操作により当該逆状態の前後方向位置がロックされる、
ようにしている。
【0013】
なお、筒状ジョイントに上下,左右などの区別がある場合には、上記(12),(13)それぞれでのジョイント回動操作の時計・反時計方向は互いに逆となる。
【0014】
本発明は、このように筒状ジョイントの、その長手方向軸回りの回動操作と前後方向へのいわばスライド操作といったそれぞれ簡単な操作の連続した組合せに基づき、ジョイント伸縮構造の伸状態と縮状態との前後方向位置を選択的にロックしている。
【0015】
本発明はこれにより、スパウト流出部分に配設されたジョイント伸縮構造の伸縮各状態の簡単な設定操作を維持しつつ、設定済みの伸縮状態から不用意な前後方向への移動、すなわち設定済み状態から他の状態へのシフト動作の阻止化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)弁機能を持つステム(例えば後述のステム3)と連通して放出対象内容物が通過する上流側通路域(例えば後述の縦通路域4b,横通路域4c)および内容物放出操作面(例えば後述の操作面4a)備えた筒状のスパウト側(例えば後述のスパウト4,スパウトブッシュ5)に、前記上流側通路域からその下流の放出孔部(例えば後述の放出孔部6b)へ連続する筒状延長部(例えば後述の前筒状部6a,ピストン6d)が、その前進した形の伸状態と後退した形の縮状態との間をシフトする直線状の伸縮態様で取り付けられ内容物放出用のジョイント伸縮構造において、
前記筒状のスパウト側は、
前記筒状延長部の伸縮方向への移動を案内するガイド部(例えば後述の前後方向溝状部5c)と、
前記ガイド部の案内作用にともない、前記伸状態または前記縮状態の任意の一方の位置にシフトした状態での前記筒状延長部に対するその長手方向軸回りの回動操作を許容し、かつ、この回動操作後の周方向位置での前記筒状延長部との当接作用により前記ガイド部から周方向へ離間した位置における前記筒状延長部の前記一方に対する他方の位置へのシフト動作を阻止する移動阻止部(例えば後述のブッシュ筒状部5bの後端部分)と、を備え、
前記筒状延長部は、
前記伸縮方向に沿う形状であって前記ガイド部に案内される被ガイド部(例えば後述のリブ形状の被ガイド部6c)と、
前記移動阻止部と当接して前記伸状態から前記縮状態へのシフト動作が阻止される第1の移動被阻止部(例えば後述の環状段部6j)と、
前記移動阻止部と当接して前記縮状態から前記伸状態へのシフト動作が阻止される第2の移動被阻止部(例えば後述の被ガイド部6c)と、を備え、
弾性作用により前記伸状態に付勢されている、
構成態様のものを用いる。
(2)上記(1)において、
前記被ガイド部および前記第2の移動被阻止部は、
前記筒状延長部の周面部分に形成された共通部材である、
構成態様のものを用いる。
(3)上記(1),(2)において、
前記筒状のスパウト側は、
前記上流側通路域を有するスパウト(例えば後述のスパウト4)と、
前記ガイド部としての前後方向溝状部(例えば後述の前後方向溝状部5c)が形成され、かつ、前記移動阻止部として作用する態様で前記スパウトの前端部分に取り付けられた筒状のスパウトブッシュ(例えば後述のスパウトブッシュ5)と、を備え、
前記筒状延長部は、
前記被ガイド部および前記第2の移動被阻止部のそれぞれとして作用する前後方向のリブ状部(例えば後述のリブ形状の被ガイド部6c)を備え、
前記リブ状部は、
前記前後方向溝状部に案内され、前記スパウトブッシュの後端部分に当接することにより前記縮状態から前記伸状態への移動が阻止される
構成態様のものを用いる。
【0017】
このような構成からなる内容物放出用のジョイント伸縮構造ならびに当該ジョイント伸縮構造を備えたエアゾール式製品およびポンプ式製品を本発明の対象としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以上の課題解決手段により、
スパウト流出部分に配設されたジョイント伸縮構造の伸縮各状態の簡単な設定操作を維持しつつ、設定済みの伸縮状態から不用意な前後方向への移動、すなわち設定済み状態から他の状態へのシフト動作の阻止化を図ることができる、
といった効果を奏している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のジョイント伸縮構造の伸ロック状態を示す説明図であり、(a)は横断面を示し、(b)はスパウトブッシュに対するジョイント機構の回動位置を示している。
図2図1のジョイント機構を図示左側の前側からみて反時計方向Aに90度回動させた伸ロック解除状態を示す説明図であり、(a)は横断面を示し、(b)はスパウトブッシュに対するジョイント機構の回動位置を示している。
図3図2のジョイント機構を図示右方のB方向に途中まで押し込んだ状態を示す説明図であり、(a)は横断面を示し、(b)はスパウトブッシュに対するジョイント機構の回動位置(図2と同じ)を示している。
図4図3のジョイント機構を図示右方のB方向に最後まで押し込んだ状態を示す説明図であり、(a)は横断面を示し、(b)はスパウトブッシュに対するジョイント機構の回動位置(図2図3と同じ)を示している。
図5図4のジョイント機構を前側からみて時計方向Cに90度回動させた状態、すなわちジョイント伸縮構造の縮ロック状態を示す説明図であり、(a)は横断面を示し、(b)はスパウトブッシュに対するジョイント機構の回動位置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1図5を用いて本発明を実施するための形態を説明する。
【0021】
上述したように、本発明の内容物放出用のジョイント構造はポンプ式製品およびエアゾール式製品のいずれにも搭載して使用されえるが、以下の記載では単なる説明の便宜上、必要に応じてポンプ式製品を前提とする。
【0022】
なお、原則として、各図で用いるアルファベット付き参照番号の構成要素(例えば放出用通路部3a)は当該参照番号の数字部分の構成要素(例えばステム3)の一部であることを示している。
【0023】
図1図5において、
1は後述の放出対象内容物が収容された容器本体,
2は容器本体1の上端側に形成された筒状首部(図示省略)と螺子結合して、その内側に配設されるハウジング,弁作用部,後述のステム3などからなる周知のポンプ機構を、容器本体側に取り付けるためのネジキャップ,
3は内容物放出操作に応動して周知の弁作用を呈し、かつ上下方向の内容物通路部を備えた例えば鞘形状のステム,
3aは内容物放出操作にともない内容物が通過する放出用通路部,
をそれぞれ示している。
【0024】
また、
4はステム3の流出側端部に嵌合状態で取り付けられたスパウト,
4aは当該スパウトの上面部分であって内容物放出操作時に利用者が押圧する操作面,
4bはステム3の流出側から続く内容物通過用で上下方向の縦通路域,
4cは縦通路域4bの下流側に続く前後方向の横通路域,
4dは横通路域4cを構成する横筒状部,
4eは横通路域4cの上流側始まり部分に形成された前向きの後環状受け部,
をそれぞれ示している。
【0025】
また、
5は横筒状部4dの前端部分に嵌合状態で取り付けられて後述のジョイント機構6の伸位置と縮位置とを個々に画定する筒状のスパウトブッシュ,
5aは当該スパウトブッシュの前端側に形成された環鍔状部,
5bは環鍔状部5aの自内側部分から後方に続くブッシュ筒状部,
5cはブッシュ筒状部5bの内周面前後方向に形成されて後述のジョイント機構6の伸縮方向への移動をガイドする前後方向溝状部,
をそれぞれ示している。
【0026】
また、
6は横筒状部4dやスパウトブッシュ5の各内周面に案内されながら前後動して、当該スパウトブッシュの前端部からの長短それぞれの延長通路域を選択的に設定するジョイント機構,
6aは当該ジョイント機構の前側通路域を構成するクランク形状の前筒状部,
6bは前筒状部6aの先端部分に形成された内容物放出用の計三個の放出孔部,
6cは前筒状部6aの後端側外周面の前後方向に形成されて、当該ジョイント機構がその伸状態と縮状態との間の前後方向に移動するとき(図2図4参照)、前後方向溝状部5cに案内されるリブ形状の被ガイド部,
6dは前筒状部6aの後側内周面に嵌合した形で後述のコイルスプリング7により前方向に付勢されて、当該ジョイント機構の後側通路域を構成する鞘状のピストン,
6eはピストン6dの後側周面部に形成された内容物通過用の計二個の連通孔部,
6fはピストン6dの後端面部に形成された後向きの前環状受け部,
6gは連通孔部6eよりも前方のピストン外周面部分と、これに対向する前筒状部6aの大径内周面部分とのいわば隙間域に係合固定されたシール作用部(6h+6j+6k),
6hはシール作用部6gの前側であって上記隙間域に係合固定される前側筒状部分,
6jは前側筒状部分6hの後端から外側に連続する前向きの環状段部,
6kは環状段部6jの外端から後方に続いて横筒状部4dの内周面との間のシール作用を呈するスカート状部,
7はスパウト4の後環状受け部4eとジョイント機構6の前環状受け部6fとの間に配設されて当該ジョイント機構の全体を前方に付勢するコイルスプリング,
をそれぞれ示している。
【0027】
また、
Aは図1のジョイント機構6の伸ロック状態を解除するときの最初の回動操作方向(図示左の前側からみて反時計方向:図2参照),
Bは伸ロック解除状態(=被ガイド部6cが前後方向溝状部5cに案内されえる状態)のジョイント機構6を縮状態に移動させるときの押込み操作方向(図3図4参照),
Cは縮状態に押し込まれたジョイント機構6をそのロック位置に移動させるときの回動操作方向(図示左の前側からみて時計方向:図5参照),
をそれぞれ示している。
【0028】
ここで、容器本体1、ネジキャップ2,ステム3,スパウト4,スパウトブッシュ5およびジョイント機構6はポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。
【0029】
また、コイルスプリング7は金属製やプラスチック製のものであり、容器本体1としては金属製のものも用いられる。
【0030】
ここで、ジョイント機構6は、
・流出側通路域として作用する前筒状部6a
・流出側通路域として作用し、かつコイルスプリング7の弾性力で前方へ付勢されるピストン6d
・スパウト4の横筒状部4dの内周面に対するシール作用部6g
の各構成要素の一体物である。
【0031】
図1のジョイント機構6の伸ロック状態は、ピストン6dと一体で前方向に付勢されたシール作用部6gの環状段部6jと、ブッシュ筒状部5bの後端部分との当接係止作用により設定される。
【0032】
また、図5のジョイント機構6の縮ロック状態は、ピストン6dと一体で前方向に付勢された前筒状部6aの被ガイド部6cの前端部分と、ブッシュ筒状部5bの(前後方向溝状部5cが形成されていない)後端部分との当接係止作用により設定される。
【0033】
すなわち、前後方向には固定された状態のスパウトブッシュ5のブッシュ筒状部5bの後端部分に、
図1の伸状態のジョイント機構6では、コイルスプリング7の弾性力により最大限前進した状態の環状段部6jが当接し、
図5の縮状態のジョイント機構6では、当該弾性力に抗する形で前後方向溝状部5cを後退してから時計方向Cへの回動操作を受けた状態の前後方向リブ形状の被ガイド部6cが、当該弾性力の前方向付勢作用により当接している。
【0034】
図1および図5の伸縮状態それぞれのジョイント機構6は、図1(b),図5(b)で明示されるように、その被ガイド部6cが前後方向溝状部5cから90度回動した位置に設定されている。
【0035】
そのため、利用者などが不用意に、図1図5のジョイント機構6をその逆の縮伸状態にシフトさせる前後方向移動操作をしたとしても、被ガイド部6cがスパウトブッシュ5の環鍔状部5aやブッシュ筒状部5bにあたるので、この移動操作は阻止される。
【0036】
このジョイント機構6の被ガイド部6cに対するスパウトブッシュ5の当接作用(前後方向への移動操作阻止作用)により、図1のジョイント機構伸状態および図5のジョイント機構縮状態を選択的に設定する上での誤動作を防止している。
【0037】
ジョイント機構6を図1の伸状態から図5の縮状態へとシフトさせる際は、
(21)図1の前筒状部6aを反時計方向Aに90度回動操作して、前後方向リブ形状の被ガイド部6cがスパウトブッシュ5の前後方向溝状部5cの前方延長線上に位置するように設定し(図2参照)、
(22)この延長線上位置の前筒状部6aを、コイルスプリング7の弾性力に抗しながら後方のB方向に例えば最奥位置まで押し込み(図3図4参照),
(23)この押込み終了後の前筒状部6aを時計方向Cに90度回動操作して、前後方向リブ形状の被ガイド部6cがスパウトブッシュ5の前後方向溝状部5cの後方延長線から外れた回動位置となるように設定する。
【0038】
この時計方向Cへの90度回動操作後に利用者などが前筒状部6aから手を放すと、ジョイント機構6は、コイルスプリング7の弾性作用により図5の縮状態へと確実にシフトする。
【0039】
これとは逆にジョイント機構6を図5の縮状態から図1の伸状態へとシフトさせる際も、前筒状部6aに対して、上記(21)〜(23)と同様の「反時計方向Aへの90度回動−B方向とは逆の前方向への移動−時計方向Cへの90度回動」の操作をおこなえばよい。
【0040】
ここで前筒状部6aなどのジョイント機構6の前方向への移動は、コイルスプリング7の弾性作用によってサポートされる。
【0041】
また、図示のスパウト4,スパウトブッシュ5,ジョイント機構6およびコイルスプリング7などからなる「内容物放出用のジョイント伸縮構造」の組立て手順は、概略次のようになる。
(31)前筒状部6aに放出孔部6bの部材を取り付け、
(32)その前筒状部6aの後端に、スパウトブッシュ5を通してから、シール作用部6gとピストン6dとを順に固定してジョイント機構6を一体化し、
(33)コイルスプリング7をピストン6dの後端に取り付けてから、
(34)スパウト4の横筒状部4dに、ジョイント機構6の後端をコイルスプリング7とともに差し入れて、その後、スパウトブッシュ5を横筒状部4dの先端に固定する、
ようにする。
【0042】
図示のジョイント伸縮構造を搭載したポンプ式製品において、利用者がスパウト4の操作面4aを押し下げるといった放出操作により内容物放出状態が設定される。
【0043】
なお、スパウト4は周知のコイルスプリング(図示省略)の弾性力により上方向に付勢されている。操作面4aの押下げ操作はこの弾性力に抗する形の放出操作である。
【0044】
この放出操作のとき、前回の内容物放出操作の終了にともなって容器本体1からステム3側の吐出弁・吸込弁間の貯留空間域に移動し、収容された内容物が、これら吐出弁および吸込弁の周知の弁作用(吐出弁:開,吸込弁:閉)により外部空間域に放出される。なお、吐出弁は上記貯留空間域からの流出弁であり、吸込弁は上記貯留空間域への流入弁である。
【0045】
そして利用者が今回の内容物放出操作を止めるとスパウト4が上記弾性力により上動して上記貯留空間域の容量が増加し、そこでの内容物圧力が減少する。その結果、吐出弁が閉じ、容器本体側の吸込弁が開くことにより容器本体1の内容物が上記吐出弁・吸込弁間の貯留空間域に流入する、この流入内容物が上述した次回の放出対象内容物となる。
【0046】
このようにポンプ式製品の吐出弁および吸込弁は、それぞれ操作面4aの内容物放出操作時のスパウト4の上下動に基づく上記貯留空間域の内容物圧力変化に応じて、連動した開閉作用を呈する。この連動した開閉作用は勿論周知である。
【0047】
上記貯留空間域から外部空間域への内容物放出経路は、「吐出弁−ステム3の放出用通路部3a−スパウト4の縦通路域4b‐横通路域4c‐ピストン6dの連通孔部6e−ピストン6dの内部通路域−前筒状部6aの内部通路域−放出孔部6b」となる。
【0048】
本発明が以上の実施形態に限定されないことは勿論であり例えば次のような構成にしてもよい。
(41)内容物放出用のジョイント伸縮構造をエアゾール式の内容物放出機構のステム側に取り付ける。この場合、利用者がスパウト4の操作面4aを押し下げると、ステム側の周知の弁作用部が開き、容器本体内部の噴射用ガスの作用により容器本体内容物が外部空間域に放出される。
(42)前筒状部6aの回動操作(図2図5参照)のときにピストン6dおよびシール作用部6gが連動しないように設定する。なお、この設定においても、図3図4などの前後方向への押込み操作時には勿論、ピストン6dおよびシール作用部6gが前筒状部6aと前後方向に連動する態様を用いる。
(43)コイルスプリング7を省略する。
(44)図1および図2それぞれにおける前筒状部6aの回動状態を軽く保持するためのクリック作用部を、スパウトブッシュ5の内周面やこれと対向する前筒状部6aの後端側外周面を形成する。
(45)前後方向溝状部5cと被ガイド部6cとの凹凸関係を逆に設定する。
(46)図1および図5の回動位置態様における前後方向溝状部5cと被ガイド部6cとのいわば周方向位相差を90度以外の任意の角度に設定する。
(47)前後方向溝状部5cや被ガイド部6cの位置の目印を横筒状部4d,環鍔状部5a,前筒状部6aの各表面部分に設ける。
(48)図4の押込み終了段階を示す目印を前筒状部6aの表面部分に設ける。
(49)押下げタイプの内容物放出操作面4aに代えてトリガレバー形式の内容物放出操作部を用いる。
(50)コイルスプリング7に代えて板バネ,皿バネなどの各種弾性部材を用いる。
【0049】
本発明が適用されるエアゾール式製品およびポンプ式製品としては、洗浄剤,清掃剤,冷却剤,筋肉消炎剤,育毛剤,染毛剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,日焼け止め,化粧水,クレンジング剤,制汗剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,園芸用剤,殺虫剤,害虫忌避剤,動物忌避剤,消臭剤,洗濯のり,消火器,塗料,接着剤,潤滑剤,ウレタンフォームなどの各種用途のものがある。
【0050】
容器本体に収容される内容物としては、液状,クリーム状,ゲル状など種々の形態のものを用いる。内容物に配合される成分は例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分,水などである。
【0051】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,塩化マグネシウム,シリカ,酸化亜鉛,酸化チタン,ゼオライト,ナイロンパウダー,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0052】
油成分としては、ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン油,ミリスチン酸イソプロピルなどのエステル油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油などの油脂,流動パラフィンなどの炭化水素油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などの脂肪酸などを用いる。
【0053】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールやセタノールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコール,1,3−ブチレングリコールやグリセリンなどの多価アルコールなどを用いる。
【0054】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤,ポリオキシエチレンアルキルエーテルやポリグリセリン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤,ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤,塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0055】
高分子化合物としては、ヒドロキシエチルセルロース,メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼイン,キサンタンガム,カルボキシビニルポリマーなどを用いる。
【0056】
各用途に応じた有効成分としては、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,過酸化水素水などの酸化剤,アクリル系樹脂やワックスなどのセット剤,パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルなどの紫外線吸収剤,レチノールやdl−α−トコフェロールなどのビタミン,ヒアルロン酸などの保湿剤,サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤,安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤,ピレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤,パラフェノールスルホン酸亜鉛などの制汗剤,カンフル,メントールなどの清涼剤,エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬,スクラロース,アスパルテームなどの甘味料,エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料,パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,過酸化水素水などの酸化剤,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0057】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,乳化剤,酸化防止剤,金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【0058】
内容物放出用の噴射剤としては、炭酸ガス,窒素ガス,圧縮空気,亜酸化窒素,酸素ガス,希ガス,これらの混合ガスなどの圧縮ガスや、液化石油ガス,ジメチルエーテル,ハイドロフルオロオレフィンなどの液化ガスを用いる。
【符号の説明】
【0059】
1:容器本体
2:ネジキャップ
3:ステム
3a:放出用通路部
4:スパウト
4a:操作面
4b:縦通路域
4c:横通路域
4d:横筒状部
4e:後環状受け部
5:スパウトブッシュ
5a:環鍔状部
5b:ブッシュ筒状部
5c:前後方向溝状部
【0060】
6:ジョイント機構
6a:前筒状部
6b:放出孔部
6c:リブ形状の被ガイド部
6d:ピストン
6e:連通孔部
6f:前環状受け部
6g:シール作用部(6h+6j+6k)
6h:前側筒状部分
6j:環状段部
6k:スカート状部
7:コイルスプリング
【0061】
A:回動操作方向(図示左の前側からみて反時計方向:図2参照)
B:押込み操作方向(図3図4参照)
C:回動操作方向(図示左の前側からみて時計方向:図5参照),
図1
図2
図3
図4
図5