特許第6552044号(P6552044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6552044内容物放出操作ロック機構ならびにこの内容物放出操作ロック機構を備えたエアゾール式製品およびポンプ式製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552044
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】内容物放出操作ロック機構ならびにこの内容物放出操作ロック機構を備えたエアゾール式製品およびポンプ式製品
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/22 20060101AFI20190722BHJP
   B65D 83/20 20060101ALI20190722BHJP
   B05B 9/04 20060101ALI20190722BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   B65D83/22
   B65D83/20
   B05B9/04
   B65D83/00 K
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-174955(P2015-174955)
(22)【出願日】2015年9月4日
(65)【公開番号】特開2017-47962(P2017-47962A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144463
【氏名又は名称】株式会社三谷バルブ
(74)【代理人】
【識別番号】100097593
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 治幸
(72)【発明者】
【氏名】海野 泰徳
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−105342(JP,A)
【文献】 特表2005−525274(JP,A)
【文献】 特表2010−515626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/22
B05B 9/04
B65D 83/00
B65D 83/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体のカバー体と内容物放出操作用の押下げボタンとの間に配設されたモード選択環状部材の回動操作により、内容物放出操作阻止のロックモードおよび内容物放出操作可のロック解除・静止モードを選択する内容物放出操作ロック機構であって、
前記カバー体は、
その内周面からカバー体内側に延びて、ロックモード位置とロック解除・静止モード位置とへ選択的に設定される可動アーム状部を備え、
前記モード選択環状部材は、
前記回動操作に応じて前記カバー体の内部空間域を回動することにより、前記可動アーム状部を、前記ロックモード位置および前記ロック解除・静止モード位置の少なくとも一方へ移動させる駆動部を備え、
ことを特徴とする内容物放出操作ロック機構。
【請求項2】
前記駆動部は、
前記可動アーム状部を、前記ロック解除・静止モード位置から前記ロックモード位置へ移動させるロック駆動片部と、
前記可動アーム状部を、前記ロックモード位置から前記ロック解除・静止モード位置へ移動させるロック解除駆動片部と、からなる、
ことを特徴とする請求項1記載の内容物放出操作ロック機構。
【請求項3】
前記可動アーム状部は、
前記ロック解除・静止モード位置の方へ、または前記ロックモード位置の方へ移動するように初期付勢されている、
ことを特徴とする請求項1記載の内容物放出操作ロック機構。
【請求項4】
前記可動アーム状部は、
前記ロックモード位置のとき、前記押下げボタンの下端部分と対向して内容物放出操作を阻止する上面部分を備えている、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内容物放出操作ロック機構。
【請求項5】
前記カバー体および前記モード選択環状部材は、
ともに円筒状部からなり、
その全体が、前記ロックモードと、前記ロック解除・静止モードとのそれぞれにおいて同一外観形状に設定される、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の内容物放出操作ロック機構。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の内容物放出操作ロック機構を備え、かつ、前記容器本体に噴射用ガスおよび内容物を収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の内容物放出操作ロック機構を備え、かつ、前記容器本体に内容物を収容した、
ことを特徴とするポンプ式製品
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール式製品やポンプ式製品のステム回りの水平面内などでおこなう回動操作により、内容物放出操作「阻止」のロックモードと、内容物放出操作「可」のロック解除・静止モードとが選択される内容物放出操作ロック機構に関する。
【0002】
なお、ロック解除・静止モードの押下げボタンの下動操作により、エアゾール式製品およびポンプ式製品は周知の内容物放出状態の作動モードに移行する。
【0003】
本明細書では、内容物放出孔部の側を「前」、それとはステム回りの180度反対側を「後」とそれぞれ記す。図1図3の左側が「前」で右側が「後」となる。また、水平面上の方向を「横」と記す。
【背景技術】
【0004】
本件出願人は、内容物放出操作用の押下げボタンを前後方向へスライドさせることにより、内容物放出操作が阻止されるロックモードと、これが許容されるロック解除・静止モードとを選択する内容物放出操作ロック機構を提案済みである(特許文献1参照)。
【0005】
ロックモードでは、押下げボタンをその保護部のワンタッチキャップ(カバー体)に係合保持することにより、利用者の内容物放出操作を阻止している。
【0006】
そしてロックモードの押下げボタンを後方へスライドさせるといった簡単な操作により、ロックモードが解除されて、内容物放出操作可能なロック解除・静止モードへと移行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−48132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように提案済みの内容物放出操作ロック機構は、押下げボタンを、そのカバー体に対して単に前後方向にスライドさせることにより、ロックモードとロック解除・静止モードとが選択的に設定される、という利便性を備えたものである。
【0009】
本発明は、この前後方向へのスライド操作ではなく、容器本体のカバー体と押下げボタンとの間に配設したモード選択環状部材の回動操作により、ロックモードおよびロック解除・静止モードを選択するといった新たな着想に基づくものである。
【0010】
この回動操作を用いた内容物放出操作ロック機構は、放出操作ロックおよびその解除のための具体的構造の設定スペースとして、上記スライド操作におけるカバー体外方部分を含む直線状領域とは異なり、カバー体内部の円筒状領域のみを用いる。
【0011】
すなわち、ロックモード/ロック解除・静止モードを選択するモード選択環状部材の、ロックモードとロック解除・静止モードとの選択に必要な移動ストロークを、カバー体内部のいわば周回方向長さにより確保している。
【0012】
また、このモード選択環状部材の回動操作によっても、それと下側のカバー体との外観全体は略同じままである。すなわちロックモードおよびロック解除・静止モードの切換えにともなう「モード選択環状部材+容器本体のカバー体」の外観形状変化は生じない。
【0013】
本発明は、このような「カバー体の内部領域のみ」の使用や、「モード選択環状部材およびカバー体の全体外観形状」の変化なしといった構成により、
(11)特に小径のカバー体からなる小形タイプのエアゾール式製品およびポンプ式製品の内容物放出操作ロック機構について、もっぱらカバー体の内部領域での実用化を図る、
(12)「モード選択環状部材+容器本体のカバー体」についてのロックモードおよびロック解除・静止モードにおける全体外観形状それぞれの同一性を維持し、内容物放出操作ロック機構を備えた製品の見た目の安定化を図る、
ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)容器本体(例えば後述の容器本体1)のカバー体(例えば後述のカバー体6)と内容物放出操作用の押下げボタン(例えば後述の押下げボタン5)との間に配設されたモード選択環状部材(例えば後述のモード選択環状部材7)の回動操作により、内容物放出操作阻止のロックモードおよび内容物放出操作可のロック解除・静止モードを選択する内容物放出操作ロック機構であって、
前記カバー体は、
その内周面からカバー体内側に延びて、ロックモード位置とロック解除・静止モード位置とへ選択的に設定される可動アーム状部(例えば後述の可動アーム状部6g)を備え、
前記モード選択環状部材は、
前記回動操作に応じて前記カバー体の内部空間域を回動することにより、前記可動アーム状部を、前記ロックモード位置および前記ロック解除・静止モード位置の少なくとも一方へ移動させる駆動部(例えば後述のロック駆動片部7bまたはロック解除駆動片部7e)を備えた、
構成態様のものを用いる。
(2)上記(1)において、
前記駆動部は、
前記可動アーム状部を、前記ロック解除・静止モード位置から前記ロックモード位置へ移動させるロック駆動片部(例えば後述のロック駆動片部7b)と、
前記可動アーム状部を、前記ロックモード位置から前記ロック解除・静止モード位置へ移動させるロック解除駆動片部(例えば後述のロック解除駆動片部7e)と、からなる、
構成態様のものを用いる。
(3)上記(1)において、
前記可動アーム状部は、
前記ロック解除・静止モード位置の方へ、または前記ロックモード位置の方へ移動するように初期付勢された、
構成態様のものを用いる。
(4)上記(1),(2),(3)において、
前記可動アーム状部は、
前記ロックモード位置のとき、前記押下げボタンの下端部分(例えば後述のボタン下端部分5d)と対向して内容物放出操作を阻止する上面部分(例えば後述の内端側上面6m)を備えた、
構成態様のものを用いる。
(5)上記(1),(2),(3),(4)において、
前記カバー体および前記モード選択環状部材は、
ともに円筒状部からなり、
その全体が、前記ロックモードと、前記ロック解除・静止モードとのそれぞれにおいて同一外観形状に設定される、
構成態様のものを用いる。
【0015】
このような構成からなる内容物放出操作ロック機構、ならびにこの内容物放出操作ロック機構を備えたエアゾール式製品およびポンプ式製品を本発明の対象としている。
【0016】
なお、上記(1)の「前記可動アーム状部を、前記ロックモード位置および前記ロック解除・静止モード位置の少なくとも一方へ移動させる駆動部」における「少なくとも一方へ」は、後述の(61),(62)の場合をも本発明の対象とするための記載である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以上の構成をとることにより、
(21)小形タイプのエアゾール式製品およびポンプ式製品の内容物放出操作ロック機構について、カバー体の内部領域での実用化を図る、
(22)ロックモードおよびロック解除・静止モードにおける「容器本体のカバー体+モード選択環状部材」の全体外観形状それぞれの同一性を維持し、内容物放出操作ロック機構としての見た目の安定化を図る、
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】下方への内容物放出操作を阻止する可動アーム状部の上面と、放出操作用押下げボタンの下端部分との対向状態を保持したロックモードの縦断面を示す説明図である。
図2図1のロックモードの(A−A′)横断面を示す説明図である。
図3図1図2の可動アーム状部上面と押下げボタン下端部分の対向状態が、モード選択環状部材の図示時計方向への回動操作により解除されたロック解除・静止モードの横断面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1乃至図3を用いて本発明を実施するための形態を説明する。
【0020】
上述したように、本発明の内容物放出操作ロック機構はエアゾール式製品およびポンプ式製品の双方に適用できるが、以下の実施形態では単なる説明の便宜上、エアゾール式製品の場合を前提とする。
【0021】
なお、以下のアルファベット付き参照番号の構成要素(例えば内容物通路5a)は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素(例えば押下げボタン5)の一部であることを示している。
【0022】
図1図3において、
1は後述の圧縮ガスおよび放出内容物が収容されたエアゾールタイプの容器本体,
1aは容器本体1の上側環状部分であって、下側から内向き上り傾斜態様に形成された環状肩部,
2は容器本体1に取り付けられたマウンティングカップ,
3は容器本体1とマウンティングカップ2との連結部分に形成される環凹状のアンダーカット,
4は周知のコイルスプリング(図示省略)の弾性作用により上方に付勢されて、内容物放出操作にともない周知のステムガスケット(図示省略)との間の開閉動作に基づくバルブ作用を呈するステム,
をそれぞれ示している。
【0023】
また、
5はステム4の流出側端部に取り付けられてこれと連動する内容物放出操作用の押下げボタン,
5aはステム4から続く縦方向通路部とその下流側の横方向通路部とからなるいわば逆L字状の内容物通路,
5bは内容物通路5aの上流端部分であってステム4の上端部分と嵌合する上側段部付き筒状部,
5cは内容物通路5aの下流端部分に形成された放出孔部,
5dは図1図2のロックモードのときに後述の可動アーム状部6gの自由端側上面部分と対向して押下げボタン5の下方への移動を阻止する、すなわち内容物放出操作を阻止するボタン下端部分,
をそれぞれ示している。
【0024】
また、
6は容器本体1の環状肩部1aの下端側斜面およびマウンティングカップ2の直立外周面に係合した固定態様で取り付けられて、内容物放出操作のときも取り外されることのない円筒状のカバー体,
6aはカバー体6を構成し、後述の縦リブ状部6eが形成されていない円筒状の上小径筒状部,
6bはカバー体6を構成し、後述の縦リブ状部6eが形成されている円筒状の下大径筒状部,
6cは上小径筒状部6aと下大径筒状部6bとの連結域に形成され、後述のモード選択環状部材7の環状下端面7hを受けて保持する環状段部,
6dは上小径筒状部6aの外周面に形成されて後述のモード選択環状部材7の案内保持作用を呈する外向き上環凸状部,
6eは下大径筒状部6bの内周面に周方向離間の縦方向態様で複数形成されて、それぞれの下側内端面が下大径筒状部自体の下端面とともに環状肩部1aに係合し、また上側内端面がマウンティングカップ2の直立外周面に係合する複数の、例えば5〜15本の縦リブ状部,
6fは縦リブ状部6eの、上述の下側内端面と上側内端面との間に相当する部分、すなわちアンダーカット3に対向する部分であって、容器本体1への取付け後のカバー体6がいわば不用意に図示上方へ抜けるのを阻止するための膨出部,
6gは上小径筒状部6aの内周面から内側に弧状に延びて、その自由端側上面が、図1図2のロックモードのときステム4を囲んでボタン下端部分5dと対向した状態にシフトし、これにより押下げボタン5の下方への内容物放出操作を阻止する可動アーム状部,
6hは可動アーム状部6gの上小径筒状部6aとの接続部分からなる可動基部,
6jは可動基部6hから上小径筒状部6aの内側へ連続する円弧状部,
6kは円弧状部6jの先端部分(自由端部分)に形成されて、ロックモードのときにステム4の略横断面半分を囲む半円凹状部,
6mは半円凹状部6kの上端縁部分へと続く上面部分であって、ロックモードのときボタン下端部分5dと対向することにより利用者の押下げボタン1の内容物放出操作を阻止し、ロック解除状態ではボタン下端部分5dの外方に逃げるロック作動用の内端側上面,
6nは可動基部6hからみて、円弧状部6jにおける半円凹状部6kの手前側部分に形成され、図3のロック解除・静止モードのときに後述のロック解除駆動片部7eの前側部分、すなわちこの駆動片部の図3における短い縦幅側の部分が入り込む凹み状部,
をそれぞれ示している。
【0025】
また、
7は押下げボタン5とカバー体6との間にステム回りの水平面態様で配設されて、ロックモードおよびロック解除・静止モードを個々に設定する円筒状のモード選択環状部材,
7aはモード選択環状部材7の内周面上下方向の中間部分に形成されて、押下げボタン5の上下動を許容する中心開口部分を備えた環天板状部,
7bは環天板状部7aに垂下状態で形成されて、静止モードのモード選択環状部材7に対するR方向への回動操作により、カバー体6の上小径筒状部6aの内周面と可動アーム状部6gのいわば外周面との間に、先端幅狭部分から入り込んでいくロック駆動片部,
7cはロック駆動片部7bの内側平面であって、図3から図2へのロックモード移行のとき可動アーム状部6gの外周面に当接しながら図示R方向へ回動することにより、この可動アーム状部の半円凹状部6kをステム4へ近づくB方向に駆動する内側平面,
7dはロック駆動片部7bの外側曲面であって、その周方向全体が上小径筒状部6aの内周面と等間隔の対向状態に設定された外側周方向曲面,
7eは環天板状部7aのロック駆動片部7bとは反対側に垂下形成され、ロックモードのモード選択環状部材7に対するR′方向への回動操作により、可動アーム状部6gを、C方向に駆動してボタン下端部分5dの対向範囲の外に移動させるロック解除駆動片部,
7fはロック解除駆動片部7eの外側曲面であって、図2のロックモードから図3のロック解除・静止モードへの移行時に図示R′方向へ回動することにより、円弧状部6jに当接して可動アーム状部6gをステム4から離間する方に駆動する外側周方向曲面,
7gは環天板状部7aより下側の環状部材内周面に形成されて、上小径筒状部6aの外向き上環凸状部6dに案内保持される内向き下環凸状部,
7hはモード選択環状部材7の下端部分であって、カバー体6の環状段部6cに保持される環状下端面,
7jはモード選択環状部材7の外周面に形成されて、利用者に、内容物放出操作ロック機構がロックモードおよびその解除モードの何れに設定されているかを示すための凸状のモード指摘部,
をそれぞれ示している。
【0026】
また、
Rは図3のロック解除・静止モードから図2のロックモードへ移行する際のモード選択環状部材7の回動操作方向(図2図3の反時計方向),
R′は図2のロックモードを解除する際のモード選択環状部材7の回動操作方向(図2図3の時計方向),
Bはロックモード移行操作時の可動アーム状部6gの移動方向(図2),
Cはロックモード解除操作時の可動アーム状部6gの移動方向(図3),
をそれぞれ示している。
【0027】
ここで、容器本体1およびステム4は例えば金属製,プラスチック製のものである。マウンティングカップ2は例えば金属性のものである。
【0028】
また、押下げボタン5,カバー体6およびモード選択環状部材7は例えばポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。
【0029】
カバー体6の外向き上環凸状部6d,膨出部6fおよびモード選択環状部材7の内向き下環凸状部7gなどはプラスチック製の弾性変形可能部分である。
【0030】
図1図2のロックモード,図3のロック解除・静止モード、およびこれらモード間遷移中のいずれのときも、モード選択環状部材7(の下側部分),カバー体6および容器本体1の上下方向外周面の全体はいわゆる面一状態を保持している。
【0031】
図示の内容物放出操作ロック機構の基本的特徴は、
(31)容器本体1に固定状態で取り付けられたカバー体6に対してモード選択環状部材7を回動操作するとき、このモード選択環状部材がカバー体の外側へはみ出すことなしに、
・可動アーム状部6gの内端側上面6mが、押下げボタン5のボタン下端部分5dと対向して、下方への内容物放出操作を阻止するロックモード(図1図2)と、
・可動アーム状部6gの内端側上面6mが、押下げボタン5のボタン下端部分5dとの対向状態から外側に逃げて、下方への内容物放出操作を阻止できないロック解除・静止モード(図3)と、
に選択的に設定する、
(32)モード選択環状部材7の回動操作によっても、それとその下側のカバー体6との全体外観、さらには容器本体1を含めた全体外観が略変化せずに、すなわち上下方向全体に面一でシンプルな連続円筒形状を維持する、
ことなどである。
【0032】
このように、図示の内容物放出操作ロック機構は、図1図2のロックモードと図3のロック解除・静止モードとを切り替える際に必要なモード選択環状部材7の移動ストロークが、この環状部材を保持するカバー体6の内部周方向の長さでまかなわれている。
【0033】
モード選択環状部材7は、あくまでカバー体6の平面視形状の外輪郭範囲内において回動するのみであり、この平面視形状からいわばはみ出るようなことは生じない。
【0034】
厳密にいうと、モード指摘部7jはこの平面視形状からみて外側部分となるものの、それによって上記(32)の上下方向全体の面一感がそこなわれることはない。
【0035】
図1図2のロックモードは、図3のロック解除・静止モードのモード選択環状部材7をR方向(図示反時計方向)に略90度回動操作することにより設定される。
【0036】
このロックモードでは、
(41)モード選択環状部材7のロック駆動片部7bが、その先端幅狭部分から、上小径筒状部6aの内周面と可動アーム状部6gの自由端側外周面との間に入り込み、内側平面7cで、可動アーム状部6gをその半円凹状部6kがステム4に近づくB方向に駆動し、
(42)この駆動後の可動アーム状部6gの内端側上面6mが、押下げボタン5のボタン下端部分5dと対向または当接し、
(43)モード選択環状部材7のモード指摘部7jが、図2に示すように可動基部6hの径方向横部分に位置している。
【0037】
このロックモードにおいて、利用者が押下げボタン1を下方に押して内容物放出状態を設定しようとしても、そのボタン下端部分5dが可動アーム状部6gの内端側上面6mでブロックされ、ステム4が下動した内容物放出の作動モードに移行することはない。
【0038】
図3のロック解除・静止モードは、図2のロックモードのモード選択環状部材7をR′方向(図示時計方向)に略90度回動操作することにより設定される。
【0039】
このロック解除・静止モードでは、
(51)モード選択環状部材7のロック駆動片部7bが、ロックモードの、上小径筒状部6aの内周面と可動アーム状部6gの自由端側外周面との間からR′方向に逃げ
(52)モード選択環状部材7のロック解除駆動片部7eが、その先端幅狭部分から、円弧状部6jの可動基部側内周面に当接して凹み状部6nの方に移動し、
(53)ロック解除駆動片部7eの外側周方向曲面7fで、可動アーム状部6gを、その半円凹状部6kがステム4から離れるC方向に駆動し、
(54)モード選択環状部材7のモード指摘部7jが、図3に示すように、カバー体6に対し当然のことながら図2からR′方向へ約90度回動した部分に位置している。
【0040】
上記(53)の可動アーム状部6gのC方向への駆動により、その内端側上面6mと、押下げボタン5のボタン下端部分5dとのそれまでの対向,当接状態は解消される。すなわち、押下げボタン5の内容物放出操作の阻止作用が消失する。
【0041】
これにより押下げボタン5の下方への内容物放出操作が可能となる。
この内容物放出操作にともない、ロック解除・静止モードの押下げボタン5およびこれと一体のステム4が周知のコイルスプリングの上方への弾性力に抗しながら下動して、ステム4を含む周知の弁機構がそれまでの閉状態から開状態へシフトする。
【0042】
この弁機構の開状態へのシフトにより、容器本体1の放出対象内容物が「ステム4の内部通路域−逆L字状の内容物通路5a」を経て放出孔部5cから外部空間域に放出される。内容物放出動作の機構は周知である。
【0043】
利用者が押下げボタン5の内容物放出操作(押下げ操作)をやめると、ステム4および押下げボタン5は周知のコイルスプリングの弾性力により上動して図3のロック解除・静止モードの状態に復帰する。
【0044】
なお、カバー体6の、上記(43),(54)のモード指摘部7jの略真下に相当する部分に、それぞれ「ロックモード」,「ロック解除・静止モード」を直接的,間接的に示す語,記号,図形,図案などを記す。
【0045】
また、押下げボタン5は、図3のロック解除・静止モードにおけるモード指摘部7jが放出孔部5cの略真下となる形の周方向位置態様で、ステム4に配設されている。
【0046】
本発明の内容物放出操作ロック機構が図示の実施形態に限定されるものでないことは勿論であり、例えば、
(61)可動アーム状部6gを、上小径筒状部6aの内周面に対しロックモードのB方向へ弾性的に初期付勢される態様で形成して、モード選択環状部材7のロック駆動片部7bを省略する、
(62)可動アーム状部6gを、上小径筒状部6aの内周面に対しロック解除・静止モードのC方向へ弾性的に初期付勢される態様で形成して、モード選択環状部材7のロック解除駆動片部7eを省略する、
(63)モード選択環状部材7の回動操作によりロックモードまたはロック解除・静止モードが設定される際のクリック感を利用者に与え、さらにはその回動位置を保持するための例えば凹凸状部を、カバー体6とモード選択環状部材7との当接部分などに形成する、
(64)押下げボタン5として押下げ回動タイプ(いわゆるスパウトタイプ)の放出操作ボタンを用いる、
(65)放出孔部5cとモード指摘部7jとの位置関係を、図3のロック解除・静止モードのときに、モード指摘部7jが、放出孔部5cの略真下からモード選択環状部材7の周方向へ離間した任意の部分に配設される形にする、
ようにしてもよい。
【0047】
なお、ポンプ式製品の内容物放出操作ロック機構の場合には、カバー体6として、容器本体と螺合するネジキャップが用いられる。
【0048】
本発明が適用されるエアゾール式製品,ポンプ式製品としては、洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0049】
容器本体に収容される内容物としては、液状,クリーム状,ゲル状など種々の形態のものを用いる。内容物に配合される成分は例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分,水などである。
【0050】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0051】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0052】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコール,グリセリン,1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0053】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0054】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼイン,ヒドロキシエチルセルロース,キサンタンガム,カルボキシビニルポリマーなどを用いる。
【0055】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ピレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、パラフェノールスルホン酸亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,過酸化水素水などの酸化剤、リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0056】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【0057】
エアゾール式製品における内容物噴射用ガスとしては、炭酸ガス,窒素ガス,圧縮空気,酸素ガス,希ガス,これらの混合ガスなどの圧縮ガスや、液化石油ガス,ジメチルエーテル,フロロカーボンなどの液化ガスを用いる。
【符号の説明】
【0058】
1:容器本体
1a:環状肩部
2:マウンティングカップ
3:アンダーカット
4:ステム
【0059】
5:押下げボタン
5a:逆L字状の内容物通路
5b:上側段部付き筒状部
5c:放出孔部
5d:ボタン下端部分
【0060】
6:カバー体
6a:上小径筒状部
6b:下大径筒状部
6c:環状段部
6d:外向き上環凸状部
6e:縦リブ状部
6f:膨出部
6g:可動アーム状部
6h:可動基部
6j:円弧状部
6k:半円凹状部
6m:内端側上面
6n:凹み状部
【0061】
7:モード選択環状部材
7a:環天板状部
7b:ロック駆動片部
7c:内側平面
7d:外側周方向曲面
7e:ロック解除駆動片部
7f:外側周方向曲面
7g:内向き下環凸状部
7h:環状下端面
7j:モード指摘部
【0062】
R:ロックモードへ移行する際のモード選択環状部材の回動操作方向
R′:ロックモードを解除する際のモード選択環状部材の回動操作方向
B:ロックモード移行操作時の可動アーム状部の移動方向
C:ロックモード解除操作時の可動アーム状部の移動方向
図1
図2
図3