【文献】
中村 正祐 他,周波数領域プリコーディングを用いた空間変調OFDM方式の特性評価 ,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.112 No.423 ,日本,一般社団法人電子情報通信学会 ,2013年 1月24日,第112巻,pp.55-60
【文献】
杉浦 慎哉,空間変調通信方式,電子情報通信学会2015年総合大会講演論文集 基礎・境界 ,2015年 2月24日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、前記送信機と前記受信機との間の無線通信は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)伝送方式に空間変調を組み合わせた通信方式によって行われることを特徴とする無線通信システム。
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、前記送信機と前記受信機との間の無線通信は、GFDM(Generalized Frequency Division Multiplexing)伝送方式に空間変調を組み合わせた通信方式によって行われることを特徴とする無線通信システム。
【背景技術】
【0002】
近年の情報化社会の進展は実に目覚しく、多くの情報通信機器やサービスにおける通信方法として、有線通信のほかに、無線通信が利用されることも多くなっている。これに伴い、周波数利用効率向上のため、時空間符号化(STC:Space Time Coding)や多入力多出力(MIMO:Multi-Input Multi-Output)伝送方式に代表されるような、電波伝搬路の有する情報伝送容量を引き出す空間信号処理技術が実用化されており、また、さらなる高度化が求められている。
【0003】
ここで、空間信号処理技術の一種として、空間変調の研究が行われている。空間変調は、一種のMIMO伝送方式であるが、送信側に複数のアンテナを具備し、送信に使用するアンテナをそのうち一部のアンテナに限定することで、送信アンテナの選択行為に情報量を持たせる方式である(特許文献1〜3参照)。
【0004】
例えば、4つの送信アンテナ(#1〜#4)を備えた送信機において1つのアンテナを選んで電波を発射する場合に、アンテナ#1から電波を発射した場合は2ビット情報“00”、アンテナ#2から電波を発射した場合は2ビット情報“01”、アンテナ#3から電波を発射した場合は2ビット情報“10”、アンテナ#4から電波を発射した場合は2ビット情報“11”、をそれぞれ送信したものであると決めておけば、受信機において送信側が使用したアンテナを認識することで、2ビットの情報を取り出すことが可能となる。送信に使用するアンテナの切り替え(空間変調)を一定の周期(シンボル周期)で行うことで、連続して情報の伝送を行うことができる。また、このとき送信アンテナから発射する電波を変調することも可能であり、この場合はアンテナ選択による情報のほか、受信した電波を復調することで、一般的な搬送波変調方式を用いた情報の伝送も可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、空間変調は、送信機が複数のアンテナを具備し、例えば1つの送信アンテナを選択して電波を発射することに対して情報を乗せる変調方式である。
図6は、従来の空間変調を利用する無線送信機の構成の一例を示すブロック図である。
図6に示すように、空間変調を利用する方式においては、ある時刻において送信に使用されないアンテナが存在することになるため、各アンテナに接続された送信RF部(#1〜#4)の中でも使用されない時刻が生じることになる。
図7は、従来の空間変調を利用する無線送信機の構成の他の例を示すブロック図である。
図7に示すように、送信RF部を1つとして送信アンテナをスイッチによって切り替えることも可能であるが、スイッチによる損失が発生する。
また、
図8は、従来の空間多重方式または送信ダイバーシチ方式と空間変調方式での送信電力の違いを説明するための図であり、
図8(a)は空間多重方式または送信ダイバーシチ方式の場合を示し、また、
図8(b)は空間変調方式の場合を示している。
図6に示したような構成においては、同じ複数アンテナ方式である通常の空間多重方式や送信ダイバーシチ方式と切り替えて送信機を使用するようなことも可能と考えられる。
しかし、
図8(a)に示すように、空間多重方式や送信ダイバーシチ方式で複数アンテナから同時に送信する場合には、各アンテナでの送信出力をPtとすると、4つのアンテナ全体での総送信電力が4Ptとなる。また、同様の情報量を空間変調方式で1つのアンテナからを送信する場合には、
図8(a)に示す合計電力(4Pt)に相当する送信電力を、
図8(b)に示すように、1つのアンテナに集中して供給する必要があるため、高出力のパワーアンプを使用することによる送信機の電力効率低下や、パワーアンプの出力に制約があるような高周波数帯においては伝送可能距離の低下が発生してしまう。
【0007】
本発明は、このような従来の事情に鑑みなされたものであり、空間変調を利用する無線通信システムにおいて、未使用の送信アンテナおよび送信RF部が生じる確率を低下させ、各送信RF部が受け持つ送信電力を平準化させることができ、送信機の効率低下や伝送距離の低下を招くことなく無線通信が可能な無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る無線通信システムは、無線通信装置である送信機と受信機とを含んで構成され、前記送信機と前記受信機との間で空間変調を利用して無線通信を行う無線通信システムであって、前記送信機は、空間変調による無線通信を行う複数の送信アンテナと、複数の送信RF部と、少なくとも1つのベースバンド信号処理部とを備え、前記送信機と前記受信機との間の無線通信は複数の搬送波を使用するマルチキャリア伝送により行われ、前記送信機および前記受信機は、前記複数の搬送波を使用した通信を行う際に搬送波ごとに個別に空間変復調を実施する手段を備え、前記送信機は、送信する情報ビットをランダム化する手段を備え、それぞれの搬送波において各シンボル時刻における空間変調を行うことで、未使用となる送信RF部および送信アンテナの発生確率を低下させることを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る無線通信システムは、上記した無線通信システムにおいて、前記送信機と前記受信機との間の無線通信は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)伝送方式に空間変調を組み合わせた通信方式によって行われることを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る無線通信システムは、上記した無線通信システムにおいて、前記送信機と前記受信機との間の無線通信は、GFDM(Generalized Frequency Division Multiplexing)伝送方式に空間変調を組み合わせた通信方式によって行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、空間変調を利用する無線通信システムにおいて、未使用の送信アンテナおよび送信RF部が生じる確率を低下させ、各送信RF部が受け持つ送信電力を平準化させることができ、送信機の効率低下や伝送距離の低下を招くことなく無線通信が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る無線通信システムについて説明する。
【0014】
[無線通信システムの構成]
本発明の一実施形態に係る無線通信システム1の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る無線通信システムの全体構成の一例を示す図である。なお、本発明の一実施形態に係る無線通信システム1は、空間変調を利用する無線通信システムである。
図1に示すように、本発明の無線通信システム1は、戸別に設置される子局や携帯電話等の無線通信端末であるMS20と、これらの無線通信端末が接続する基地局であるBS10とを含んで構成され、30はBS10の通信エリアを示している。
また、BS10とMS20との間の無線通信は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)伝送方式に空間変調を組み合わせた通信方式によって行われる。BS10およびMS20はそれぞれ複数のアンテナを具備し、送信時に特定のアンテナを選択することによる空間変調と各サブキャリアに適用する直交振幅変調とを組み合わせ、選択された各アンテナから変調されたサブキャリアを送信する。
【0015】
[BSの構成]
次に、本発明の一実施形態に係る無線通信システム1のBS10の具体的な構成について、
図2を参照して説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る無線通信システムのBSの構成の一例を示すブロック図であり、
図2(a)はBS10の構成を示し、また、
図2(b)はBS10のBB信号処理部115の詳細な構成を示している。
【0016】
図2(a)に示すように、BS10は、電波の送受信を行うアンテナ101〜104と、データの送受信を行うデータ伝送部105と、自局全体の制御を行う主制御部106と、外部回線や外部装置とのインターフェースとなるインターフェース部107と、外部回線や外部装置と接続するための端子108とを備える。
【0017】
データ伝送部105は、RF部111〜114と、ベースバンド(BB)信号処理部115と、MAC処理部116とを備える。
RF部111〜114は、ベースバンドから無線周波数帯への周波数変換および無線周波数帯からベースバンドへの周波数変換や、信号増幅等の処理を行う。
BB信号処理部115は、送信BB部121と、受信BB部122とを備える。
【0018】
送信BB部121は、
図2(b)に示すように、ランダマイザ部131と、チャネル符号化部132と、送信情報分配部133と、空間変調部134と、OFDM変調部135とを備える。
受信BB部122は、
図2(b)に示すように、OFDM復調部141と、空間復調部142と、受信情報統合部143と、チャネル復号部144と、デランダマイザ部145とを備える。
【0019】
MAC処理部116は、自局が使用する周波数やデータ送受信タイミングの制御、通信パケットへの自局識別子の付加、およびデータ送信元の無線装置の認識などの処理を行う。
主制御部106は、例えば、プロセッサとメモリ上に定義されたデータ記憶領域とソフトウェアで構成することが可能である。また、BB信号処理部115、並びにMAC処理部116における処理は、例えば、主制御部106のプロセッサがハードディスクやフラッシュメモリ等のデータ記憶装置に記憶されているプログラムをメモリ上に読み出して実行することにより実現することが可能である。
【0020】
[MSの構成]
次に、本発明の一実施形態に係る無線通信システム1のMS20の具体的な構成について、
図3を参照して説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る無線通信システムのMSの構成の一例を示すブロック図であり、
図3(a)はMS20の構成を示し、また、
図3(b)はMS20のBB信号処理部215の詳細な構成を示している。
【0021】
図3(a)に示すように、MS20は、電波の送受信を行うアンテナ201〜204と、データの送受信を行うデータ伝送部205と、自局全体の制御を行う主制御部206と、外部回線や外部装置とのインターフェースとなるインターフェース部207と、外部回線や外部装置と接続するための端子208とを備える。
【0022】
データ伝送部205は、RF部211〜214と、ベースバンド(BB)信号処理部215と、MAC処理部216とを備える。
RF部211〜214は、ベースバンドから無線周波数帯への周波数変換および無線周波数帯からベースバンドへの周波数変換や、信号増幅等の処理を行う。
BB信号処理部215は、送信BB部221と、受信BB部222とを備える。
【0023】
送信BB部221は、
図3(b)に示すように、ランダマイザ部231と、チャネル符号化部232と、送信情報分配部233と、空間変調部234と、OFDM変調部235とを備える。
受信BB部222は、
図3(b)に示すように、OFDM復調部241と、空間復調部242と、受信情報統合部243と、チャネル復号部244と、デランダマイザ部245とを備える。
【0024】
MAC処理部216は、自局が使用する周波数チャネルやデータ送受信タイミングの制御、パケットへの自局識別子の付加、およびデータ送信元の無線装置の認識等の処理を行う。
主制御部206は、例えば、プロセッサとメモリ上に定義されたデータ記憶領域とソフトウェアで構成することも可能である。また、BB信号処理部215、並びにMAC処理部216における処理は、例えば、主制御部206のプロセッサがハードディスク等のデータ記憶装置に記憶されているプログラムをメモリ上に読み出して実行することにより実現することが可能である。
【0025】
次に、本発明の一実施形態に係る無線通信システム1において、BS10からMS20に対して空間変調で情報を伝送する際の送信側(BS10)の各アンテナから送信される信号の一例について、
図4および
図5を参照して説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る無線通信システムにおいて、BSからMSに対して空間変調で情報を伝送する際のBSの各アンテナから送信される信号の一例を説明するための図(1)である。また、
図5は、本発明の一実施形態に係る無線通信システムにおいて、BSからMSに対して空間変調で情報を伝送する際のBSの各アンテナから送信される信号の一例を説明するための図(2)である。
【0026】
BS10のデータ伝送部105において、送信BB部121により送信される情報は、
図2(b)に示すように、まず、ランダマイザ部131でランダム化され、チャネル符号化部132で符号化された後、送信情報分配部133に入力される。
送信情報分配部133は、空間変調に割り当てるビット数分の送信データを空間変調部134へ、また、OFDMのサブキャリア変調に割り当てるビット数分の送信データをOFDM変調部135へそれぞれ入力する。
【0027】
図4に示すように、本実施例においては、送信アンテナ数4、サブキャリア変調方式をQPSK(Quadrature Phase Shift Keying:4位相偏移変調)とすると、各サブキャリアにおいて、空間変調に割り当てるビット数が2ビット、サブキャリア変調に割り当てるビット数が2ビットとなる。
【0028】
空間変調部134は、送信情報分配部133から受け取った送信データに基づき、OFDMのサブキャリアごとに送信に使用するアンテナを選択し、選択したアンテナ番号をOFDM変調部135へ通知する。
例えば、サブキャリア1については、アンテナ102(#2)を選択し、選択したアンテナ番号(#2)をOFDM変調部135へ通知する。サブキャリア2については、アンテナ103(#3)を選択し、選択したアンテナ番号(#3)をOFDM変調部135へ通知する。サブキャリア3については、アンテナ101(#1)を選択し、選択したアンテナ番号(#1)をOFDM変調部135へ通知する。サブキャリア4については、アンテナ104(#4)を選択し、選択したアンテナ番号(#4)をOFDM変調部135へ通知する。サブキャリア5については、アンテナ103(#3)を選択し、選択したアンテナ番号(#3)をOFDM変調部135へ通知する。サブキャリア6については、アンテナ102(#2)を選択し、選択したアンテナ番号(#3)をOFDM変調部135へ通知する。
【0029】
OFDM変調部135では、空間変調部134で選択されたアンテナ番号に基づき、各サブキャリアを送信情報分配部133から受け取った送信データで変調してRF部111〜114へ出力する。
【0030】
ここで、OFDM変調部135は、
図4に示すように、サブキャリア変調器制御部151と、サブキャリア変調データ分配部152と、系統別変調器153とを備える。
具体的には、OFDM変調部135では、
図4に示すように、サブキャリア変調器制御部151で系統別変調器153を制御し、サブキャリア毎に、選択されたアンテナ#1〜#4に対応するRF部に接続される変調器のみをアクティブ、選択されなかったアンテナに対応するRF部に接続された変調器を非アクティブとする。
さらに、系統別変調器153は、アクティブな変調器のみを用いて、サブキャリア変調データ分配部152から通知されたサブキャリア変調データにより各サブキャリアを変調する。
例えば、系統別変調器153では、サブキャリア1については、アクティブな変調器#2のみを用いて、サブキャリア変調データ分配部152から通知されたサブキャリア変調データ“00”により変調する。サブキャリア2については、アクティブな変調器#3のみを用いて、サブキャリア変調データ分配部152から通知されたサブキャリア変調データ“10”により変調する。サブキャリア3については、アクティブな変調器#1のみを用いて、サブキャリア変調データ分配部152から通知されたサブキャリア変調データ“10”により変調する。サブキャリア4については、アクティブな変調器#4のみを用いて、サブキャリア変調データ分配部152から通知されたサブキャリア変調データ“11”により変調する。サブキャリア5については、アクティブな変調器#3のみを用いて、サブキャリア変調データ分配部152から通知されたサブキャリア変調データ“00”により変調する。サブキャリア6については、アクティブな変調器#2のみを用いて、サブキャリア変調データ分配部152から通知されたサブキャリア変調データ“01”により変調する。
【0031】
これにより、系統別変調器153からは、空間変調部134で選択された番号の系統のみから変調されたサブキャリアを出力することになり、RF部111〜114を通して、アンテナ101(#1)〜104(#4)から、
図5に示すような各送信信号が出力される。
【0032】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係る無線通信システムによれば、空間変調を利用する無線通信システムにおいて、未使用の送信アンテナおよび送信RF部が生じる確率を低下させ、各送信RF部が受け持つ送信電力を平準化させることができ、送信機の効率低下や伝送距離の低下を招くことなく無線通信が可能となる。
【0033】
なお、本発明は、本構成例に限定されるものではない。本構成例とは異なる以下のような構成をとることも可能である。ただし、以下に述べる例にも限定されるものではない。
【0034】
本実施形態では、BS10およびMS20の両方に空間変調部および空間復調部を備え、双方向の無線通信で空間変調を利用していたが、例えば、BSでは空間変調のみ、MSでは空間復調のみを行う構成や、MSでは空間変調のみ、MSでは空間復調のみを行う構成のような、片方向の無線通信のみで空間変調を利用する構成としてもよい。
【0035】
本実施形態では、無線通信に用いるマルチキャリア伝送方式としてOFDM方式を用いていたが、例えば、GFDM(Generalized Frequency Division Multiplexing)のようにOFDMに類する方式であって伝送帯域幅を複数の周波数帯域に分割して多重伝送を行う方式や、キャリアアグリゲーションのように離れた周波数の搬送波を複数使用するマルチキャリア伝送方式を用いてもよく、また、キャリアアグリゲーションとOFDMを組み合わせて利用してもよい。
【0036】
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。