特許第6552084号(P6552084)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552084
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 51/24 20060101AFI20190722BHJP
   B65D 47/08 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   B65D51/24
   B65D47/08 100
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-10378(P2015-10378)
(22)【出願日】2015年1月22日
(65)【公開番号】特開2016-132498(P2016-132498A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】加藤 啓育
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 眞吾
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−012005(JP,A)
【文献】 実開昭49−051647(JP,U)
【文献】 実開昭61−040356(JP,U)
【文献】 特開2013−075670(JP,A)
【文献】 実開昭48−051753(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 51/24
B65D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する容器本体と、該容器本体の上端部に着脱可能に取り付けられるキャップとを備え、
前記容器本体は、内容物を収容する胴部と、該胴部の上端に形成され、上方に向かって漸次窄まるように傾斜した肩部と、該肩部の上端に突設され、上端が開口した筒状の首部とを備え、
前記キャップは、中央部に注出口が形成された上板部と、前記上板部の外縁から垂下された外筒壁と、前記外筒壁の内側に、前記上板部から前記注出口を囲うように垂下された内筒壁と、前記上板部とヒンジ部を介して接続され、前記注出口を開閉自在に閉じる上蓋部と、を備え、
前記上板部は平面視で円の一部が直線状又は曲線状に切り欠かれた形状であり、
前記上板部における直線状又は曲線状の切欠辺と前記上蓋部とがヒンジ部を介して接続され、
前記首部の外周面には第一の係合部が設けられ、
前記内筒壁の内周面には第二の係合部が設けられ、
前記キャップを前記容器本体に取り付けた状態で、前記首部が前記内筒壁の内側に嵌まり、前記第一の係合部と前記第二の係合部とで係合構造が形成され、平面視において前記ヒンジ部が前記胴部における上端の外縁よりも内側に位置し、
前記外筒壁の対向する部分を径方向の内側に押圧したときに、前記外筒壁の下端が前記肩部に接してせり上がり、前記第一の係合部と前記第二の係合部との係合構造が解除され、
前記外筒壁の下端の底面視形状が、前記ヒンジ部側が直線状又は曲線状に欠けた欠円状であり、
前記外筒壁における前記ヒンジ部と反対側の前面部分及び側面部分は、下方に向かって漸次拡径しており、
前記キャップを前記容器本体に取り付け、前記外筒壁の対向する部分を径方向の内側に押圧していない状態において、前記胴部における上端側部分を搾ることで前記肩部を上側に凸に湾曲させても、前記外筒壁の下端が前記肩部と接触しないように、前記外筒壁の下端が前記肩部から離間している、容器。
【請求項2】
前記外筒壁における、前記上板部の切欠辺から垂直に垂下された背面壁部の下端が、上方に向かって凹んでいる、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記外筒壁における、平面視で前記ヒンジ部とその反対側を結ぶX方向に対して垂直なY方向において対向する部分に、前記外筒壁を径方向の内側に押圧する位置を示す押圧位置表示部が設けられている、請求項に記載の容器。
【請求項4】
前記上板部の曲げ剛性が前記外筒壁の曲げ剛性よりも高い、請求項1〜のいずれか一項に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に関する。
【背景技術】
【0002】
歯磨剤等を収容するチューブ容器や、化粧品等を収容するボトル容器におけるキャップとしては、ヒンジ式キャップが知られている。ヒンジ式キャップの具体例としては、筒状の外筒壁の下端が容器本体の上端部に打ち込み式の嵌合によって固定され、該外筒壁の上端を閉止するように設けられ、かつ中央部に内容物を注出する注出口が形成された上板部に、ヒンジ部を介して前記注出口を閉止する上蓋部が設けられたキャップが挙げられる。このようなヒンジ式キャップを備える容器は、片手で上蓋部を空けやすいため、使用性に優れる。しかし、該ヒンジ式キャップでは、内容物の残量が少なくなるにつれてキャップが邪魔になり内容物を押しにくくなる。また、該ヒンジ式キャップは一般的にその容積が大きいため、内容物がキャップ内部に残存して使い切れていない、というイメージを持たれやすい。
【0003】
そこで、該ヒンジ式キャップをネジ式にして容器本体の上端部に螺合装着して固定する容器が提案されている(例えば、特許文献1〜3)。該容器では、内容物の残量が少なくなった際に、ヒンジ式キャップを容器本体から外すことで内容物を使い切ることができる。しかし、前記容器では、ヒンジ式キャップを取り外す際に何周も回転させる必要があり、キャップの取り外し作業が煩雑である。
【0004】
また、残量が少なくなった内容物を使い切る際に、ヒンジ式キャップの外筒壁における対向する部分を内側に押圧することで、該外筒壁が容器本体の肩部をせり上がってキャップが外れるようにした容器も提案されている(特許文献4)。該容器では、キャップの外筒壁における対向する部分を内側に押圧するだけで、キャップを回転させることなく容器本体から取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−258853号公報
【特許文献2】特開2008−155961号公報
【特許文献3】特開2010−275001号公報
【特許文献4】特開2003−12005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献4の容器は、使用者が使用の都度、好みによって開封方式を選択することが想定されていない。すなわち、容器本体からキャップを一度外してしまうと、該キャップを再度容器本体に装着することができない。
また、ヒンジ式キャップにおいては、平面視においてヒンジ部が容器本体の胴部よりも外側に突出していると、使用時にヒンジ部が引っ掛かって取り扱いにくくなる。そのため、ヒンジ式キャップでは、良好な取り扱い性を確保するために、平面視において、ヒンジ部を容器本体の胴部における上端の外縁よりも内側に収めることが重要である。しかし、特許文献4のような容器において、平面視におけるヒンジ部の位置を胴部における上端の外縁よりも内側に収めようとすると、胴部上端の外径に比べて外筒壁の外径が小さくなる。その結果、外筒壁が容器本体の肩部をせり上がる距離が短くなり、容器本体に対してキャップが充分に押し上げられないことで、キャップが外れにくくなることある。
【0007】
本発明は、使用者が好みに応じて開封方法を選択でき、内容物を使い切りやすく、また優れた取り扱い性とキャップの取り外しの容易性が両立された容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の容器は、内容物を収容する容器本体と、該容器本体の上端部に着脱可能に取り付けられるキャップとを備え、前記容器本体は、内容物を収容する胴部と、該胴部の上端に形成され、上方に向かって漸次窄まるように傾斜した肩部と、該肩部の上端に突設され、上端が開口した筒状の首部とを備え、前記キャップは、中央部に注出口が形成された上板部と、前記上板部の外縁から垂下された外筒壁と、前記外筒壁の内側に、前記上板部から前記注出口を囲うように垂下された内筒壁と、前記上板部とヒンジ部を介して接続され、前記注出口を開閉自在に閉じる上蓋部と、を備え、前記上板部は平面視で円の一部が直線状又は曲線状に切り欠かれた形状であり、前記上板部における直線状又は曲線状の切欠辺と前記上蓋部とがヒンジ部を介して接続され、前記首部の外周面には第一の係合部が設けられ、前記内筒壁の内周面には第二の係合部が設けられ、前記キャップを前記容器本体に取り付けた状態で、前記首部が前記内筒壁の内側に嵌まり、前記第一の係合部と前記第二の係合部とで係合構造が形成され、平面視において前記ヒンジ部が前記胴部における上端の外縁よりも内側に位置し、前記外筒壁の対向する部分を径方向の内側に押圧したときに、前記外筒壁の下端が前記肩部に接してせり上がり、前記第一の係合部と前記第二の係合部との係合構造が解除される。
【0009】
本発明の容器においては、前記外筒壁が下方に向かって漸次拡径していることが好ましい。
また、前記外筒壁の下端の底面視形状は、前記ヒンジ部側が直線状又は曲線状に欠けた欠円状であることが好ましい。
また、前記外筒壁における、前記上板部の切欠辺から垂直に垂下された背面壁部の下端は、上方に向かって凹んでいることが好ましい。この場合、前記外筒壁における、平面視で前記ヒンジ部とその反対側を結ぶX方向に対して垂直なY方向において対向する部分に、前記外筒壁を径方向の内側に押圧する位置を示す押圧位置表示部が設けられていることが好ましい。
また、前記キャップを前記容器本体に取り付けた状態で前記肩部を上側に凸に湾曲させたときに、前記外筒壁の下端が前記肩部と接触しないように、前記外筒壁の下端が前記肩部から離間していることが好ましい。
また、前記上板部の曲げ剛性が前記外筒壁の曲げ剛性よりも高いことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の容器は、使用者が好みに応じて開封方法を選択でき、内容物を使い切りやすく、また優れた取り扱い性とキャップの取り外しの容易性が両立された容器を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の容器の一例を示す図であり、容器本体は側面図で示し、キャップは断面図で示す。
図2図1の容器における上蓋部を開いた図であり、容器本体は側面図で示し、キャップは断面図で示す。
図3図1の容器におけるキャップ近傍を拡大した図であり、容器本体は側面図で示し、キャップは断面図で示す。
図4図1の容器の平面図である。
図5図1の容器におけるキャップの斜視図である。
図6図1の容器におけるキャップの底面図である。
図7図1の容器におけるキャップの背面図である。
図8】本発明の他の容器を示す図であり、容器本体は側面図で示し、キャップは断面図で示す。
図9図8の容器の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「係合状態」とは、2つの係合部(例えば、突起と溝、突起と突起、等)が、嵌合、掛止、当接等によって互いに係り合って特定の方向への移動が規制されている状態を意味する。
「上方」とは、容器本体の底部からキャップの上蓋部に向かう方向を意味し、「上端」とは、該方向の端を意味する。
「下方」とは、キャップの上蓋部から容器本体の底部に向かう方向を意味し、「下端」とは、該方向の端を意味する。
「上下方向」とは、上方及び下方の両方を意味する。
「ヒンジ」とは、2つの材の接合部分に設けられ、回動軸を中心にして2つの材を回動できるようにした機構を意味する。回動軸としては、一方の材の周縁の一部及び他方の材の周縁の一部と一体成形された接合部に形成された、各材の中心と接合部とを結ぶ線分に直交する方向に筋状に延びる折り曲げ可能な薄肉部;一方の材の周縁の一部に一体成形された1つ以上の円筒と、他方の材の周縁の一部に一体成形された1つ以上の円筒とが互い違いになるように、各円筒に挿入された円柱等が挙げられる。
「X方向」とは、平面視においてキャップのヒンジ部からその反対側を結ぶ方向を意味する。
「Y方向」とは、平面視においてX方向と直交する方向を意味する。
「キャップの前面」とは、キャップのX方向におけるヒンジ部と反対側の外側面を意味する。
「キャップの背面」とは、キャップのX方向におけるヒンジ部側の外側面を意味する。
「キャップの側面」とは、キャップのX方向において対向する部分の外側面を意味する。
【0013】
以下、本発明の容器の一例について、図1〜7に基づいて説明する。
本実施形態の容器1は、図1〜3に示すように、内容物を収容する容器本体2と、容器本体2の上端部に着脱可能に取り付けられるキャップ3と、を備えている。容器1は、ペースト状物等の内容物の収容に用いられる、いわゆるチューブ容器である。
【0014】
(容器本体)
容器本体2は、内容物を収容する胴部10と、胴部10の上端に形成され、上方に向かって漸次窄まるように傾斜した肩部12と、肩部12の上端に突設され、上端が開口した円筒状の首部14と、を備えている。
【0015】
首部14の外周面には、首部14の全周にわたって径方向の外側に突き出る環状の凸条からなる第一の係合部16が設けられている。第一の係合部16の縦断面形状は、この例では三角形状であるが、三角形状には限定されず、半円形、矩形等であってもよい。
【0016】
首部14は、第一の係合部16よりも下方に形成された、外径が他の部分よりも大きくされた大径部14aを有する。
【0017】
胴部10の下端には、上下方向に直交する方向に延びるエンドシール部10aが形成されている。
【0018】
容器本体2の材料としては、公知の材料を使用でき、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリスチレン(PS)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エラストマー、ポリオキシメチレン(POM)、シリカ、ガラス、金属箔、又はこれらの複合材料等が挙げられる。
【0019】
(キャップ)
キャップ3は、図3〜7に示すように、外筒壁18と、上板部20と、内筒壁22と、上蓋部26と、を備えている。上板部20は、平面視で円の一部が直線状に欠けた形状であり、中央部に注出口20aが形成されている。外筒壁18は、上板部20の外縁から垂下されている。内筒壁22は、外筒壁18よりも内側において、上板部20から注出口20aを囲うように垂下されている。上蓋部26は、上板部20における切欠辺20bとヒンジ部24を介して接続され、注出口20aを開閉自在に閉じるようになっている。
【0020】
外筒壁18においては、キャップ3を容器本体2に取り付けた状態で径方向の内側に押圧されたときに下端18aが肩部12に接するようになっている。そして、外筒壁18における対向する部分を径方向の内側に押圧したときには、外筒壁18の下端18aが肩部12に接し、さらに外筒壁18の下端18aが肩部12をせり上がることで、キャップ3が押し上げられて容器本体2から外れるようになっている。
【0021】
外筒壁18は、平面視形状が円形におけるヒンジ部24側が直線状に欠けた欠円状である。外筒壁18における前面部分及び側面部分は、下方に向かって漸次拡径している。
キャップ3の外筒壁18における背面側の部分は、上板部20における背面部分から、上板部20に対して垂直に垂下されている。このように、外筒壁18における背面壁部18bは、上下方向において外径が変化しないようになっている。これにより、特別な金型を用いることなく、より低コストにキャップ3を製造することができる。
【0022】
図6に示すように、外筒壁18の下端18aの底面視形状は、円形のヒンジ部24側が直線状に欠けた欠円状になっている。
図7に示すように、外筒壁18における、上板部20の切欠辺20bから垂直に垂下された背面壁部18bの下端18aは、肩部12の形状に沿って上方に向かって凹んだ円弧状になっている。
【0023】
外筒壁18の対向する部分を径方向の内側に押圧していない状態においては、外筒壁18の下端18aは、キャップ3を容器本体2に取り付けた状態で肩部12を上側に凸に湾曲させても肩部12と接触しないように、肩部12から離間していることが好ましい。これにより、内容物の残量が少ないときに容器本体2の胴部10における上端側部分を搾ることで、肩部12が上側に凸に湾曲しても、キャップ3が予期せず外れることを抑制できる。
【0024】
外筒壁18における、ヒンジ部24とその反対側を結ぶX方向に対して垂直なY方向において対向する部分には、図5に示すように、外筒壁18を径方向の内側に押圧する位置を示す押圧位置表示部19が設けられている。本発明では、外筒壁の平面視形状が前記したような欠円状である場合、本実施形態のように外筒壁におけるY方向において対向する部分に押圧位置表示部を設けることが好ましい。
外筒壁の平面視形状が、ヒンジ部側が欠けた欠円状である場合、外筒壁におけるY方向において対向する部分を押圧する方が、外筒壁におけるX方向において対向する部分を押圧する場合に比べて外筒壁が肩部をせり上がりやすい。そのため、押圧位置表示部を設けて該押圧位置表示部を押圧するように促すことで、容器本体からキャップを容易に取り外すことが可能となる。
【0025】
この例の押圧位置表示部19は、上下方向に延び、かつ外筒壁18の外側面から外方に突出する複数の凸条からなる。押圧位置表示部19の態様は、複数の凸条からなる態様には限定されず、印刷等により形成してもよい。
押圧位置表示部19の正面視形状は、この例では略半円状になっている。なお、押圧位置表示部19の正面視形状は、矩形状等であってもよい。
【0026】
上板部20の平面視形状は、円におけるヒンジ部24側が直線状に欠けた形状である。このように、キャップ3においては、上板部20の平面視形状をヒンジ部24側が欠けた形状にすることで、平面視において、ヒンジ部24が、容器本体2の胴部10における上端の外縁よりも内側に収まるようにしている。これにより、使用時、保管時、輸送時等にヒンジ部24が引っ掛かって取り扱いにくくなることを抑制できる。
また、上板部20にこのようなヒンジ部24側が欠けた形状を採用することで、内容物の充填設備のサイズを変更する必要がなく、内容物の充填が容易になる。また、平面視においてヒンジ部24を胴部10における上端の外縁よりも内側に収めつつ、外筒壁18における前面部分及び側面部分の半径を胴部10の上端部の半径と同等となるまで大きくすることができる。これにより、外筒壁18における対向する部分を径方向の内側に押圧したときに、外筒壁18が肩部12をせり上がってキャップ3が充分に押し上げられやすくなることで、キャップ3が容器本体2から外れやすくなる。
【0027】
また、平面視において、上板部20におけるヒンジ部24と反対側の部分は、後述する凹部32により、径方向の外側に向かって凸の曲線状に円の一部が欠けた形状になっている。このように、この例の上板部20全体の平面視形状は、Y方向に長い略楕円状になっている。
【0028】
また、この例では、図4に示すように、底面視において、外筒壁18の下端18aにおけるヒンジ部24側が欠けていない状態を想定したときの、外筒壁18の下端18aの円形の仮想線kよりも内側にヒンジ部24が位置している。本発明では、このように底面視において、外筒部の下端におけるヒンジ部側が欠けていない状態を想定したときの、該下端の円形の仮想線よりも内側にヒンジ部を位置させることが好ましい。これにより、使用時にヒンジ部が引っ掛かって取り扱いにくくなることを抑制しつつ、外筒部の下端をできるだけ胴部における上端の外縁に近づけて、キャップの取り外しを容易にすることができる。
【0029】
上板部20における内筒壁22の内側の中央部分には、平面視円形状の注出口20aが形成されている。注出口20aの直径は、首部14における上端開口部14bの直径よりも小さくなっている。
【0030】
図6に示すように、この例では、上板部20における、平面視でヒンジ部24からその反対側を結ぶ方向(X方向)と直交する方向(Y方向)で、内筒壁22の両側の外筒壁18寄りの位置には、開口25,25がそれぞれ形成されている。開口25,25が形成されていることで、肩部12上の外筒壁18の内側に水が入り込んだとしても乾燥しやすいため、肩部12にカビが生えにくい。また、開口25,25が上板部20における上記の位置に形成されていることで、使用時に、後述の注出筒部23から出た内容物によって開口25,25が埋まることが抑制される。
開口25,25の平面視形状は、この例では円形である。なお、開口25,25の平面視形状は、円形には限定されず、三角形状、矩形状等であってもよい。
【0031】
上板部20の曲げ剛性は、外筒壁18の曲げ剛性よりも高いことが好ましい。これにより、外筒壁18における対向する部分を径方向の内側に押圧する際に、外筒壁18の変形に伴って上板部20が変形し、上蓋部26が予期せず開くことを抑制できる。
上板部20の曲げ剛性を外筒壁18の曲げ剛性よりも高くする態様は、特に限定されず、上板部20の厚みを外筒壁18の厚みよりも厚くする態様、外筒壁18を形成する材料よりも曲げ剛性が高くなる材料で上板部20を形成する態様、上板部20にリブを設けて補強する態様等が挙げられる。なかでも、製造が容易な点から、上板部20の厚みを外筒壁18の厚みよりも厚くする態様が好ましい。
【0032】
内筒壁22は、上板部20における外筒壁18よりも内側から下方に延びるように設けられている。内筒壁22は円筒状である。内筒壁22の内径は、容器本体2の首部14の外径とほぼ同等になっており、内筒壁22の内部に容器本体2の首部14が嵌まり込むようになっている。
【0033】
内筒壁には、周方向において、内筒壁の下端から上方に向かって延びる1つ以上の切欠部が形成されていることが好ましい。これにより、内筒壁が撓みやすくなるため、内筒壁の内部に容器本体の首部を嵌め込んで、第一の係合部と後述の第二の係合部を係合させることが容易になる。内筒壁に形成される切欠部の数は、特に限定されず、1つであってもよく、複数であってもよい。
内筒壁に形成される切欠部は、スリット状になっていてもよい。
【0034】
内筒壁22の内周面22aにおける下端寄りの部分には、内周面22aの周方向に全周にわたって延び、径方向の内側に突き出る環状の凸条からなる第二の係合部28が設けられている。
内筒壁22は可撓性を有しており、首部14をキャップ3の内筒壁22の内側に嵌め込んでキャップ3を容器本体2に取り付けたときに、第一の係合部16と第二の係合部28が係合構造を形成するようになっている。具体的には、第二の係合部28が第一の係合部16の下側に引っ掛かって掛止されることで係合構造が形成される。これにより、容器本体2に取り付けたキャップ3が上方に移動することが規制され、キャップ3が予期せず外れることが抑制されている。
【0035】
キャップ3を容器本体2に取り付けた状態で、外筒壁18の対向する部分を径方向の内側に押圧したときには、外筒壁18が肩部12をせり上がりつつ、第一の係合部16と第二の係合部28とで係合構造が解除されることで、キャップ3が押し上げられて容器本体2から外れる。
【0036】
第二の係合部28の縦断面形状は、この例では三角形状であるが、三角形状には限定さ
れず、半円形、矩形等であってもよい。
【0037】
上板部20の下面における内筒壁22よりも内側には、注出口20aの周縁から垂下された筒状のスリーブ21が設けられている。キャップ3を容器本体2の首部14に取り付けた状態においては、スリーブ21は、首部14の上端開口部14bの内側に液密に挿入されるインナーリングとして作用する。これにより、キャップ3を容器本体2に取り付けた状態で、上板部20の下方において首部14から肩部12に内容物が漏れることが抑制される。
【0038】
上板部20の上面における内筒壁22よりも内側には、注出口20aの周縁から上方に突設された筒状の注出筒部23が設けられている。容器1では、容器本体2内に収容された内容物が、首部14からスリーブ21、注出口20aを介して注出筒部23から注出される。
【0039】
ヒンジ部24のヒンジ機構は、特に限定されず、例えば、1点式、2点式、3点式、バタフライ式、スナップヒンジ式、バネ嵌合式等を採用できる。
【0040】
上蓋部26の中央部には、上蓋部26の下面から垂下された環状の突起部30が設けられている。キャップ3を容器本体2に取り付けた状態においては、上板部20から上方に突出する注出筒部23の先端部が環状の突起部30内に嵌まり込むようになっている。すなわち、上蓋部26は、いわゆるアウターリング方式によって注出口20aと通じる注出筒部23を開閉自在に塞ぐようになっている。これにより、上蓋部26を閉めた状態において内容物が漏れることが抑制される。
なお、本発明の容器においては、インナーリング方式を採用してもよく、インナーボス方式を採用してもよい。
【0041】
上蓋部26及び外筒壁18におけるヒンジ部24と反対側の前面部分には、径方向の内側に凹んだ凹部32が形成されており、上蓋部26の前面側の先端部が指掛部34とされている。これにより、指掛部34に指を掛けて上蓋部26を容易に開くことができる。
この例の凹部32は、外筒壁18における下端18aから上方に向かうにしたがって径方向に内側に凹み、かつ上蓋部26の上端から下方に向かうにしたがって径方向に内側に凹むように形成されている。
凹部32の形状及び大きさは、特に限定されず、キャップ3の大きさ等に応じて適宜設定できる。
【0042】
図7に示すように、この例では、上蓋部26の背面部分には、ヒンジ部24の両側に開口27,27がそれぞれ形成されている。これにより、肩部12と外筒壁18の下端18aの隙間から、肩部12上の外筒壁18の内側、上板部20に形成された開口25,25、及び上蓋部26に形成された開口27,27まで通じる空気の通り道ができる。そのため、肩部12上の外筒壁18の内側に水が入り込んだときの乾燥速度がより速くなるため、肩部12にカビがより生えにくくなる。
開口27,27の正面視形状は、この例では矩形である。なお、開口27,27の平面視形状は、矩形には限定されず、円形状、三角形状等であってもよい。
【0043】
キャップ3の材料は、キャップに通常用いられる材料であれば特に限定されず、例えば、PP、PE、PA、PET、PS、金属、又はこれらの複合材料等が挙げられる。
【0044】
(製造方法)
容器1の製造方法は、特に限定されない。例えば、肩部12と首部14が一体となった成形体の肩部12の下端に、胴部10を形成するラミネート製の筒体を取り付け、首部14にキャップ3を取り付け、それらをキャップ3を下にした状態で筒体の底部から内容物を充填し、底部をシールして胴部10を密封することで容器1とする方法が挙げられる。
肩部12及び首部14は、例えば、コンプレッション成形、射出成形、ブロー成形等で一体に形成できる。また、キャップ3は、射出成形等で形成できる。
【0045】
(内容物)
容器1に収容される内容物としては、特に限定されず、例えば、歯磨剤、食品(練りワサビ、練りガラシ等。)、薬品(軟膏等。)、医薬部外品(スキンクリーム、シャンプーリンス等。)等のペースト状物が挙げられる。
【0046】
(作用効果)
前述したように、特許文献4のような容器では、使用者が使用の都度、好みによって開封方式を選択することが想定されておらず、容器本体からキャップを一度外してしまうと、該キャップを再度容器本体に装着することができない。また、良好な取り扱い性を確保するために、平面視におけるヒンジ部の位置を胴部における上端の外縁よりも内側に収めようとすると、キャップの外筒壁の外径が小さくなることで、外筒壁が容器本体の肩部をせり上がる距離が短くなり、キャップを外すことが難しくなる。
【0047】
これに対して、容器1では、使用する際に、その都度使用者が自身の好みで開封形式を任意に選択できる。具体的には、例えば、図2に示すように、容器本体2における胴部10の上端側部分を掴み、指掛部34に指を引っ掛けて上蓋部26を開くことで、注出筒部23から内容物を注出して使用することができる。
また、外筒壁18におけるY方向の対向する押圧位置表示部19の部分を、径方向に内側に押圧することで、外筒壁18の下端18aが肩部12の表面をせり上がり、キャップ3が押し上げられて第一の係合部16と第二の係合部28の係合状態が解除される。このように、容器1ではワンタッチで容易にキャップ3を容器本体2から取り外すことができる。さらに、一度取り外したキャップ3は、容器本体2の首部14に嵌め込み、第一の係合部16と第二の係合部28の係合させることで再び取り付けることができる。
容器1では、特に内容物の残量が少なくなった際には、このようなワンタッチ式でキャップ3を取り外すことができるため、容易に内容物を使い切ることができる。
【0048】
また、容器1では、平面視におけるヒンジ部24の位置を胴部10における上端の外縁よりも内側に収めた状態でも、キャップ3の外筒壁18における前面部分及び側面部分の半径を胴部10の半径とほぼ同等にすることができる。そのため、外筒壁18における前面部分及び側面部分においては、径方向の内側に押圧されたときに容器本体2の肩部12をせり上がる距離が充分に長くなる。これにより、キャップ3が容器本体2に対して相対的に充分に上方に押し上げられることで、第一の係合部16と第二の係合部28の係合状態を解除してキャップ3を取り外すことが容易になる。
このように、容器1では、使用時にヒンジ部24が引っ掛かって取り扱いにくくなることを抑制できるうえ、外筒壁18における対向する部分を内側に押圧してキャップ3を外すことも容易である。
【0049】
以上説明したように、本発明の容器においては、使用者が好みに応じて開封方法を選択でき、内容物を使い切りやすく、また優れた取り扱い性とキャップの取り外しの容易性が両立されている。
【0050】
なお、本発明の容器は、前記した容器1には限定されない。
例えば、本発明の容器においては、上板部の平面視形状が、円におけるヒンジ部側の一部が曲線状に欠けた形状であってもよい。この場合は、円におけるヒンジ部側が、径方向の内側に向かって凹むように曲線状に欠けた形状にすることが好ましい。なお、円におけるヒンジ部側が、径方向の外側に向かって凸となるように曲線状に欠けた形状にしてもよい。
また、外筒壁の平面視形状や、外筒壁の下端の底面視形状は、円におけるヒンジ部側が曲線状に欠けた欠円状であってもよい。この場合、外筒壁の平面視形状や、外筒壁の下端の底面視形状は、円におけるヒンジ部側が、径方向の内側に向かって凹むように曲線状に欠けた欠円状にすることが好ましい。なお、外筒壁の平面視形状や、外筒壁の下端の底面視形状は、円におけるヒンジ部側が、径方向の外側に向かって凸となるように曲線状に欠けた欠円状にしてもよい。
また、外筒壁は、下方に向かって漸次拡径していなくてもよい。
【0051】
また、キャップにおける外筒壁の下端の底面視形状は、ヒンジ部側が直線状又は曲線状に欠けた欠円状には限定されず、円形状であってもよい。具体的には、例えば、図8及び図9に例示した容器4であってもよい。図8及び図9における図3及び図4と同じ部分には、同符号を付して説明を省略する。
容器4は、外筒壁18の代わりに外筒壁18Aを有するキャップ3Aを備える以外は、容器1と同じである。
【0052】
外筒壁18Aは、背面壁部18bが、平面視においてY方向に直線状に延びるように上板部20の切欠辺20bから垂直に垂下された上端側部分18cと、上端側部分18cの下端から径方向の外側に延びる突出部分18dと、突出部分18dの先端から、下方に向かうにしたがって拡径するように垂下された下端側部分18eとを備える以外は、外筒壁18と同じである。外筒壁18における下端18aの底面視形状は円形になっている。すなわち、外筒壁18Aは、上端側の平面視形状が、ヒンジ部側が直線状に欠けた欠円状であり、かつ下端18aの底面視形状が円形になっている以外は、外筒壁18と同様の態様である。
【0053】
容器4では、外筒壁18における下端18aの底面視形状は円形になっていることで、外筒壁18におけるX方向に対向する部分を径方向の内側に押圧したときでも、外筒壁18におけるヒンジ部24側の下端18aが容器本体2の肩部12を充分にせり上がる。そのため、容器1に比べて、外筒壁18におけるX方向に対向する部分を径方向の内側に押圧して、キャップ3Aを取り外すことが容易である。
また、容器4においても、容器1と同様に、使用する際に使用者が好みで開封形式を任意に選択でき、内容物の残量が少なくなった際にはワンタッチ式でキャップ3Aを取り外して容易に内容物を使い切ることができるうえ、内容物を注出する際に扱いやすい。
ただし、特殊な金型を用いずに、より低コストにキャップを成形できる点では、キャップ3のように、外筒壁における背面壁部が上板部における背面側の切欠辺から上板部に対して垂直に垂下されていることが好ましい。
【0054】
また、本発明の容器においては、係合構造を形成する第一の係合部と第二の係合部の組み合わせは、容器1、4における第一の係合部16と第二の係合部28のような態様には限定されない。例えば、首部の外周面に周方向に溝を形成し、該溝にキャップの凸条からなる第二の係合部が嵌まり込んで引っ掛かることで係合構造が形成されるようにしてもよい。
【0055】
また、本発明の容器においては、外筒壁の下端の底面視形状が円形の場合等には、キャップを容器本体に取り付けた状態で外筒壁の下端が肩部と接触するようにしてもよい。
また、外筒壁のY方向において対向する部分に押圧位置表示部を設けない容器であってもよい。
また、図8及び図9に例示した容器4のように、外筒壁の下端の底面形状を円形状とする場合には、押圧位置表示部の位置は外筒壁のY方向において対向する部分には限定されず、外筒壁の外側面のいずれの部分であってもよい。
また、本発明の容器は、キャップにおける上板部の曲げ剛性が外筒壁の曲げ剛性よりも高くなっていない容器であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1、4 容器
2 容器本体
3,3A キャップ
10 胴部
12 肩部
14 首部
16 第一の係合部
18 外筒壁
18a 下端
20 上板部
20a 注出口
21 スリーブ
22 内筒壁
23 注出筒部
24 ヒンジ部
26 上蓋部
28 第二の係合部
30 突起部
32 凹部
34 指掛部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9