特許第6552089号(P6552089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552089
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】歯ブラシの製造方法、及び歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
   A46D 1/05 20060101AFI20190722BHJP
   A46B 9/04 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   A46D1/05
   A46B9/04
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-89297(P2015-89297)
(22)【出願日】2015年4月24日
(65)【公開番号】特開2016-202670(P2016-202670A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】山本 ゆかり
【審査官】 石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4547891(JP,B2)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0120547(KR,A)
【文献】 特開平09−098837(JP,A)
【文献】 特表2002−512540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46D 1/05
A46B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平線植毛法を用いた歯ブラシの製造方法であって、
同じ長さとされた複数の用毛よりなる用毛群の端を揃える用毛群準備工程と、
前記用毛群準備工程後、前記用毛群の長さ方向の中心位置において、該用毛群を2つ折りにして、平線を介して、ヘッド部の植毛穴に植毛する植毛工程と、
前記植毛工程後、前記用毛群の先端部を先割れ形状に加工することで、該先割れ形状とされた前記用毛群からなる毛束を、前記毛束の先端が前記平線の延在方向から見て山型形状に、前記平線の延在方向に対して直交する方向から見て略フラット形状に形成する先割れ加工工程と、
を含むことを特徴とする歯ブラシの製造方法。
【請求項2】
前記先割れ加工工程では、前記毛束の頂点を基準としたときの前記先割れ加工する部分の深さが、1.0mm以上4.0mm以下となるように、前記用毛群の先端部を加工することを特徴とする請求項1記載の歯ブラシの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の歯ブラシの製造方法を用いて製造されたことを特徴とする歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシの製造方法、及び歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯周病用の歯ブラシには、歯と歯肉との境目を磨きやすい刷毛仕様が要求されるため、ドームカットの毛切りが採用されている。しかし、単純なドームカットでは、歯と歯の間の根元部分(いわゆる、歯間三角)へのフィット感が低く、隅々まできれいに清掃することが困難であった。
隙間部の清掃性は、山切りカットや毛束円錐カットなどが適している。しかし、これを歯周病用の歯ブラシに適用すると、当たり心地のソフトさに欠けるため、使いづらいものとなっていた。
【0003】
特許文献1には、歯周病の改善や予防の観点から歯周ポケットや歯肉辺縁のプラークを除去するとともに、適度なマッサージを歯肉に行うことが有効であると記載されている。また、これに好適な歯ブラシとして、毛束の先端部を円錐形状に加工した平線植毛式歯ブラシや、毛先が先割れした用毛を用いた歯ブラシが開示されている。
特許文献2には、歯肉へのソフトな当たり心地を実現する観点から、フェザード毛(先割れ用毛)を用いた歯ブラシが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4831621号公報
【特許文献2】特許第4547891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的な平線式植毛歯ブラシにおいて、立体的な3次元プロファイルを形成する場合、植毛後、毛切りカッターを用いて、刷毛に3次元プロファイルを形成する。
このため、特許文献1では、歯ブラシのヘッド部に対して異なる複数の方向から、カッターを用いて毛束の先端を略山形にカットする工程と、カットされた毛束の先端を毛先丸め装置によって丸め加工することで、毛束の先端を略半球状に整形する工程と、を行う。
しかしながら、この方法では、複数方向からカッターを当てるため、工程分のカッターが必要な点と、工程が煩雑になることから生産コスト(効率)の低下が懸念される。
また、2面以上の場合は、特許文献1で開示されているプロファイル以上の複雑な3次元プロファイルを形成すること(例えば、千鳥配列などのように植毛穴同士が各軸方向に重複する配列において、各毛束を略円錐状に形成すること)は事実上困難であった。
つまり、上述した平線式植毛法を用いて、複雑な3次元プロファイルを形成することは、困難であった。
【0006】
さらに特許文献2では先割れ用毛が開示されているが、通常は植毛した後に毛先加工を施すことから、毛束の先を切り揃える工程と、毛先を先割れさせる工程と、が必要となるため、コストが上昇するという問題があった。
また、毛束の先を切り揃えられて先割れされた歯ブラシは、特に、歯肉に症状のある使用者にとって、「歯肉へのやさしい当たり心地」を実感するには不十分であるという問題もあった。
【0007】
なお、複雑な3次元プロファイルの形成に好適な歯ブラシの製造方法として、例えば、インモールド成形などの非平線式植毛法がある。
しかし、非平線式植毛法は、平線式植毛法と比較して、歯ブラシの品種の切り替え性も悪い。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、平線式植毛法を用いて、簡便な手法により、高い清掃力を有し、かつ毛先の当たり心地のよい毛束の3次元プロファイル及び用毛の先端部を形成可能な歯ブラシの製造方法、及び歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る歯ブラシは、平線植毛法を用いた歯ブラシの製造方法であって、同じ長さとされた複数の用毛よりなる用毛群の端を揃える用毛群準備工程と、前記用毛群準備工程後、前記用毛群の長さ方向の中心位置において、該用毛群を2つ折りにして、平線を介して、ヘッド部の植毛穴に植毛する植毛工程と、前記植毛工程後、前記用毛群の先端部を先割れ形状に加工することで、該先割れ形状とされた前記用毛群からなる毛束を形成する先割れ加工工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記先割れ加工工程では、前記毛束の頂点を基準としたときの前記先割れ加工する部分の深さが、1.0mm以上4.0mm以下となるように、前記用毛群の先端部を加工してもよい。
【0011】
本発明の一態様に係る歯ブラシは、請求項1または2記載の歯ブラシの製造方法を用いて製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、平線式植毛法を用いて、簡便な手法により、高い清掃力を有し、かつ毛先の当たり心地のよい毛束の先端部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る歯ブラシの主要部の断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る歯ブラシの製造工程を示す図(その1)である。
図3】本発明の実施の形態に係る歯ブラシの製造工程を示す図(その2)である。
図4図2に示す用毛の先端部を拡大した斜視図である。
図5】本発明の実施の形態に係る歯ブラシの製造工程を示す図(その3)である。
図6】本発明の実施の形態に係る歯ブラシの製造工程を示す図(その4)である。
図7】上部の直径が2mm、1.5mm、1.3mmの植毛穴に植毛された実施例1〜3の用毛群を平線の延在方向から撮影した写真、実施例1〜3の用毛群の先端部を先割れ加工工程後の実施例1〜3の毛束を平線の延在方向から撮影した写真、及び実施例1の毛束を平線と直交する方向から撮影した写真である。
図8】上部の直径が2mm、1.5mm、1.3mmの植毛穴に植毛され、フラットカット及び先割れ加工された比較例1〜3の毛束を平線の延在方向から撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の歯ブラシの寸法関係とは異なる場合がある。
【0015】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る歯ブラシの主要部の断面図である。図1に示すD1は、毛束23の頂点23Aを基準としたときの先割れ加工する部分の深さ(以下、「深さD1」という)を示している。
なお、図1では、1つの植毛穴14及び毛束23を図示した場合を例に挙げて説明したが、実際の歯ブラシ10は、複数の植毛穴14と、複数の植毛穴14に植毛された毛束23と、を有する。
【0016】
図1を参照するに、本実施の形態の歯ブラシ10は、植毛穴14を有するヘッド部11と、ネック部(図示せず)と、ネック部の後端と一体とされたハンドル部(図示せず)と、植毛穴14に配置された毛束23及び平線21からなる刷毛部と、を有する。
ヘッド部11は、植毛面11aを有しており、ネック部(図示せず)の先端と一体に構成されている。植毛穴14は、ヘッド部11に設けられている。図1では、一例として、下部が円錐形状とされ、かつ上部が円柱形状とされた植毛穴14を図示するが、植毛穴14の形状は、これに限定されない。
【0017】
毛束23は、平線21により、植毛穴14に植毛されている。毛束23の先端部23Bは、平線21の延在方向(図1の紙面に向かう方向)から見て、山型形状(先端が三角形)とされている。また、平線21の延在方向に対して直交する方向から見たときの毛束23の先端部23Bの形状は、略フラット形状とされている。
以下の説明では、図1に示す毛束23の先端部23Bの形状を、単に「山型形状」という。
【0018】
先端部23Bを構成する複数の用毛17の先端部は、用毛17の延在方向に延在する複数の分岐毛(用毛17の径よりもかなり小さい径とされた分岐毛)で構成されている。
毛束23の頂点23Aを基準としたときの先割れ加工する部分の深さD1は、例えば、1mm以上4mm以下とすることができる。
【0019】
本実施の形態の歯ブラシによれば、平線21の延在方向から見た毛束23の先端部23Bの形状が山型形状とされ、かつ先端部23Bを構成する複数の用毛17の先端が複数の分岐毛であるため、毛先の当たり心地が良く、歯間三角等の清掃力を向上させることができる。
【0020】
図2は、本発明の実施の形態に係る歯ブラシの製造工程を示す図であり、ヘッド部11、ハンドル部(図示せず)、ネック部(図示せず)からなる構造体を形成する工程を説明するための断面図である。図3は、本発明の実施の形態に係る歯ブラシの製造工程を示す図であり、用毛群準備工程を説明するための側面図である。図4は、図3に示す用毛の先端部を拡大した斜視図である。
図5は、本発明の実施の形態に係る歯ブラシの製造工程を示す図であり、植毛工程を説明するための断面図である。図6は、本発明の実施の形態に係る歯ブラシの製造工程を示す図であり、先割れ加工工程を説明するための断面図である。
【0021】
図5において、D2は用毛群16の頂点を基準としたときの先割れ加工する部分の深さ(以下、「深さD2」という)、Hは略山型形状とされた用毛群16の先端部16Cの高さ(以下、「高さH」という)をそれぞれ示している。
なお、図2図6において、図1図6に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0022】
図2図6を参照して、本実施の形態の歯ブラシ10の製造方法について説明する。
初めに、図2に示す工程では、周知の手法により、ヘッド部11、ネック部(図示せず)、及びハンドル部(図示せず)を一括成型する。
植毛穴14の形状は、例えば、円柱形状でもよいが、少なくとも植毛穴14の下部の径を縮径するテーパー面14a(三角錐状)を有している形状であることが好ましい。
上記形状とされた植毛穴14に毛束23を植毛することで、図1に示すように、毛束23の先端部23Bの形状は、平線21の延在方向から見て山型形状となる。
【0023】
なお、図2に示すような、テーパー面14aを有する植毛穴14を用いた場合、植毛穴14の中央から植毛穴14を区画する側壁14Aに向かうにつれて、植毛穴14内に配置される用毛17の長さを長くすることが可能となる。このため、円柱形状とされた植毛穴(図示せず)に用毛群16を植毛した場合よりも、用毛群16の先端部16Cの山型形状をより明瞭に形成することができる。
【0024】
なお、図2では、植毛穴形成用ピン12の先端部12Aの先端の形状が円錐形状(断面形状が三角形)の場合を例に挙げて図示したが、該先端の形状は、円錐形状に限定されない。先端部12Aの先端の形状として、例えば、円錐台形状(断面形状が台形)、半球形状、或いは円柱形状等を用いてもよい。
植毛穴14は、底面に近い部分だけ縮径テーパー面(C面或いは台形錘状)を有してもよい。
【0025】
次いで、図3に示す工程では、同じ長さとされた複数の用毛17よりなる用毛群16を準備し、その後、用毛群16の端16A,16Bを揃える(用毛群準備工程)。
なお、本発明において、「用毛群16の端16A,16Bを揃える」とは、目視で、用毛群16を構成する複数の用毛17の端16A,16Bを同程度揃えることを意味する。
すなわち、「用毛群16の端16A,16Bを揃える」とは、用毛群16を構成する複数の用毛17の端が完全に一致するものだけでなく、用毛17の長さ方向にわずかに異なるものも含む。
【0026】
用毛群16は、図1に示す毛束23の母材となる。複数の用毛17の長さは、植毛穴14の形状及び穴の深さを考慮して、適宜設定することができる。複数の用毛17の両端部(先端部)は、後述する図6に示す工程(先割れ加工工程)において、先割れ加工される。
【0027】
用毛17としては、例えば、図3に示すような用毛17の長さ方向に延在する複数の中空部18を有する用毛17を用いることができる。
なお、用毛17は、後述する図6に示す工程において、先端部を先割れ形状に加工することが可能な用毛であればよく、図4に示す構造とされた用毛17に限定されない。
【0028】
用毛17の直径は、例えば、4〜10milの範囲内で適宜設定することができる。なお、1milは、0.0254mmである。
用毛17の直径が4milよりも小さいと毛束23の略山型の形状が明瞭に見え、当たり心地の良さを確保するには好ましいが、用毛17の抜けが懸念されるため好ましくない。
一方、用毛17の直径が10milよりも大きいと、毛束23の略山型形状が明瞭に見られず、各毛先の段差における用毛の存在数が減少し、さらには用毛17の直径が太すぎるがゆえに毛先と用毛根元部分の撓みのバランスが悪化するため、好ましいとはいえない。
【0029】
次いで、図5に示す工程では、用毛群16の長さ方向の中心位置において、用毛群16を2つ折りにして、平線21を介して、ヘッド部11の植毛穴14に植毛する(植毛工程)。植毛工程では、1つの植毛穴14に対して、例えば、10本〜50本の用毛17を植毛する。
上述した用毛群準備工程及び植毛工程は、例えば、特開2011−115500号公報に開示された植毛装置を用いて、連続して行うことができるが、この方法に限定されない。
【0030】
先に説明したように、植毛穴14の中央から植毛穴14を区画する側壁14Aに向かうにつれて、植毛穴14内に配置される用毛17の長さが長くなる。このため、植毛穴14に植毛された用毛群16の先端部16Cの形状は、平線21の延在方向から見て、階段状とされた略山型形状となる。
また、平線21の延在方向に対して直交する方向から見たときの用毛群16の先端部16Cの形状は、略フラット形状とされている。
【0031】
このように、用毛群16の先端部16Cを毛切りすることなく、端16A,16Bが揃えられた用毛群16(図3参照)を準備し、その後、平線植毛法により、植毛穴14に2つ折りにした用毛群16を植毛するという簡便な手法で、用毛群16の先端部16Cの形状を略山型形状にすることができる。
【0032】
なお、上記植毛工程において、円柱形状(断面形状が矩形)とされた植毛穴(図示せず)に、端16A,16B(図3参照)を揃えた用毛群16を植毛させてもよく、この場合も先端部16Cの形状を、略山型形状にすることが可能である。
この場合、円柱形状とされた植毛穴(図示せず)は、用毛群16を植毛しやすいため、先端部16Cの形状の再現性を高めることができる。
【0033】
次いで、図6に示す工程では、用毛群16の先端部を先割れ形状に加工することで、先割れ形状とされた用毛群16からなる毛束23を形成する(先割れ加工工程)。
図3に示す構造とされた複数の用毛17を用いて用毛群16を構成する場合、先割れ加工工程では、周知の手法(例えば、専用のカッターを用いた毛先の叩き割り)を用いて、複数の用毛17の先端部を先割れ形状に加工することで、先端部23Bが先割れ形状とされた毛束23が形成される(先割れ加工工程)。
これにより、本実施の形態の歯ブラシ10が製造される。
【0034】
上記先割れ加工工程を行うことで、用毛17の先端部が複数の分岐毛(用毛17の径よりもかなり小さい径とされた分岐毛)で構成されることになるため、当たり心地を良くすることができる。
また、複数の分岐毛を形成することで、図5に示す先端部16Cに形成された階段状の段差が目立たなくなるため、図5に示す用毛群16の先端部16Cを毛切り加工することなく、目視した状態で、階段状の段差がほとんど無い山型形状とされた先端部16Cを形成することができる。
【0035】
なお、本実施の形態では、先割れ加工工程において、一例として、毛束23を構成する用毛としてフェザード毛を形成する場合を例に挙げて説明したが、毛先加工されることで先端が分岐された用毛であればよく、フェザード毛に限定されない。
【0036】
例えば、先割れ加工の手法として、カッター等の物理的な手法を用いる場合(言い換えれば、フェザード毛を形成する場合)、先割れ加工する部分の深さD1が、1.0mm以上4.0mm以下となるように加工するとよい。
先割れ加工する部分の深さD1が、1.0mmよりも浅いと、先割れ加工をしても、用毛が逃げて先割れしない用毛の存在が多くなるため、歯肉への当たり心地の良さの低減に繋がることから、好ましくない。先割れ加工する部分の深さD1が、4.0mmよりも深いと、毛裂けや毛千切れが発生して、十分な品質を確保することが難しくなる恐れがある。
したがって、先割れ加工する部分の深さD1を1.0mm以上4.0mm以下とすることで、用毛の先端が十分に先割れすることで、当たり心地を確保でき、さらに品質を確保することができる。
【0037】
本実施の形態の歯ブラシの製造方法によれば、同じ長さとされた複数の用毛17よりなる用毛群16の端16A,16Bを揃え、次いで、用毛群16の長さ方向の中心位置において、用毛群16を2つ折りにして、平線21を介して、ヘッド部11の植毛穴14に植毛することで、毛切り加工することなく、平線式植毛法を用いた簡便な手法で、用毛群16の先端部16Cを略山型形状にすることが可能となる。
これにより、歯と歯との間の根元部分である歯間三角に毛束23の先端部23Bを挿入しやすくなるため、清掃力を向上させることができる。
【0038】
また、植毛穴14に植毛された用毛群16を構成する複数の用毛17の先端部を先割れ形状に加工することで、毛束23の先端部23Bが複数の分岐毛で構成されるため、歯肉への毛先の当たり心地をよくすることができる。したがって、歯肉が弱った使用者でも良好な使用感を得ることができる。
つまり、本実施の形態の歯ブラシの製造方法によれば、平線式植毛法を用いて、簡便な手法により、高い清掃力を有し、かつ毛先の当たり心地のよい毛束の先端部を加工することができる。
【0039】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0040】
以下、実施例を説明するが、本発明は以下に記載の実施例によって限定されない。
【0041】
(試験例)
試験例では、図2に示す形状とされた3種の植毛穴形成用ピン12を用いて形成した直径の異なる3種の植毛穴14に、上述した図3に示す用毛群準備工程後の用毛群16を植毛した。
このとき、植毛穴14の上部の直径として、実施例1では2.0mm、実施例2では1.5mm、実施例3では1.3mmを用いた。また、3種の植毛穴14の中心の深さは、4.0mmとした。
図3に示す用毛17としては、長さが30mmとされたデュポン社製の用毛であるフェザード用毛を用いた。その後、実施例1〜3の用毛群16を平線の延在方向から撮影した。これらの写真を、図7の上段に示す。
【0042】
図7は、上部の直径が2mm、1.5mm、1.3mmの植毛穴に植毛された実施例1〜3の用毛群を平線の延在方向から撮影した写真、実施例1〜3の用毛群の先端部を先割れ加工工程後の実施例1〜3の毛束を平線の延在方向から撮影した写真、及び実施例1の毛束を平線と直交する方向から撮影した写真である。
【0043】
次いで、実施例1〜3の用毛群16の先端部を先割れ形状に加工することで、先割れ形状とされた用毛群からなる毛束を形成(先割れ加工工程)し、その後、平線の延在方向から先割れ加工された毛束の写真を撮影した。これらの写真を、図7の中段に示す。
次いで、先割れ加工工程後の実施例1の毛束を平線と直交する方向から撮影した写真を撮影した。この写真を、図7の下段に示す。
【0044】
次いで、上部の直径が2mm、1.5mm、1.3mmの植毛穴(中心の深さ5mm)に、上述した図3に示す用毛群準備工程後の用毛群16を植毛することで、2mmの植毛穴に植毛された比較例1の用毛群16と、1.5mmの植毛穴に植毛された比較例2の用毛群16と、1.3mmの植毛穴に植毛された比較例3の用毛群16と、を作製した。
【0045】
次いで、比較例1〜3の用毛群16の先端部がフラットとなるような毛切り(以下、「フラットカット」という)を行い、その後、用毛群16の先端部の先割れ加工を行った。その後、平線の延在方向から比較例1〜3の毛束の写真を撮影した。これらの写真を図8に示す。
図8は、上部の直径が2mm、1.5mm、1.3mmの植毛穴に植毛され、フラットカット及び先割れ加工された比較例1〜3の毛束を平線の延在方向から撮影した写真である。
【0046】
図7及び図8を参照するに、実施例1〜3の毛束の先端部の形状は、フラットカットされた比較例1〜3の毛束の先端部の形状とは明らかに異なり、略山型形状であることが確認できた。
また、図7の上段及び中段の写真から、先割れ加工を行うことで、実施例1〜3の毛束の先端部の形状が略山型形状になることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、歯周病用の歯ブラシの製造方法、及び歯周病用の歯ブラシに適用できる。
【符号の説明】
【0048】
10…歯ブラシ、11…ヘッド部、11a…植毛面、12…植毛穴形成用ピン、12A,16C,23B…先端部、14…植毛穴、14a…テーパー面、14A…側壁、16…用毛群、16A,16B…端、17…用毛、18…中空部、21…平線、23…毛束、23A…頂点、D1,D2…深さ、H…高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8