(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記貫通導体部と前記貫通導体部に接続された2つの前記板状導体部とを合わせた前記孔部の貫通軸方向の長さは、弾性変形する前の前記磁性体の厚み以下であることを特徴とする請求項1に記載のインダクタ。
前記貫通導体部は円柱であり、前記貫通導体部の軸方向の中心における前記軸方向に垂直な方向のうち特定方向の幅をRc、前記貫通導体部の軸方向の長さをHとしたとき、H/Rcは、3未満(0を含まず)であることを特徴とする請求項1または2に記載のインダクタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および特許文献2では、磁芯の貫通孔にコイルの貫通部を直接挿入し、連結導体に形成した孔がコイルの貫通部と重なるようにして配置した後、加圧により貫通部の端部と連結導体の孔とを嵌合させてコイルを形成しているため、製造において、連結導体の孔と貫通部との位置合わせの工程が必要である。また、連結導体の孔と貫通部の寸法公差によっては寸法差が近接し、連結導体の孔と貫通部との位置合わせの作業が煩雑になるという課題がある。
【0008】
そこで本発明は、製造が容易なインダクタおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、板状導体部に貫通導体部を挿入するための孔を形成せずに、板状導体部と貫通導体部を接合するため、板状導体部の孔と貫通導体部との位置決めが不要となり、容易に製造できる。
【0010】
よって、本発明のインダクタは、扁平形状を有する軟磁性金属粉末をバインダ成分によって結着させてなる弾性を有した磁性体と、複数の板状導体部と貫通導体部を有するコイルを備え、前記磁性体は対向する2つの主面と前記主面を結ぶ側面と、前記主面を貫通する孔部を有し、前記貫通導体部は前記孔部を貫通し、前記板状導体部における前記磁性体の前記主面に対向する面と前記貫通導体部の端部が接合していることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のインダクタにおける、前記貫通導体部の軸方向の長さは、前記板状導体部で挟む前の前記孔部の貫通軸方向における前記磁性体の厚みより短く、前記板状導体部によって前記磁性体は厚み方向に押圧されて弾性変形していることを特徴とする。
【0012】
板状導体部が磁性体を押圧した状態で、板状導体部と貫通導体部が接合している。すなわち、板状導体部によって磁性体は圧縮されるため、薄型のインダクタが得られる。
【0013】
また、本発明のインダクタにおける、前記貫通導体部と前記貫通導体部に接続された2つの前記板状導体部とを合わせた前記孔部の貫通軸方向の長さは、弾性変形する前の前記磁性体の厚み以下であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のインダクタにおける、前記貫通導体部は柱体であり、前記貫通導体部の軸方向の中心における前記軸方向に垂直な方向のうち特定方向の幅をRc、前記孔部の前記特定方向の幅をRhとしたとき、Rh/Rcは、1.02より大きく、1.10未満であることを特徴とする。
【0015】
ここで、特定方向とは、貫通導体部の軸方向に垂直な方向のうち任意の一方向を意味し、この一方向における、貫通導体部の軸方向の中心の幅をRc、孔部の幅をRhとしている。
【0016】
また、本発明のインダクタにおける、前記貫通導体部は円柱であり、前記貫通導体部の軸方向の中心における前記軸方向に垂直な方向のうち特定方向の幅をRc、前記貫通導体部の軸方向の長さをHとしたとき、H/Rcは、3未満(0を含まず)であることを特徴とする。
【0017】
ここで、円柱とは略円柱の形状、すなわち円柱形状を含んでいる。
【0018】
また、本発明のインダクタにおける前記磁性体は複数の前記孔部を有し、前記コイルは複数の前記貫通導体部を有していることを特徴とする。
【0019】
また、本発明のインダクタは、さらに、板状の第1の樹脂基板と、板状の第2の樹脂基板を備え、前記第1の樹脂基板は、前記板状導体部を介して磁性体の一方の主面側に配され、前記第2の樹脂基板は、前記板状導体部を介して磁性体の他方の主面側に配され、前記磁性体は前記第1の樹脂基板および前記第2の樹脂基板と一体化していることを特徴とする。
【0020】
また、本発明のインダクタにおける前記第1の樹脂基板および前記第2の樹脂基板は接着成分を含み、前記接着成分が、前記磁性体の一部に含浸していることを特徴とする。
【0021】
本発明のインダクタの製造方法は、扁平形状を有する軟磁性金属粉末をバインダ成分によって結着させて、対向する2つの主面と前記主面を結ぶ側面を有する磁性体を作製する工程と、2つの前記主面を貫通する孔部を形成する工程と、前記孔部に貫通導体部を挿入する工程と、前記孔部を挟むように前記主面に板状導体部を配置する工程と、配置した前記板状導体部を前記孔部の貫通方向に加圧しながら前記貫通導体部の端部と前記板状導体部における前記磁性体の前記主面に対向する面を接合する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、板状導体部には貫通導体部を挿入する孔を形成せずに、板状導体部と貫通導体部を接合するため、板状導体部の孔と貫通導体部との位置決めが不要となり、製造が容易となる。また、貫通導体部の長さを磁性体の厚みよりも短く設定することにより、磁性体が板状導体部で圧縮されて、薄型化できる。
【0023】
以上のことより、製造が容易なインダクタおよびその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0026】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態によるインダクタを示す斜視図である。ここで、
図1では磁性体により隠れたコイルと、磁性体の孔部を破線で描画している。
図1に示すように、本実施の形態によるインダクタ100は、弾性を有する磁性体1と、コイル2を備えている。
【0027】
磁性体1は扁平形状を有する図示しない軟磁性金属粉末をバインダ成分によって結着させてなり、対向する2つの主面とこれらの主面を結ぶ側面を有する。また、一方の主面から他方の主面まで貫通した円柱形状の孔部3を有している。本実施の形態による磁性体1では、絶縁性のバインダ成分によって軟磁性金属粉末を結着しているため、高い電気抵抗率を有している。
【0028】
ここで、コイルは導電体からなるものであればいずれも用いることができるが、磁性体が10KΩ・cm以上の電気抵抗率を有し、良好な絶縁性を有している場合、絶縁被覆を施されていないコイルであっても、磁性体と直接的に接するよう配置して用いることができる。
【0029】
また、磁性体1は高い強度を有するとともに、少なくとも孔部3の貫通軸方向に弾性を有しているため、磁性体1の孔部3の貫通軸方向に押圧力が加わることによって、弾性変形可能である。
【0030】
したがって、磁性体1は10体積%以上かつ25体積%以下の図示しない空孔を含んでいることが望ましい。すなわち、磁性体1に含まれる空孔の体積比率(空孔率)は、10体積%以上かつ25体積%以下であることが好ましい。空孔率が10体積%以上である場合、磁性体1は弾性を有し、様々に加工することができ、空孔率が25体積%以下である場合、磁性体1は図示しない軟磁性金属粉末を十分に含むことができる。
【0031】
また、磁性体1が十分な強度を有するために、磁性体1に含まれるバインダ成分の体積比率は、10体積%以上かつ30体積%以下であることが好ましい。バインダ成分の体積比率を30体積%以下とすることにより、軟磁性金属粉末の体積比率を60体積%以上とし、空孔率を10体積%以上とすることができる。
【0032】
すなわち、磁性体1は60体積%以上の軟磁性金属粉末と、10体積%以上かつ30体積%以下のバインダ成分と、10体積%以上かつ25体積%以下の空孔とを含んでいることが好ましい。
【0033】
また、磁性体1のISO7619−typeDによるゴム硬度は、92以上かつ96以下であることが好ましい。これにより、磁性体1は弾性変形可能である。また、磁性体1は弾性体であるため、公知の方法によりヤング率を測定することができる。磁性体1のヤング率は10GPa以上、90GPa以下であることが好ましい。これらにより、磁性体1は孔部3の貫通軸方向に加わる押圧力によって弾性変形が可能であり、さらに磁性体が変形破壊するのを抑制できる。
【0034】
コイル2は、磁性体1の孔部3に挿入された円柱形状の貫通導体部2aと、磁性体1の主面に配される複数の板状導体部2b、2c、2dから構成している。貫通導体部2aの両端面と板状導体部2b、2c、2dにおける磁性体1の主面に対向する面とが接合し、磁性体1の一部を巻回するように互いに電気的に接続している。
【0035】
コイル2の両端に配された板状導体部2dは、図示しない回路基板等に接続され、これによって、コイル2は回路基板等に接続された図示しない電子部品等と電気的に接続される。
【0036】
貫通導体部2aは、絶縁被覆を有さない円柱形状の導電体を用い、貫通導体部2aの直径は孔部3の直径より小さく形成している。また、板状導体部2b、2c、2dは絶縁被覆を有さない導電体板を用いている。
【0037】
ここで、本実施の形態では、磁性体が高い電気抵抗率を有し、良好な絶縁性を有しているため、絶縁被覆を有していない導電体を用いている。
【0038】
また、本実施の形態では、円柱形状の貫通導体部2aと円柱形状の孔部3を用いたが、これに限らない。すなわち、貫通導体部2aおよび孔部3はそれぞれ、矩形や正方形、多角形などの円形以外の断面を有していても良い。また、貫通導体部2aが孔部3に挿入できればよいため、貫通導体部2aの形状と孔部3の形状とは一致していなくても良い。さらに、貫通導体部2aを孔部3に挿入する際、貫通導体部2aと孔部3との引っかかり等を防止できるため、貫通導体部2aおよび孔部3の形状は、柱体であることが好ましい。
【0039】
また、貫通導体部2aを孔部3に容易に挿入できるため、貫通導体部2aの直径を孔部3の直径より小さく形成しているが、貫通導体部の大きさと孔部の大きさに関係はなく、貫通導体部2aが孔部3に挿入できればよい。すなわち、貫通導体部2aと孔部3の大きさがほぼ同一で、貫通導体部2aを孔部3に挿入することで孔部3の内壁が弾性変形し、貫通導体部2aと孔部3とが嵌合していてもよい。
【0040】
ここで、
図2は本発明の第1の実施の形態によるインダクタを示す図であり、(a)は
図1のA−A’線で切断した断面図、(b)は
図1のB−B’線で切断した断面図である。
図2に示すように、コイル2の貫通導体部2aの軸方向の長さHaは、孔部3の貫通軸方向の厚み、すなわち磁性体1の厚みHbより短くなっている。
【0041】
より詳細には、磁性体1の孔部3の貫通軸方向に押圧する前の貫通導体部2aの軸方向の長さは、孔部3の貫通軸方向における磁性体1の弾性変形の限界の厚さ、すなわち磁性体1を限界まで圧縮した時の厚さよりも長く、かつ、弾性変形前の磁性体1の厚みよりも短く形成している。
【0042】
これにより、貫通導体部2aの端面と、板状導体部2b、板状導体部2cおよび板状導体部2dにおける磁性体1の主面に対向する面とは接合され、磁性体1は板状導体部2b、板状導体部2cおよび板状導体部2cによって磁性体1の厚み方向、すなわち孔部3の貫通軸方向に押圧され、弾性変形している。
【0043】
ここで、弾性を有した磁性体1において、弾性変形前のインダクタンスや重畳特性等の特性は弾性変形によって変化しない。よって、本実施の形態では、板状導体部2b、板状導体部2cおよび板状導体部2cによって磁性体1は弾性変形しているが、弾性変形による特性の低下はみられない。
【0044】
次に、本実施の形態によるインダクタ100の製造方法について説明する。
【0045】
図3は本発明の第1の実施の形態によるインダクタの製造方法の一部の工程を示す図であり、(a)は貫通導体部と板状導体部の接合前を示す
図1のB−B’線で切断した断面図、(b)は貫通導体部と板状導体部の接合後を示す
図1のB−B’線で切断した断面図である。
【0046】
扁平形状を有する軟磁性金属粉末にバインダ成分を混合してスラリーを作製し、ダイスロット法やドクターブレード法等により塗付したスラリーを乾燥させて溶媒を揮発させる。それを所望する大きさに切断して複数枚のシートを得た後、1枚もしくは複数枚を積層して積層方向に加圧し、対向する2つの主面とこれらの主面を結ぶ側面を有する磁性体1を得る。
【0047】
得られた磁性体1の所定の位置に、フライス盤等の公知の技術により孔部3を形成し、熱処理を行う。次に、磁性体1の孔部3に貫通導体部2aを挿入する。この時、貫通導体部2aの軸方向の長さは、
図3(a)に示すように、孔部の貫通軸方向の厚み、すなわち磁性体1の厚みHbより短いものを用いる。
【0048】
磁性体1の孔部3に貫通導体部2aを挿入した後、磁性体1の一方の主面に板状導体部2bを孔部3と重なるように配置し、磁性体1の他方の主面に板状導体部2cおよび板状導体部2dを孔部3と重なるように配置する。
【0049】
その後、
図3(a)の矢印の方向、すなわち貫通導体部2aの端部を挟む方向に加圧する。これによって、板状導体部2b、板状導体部2cおよび板状導体部2dによって押圧された磁性体1は圧縮されて弾性変形し、貫通導体部2aの端部すなわち端面と板状導体部2b、2c、2dにおける磁性体1の主面に対向する面が接触する。この状態で、貫通導体部2aと板状導体部2b、2c、2dを接合してインダクタが得られる。
【0050】
貫通導体部2aと板状導体部2b、2c、2dの接合方法は特に制限はなく、例えば抵抗溶接といった公知の技術により接合すればよい。
【0051】
本発明では、コイルに板状導体部を用いているため、パターン導体を用いたコイルに比べて、電気抵抗を低く抑えられ、大電流に適用できる。また、板状導体部に貫通導体部を嵌合するための孔を形成しないため、板状導体部を配する際に高い精度の位置決めを必要とせず、容易に製造が可能となる。
【0052】
図3から明らかなように、本実施の形態のインダクタ100は、孔部3と重なるように板状導体部2b、2c、2dを両主面に配置し、貫通導体部2aの端面と接するまで板状導体部2b、2c、2dを
図3(a)の矢印の方向に押圧する。これによって、磁性体1は板状導体部2b、2c、2dによって圧縮されて弾性変形する。
【0053】
貫通導体部2aの端面と板状導体部2b、2c、2dにおける磁性体1の主面に対向する面が接した状態のまま、貫通導体部2aと板状導体部2b、2c、2dを接合するため、磁性体1の一部は
図3(b)に示すように、板状導体部2b、2c、2dに押圧された状態、すなわち弾性変形したままとなる。
【0054】
ここで、本実施の形態では、貫通導体部2aの軸方向の長さを、磁性体1の厚みより短いものを用いることで、磁性体1の圧縮を確実なものとして薄型のインダクタを得たが、これに限らない。
【0055】
貫通導体部2aの軸方向の長さが、貫通導体部2aと板状導体部2b、2c、2dを接合することによって短く変化する場合は、接合前の状態において、貫通導体部2aの軸方向の長さが磁性体1の厚みより長いものを用いて接合してもよい。すなわち、貫通導体部2aの軸方向の長さが磁性体1の厚みより長いものを用いて接合することによって、貫通導体部2aの軸方向の長さが磁性体1の厚みより短くなり、磁性体1が板状導体部2b、2c、2dに押圧されて弾性変形するようにしてもよい。
【0056】
また、インダクタの厚みに制限がなく、従来のインダクタの厚みと同じ厚みのインダクタを得る場合は、磁性体1の厚みよりも軸方向の長さが長い貫通導体部2aを用いて接合し、磁性体1は板状導体部2b、2c、2dによって弾性変形しなくてもよい。
【0057】
しかし、板状導体部2b、2c、2dが磁性体の内部に押し込まれた分、インダクタは薄型化できるため、磁性体1が板状導体部2b、2c、2dに押圧されて弾性変形していることが好ましい。
【0058】
図4は薄型のインダクタの厚みを比較する図であり、(a)は従来の薄型のインダクタの断面図、(b)は本発明における薄型のインダクタの断面図である。
【0059】
従来のインダクタ200は、板状導体部12b、板状導体部12cおよび板状導体部12dに貫通導体部12aを挿入するための孔を有しており、貫通導体部12aと板状導体部12b、板状導体部12cおよび板状導体部12dとの接合を確実にするため、貫通導体部12aの長さを磁性体11の厚みより長くなるよう形成していた。すなわち、貫通導体部12aと板状導体部12b、12c、12dの孔との位置決めのためと、板状導体部12b、12c、12dの孔とそこに挿入された貫通導体部12aとの確実な接合のために、貫通導体部12aの端部は磁性体11の主面から突出している。
【0060】
そのため、薄型のインダクタ200を得るには、磁性体11の主面と板状導体部12b、板状導体部12cおよび板状導体部12dとの間に隙間が形成されないよう、貫通導体部12aの長さと磁性体11の厚みを高度に管理する必要があった。
【0061】
このように管理された従来における薄型のインダクタ200でも、
図4(a)に示すように、磁性体11の厚みと磁性体11の両主面に配された板状導体部12b、12c、12dの厚み分の厚さ、すなわち磁性体11の厚さと2枚の板状導体部の厚さを加えた分の厚さが必要であった。
【0062】
一方、本発明のインダクタ300は、孔を有しない板状導体部22b、板状導体部22cおよび板状導体部22dを用いるため、貫通導体部22aと板状導体部22b、22c、22dとの位置決めが不要で、かつ、孔に貫通導体部22aを挿入して接合する必要がないため、貫通導体部22aの長さと磁性体21の厚みを高度に管理する必要がない。
【0063】
すなわち、本発明では薄型のインダクタ300を得るために、貫通導体部22aの長さと磁性体21の厚みを高度に管理しなくとも、
図4(b)に示すように、磁性体21の両主面に配された板状導体部22b、22c、22dで磁性体21を弾性変形させることにより、容易に接合が可能である。
【0064】
よって、従来のインダクタ200と同じ厚さの磁性体21を用いた場合においても、位置決めが不要なため製造が容易で、かつ、板状導体部22b、22c、22dは磁性体21の内部へ押し込まれた状態で貫通導体部22aと接合できるため、本発明における薄型のインダクタ300の厚さは従来における薄型のインダクタ200よりも薄型化できる。
【0065】
ここで、接合後における貫通導体部の軸方向の長さが、磁性体の厚さから板状導体部2枚分の厚さを引いた長さであることにより、板状導体部はそれぞれの厚さ分、磁性体の内部へ押し込まれて、磁性体の主面と板状導体部の一方の主面がほぼ同一平面上に存在する構成となり、より薄型化できるため好ましい。すなわち、貫通導体部と貫通導体部に接続された2つの板状導体部とを合わせた孔部の貫通軸方向の長さが、弾性変形する前の磁性体の厚み以下であることにより、より薄型のインダクタが得られる。
【0066】
図4(b)に示すように、磁性体21の主面と板状導体部の一方の主面がほぼ同一平面上に存在する構成の場合、本発明における薄型のインダクタ300の厚さは磁性体21の厚さとなり、従来における薄型のインダクタ200に比べて磁性体21の両主面に配された板状導体部22b、22c、22dの厚さ分、すなわち2枚の板状導体部の厚さ分の薄型化が可能となる。
【0067】
また、磁性体の厚みは大きい方が、インダクタンスや重畳特性を向上できることは一般的に知られている。よって、本発明のインダクタにおける磁性体の厚みを、従来のインダクタ200と同じ厚みに形成し、板状導体部をぞれぞれの厚さ分、磁性体の内部へ押し込み、磁性体の主面と板状導体部の一方の主面がほぼ同一平面上に存在する構成とした場合、本発明における薄型のインダクタは同じ厚みの従来のインダクタ200よりも特性を向上できる。
【0068】
図5は、本発明の第1の実施の形態によるインダクタの貫通導体部と孔部とを、貫通導体部が孔部に挿入された直後の状態で、部分的に拡大して示す断面図である。
図5に示すように、貫通導体部2aの軸方向の中心における貫通導体部2aの軸方向に垂直な方向のうち特定方向の幅をRc、この特定の方向における孔部3の幅をRhとしたとき、Rh/Rcは、1.02より大きく、1.10未満であることが好ましい。ここで、貫通導体部2aと板状導体部2b、2c、2dを接合した際に、貫通導体部2aの端部が熔解等により潰れて大きくなった場合においても、貫通導体部2aの軸方向の中心における貫通導体部2aの幅Rcの大きさは変化しない。
【0069】
すなわち、貫通導体部2aが柱体であり、Rh/Rcが1.02より大きいことにより、孔部3に貫通導体部2aを容易に挿入できる。また、Rh/Rcが1.10未満であることにより、孔部3の幅Rhと貫通導体部2aの幅Rc、すなわち孔部3の大きさと貫通導体部2aの大きさに極端な差がなく、孔部3に貫通導体部2aを挿入した際、孔部3の中で貫通導体部2aが大きく傾いたり、激しく移動したりするのを防止できる。
【0070】
また、貫通導体部2aの軸方向の長さをHとしたとき、H/Rcは、3未満(0を含まず)であることが好ましい。ここで、貫通導体部2aと板状導体部2b、2c、2dを接合した際における、貫通導体部2aの端部が熔解等により潰れる影響による、貫通導体部2aの軸方向の長さは、接合前と接合後で貫通導体部2aの軸方向の長さには殆ど差が生じないため、長さHは接合後の貫通導体部2aの長さとみなすことができる。貫通導体部2aが円柱であり、H/Rcが3未満(0を含まず)であることにより、貫通導体部2aは貫通導体部2aの端部すなわち端面で、支えなく立つことができる。すなわち、インダクタの製造時において、磁性体1の主面を上下となるように設け、下面の主面に板状導体部2cを配した後、孔部3に貫通導体部2aを挿入した場合、貫通導体部2aの端面は板状導体部2cと接し、貫通導体部2aは独立して立つことができるため、貫通導体部2aが孔部3の中で傾くのを抑制することができる。
【0071】
(第2の実施の形態)
図6は本発明の第2の実施の形態によるインダクタを示す平面図である。ここで、インダクタのコイルのうち隠れた部分を破線で描画している。
【0072】
図6に示すように、本実施の形態によるインダクタ400は弾性を有する磁性体31と第1のコイル32と第2のコイル42とを有している。
【0073】
磁性体31は対向する2つの主面とこれらの主面を結ぶ側面から形成され、一方の主面から他方の主面まで貫通した円柱形状の孔部33を有している。また、第1のコイル32および第2のコイル42は複数の貫通導体部と複数の板状導体部を有しており、これらは互いに電気的に接続している。また、複数の板状導体部のうち、コイルの両端部に配された板状導体部は、図示しない回路基板等に接続し、図示しない電子部品等と電気的に接続される。
【0074】
1つの磁性体に2つのコイルを用いた以外は、第1の実施の形態と同様である。また、本実施の形態では、1つの磁性体に2つのコイルを用いたが、コイルの数に制限はなく、仕様に応じて適宜設定すればよい。
【0075】
(第3の実施の形態)
図7は本発明の第3の実施の形態によるインダクタを模式的に示す斜視図である。
【0076】
図7に示すように、本実施の形態のインダクタ500は、磁性体41と、コイル52と、プリプレグ14と、第1の樹脂基板15と、第2の樹脂基板16とを有している。
【0077】
磁性体41の厚みとプリプレグ14の厚みは同じになるよう形成している。また、プリプレグ14は磁性体41と嵌合する孔を有しており、磁性体41はプリプレグ14の孔の内部に配置している。コイル52は貫通導体部と平板導体部から構成され、第1の実施の形態と同様に磁性体41に配している。
【0078】
第1の樹脂基板15および第2の樹脂基板16は、片面基銅箔板であり、一方の面に銅箔の導体パターンが形成されている。第1の樹脂基板15および第2の樹脂基板16の導体パターンが形成された面と、磁性体41の主面を対向させて配置し、第1の樹脂基板15と第2の樹脂基板16とでプリプレグ14および磁性体41を挟み込むようにして一体化している。
【0079】
ここで、第1の樹脂基板15および第2の樹脂基板16と磁性体41およびプリプレグ14との一体化は、接着剤等を塗布することによって密着させて一体化してもよいし、第1の樹脂基板15および第2の樹脂基板16が接着成分を有する場合は加圧により密着させて一体化してもよい。この場合、接着力が向上するため、接着成分が磁性体の空孔部分に含浸していることが好ましい。
【0080】
本実施の形態では、第1の樹脂基板15と第2の樹脂基板16の間にプリプレグ14を配したが、プリプレグ14は用いずに、コイル52を配した磁性体41だけが配されていてもよい。
【0081】
本実施の形態のインダクタは、貫通導体部の長さを磁性体の厚みよりも短く形成しているため、磁性体の主面より貫通導体部が突出することはない。すなわち、磁性体の主面と板状導体部の間に隙間が形成されることはないため、第1の樹脂基板および第2の樹脂基板と磁性体との間に空隙が発生することによる外観不良を抑制できる。
【0082】
また、本実施の形態のインダクタは、貫通導体部の長さが磁性体の厚みよりも短く形成され、板状導体部が磁性体の内部へ押し込まれる構成であるため、第1の樹脂基板および第2の樹脂基板と磁性体との密着性が得られ、第1の樹脂基板および第2の樹脂基板と磁性体との間に空隙が発生することによる外観不良を抑制できる。
【0083】
第1の樹脂基板および第2の樹脂基板と磁性体の密着性の向上と、第1の樹脂基板および第2の樹脂基板と磁性体との間に空隙が生じないことにより、薄型化が可能となる。すなわち、本実施の形態の構成を用いることにより、板状導体部と貫通導体部との確実な接合が可能で、かつ、磁性体と樹脂基板との密着性を有した薄型で製造が容易なインダクタが得られる。
【0084】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の変更や修正が可能である。すなわち、当業者であればなし得るであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれることは勿論である。