特許第6552094号(P6552094)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6552094パワコン監視システム及び太陽光発電プラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552094
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】パワコン監視システム及び太陽光発電プラント
(51)【国際特許分類】
   H02S 50/00 20140101AFI20190722BHJP
【FI】
   H02S50/00
【請求項の数】3
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2015-147282(P2015-147282)
(22)【出願日】2015年7月25日
(65)【公開番号】特開2017-28917(P2017-28917A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】591218857
【氏名又は名称】ミヨシ電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514245498
【氏名又は名称】株式会社ウエストO&M
(74)【代理人】
【識別番号】100150153
【弁理士】
【氏名又は名称】堀家 和博
(72)【発明者】
【氏名】井上 強
(72)【発明者】
【氏名】吉友 英己
(72)【発明者】
【氏名】足立 大治郎
(72)【発明者】
【氏名】大山 正彦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 良行
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−147235(JP,A)
【文献】 特開2012−235658(JP,A)
【文献】 特開2015−130376(JP,A)
【文献】 特開2012−160643(JP,A)
【文献】 特開2001−326375(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第1532163(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04−31/078
H02S 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池からの電流を直流から交流に変換するパワーコンディショナを有した太陽光発電プラントの異常有無を判断する監視システムであって、
前記太陽光発電プラントにおけるプラント照度を測定する照度センサと、
前記パワーコンディショナからの電流、電圧、電力のうち少なくとも1つの値を含むパワコン出力値が出力閾値以下である間は、前記プラント照度が照度閾値以上となったエラー回数をカウントし、このエラー回数がエラー閾数以上となれば前記太陽光発電プラントに異常が有ると判断する判断部と、
を備え
前記判断部は、前記パワコン出力値が前記出力閾値以下である間に、前記プラント照度が前記照度閾値以上となっても、前記プラント照度が前記照度閾値より大きい高照度閾値以上となれば前記エラー回数としてカウントしないことを特徴とする監視システム。
【請求項2】
前記照度閾値は、前記判断部が太陽光発電プラントの異常有無を判断している間にも変更可能な閾値であることを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の監視システムと、
この監視システムの当該太陽光発電プラントに対する異常有無の判断結果を、前記監視システム外部へ通信する通信部を有していることを特徴とする太陽光発電プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池からの電流を直流から交流に変換するパワーコンディショナを有した太陽光発電プラントの異常有無を判断する監視システム、及び、この監視システムを有した太陽光発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の太陽電池パネルからなる太陽電池パネルアレイと、太陽電池パネルアレイに接続されて最大電力追従制御により太陽電池パネルアレイから最大の電力を取得するパワーコンディショナーとを備えた太陽電池システムの検査方法が知られている(特許文献1)。
この検査方法は、太陽光の減光度合を所定周期で変化させる減光手段を用いて、太陽電池パネルアレイの一部の領域に照射される太陽光の照度を所定周期で変化させる減光工程と、減光工程によって太陽光の照度を所定周期で変化させている状態で、電流検出器を用いて太陽電池パネルアレイからパワーコンディショナーに出力される電流を測定し、測定した電流から所定周期で変化する電流成分を発電電流として検出する電流成分検出工程と、減光工程によって太陽光の照度を所定周期で変化させている状態で、電圧検出器を用いて太陽電池パネルアレイからパワーコンディショナーに出力される電圧を電流の測定と同時に測定して、測定した電圧を発電電圧として検出する電圧検出工程と、電流成分検出工程で検出された発電電流と、電圧検出工程で検出された発電電圧とを用いて、所定周期で変化する照度の変動分による太陽電池パネルアレイの一部の領域における発電量を計算する発電量計算工程と、発電量計算工程で計算された発電量を用いて、太陽電池パネルアレイの一部の領域の合否を判定する判定工程とを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−131679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された検査方法は、わざわざ減光手段を用いなくては太陽電池システムを検査できず、検査に手間・負担がかかると共に、太陽光を減光した分だけ、当然に発電する電力も減る。
又、特許文献1の検査方法は、検査できるのも、太陽電池パネルアレイの一部でしかないため、減光手段を用いた以外の太陽電池パネルアレイに異常が有っても、異常と判定されない。
【0005】
更に、特許文献1では、太陽電池パネルにおいて、照度がある程度大きければ、発電量は照度にほぼ比例すること(段落0010)や、パワーコンディショナーの最大出力は照度にほぼ比例すること(段落0036)が述べられている。
しかし、実際に調べてみると、図4図5(a)に示したように、正常な太陽電池システム(太陽光発電プラント)で、照度は上がっている(明るくなっている)にも関わらず、パワーコンディショナの出力電流は減っているケースがある。
つまり、特許文献1の検査方法では、太陽光発電プラントに異常がなくとも、パワーコンディショナーの出力が照度に比例していない場合には、異常が有ると判断され、誤報の原因となる。尚、仮に特許文献1において言及された照度が放射照度である場合、猶更、ルクス[lx]を単位とする照度を用いる示唆が特許文献1にないこととなる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑み、パワーコンディショナからの電流値等が出力閾値以下の時だけ、照度センサから出力されるプラント照度が照度閾値以上となったかに基づいて、太陽光発電プラントの異常有無を判断することによって、「監視負担の低減」、「プラントの全体監視」及び「誤報の抑制」を同時に実現できる監視システム及び太陽光発電プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る監視システム1は、太陽電池からの電流を直流から交流に変換するパワーコンディショナを有した太陽光発電プラントの異常有無を判断する監視システムであって、前記太陽光発電プラントにおけるプラント照度を測定する照度センサと、前記パワーコンディショナからの電流、電圧、電力のうち少なくとも1つの値を含むパワコン出力値が出力閾値以下である間は、前記プラント照度が照度閾値以上となったエラー回数をカウントし、このエラー回数がエラー閾数以上となれば前記太陽光発電プラントに異常が有ると判断する判断部と、を備え、前記判断部は、前記パワコン出力値が前記出力閾値以下である間に、前記プラント照度が前記照度閾値以上となっても、前記プラント照度が前記照度閾値より大きい高照度閾値以上となれば前記エラー回数としてカウントしないことを第1の特徴とする。
【0008】
本発明に係る監視システム1の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、前記照度閾値は、前記判断部が太陽光発電プラントの異常有無を判断している間にも変更可能な閾値である点にある。
【0010】
これらの特徴により、パワーコンディショナCからの電流等を含むパワコン出力値Mが出力閾値T1以下である間は、照度センサ2によるプラント照度Lの照度閾値T2以上となったエラー回数Eがエラー閾数T3以上となれば、太陽光発電プラントPに異常が有ると判断部3で判断することで、特許文献1のように、わざわざ減光手段を用いる必要はなく、太陽光発電プラントPの監視にかかる手間・負担を低減できる(「監視負担の低減」)と共に、減光手段による発電量の低減もない。
これに加えて、パワーコンディショナCからの電流値等に基づいて、異常の有無を判断しているため、何れの太陽電池Dも含めた太陽光発電プラントP全体の監視が可能となる(「プラントの全体監視」)。
そして、図5(c)に示したように、パワーコンディショナCのパワコン出力値Mとプラント照度Lに相関が高い(パワコン出力値Mが出力閾値T1以下である)間だけ、照度センサ2に基づいて異常有無を判断することとなるため、異常判断の誤報が抑えられる(「誤報の抑制」)と共に、日射計よりもコスト負担の低い照度センサ(照度計)を活用できる。
【0011】
又、照度閾値T2を、判断部3が太陽光発電プラントPの異常有無を判断している間にも変更可能な閾値とすることで、太陽光発電プラントPが置かれた環境下(照度センサ2の取付方向(水平方向、鉛直方向、斜め方向などの何れの上下方向に向けるか、方角など)、太陽の南中高度)に応じて、照度閾値T2を最適化できる。
【0012】
更に、プラント照度Lが、照度閾値T2以上となっても、照度閾値T2より大きい高照度閾値T2’以上でもある場合には、エラー回数Eとしてカウントしないことで、例えば、積雪時における誤報をより抑制できる。
詳解すれば、降雪により雪が積もった時には、正常な(異常の無い)太陽光発電プラントPにおいても、パワーコンディショナCからの電流値等が出力閾値T1以下であるにも関わらず、プラント照度Lが照度閾値T2以上となることが起こり得る。
これは、積もった雪で太陽光が反射されて明るくなる(プラント照度Lが高くなる)ためであり、ここで、照度閾値T2より大きい高照度閾値T2’を設け、この高照度閾値T2’以上にプラント照度Lがなった際にエラー回数Eをカウントしなければ、積雪による照度上昇か、太陽光発電プラントPの異常かを区別でき、誤報が抑制される。
この他、積雪時以外で、海辺、湖畔、河辺など水面に太陽光が反射し得る場所に太陽光発電プラントPが置かれたケースにも、誤報抑制の向上が図れる。
尚、本発明に係る太陽光発電プラントPとして、上述した監視システムと、この監視システムの当該太陽光発電プラントに対する異常有無の判断結果を、前記監視システム外部へ通信する通信部を有していることを特徴としても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る監視システム及び太陽光発電プラントによると、パワーコンディショナからの電流値等が出力閾値以下の時だけ、照度センサから出力されるプラント照度が照度閾値以上となったかで太陽光発電プラントの異常有無を判断することにより、「監視負担の低減」と「プラントの全体監視」と「誤報の抑制」を同時に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る監視システム及び太陽光発電プラントを示す概要図である。
図2】監視システムからの通知を示す概要図であって、(a)はSMS配信による構成例を示し、(b)はサーバ経由のメール配信による構成例を示す。
図3】監視システムの照度センサの取付状況を示す図面代用写真であり、(a)はある建物の屋上における太陽光発電プラントに受光部を略水平方向に向けて照度センサを取り付けた状況を示し、(b)は(a)と同じ建物の屋上における太陽光発電プラントに受光部を略垂直方向に向けて照度センサを取り付けた状況を示し、(c)は他の太陽光発電プラントに受光部を略水平方向に向けて照度センサを取り付けた状況を示す。
図4】ある晴れの日における太陽光発電プラントのパワコン出力値及びプラント照度の変化を示すグラフである。
図5】他の晴れの日における太陽光発電プラントのパワコン出力値及びプラント照度についてのグラフであって、(a)はパワコン出力値及びプラント照度の変化を示し、(b)はパワコン出力値の全域におけるパワコン出力値とプラント照度との相関関係を示し、(c)はパワコン出力値が出力閾値以下である範囲におけるパワコン出力値とプラント照度との相関関係を示す。
図6】曇りの日又は雨の日における太陽光発電プラントのパワコン出力値及びプラント照度についてのグラフであって、(a)はパワコン出力値及びプラント照度の変化を示し、(b)はパワコン出力値の全域におけるパワコン出力値とプラント照度との相関関係を示し、(c)はパワコン出力値が出力閾値以下である範囲におけるパワコン出力値とプラント照度との相関関係を示す。
図7】プラント照度に基づいた異常有無の判断をしていない場合において、異常有無の誤報が発生していないケースを示すグラフである。
図8】プラント照度に基づいた異常有無の判断をしていない場合において、台風の影響により、異常有無の誤報が発生しているケースを示すグラフである。
図9】プラント照度に基づいた異常有無の判断をしていない場合において、雨の影響により、異常有無の誤報が発生しているケースを示すグラフである。
図10】監視プログラムを示すフローチャートである。
図11】プラント照度に基づいた異常有無の判断をしている場合において、パワコン出力値及びプラント照度を操作して、正常に異常有無が判断されているか確認したケースを示すグラフである。
図12】プラント照度に基づいた異常有無の判断をしている場合において、パワコン出力値が出力閾値以下だが、プラント照度も照度閾値以下であるため、異常が無いと判断されているケースを示すグラフである。
図13】プラント照度に基づいた異常有無の判断をしている場合において、パワコン出力値が出力閾値以下で、プラント照度は照度閾値以上であるため、異常が有ると判断されている1つのケースを示すグラフである。
図14】プラント照度に基づいた異常有無の判断をしている場合において、パワコン出力値が出力閾値以下で、プラント照度は照度閾値以上であるため、異常が有ると判断されている他のケースを示すグラフである。
図15】パワコン出力値が出力閾値以下である範囲における2014年8月31日の標本を元に、相関係数や回帰直線を求めた例を示すグラフである。
図16】ある太陽光発電プラントで、照度センサを受光部(受光面の法線)が略水平となるように取り付けた場合において、2014年8月29〜31日、2014年9月1、2、6日における発電状況(パワコン出力値、プラント照度、温度の変化を示すグラフ)、相関関係(パワコン出力値が出力閾値以下である範囲におけるパワコン出力値とプラント照度との相関関係)を示すグラフ、相関係数、回帰直線、及び、出力閾値を2.5Aとした際に予想される照度閾値を纏めたものである。
図17】ある太陽光発電プラントで、照度センサを受光部(受光面の法線)が略垂直となるように取り付けた場合において、2014年9月13〜17日における発電状況(パワコン出力値、プラント照度、温度の変化を示すグラフ)、相関関係(パワコン出力値が出力閾値以下である範囲におけるパワコン出力値とプラント照度との相関関係)を示すグラフ、相関係数、回帰直線、及び、出力閾値を2.5Aとした際に予想される照度閾値を纏めたものである。
図18】他の太陽光発電プラントで、照度センサを受光部(受光面の法線)が略水平となるように取り付けた場合において、2014年9月14〜18日における発電状況(パワコン出力値、プラント照度、温度の変化を示すグラフ)、相関関係(パワコン出力値が出力閾値以下である範囲におけるパワコン出力値とプラント照度との相関関係)を示すグラフ、相関係数、回帰直線、及び、出力閾値を2.5Aとした際に予想される照度閾値を纏めたものである。
図19】雪の日における太陽光発電プラントのパワコン出力値及びプラント照度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
<太陽光発電プラントPの全体構成>
図1〜3には、本発明に係る監視システム1や、太陽電池D、パワーコンディショナ(パワコン、PCS)C、そして、これらの監視システム1等を設けた本発明に係る太陽光発電プラント(太陽光発電所)Pが示されている。
太陽光発電プラントPは、複数個の太陽電池Dを直列に接続して構成された太陽電池ストリングR(ストリングR)や、交流集電箱(送電盤)Bを備えていても良く、ストリングRは複数本であっても構わない。
【0016】
<太陽電池D、太陽電池ストリングR>
図1、3に示された如く、太陽電池ストリングRにおける個々の太陽電池Dは、光が照射されることによって、正極(+極)と負極(−極)の間に直流電力を発生し、発生する電力の平均は、約100〜300W(例えば、250W)である。
太陽電池Dの形状は、特に限定はないが、例えば、パネル状であっても良い。
これらの太陽電池Dのうち、ある太陽電池Dの+極に別の太陽電池Dの−極を接続し、別の太陽電池Dの+極にまた別の太陽電池Dの−極を接続し、以下、これを繰り返して、複数個(例えば、5〜20枚)の太陽電池Dを直列に接続して、1本の太陽電池ストリングRとなる。
【0017】
このように、複数個の太陽電池Dが直列に繋がった太陽電池ストリングR全体としての+極(電力出力端)と、−極(グランド端)の間の電圧は、各太陽電池Dで発生された直流電圧の和であって、天候、時刻や、各太陽電池Dの劣化、故障、設置位置のズレなどで変動するが、約200〜1000Vとなる。
又、太陽電池ストリングRの電力出力端から出力される電力は、各太陽電池Dの電力の和であって、約500〜6000W(例えば、出力電力が250Wの太陽電池Dを14枚接続した場合、3500W=3.5kW)となる。
【0018】
<パワーコンディショナC、交流送電箱B>
図1に示されたように、パワーコンディショナCは、太陽電池Dからの電流を直流から交流に変換するものであって、直流電流を交流電流に変換するのであれば、何れの構成でも良い。
パワーコンディショナCには、上述した各太陽電池D(又は、太陽電池ストリングR)が導通しており、パワーコンディショナCは、交流集電箱B及びケーブルKを介して、配電網(図示省略)に導通していても良い。
【0019】
更には、1つの太陽光発電プラントPにおいて、複数台のパワーコンディショナCが設けられていたり、これら複数のパワーコンディショナCの出力値(パワーコンディショナCからの電流、電圧、電力のうち少なくとも1つの値を含むパワコン出力値)Mを1つの交流集電箱Bで纏めた後、配電網に導通する構成でも良い。
尚、後述する監視システム1は、交流集電箱Bにおいて、パワーコンディショナCのパワコン出力値Mを読み取るようにしても良い。
【0020】
この他、太陽光発電プラントPは、パワーコンディショナCからの交流電流をより高圧な交流電流に変えるトランス(変圧器、図示省略)や、上述した複数本(例えば、5〜15本)の太陽電池ストリングRを並列に接続した接続箱(図示省略)を有していたり、太陽電池Dからの直流電流を集める直流集電部(図示省略)、日射強度を測定する日射計(図示省略)、気温を測定する温度センサ(図示省略)、そして、上述したパワーコンディショナCや、日射計、温度センサ等に電流を供給する補機を有していても良い。
<監視システム1の全体構成>
【0021】
図1〜3に示したように、本発明に係る監視システム1は、パワーコンディショナCを有した太陽光発電プラントP(特に、パワーコンディショナC)の異常有無を判断する機器である。
監視システム1は、照度を測定する照度センサ2と、太陽光発電プラントPにおける異常が有るかを判断する判断部3を備えている。この判断部3は、太陽光発電プラントPにおける異常が有るかを判断するのであれば、その設置場所や構成に制限はない。
その他、監視システム1は、パワーコンディショナCからのパワコン出力値Mを測定する測定部11や、この測定部11や照度センサ2からの信号を変換する信号変換部12、判断部3の判断結果を外部へ通信する通信部13、パワーコンディショナCからのパワコン出力値Mや照度センサ2からのプラント照度Lを記憶する記憶部(図示省略)を備えていても良い。
【0022】
<照度センサ2>
図1、3に示したように、照度センサ2は、太陽光発電プラントPにおけるプラント照度Lを測定するセンサである。
尚、「太陽光発電プラントPにおけるプラント照度L」とは、太陽光発電プラントPが置かれた環境下における照度を意味し、この照度を「プラント照度L」とする。
又、本発明における「照度」とは、JIS−Z−8113:1998にて規定される「放射を受ける面の単位面積当たりに入射する光束」であり、その単位はルクス[lx]、又は、ルーメン毎平方メートル[lm・m-2]である。
【0023】
照度センサ2は、プラント照度Lを測定できるのであれば、何れの構成でも良いが、例えば、照射される光の照度に比例した電流を流すフォトダイオードや、このフォトダイオードからの電流をOPアンプと抵抗を用いて電圧に変換する構成などでも良い。
以下は、照度センサ2は、照度センサ2に照射される光の照度に比例した電圧を生じる構成であるとして主に述べる。
【0024】
照度センサ2は、光が入射する(光を受ける)受光部2aを有しており、この受光部2aから入射した光が、フォトダイオードに照射される。
照度センサ2は、受光部2aに対する光の入射角度によって、測定されるプラント照度Lは異なる(入射角度が大きいほど、実際に測定されるプラント照度Lは小さくなる)。
尚、受光部2aに対する光の入射角度は、フォトダイオードの受光面における法線(光軸)と入射する光の入射方向との間の角度θであり、その入射角度が0°の時の照度(プラント照度L)の大きさに、cosθを掛けた値となる(仮に、ある光が入射角度0°で入射した時の照度の大きさをQとすると、入射角度がθの時の照度の大きさは、Q×cosθとなる)。
【0025】
このように、照度センサ2に対して、光が所定の入射角度θで入射する(斜めに入射する)場合もあるため、照度センサ2は、コサイン補正(斜めから入射する光を正しく測定する補正(斜入射光特性(受光角特性)の補正))をしても良い。
その他、照度センサ2は、JIS−C−1609−1:2006に規定された一般形精密級照度計や一般形AA級照度計、一般形A級照度計に準じていても良く、視感度補正(人間の目の可視域相対分光応答度特性に照度センサ2の特性を合わせる補正)をしていても良い。
【0026】
照度センサ2は、太陽光発電プラントPが置かれた環境下におけるプラント照度Lが測定できるのであれば、何れに設けられていても良いが、例えば、太陽光発電プラントPにおける太陽電池(太陽電池パネル)D(例えば、パネルの裏面側)に設けられていても良い。
この場合、受光部2aを略水平方向や略垂直(鉛直)方向に向けた状態で、照度センサ2を太陽電池D(例えば、裏面側に取り付けても良い(図3参照)。
【0027】
ここで、受光部2aを略水平方向や略垂直方向に向けるとは、上述したフォトダイオードの受光面における法線(光軸)を略水平方向や略垂直方向に向けるとの意味である。
又、図3(a)、(b)の図面の簡単な説明で述べた「ある太陽光発電プラントP」とは、建物の屋上に設けたA発電所(図16、17中では「A発電所」で表す)であり、図3(c)の図面の簡単な説明で述べた「他の太陽光発電プラントP」とは、空き地に設けたB発電所(図18中では「B発電所」で表す)の設置現場に設けたものである。
尚、照度センサ2には、上述した可視域相対分光応答度特性や斜入射光特性、温度特性などのJIS−C−1609−2:2008に準じた特性があるが、これらの特性に基づく出力電圧の補正をはじめ、その他、A/D変換は、後述する信号変換部12が一括して行っても良い。
【0028】
<判断部3>
図1、2に示したように、判断部3は、太陽光発電プラントP(特に、パワーコンディショナC)の異常有無を判断するものであって、詳しくは、パワコン出力値Mが出力閾値T1以下である間は、プラント照度Lが照度閾値T2以上となったエラー回数Eをカウントし、このエラー回数Eがエラー閾数T3以上となれば太陽光発電プラントPに異常が有ると判断する。
逆に言えば、判断部3は、パワコン出力値Mが出力閾値T1より大きい間においては、太陽光発電プラントPは「正常動作」している(つまり、太陽光発電プラントPに異常は無い)と判断しても良い。
【0029】
これによって、パワーコンディショナCのパワコン出力値Mとプラント照度Lに相関が高い間だけ、照度センサ2に基づいて異常有無を判断することとなるため、異常判断の誤報が抑えられる(「誤報の抑制」)と共に、日射計よりもコスト負担の低い照度センサ(照度計)を活用できる。
判断部3は、太陽光発電プラントPの異常有無を判断できるのであれば、何れの構成でも良いが、例えば、後述する監視プログラム(監視アルゴリズム)Sを実行するCPU(中央処理装置)であっても良く、その他、判断部3は、監視システム1が上述した記憶部を有していない場合には、後述する測定部11からのパワコン出力値Mや、照度センサ2からのプラント照度Lを記憶する記憶機器(メモリや、ハードディスク、DVD、CD等の記憶媒体など)を備えていても良い。
尚、判断部3は、太陽光発電プラントPにおける異常が有るかを判断するのであれば、上述したように設置場所に制限はなく、例えば、太陽光発電プラントPに設置された筐体の中に判断部3が設けられていても良い。
その他、判断部3は、後述の電話網H、ネットワークWを経由して通信部13で通信されるクラウドサーバNや監視室Aが判断部3としての役割を兼ねる構成であったり、電話網H、ネットワークW、クラウドサーバN、監視室Aの何れかに別途接続されたCPU(中央処理装置)が判断部3としての役割を果たす構成であっても良い。
【0030】
判断部3は、出力閾値T1、照度閾値T2、エラー閾数T3、そして、プラント照度Lが照度閾値T2以上となった回数をカウントしたエラー回数Eを記憶しておくメモリを有していても良く、カウントされるエラー回数Eをクリアする(0(ゼロ)にする、リセットする)機能を備えていても良い。
尚、後述するエラー閾数T3は1回であっても良く、この場合は、パワコン出力値Mが出力閾値T1以下である間に、1回でもプラント照度Lが照度閾値T2以上となれば、判断部3は、太陽光発電プラントPに異常が有ると判断することとなる。
つまり、判断部3は、エラー回数Eやエラー閾数T3を介さずに、太陽光発電プラントPの異常有無を判断することが可能であることを示している。
又、判断部3は、一日のうち、所定の時間帯(例えば、午前9時から午後3時(15時)までの間など)のみ、太陽光発電プラントPの異常有無を判断することとしても良い。
【0031】
判断部3は、後述する信号変換部12から、プラント照度Lに相当する出力電圧と、パワコン出力値(パワコン出力電流値等)Mに相当する出力電圧がデジタル値で入力されるが、これらの出力電圧のデジタル値から、実際のプラント照度Lが何ルクス[lx]か、実際のパワコン出力電流値Mが何アンペア[A]か換算するものとしても良い。
その他、判断部3は、照度センサ2や、後述する測定部11からのアナログ信号(出力電圧等)を直接入力しても良いが、後述する信号変換部12を経てデジタル化された照度センサ2や測定部11からの出力電圧を入力しても良い。
判断部3は、パワコン出力値Mが出力閾値T1以下である間におけるプラント照度Lに基づいた異常有無の判断結果を、後述する通信部13に出力する。

このような判断部3や、上述した照度センサ2を有することによって、特許文献1のように、わざわざ減光手段を用いる必要はなく、太陽光発電プラントPの監視にかかる手間・負担を低減できる(「監視負担の低減」)と共に、減光手段による発電量の低減もない。
これに加えて、パワーコンディショナCからの電流値等に基づいて、異常の有無を判断しているため、何れの太陽電池Dも含めた太陽光発電プラントP全体の監視が可能となる(「プラントの全体監視」)。
【0032】
<測定部11>
図1に示したように、測定部11は、パワーコンディショナCからの電流、電圧、電力のうち少なくとも1つの値を含むパワコン出力値Mを測定するものである。
尚、「パワーコンディショナCからの電流、電圧、電力のうち少なくとも1つの値を含むパワコン出力値M」とは、パワーコンディショナCから出力される交流電流における電流、電圧、電力のうち少なくとも1つを含む値を意味し、この値を「パワコン出力値M」とする。
【0033】
測定部11は、パワコン出力値Mを測定できるのであれば、何れの構成でも良いが、例えば、環状(貫通型、クランプ型など)の電流計(交流電流計、変流器)、巻線型の変流器でも良い。
尚、開閉式の貫通型の変流器や、クランプ型の変流器の場合には、パワーコンディショナCの出力側(出力側のケーブル)を切断して測定部11を挿入(接続)する必要がなく、既存の太陽光発電プラントP(パワーコンディショナC)に後付けが容易となる。
【0034】
又、測定部11は、交流用のシャント(ACシャント(抵抗とインダクタンスを直列に接続したものと、キャパシタンスとを並列に接続したもの))をパワーコンディショナCの出力側(出力側のケーブル)に接続し、ACシャントの両端の電圧値から電流値を求める構成であっても良い。
この他、測定部11は、パワーコンディショナCの出力側に接続された交流電圧計や、交流電力計であっても良く、又、変流器(交流電流計)や交流電圧計、交流電力計の少なくとも1つを組み合わせても構わない。
【0035】
以下、測定部11は、環状(リング状)の変流器であるとして主に述べる。
環状の変流器(以下、変流器)11は、パワーコンディショナCの出力側のケーブルに流れる電流値(パワコン出力電流値)Mを非接触で検出でき、検出されるパワーコンディショナCの電力損失を抑えた電流センサであって、パワーコンディショナCからのパワコン出力電流値Mに比例する電圧が出力される。
【0036】
変流器11は、パワーコンディショナCからのパワコン出力電流値Mを測定できるのであれば、何れの構成でも良いが、例えば、ホール素子を有している構成(ホール素子方式)でも良い。
その他、変流器11は、変流器(CT)方式や、コアを有さない空芯コイル(ロゴスキーコイル)方式、フラックスゲート方式、交流零磁束制御方式、交直零磁束制御方式、計器方式などでも構わない。
以下、変流器11は、ホール素子方式であるとして主に述べる。
【0037】
ホール素子方式の変流器11は、環(リング)状に成形したコア(鉄心)と、この鉄心に設けられた隙間(ギャップ)に挿入されたホール素子を有している。
変流器11は、リング状鉄心の孔中央に、パワーコンディショナCの出力側のケーブルを貫通させて、パワーコンディショナCの出力側のケーブルに電流が流れてケーブル周りに発生する磁束に対応した電圧を、ホール素子から出力することにより、パワーコンディショナCの出力側のケーブルに流れる電流値(パワコン出力電流値)Mを測定することが出来る。
【0038】
又、変流器11のリング状鉄心は、その環を開閉可能に構成されていても良く、パワーコンディショナCからの出力側のケーブルへの取付け(後付け)の手間は、パワーコンディショナCからのケーブルに対する相対位置・向き等が固定された変流器11を、パワーコンディショナCからのケーブルを一旦切断して、切断したその間に設置する等の手間よりも格段に低く、変流器11の取付け、特に、後付けの効率向上や、コスト低減に寄与すると言える。
又、変流器11には、温度特性や、入力される電圧による電流検出特性、オフセット(パワーコンディショナCからのケーブルに電流が流れていない時に出力される不平衡電圧(0点電圧))などがあるが、これらの特性に基づく出力電圧の補正、及び/又は、A/D変換は、後述する信号変換部12が、一括して行っても良い。
【0039】
この場合、それぞれの変流器11は、生データ(データ信号)を信号変換部12へ出力するだけで良い。
従って、1個1個の変流器11に、A/D変換や補正を行う素子等をつける必要がなくなり、各変流器11のコストを削減できると同時に、変流器の数(測定できるパワーコンディショナCの数)を増やし易くなるとも言える。
【0040】
更に、変流器11が、可変抵抗(バリスタ)を介して接続されていたり、変流器11のグラント端子が地面に接地されていても良い。
これらのバリスタや接地により、落雷(雷サージ)の影響を抑えることが出来る。
【0041】
変流器などの測定部11は、パワーコンディショナCからの電流、電圧、電力のうち少なくとも1つの値を含むパワコン出力値Mを測定できるのであれば、何れに設けられていても良い。
例えば、上述した交流集電箱Bに、1又は複数の測定部11を設けていても良く、これにより、複数のパワーコンディショナCを有する場合であっても、それぞれのパワコン出力値Mを測定する測定部11を設ければ、複数の測定部11を纏めて読み取り易くなる。
尚、1個1個の測定部(変流器)11に、A/D変換や補正を行う素子等をつける必要はないものの、当然、A/D変換や補正を行う素子等がつけられていても良い。
【0042】
<信号変換部12>
図1に示したように、信号処理部12は、上述した照度センサ2と測定部11からのアナログ信号を、デジタル値(具体的なプラント照度Lやパワコン出力値M)に変換し、変換後のデジタル値を、上述した判断部3へ出力するものである。
信号処理部12は、照度センサ2からのプラント照度Lに比例する電圧値や、測定部11からの電流値等のパワコン出力値Mに比例する電圧値などのアナログ値を、A/D変換して、デジタル値とする。
【0043】
この他、信号変換部12は、照度センサ2の可視域相対分光応答度特性や、斜入射光特性、温度特性などの補正や、測定部(変流器)11の温度特性や、入力される電圧による電流検出特性、オフセットなどがあるが、これらの特性に基づく出力電圧の補正を行っても良い。
ここまで述べたA/D変換や補正を行った後、信号変換部12は、照度センサ2からのプラント照度Lに相当する出力電圧や、測定部11からの電流値等のパワコン出力値Mに相当する出力電圧のデジタル値を、上述した判断部3へ出力する。
【0044】
これは、図5(b)、(c)や図6(b)、(c)、図15〜18で示されたグラフにおいて、縦軸は「照度センサ(mV)」と記載され、横軸は「発電電流(mV)」と記載されており、信号変換部12からは、プラント照度Lに相当する出力電圧と、パワコン出力値(パワコン出力電流値)Mに相当する出力電圧がデジタル値で、判断部3へ出力されている。
ここで、縦軸の「照度センサ(mV)」とは、照度センサ2から出力されたプラント照度Lに相当する電圧値を意味し、横軸の「発電電流(mV)」とは、パワーコンディショナCから出力されたパワコン出力電流値(パワコン出力値)Mに相当する電圧値を意味する。
【0045】
尚、上述したように、信号変換部12から出力されたプラント照度Lに相当する出力電圧や、パワコン出力値(パワコン出力電流値等)Mに相当する出力電圧のデジタル値は、これらの出力電圧のデジタル値が、実際のプラント照度Lで何ルクス[lx]に相当するか、実際のパワコン出力電流値Mで何アンペア[A]に相当するかを、判断部3において換算していても良い。
一方、信号変換部12から出力されたデジタル値が、プラント照度Lで何ルクス[lx]に相当するか、パワコン出力電流値Mで何アンペア[A]に相当するか明らかな場合は、敢えて換算せず、信号変換部12から出力された電圧のデジタル値のまま、判断部3で、異常有無の判断を行っても構わない。
【0046】
<通信部13>
図1、2に示したように、通信部13は、判断部3の太陽光発電プラントP(パワーコンディショナC)に対する異常有無の判断結果を、当該監視システム1の外部へ通信するものである。
この通信部13は、監視システム1が備えているとも言えるが、太陽光発電プラントPが監視システム1を有している場合は、当然、太陽光発電プラントPが通信部13を有しているとも言える。
【0047】
通信部13は、太陽光発電プラントPの異常有無の判断結果を外部へ通信できるのであれば、何れの構成でも良いが、例えば、電話網HをSMS(Short Message Service 、ショートメッセージサービス)配信にて、太陽光発電プラントPの使用者(ユーザ)U(ユーザUのユーザ端末等)に、太陽光発電プラントPに対する異常有無の判断結果を通信する構成であっても良い(図2(a)参照)。
尚、太陽光発電プラントPのユーザUとは、太陽光発電プラントPを使用する者であれば、何れでも良いが、例えば、事業主(事業者(法人、個人)、当該事業者が法人であれば、その社員)U1や、管理会社(管理者(法人、個人)、当該管理者が法人であれば、その社員)U2などであっても構わない。
【0048】
この他、通信部13は、電話網Hからインターネット、LAN、MAN、WANなどのネットワークWを経由して、上述のユーザUや、後述するクラウドサーバN、監視室Aなどに、電子メール(e-mail、eメール)配信にて、太陽光発電プラントPに対する異常有無の判断結果を通信する構成(図2(b)参照)や、後述するクラウドサーバN上のwebサイトに、太陽光発電プラントPに対する異常有無の判断結果をアップロードし、ユーザUがユーザ端末等から閲覧する構成であっても良い。
ここで、クラウドサーバNやユーザU(ユーザ端末)、監視室について、以下に述べる。
【0049】
<アプリケーションサーバ(クラウドサーバ)N>
図2(b)に示されたように、クラウドサーバNは、電話網Hからインターネット、LAN、MAN、WANなどのネットワークWを経由して監視システム1(通信部13)や、ユーザU(ユーザ端末)、監視室Aと接続可能なサーバである。
クラウドサーバNは、太陽光発電プラントP(パワーコンディショナC)に対する監視システム1による異常有無の判断結果や、発電量そのものなどのデータ、太陽光発電プラントPに対する制御内容(ON、OFF、発電抑制など)を置くことが出来るサーバであって、ユーザU(ユーザ端末)の両方から接続可能とすることも出来る。
クラウドサーバNは、1台のコンピュータから構成される場合だけでなく、上述のプラントLANのように、複数のコンピュータから成るLAN(クラウドLAN)を構成しても良い。
【0050】
尚、クラウドサーバNは、電話網HやLANなどの集合体であるネットワークWの一部であるとも考えられ、電話網H等のネットワークWが、複数のコンピュータを統合的に連携し、あたかも1つのコンピューティングリソース(ネットワーク、サーバ、ストレージ、アプリケーション、サービス)であるように扱われる(仮想化される)。
従って、太陽光発電プラントPの異常有無の判断結果や、発電量などのデータ、太陽光発電プラントPに対する制御内容は、クラウドサーバN上に置かれていると同時に、ネットワークW(電話網H)上に置かれているとも言える。
【0051】
又、クラウドサーバNが仮想化されていることから、本発明の通信システム1は、「グリッドシステム」であると言える。
尚、本発明における「グリッドシステム」とは、JIS−X−7301:2010で規定された「コンピュータ、ストレージ及びネットワークといった資源の物理的位置やハードウェアを意識することなく、必要な資源を必要な時に必要なだけ利用可能なシステムであり、異機種及び/又は地理的に分散した、複数のコンピュータ資源を仮想化技術を用いて統合したシステム」システムを言う。
【0052】
尚、クラウドサーバNと監視システム1や、クラウドサーバNとユーザU(ユーザ端末)間、クラウドサーバNと監視室A間は、このクラウドサーバNによって判断結果や制御内容を置くネットワークW(電話網H)上の場所を確保するサービスを提供するプロバイダ(インターネット接続サービスのプロバイダ)と、プロバイダ契約を結ぶこととなる。
これらの機能を実現するのであれば、クラウドサーバNは、いずれの構成でも良い。
【0053】
又、クラウドサーバNは、FTPサーバを有すると共に、ファイアウォールを介して、ネットワークW(電話網H)と接続されていても良い。
尚、上述のファイアウォールと共に、クラウドサーバNには、ウイルス対策ソフト(コンピュータウイルスを検出・除去・無力化するアプリケーションソフト)を有していても良く、又、ファイアウォールかウイルス対策ソフトの何れかを有していることとしても良い。
ここまで述べたクラウドサーバNと、上述の監視システム1を含めて、監視システムであるとも言える。
【0054】
<ユーザU(ユーザ端末)>
図2に示すように、ユーザUのユーザ端末は、太陽光発電プラントP(パワーコンディショナC)に対する監視システム1による異常有無の判断結果を表示すると共に、ユーザUが入力した太陽光発電プラントPへの制御内容を伝達する端末機である。
ユーザ端末は、電話網Hを介して直接クラウドサーバNと接続可能な、又は、電話網Hからインターネット、LAN、MAN、WANなどのネットワークWを経由してクラウドサーバNや監視システム1(通信部13)、監視室Aと接続可能な端末機である。
又、ユーザUのユーザ端末は、電話網Hを介して直接、監視システム1に接続可能な構成であっても構わない。
【0055】
これらを実現するのであれば、ユーザUのユーザ端末は、ユーザUが、遠く離れた太陽光発電プラントPの判断結果を閲覧できる表示手段と、太陽光発電プラントPへの制御内容を入力できる入力手段があれば、いずれの構成でも良いが、例えば、デスクトップ型PCの他、ノートPCや、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、PDA(携帯情報端末)等でも構わない。
ユーザ端末は、上述のように、1台のデスクトップ型PCから構成される場合だけでなく、上述のクラウドLANのように、複数のデスクトップ型PCや、ノートPCや、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、PDA等から成るLAN(ユーザLAN)を構成しても良い。
又、ユーザ端末は、電話網Hや電話網Hを含むネットワークW(クラウドサーバN)上の所定のURL(Webページ)を参照(閲覧)するブラウザを有していたり、FTPクライアントを有していても良い。
【0056】
<監視室A>
図2に示すように、監視室Aは、太陽光発電プラントP(パワーコンディショナC)に対する監視システム1による異常有無の判断結果を閲覧できる表示手段を、オペレータ(監視者)が監視する構成となっている。
これにより、クラウドサーバNに加えて、人間による柔軟な対応も可能となり、より的確に太陽光発電プラントPに対する異常有無の判断精度を向上できる。
【0057】
<記憶部>
記憶部は、パワーコンディショナCからのパワコン出力値Mや照度センサ2からのプラント照度Lを記憶するものである(図示省略)。
記憶部は、パワコン出力値Mやプラント照度Lを記憶できるのであれば、何れの構成でも良いが、例えば、パワコン出力値Mやプラント照度Lを記憶する記憶機器(メモリや、ハードディスク、DVD、CD等の記憶媒体など)であっても良い。
【0058】
<諸条件下における太陽光発電プラントP>
ここまで述べた太陽光発電プラントPは、晴れの日、曇りの日、雨の日、台風の日など様々な条件(諸条件)下において発電を行う。
図4〜9には、諸条件下における太陽光発電プラントPのパワコン出力値M、プラント照度Lなどが示されている。
【0059】
このうち、図4(晴の日)や図5(a)(比較的晴れの日)には、太陽光発電プラントPは正常であり且つ照度は上がっている(明るくなっている)にも関わらず、パワーコンディショナCの出力電流値(パワコン出力値M)は減っているケースが示されている。
つまり、晴れの日など、所定の環境下においては、太陽光発電プラントPに異常がなくとも、パワーコンディショナCのパワコン出力値Mが、プラント照度に比例していない部分があり、明るさ(プラント照度L)は増えるのに、発電量(パワコン出力値M)は減る等の場合には、異常が有ると判断され、誤報の原因となる。
これは、図5(b)が示すように、パワコン出力値(パワーコンディショナCからの出力電流値)Mの全域におけるパワコン出力値Mとプラント照度Lとの相関係数が0.76であることからもわかる。
一方、図5(c)が示すように、パワコン出力値(パワーコンディショナCからの出力電流値)Mが、出力閾値T1(ここでは、5.0A)以下である範囲におけるパワコン出力値Mとプラント照度Lとの相関係数が0.92となり、パワコン出力値Mとプラント照度Lには正の相関関係があることが分かる。
よって、パワコン出力値Mとプラント照度Lには正の相関関係がある出力閾値T1以下の範囲においては、パワコン出力値Mから期待するプラント照度Lが求められ、実際に測定したプラント照度Lと比較して、太陽光発電プラントP(パワーコンディショナC)の異常有無の判断が可能となる。
【0060】
図6の(a)〜(c)で示されたように、晴れの日でなく、曇りの日又は雨の日であっても、少なくとも出力閾値T1以下の範囲においては、パワコン出力値Mとプラント照度Lには正の相関関係があることは同様である。
詳解すれば、図6(a)で示されたように、曇りの日又は雨の日の環境下においては、太陽光発電プラントPは、日中通して、パワコン出力値(パワーコンディショナCからの出力電流値)Mが少ない。
従って、パワコン出力値Mは、出力閾値T1付近か、出力閾値T1以下の範囲にあるため、図6(b)で示したように、パワコン出力値Mの全域におけるパワコン出力値Mとプラント照度Lとの相関係数が0.97であり、図6(c)で示したように、パワコン出力値Mが出力閾値T1(5.0A)以下である範囲においても、パワコン出力値Mとプラント照度Lとの相関係数は0.97となっている。
よって、太陽光発電プラントPが置かれた環境(晴れの日か、曇りの日か、雨の日か、台風の日か等)を問わず、パワコン出力値Mとプラント照度Lに正の相関関係がある出力閾値T1以下の範囲においては、実際に測定したプラント照度Lと比較して、太陽光発電プラントPの異常有無の判断が可能となる。
【0061】
この他の諸条件下において、プラント照度Lに基づいての太陽光発電プラントPの異常有無の判断をしていない場合のパワコン出力値M、プラント照度L等についても述べる。 図7は、2014年8月17日〜2014年8月20日の3日間における太陽光発電プラントP(この太陽光発電プラントPに異常は無い)のパワコン出力値M、プラント照度L等を示している。
この3日間は、太陽が昇っている日中において、パワコン出力値(パワコン出力電流値)Mが低下することはなく、パワコン出力値Mが低下したことによる誤報(誤通知)は発生していない。
【0062】
図8は、2014年8月8日〜2014年8月10日の3日間における太陽光発電プラントP(この太陽光発電プラントPに異常は無い)のパワコン出力値M、プラント照度L等を示している。
この3日間は、何れの日も台風により、日中において、パワコン出力値(パワコン出力電流値)Mが低下しており、太陽光発電プラントPに異常は無いにも関わらず、パワコン出力値Mが低下したとして誤報が発生している。
尚、図8中において、太陽光発電プラントPに異常が有ると判断された際には、クラウドサーバN上のwebサイトにアップロードしたり、SMS配信や電子メール配信にて、「出力(異常が有るとの信号を出力したとの意味)」と通信され、以下図9、11、13、14でも同様である。
又、照度センサ2の向きを変えている(2014年8月8日には、元は天頂方向(略鉛直上方)に向いていた照度センサ2の受光部2aを、下方向(略鉛直下方向)へ向けたり、2014年8月10日には、照度センサ2の受光部2aを、略水平方向で、方角は北向きに向けている)が、プラント照度Lに基づいての太陽光発電プラントPの異常有無の判断はしていない。
【0063】
図9は、2014年8月16日における太陽光発電プラントP(この太陽光発電プラントPに異常は無い)のパワコン出力値M、プラント照度L等を示している。
この日は、雨の影響で、日中(特に、2014年8月16日の午前11時8分頃から午後2時58分(14時58分)まで)において、パワコン出力値(パワコン出力電流値)Mが低下しており、太陽光発電プラントPに異常は無いにも関わらず、パワコン出力値Mが低下したとして誤報が発生している。
【0064】
<監視プログラム>
ここまで述べたように、太陽光発電プラントPは、晴れの日や曇りの日、雨の日、台風の日など様々な環境下に置かれるが、出力閾値T1以下の範囲においては、パワコン出力値Mとプラント照度Lに正の相関関係があることがわかり、これを利用した監視プログラムSについて、以下に述べる。
本発明の監視システム1(判断部3)における監視プログラムSは、パワコン出力値Mが出力閾値T1以下である間は、プラント照度Lに基づいて、太陽光発電プラントP(特に、パワーコンディショナC)の異常有無を判断できるのであれば、何れのプログラムでも構わない。
例えば、以下に示す幾つかの監視プログラム(監視アルゴリズム)Sを、判断部3(CPU)で実行しても良い。
【0065】
<監視プログラムの第1実施形態(照度閾値固定プログラム)S>
図10に示したように、監視プログラムSの第1実施形態は、照度閾値T2を固定して、太陽光発電プラントPの異常有無を判断するプログラム(照度閾値固定プログラムS)である。
本発明の照度閾値固定プログラムSを実行する監視システム1(判断部3)によって、太陽光発電プラントPの異常有無を判断する。
以下に、照度閾値固定プログラムSのフローを述べる(ステップS−1〜S−6、S−21〜S−23、S−31)。
【0066】
この照度閾値固定プログラムSで用いるパラメータの例を、次の表1で示す。
この表1中の出力閾値T1「5.0A」とは、測定部11からの出力電圧値「211mV」に相当し、照度閾値T2「2500(?)ルクス[lx]」とは、照度センサ2からの出力電圧値「300mV」に相当する。
尚、出力閾値T1は「2.5A(≒100mV)」であっても良い。
【0067】
【表1】
【0068】
<ステップS−1>
監視システム1(判断部3)において、照度閾値固定プログラムSが起動されると、測定開始時間(表1中の(A))から測定終了時間(表1中の(B))まで、決められた測定間隔(表1中の(C))毎に、少なくともパワーコンディショナCのパワコン出力値Mを、測定部11にて測定する(ステップS−1)。
尚、測定間隔(表1中の(C))毎に、太陽光発電プラントPにおけるプラント照度Lを、照度センサ2にて測定しても良い。
【0069】
<ステップS−2>
監視システム1(判断部3)において、ステップS−1で測定したパワコン出力値Mが出力閾値T1(表1中のT1)以下であれば、後述のステップS−3に移り、逆に、パワコン出力値Mが出力閾値T1より大きければ、後述のステップS−21に移る(ステップS−2)。
【0070】
<ステップS−21>
監視システム1(判断部3)において、記憶されているエラー回数Eがエラー閾数T3以上であれば、後述のステップS−22に移り、逆に、エラー回数Eがエラー閾数T3より小さければ、後述のステップS−23に移る(ステップS−21)。
【0071】
<ステップS−22>
監視システム1(判断部3)において、記憶されているエラー回数Eをクリア(0にリセット)すると共に、ユーザUや監視室Aへ通信部13を介して、クラウドサーバN上のwebサイトやSMS配信や電子メール配信にて「正常」又は「正常復帰」と通信し(通知し)、その後、上述のステップS−1に戻る(ステップS−22)。
【0072】
<ステップS−23>
監視システム1(判断部3)において、記憶されているエラー回数Eをクリア(0にリセット)すると共に、ユーザU等へ通信部13を介して、クラウドサーバN上のwebサイトやSMS配信や電子メール配信にて「正常」又は「正常動作」と通信し(通知し)、その後、上述のステップS−1に戻る(ステップS−23)。
【0073】
<ステップS−3>
監視システム1(判断部3)において、ステップS−1で測定したプラント照度L(又は、当該ステップS−3で太陽光発電プラントPにおけるプラント照度Lを、照度センサ2にて測定したプラント照度L)が照度閾値T2以上であれば、後述のステップS−4に移り、逆に、プラント照度Lが照度閾値T2より小さければ、後述のステップS−31に移る(ステップS−3)。
【0074】
<ステップS−31>
監視システム1(判断部3)において、記憶されているエラー回数Eをクリア(0にリセット)すると共に、「測定不能(太陽光発電プラントPにおけるパワーコンディショナCからのパワコン出力値Mが測定不能)」と判断され、その後、上述のステップS−1に戻る(ステップS−31)。
ユーザUや監視室Aへは、特に何も通信しなくとも良い(この場合、ユーザUのユーザ端末の表示手段においては、「−(ハイフン)」が表示されても良い)が、ユーザU等へ通信部13を介して、クラウドサーバN上のwebサイトやSMS配信や電子メール配信にて「−(ハイフン)」又は「測定不能」と通信し(通知し)ても良い。
【0075】
<ステップS−4>
監視システム1(判断部3)において、記憶されているエラー回数Eに1を加えたものを、新たなエラー回数Eとして記憶し、その後、後述のテップS−5に移る(ステップS−4)。
【0076】
<ステップS−5>
監視システム1(判断部3)において、記憶されているエラー回数Eがエラー閾数T3以上であれば、後述のステップS−6に移り、逆に、エラー回数Eがエラー閾数T3より小さければ、上述のステップS−1に戻る(ステップS−5)。
【0077】
<ステップS−6>
監視システム1(判断部3)において、ユーザU等へ通信部13を介して、クラウドサーバN上のwebサイトやSMS配信や電子メール配信にて「出力(異常が有るとの信号が出力されたとの意味)」又は「出力低下」と通信し(通知し)、その後、上述のステップS−1に戻る(ステップS−6)。
【0078】
<第1実施形態の監視プログラムSを実行した場合における太陽光発電プラントP>
図11、12には、上述した第1実施形態の監視プログラム(照度閾値固定プログラム)Sを、太陽光発電プラントPで実行した様子が示されている。
図11は、2014年8月27日における太陽光発電プラントP(この太陽光発電プラントPに異常は無い)のパワコン出力値M、プラント照度L等を示している。
この日は、太陽が昇っている日中において、パワコン出力値(パワコン出力電流値)Mが低下することはないが、所定の時間の間は、故意に測定部11や照度センサ2を操作して、照度閾値固定プログラムSを実行した場合において、以下の2つのケースで、太陽光発電プラントP(パワーコンディショナC)の異常有無の判断が正しいか確認した。
【0079】
<パワコン出力値(パワコン出力電流値)Mを「0.0A」とし且つプラント照度Lを「2500ルクス[lx]」としたケース>
具体的なケースとして、2014年8月27日の午前11時38分から昼12時28分頃までの間で、測定部(変流器)11において10分の測定間隔(C)毎に測定される「CH01」からのパワコン出力値(パワコン出力電流値)Mを、故意に0.0Aとし、照度センサ2からのプラント照度Lに相当する電圧を、故意に300mVとした。
尚、測定間隔(C)は、10分としているが、当然、特に制限はなく、例えば、5分や1分、30分、1時間など何れの値でも構わない。
【0080】
測定間隔(C)の10分毎に詳しく述べれば、まず、2014年8月27日の午前11時38分の時点において、照度閾値固定プログラムSにおけるステップS−1にて測定されたパワコン出力値M「0.0A」は、表1で示した出力閾値T1「5.0A」以下であるとステップS−2で判断され、次のステップS−3に処理が移る。
処理が移ったステップS−3では、プラント照度L「2500ルクス[lx](≒300mV)」は、表1で示した照度閾値T2「2500ルクス[lx](≒300mV)」以上であるとステップS−3で判断され、次のステップS−4に処理が移る。
処理が移ったステップS−4では、当初「0(ゼロ)」であったエラー回数Eに1が加えられてエラー回数Eは「1」となり、次のステップS−5に処理が移る。
処理が移ったステップS−5では、エラー回数E「1」は、表1で示したエラー閾数T3「5」より小さいため、ステップS−1に処理が戻る。
尚、この時点では、照度閾値固定プログラムSが、太陽光発電プラントPに異常が有るとはまだ判断していないため、クラウドサーバN上のwebサイトや、SMS配信、電子メール配信等にて、ユーザUには引き続き「正常」と通知される。
【0081】
次に、2014年8月27日の午前11時48分の時点においても、同様に、照度閾値固定プログラムSのステップS−1で測定されたパワコン出力値M「0.0A」は、出力閾値T1「5.0A」以下であるとステップS−2で判断され、次のステップS−3でもプラント照度L「2500ルクス[lx]」は、照度閾値T2「2500ルクス[lx]」以上であると判断され、次のステップS−4に処理が移る。
処理が移ったステップS−4では、さきほど「1」であったエラー回数Eに1が加えられてエラー回数Eは「2」となり、次のステップS−5でも、エラー回数E「2」は、エラー閾数T3「5」より小さいため、ステップS−1に処理が戻る。
尚、このときも、クラウドサーバN上のwebサイト等にて、ユーザUには引き続き「正常」と通知される。
【0082】
以下、2014年8月27日における午前11時58分や昼12時08分においても同様で、ステップS−1〜S−4を経てエラー回数Eは「3」や「4」となり、ステップS−5でエラー閾数T3「5」より小さいため、ステップS−1に処理が戻り、クラウドサーバN上のwebサイト等にて、ユーザUには「正常」と通知される。
しかし、2014年8月27日における昼12時18分においては、ステップS−1〜S−4を経てエラー回数Eが「5」となり、ステップS−5で、初めてエラー閾数T3「5」以上となるため、次のステップS−6へ処理が移る。
処理が移ったステップS−6では、クラウドサーバN上のwebサイトや、SMS配信、電子メール配信等にて、ユーザUには「出力」と通知された後、ステップS−1に処理が戻る。
【0083】
次に、2014年8月27日の昼12時28分においても同様に、ステップS−1〜S−4を経てエラー回数Eが「6」となり、ステップS−5で、エラー閾数T3「5」以上となるため、ステップS−6にて、クラウドサーバN上のwebサイト等にて、ユーザUには引き続き「出力」と通知された後、ステップS−1に処理が戻る。
しかし、2014年8月27日における昼12時38分においては、ステップS−1で測定される「CH01」からのパワコン出力値(パワコン出力電流値)Mを、測定部(変流器)11で測定されたそのままの値(「5.0A」以上)とすると、ステップS−2では出力閾値T1「5.0A」よりも大きいと判断され、次のステップS−21に処理が移る。
処理が移ったステップS−21で、エラー回数E「6」はエラー閾数T3「5」以上であるために、ステップS−22でエラー回数E「0」にリセットし、クラウドサーバN上のwebサイト等にて、ユーザUには「正常」と通知された後、ステップS−1に処理が戻る。
【0084】
<パワコン出力値(パワコン出力電流値)Mを「0.0A」とし且つプラント照度Lを「0ルクス[lx]」としたケース>
別の具体的なケースとして、2014年8月27日の昼12時58分から午後1時58分(13時58分)までの間で、測定部(変流器)11において10分の測定間隔(C)毎に測定される「CH01」からのパワコン出力値(パワコン出力電流値)Mを、故意に0.0Aとすると共に、照度センサ2からのプラント照度Lに相当する電圧について、今度は、故意に0mV以上とした。
【0085】
まず、2014年8月27日の昼12時58分の時点において、照度閾値固定プログラムSにおけるステップS−1にて測定されたパワコン出力値M「0.0A」は、出力閾値T1「5.0A」以下であるとステップS−2で判断され、次のステップS−3に処理が移る。
処理が移ったステップS−3では、プラント照度L「0ルクス[lx](=0mV)」は、照度閾値T2「2500ルクス[lx](≒300mV)」より小さいとステップS−3で判断され、次は、ステップS−31に処理が移る。
処理が移ったステップS−31では、エラー回数E「0」にリセットし、クラウドサーバN上のwebサイト等にて、ユーザUには「−(ハイフン)」と通知された後、ステップS−1に処理が戻る。
尚、ユーザUに通知される「−(ハイフン)」とは、「測定不能」との意味であるが、「CH01」が「測定不能」と判断されれば、「CH02」〜「CH05」も、当然に、曇りや雨など同じ環境下に置かれるはずである。
よって、パワコン出力値Mを「0.0A」とした「CH01」だけでなく、その他の「CH02」〜「CH05」も「測定不能」との意味の「−(ハイフン)」がユーザUに通知される。
この「CH01」〜「CH05」までの「−(ハイフン)」との通知は、2014年8月27日の昼12時58分以外にも、それから定間隔(C)の10分毎の2014年8月27日の午後1時08分(13時08分)、午後1時18分(13時18分)、午後1時28分(13時28分)、午後1時38分(13時38分)、午後1時48分(13時48分)、午後1時58分(13時58分)においても同様に行われる。
【0086】
<パワコン出力値(パワコン出力電流値)Mが天候のために出力閾値T1以下まで低下したケース>
一方、図12は、2014年8月24日における太陽光発電プラントP(この太陽光発電プラントPに異常は無い)のパワコン出力値M、プラント照度L等を示している。
この図12は、図11のように、故意に測定部11や照度センサ2を操作したのでなく、天候のため、日中であっても、パワコン出力値(パワコン出力電流値)Mが低下したケースであって、このケースでも、照度閾値固定プログラムSを実行した場合において、太陽光発電プラントPの異常有無の判断が正しいか確認した。
【0087】
具体的には、2014年8月24日の昼12時28分から午後3時18分(15時28分)頃までの間で、測定部(変流器)11において10分の測定間隔(C)毎に測定される「CH01」からのパワコン出力値(パワコン出力電流値)Mは、出力閾値T1の「5.0A」以下となっている。
測定間隔(C)の10分毎に詳しく述べれば、まず、2014年8月24日の昼12時28分の時点において、照度閾値固定プログラムSにおけるステップS−1にて測定されたパワコン出力値Mは、出力閾値T1「5.0A」以下であるとステップS−2で判断され、次のステップS−3に処理が移る。
処理が移ったステップS−3では、プラント照度Lも、照度閾値T2「2500ルクス[lx](≒300mV)」より小さいとステップS−3で判断され、次は、ステップS−31に処理が移る。
処理が移ったステップS−31では、エラー回数E「0」にリセットし、クラウドサーバN上のwebサイト等にて、ユーザUには、「CH01」〜「CH05」に亘って「−(ハイフン)」と通知された後、ステップS−1に処理が戻る。
この「CH01」〜「CH05」までの「−(ハイフン)」との通知は、2014年8月24日の昼12時28分以外にも、それから定間隔(C)の10分毎の2014年8月24日の昼12時38分から午後3時18分(15時28分)までの測定間隔(C)の10分毎においても同様に行われる。
逆に言えば、この2014年8月24日の昼12時28分から午後3時18分(15時28分)までは、照度閾値固定プログラムSを太陽光発電プラントPに実行させていなければ、パワコン出力値Mが低下したことだけに基づいて、太陽光発電プラントPに異常が有るとユーザUに通知してしまうことから、誤報を回避したことがわかる。
【0088】
図11、12より、監視プログラム(照度閾値固定プログラム)Sを太陽光発電プラントPで実行させると、パワコン出力値Mが出力閾値T1以下となり、且つ、プラント照度Lが照度閾値T2以上となったエラー回数Eがエラー閾数T3以上となった際に初めて、太陽光発電プラントPに異常が有るとユーザUに通知すると同時に、パワコン出力値Mが出力閾値T1以下となったにも関わらず、プラント照度Lが照度閾値T2より小さい場合には、天候による低下であるため、太陽光発電プラントPに異常が有るとはユーザUに通知しないため、異常判断の誤報が抑えられる(「誤報の抑制」)と共に、日射計よりもコスト負担の低い照度センサ(照度計)を活用できる。
つまり、本発明の監視システム1によって、従来技術のように、雨や曇りの日などで、太陽光発電プラントP(パワーコンディショナC)は正常に稼働しているにも係わらず、多くの出力低下を通知することはなく、一定以上の照度がない雨や曇りの日などの場合には、敢えて判断を行わない為、誤報を抑制できる。
【0089】
<変更可能な照度閾値T2>
ここまでは、照度閾値T2を固定させた場合(照度閾値固定プログラム)について述べたが、上述した照度センサ2の受光部2aの取付方向は、太陽光発電プラントPにおける設置場所により、必ずしも所定の方向(例えば、北方向)に設置出来るとは限らない。
例えば、図13は、2014年8月29日における太陽光発電プラントP(この太陽光発電プラントPに異常は無い)のパワコン出力値M、プラント照度L等を示しているが、午後2時58分に、太陽光発電プラントPに異常が有ると通知している。
更に、図14は、2014年9月1日における太陽光発電プラントP(この太陽光発電プラントPに異常は無い)のパワコン出力値M、プラント照度L等を示しているが、午前11時38分等に、太陽光発電プラントPに異常が有ると通知している。
【0090】
つまり、太陽光発電プラントPが置かれた周囲の状況や、太陽の南中高度の変化により、照度センサ2の受光部2aに入ってくる光束の量も変化するため、判断部3による太陽光発電プラントPの異常有無の判断中に自ら学習を来ない、状況に応じて、マージンを持った照度閾値T2を決定、又は、最適化することがより好ましく、更なる誤報の抑制が図れる。
尚、出力閾値T1は、パワーコンディショナCの定格電力やメーカが変わっても、固定としても良い。
又、図7〜9、11〜14の状況を表2に纏めた。
【0091】
【表2】
【0092】
<照度閾値T2決定方法の実施例1>
太陽光発電プラントPが置かれた周囲の状況や、太陽の南中高度の変化、運用状態に応じた照度閾値T2の決定方法として、その実施例1を以下に示す。
2014年8月29〜31日、9月1、2、6日の6日間におけるパワコン出力値Mとプラント照度Lの相関について、以下の表3に纏めた。
【0093】
【表3】
【0094】
この表3で示したように、パワコン出力値(パワコン出力電流値)Mは、0.0A以上25.0A以下の全域で相関をとると、最小値が0.7〜0.9近辺の相関係数となったが、これは、天候の良い日(晴れの日)は相関係数の値が悪くなる(低くなる)ことを示している。
一方、パワコン出力値(パワコン出力電流値)Mは、判定域である出力閾値T1(5.0A)以下であれば、いずれも0.9以上の相関係数となり、強い相関関係を示すことが分かる(尚、設置環境により回帰直線の傾きは異なってくるので、都度調整は必要)。
このことより、「出力閾値T1」を決めれば、その時のおおよその「照度閾値T2」の値を推測することが可能である。
【0095】
図15は、2014年8月31日の例であるが、「出力閾値T1」に対し、図15における青い領域(図15中のαで示した斜線領域)に「照度閾値T2」を決めれば、誤判定が回避可能と考える。
尚、図15における直線βは、回帰直線y=2.0485x−14.451のy切片をシフトし、誤判定とならない領域に持ってきたもので、直線としてはy=2.0485x+200.000となる。
これを元に考えれば、例えば、出力閾値T1を「2.5A(≒100mV)」に対し、照度閾値T2は「6300ルクス[lx](≒400mV)」に設定すれば良いことが分かる。尚、照度閾値T2を上げると判定の機会が減るので、適宜最適値を求めても良い。
【0096】
<監視プログラムの第2実施形態(相関係数・回帰直線プログラム)S’>
このような照度閾値T2決定方法の実施例1を監視システム1に行わせる監視プログラムの第2実施形態(相関係数・回帰直線プログラム)S’について、以下に述べる。
この第2実施形態(相関係数・回帰直線プログラム)S’は、上述した監視プログラムの第1実施形態(照度閾値固定プログラム)SにおけるステップS−1、S−3の代わりに、以下に示すステップS’−1、S’−3を有している。
【0097】
<ステップS’−1>
監視システム1(判断部3)において、相関係数・回帰直線プログラムS’が起動されると、測定開始時間から測定終了時間まで、決められた測定間隔(例えば、1時間)毎に、パワーコンディショナCのパワコン出力値Mを測定部11にて、プラント照度Lを照度センサ2にて測定する。
これらの測定したパワコン出力値Mとプラント照度Lを、判断部3における記憶機器や、上述した記憶部に記録して、一定期間(一定回数)のパワコン出力値Mとその時のプラント照度Lの母集団を形成する(ステップS’−1)。
尚、このステップS’−1で記憶されるパワコン出力値Mとその時のプラント照度Lは、あまり高いパワコン出力値(パワコン出力電流値)Mでは、プラント照度Lと相関が取れないため、例えば、パワコン出力値Mが出力閾値T1以下である際のパワコン出力値Mとその時のプラント照度Lを、記憶する対象としても良い。
又、記憶可能なパワコン出力値Mとその時のプラント照度Lとの組の数は、特に制限はないが、後述するステップS’−3における標本数を少なくとも記憶することとなる。
【0098】
<ステップS’−3>
監視システム1(判断部3)において、ステップS−1で測定したプラント照度Lが照度閾値T2以上であれば、後述のステップS−4に移り、逆に、プラント照度Lが照度閾値T2より小さければ、後述のステップS−31に移る(ステップS’−3)。
このステップS’−3において用いる照度閾値T2は、記憶されたパワコン出力値Mとその時のプラント照度Lとの組の数が、所定の標本数(例えば、30など)となるまで計算が出来ない為、その間はデフォルトの照度閾値T2を用いることになる。
記憶されたパワコン出力値Mとその時のプラント照度Lとの組の数が標本数を越えた場合、最古の(最も早くに記憶された)パワコン出力値Mとその時のプラント照度Lとの組は捨てて、常に最新の(30個等)のパワコン出力値Mとその時のプラント照度Lとの組から照度閾値T2を計算する。
この照度閾値T2の計算は、新たなパワコン出力値Mとその時のプラント照度Lとの組が記憶された際に、まず相関係数を求める。但し、出力閾値T1(例えば、5.0A)以下のパワコン出力値Mとその時のプラント照度Lとの組が対象であり、出力閾値T1以下のパワコン出力値Mとその時のプラント照度Lとの組が、更新された(新たに記憶された)時に相関係数を求めることになる。
この相関係数が、所定値(例えば、0.9)以上の時に限り、回帰直線を求め、この回帰直線を元に、パワコン出力値Mに対して推定されるプラント照度L(推定プラント照度L’)を求める。
この推定プラント照度L’に、一定のマージンを加えたもの(例えば、図15における回帰直線のy切片をシフトし、誤判定とならない領域に持ってきた直線β)を照度閾値として設定する。
具体的には、上述したように、出力閾値T1が「2.5A(≒100mV)」であれば、照度閾値T2を「6300ルクス[lx](≒400mV)」に設定すれば良く、これと同様に、出力閾値T1の相当する電圧が「150mV(≒3.75A)」であれば、照度閾値T2の相当する電圧を約「500mV(例えば、7875ルクス[lx])」に設定すれば良いことが分かる。
【0099】
このステップS’−3によって、太陽光発電プラントPの設置後におけるプラント照度Lの長期的変化に応じて、パワコン出力値Mに対する照度閾値T2が最適化されると言える。
又、第2実施形態の監視プログラム(相関係数・回帰直線プログラム)S’を実行している際の照度閾値T2は、判断部3が太陽光発電プラントPの異常有無を判断している間にも変更可能な閾値であるとも言え、太陽光発電プラントPが置かれた環境下(照度センサ2の取付方向(水平方向、鉛直方向、斜め方向などの何れの上下方向に向けるか、方角など)、太陽の南中高度)に応じて、照度閾値T2を最適化できる。
尚、第2実施形態の監視プログラム(相関係数・回帰直線プログラム)S’におけるその他のステップは、第1実施形態の監視プログラム(照度閾値固定プログラム)SにおけるステップS−2、S−4〜S−6、S−21〜S−23、S−31と同様である。
【0100】
<その他の相関係数、回帰直線、推定プラント照度L’の例>
尚、図15で示した2014年8月31日の例以外の日においても、念のために、回帰直線を求めた。
図16〜18は、2014年8月31日以外の日において、図3の(a)〜(c)で示した照度センサ2の取付方向、設置場所の太陽光発電プラントPからのパワコン出力値Mとプラント照度Lのデータに基づいた回帰直線である。
詳解すれば、図16図3(a))はA発電所の太陽光発電プラントに対して、照度センサ2の受光部2a(受光面の法線)を略水平方向に向けた(受光部2aには、直接太陽光は当たり難い)場合であり、図17図3(b))は同じくA発電所の太陽光発電プラントに対して、照度センサ2の受光部2aを略垂直方向に向けた((a)に比べて、受光部2aに直接太陽光が当り易い)場合であり、図18図3(c))はB発電所の設置現場における太陽光発電プラントに対して、照度センサ2の受光部2aを略水平方向に向けた(受光部2aには、直接太陽光は当り難い)場合である。
【0101】
これら図16〜18より、図3の(a)〜(c)で示した何れの取付方向、設置場所であっても、パワコン出力値(パワコン出力電流値)Mは、出力閾値T1「5.0A」以下の範囲で見た場合、照度センサ2からのプラント照度Lとの間に強い相関関係があると言える。
又、図16〜18の各回帰直線を比較すると、それぞれの直線の傾きは多少異なる傾向にあり、取付方向、設置場所によって照度センサ2が受ける照度が異なるためと言える。
これら図16〜18の回帰直線を用いて、パワコン出力値(パワコン出力電流値)Mが「2.5A(≒100mV)」に対するプラント照度Lを予測すると、図16では170mVから190mVの間、図17では190mVから340mVの間、図18では70mVから120mVの間となっており、設置場所を問わず、照度センサ2の受光部2aを略水平方向に向けた図16、18 のバラツキが小さい。
このことから、照度センサ2の受光部2aを略水平方向へ取り付ける方が好ましいと言える。
【0102】
図16〜18で示したように、パワコン出力値Mとプラント照度Lとの間に相関関係があることは明白であるため、出力閾値T1(例えば5.0Aなど)以下であれば、日射計などではなく、照度センサ2でも十分判断が可能であると言える。
更に、出力閾値T1も、図16〜18等のデータ分析などから、2.0A前後が適当とも言え、例えば、2.5Aに設定しても良い。
尚、夜間で、太陽光発電プラントPが発電していないにも係わらず、パワーコンディショナCの出力側に若干電流(例えば、0.5A等)が流れているが、パワーコンディショナCの内部回路で消費している電流(若しくは、系統から流れ込む電流)であると言える。
よって、出力閾値T1は、夜間に流れる電流値(例えば、0.5Aなど)以上であっても良い。
又、照度センサ2からのプラント照度Lに相当する出力電圧が小さい場合には、照度センサ2においてフォトダイオードからの電流を電圧に変換する際に用いる抵抗の抵抗値を変更するなどして、プラント照度Lに相当する出力電圧を、2倍から5倍に上げた方が良いとも言える。
【0103】
<照度閾値T2決定方法の実施例2>
照度閾値T2決定方法として、上述の実施例1より更に計算を簡略化した実施例2について、以下に述べる。
照度閾値T2決定方法の実施例2は、パワコン出力値Mとプラント照度Lの比の移動平均で求める方法である。
【0104】
<監視プログラムの第3実施形態(移動平均プログラム)S”>
この照度閾値T2決定方法の実施例2を監視システム1に行わせる監視プログラムの第3実施形態(移動平均プログラム)S”について、以下に述べる。
この第3実施形態(移動平均プログラム)S”は、上述した監視プログラムの第1実施形態(照度閾値固定プログラム)SにおけるステップS−1、S−3の代わりに、以下に示すステップS”−1、S”−3を有している。
【0105】
<ステップS”−1>
監視システム1(判断部3)において、移動平均プログラムS”が起動されると、測定開始時間から測定終了時間まで、決められた測定間隔(例えば、1時間)毎に、パワーコンディショナCのパワコン出力値Mを測定部11にて、プラント照度Lを照度センサ2にて測定する。
これらの測定したパワコン出力値Mを、その時のプラント照度Lで割った比率を、判断部3における記憶機器や、上述した記憶部に記録して、一定期間(一定回数)のパワコン出力値Mとその時のプラント照度Lの母集団を形成する(ステップS”−1)。
尚、このステップS”−1で記憶されるパワコン出力値Mとその時のプラント照度Lは、あまり高いパワコン出力値(パワコン出力電流値)Mでは、プラント照度Lと相関が取れないため、例えば、パワコン出力値Mが出力閾値T1以下である際のパワコン出力値Mに対するその時のプラント照度Lの比率を、記憶する対象としても良い。
又、記憶可能なパワコン出力値Mに対するプラント照度Lの比率の数は、特に制限はないが、後述するステップS”−3における標本数を少なくとも記憶することとなる。
【0106】
<ステップS”−3>
監視システム1(判断部3)において、ステップS−1で測定したプラント照度Lが照度閾値T2以上であれば、後述のステップS−4に移り、逆に、プラント照度Lが照度閾値T2より小さければ、後述のステップS−31に移る(ステップS”−3)。
このステップS”−3において用いる照度閾値T2は、記憶されたパワコン出力値Mに対するプラント照度Lの比率の数が、所定の標本数(例えば、10など)となるまで計算が出来ない為、その間はデフォルトの照度閾値T2を用いることになる。
記憶されたパワコン出力値Mに対するプラント照度Lの比率の数が標本数を越えた場合、最古の(最も早くに記憶された)パワコン出力値Mに対するプラント照度Lの比率は捨てて、常に最新の標本数(10個等)のパワコン出力値Mに対するプラント照度Lの比率から照度閾値T2を計算する。
この照度閾値T2の計算は、新たなパワコン出力値Mに対するプラント照度Lの比率が記憶された際に、最新の標本数(10個等)の比率を元に移動平均を求める。但し、出力閾値T1(例えば、5.0A)以下のパワコン出力値Mに対するプラント照度Lの比率が対象であり、出力閾値T1以下のパワコン出力値Mに対するプラント照度Lの比率が、更新された(新たに記憶された)時に移動平均を求めることになる。
求めた比率の移動平均を元に、パワコン出力値Mに対して推定されるプラント照度L(推定プラント照度L’)を求める。
この推定プラント照度L’に、一定のマージンを加えたものを照度閾値として設定する。
【0107】
このようなステップS”−3によって、太陽光発電プラントPの設置後におけるプラント照度Lの長期的変化に応じて、パワコン出力値Mに対する照度閾値T2が最適化されると言える。
又、第3実施形態の監視プログラム(移動平均プログラム)S”を実行している際の照度閾値T2も、判断部3が太陽光発電プラントPの異常有無を判断している間にも変更可能な閾値であるとも言え、太陽光発電プラントPが置かれた環境下(照度センサ2の取付方向(水平方向、鉛直方向、斜め方向などの何れの上下方向に向けるか、方角など)、太陽の南中高度)に応じて、照度閾値T2を最適化できる。
更に、第3実施形態の監視プログラム(移動平均プログラム)S”は、第2実施形態の監視プログラム(相関係数・回帰直線プログラム)S’と比べて、照度閾値T2を求めていく過程の計算負荷が低く、判断部3(CPU)や、記憶機器又は記憶部の性能もそれほど高くなくとも良い。
尚、第3実施形態の監視プログラム(移動平均プログラム)S”におけるその他のステップは、第1実施形態の監視プログラム(照度閾値固定プログラム)SにおけるステップS−2、S−4〜S−6、S−21〜S−23、S−31と同様である。
【0108】
<その他の照度閾値T2の決定方法>
その他、判断部3が太陽光発電プラントPの異常有無を判断している間にも変更可能であれば、何れの方法によって、照度閾値T2を決定しても構わず、例えば、ユーザUが、通信部13を介して、所定の照度閾値T2に変更する構成であっても良い。
【0109】
<その他の諸条件下における太陽光発電プラントP>
ここまで述べた太陽光発電プラントPは、晴れの日、曇りの日、雨の日、台風の日以外に、雪の日など様々な条件(諸条件)下に置かれる場合もある。
図19には、2014年12月28日〜2015年1月5日の9日間の広島県山間部における太陽光発電プラントP(この太陽光発電プラントPに異常は無い)のパワコン出力値M、プラント照度L等の変化を示しており、パワコン出力値M等の変化の山1つが1日となる。
【0110】
9日間のうち、2015年1月1日〜2015年1月4日の間は、降雪があり全く発電しておらず(積雪時の発電量はほぼ夜間と同じ値となる)、2015年1月5日から発電を再開している。
ここで、2015年1月1日〜2015年1月4日の間は、照度センサ2からのプラント照度Lは、通常時より1.5倍から2.0倍程度に跳ね上がっている。
そこで、照度閾値(高照度閾値T2’)をもう1つ追加し、この高照度閾値T2’以上のプラント照度Lの場合は、積雪があるものとして、太陽光発電プラントP(パワーコンディショナC)の監視を一時中断するなどで、誤報判断を防いでも良い。
【0111】
<判断部3の変形例>
つまり、判断部3を、パワコン出力値Mが出力閾値以下T1である間に、プラント照度Lが照度閾値T2以上となっても、プラント照度Lが、照度閾値T2より大きい高照度閾値T2’以上となれば、エラー回数Eとしてカウントしないものとしても良い。
これにより、降雪により雪が積もった時には、正常な(異常の無い)太陽光発電プラントPにおいても、パワーコンディショナCからの電流値等が出力閾値T1以下であるにも関わらず、プラント照度Lが照度閾値T2以上となることが起こり得る。
これは、積もった雪で太陽光が反射されて明るくなる(プラント照度Lが高くなる)ためであり、ここで、照度閾値T2より大きい高照度閾値T2’を設け、この高照度閾値T2’以上にプラント照度Lがなった際にエラー回数Eをカウントしなければ、積雪による照度上昇か、太陽光発電プラントPの異常かを区別でき、誤報が抑制される。
この他、積雪時以外で、海辺、湖畔、河辺など水面に太陽光が反射し得る場所に太陽光発電プラントPが置かれたケースにも、誤報抑制の向上が図れる。
【0112】
<監視プログラムSにおけるステップS−3の変形例>
監視システム1(判断部3)において、ステップS−1で測定したプラント照度L(又は、当該ステップS−3で太陽光発電プラントPにおけるプラント照度Lを、照度センサ2にて測定したプラント照度L)が、照度閾値T2以上で且つ高照度閾値T2’より小さければ、後述のステップS−4に移る。
逆に、プラント照度Lが、照度閾値T2以上で且つ高照度閾値T2’以上となれば、又は、照度閾値T2より小さければ、後述のステップS−31に移る(ステップS−3)。
尚、ステップS’−3やS”−3においても、同様に、高照度閾値T2’を設けても良い。
【0113】
<その他>
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。監視システム1や太陽光発電プラントP等の各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することが出来る。
監視システム1は、照度センサ2以外にも、温度センサなどにおいて、パワコン出力値Mと相関が高い測定域だけを参照して、太陽光発電プラントP(パワーコンディショナC)の異常有無を判断しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明に係る監視システムは、太陽光発電プラントに対して後付けであったり、太陽光発電プラントに当初から取り付けられていても良く、本発明に係る太陽光発電プラントが設置されている場所も、特に制限はなく、例えば、建物やその屋上、山間部をはじめ、宅地、山林、原野、雑種地、田、畑、降雪地、海辺、河辺などでも良く、本発明は、何れの地域に設置された太陽光発電プラントに対しても利用可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 監視システム
2 照度センサ
3 判断部
D 太陽電池
C パワーコンディショナ
P 太陽光発電プラント
M パワコン出力値
T1 出力閾値
L プラント照度
T2 照度閾値
T2’ 高照度閾値
E エラー回数
T3 エラー閾数
図1
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