【文献】
糸賀 正明,ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム),飽和ポリエステル樹脂ハンドブック,日刊工業新聞社,1999年12月22日,第1版
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記透明樹脂フィルムは、前記透明導電膜の面側に設けられた第1の硬化樹脂層と、前記透明導電膜とは反対の面側に設けられた第2の硬化樹脂層とを有する請求項1に記載のキャリアフィルム付き透明導電性フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のキャリアフィルム付き透明導電性フィルムの実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。ただし、図の一部又は全部において、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大または縮小等して図示した部分がある。上下等の位置関係を示す用語は、単に説明を容易にするために用いられており、本発明の構成を限定する意図は一切ない。
【0021】
<キャリアフィルム付き透明導電性フィルム>
図1は、本発明のキャリアフィルム付き透明導電性フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図であり、
図2は、本発明の他の実施形態に係るキャリアフィルム付き透明導電性フィルムの模式的断面図である。本発明のキャリアフィルム付き透明導電性フィルムは、
図1に示すように、透明樹脂フィルム3と、透明導電膜4とを含む透明導電性フィルム20と、透明導電性フィルム20の透明樹脂フィルム3が形成された面側に配置された粘着剤層2と保護フィルム1とを含むキャリアフィルム10と、を含むキャリアフィルム付き透明導電性フィルムである。なお、保護フィルム1の前記粘着剤層2が形成された面と反対の面側に、更に導電層を備えることができる。
【0022】
また、
図2に示すように、透明樹脂フィルム3は、前記透明導電膜4の面側に設けられた第1の硬化樹脂層6と、前記透明導電膜4とは反対の面側に設けられた第2の硬化樹脂層5とを有することができるが、片面のみにいずれかの硬化樹脂層を有することも可能である。なお、第1の硬化樹脂層6と第2の硬化樹脂層5とは、アンチブロッキング層やハードコート層として機能するものを含む。第1の硬化樹脂層6と透明導電膜4との間に更に1層の光学調整層7を備えることができるが、2層以上の光学調整層7を備えることもできる。なお、
図2では、透明導電性フィルム20は、第2の硬化樹脂層5と、透明樹脂フィルム3と、第1の硬化樹脂層6と、光学調整層7と、透明導電膜4とをこの順に有するが、例えば、第2の硬化樹脂層5と、透明樹脂フィルム3と、第1の硬化樹脂層6と、透明導電膜4とをこの順に有する透明導電性フィルム20であったり、透明樹脂フィルム3と、光学調整層7と、透明導電膜4とをこの順に有する透明導電性フィルム20であったり、任意の組み合わせとすることも可能である。
【0023】
キャリアフィルム付き透明導電性フィルムの非晶質から結晶質へと結晶化が完了した際の到達抵抗値(表面抵抗値)は、100〜130Ω/□が好ましく、100〜120Ω/□がより好ましく、100〜110Ω/□がさらに好ましい。これにより、安定した高感度・高分解能のパターンを形成することができる。
【0024】
キャリアフィルム付き透明導電性フィルムの非晶質から結晶質へと結晶化が完了した際の到達抵抗値(表面抵抗値)の標準偏差は、30Ω/□以下が好ましく、20Ω/□以下がより好ましく、10Ω/□以下がさらに好ましい。これにより、安定した高感度・高分解能のパターンを形成することができる。
【0025】
<透明導電性フィルム>
透明導電性フィルムは、透明樹脂フィルムと、透明導電膜とを有する。透明導電性フィルムは、前記透明導電膜の面側に設けられた第1の硬化樹脂層と、前記透明導電膜とは反対の面側に設けられた第2の硬化樹脂層とを有する透明樹脂フィルムを有することができる。透明導電性フィルムは、第1の硬化樹脂層と透明導電膜との間に、1層以上の光学調整層をさらに含むことも可能である。
【0026】
透明導電性フィルムの厚みは、20〜150μmの範囲内であることが好ましく、25〜100μmの範囲内であることがより好ましく、30〜80μmの範囲内であることが更に好ましい。透明導電性フィルムの厚みが上記範囲の下限未満であると、機械的強度が不足し、フィルム基材をロール状にして硬化樹脂層や透明導電膜を連続的に形成する操作が困難になる場合がある。一方、厚みが上記範囲の上限を超えると、透明導電性フィルム等の耐擦傷性やタッチパネル用としての打点特性の向上が図れない場合がある。
【0027】
(透明樹脂フィルム)
透明樹脂フィルムとしては、可視光領域において透明であるものであれば特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチックフィルムが用いられる。例えば、その材料として、ポリエステル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。視認性を良好にする点から、ポリエステル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂がより好ましいが、高透明性、低吸水性、水分遮断性、熱安定性、等方性等の観点から、非晶性樹脂であるシクロオレフィン系樹脂又はポリカーボネート系樹脂が特に好ましい。
【0028】
ポリエステル系樹脂は、機械的特性や耐熱性の点で、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂等であることが好ましい。
【0029】
シクロオレフィン系樹脂としては、環状オレフィン(シクロオレフィン)からなるモノマーのユニットを有する樹脂であれば特に限定されるものではない。透明樹脂フィルムに用いられるシクロオレフィン系樹脂としては、シクロオレフィンポリマー(COP)又はシクロオレフィンコポリマー(COC)のいずれであってもよい。シクロオレフィンコポリマーとは、環状オレフィンとエチレン等のオレフィンとの共重合体である非結晶性の環状オレフィン系樹脂のことをいう。
【0030】
上記環状オレフィンとしては、多環式の環状オレフィンと単環式の環状オレフィンとが存在している。かかる多環式の環状オレフィンとしては、ノルボルネン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブチルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、メチルテトラシクロドデセン、ジメチルシクロテトラドデセン、トリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエンなどが挙げられる。また、単環式の環状オレフィンとしては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロドデカトリエンなどが挙げられる。
【0031】
シクロオレフィン系樹脂は、市販品としても入手可能であり、例えば、日本ゼオン社製「ZEONOR」、JSR社製「ARTON」、ポリプラスチック社製「TOPAS」、三井化学社製「APEL」などが挙げられる。
【0032】
ポリカーボネート系樹脂は、特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリカーボネート、芳香族ポリカーボネート、脂肪族−芳香族ポリカーボネートなどが挙げられる。具体的には、例えば、ビスフェノール類を用いたポリカーボネート(PC)としてビスフェノールAポリカーボネート、分岐ビスフェノールAポリカーボネート、発泡ポリカーボネート、コポリカーボネート、ブロックコポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリホスホネートカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39)などが挙げられる。ポリカーボネート系樹脂には、ビスフェノールAポリカーボネートブレンド、ポリエステルブレンド、ABSブレンド、ポリオレフィンブレンド、スチレン―無水マレイン酸共重合体ブレンドのような他成分とブレンドしたものも含まれる。ポリカーボネート樹脂の市販品としては、恵和社製「オプコン」、帝人社製「パンライト」、三菱ガス化学製「ユーピロン(紫外線吸収剤含有ポリカーボネート)」等が挙げられる。
【0033】
透明樹脂フィルムには、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施して、透明樹脂フィルム上に形成される硬化樹脂層や透明導電膜等との密着性を向上させるようにしてもよい。また、硬化樹脂層や透明導電膜を形成する前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより、透明樹脂フィルム表面を除塵、清浄化してもよい。
【0034】
透明樹脂フィルムの厚みは、透明性が高く外観品位に優れる透明導電性フィルム等を製造させるとともに、ロールtoロール製法での搬送容易性を向上させる観点から、20〜150μmの範囲内であることが好ましく、25〜100μmの範囲内であることがより好ましく、30〜80μmの範囲内であることが更に好ましい。透明樹脂フィルムの厚みが上記範囲の下限未満であると、機械的強度が不足し、フィルム基材をロール状にして硬化樹脂層や透明導電膜を連続的に形成する操作が困難になる場合がある。一方、厚みが上記範囲の上限を超えると、透明導電性フィルム等の耐擦傷性やタッチパネル用としての打点特性の向上が図れない場合がある。
【0035】
透明樹脂フィルムの含水量は、
10cm×10cm当たり5.0×10
−3g以下であることが好ましく、
10cm×10cm当たり3.0×10
−3g以下であることがより好ましく、
10cm×10cm当たり1.0×10
−3g以下であることが更に好ましい。これにより、透明樹脂フィルムの含水量をさらに制御することができ、透明導電膜の結晶化が十分行われることになるため、より確実に透明導電性フィルムの抵抗値異常を防止するとともに、透明導電膜と基材との密着性をより高めて膜剥がれを防止することが可能となる。
【0036】
透明樹脂フィルムの水分率は、0.50重量%以下であることが好ましく、0.40重量%以下であることがより好ましく、0.30重量%以下であることが更に好ましい。
【0037】
(硬化樹脂層)
硬化樹脂層は、透明樹脂フィルムの透明導電膜の面側に設けられた第1の硬化樹脂層と、透明導電膜とは他方の面側に設けられた第2の硬化樹脂層とを含む。透明樹脂フィルムが脆く傷つきやすい場合、透明導電膜の形成や透明導電膜のパターン化または電子機器への搭載などの各工程で傷が入りやすいので、上記のように、透明樹脂フィルムの両面に第1の硬化樹脂層と第2の硬化樹脂層とを形成することが好ましい。
【0038】
硬化樹脂層は、硬化型樹脂等を硬化させることにより得られる層である。用いる樹脂としては、硬化樹脂層形成後の皮膜として十分な強度を持ち、透明性のあるものを特に制限なく使用できるが、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、二液混合型樹脂などがあげられる。これらのなかでも紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よく硬化樹脂層を形成することができる紫外線硬化型樹脂が好適である。
【0039】
紫外線硬化型樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系等の各種のものがあげられ、紫外線硬化型のモノマー、オリゴマー、ポリマー等が含まれる。好ましく用いられる紫外線硬化型樹脂は、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂やウレタン系樹脂であり、より好ましくはアクリル系樹脂やウレタン系樹脂である。
【0040】
硬化樹脂層は粒子を含んでいてもよい。硬化樹脂層に粒子を配合することにより、硬化樹脂層の表面に隆起を形成することができ、透明導電性フィルムに耐ブロッキング性を好適に付与することができる。
【0041】
上記粒子としては、各種金属酸化物、ガラス、プラスチックなどの透明性を有するものを特に制限なく使用することができる。例えばシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム等の無機系粒子、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル系樹脂、アクリル−スチレン共重合体のようなアクリル−スチレン系樹脂、ベンゾグアナミン、メラミン、ポリカーボネート等の各種ポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系粒子やシリコーン系粒子などがあげられる。前記粒子は、1種または2種以上を適宜に選択して用いることができるが、有機系粒子が好ましい。有機系粒子としては、屈折率の観点から、アクリル系樹脂及びアクリル−スチレン系樹脂が好ましい。
【0042】
粒子の直径は、硬化樹脂層の隆起の突出度や隆起以外の平坦領域の厚みとの関係などを考慮して適宜設定することができ、特に限定されない。なお、透明導電性フィルムに耐ブロッキング性を十分に付与し、かつヘイズの上昇を十分に抑制するという観点から、粒子の直径は0.1〜5μmが好ましく、0.5〜4μmがより好ましい。なお、本明細書において、「直径」とは、粒子分布の極大値を示す粒径をいい、フロー式粒子像分析装置(Sysmex社製、製品名「FPTA−3000S」)を用いて、所定条件下(Sheath液:酢酸エチル、測定モード:HPF測定、測定方式:トータルカウント)で測定することによって求められる。測定試料は、粒子を酢酸エチルで1.0重量%に希釈し、超音波洗浄機を用いて均一に分散させたものを用いる。
【0043】
粒子の含有量は、樹脂組成物の固形分100重量部に対して0.05〜1.0重量部であることが好ましく、0.1〜0.5重量部であることがより好ましく、0.1〜0.2重量部であることがさらに好ましい。硬化樹脂層中の粒子の含有量が小さいと、硬化樹脂層の表面に耐ブロッキング性や易滑性を付与するのに十分な隆起が形成され難くなる傾向がある。一方、粒子の含有量が大きすぎると、粒子による光散乱に起因して透明導電性フィルムのヘイズが高くなり、視認性が低下する傾向がある。また、粒子の含有量が大きすぎると、硬化樹脂層の形成時(溶液の塗布時)に、スジが発生し、視認性が損なわれたり、透明導電膜の電気特性が不均一となったりする場合がある。
【0044】
硬化樹脂層は、各硬化型樹脂と必要に応じて加える粒子、架橋剤、開始剤、増感剤などを含む樹脂組成物を透明樹脂フィルム上に塗布し、樹脂組成物が溶剤を含む場合には、溶剤の乾燥を行い、熱、活性エネルギー線またはその両方のいずれかの適用により硬化させることにより得られる。熱は空気循環式オーブンやIRヒーターなど公知の手段を用いることができるがこれらの方法に限定されない。活性エネルギー線の例としては紫外線、電子線、ガンマ線などがあるが特に限定されない。
【0045】
硬化樹脂層は、上記の材料を用いて、ウェットコーティング法、グラビアコート法やバーコート法などの塗工法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などにより形成できる。例えば、透明導電膜として酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)を形成する場合、下地層である硬化樹脂層の表面が平滑であると、透明導電膜の結晶化時間を短縮することもできる。かかる観点から、硬化樹脂層はウェットコーティング法により製膜されることが好ましい。
【0046】
硬化樹脂層の厚みは、好ましくは0.5μm〜5μmであり、より好ましくは0.7μm〜3μmであり、最も好ましくは0.8μm〜2μmである。硬化樹脂層の厚みが前記範囲にあると、傷付防止や硬化樹脂層の硬化収縮におけるフィルムシワを防止でき、タッチパネル等の視認性が悪化することを防ぐことができる。
【0047】
(光学調整層)
第1の硬化樹脂層と透明導電膜との間に、1層以上の光学調整層をさらに含むことができる。なお、第1の硬化樹脂層を形成していない場合には、透明樹脂フィルムと透明導電膜との間に、1層以上の光学調整層を含むことができる。光学調整層は、透明導電性フィルムの透過率の上昇や、透明導電膜がパターン化される場合には、パターンが残るパターン部とパターンが残らない開口部の間で透過率差や反射率差を低減でき、視認性に優れた透明導電性フィルムを得るために用いられる。
【0048】
光学調整層は、バインダー樹脂と微粒子とを含むことが好ましい。光学調整層に含まれるバインダー樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂、シロキサン系ポリマー、有機シラン縮合物などが挙げられ、アクリル系樹脂を含む紫外線硬化型樹脂が好ましい。
【0049】
光学調整層の屈折率は、1.6〜1.8であることが好ましく、1.61〜1.78であることがより好ましく、1.62〜1.75であることが更に好ましい。これにより、透過率差や反射率差を低減でき、視認性に優れた透明導電性フィルムを得ることができる。
【0050】
光学調整層は、平均粒径が1nm〜500nmの微粒子を有していてもよい。光学調整層中の微粒子の含有量は0.1重量%〜90重量%であることが好ましい。光学調整層に用いられる微粒子の平均粒径は、上述のように1nm〜500nmの範囲であることが好ましく、5nm〜300nmであることがより好ましい。また、光学調整層中の微粒子の含有量は10重量%〜80重量%であることがより好ましく、20重量%〜70重量%であることがさらに好ましい。光学調整層中に微粒子を含有することによって、光学調整層自体の屈折率の調整を容易に行うことができる。
【0051】
微粒子を形成する無機酸化物としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、中空ナノシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ等の微粒子があげられる。これらの中でも、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化ニオブの微粒子が好ましく、酸化ジルコニウムがより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
光学調整層は、その他の無機物を含有することが可能である。無機物としては、NaF(1.3)、Na
3AlF
6(1.35)、LiF(1.36)、MgF
2(1.38)、CaF
2(1.4)、BaF
2(1.3)、BaF
2(1.3)、LaF
3(1.55)、CeF(1.63)など(括弧内の数値は屈折率を示す)が挙げられる。
【0053】
光学調整層は、上記の材料を用いて、ウェットコーティング法、グラビアコート法やバーコート法などの塗工法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などにより形成できる。例えば、透明導電膜として酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)を形成する場合、下地層である光学調整層の表面が平滑であると、透明導電層の結晶化時間を短縮することもできる。かかる観点から、光学調整層はウェットコーティング法により製膜されることが好ましい。
【0054】
光学調整層の厚みは、40nm〜150nmであることが好ましく、50nm〜130nmであることがより好ましく、70nm〜120nmであることがさらに好ましい。光学調整層の厚みが過度に小さいと連続被膜となりにくい。また、光学調整層の厚みが過度に大きいと、透明導電性フィルムの透明性が低下したり、クラックが生じ易くなったりする傾向がある。
【0055】
(透明導電膜)
透明導電膜は、透明樹脂フィルム上に設けることもできるが、透明樹脂フィルムの一方の面側に設けられた第1の硬化樹脂層上又は光学調整層上に設けられることが好ましい。透明導電膜の構成材料は、無機物を含む限り特に限定されず、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物が好適に用いられる。当該金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよい。例えば、インジウム・スズ複合酸化物(ITO)、アンチモンを含有する酸化スズ(ATO)などが好ましく用いられる。
【0056】
透明導電膜の厚みは、特に制限されないが、その表面抵抗を1×10
3Ω/□以下の良好な導電性を有する連続被膜とするには、厚みを10nm以上とするのが好ましい。膜厚が、厚くなりすぎると透明性の低下などをきたすため、15〜35nmであることが好ましく、より好ましくは20〜30nmの範囲内である。透明導電膜の厚みが、10nm未満であると膜表面の電気抵抗が高くなり、かつ連続被膜になり難くなる。また、透明導電膜の厚みが、35nmを超えると透明性の低下などをきたす場合がある。
【0057】
透明導電膜の形成方法は、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセスを例示できる。また、必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。
【0058】
透明導電膜は、必要に応じて加熱アニール処理(例えば、大気雰囲気下、80〜150℃で10〜90分間程度)を施して結晶化することができる。透明導電膜を結晶化することで、透明導電膜が低抵抗化されることに加えて、透明性及び耐久性が向上する。非晶質の透明導電膜を結晶質に転化させる手段は、特に限定されないが、空気循環式オーブンやIRヒーターなどが用いられる。
【0059】
「結晶質」の定義については、透明樹脂フィルム上に透明導電膜が形成された透明導電性フィルムを、20℃、濃度5重量%の塩酸に15分間浸漬した後、水洗・乾燥し、15mm間の端子間抵抗をテスタにて測定を行い、端子間抵抗が10kΩを超えない場合、ITO膜の結晶質への転化が完了したものとする。なお、表面抵抗値の測定は、JIS K7194に準じて、4端子法により測定できる。
【0060】
また、透明導電膜は、エッチング等によりパターン化してもよい。透明導電膜のパターン化に関しては、従来公知のフォトリソグラフィの技術を用いて行うことができる。エッチング液としては、酸が好適に用いられる。酸としては、例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、およびこれらの混合物、ならびにそれらの水溶液があげられる。例えば、静電容量方式のタッチパネルやマトリックス式の抵抗膜方式のタッチパネルに用いられる透明導電性フィルムにおいては、透明導電膜がストライプ状にパターン化されることが好ましい。なお、エッチングにより透明導電膜をパターン化する場合、先に透明導電膜の結晶化を行うと、エッチングによるパターン化が困難となる場合がある。そのため、透明導電膜のアニール処理は、透明導電膜をパターン化した後に行うことが好ましい。
【0061】
<キャリアフィルム>
キャリアフィルムは、透明導電性フィルムの前記透明樹脂フィルムが形成された面側に配置された粘着剤層と保護フィルムとを含み、透明導電性フィルムとキャリアフィルムとを貼りあわせて、キャリアフィルム付き透明導電性フィルムを形成する。キャリアフィルムをキャリアフィルム付き透明導電性フィルムから剥離する際は、粘着剤層は保護フィルムとともに剥離されてもよいし、保護フィルムのみが剥離されてもよい。
【0062】
(保護フィルム)
保護フィルムは、波長板や偏光板などの他のフィルムと積層される際に剥がされて廃棄されるが、ロールによる巻き取りなどの取り扱い性、含水量等を考慮して、保護フィルムを形成する材料としては、例えば前述した透明樹脂フィルムの材料と同様のものが挙げられる。視認性を良好にする点から、ポリエステル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂がより好ましいが、高透明性、低吸水性、水分遮断性、熱安定性、等方性等の観点から、非晶性樹脂であるシクロオレフィン系樹脂又はポリカーボネート系樹脂が特に好ましい。ポリエステル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、及びポリカーボネート系樹脂の具体例は、前述の透明樹脂フィルムで記載した通りであるが、その中から水分率を考慮して選択される。これにより、含水率の低い保護フィルムを用いることができ、保護フィルムの含水量をさらに制御することができ、透明導電膜の結晶化が十分行われることになるため、より確実に透明導電性フィルムの抵抗値異常を防止するとともに、透明導電膜と基材との密着性をより高めて膜剥がれを防止することが可能となる。
【0063】
保護フィルムは、透明樹脂フィルムと同様に、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施して、保護フィルム上の粘着剤層等との密着性を向上させるようにしてもよい。また、粘着剤層を形成する前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより、保護フィルム表面を除塵、清浄化してもよい。
【0064】
保護フィルムの含水量は、
10cm×10cm当たり1.0×10
−3g以下であることが好ましく、
10cm×10cm当たり0.9×10
−3g以下であることがより好ましく、
10cm×10cm当たり0.5×10
−3g以下であることが更に好ましい。なお、ここでの水分量は実測値につき環境次第で変動するため、スパッタ製膜や結晶化工程に供する時点で前述の範囲を満たすことが好ましい。これにより、透明導電性フィルムの抵抗値異常を防止するとともに、透明導電膜と基材との密着性を高めて膜剥がれを防止することができる。また、これにより、水分除去のため、前処理として加熱工程に通す等の成膜前の脱ガス処理が不要となるため、生産効率が向上する。
【0065】
保護フィルムの水分率(含水率)は、0.50重量%以下であることが好ましく、0.40重量%以下であることがより好ましく、0.30重量%以下であることが更に好ましい。これにより、含水率の低い保護フィルムを用いることができ、保護フィルムの含水量をさらに制御することができ、透明導電膜の結晶化が十分行われることになるため、より確実に透明導電性フィルムの抵抗値異常を防止するとともに、透明導電膜と基材との密着性をより高めて膜剥がれを防止することが可能となる。
【0066】
保護フィルムの厚みは、1〜150μmが好ましく、2〜120μmがより好ましく、5〜100μmが更に好ましい。保護フィルムの厚みが薄いほど、保護フィルムの含水量をさらに抑制することができ、透明導電膜の結晶化が十分行われることになるため、より確実に透明導電性フィルムの抵抗値異常を防止するとともに、透明導電膜と基材との密着性をより高めて膜剥がれを防止することが可能となる。前記範囲とすることで、ロールtoロール製法での搬送容易性を高めることができる。また、ロールtoロール製法において透明導電性フィルム積層体の破断を防止する観点から、保護フィルムの厚みは透明樹脂フィルムの厚み以上であることが好ましい。
【0067】
(導電層)
帯電防止の観点から、前記保護フィルムの前記粘着剤層が形成された面と反対の面側に、更に導電層を備えることが好ましい。導電層は、好ましくは導電性ポリマーを含む導電性組成物を塗工することにより形成させることができる。
【0068】
上記導電性組成物に含まれる導電性ポリマーとしては、例えば、ポリアセチレン系ポリマー、ポリパラフェニレン系ポリマー、ポリアニリン系ポリマー、ポリチオフェン系ポリマー、ポリパラフェニレンビニレン系ポリマー、ポリピロール系ポリマー、ポリフェニレン系ポリマー、アクリル系ポリマーで変性されたポリエステル系ポリマー等が挙げられる。好ましくは、導電性ポリマーは、ポリアセチレン系ポリマー、ポリパラフェニレン系ポリマー、ポリアニリン系ポリマー、ポリチオフェン系ポリマー、ポリパラフェニレンビニレン系ポリマーおよびポリピロール系ポリマーからなる群より選ばれた1種以上のポリマーを含む。
【0069】
より好ましくは、上記導電性ポリマーとしてポリチオフェン系ポリマーが用いられる。ポリチオフェン系ポリマーを用いれば、透明性および化学的安定性に優れる導電層を形成することができる。ポリチオフェン系ポリマーの具体例としては、ポリチオフェン;ポリ(3−ヘキシルチオフェン)等のポリ(3−C
1−8アルキル−チオフェン);ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ[3,4−(1,2−シクロヘキシレン)ジオキシチオフェン]等のポリ(3,4−(シクロ)アルキレンジオキシチオフェン);ポリチエニレンビニレン等が挙げられる。
【0070】
上記導電層層は、任意の適切な方法により、形成され得る。導電性組成物は、例えば、上記導電性ポリマーと、任意の適切な溶媒(例えば、水)とを含み、該溶媒中に該導電性ポリマーが分散した分散液である。該分散液中の導電性ポリマーの分散濃度は、好ましくは0.01重量%〜50重量%であり、より好ましくは0.01重量%〜30重量%である。
【0071】
上記導電性組成物の塗布方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、スロットオリフィスコート法、カーテンコート法、ファウンテンコート法、コンマコート法が挙げられる。乾燥温度としては、代表的には50℃以上、好ましくは90℃以上、さらに好ましくは110℃以上である。乾燥温度は、好ましくは200℃以下、さらに好ましくは180℃以下である。乾燥時間は、好ましくは1分〜1時間、より好ましくは1分〜30分、さらに好ましくは1分〜10分である。
【0072】
上記導電層の厚みは、好ましくは1nm〜500nmであり、より好ましくは1nm〜400nmであり、さらに好ましくは1nm〜300nmである。このような範囲であれば、良好に電気的特性を制御し得る導電層が形成される。
【0073】
上記導電性組成物は、必要に応じて任意の適切な添加剤をさらに含み得る。添加剤の具体例としては、分散安定剤、界面活性剤、消泡剤等が挙げられる。使用される添加剤の種類および量は、目的に応じて適宜設定され得る。
【0074】
(粘着剤層)
粘着剤層としては、透明性を有するものであれば特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性および接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れるという点からは、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0075】
粘着剤層の形成方法は特に制限されず、剥離ライナーに粘着剤組成物を塗布し、乾燥後、基材フィルムに転写する方法(転写法)、保護フィルムに、直接、粘着剤組成物を塗布、乾燥する方法(直写法)や共押出しによる方法等があげられる。なお粘着剤には、必要に応じて粘着付与剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等を適宜に使用することもできる。
【0076】
粘着剤層の好ましい厚みは5μm〜100μmであり、より好ましくは10μm〜50μmであり、より好ましくは15μmから35μmである。
【0077】
<タッチパネル>
キャリアフィルム付き透明導電性フィルムからキャリアフィルム又は保護フィルムを剥離した透明導電性フィルムは、例えば、静電容量方式、抵抗膜方式などのタッチパネルなどの電子機器の透明電極として好適に適用できる。
【0078】
タッチパネルの形成に際しては、前述した透明導電性フィルムの一方または両方の主面に透明な粘着剤層を介して、ガラスや高分子フィルム等の他の基材等を貼り合わせることができる。例えば、透明導電性フィルムの透明導電膜が形成されていない側の面に透明な粘着剤層を介して透明基体が貼り合わせられた積層体を形成してもよい。透明基体は、1枚の基体フィルムからなっていてもよく、2枚以上の基体フィルムの積層体(例えば透明な粘着剤層を介して積層したもの)であってもよい。また、透明導電性フィルムに貼り合わせる透明基体の外表面にハードコート層を設けることもできる。透明導電性フィルムと基材との貼り合わせに用いられる粘着剤層としては、前述の通り、透明性を有するものであれば特に制限なく使用できる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明に関して実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0080】
<評価>
(1)厚みの測定
厚みは、1μm以上の厚みを有するものに関しては、マイクロゲージ式厚み計(ミツトヨ社製)にて測定を行った。また、1μm未満の厚みは、瞬間マルチ測光システム(大塚電子社製 MCPD2000)で測定した。ITO膜等の厚みのようにナノサイズの厚みは、FB−2000A(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)にて断面観察用サンプルを作製し、断面TEM観察はHF−2000(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて膜厚を測定した。評価した結果を表1に示す。
【0081】
(2)含水量及び水分率(含水率)の測定
保護フィルムを
10cm×10cm□のサンプルに切り出し、加熱気化装置(三菱化学アナリテック,VA−200型)に入れ、150℃で加熱したキャリアガスを滴定セル内(三菱化学アナリテック, CA−200型)に導入し、カールフィッシャー法(気化法)により、加熱中の水分放出量を測定して、含水量及び水分率を測定した。なお、水分率とは1g当たりの水分量であり、含水量と同様に算出することが可能である。透明樹脂フィルムについても、前記と同様の方法で含水量及び水分率を測定した。評価した結果を表1に示す。
【0082】
(3)到達抵抗値の測定
キャリアフィルム付き透明導電性フィルムを熱風循環式オーブンにより120℃で20, 30, 40分間加熱処理を実施した際の到達抵抗値を測定した。表面抵抗は、JIS K7194に準じて、四端子法によって測定した。評価した結果を表1に示す。
【0083】
(4)表面抵抗値の標準偏差
前記到達抵抗値の測定において、120℃で30分加熱処理を実施した際のキャリアフィルム付き透明導電性フィルムの表面抵抗値を、幅方向に15cm間隔で5点測定し、その標準偏差を求めた。評価した結果を表1に示す。
【0084】
(5)結晶化速度
非晶質の透明導電膜が結晶化する結晶化速度は、前記到達抵抗値の推移により評価した。尚、ここでは保護フィルム無しの透明導電性フィルム(参考例1)を結晶化速度の基準値とした。評価した結果を表1に示す。
【0085】
○:結晶化速度が基準値と同じ程度
×:結晶化速度が基準値より遅い
【0086】
(6)密着性
JIS K−5600に準拠して測定を行った。キャリアフィルム付き透明導電性フィルムを熱風循環式オーブンにより130℃で90分間加熱処理を実施した後、サンプルを5cm角に切り出し、透明導電膜(ITO)面を約1mm間隔で縦横11本づつカッターで傷付けて、100マスを作成した。その上にセロハンテープ(セキスイ社製、♯252)を貼り、ヘラで10往復させて圧着させた後、スナップをかけて急速にテープを剥がし、1マスの1/4以上の面積が剥がれた場合をカウントして、透明導電膜の剥れの有無を確認した。なお、ヘラ圧着及び剥がしは方向を変えて2回繰り返し、2回目の圧着はセロハンテープを90°回転させて行った。評価した結果を表1に示す。
【0087】
○:剥がれが無く(5/100以下)、密着性が良好
×:剥がれが有り(5/100より大きい)、密着性が悪い
【0088】
[実施例1]
(硬化樹脂層の形成)
紫外線硬化性樹脂組成物(DIC社製 商品名「UNIDIC(登録商標)RS29−120」、ウレタン系多官能ポリアクリレート)を100重量部と、直径が3μmである架橋アクリル・スチレン系球状粒子(積水樹脂社製 「SSX105」)を0.2重量部とを含む、球状粒子入り硬化性樹脂組成物を、厚み50μmのポリシクロオレフィンフィルム(日本ゼオン製 商品名「ZEONOR(登録商標)、面内の複屈折率0.0001」の一方の面に塗布し、その表面から紫外線を照射して、厚み1μmの第2の硬化樹脂層を形成した。ポリシクロオレフィンフィルムの他方の面に、球状粒子を含まない以外は上記と同様の方法で、厚みが1μmとなる様に第1の硬化樹脂層を形成した。
【0089】
(光学調整層の形成)
両面に硬化樹脂層が形成されたポリシクロオレフィンフィルムの第1の硬化樹脂層面側に光学調整層として屈折率1.62のジルコニア粒子含有紫外線硬化型組成物(JSR社製 商品名「オプスタ―Z7412」を塗布し、塗布層を形成した。次いで、80℃で3分間乾燥したのち、直ちに塗布層が形成された側からオゾンタイプ高圧水銀灯(80W/cm、15cm集光型:積算光量300mj)で塗布層に紫外線を照射して、厚みが0.1μmとなるように光学調整層を形成した。
【0090】
(透明導電膜の形成)
平行平板型の巻取式マグネトロンスパッタ装置に酸化インジウムと酸化スズとを90:10の重量比で含有する焼結体ターゲットを装着し、基材を搬送しながら、真空排気により、水の分圧が5×10
−4Paとなるまで真空排気を行った。その後、アルゴンガスおよび酸素ガスの導入量を調整し、搬送速度7.7m/分、搬送張力40〜120Nで基材を搬送しながら、光学調整層面(第1の硬化樹脂層)に出力12.5kWでDCスパッタリングにより成膜を行い、厚み22nmのITO膜を形成した。得られたITOの表面抵抗を四端子法により測定したところ、300Ω/□であった。
【0091】
(キャリアフィルムの形成)
通常の溶液重合により、ブチルアクリレート/アクリル酸=100/6(重量比)にて重量平均分子量60万のアクリル系ポリマーを得た。このアクリル系ポリマー100重量部に対し、エポキシ系架橋剤(三菱瓦斯化学製 商品名「テトラッドC(登録商標)」)6重量部を加えてアクリル系粘着剤を準備した。保護フィルムとして厚さ50μmのポリシクロオレフィンフィルム(日本ゼオン製 商品名「ZEONOR(登録商標)」)に、前記アクリル系粘着剤を片面に塗工し、150℃で90秒間加熱して、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。次いで、前記粘着剤層の表面に、片面にシリコーン処理を施したPET剥離ライナー(厚さ25μm)のシリコーン処理面を貼り合わせ、50℃で2日間保存して、剥離ライナー付きキャリアフィルムを作製した。尚、使用時には、前記剥離ライナーは除去して、キャリアフィルムを使用した。
【0092】
(キャリアフィルム付き透明導電性フィルムの形成)
透明導電性フィルムの透明導電膜が形成されていない面側に、キャリアフィルムの粘着剤層付き保護フィルムを積層し、キャリアフィルム付き透明導電性フィルムを作製した。
【0093】
[実施例2〜6]
実施例1において、透明樹脂フィルム及び保護フィルムの基材及び厚みを表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でキャリアフィルム付き透明導電性フィルムを作製した。なお、表1に記載された基材について、PETは、ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製、T612E25)、PCは、ポリカーボネート樹脂(帝人製 商品名「パンライト」)を使用した。
【0094】
[比較例1]
実施例1において、保護フィルムとして、ポリシクロオレフィンフィルムを用いる代わりに、ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製、T612E25)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でキャリアフィルム付き透明導電性フィルムを作製した。
【0095】
[比較例2〜3]
実施例1において、保護フィルムの基材及び厚みを表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でキャリアフィルム付き透明導電性フィルムを作製した。なお、表1に記載された基材について、PETは、ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製、T612E25)、PCは、ポリカーボネート樹脂(帝人製 商品名「ピュアエース」)を使用した。
【0096】
[参考例1]
実施例1において、キャリアフィルムを形成せずに、透明導電性フィルムのみを作製した。
【0097】
【表1】
【0098】
(結果及び考察)
実施例1〜6のキャリアフィルム付き透明導電性フィルムでは、120℃で約20分間加熱後に非晶質から結晶質への結晶化が完了し、到達抵抗値(表面抵抗値)のバラつきも小さく、到達抵抗値は低かった。基準(参考例1)に対する結晶化速度も良好な結果が得られた。また、透明導電膜との密着性も高く膜剥がれが発生しなかった。一方、比較例1〜3のキャリアフィルム付き透明導電性フィルムでは、120℃で約40分間加熱後であっても非晶質から結晶質への結晶化が完了していないものもあり、到達抵抗値(表面抵抗値)のバラつきも大きく、到達抵抗値は高かった。基準(参考例1)に対する結晶化速度も遅かった。また、透明導電膜との密着性も低く膜剥がれが発生した。