特許第6552106号(P6552106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6552106糖尿病を処置するためのモダリティの組み合わせ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552106
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】糖尿病を処置するためのモダリティの組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20190722BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20190722BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20190722BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   A61K38/17
   A61K38/28ZNA
   A61P3/10
   A61P43/00 121
【請求項の数】17
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-520517(P2015-520517)
(86)(22)【出願日】2013年6月27日
(65)【公表番号】特表2015-522027(P2015-522027A)
(43)【公表日】2015年8月3日
(86)【国際出願番号】US2013048247
(87)【国際公開番号】WO2014004866
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2016年6月23日
(31)【優先権主張番号】13/534,571
(32)【優先日】2012年6月27日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516117456
【氏名又は名称】ディーエムノーモア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】オルバン、ティハメル
【審査官】 伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/015903(WO,A1)
【文献】 国際公開第02/053106(WO,A1)
【文献】 特表2005−522987(JP,A)
【文献】 丹原 圭一,虚血性心筋症に対する血管新生療法,医学のあゆみ 第206巻・第10号,医歯薬出版株式会社 ISHIYAKU PUBLISHERS,INC. 藤田 勝治,第206巻
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
A61K 39/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)融合タンパク質と、
プレプロインスリン、GAD65、ICA512/IA−2、HSP60、カルボキシペプチダーゼH、ペリフェリン、およびガングリオシドからなる群から選択される自己抗原またはその免疫活性フラグメントもしくは変異体と、
薬学的に許容される担体と
を備え、
前記自己抗原は、タンパク質またはポリペプチドであり、
前記自己抗原は、プレプロインスリンまたはその免疫活性フラグメントもしくは変異体であり、
I型糖尿病を処置するための、
医薬組成物。
【請求項2】
前記CTLA4融合タンパク質は、B細胞上および抗原提示細胞(APC)上の少なくとも一方で発現されるB7(CD80/86)抗原と結合する、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記CTLA4融合タンパク質がCTLA4の細胞外ドメイン、前記細胞外ドメインの有効フラグメント、または前記細胞外ドメインの免疫活性変異体を含む、
請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記CTLA4融合タンパク質は、アバタセプトである、
請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記プレプロインスリンのフラグメントは、インスリンB鎖またはその免疫活性フラグメントもしくは変異体である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記インスリンB鎖のフラグメントは、配列番号1のアミノ酸33から47を有する、
請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記薬学的に許容される担体は、油性担体である、
請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記油性担体は、IFAまたはモンタナイドISAである、
請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
250mgから2000mgまでの前記CTLA4融合タンパク質と、
0.5mgから10mgまでの前記自己抗原とを含む、
請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
対象に
有効量の前記CTLA4融合タンパク質と、
有効量の前記自己抗原と
を投与する段階を備える、
前記対象のI型糖尿病を処置する方法において使用するための、
請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記対象は、残余β細胞機能を有するI型糖尿病に罹患している、
請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
静脈注入、筋肉注射、または皮下注射によって投与される、
請求項10または11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記融合タンパク質が5mg/kgから20mg/kgまでの範囲の用量で、
かつ前記自己抗原が1.0mg/mlから4.0mg/mlまでの範囲の用量で、
投与される、
請求項10から12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記融合タンパク質が250mgから2000mgまでの範囲の用量で、
かつ前記自己抗原が0.5mgから10mgまでの範囲の用量で、
投与される、
請求項10から12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記方法は、処置の有効性の指標として経時的に前記対象から採取された血液サンプル中のCペプチド濃度を測定する段階を、
さらに備える、
請求項10から14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記対象のI型糖尿病を処置する段階は、
I型糖尿病の発症を防ぐ段階を有する、
請求項10から15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記対象のI型糖尿病を処置する段階は、
少なくとも6ヶ月間、I型糖尿病の発症を遅延させる段階を有する、
請求項10から16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、自己免疫疾患の分野、より具体的には、CTLA4融合タンパク質とI型糖尿病自己抗原との組み合わせを用いるI型糖尿病の処置、予防、または進行の遅延に関する。
【背景技術】
【0002】
I型糖尿病(T1DM)のもっとも一般的な病型は、インスリン分泌β細胞が自己免疫反応によって破壊される免疫介在性疾患である。インスリン分泌β細胞を特異的に標的とする免疫細胞を含んでいる膵島の進行性炎症性浸潤を伴う疾患の発症に関連したいくつかの遺伝的および環境的因子が存在する。この病状は、漠然とした期間(数ヶ月から数年)にわたって発症する。インスリンの発見がT1DMの処置を可能にしたが、現在のところ治癒されたことはない。I型糖尿病のもっとも一般的な病型は、インスリンの産生性β細胞が破壊される免疫介在性である。それでも、診断時に、大部分のペイシェントは、まだかなりの量のインスリンを産生する。残余β細胞機能の温存は、非常に望ましい。なぜなら、それによって疾患の短期および長期の合併症が減らし得るからである。
【0003】
免疫調節薬または抗原に基づく処置によってI型糖尿病における自己免疫を抑制するべく、いくつかの臨床試験の試みが行われている。最も注目すべきは、刺激Cペプチド分泌が見られたことから明らかなように、抗CD3、抗CD20、およびGAD−65抗原ワクチンの試験が、β細胞機能の温存においてかなりの有効性を示したことである。T細胞は、I型糖尿病に関連する自己免疫において中心的な役割を担う。
【0004】
インスリンB鎖などの自己抗原を含む不完全フロイントアジュバント(IFA)の再導入も、I型糖尿病を処置または進行の遅延させるために考えられた。このことは、糖尿病の動物モデル(NODマウス)(Muir et al. (1995) J Clin Invest 95:628-634; Orban et al. (1999) Diabetes 48 Supp.1:A216-A217; Ramiya et al. (1996) J Autoimmun 9:349-356)、米国特許公開第2006/0183670号、および米国特許公開第2009/0142308号、ならびに、ヒトでは、Orban et al., J Autoimmun. (2010 Jun);34(4):408-15で、研究された。
【0005】
しかし、自己免疫β細胞破壊を停止または遅延させることで、I型糖尿病の発症を防止すること、あるいは、可能な限り長期にわたって疾患の発症を少なくとも抑えることが可能である、I型糖尿病のさらなる新しい治療法が求められている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の特定の実施形態によれば、対象の真正糖尿病を処置する方法に関し、該方法は、CTLA4の細胞外ドメイン、該細胞外ドメインの有効フラグメントまたは該細胞外ドメインの免疫活性変異体などのT細胞共刺激アンタゴニスト、および、免疫グロブリン分子の一部分を有する、有効量の融合タンパク質組成物と、プレプロインスリン、GAD−65、ICA512/IA−2、HSP60、カルボキシペプチダーゼH、ペリフェリン、およびガングリオシドなどの有効量のI型糖尿病自己抗原またはその免疫活性フラグメントもしくは変異体とを、対象に投与すること、を備える。いくつかの実施形態では、プレプロインスリンフラグメントは、インスリンB鎖、または配列番号1(すなわち、B鎖29〜23)のアミノ酸33〜47などのその免疫活性フラグメントもしくは変異体である。
【0007】
いくつかの実施形態では、対象は、残余β細胞機能があるI型糖尿病に罹患している。いくつかの実施形態では、T細胞共刺激アンタゴニストは、B細胞上でおよび/または抗原提示細胞(APC)上で発現されるB7(CD80/86)抗原と結合する。さらに他の実施形態では、B7抗原は、B細胞上およびAPC上で発現される。
【0008】
いくつかの実施形態では、上記方法は糖尿病発症の防止に有効である。他の実施形態では、方法は、少なくとも、例えば、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年、1.5年、2年、3年、またはそれ以上によって、糖尿病発症の遅延に有効である。いくつかの実施形態では、方法は、さらに、処置の有効性の指標として、経時的に対象から採取された血液サンプル中のCペプチド濃度を測定することを、さらに備えてもよい。
【0009】
本発明のさらに他の実施形態では、医薬組成物が提供される。この医薬組成物は、(a)細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)融合タンパク質と、(b)プレプロインスリン、GAD−65、ICA512/IA−2、HSP60、カルボキシペプチダーゼH、ペリフェリン、およびガングリオシドからなる群から選択される自己抗原またはその免疫活性フラグメントもしくは変異体と、(c)薬学的に許容される担体と、を備える。
【0010】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、IFAまたはモンタナイドISAなどの油性担体に含まれて提供される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約250mgから約2000mgまでの融合タンパク質と、約0.5mgから約10mgまでのI型糖尿病自己抗原とを含む。
【0011】
これから明らかになるように、本実施形態のこれらの特徴および本実施形態の他の特徴が、本明細書中に述べられ、かつ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
例示を目的として、以下の図面を参照しながら、様々な実施形態の詳細な説明を本明細書中、以下に提供する。当業者は、後述する図面が説明目的だけのためであると理解する。図面は、いかなる形であれ、出願人の教示の範囲を限定することを意図していない。
【0013】
図1】各処置群について経時的な刺激Cペプチド2−h AUC平均の母平均である。推定値は、年齢、性別、Cペプチドのベースライン値と処置割り当てのために調整されているANCOVAモデルからある。Y軸は、log(y+1)スケールで表す。誤差棒は、95%CIを示す。AUC=曲線下面積。
【0014】
図2】各処置群について経時的な刺激Cペプチド2−h AUC平均の母平均である。推定値は、年齢、性別、Cペプチドのベースライン値、および処置割り当てを調整し、かつlog(y+1)スケール上の直線として時間に対する一定の効果を含む混合効果モデルの分析から得られる。AUC=曲線下面積。
【0015】
図3】各処置群について、経時的に0.2nmol/Lまたはそれ以上に保たれている2−hピークCペプチドを有する参加者の比率である。
【0016】
図4A】各処置群について、HbA1cの経時的使用の母平均である。
図4B】各処置群について、インスリンの経時的使用の母平均である。推定値は、年齢、性別、HbA1cのベースライン値、および処置割り当てを調整するANCOVAモデルから得られる。インスリン使用は、3ヶ月の間隔で、体重kgあたりである。誤差棒は、95%CIを示す。HbA1cは、糖化ヘモグロビンA1cである。
【0017】
図5】所定のベースライン因子のカテゴリーの範囲内での2年刺激CペプチドAUC平均に対する処置効果の比率(アプラセボ対アバタセプト)である。推定値は、年齢、性別、Cペプチドのベースライン値、指示分類係数、処置割り当て、処置相互作用項を調整するCペプチドのANCOVAモデル化対数から得られる。処置効果の均一性検定は、DR3対立遺伝子の状態(p=0.025)および人種(p=0.0003)で有意であった。AUC=曲線下面積。HbA1c=糖化ヘモグロビンA1c。
【0018】
当然のことながら、図面は単なる例示に過ぎず、図面に対する全ての参照は例示のみを目的としたものであり、任意の方法により本明細書中で後述する実施形態の範囲を限定することを意図したものではない。
【発明を実施するための形態】
【0019】
CTLA4分子とIFAのインスリンB鎖との組み合わせが対象のI型糖尿病の処置、予防、または進行の遅延に用いられ得るということが知られている。
【0020】
残余β細胞機能の温存(ピークCペプチド≧0.2nmol/Lにより判断)は、非常に望ましい。なぜなら、それによってその疾患の短期および長期の合併症が減少し得るからである。I型糖尿病における自己免疫を免疫調節薬または抗原に基づく処置によって抑制するべく、いくつかの臨床試験の試みが行われている。最も注目すべきは、抗CD3、抗CD20、およびGAD−65抗原ワクチンの試験は、刺激Cペプチド分泌が見られたことから明らかなように、β細胞機能の温存においてかなりの有効性を示した。Cペプチドは、インスリンとともに体内で生成されるタンパク質である。健康な膵臓で、プレプロインスリンは、A鎖、Cペプチド、B鎖、およびシグナル配列を伴って分泌される。シグナル配列が切り離されて、プロインスリンが残る。続いて、Cペプチドが切断されてA鎖およびB鎖が残り、インスリンを形成する。Cペプチドおよびインスリンは、等モル量で存在するので、インスリンの産生および膵臓β細胞の健康状態に関する非常に信頼性の高いマーカーである。
【0021】
T細胞は、I型糖尿病に関連する自己免疫において中心的な役割を担う。完全に活性化されて自己攻撃的になるには、T細胞は少なくとも2つの重要なシグナルを必要とすると考えられている(Marelli-Berg FM, Okkenhaug K, Mirenda V. A Trends Immunol 2007; 28: 267-73)。第1のシグナルは、抗原提示細胞のMHC分子の溝にある抗原とT細胞受容体(TCR)との間の相互作用である。最も重要な第2のシグナルは、抗原提示細胞(APC)上のCD80およびCD86とT細胞上のCD28との間の相互作用である。この共刺激の第2のシグナルは細胞の完全な活性化に必要とされ、そのような活性化がない場合、T細胞は機能的にならない。したがって、共刺激遮断は自己免疫および移植のための治療法として提唱された(Bluestone JA, St Clair EW, Turka LA. Immunity 2006; 24: 233-38)。
【0022】
CD152としても知られている細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)は、免疫系の調節に関係するタンパク質である。天然のCTLA4は、米国特許第5,434,131号、第5,844,095号、および第5,851,795号に説明されている。天然CTLA4タンパク質は、CTLA4遺伝子によってコードされている。CTLA4は細胞表面タンパク質であり、N末端細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、およびC末端細胞質ドメインを有する。細胞外ドメインは、CD80およびCD86などと標的抗原と結合、および/または、T細胞刺激に対する天然のナチュラルブレイクとして機能する。いくつかの実施形態では、CTLA4分子の細胞外ドメインは、+1位のメチオニンで始まり、+124位のアスパラギン酸で終わる。他の実施形態では、細胞外ドメインは−1位のアラニンで始まり、+124位のアスパラギン酸で終わる。
【0023】
CTLA4分子は、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)細胞外ドメインを有する分子である。いくつかの実施形態では、CTLA4の細胞外ドメインは、B細胞上および抗原提示細胞(APC)上で発現するB7抗原などの少なくとも1つのB7(CD80/86)抗原を認識して結合するCTLA4タンパク質の一部分を有する。B細胞およびAPCが活性化されてもよい。細胞外ドメインは、B7抗原を結合するCTLA4のフラグメントまたは誘導体を含んでもよい。CTLA4細胞外ドメインは、CD80および/またはCD86を認識して結合することもできる。細胞外ドメインは、CD80および/またはCD86を結合するCTLA4のフラグメントまたは誘導体を含んでもよい。
【0024】
CTLA4分子は融合タンパク質であってもよい。ここで、融合タンパク質は、当該技術分野で周知の方法を用いて連結し合った1または複数のアミノ酸配列と、定義される。そのようにして連結したアミノ酸配列は、1つの融合タンパク質を形成する。いくつかの実施形態では、CTLA4分子は、免疫グロブリンの少なくとも一部分、例えば免疫グロブリンのFc部分を含む。いくつかの実施形態では、CTLA4分子は、単離および精製されたCTLA4分子である。
【0025】
いくつかの実施形態では、CTLA4分子は、免疫グロブリンの少なくとも一部分、例えば免疫グロブリンのFc部分を含むタンパク質である。いくつかの実施形態では、CTLA4分子は、単離および精製されたCTLA4分子である。
【0026】
いくつかの好ましい実施形態では、CTLA4分子は、アバタセプトである。アバタセプトは、ヒト免疫グロブリンG1(IgG1)の修飾Fc(ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメイン)部分に結合されるヒトCTLA−4の細胞外ドメインからなる可溶性融合タンパク質である。アバタセプトは、哺乳動物細胞発現系で組換えDNA技術によって生成される。アバタセプトのみかけの分子量は、92キロダルトンである。
【0027】
アバタセプトは、成人性関節リウマチおよび若年性特発性関節炎で用いるために開発され、中等度から重度の活動性関節リウマチの成人ペイシェントにおいて、徴候および症状の軽減、著明な臨床的反応の誘導、構造損傷進行の阻害、および身体機能の改善に適応される。
【0028】
アバタセプトはBristol-Myers Squibbによって開発されて、例えば、米国特許第5,851,795号、米国特許第7,455,835号、米国特許出願公開第20011/311529号に開示されている。アバタセプト(商品名ORENCIA)は、単剤療法として用いてもよく、または、腫瘍壊死因子(TNF)アンタゴニスト以外の病態修飾性抗リウマチ薬(DMARD)と併用してもよい。アバタセプトは、中等度から重度の活動性多関節型若年性特発性関節炎を患う6歳およびそれ以上の歳の小児科ペイシェントで徴候および症状の軽減にも適応されている。アバタセプトは、単剤療法として使用してもよく、または、メトトレキサート(MTX)と併用してもよい。アバタセプトは、選択的な共刺激調節因子であり、T細胞の共刺激を阻害するので、TNFアンタゴニストと併用して投与される。
【0029】
アバタセプトは、CD80およびCD86と選択的に結合することによって、CD28との間の相互作用を阻害し、T細胞活性化を妨げる。それはナイーブT細胞活性化を抑制するので、幅広い免疫抑制の代わりに、特異的抗原に対するT細胞応答を選択的に阻害する可能性がある。エフェクターメモリーT細胞応答はCD28共刺激に対する依存性が低く、おそらく、共刺激遮断による抑制がより少ない(Lo DJ, Weaver TA, Stempora L, 他、Am J Transplant 2011; 11: 22-33)。
【0030】
動物およびヒトの両方における研究は、共刺激の第2のシグナルが妨害されると自己免疫に対して有益な影響を及ぼすことを示した。アバタセプトによる共刺激遮断は、乾癬(Abrams JR, Lebwohl MG, Guzzo CA, et al. J Clin Invest 1999; 103: 1243-52)および乾癬性関節炎((Mease P, Genovese MC, Gladstein G, et al. Arthritis Rheum 2011; 63: 939-48)において、臨床的有効性を有することが示されており、さらに、関節リウマチの処置に承認されている(Genant HK, Peterfy CG, Westhovens R, et al. Ann Rheum Dis 2008; 67: 1084-89)。このような関節リウマチの措置には、若年性関節リウマチの治療も含まれる(Ruperto N, Lovell DJ, Quartier P, et al. Lancet 2008; 372: 383-91)。その上、共刺激遮断は、同種移植拒絶の制御に有効であった(Vincenti F, Larsen C, Durrbach A. N Engl J Med 2005; 353: 770-81)。さらに、Lenschowと共同研究者(Lenschow DJ, Ho SC, Sattar H他、J Exp Med 1995; 181: 1145-55)は、生後10週齢前に投与された場合に、抗B7−2モノクローナル抗体とCTLA4免疫グロブリン融合タンパク質との両方による共刺激阻害がNODマウスモデルで糖尿病を予防すること、を示した。
【0031】
今や明らかにされていることは、T細胞共刺激アンタゴニスト(例えば、CTLA−4組成物、および、具体的にはアバタセプト)による共刺激調節が自己攻撃性T細胞の生成を妨げ、I型糖尿病であると診断されて間もないペイシェントのCペプチド分泌の温存をもたらす自己免疫β細胞破壊を停止または遅延させることである(Orban et al., Lancet 2011; 378 (9789): 412-9)。
【0032】
ヒトI型糖尿病で重要であると考えられる多くの自己抗原が存在する。いくつかのデータは、インスリンがその疾患の病因に関与している主要抗原であることを示唆している(Muir et al. (1993) Diabetes Metab. Rev 9:279-287)。β細胞特異的腫瘍タンパク質であるインスリンは、単独で用いられる場合に中等度な免疫原性を示し、糖尿病の発症を遅延させる効果があることがヒトでのパイロット試験で示された(Keller et al. (1993) Lancet 341:927-928)。しかし、所望の効果を誘発するには長期にわたって毎日注射しなければならない。インスリンがヒトで用いられる場合、低血糖とその続発症について大きな心配ごとが存在する。
【0033】
血糖低下作用が欠如しているインスリンまたはプレプロインスリンの免疫原性フラグメントまたは変異体は、ヒトでの使用にとって安全な選択肢である。例えば、機能的残余β細胞塊のさらなる減少を予防または遅延させるべく、ヒトにおけるI型糖尿病の臨床発症後に、血糖低下作用なしで、インスリンB鎖(または代謝作用のない免疫原性フラグメントおよび変異体)を免疫調整薬として用いることができる。ヒト対象に自己抗原(例えば、インスリンB鎖)を再導入することで、防御免疫反応を誘因させている自己免疫プロセスを変化させるように作用し得る。Th1/Th2バランスは、防御Th2型細胞応答と調節免疫細胞(Tregs)生成にとって有利になるように変化し得る。
【0034】
インスリン、グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)、他の膵島細胞自己抗原(例えば、ICA512/IA−2タンパク質チロシン脱リン酸酵素、ICA12、ICA69)に対する自己抗体は、新たに診断された糖尿病ペイシェントでしばしば見つかる。したがって、本発明の方法で有用なI型糖尿病自己抗原として、例えば、プレプロインスリンまたはその免疫活性フラグメント(例えば、プレプロインスリンフラグメント、インスリンB鎖、A鎖、Cペプチド、またはその免疫活性フラグメント)と、他の膵島細胞自己抗原(ICA)、例えば、GAD65、膵島チロシンホスファターゼICA512/IA−2、ICA12、ICA69、またはその免疫活性フラグメントとが挙げられる。他のI型糖尿病自己抗原は、HSP60、カルボキシペプチダーゼH、ペリフェリン、ガングリオシド(例えば、GM1−2、GM3)またはその免疫活性フラグメントを含む。本明細書中に説明されるI型糖尿病自己抗原のいずれか、またはその免疫活性フラグメント、類似体、もしくは誘導体は、本発明の方法および組成物に有用である。
【0035】
インスリンmRNAは、プレプロインスリンと呼ばれる110個のアミノ酸からなる単鎖前駆体として翻訳され、小胞体への挿入過程においてそのシグナルペプチドが除去されることで、プロインスリンが生成する。プロインスリンは、3つのドメイン、すなわちアミノ末端B鎖と、カルボキシ末端A鎖とCペプチドとして知られている中央の結合ペプチドと、からなる。小胞体の中で、プロインスリンはCペプチドを切除するいくつかの特異的エンドペプチダーゼにさらされ、それによって、AおよびB鎖からなるインスリンの成熟した形状を生成する。インスリンおよび遊離Cペプチドは、ゴルジ内で、細胞質に蓄積する分泌顆粒内に包み込まれる。プレプロインスリンペプチド配列は、配列番号1に見出される。
【0036】
インスリンA鎖は、配列番号1のアミノ酸90〜110を含む。B鎖は、配列番号1のアミノ酸25〜54を含む。連結配列(配列番号1のアミノ酸55〜89)は、いずれの端部にも一対の塩基性アミノ酸を含む。これらの二塩基配列のプロインスリンのタンパク質分解切断は、インスリン分子と、配列番号1のアミノ酸57〜87を含む遊離Cペプチドとを遊離する。ヒトプレプロインスリンまたはその免疫活性フラグメント、例えばB鎖またはその免疫原性フラグメント、例えば配列番号1のアミノ酸33〜47(B鎖の残基9〜23に対応)、あるいは、該プレプロインスリンのシグナルペプチド配列または他の配列は、本明細書中に説明する方法および組成物において自己抗原として有用である。
【0037】
Gad65は、インスリン依存性糖尿病の原因となる自己免疫反応に関与する一次β細胞抗原である(Christgau et al. (1991) J Biol. Chem. 266(31):21257-64)。I型糖尿病の診断方法として、GAD−65に対する自己抗体の存在が利用されている。GAD−65は、配列番号2の585個のアミノ酸からなるタンパク質である。自己抗体力価の変化およびGAD65ABアイソタイプの変化は、投与の効果を反映するもので、糖尿病ペイシェントまたは糖尿病前症ペイシェントでの自己免疫プロセスの緩解を特徴づけるのに用いられ得る。加えて、自己抗原投与の効果に相関して、刺激サイトカインプロフィール(Th2細胞に有利)に変化があり、このことは、後で、I型糖尿病における自己免疫の退行に関する体液性マーカーとして用いられてもよい。
【0038】
タンパク質チロシン脱リン酸酵素ファミリーの一員であるIA−2/ICA512は、I型糖尿病の別の主要自己抗原である(Lan et al. DNA Cell Biol 13:505-514, 1994)。糖尿病ペイシェントの70%は、臨床疾患発症の何年も前にみられるIA−2に対する自己抗体を有している。IA−2分子(以下の配列番号3)は979アミノ酸長であり、細胞内ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞外ドメインからなる(Rabin et al. (1994) J. Immunol. 152 (6), 3183-3188)。通常、自己抗体は、細胞内ドメイン、例えば配列番号3のアミノ酸600〜979およびそのフラグメントを対象とする(Zhang et al. (1997) Diabetes 46:40-43; Xie et al. (1997) J Immunol 159:3662-3667)。IA−2のアミノ酸配列は、配列番号3に示される。
【0039】
ICA12(Kasimiotis et al. (2000) Diabetes 49 (4): 555-61;Gen bank Accession No. AAD16237;配列番号4)は、糖尿病に関連している複数の膵島細胞自己抗原の1つである。ICA12の配列は、配列番号4として提供される。
【0040】
ICA69は、I型糖尿病に関連するも別の自己抗原である(Pietropaolo et al. J Clin Invest 1993; 92: 359-371)。ICA69のアミノ酸配列は、配列番号5として提供される。
【0041】
Glima38は、38kDaの膵島細胞膜自己抗原であり、前糖尿病ペイシェントおよびI型糖尿病と新たに診断されたペイシェントの一部の血清と特異的に免疫沈降する。Glima38は、両親媒性の膜糖タンパク質であり、特異的に膵島および神経細胞株で発現されるので、GAD−65およびIA2と同じ神経内分泌発現パターンを共有する(Aanstoot et al. J Clin Invest. 1996 June 15; 97 (12): 2772-2783)。
【0042】
HSP60、例えばHSP60の免疫活性フラグメント、例えばp277(Elias et al., Eur J Immunol 1995 25 (10): 2851-7を参照)もまた、本明細書中に説明する方法および組成物における自己抗原として使用できる。HSP60の他の有用なエピトープが、例えば米国特許第6,110,746号に記載されている。
【0043】
カルボキシペプチダーゼHは、例えば前I型糖尿病ペイシェントにおいて、自己抗原として同定されている(Castano et al. (1991) J Clin Endocrinol Metab 73 (6): 1197-201; Alcalde et al. J Autoimmun. 1996 August; 9 (4): 525-8)。したがって、カルボキシペプチダーゼHまたはその免疫反応性フラグメント(例えば、上掲の Castanoに記載されたカルボキシペプチダーゼHの136個のアミノ酸からなるフラグメント)を本明細書中に説明される方法および組成物に用いることができる。
【0044】
ペリフェリンは、nodマウスで同定された58KDaの糖尿病自己抗原である(Boitard et al. (1992) Proc Natl. Acad. Sci. USA 89 (1): 172-6)。ヒトペリフェリン配列は、配列番号6として示される。
【0045】
ガングリオシドもまた、本明細書に記載する方法または組成物における有用な自己抗原となり得る。ガングリオシドは、疎水性部分であるセラミド、及び親水性部分である例えばオリゴ糖鎖によって形成される含シアル酸糖脂質である。ガングリオシドは特に、膵島の分泌顆粒の細胞質膜で発現される。ガングリオシドに対する自己抗体は、I型糖尿病に関連して説明されてきた。例えばGM1−2ガングリオシドは、糖尿病自己免疫における膵島自己抗原であり、ヒト天然型β細胞で発現される(Dotta et al. Diabetes. 1996 September; 45 (9): 1193-6)。ガングリオシドGT3、GD3、およびGM−1もまた、自己免疫性糖尿病に関連した自己抗体の標的である(Dionisi et al. Ann Ist Super Sanita 1997; 33 (3): 433-5で総説)。ガングリオシドGM3は、インスリン耐性の病理症状に関与する(Tagami et al. J Biol Chem 2001 Nov 13;印刷版に先行してオンライン刊行)。
【0046】
インスリンB鎖は、好ましい糖尿病自己抗原である。ヒトワクチン用のヒトインスリンB鎖は、標準的な固相ペプチド合成によって作製され得る。インスリンB鎖を効果的に可溶化する手順を、本明細書中に説明する。いくつかの実施形態では、自己抗原はヒトインスリンB鎖(配列番号1のアミノ酸25〜54)あるいはその免疫活性フラグメントまたは変異体である。いくつかの実施形態では、B鎖またはそのフラグメントは、組換え型でない。例えば、B鎖あるいはその免疫原性フラグメントまたは変異体は合成ペプチドであり、例えば、B鎖は固相合成によって作られる。いくつかの好ましい実施形態では、B鎖は尿素で可溶化される。いくつかの実施形態では、例えば、ヒトインスリンB鎖は変性され、例えば、尿素およびDTTで可溶化される。好ましい実施形態では、ヒトインスリンB鎖は、重量比(w/w)で30〜70%の間、好ましくは40〜60%の間、より好ましくは45〜55%の間である。
【0047】
このように、本明細書中に提供されるのは、CTLA4およびI型糖尿病自己抗原を投与することによって糖尿病の進行を処置、予防、または遅延させる方法である。2つの成分は、同時に、経時的に、または、別個の時間経過(例えば、一方を朝にして他方を晩に、互いに関連した他の異なる時間経過)で投与される可能性がある。
【0048】
T1DMの発症は、より長い期間にわたって対象がインスリンを必要としないように、本明細書中に説明される方法によって遅らせることが可能である。それに代わるものとして、またはそれに加えて、本方法は、既に糖尿病になった対象で「ハネムーン期」を延長することが可能である。ハネムーン期は、インスリンが膵臓によって分泌される期間であり、高血糖値を沈静化させ、インスリン注射および処置に対する応答によって、正常または正常に近い血糖値をもたらす。
【0049】
T1DMは、発現する糖尿病にかかりやすい対象を最初に選択して、本明細書中に説明されるCTLA4分子とI型糖尿病自己抗原とを投与することで、対象での予防が可能である。糖尿病にかかりやすい対象は、GAD65自己抗体(GAA)、ICA512自己抗体(ICA512AA)、または抗インスリン自己抗体(IAA)うちの1または複数の発現によって、選択可能である。これらの自己抗体の各々は、自己免疫I型糖尿病への進行のリスクに関連している。GAD65自己抗体(GAA)、ICA512自己抗体(ICA512AA)、または抗インスリン自己抗体(IAA)のうちの2またはそれ以上の発現は、自己免疫I型糖尿病への進行のリスクが高いことに関連している(Liping Yu et al., Diabetes August 2001 vol. 50 no. 8 1735-1740; Verge CF et al., Diabetes 45:926-933, 199; Verge CF. et al, Diabetes 47:1857-1866, 1998; およびBingley PJ, et al., Diabetes 43:1304-1310, 1994)。
【0050】
T1DMは、本明細書中に説明される方法によっても、処置されてもよい。この処置は、残余β細胞機能を有する対象用、またはもはや少しのβ細胞機能も持たない対象用である。上記処置は、移植または注射あるいは他のβ細胞置換モダリティ(胚または他の幹細胞療法または他の置換モダリティと同様)を介して外因性β細胞が与えられた対象向けにも提案可能である。
【0051】
本明細書中に説明されるCTLA4分子とT1DM自己抗原との組み合わせは、1または複数の医薬組成物の一部として投与可能である。本発明の方法は、糖尿病を予防または遅延、すなわち残余β細胞塊の減失を予防または遅延することができ、短期合併症の低下および/または人生の後半で糖尿病関連合併症の発症を遅らせる、より長い寛解期を提供する。
【0052】
CTLA4分子およびT1DM自己抗原を組み合わせて単一の医薬組成物にしてもよい。あるいは、CTLA4分子は単一の医薬組成物で提供され、T1DM自己抗原は別個の医薬組成物で提供される。この代替例において、2つの医薬組成物は、投与の様式および投与の時間経過が同じであっても異なってもよい。
【0053】
本明細書により提供される医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含有可能である。「薬学的に許容される担体」という用語は、所望される特定の剤形に適するように、任意の全ての溶媒、希釈剤、または他の液媒体、分散助剤または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増稠剤または乳化剤、防腐剤、固体結合剤、潤滑剤、およびその他を含む。RemingtonのPharmaceutical Sciences、第16版、E.W.Martin (Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1980)は、医薬組成物の処方およびその調製のための既知の技術に使用される様々な担体を開示している。任意の従来の搬送媒体の使用は、例えば、何らかの望ましくない生体影響を生ずることにより、または、さもなければ有害の方法で医薬組成物の任意の他の成分と相互作用することにより、それが本明細書中に提供される化合物に適合しない場合を除いて、本発明の範囲内であると考えられる。薬学的に許容される担体として機能し得る材料のいくつかの例として、限定されるものではないが、ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖類;トウモロコシ澱粉およびジャガイモ澱粉などの澱粉類;セルロースとその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース;トラガント末;モルト;ゼラチン;タルク;カカオ脂および坐剤ワックスなどの賦形剤;落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、およびダイズ油などの油類;プロピレングリコールなどのグリコール類;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル類;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張性食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、ならびにリン酸緩衝液、さらに、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの他の非毒性相溶性潤滑油が挙げられ、さらに、着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香料剤、芳香剤、防腐剤、および抗酸化剤もまた、配合者の判断によって、組成物に存在し得る。
【0054】
薬学的に許容される担体を含む本明細書中に説明される化合物は、多種多様な投与の経路または様式を用いて、ペイシェントに送達され得る。適当な投与経路は、これに限定されるものではないが、吸入、経皮、経口、直腸、経皮、腸、および非経口投与が挙げられ、筋肉内注射、皮下注射、および静脈内注射が含まれる。
【0055】
本明細書中に説明される組成物は、アジュバントとともに投与されてもよい。「アジュバント」という用語は、単独で投与される有意の活性(significant activity)がない化合物、別の治療薬の活性を増強し得る化合物であり得る。いくつかの実施形態では、アジュバントは緩衝液、抗菌保存剤、界面活性剤、抗酸化剤、持続性制御剤、消毒剤、増粘剤、および粘性改善剤からなる群から選択される。好ましい実施形態では、アジュバントはIFAまたは他の油性アジュバントであり、重量比(w/w)で30〜70%の間、好ましくは40〜60%の間、より好ましくは45〜55%の間で存在する。いくつかの実施形態では、ヒトインスリンB鎖とIFAまたは他の油性アジュバントは、約50/50の重量比で存在する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は不純物(例えば、パイロジェン)を含まない。
【0056】
いくつかの実施形態では、自己抗原は凍結乾燥される。別の態様において、本発明は、T1DM自己抗原と、油性担体、例えばIFAなどの油性アジュバントまたはモンタナイドISA(例えば、モンタナイドISA51)などの他の油性アジュバントとを組み合わせる段階、および、インスリンB鎖と油性アジュバントとを乳化する段階とを有する方法によって作られる、T1DM自己抗原含有医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、T1DM自己抗原は、インスリンB鎖および油性アジュバントが乳化される油性担体と組み合わされる、ヒトインスリンB鎖もしくはプレプロインスリンまたはそれらの免疫活性フラグメントもしくはその変異体である。好ましい実施形態では、ヒトインスリンB鎖と油性アジュバントとの重量比(w/w)は、30/70から70/30の間、好ましくは40/60から60/40の間、好ましくは45/55から55/45の間の間で、さらに好ましくは約50/50w/w比で組み合わせられる。好ましい実施形態では、乳化は高圧注射器で行われる。好ましい実施形態では、油性担体またはアジュバント、および、好ましくは、組成物は、細菌成分、例えばミコバクテリア成分を含まない。
【0057】
いくつかの実施形態において、T1DM自己抗原は、B鎖またはプレプロインスリンあるいはその免疫原性活性フラグメントまたは変異体であり、約3M〜8Mの尿素で、好ましくは約3.5M〜7Mの尿素で、または、約4M〜6Mの尿素で可溶化される。好ましい実施形態では、B鎖またはその免疫原性活性フラグメントもしくは変異体は、約4Mの尿素で、好ましくは約3.5M〜4.5Mの尿素で、最も好ましくは約3M〜5Mの尿素で可溶化される。好ましい実施形態では、β鎖またはその免疫原性活性フラグメントもしくは変異体は、5M〜8Mの尿素で、好ましくは約6M〜7Mの尿素で可溶化される。好ましくは、B鎖は還元剤(例えば、DTT)の存在下で可溶化され、すなわち、等量の還元剤(例えば、1〜5mgのDTT)が可溶化ステップの過程で添加される。
【0058】
いくつかの実施形態では、I型糖尿病自己抗原および/またはCTLA4分子を含む組成物は、油性担体を含む。
【0059】
油性担体は、好ましい一実施形態において治療薬と併用してヒトに投与される、少なくとも10重量%の天然または合成の油を含む組成物である。好ましい実施形態では、担体は、少なくとも20、30、50、70、80、90、95、98、または99重量%の油を含む。いくつかの実施形態では、油性担体は、70、60、50、40、30、または20重量%未満の油を含み得る。好ましい実施形態では、油は10〜95重量%、好ましくは20〜90%または30〜70%の油の範囲にある。油は、対象に対して投与された場合に該油に分散された物質が徐放されるように、選択されるものとする。適当な油として、鉱油(例えば、Drakeol(登録商標)6 VR軽油)、植物油、スクアレン、または流動パラフィンが挙げられる。いくつかの実施形態では、油性担体は1または複数のタイプの油を含むことができる。いくつかの実施形態では、油性担体は、免疫賦活剤(例えば、免疫賦活性グルカン)を含むことができる。しかし、油性担体が免疫賦活剤(例えば、免疫賦活性グルカン)、細菌成分(例えば、ミコバクテリア成分)を含まないことが、大いに好ましい。好ましい実施形態では、油性担体はミョウバン成分を含まない。
【0060】
理論に縛られることを望むわけではないが、油性担体は、炎症性および防御免疫反応能力に関連している免疫適格細胞を刺激することによって、作用すると考えられている。油性担体は、抗原媒体と徐放または長期抗原提示機構としても作用し得る。対象に注射されると、油性担体と抗原とから構成される組成物は、注射部位で抗原のデポを形成することで、抗原の分解を防ぐことができる。このデポから、抗原は系へゆっくりと放出され得るので、長期間にわたる抗原提示が提供されるとともに、炎症細胞との全接触面積が拡大し、炎症細胞を引き寄せる。マクロファージは、取り込んだ物質の大部分を消化することができ、処理抗原を該マクロファージの表面に示すことができる。このデポから、抗原は系へゆっくり放出され得るので、共刺激調節因子として作用するべく長期間にわたる抗原供給を提供する。
【0061】
油性担体は、乳化剤または界面活性剤成分を任意に含む。油と物質(例えば、抗原製剤)との混合または分散を促進するように、乳化剤または界面活性剤(および乳化剤または界面活性剤の量)が選択される。油性担体は、界面活性剤または乳化剤を0.1〜50%、好ましくは1〜30%、より好ましくは5〜20重量%含むことができる。乳化剤または界面活性剤の例として、アルラセルA、オレイン酸マンニド(例えば、モンタミド80−モノオレイン酸マンニド)、無水マンニトール/オレイン酸エステル、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンが挙げられる。
【0062】
不完全フロイントアジュバント(IFA)は、ヒトにおける自己抗原のための好ましい送達媒体である。本発明の方法は、糖尿病を予防、すなわち残余β細胞塊の減失を予防または遅延させることができ、人生の後半で糖尿病関連の、通常進行性の合併症の発症を遅延させる、より長い寛解期を提供する。
【0063】
油性担体またはアジュバントは、一般的に、2つの成分、すなわち(1)油と(2)乳化剤または界面活性剤とからなるもので、水と混合されている。適当な油と乳化剤は、当該技術分野で公知である。例えば、油は鉱油、植物油、スクアレン、または流動パラフィンであり得る。乳化剤または界面活性剤は、例えば、アルラセルAオレイン酸マンニド、無水マンニトール/オレイン酸エステル、ポリオキシエチレン、またはポリオキシプロピレンであり得る。典型的な油性アジュバントは、従来のIFA、モンタナイドISAアジュバントまたはハンターのタイターマックスアジュバントを含む。好ましい実施形態では、アジュバントは20〜95重量%、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは40〜70重量%の油相と、0.1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは5〜20重量%の界面活性剤または乳化剤とを含む。様々なタイプの油性アジュバントは、例えば、米国特許第5,814,321号、米国特許第6,299,884号、米国特許第6,235,282号、および米国特許第5,976,538号に記載されている。
【0064】
IFAは、概して非代謝性油(例えば、鉱油)、水、および界面活性剤(例えば、アルラセルA)の混合物である。完全フロイントアジュバント(CFA)とは異なり、IFAは細菌成分(例えば、ミコバクテリウム)を含まない。IFAを用いた最初の大規模集団ワクチン接種が行われたのは米軍関係者に対してであった(Davenport (1968) Ann Allergy 26:288-292; Beebe et al., (1972) Am J Epidemiol 95:337-346; Salk & Salk (1977) Science 195:834-847)。エビデンスは、悪性腫瘍、アレルギー疾患、および膠原病に関しては陰性であったが、数人の男性の接種部位に嚢胞様の反応があったというエビデンスが存在した。その後の研究は、これらの副作用は、誤った投与によるものであることが確認された。すなわち、筋肉注射の代わりに誤って皮下注射されていた。これらの実験から、IFAは一部の人々によってヒト目的に不適当であると考えられていたが、それは動物研究で広く使われているままだった。近年、より新しい形態のIFAは、HIV免疫療法または治療的ワクチン接種におけるヒト使用で安全であることが示された(Turner et al. (1994) AIDS 8:1429-1435; Trauger et al. (1995) J Acquir Immune Defic Syndr Hum Retrovirol 10 Supp2:S74-82; Trauger et al. (1994) J Infect Dis 169:1256-1264)。
【0065】
モンタナイドISAアジュバント(Seppic、フランスパリ市)は、異なる界面活性剤が非代謝性鉱油、代謝性油、またはこれら2種類の混合物と組み合わせられる一群の油/界面活性剤系アジュバントである。それらは、抗原水溶液エマルジョンとして使用するために調製される。モンタナイドISA50(ISA=不完全セピックアジュバント)用の界面活性剤は、オレイン酸マンニド(フロイントアジュバントに含まれる界面活性剤の主成分)である。モンタナイド群の界面活性剤は、フロイントアジュバントで用いられるアルラセルAのいくつかのロットで見出されている過剰な炎症を引き起こし得る何らかの物質によるコンタミネーションを防ぐために、厳しい品質管理を受ける。アジュバントの種々のモンタナイドISA群は、油中水型乳剤、水中油型乳剤、または水中油中水型乳剤として使われる。異なるアジュバントは、界面活性剤と油との組み合わせが豊富であることから、異なる水相/油相比率に適応する。
【0066】
ハンターのタイターマックス(CytRx Corp., Norcross, Ga.)は、従来のフロイントアジュバントに用いられるものと類似の方法で油中水型乳剤として調製される油/界面活性剤系アジュバントである。しかし、それは代謝性油(スクアレン)と、良好なタンパク質抗原結合能およびアジュバント活性を持つ非イオン性界面活性剤とを使用する。アジュバント活性は、脾臓およびリンパ節の濾胞性樹状細胞を抗原が標的とするのをこのことが促すので、補体を活性化して補体成分を結合する界面活性剤の能力に、ある程度関連していると思われる。市販のアジュバントで用いられる界面活性剤は、ハンターによって開発されたポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとから構成されるいくつかの合成非イオン性ブロックコポリマーのうちの1つである(Hunter et al., 1991 Vaccine 9:250-256)。エマルジョンを安定させる共重合体被覆微粒子の利用は、20%未満の油(注射されるアジュバントの総量を最小にする重要な因子)を有する安定なエマルジョンの形成を可能にする。
【0067】
アジュバントは、抗原とともに用いられて、細胞媒介性免疫と防御アイソタイプ(マウスのIgG2aと霊長類のIgG1)の抗体産生とを引き出し得る。異なるタイプのアジュバントは、類似の副作用(例えば注射部位での反応と発熱原性)を共有する。また、ヒトワクチンに一般に用いられるアジュバントであるミョウバンは、注射部位で顕著な肉芽腫性応答をもたらす(Allison & Byars (1991) Mol Immunol 28:279-284)。不完全フロイントアジュバントの作用様式は、特異的免疫反応と同様に非特異的免疫反応に関係する。IFAは、防御能のみならず炎症性に関連がある免疫適格細胞を刺激することによって、作用するように思われる。IFAも、抗原媒体と徐放または長期抗原提示機構として作用する。ペイシェントにIFAと抗原化合物とを注射すると、それが注射部位に抗原のデポを形成して、抗原の分解を防ぐ。このデポから、抗原は系へゆっくりと放出され得るので、長期間にわたる抗原提示が提供されるとともに、炎症細胞との全接触面積が拡大し、炎症細胞を引き寄せる。マクロファージは、取り込んだ物質の大部分を消化することができ、処理抗原を該マクロファージの表面に示すことができる。
【0068】
抗原免疫原性に対するIFAの特異的増強効果は、体液性免疫(優先的な防御抗体産生;ヒトにおけるIgG1とマウスにおけるIgG2a)を高めること、特異的細胞性免疫(優先してTh2タイプおよびTregs)を誘発することである。具体的には、IFAのヒト組換え型インスリンB鎖は、NODマウス膵島で、結果としてTh2サイトカインパターンになる(Ramiya et al. (1996) J Autoimmun 9:349-356)。IFAは、動物モデルで糖尿病予防に試用されるアジュバントのなかでもユニークな存在である。ラミヤおよび共同研究者(上掲)は、アジュバントとしてのミョウバンおよびDPTの両方が使用抗原とは無関係な「非特異的」防御効果を有するけれども、IFAが動物の糖尿病予防に抗原特異的防御効果を示す唯一のものであると結論した。
【0069】
IFA、好ましくはヒト使用に承認されているIFA、例えばモンタナイド(例えば、モンタナイドISA51、Seppic社、フランス)または同等の組成物)は、本明細書中に説明される方法およびワクチンに用いられる好ましいアジュバントである。モンタナイドISA51は、我々の動物において、および、我々のヒト研究で、全身性または有意な局所有害作用を示さなかった。
【0070】
経口投与用に、化合物は、活性化合物と当該技術分野で周知の薬学的に許容される担体とを組わせることによって、容易に処方することができる。そのような担体は、治療されるペイシェントによる経口摂取用に、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ剤、スラリー、懸濁液、およびその他として、本発明の化合物が処方されることを可能にする。経口用の医薬製剤を固体賦形剤として得ることができ、錠剤または糖衣錠核を得ることが望まれる場合、結果として生じた混合物を任意に粉砕し、適当な助剤を添加した後に、顆粒の混合物を加工処理する。適当な賦形剤は、具体的には、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖類などの充填剤、セルロース製剤、例えば、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、ジャガイモ澱粉、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)である。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)などの崩壊剤を加えてもよい。
【0071】
化合物は、例えばボーラス注射または持続静注などの注射による非経口投与用に処方してもよい。注射(静脈または皮下)は、本発明の組成物を投与するための好ましい方法である。注射用の調製物は、単位剤形、例えば、添加防腐剤とともに、アンプルまたは複数回投与用容器で提供されてよい。組成物は、油性または水性媒体中の懸濁液、溶液、またはエマルジョンなどの形態であってもよく、さらに、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤などの配合剤を含有してもよく、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、あるいはアルギン酸またはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)を添加してもよい
【0072】
いくつかの実施形態では、本明細書中に説明される組み合わせは、皮下注射または筋肉注射によって非経口投与してもよい。いくつかの実施形態では、投与の好ましい方法は、筋注である。例えば、本明細書中に説明されるI型糖尿病自己抗原は、少量(例えば、1ml)の筋肉注射(好ましくは深部筋肉注射)によって投与することができる。自己抗原は、1回または複数回投与し得る。それは、例えば、I型糖尿病の発症の前に、または、その後に、投与し得る。
【0073】
投与量は、投与経路に依存してもよく、また、宿主の大きさによって変わる。例えば、2mgのヒトインスリンB鎖溶液を、ヒト成人に投与することができる。本発明に係る免疫原性組成物に含まれる活性成分タンパク質の濃度は、概して、約1〜95%である。
【0074】
ワクチンは、アジュバント、例えば、油性アジュバント(例えば、IFA)を含み得る。好ましくは、ワクチンはヒト使用に適し、かつ承認されたIFA、例えばモンタナイドISA51または同等の組成物を含む。
【0075】
ワクチンは、ヒト投与にふさわしい条件の下で調製される。好ましくは、ワクチン注射は、滅菌条件下で、インスリンB鎖/IFAの50/50(w/w)エマルジョンとして、高圧滅菌シリンジを用いて投与の直前のエマルジョンとして調製される。
【0076】
本明細書中に説明される方法およびワクチンは、自己免疫疾患(例えば、糖尿病)の発症を防止するのに用いられ得る。方法およびワクチンは、組織(例えば、膵臓β細胞)の自己免疫性の破壊を抑えるのに用いられ得る。方法およびワクチンは、後期でさえ、自己免疫性の破壊の抑制に有用である。例えば、I型糖尿病の臨床発症時に、有意な数のインスリン産生β細胞が破壊されるが、約15%、おそらく40%ほどが依然としてインスリンの産生可能である。これらの細胞は、自己免疫プロセスがたとえその後期においても抑制され得る場合、保存され得る。β細胞は、複製能がある程度限定されており、前駆体は新しいβ細胞を形成可能である。
【0077】
非経口投与に適当な医薬製剤として、水溶性である活性化合物の水溶液が挙げられる。さらに、活性化合物の懸濁液は、適当な油性注射懸濁液として調製されてもよい。適当な親油性溶媒または媒体としては、ゴマ油などの脂肪油またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステルまたはリポゾームが挙げられる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの懸濁液の粘度を増加する物質を含んでよい。必要に応じて、懸濁液は、化合物の溶解度を高めて高度に濃縮された溶液の調製を可能にする適当な安定剤または薬剤を含んでもよい。注射用に、本発明の薬剤は、水溶液として、好ましくは、ハンクス液、リンゲル液、または生理食塩緩衝液などの生理学的適合性のある緩衝液として、処方されてもよい。あるいは、活性成分は、使用前に、適当な媒体、例えば滅菌パイロジェンフリー水とともに構成するために粉末状であってもよい。
【0078】
対象に投与されるCTLA4分子とインスリンB鎖との組み合わせの量は、対象の大きさおよび重さの両方と病勢悪化とに依存する。本明細書中に説明される化合物に関して、治療有効量は、最初に、生体外アッセイから決定され得る。本発明の化合物は、吸収度が低く、かつバイオアベイラビリティが低くいと考えられるので、化合物またはその代謝産物の糞便中の濃度から、あるいは血液由来のバイオマーカからその治療有効量が決定されてもよい。当該技術分野で周知であることから、ヒト用の治療有効量は動物モデルからも決定され得る。治療有効量は、類似の薬理活性を示すことが知られている化合物に関するヒトデータからも、決定され得る。投与量は、既知の化合物と比較して、投与された化合物の相対的な効力に基づいて、調整され得る。
【0079】
本明細書中に説明される化合物を非経口投与する場合のペイシェント服用量は、典型的には約1mg/日から約10,000mg/日まで、より典型的には約10mg/日から約1,000mg/日までまたは約250mg/日から約2,000mg/日まで、最も典型的には約50mg/日から約500mg/日までまたは約0.5mg/日から約10mg/日までの範囲である。ペイシェント体重に関して述べられる場合、典型的な投与量範囲は、約0.01から約150mg/kg/日まで、より典型的には約0.1から約15mg/kg/日まで、さらに、最も典型的には約1から約10mg/kg/日(例えば5mg/kg/日または3mg/kg/日)までの範囲である。
【0080】
CTLA4分子およびインスリンB鎖は、単回投与で投与可能であり、あるいは、それらを別々に投与してもよく、その場合、別々の投与とは、ほぼ同時に投与、または時間をずらして、例えば一方を朝にして他方を晩に、もしくは一方を1日に2回にして他方を1日に一回にするというように、投与することを意図している。これら2種類の薬は、同時または異なる順番で投与可能である。すなわち、異なる時点で、CTLA4−Igを最初に、その後にインスリンB鎖含有IFAを投与、またはインスリンB鎖を投与して次にCTLA4−Igを投与してもよい。
【0081】
投薬は、ある期間にわたって、例えば1ヶ月に1回または28日ごとでもよい。いくつかの実施形態において、追加用量(例えば、ボーラス投薬)を処置の開始時に投与してもよい。いくつかの実施形態では、融合タンパク質が約1、3、5、10、20、30、50、100mg/kg、1回の用量に含まれている。いくつかの実施形態では、糖尿病自己抗原が約1、3、5、10、20、30、40、50、100、500μg/kg、1回の用量に含まれている。
【0082】
本明細書中で用いられる用語の定義は、化学および薬学分野において各用語について認められる現在最高水準の定義が包含されるものとする。必要に応じて、実例を示す。本明細書中に用いられる用語には、特定の例で別段の定めがない限り、個々に、または、より大きな群の一部として、この明細書全体を通して用いられるように、定義が適用される。
【0083】
本明細書中に用いられるように、用語「投与すること」または「投与」は、意図した作用部位に化合物を直接または間接的に送達することについての全ての手段を包含することを意図している。
【0084】
本明細書中で用いられる「自己抗原」は、正常細胞または組織の構成要素であるにもかかわらず、対象の体液性または細胞性免疫反応の標的になり得るタンパク質である。例えば、糖尿病I型自己抗原は、典型的に、膵臓細胞の正常なタンパク質構成要素である。本明細書中に説明される自己抗原の「免疫活性フラグメント」は1または複数のアミノ酸残基が欠失した自己抗原であり、フラグメントは、免疫細胞もしくは自己抗原抗体と反応する能力、または、自己抗原に対する抗体産生を刺激する能力を保持する。例えば、免疫活性フラグメントは、複数の残基がアミノ末端および/またはカルボキシル末端から連続して欠失していながら免疫原性活性を実質的に保持している自己抗原ポリペプチドであり得る。例えば、インスリンB鎖(配列番号1のアミノ酸25〜54)はプレプロインスリンの免疫活性フラグメントであり、配列番号1の33〜47のアミノ酸を含むポリペプチドはB鎖の免疫活性フラグメントであり、配列番号3の約600〜979のアミノ酸を含むポリペプチドはIA−2の免疫活性フラグメントを含む。好ましい実施形態では、免疫活性フラグメントは配列番号1〜6のいずれかのフラグメントである。好ましいフラグメントは、生来の自己抗原の1または複数の生物活性を欠いているが、自己抗原抗体および免疫細胞と反応する能力を保持する。例えば、好ましいインスリンフラグメントまたは変異体は、血糖低下作用がない。好ましくは、本明細書中に説明される自己抗原の免疫活性フラグメントの長さは、4から400アミノ酸残基の間、より好ましくは長さ10から300アミノ酸残基の間、より好ましくは長さ30から200アミノ酸残基の間である。
【0085】
糖尿病の進行を遅延させるという文脈において本明細書中に用いられる文言である「進行の遅延」は、I型糖尿病の臨床発症後に機能的な残余β細胞塊の減失が遅れることを意味する。T1DMの進行の遅延は、例えばCペプチド産生を測定することで、判断され得る。
【0086】
本明細書中に説明される自己抗原の「免疫活性変異体」は、自己抗原であり、この自己抗原は、天然の自己抗原において1または複数のアミノ酸残基が付加、修飾、または置換されることによって変化されており、また、免疫細胞または自己抗原抗体と反応する能力、あるいは、自己抗原に対する抗体産生を刺激する能力を保持する。本明細書中に説明される変異体は、対立遺伝子変異体および多型変異体、さらには突然変異タンパク質および融合タンパク質を包含し、それらは自己抗原抗体と結合する能力、または、ヒトの自己抗原に対する免疫反応を生じる能力を保持する。変異体が、例えばヒトにおいて自己抗原と結合する能力または自己抗原に対する免疫反応をもたらす能力を保持する限り、例えば自己抗原のアミノ酸残基の20%まで、好ましくは10%までを、代替アミノ酸で置換し得る。変異体としては、本明細書中に説明される自己抗原またはそのフラグメントを挙げることができ、該自己抗原は、1または複数のアミノ酸が挿入または付加されているもので、例えば、担体ペプチドに結合または融合した自己抗原である。修飾を有する変異体であり、そのような修飾の例として、人為的なアミノ酸残基、またはリン酸化、スルホン化、もしくはビオチニル化されたアミノ酸残基の取り込みが挙げられる。アミノ酸残基の修飾としては、カルボキシル末端のまたはカルボキシル側鎖含有残基の脂肪族エステルまたはアミド、ヒドロキシル基含有残基のO−アシル誘導体、およびアミノ末端アミノ酸またはアミノ基含有残基(例えば、リシンまたはアルギニン)のN−アシル誘導体を挙げることが可能である。他の修飾としては、他の部分、特に自己抗原の免疫原性を高めると思われる部分の添加が挙げられる。好ましい変異体は、天然自己抗原の1または複数の生物活性がないが、自己抗原抗体または免疫細胞と反応する能力を保持する。例えば、好ましいインスリン変異体は、血糖低下作用がない。
【0087】
「薬学的に許容される」という文言は、哺乳類(例えば、ヒト)などの動物に投与された場合に生理学的に許容されて、概してアレルギーまたは類似の有害反応、例えば異常行進、めまい感、およびその他を生ずることがない添加剤または組成物のことを指す。「薬学的に許容される担体」という用語は、所望される特定の剤形に適するように、任意または全ての溶媒、希釈剤、または他の液媒体、分散助剤または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増稠剤または乳化剤、防腐剤、固体結合剤、潤滑剤、およびその他を含む。Remington's, The Science and Practice of Pharmacy, (Gennaro, A. R., ed., 19th edition, 1995, Mack Pub. Co.))は、医薬組成物の処方に用いられる様々な担体とその調製に関する既知の技術とを開示している。任意の従来の搬送媒体の使用は、例えば、何らかの望ましくない生体影響を生ずることにより、または、さもなければ有害の方法で医薬組成物の任意の他の成分と相互作用することにより、それが本明細書中に提供される化合物に適合しない場合を除き、この発明の範囲内であると考えられる。薬学的に許容される担体として機能し得る材料のいくつかの例として、限定されるものではないが、ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖類;トウモロコシ澱粉およびジャガイモ澱粉などの澱粉類;セルロースとその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース;トラガント末;モルト;ゼラチン;タルクが挙げられる。カカオ脂および坐剤ワックスなどの賦形剤;落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油およびダイズ油などの油類;プロピレングリコールなどのグリコール類;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル類;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張性食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、ならびにリン酸緩衝液、さらに、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの他の非毒性相溶性潤滑油が挙げられる。さらに、着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香料剤、芳香剤、防腐剤、ならびに抗酸化剤もまた、配合者の判断によって、組成物に存在し得る。
【0088】
用語「医薬組成物」は、他の薬剤(例えば担体および/または賦形剤)を伴う本明細書中に説明される組成物またはその薬学的に許容される塩類を指す。好ましくは、医薬組成物は、少なくとも95%の純度または98%純度または99%純度、またはそれ以上で存在する有効成分を有する。
【0089】
本明細書中で用いられる用語「対象」は、糖尿病、糖尿病前症、または糖尿病の素因を有するヒトまたは他の動物である。したがって、いくつかの実施形態では、対象は、本明細書中に提供される治療処置を必要とする。好ましいペイシェントは、哺乳類である。ペイシェントの例としては、限定されるものではないが、ヒト、ウマ、サル、イヌ、ネコ、マウス、率、ウシ、ブタ、ヤギ、およびヒツジが挙げられる。いくつかの実施形態では、「対象」は通常、糖尿病を罹患しているヒト患者である。いくつかの実施形態では、「対象」は、200、100または50日以内にT1DMと診断されたヒト患者である。いくつかの実施形態では、「対象」は、糖尿病と診断されたが、まだ残余β細胞機能があるヒト患者である。そのようないくつかの実施形態では、残余β細胞機能は検出可能であるか、または、完全に機能している膵臓の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、またはそれ以上のβ細胞である。
【0090】
用語「治療有効量」は、細胞培養、組織系、動物、またはヒトにおいて所望の生物学的または医学的応答(例えば、所望の治療結果)を達成するべく、投与量で、かつ必要な期間にわたって、有効な量を指す。組成物の治療有効量は、個人の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに、該個人において所望の応答を誘発するCTLA4分子および/または糖尿病自己抗原の能力などの因子によって、変化する場合がある。治療有効量は、薬物のあらゆる中毒性または有害な影響よりも治療的に有益な効果が上回るものでもある。いくつかの実施形態では、反応としては、処置されている疾患、状態、または障害の1または複数の症状の発症の軽減および/または遅延が挙げられる。
【0091】
本明細書中で用いられる用語「処置」または「処置している」は、対象に対する治療薬の適用もしくは投与として、または、糖尿病、疾患の症状または疾患に関する素因を有する対象からの単離組織または細胞株に対する治療薬の適用もしくは投与として定義される。処置は、疾患の発症を予防したり、進行を遅らせたり、後退させたり、あるいはさもなければ、疾患、疾患の症状、または疾患に関する素因の改善、向上、または影響を及ぼすことを包含するように、意図されている。例えば、本明細書中に説明される組成物による対象、例えばヒト対象の処置は、自己免疫疾患の進行、例えば、I型糖尿病の臨床発症の前、その間、またはその後の対象の膵臓β細胞に対する反応を遅らせたり、改善したり、または止めたりすることができる。
【0092】
用語「約」または「ほぼ」は、当業者によって決定される特定の値に関する許容誤差範囲内にあることを意味しており、それは、どのようにして値が測定または決定されたか、例えば、測定系の限界または特定の目的に必要とされる精度に、部分的には依存する。例えば、当該技術分野における慣例にしたがって、標準偏差1または2の範囲内であることを意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値の最大で20%まで、好ましくは最大で10%まで、より好ましくは最大で5%までの範囲を意味し得る。特定の値が本出願および特許請求の範囲に記載されている場合、特に明記しない限り、特定の値の許容誤差範囲内であることを意味する用語「約」が想定されるものとする。
【0093】
本明細書中および添付の特許請求の範囲中で用いられるように、英語の"a"、"an"、および"the"に相当する単数表現は、その内容について別段のはっきりした指示がない限り、複数の指示対象を含む。このように、例えば、「分子」への言及は、そのような分子を1または複数含み、また「樹脂」は、そのような樹脂を1または複数種類含む。さらに、「方法」への言及は、本明細書中に説明される方法に変更または置き換え可能であり、当業者に公知の、同等のステップおよび方法に対する言及を含む。
【0094】
上記の説明は、例および種々の実施形態の具体的な詳細を提供するが、それは説明された実施形態のいくつかの特徴および/または機能が、説明された実施形態の範囲から逸脱することなく変更を認めることはいうまでもない。上記説明は、本発明を例示することを意図され、その範囲は、添付の特許請求の範囲の文言によってのみ限定される。実施例
【0095】
出願人の教示の態様は、以下の実施例に照らして理解可能であり、該実施例は、いかなる形であれ、本出願人の教示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。実施例1−アバタセプトの投与
【0096】
本研究のために、過去100日以内にI型糖尿病と診断された患者(6〜45歳)を並行して検査した。患者の本研究参加資格は、該患者が少なくとも1つの糖尿病関連自己抗体(微量検定されたインスリン抗体[インスリン療法の継続が7日未満である場合]グルタミン酸脱炭酸酵素−65[GAD−65]抗体、膵島細胞抗原−512[ICA512]抗体、または膵島細胞自己抗体)を有するとともに、糖尿病と診断されてから少なくとも21日後かつランダム化の37日以内に、混合食負荷試験(MMTT)実施中に測定された刺激Cペプチド濃度が0.2nmol/Lまたはそれ以上であった場合とした。
【0097】
血液サンプルがB型肝炎表面抗原、C型肝炎、またはHIVに対する血清抗体が陽性であると判断された人々は参加させなかった。サンプルを、エプスタイン−バーウイルス(EBV)についても検査した。スクリーニング時にEBV感染のエビデンスがあった人を不適格とした。ランダム化の後、EBV感染の徴候を示した参加者に対して、消散されるまで、さらなる試験薬の投与を行わなかった。
【0098】
二重盲検プロトコルを用いて、アバタセプトまたはプラセボで実験的処置を受けるべく、2:1の比率(参加拠点によって層化)で、患者を無作為に割り当てた。表1は、参加者の基準人口統計学的および研究室的特性を提供する。
【表1】
【0099】
データは、n(%)、平均(SD)または中央値(範囲)である。AUC=曲線下面積HbA1c=糖化ヘモグロビンA1c
【0100】
*示された変数のデータが欠けている参加者を除外(不明数:人種、1;HbA1c、2;インスリン使用、1;HLA対立遺伝子の状態、4)。†蛍光抗体法による検査が実施されていない患者16人の膵島細胞自己抗体(カウントが陰性であるとみなす)。‡アバタセプト群の範囲51〜108およびプラセボ群の範囲38〜107。
【0101】
アバタセプト(オレンシア、ブリストル・マイヤーズスクイブ社、米国ニュージャージー州プリンストン市)を、0.9%塩化ナトリウム注入液100mL中10mg/kg(1回の投薬あたり最大1000mg)の用量で30分間静脈注入することにより、1日目、14日目、および28日目、さらにその後28日ごとに投与し、700日目に最終の投薬とした(総投薬回数27)。通常の生理食塩溶液注入液を、プラセボとして用いた。患者は、いかなる前投薬も受けなかった。
【0102】
すべての患者は、集中糖尿病管理を受けた。 目的は、米国糖尿病協会によって推奨されるように、集中的血糖管理を成し遂げることであった(American Diabetes Association. Diabetes Care 2011; 33 (suppl 1): S11-61)。患者は、インスリン頻回注射またはインスリン注入ポンプを使用した。血糖モニタリングは、頻繁な日常的血糖モニタリングによっておこなった。血糖管理に影響を及ぼす非インスリン医薬の使用を認めなかった。
【0103】
血液サンプルを中心的に分析した。Cペプチド濃度を、二部位免疫酵素測定装置(トーソー・バイオサイエンス社、米国カリフォルニア州サウスサンフランシスコ市)により、凍結血漿から測定した。糖化ヘモグロビンA1c(HbA1c)を、イオン交換高速液体クロマトグラフィ(Variant II、バイオラッド・ダイアクソスティック社、米国カリフォルニア州ハーキュリーズ)で測定した。各アッセイの信頼度係数は、分割二重反復サンプル(split duplicate samples)から0.99を上回った。生化学的自己抗体(微量検定インスリン抗体、GAD65抗体、ICA512抗体)を放射免疫結合アッセイで測定し、膵島細胞自己抗体(ICA)を間接蛍光抗体法で測定した。ルーチンの化学検査を実施した(ロッシュ・ダイアグノスティックス社[米国インディアナ州インディアナポリス]のHitachi 917 Analyzerおよび試薬)。HLAクラスII対立遺伝子を、PCR増幅および配列特異的雑種形成で測定した。β細胞機能を、刺激Cペプチド分泌によって評価した。本研究の事前に明示された主要転帰を、24ヶ月の来診時に実施された4−h MMTT2の最初の2時間にわたる刺激Cペプチド応答の曲線下面積(AUC)の対照とした。4−h MMTTを、ベースラインの時点および24ヶ月の時点に実施した。2−h MMTTを、3、6、12、および18ヶ月の時点で得た。2年間の来診MMTTを完了した患者を主要転帰の評価に含んだ。2年間の処置期間完了後、参加者は2年間の追跡調査期間に入り、6ヶ月ごとにMMTTを含む安全性および有効性の評価を続けた。事前特定された二次転帰には、経時的なCペプチドの傾き、0.2nmol/L未満へピークCペプチドが減失する発生率における群間の差、経時的なHbA1cおよびインスリン投与量の差ならびに安全性が含まれた。事前特定されたサブグループ因子は、年齢、性別、人種、ベースラインCペプチド、ベースラインインスリン使用、ベースラインHbA1c、およびHLA型を含んだ。
【0104】
Spotfire S+ 8.1(統計解析ソフトウェア)を、すべての分析に用いた。85%検定力を提供してプラセボ群に対して幾何平均Cペプチドの50%増加を検出するべく、標本の大きさを参加者108人と計画した。この際、追跡調査に対する10%の減失と処置群vs対照群に対する2:1の割り当てとによる0.05水準(片側)での検定(変換スケールで推定平均値0.248とSD0.179に基づく)を用いた。すべての分析は、既知の測定で事前特定されたIntention−to−Treatコホートに基づいた。欠測値は、ランダムに失われていると想定した。試験の設計が片側仮説検定に基づいたにもかかわらず、主要および副次的エンドポイントのIntention−to−Treat処置比較と関連したp値は両側性である。オブライエン−フレミング境界線によるLanとDeMetsの方法に基づいて一度、エンドポイント処置効果の中間解析を実施し、データおよび安全モニタリング委員会に報告した(Lan KKG、DeMets DL。Biometrika 1983; 70:659-63)。Cペプチド平均AUC、HbA1c、および総1日インスリン投与量に関する事前特定された分析法は、年齢、性別、従属変数のベースライン値、および処置割り当てを調整する共分散分析モデルであった。各処置群の推定平均および関連95%信頼区間(CI)を、他の共変量の平均で確立した。処置効果に関連した有意水準を、ウォールド試験(適したモデルから)から得た。log(XC−Pep+1)の正規化変換を、CペプチドAUC平均について事前特定し、残余の正常なプロットはそれが十分なことを示唆した。Cペプチド平均AUCは、2時間間隔で割ったAUC(すなわち、AUC/120)に等しい。AUCの計算は、MMTTの過程でCペプチドの指定時刻測定から台形法を用いておこなった。0.2nmol/L未満である第1の刺激ピークCペプチド(それを上回る値は糖尿病制御および合併症トライアルにおける合併症のリスクの減少に関連)に対する時間を、標準生存方法(Standard survival method)(Coxモデルおよびカプラン―マイヤー法)で分析した。有害事象等級を、ウィルコクソン順位和検定で分析した(Agresti A. Categorical data analysis. New York, NY, USA: John Wiley and Sons, 1990)。6から24ヶ月のCペプチド平均AUCの平均変化率を、年齢、性別、ベースラインCペプチド平均AUC、および処置割り当てに合わせて調整されるランダムな切片および傾きの両方を有する混合効果モデルで推定した。最初の適合度は、処置と時間との一定の相互作用効果が含まれるが、ゼロ以外であることの何らかの統計的証拠が欠如していることから、それを取り除いた。全ての時間にわたる処置効果を評価するために、我々は、構成なしで時間を定義して、かつ6ヶ月間隔までにグループ化された差で、類似の混合模型をデータに合わせた。
【0105】
本研究で登録される患者112人のうち、77人がアバタセプトによる実験的処置を受けられるように無作為に割り当て、35人がプラセボを受けられるように割り当てた。表1は、2つの群のベースライン特性をまとめたものである。唯一の注目すべきアンバランスは、アバタセプト群よりもプラセボ群において男性の比率が高く、また平均HbA1cがプラセボ群でより高かった。処置群によって実際に投与された注入の数を、ウィルコクソン順位和検定を使用して比較したところ、有意差は、検出されなかった(p=0.61)。全体として、3024の可能な注入のうちの2514(83%)を投与し、投与されていない多くは、パープロトコルであった(例えば、患者はEBV感染を発症または妊娠した)。738の予想MMTTのうちの689(93%)が実施された。2年時の一義的分析において、アバタセプトに割り当てられる参加者の幾何平均刺激Cペプチド2−h AUCは、0.375nmol/L(95%CI 0.290〜0.465)であり、それに対して、プラセボに割り当てられたものでは、0.266nmol/Lの(0.171〜0.368)であった。2年時の調整母集団Cペプチド平均2−h AUCは、アバタセプト群では0.378nmol/Lであり、プラセボ群では0.238nmol/Lであった。このように、2年時のCペプチドAUCは、アバタセプト(p=0.0029)よりも59%(95%CI 6.1〜112)高かった。ベースラインHbA1cが共変量として加えられた場合、結果は不変かつ有意(p=0.0028)のままであった。ベースラインから2年の評価(主要エンドポイント)までCペプチド濃度の差に対処するために、3、6、12、および18ヶ月間のCペプチド結果を、別々にモデル化した。
【0106】
図1は、2年を上回る調整母集団Cペプチド平均2−h AUCを示す。アバタセプトを投与された患者は、プラセボに割り当てられた患者よりも、6、12、および18ヶ月での平均AUCが有意に高く、集計のすべての時点にわたっていた(p=0.0022)。Cペプチド減少の遅延に対する処置効果を算出するために、我々は経時的に処置群によって平均CペプチドAUCの予測母平均を算出した(図2)。直線は、6、12、18、および24ヶ月時にMMTTからの利用可能なデータすべてを用いて、混合線形モデルのあてはめに基づいている。傾きと処置との間の相互作用項の適合における改善を試験したところ(すなわち、2種類の処置群が異なるCペプチド崩壊速度を有したという証拠を試験)、この結果は有意でなかった(p=0.85)。したがって、同一の傾きを仮定しているより単純なモデルを用いた。さらに、図2はこれらの結果を示す。したがって、プラセボ群の平均における推定遅延時間と同じレベルまで落ちるアバタセプト群の平均における推定遅延時間は、9.6ヶ月(95%CI 3.47〜15.6)であった。24ヶ月の評価によって、アバタセプト群の患者(32%)は、プラセボ群の患者15人(43%)と比較して、0.2nmol/L未満のAUCピーク刺激Cペプチドを有した(図3)。0.2nmol/L未満であるピークCペプチド落下の調整された相対的(アバタセプト群とプラセボ群との間)リスクは、0.433(95%CI0.218〜0.861)であった。追跡調査の24ヶ月の間に、アバタセプト群はプラセボ群よりも、低い補正平均HbA1c(図4Aおよび図4B)を有した(集計内のすべての時点で、p=0.002)。しかし、HbA1cはベースラインよりも低かった。それにもかかわらず、ベースラインの差の補正後さえ、24ヶ月に関する処置群差は、残存する(p=0.0071)。試験終了時、アバタセプトの患者34人(47%)は、プラセボの8人(26%)と比較して、HbA1cが7%未満であった。すべての患者の86%が18歳未満であったので、これは特に注目に値する。この群では、このHbA1cは、年齢別ADAがHbA1cを目標とするということである。アバタセプト群の参加者は本研究の間、いくつかの時点(6ヶ月および12ヶ月)でインスリン投与量が少なかった。しかし、24ヶ月では、2つの群のインスリン投与量は類似していた(図4Aおよび図4B、24ヶ月目でp=NS、しかし、より早い時点での差を理由として、集計内の全ての時点に関してp=0.040)。
【0107】
図5は、年齢、性別、人種、ベースラインCペプチド、ベースラインインスリン使用、ベースラインHbA1c、およびHLA型に対する処置効果の均一性検定の結果を示す。白人でない参加者におけるアバタセプトの明らかな有害作用は、仮説を立てることになるかもしれない。しかし、群の大きさは小さかった。
【0108】
表2および表3は、安全性と有害事象をまとめたものである。アバタセプトは忍容性が高かった。注入関連の有害事象は低頻度(患者27人が関与する2514回の注入のうち47回[2%])で生じ、臨床的に有意ではなかった。これらのうち、アバタセプトの患者77人のうちの17人(22%)に36の反応が生じ、11の反応がプラセボの患者35人のうちの6人(17%)に生じた(フィッシャー正確検定による参加者の比率についてp=0.62)。全体の有害事象率(検査室異常を含む)は、2群間の差が無く低かった。具体的には、感染(EBVを含む)の増加は無く、または好中球減少症の増加は無かった(生じたのはアバタセプトの患者7人[9%]、プラセボの5人[14%])。有害事象として報告される7例の低血糖があり、そのうちの2つは重篤な低血糖(各群に1例)であった。表2は、有害作用の最悪等級による患者数を示す。
【表2】
【0109】
データは、n(%)である。処置群による最悪等級は、ウィルコクソン順位和検定と統計学的に異ならなかった。*事故死(研究に無関係)。表3は、事象の数と有害事象別の患者とを示す。
【表3】
【0110】
データは、nまたはn(%)である。処置群による有害作用カテゴリーは、片側(アバタセプト群ではより高い頻度の代わり)フィッシャー正確検定で試験した。全身症状だけは、有意だった(p=0.049)。*事故死(研究に無関係)。†低血糖以外。
【0111】
結果は、アバタセプトによる2年を上回る共刺激調節は、9.6ヶ月までの発症間もないI型糖尿病のβ細胞機能の減少を遅らせることを、示している。初期の有益な効果は、疾患経過がおそらく数年間進行中だった場合であっても、T細胞活性化が依然としてI型糖尿病の臨床診断の前後に生ずることが示唆される。しかし、24ヶ月にわたるアバタセプトの連続投与にもかかわらず、6ヶ月から24ヶ月までの時間間隔を含んだ混合モデルの結果に基づいて、アバタセプト群のβ細胞機能の低下はプラセボ群のそれに匹敵する。β細胞機能におけるこの後続減少は、我々に疾患の臨床経過が進行するにつれて、継続的なT細胞活性化がおさまると推測させる。にもかかわらず、プラセボ群との差は、投薬の間、維持される。さらに観察することで、月々のアバタセプト注入を停止した後でも有益な効果が続くかどうかが立証されよう。これらの患者の追跡は、薬の有益な効果が少なくとも1年間にわたる投薬を越えて続くことを示している。
【0112】
有害事象において2群間に差が無く、アバタセプトは忍容性が高かった。しかし、臨床適用性に対する潜在的限界は、アバタセプト処置の3ヶ月以内に生ワクチンを使うことができないということである。この因子は、目標集団の幼齢を鑑みて重要かもしれない。主作用は、β細胞機能の低下のその後の再開で処置の開始の後早く起こるようである。このパターンは、抗CD3、抗CD20、およびGAD−65ワクチンの効果を思わせ、それらの全てが対照群の場合に匹敵するβ細胞機能の減少が後に追従するある程度の有効性を示した。しかし、採用した他のインターベンションとは異なり、ほとんどこれといった副作用がないことから、このアプローチは目立つ。この知見は、T細胞活性化が顕著であるという診断後に早い好機があるという我々の認識と一致する。我々の研究において24ヶ月目のアバタセプトによる平均AUC Cペプチドがプラセボによるものよりも59%高いということは、他のそれらのインターベンションで見られるものと類似しているが、研究を直接比較するのは難しい。その理由として、年齢、無作為化時の疾患期間、およびベースラインHbA1cを含む重要なベースライン特性に差があるからである。さらに、我々の研究は、それらの研究と以下の点で異なる。すなわち、本研究の全体を通じてアバタセプトを連続投与し、一方、抗CD3、抗CD20、GAD−65ワクチンの場合、薬の投与は、無作為化後2〜4週以内に完了した。重要なことは、我々の研究は、短期間処置プロトコルは2年を上回るCペプチド分泌を維持するのに十分かどうか、または、処置の継続が2年を越えて必要であるかどうかを確証するべく、設計されなかったとことである。アバタセプトによる経過が完了した全患者で、本研究の進行中の追跡調査期間は、改善されたCペプチド分泌が本剤の中断後も持続し、かつどれぐらい長く持続するかを調査する。1回の抗CD3試験における患者の長期追跡調査は、処置群とプラセボ群との間のCペプチド分泌の差が3年後に減弱していることを示した。このことは、アバタセプトの場合は異なる。1年おきの処置に関するデータは、有益な効果が維持されており、アバタセプト処置群とプラセボ群との間のCペプチド温存の差は減少しなかった(3年目においてアバタセプト群はプラセボ群よりも62%多くCペプチドを有する)。
【0113】
アバタセプト群において、平均HbA1cは、試験期間中、プラセボ群よりも低く、たとえベースラインでも、より低かった。研究参加者96人(86%)が18歳またはそれ以下であったことから、アバタセプト処置群において18ヶ月間にわたってHbA1cが7%未満に維持されていることは、注目に値する。このレベルでのHbA1cの臨床的重要性は、文書で十分に裏付けられている(The Diabetes Control and Complications Trial Research Group. N Engl. J Med 1993; 329: 977-86)。インスリン使用は2群で類似しており、HbA1cの差に関与しなかった。我々の試験では、I型糖尿病の発症間もないアバタセプト処置患者は、試験薬投与2年間の間、Cペプチドで測定される内因性インスリンの産生がより多かった。これらの患者の進行中の追跡調査において、アバタセプト中断後のこれらの効果の持続時間を試験した。1年おきの治療データは、アバタセプト群において3年目の有意に良好なHbA1cを含むアバタセプトの有益な効果が投薬後少なくとも1年間にわたって持続することを示している。患者は、さらに経過観察されている。アバタセプトを2年以上投与することで、I型糖尿病患者で優れた安全性プロフィールが示された。その主作用は、処置の開始の後早く起こると思われる。しかし、この薬が自己免疫を遅くする際にどの程度自己免疫プロセスに有効でありえるかについて調べるためにさらなる研究が必要である。これらのアプローチは、アバタセプトの皮下バージョンで、より容易に試験可能である。実施例2 インスリンB鎖の調製
【0114】
ヒトインスリンの作製を、標準的な固相ペプチド合成(SPPS)方法によりおこなった。この方法は、本明細書中に説明され、かつ参照により本明細書中に援用される米国特許出願公開第2006/0183670号で説明されている。ABI(Applied Biosystem Inc.)−Fmoc/Thrをタンパク質合成で用いられるアセンブリ戦略とした。Fmoc基は、アミノ酸のα−アミノ基を保護する。ペプチドの合成は、固体担体(樹脂)に結合した開始アミノ酸のα−カルボキシル基を用いて、C末端からN末端に向けておこなった。この合成に用いた樹脂は、大きさが400〜1000ミクロンであり、かつNMP(N−メチルピロリドン)による洗浄後に膨潤する不溶性支持体である、ポリスチレンビーズである。この樹脂を、第1のアミノ酸(Thr)でC末端からプレロードした。
【0115】
2つのステップを、滅菌条件下での鎖合成および精製とした。
【0116】
鎖合成の第1のステップは脱保護または保護基の除去である。Fmoc保護基を、22%ピペリジンによって除去する。ピペリジン/NMPによりFmoc基の除去を介して形成されるカルバミン酸塩の電気伝導度フィードバックは、結合有効性を示した。脱保護の後、次のアミノ酸が活性化されて、成長するペプチドの脱保護されたアミノ末端に結合してペプチド結合を形成する。入って来るアミノ酸カルボキシル基の活性化を、HBTU/HOBtによって達成した。結合と結合との間に、樹脂を膨潤させて残基を洗い落とすメタノールおよびNMP(N−メチルピロリドン)で、カラムを洗浄した。
【0117】
所望の長さのペプチドが達成されるまで、サイクルを繰り返した。樹脂からNMPを除去するDCM(ジクロロメタン)により洗浄し、続けて、蒸発して乾燥する除去容易な溶媒である高揮発性メタノールで徹底的に洗浄するステップを実施した。
【0118】
樹脂からの分割と側鎖保護基の除去。分割混合物を調製した(0.75g結晶フェノール+0.25gエタンジチオール+0.5mlチオアニソールl+0.5mlは、脱イオンHO+10mlトリフルオロ酢酸)。乾燥ペプチド樹脂を、1.5時間、氷浴の冷フラスコでインキュベートした(10ml混合物/100〜150mgペプチド樹脂)。次に、高真空下、ガラス漏斗濾過によって、ペプチドを反応混合物から単離した。ペプチドを冷メチルt−ブチルエーテル(MTBE)で沈殿させ、真空乾燥した。
【0119】
滅菌条件下の精製ステップを逆相HPLCでおこなった。緩衝A=0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)および緩衝B=70%アセトニトリル、30%のHO、0.09%トリフルオロ酢酸(TFA)。C18カラムを用いて、サンプルの溶離は、疎水性に基づいた(疎水性サンプルは、より早く溶出する)。ピークの検出を、214nmでペプチド結合の吸光度測定によって実施し、質量分析法により同定した。所望の画分を滅菌バイアルにプールし、該画分をAAA(アミノ酸分析)分析rpHPLCおよび質量分析法用に採取したサンプルとともに凍結乾燥した。
【0120】
生じたB鎖の品質管理試験の結果によれば、pH3.5〜4.5の透明な溶液であり、Bio-Rad Assay Bio-Rad Laboratoriesを用いて測定されたタンパク質濃度が3.5〜4.5mg/ml(3.82mg/ml)であることが示された。ヒトインスリンRIAの免疫反応性/効力は、Diagnostic System Laboratorieskitを用いたところ、10〜30uU/mgタンパク質/ml(80.2μU/ml)であった。HPLCを使用して純度を測定し、<500ppm(<20ppm)に対応して少なくとも95%(>99%)の領域p %を得た。B鎖の同一性を、質量分析法を用いて確認したところ、質量が3400〜3450Da(単一主要ピーク3428.7Da)であることが示された。アミノ酸配列分析装置によってヒトB鎖インスリン配列が30個のアミノ酸からなることが示された。パイロジェンを標準的なUSP方法で測定したところ、パイロジェンが無であるという要件を満たしている。パイロジェンが無である場合の滅菌性も測定し、そのペプチドが無菌であるとわかった。
【0121】
インスリンB鎖を処理して、その溶解性を高めること、例えば、その疎水性の効果を無効にすることができる。このことは、二量体化を回避するべく、酸性化によって、および/または、4M尿素を用いて、および/または、DTTによりシステインを還元することによって、実行し得る。実施例3−インスリンB鎖の投与
【0122】
糖尿病を起こしやすいBBDP/WORラット(NODマウスとは別のI型糖尿病の唯一の他の動物モデル)に対して、該ラットの一生涯において糖尿病およびインスリン炎に罹患していない時期に、IBC(IFAのインスリンB鎖)ワクチンを投与したところ、低用量も高用量も、初期のインスリン炎または糖尿病を誘発しなかった。
【0123】
BBDP/WORラット(ラット6匹/群)から得た血清サンプルをインスリン抗体について分析した。有意差が、媒体対照群と100μgインスリンB鎖/ラット投与量および500μgインスリンB鎖/ラットとの間にあった(23.6μU/ml+3.9SE対37.9μU/ml+4.5SEおよび44.5μU/ml+3.3SE、それぞれの有意差p=0.03およびp=0.002、インスリン抗体価において低用量群と高用量群との間に有意差はない)。IBCワクチンを、動物に注射する前に新しくて調製した。標本は、1日目および14日目にサンプリングした。
【0124】
パイロジェンについても、標準的なUSP方法にしたがってインスリンB鎖を分析し、このインスリンB鎖がパイロジェン非存在の要件を満たしていることを報告した。
【0125】
ヒト使用に承認されたIFAを用いたので、これらの介入戦略を、ヒト糖尿病で直接適用することができる。IFAは、ヒトにおいて安全かつ有効である。IFAは、FDAで承認されたHIVおよび他のワクチン接種試験(バージニア大学でのペプチド系黒色腫ワクチン)で、現在用いられている。潜在的な局所有害作用は、一般に用いられるいずれのアジュバントワクチン接種(ミョウバンが現在ヒトワクチンで使用されている)にも類似しており、そのような副作用として、硬化、中等度の疼痛、および微熱を挙げることができる。注射は、深い筋肉内腔に少量(1ml)投与し得るので、局所有害作用が最小化される。
【0126】
組成物は、2つの成分、すなわちアジュバントおよびインスリンB鎖を含み、この組成物を、ヒト投与に適した条件下で調製した。第1の成分は、実施例2で説明したように調製および可溶化されたインスリンB鎖である。
【0127】
第2の成分は、IFA、例えばモンタナイドISA51(Seppic Inc. France; Drug Master-file No: 10870DMF)または同等の組成物である。このIFAを我々の動物試験で使用したところ、全身性または有意な局所有害作用を示さなかった。注射剤は、18ゲージのスペースコネクタ付き高圧滅菌シリンジを用いて、クリーンベンチ内の滅菌条件下で、 エマルジョンとして投与直前に新しく調製した。2mgのインスリンB鎖(0.5ml)を、モンタナイドISA51(0.5ml)と混合した。同等の組成物を用いることができる。エマルジョンは、50/50の(重量比)エマルジョンである。成人ヒト対象の大腿部にエマルジョンを1mlの量で筋肉注射した。
【0128】
本明細書中に説明されるワクチンに対して包括的な毒性学/安全性研究を実施した。インスリンB鎖/IFAワクチンの筋肉注射をオスBBDP/WORおよびSprague−Dawleyラットに対して、1日目、7日目、および14日目に100および500μg/ラットの用量で投与し、その後、14日間の観察したところ、臨床観察、体重、摂取量、臨床病理(血液学、凝固、および臨床化学)、ならびに臓器重量に対する毒性学的な有意な効果は得られなかった。肉眼的評価(全ての動物)および顕微鏡的評価(低用量群、高用量群、および媒体対照群のBBDP/WORラット)によれば、注射部位に変化が生ずることが示された。実施例4−併用の前臨床研究
【0129】
完全に糖尿病であるNODマウスにおけるヒトインスリンB鎖ワクチン併用療法によるCTLA4−Igは、これらの動物で糖尿病を改善するようには思えない。したがって、この併用療法では、すでに糖尿病に罹患しているNODマウスは治癒されなかった。抗CD3のような強力な免疫抑制のみがNOD集団の糖尿病を治癒すると既に観察されていたので、そのような結果は、驚くべきものではない。しかし、単独でアバタセプトまたはB鎖ワクチンであるより、生存はB鎖ワクチンが続くアバタセプトから始めている併用療法でより良好だった。このように、臨床的に有用効果を提供した。NODの糖尿病は、ヒトにおける糖尿病と比較して、顕症期の自己免疫プロセスである。糖尿病発症直後のNODマウス(>10週齢; Lenschow他)に単独投与されたアバタセプトは、これらの動物にいて疾患の過程を変えることなかった。しかし、アバタセプト単独は、糖尿病の臨床発症後でさえ、ヒトにおいて非常に有効であった。したがって、この研究でNOD糖尿病を治癒しなかったアバタセプトは、本明細書中に説明された併用が進行期(すなわち、後臨床発症)においてさえ、ヒト疾患において非常に有効であるという知見に対して、関連性が低い。したがって、処置効果は、ヒトにおいて臨床診断の前、または後に期待される(NODにおいて生存期間が延びることは、それらの自己インスリンの産生がより長く続いたことを意味)(Clin Immunol. 2012 Mar;142(3):402-3を参照)。実施例5−ヒト試験
【0130】
第1相安全性臨床試験で新たにI型糖尿病であると診断された患者に対して、ヒトインスリンB鎖含IFA(モンタナイドICA51)を投与した。プラセボを対照とした二重盲検試験では、対象に対して、診断3ヶ月以内に単回筋肉内注射として、2mgヒトインスリンB鎖含IFAまたは媒体含IFAを投与した。患者の経過観察を2年間おこなった。ワクチン接種は、優れた安全プロフィールを示した。ワクチンは、非常に望ましい免疫効果を誘発し、インスリンB鎖特異的調節性T細胞を生成した。抗原特異的調節性T細胞は、自己免疫を制御して、抑制する「聖杯」と考えられる。この研究に関する詳細は、本明細書中に援用されるOrban et al., Lancet 2011; 378 (9789): 412-9に見出される。
【0131】
本明細書中で使用される節の見出しは、構成目的のみのためであり、決して記載の主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0132】
出願人の教示は、様々な実施形態に関連して説明されるが、それは、出願人の教示がそのような実施形態に限定されることを意図していない。当業者によって理解されるように、逆に、出願人の教示は、様々な代替物、改変物、および均等物を包含する。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5