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特許6552145地下シェルター及び地下シェルターの築造工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6552145
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】地下シェルター及び地下シェルターの築造工法
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/14 20060101AFI20190722BHJP
   E02D 29/05 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   E04H9/14 B
   E02D29/05 D
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-155517(P2018-155517)
(22)【出願日】2018年8月22日
【審査請求日】2019年4月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517357826
【氏名又は名称】株式会社シェルタージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭彦
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特公平03−024526(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/14
E02D 29/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削側面に当接した状態で築造される平面視矩形の外壁と、前記外壁の内面に当接して築造されるコンクリート壁とが設けられる地下シェルターであって、
前記外壁は、前記掘削側面に当接して設けられる対向する一対の第1パネル、及び第2パネルと、一対の枠体とを備え、
前記枠体は、前記第1パネルの両端部をスライド可能に嵌合させるとともに、前記一対の第2パネルの一方の端部をスライド可能に嵌合させる
ことを特徴とする地下シェルター。
【請求項2】
前記枠体は、一対の支柱と、前記一対の支柱に架け渡された複数の横梁とを有し、
前記支柱は、前記第1パネルのスライド方向に沿って第1スライド溝が設けられた第1ガイドレールと、前記第2パネルのスライド方向に沿って第2スライド溝が設けられた第2ガイドレールと、が配設され、
前記第1パネルの端部は、前記第1ガイドレールにスライド可能に嵌合し、前記第2パネルの端部は、前記第2ガイドレールにスライド可能に嵌合する
ことを特徴とする請求項1に記載の地下シェルター。
【請求項3】
前記第2ガイドレールの先端に、前記第2スライド溝の間隔を狭めるための突起体が設けられ、
前記第2パネルの端部に前記第2ガイドレールにスライド可能に嵌合する嵌合部が設けられ、
前記嵌合部は、前記突起体によって前記第2ガイドレールから抜ける方向への移動が制限される
ことを特徴とする請求項2に記載の地下シェルター。
【請求項4】
前記コンクリート壁の厚さは、20cm〜50cmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の地下シェルター。
【請求項5】
前記コンクリート壁の内面に当接する鋼板壁が設けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の地下シェルター。
【請求項6】
前記第1パネル、及び第2パネルは、下層第1パネル、及び下層第2パネルと、前記下層第1パネル、及び前記下層第2パネルのスライド方向に積層される積層第1パネル、及び積層第2パネルを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の地下シェルター。
【請求項7】
予掘りされた地盤に、対向する一対の枠体を立設する工程と、
前記一対の枠体に第1パネル、及び第2パネルをスライド可能に嵌合させて、外壁を築造する工程と、
前記地盤を掘削しながら前記一対の枠体を交互に押し込むことで、前記外壁を、掘削側面に当接した状態で計画深さまで沈降させる沈降工程と、を備えることを特徴とする地下シェルター築造工法。
【請求項8】
予掘りされた地盤に、対向する一対の枠体を立設する工程と、
前記一対の枠体に下層第1パネル、及び下層第2パネルをスライド可能に嵌合させて、下層外壁を築造する工程と、
前記地盤を掘削しながら前記一対の枠体を交互に押し込むことで、前記下層外壁を、掘削側面に当接した状態で沈降させる沈降工程と、
前記下層第1パネル、及び下層第2パネルに積層第1パネル、及び積層第2パネルを積層して外壁を築造し、前記沈降工程を繰り返すことで、前記外壁を前記掘削側面に当接した状態で計画深さまで沈降させる工程と、
を備えることを特徴とする地下シェルター築造工法。
【請求項9】
前記外壁の内面側に鋼板壁を配設する工程と、
前記外壁と、前記鋼板壁との間に生じる隙間にコンクリートを打設する工程と、
を備えることを特徴とする請求項7または8のいずれか1項に記載の地下シェルター築造工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削側面に当接する外壁を備えた核シェルターとして使用可能な地下シェルター、及び地下シェルターの築造工法に関する。
【背景技術】
【0002】
関東大震災や阪神・淡路大震災では、地震に起因する火災、いわゆる地震火災が同時多発的に発生し甚大な被害をもたらした。東日本大震災では、地震により各地で建物の倒壊・火災が相次ぎ、さらに、過去最大級の津波・津波火災が発生したことによって、多くの尊い人命が失われた。今後も、首都直下型地震・南海トラフ大地震等の発生が予想されている。
【0003】
地震火災は、本震直後から出火し、その件数は建物倒壊数に比例して増大するとされる。また、消防力の分散、建築倒壊や道路損壊による交通障害の発生、消火栓や水道管の破損による水利不足、交通渋滞などの要因が複合して消火活動が阻害されることから、延焼範囲は拡大し、鎮火するまでの時間は長引くことになる。
【0004】
今後発生が予想される大都市直下地震では、すでに都市の近代化が進み十分な対策が取られていることから、関東大震災や阪神・淡路大震災のように甚大な被害をもたらさないとも考えられる。しかし、大都市においても、現時点で木造住宅密集地は多数存在し、しかも関東大震災当時と比べ過密な状態となっている。
【0005】
木造住宅密集地域で発生する地震火災は延焼速度が早く、かつ同時多発的に巨大な火炎が迫ってくる危険があるため、逃げ遅れないために早期に避難することが重要である。しかし、安全な場所に避難しようとしても、道路は避難する人々で前に進めない事態が想定される。仮に、前に進めたとしても倒壊した家屋によって道路が塞がれ、さらに橋梁の倒壊等により避難路が確保できない事態も予想される。地震災害から免れるためには、地震発生直後にシェルターに迅速に避難することが有効な手立てとなる。
【0006】
さらに、近年の緊迫した国際情勢に鑑みると、シェルターは地震等の災害のみならず、放射能被爆被害に対応可能な性能を具備することが求められる。
【0007】
このような状況に鑑みると、地震災害のみならず、放射能被爆災害に対応可能なシェルターの普及が求められる。しかし、日本での核シェルターの普及率は、わずか0.02%に過ぎない。ちなみに、スイス、イスラエルでは100%の普及率である。
【0008】
必要性が認められるにもかかわらず、日本で放射能被爆災害に対応可能な防災シェルターが普及しない要因として、設置場所が限られること、設置に長期間を要すること、設置費用が高額であることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−297898号公報
【特許文献2】特開2009−221673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、住宅敷地内等の限られたスペースに設置できるとともに、地震・津波・火災災害、及び放射能被爆被害に避難可能な家庭用の地下シェルターを、短工期に、かつ安価に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、掘削側面に当接した状態で築造される平面視矩形の外壁と、外壁の内面に当接して築造されるコンクリート壁が設けられる地下シェルターであって、外壁は、掘削側面に当接して設けられる対向する一対の第1パネル、及び第2パネルと、一対の枠体を備え、枠体は、第1パネルの両端部をスライド可能に嵌合させるとともに、一対の第2パネルの一方の端部をスライド可能に嵌合させることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、外壁は、掘削側面に当接した状態で構築されるので、山留支保工を用いることなく外壁を築造できる。その結果、限られたスペースに設置可能であるとともに、工期短縮、及びコストダウンを図れる。また、外壁の内面に当接してコンクリート壁が設けられるので、コンクリート壁を一定の厚さ以上にすることで、本発明に係る地下シェルターは、核シェルターとしても利用可能である。また、枠体は、第1パネルの両端部をスライド可能に嵌合させるとともに、一対の第2パネルの一方の端部をスライド可能に嵌合させるので、外壁の形状を保持した状態でシェルターを築造できる。
【0013】
好ましくは、枠体は、一対の支柱と、一対の支柱に架け渡された複数の横梁とを有し、支柱は、第1パネルのスライド方向に沿って第1スライド溝が設けられた第1ガイドレールと、第2パネルのスライド方向に沿って第2スライド溝が設けられた第2ガイドレールが配設され、第1パネルの端部は、第1ガイドレールにスライド可能に嵌合し、第2パネルの端部は、第2ガイドレールにスライド可能に嵌合する。
【0014】
この構成によれば、第1ガイドレール、及び第2ガイドレールが設けられた一対の梯子状の枠体に、第1パネル、及び第2パネルをスライドさせることで、外壁を掘削壁面に当接した状態で容易に組み付けできる。
【0015】
好ましくは、第2ガイドレールの先端に、第2スライド溝の間隔を狭めるための突起体が設けられ、第2パネルの端部に第2ガイドレールにスライド可能に嵌合する嵌合部が設けられ、嵌合部は、突起体によって第2ガイドレールから抜ける方向への移動が制限される。
【0016】
この構成によれば、第2ガイドレールの先端に、第2スライド溝の間隔を狭めるための突起体が設けられ、第2パネルの端部に第2ガイドレールにスライド可能に嵌合する嵌合部が設けられ、嵌合部は、突起体によって第2ガイドレールから抜ける方向への移動が制限されるので、第2パネルが第2ガイドレールから逸脱することを防止できるとともに、一対の枠体間の距離を一定の間隔で保持できる。
【0017】
好ましくは、コンクリート壁の厚さは、20cm〜50cmである。
【0018】
この構成によれば、コンクリート壁の厚さは、20cm〜50cmであるので、所定の放射線遮蔽性能を具備できる。
【0019】
好ましくは、コンクリート壁の内面に当接する鋼板壁が設けられる。
【0020】
この構成によれば、外壁と鋼板壁の間にコンクリート壁が配設されるので、コンクリートを打設するときに必要となる型枠を、鋼板壁とすることで、型枠の脱型作業が不要となる。その結果、工期短縮を図れる。
【0021】
好ましくは、第1パネル、及び第2パネルは、下層第1パネル、及び下層第2パネルと、下層第1パネル、及び下層第2パネルのスライド方向に積層される積層第1パネル、及び積層第2パネルを有する。
【0022】
この構成によれば、第1パネル、及び第2パネルは、下層第1パネル、及び下層第2パネルと、下層第1パネル、及び下層第2パネルのスライド方向に積層される積層第1パネル、及び積層第2パネルを有するので、層状に分割されたパネルを積層することで容易に外壁を築造することができる。
【0023】
本発明の他の態様は、地下シェルター築造工法であって、予掘りされた地盤に、対向する一対の枠体を立設する工程と、一対の枠体に第1パネル、及び第2パネルをスライド可能に嵌合させて、外壁を築造する工程と、地盤を掘削しながら一対の枠体を交互に押し込むことで、外壁を、掘削側面に当接した状態で計画深さまで沈降させる沈降工程と、を備えることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、外壁を掘削側面に当接した状態で計画深さまで沈降させるので、山留支保工を用いることなく容易に外壁を築造できる。その結果、限られたスペースでの地下シェルターの設置が可能となるとともに、工期短縮、及びコストダウンを図れる。
【0025】
本発明の他の態様は、地下シェルター築造工法であって、予掘りされた地盤に、対向する一対の枠体を立設する工程と、一対の枠体に一対の下層第1パネル、及び下層第2パネルをスライド可能に嵌合させて、下層外壁を築造する工程と、地盤を掘削しながら一対の枠体を交互に押し込むことで、下層外壁を、掘削側面に当接した状態で沈降させる沈降工程と、下層第1パネル、及び下層第2パネルに積層第1パネル、及び積層第2パネルを積層して外壁を築造し、沈降工程を繰り返すことで、外壁を掘削側面に当接した状態で計画深さまで沈降させる工程を備えることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、外壁を掘削側面に当接した状態で計画深さまで沈降させるので、山留支保工を用いることなく容易に外壁を築造できるとともに、小型化されたパネルを使用することで取り回しが容易となり、現場作業の効率化を図ることができる。
【0027】
好ましくは、さらに、外壁の内面側に鋼板壁を配設する工程と、外壁と、鋼板壁との間に生じる隙間にコンクリートを打設する工程を備える。
【0028】
この構成によれば、コンクリートは、外壁と、鋼板壁との間に生じる隙間に打設されるので、型枠の脱型作業が生じない。その結果、工期短縮が図れる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、核シェルターとして利用可能な地下シェルターを、限られたスペースで設置できるとともに、短工期、低コストで提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】地下シェルターの正面断面図である。
図2】同、平面図である。
図3】外壁を構成する部材の配置を説明する平面図である。
図4】(a)は枠体の正面図であり(b)は、同側面図である。
図5】(a)は第1パネルの正面図であり、(b)は同側面断面図である。
図6】(a)は第2パネルの正面図であり、(b)は同側面断面図である。
図7】(a)〜(d)は外壁の築造工法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0032】
図1、2に示す通り、地下シェルター100は、貯水可能な天井130、側壁110、及びコンクリート製の床120で構成されて、これらが協働して避難空間150を画成する。避難空間150の天井近傍に断熱体160が設けられている。ここで、地下シェルター100とは、避難空間150が、地中に設けられているシェルターをいう。
【0033】
側壁110は、外壁111、及びコンクリート壁51と鋼板壁52を有する内壁112で構成される。
【0034】
図3に示す通り、外壁111は平面視矩形であり、枠体3と、一対の第1パネル1、1、及び一対の第2パネル2、2を有し、掘削側面170に当接した状態で立設している。第1パネル1、及び第2パネル2は、枠体3にスライド可能に嵌合して、枠体3を介して固定されることで、平面視矩形の形状を安定して保持する。これにより、地盤140からの土圧を受け止めて、掘削側面170の崩落を防止できる。なお、第1ガイドレール31、及び第2ガイドレール32は図3にのみ示す。
【0035】
図4に示す通り、枠体3は、側面視で梯子状の形状であり、一組の支柱33、33と、2本の横梁34を有している。横梁34は、一組の支柱33、33間に水平に架け渡されて、剛結されている。これにより、枠体3は剛性の高い強固な構造となる。
【0036】
支柱33は、支柱本体33aと先細り形状の下端部33bで構成される。これにより掘削された地盤140への沈降が容易となる。横梁34は、一対の第2パネル2、2がそれぞれ受ける土圧を、支柱33を介して支持し、第2パネル2が避難空間150側に倒れることを防止するとともに、支柱33に発生する応力を低減するためのものである。横梁34は3本以上であってもよい。横梁34の本数、取り付け位置、及び断面形状等は、掘削側面170の高さ、及び支柱33の断面形状等を勘案し、適宜定める。なお、本実施形態では横梁34は支柱33に剛結されているが、ピン接合等により支柱33と横梁34を現場で組み立て可能な剛結構造としてもよい。支柱33、及び横梁34のそれぞれを搬入して、現場で組み立てることができ、輸送が容易となる。
【0037】
図3に示す通り、支柱本体33aは、第1ガイドレール31、及び第2ガイドレール32が、スライド方向S(支柱本体33aの立設方向)に沿って設けられている。第1ガイドレール31、及び第2ガイドレール32は、それぞれ、第1パネル1、及び第2パネル2をスライド可能に嵌合するためのものである。
【0038】
第1ガイドレール31は、第1ガイド溝31aを画定する。また、枠体3に設けられた一対の第1ガイドレール31、31は、第1ガイド溝31a、31aが、対向する方向に開口する状態でそれぞれの支柱本体33a、33aに配設されている。第1パネル1の両端部を第1ガイドレール31、31に挿通し、所定の位置までスライドして配設することで、第1パネル1は、一対の第1ガイドレール31、31の双方に嵌合された状態で、枠体3に保持される。一組の支柱33、33は、横梁34で剛結されているため、第1パネル1が第1ガイド溝31aから抜け出ることはない。
【0039】
第2ガイドレール32は、第2ガイド溝32aを画定する。また、一対の枠体3、3に設けられた第2ガイドレール32は、それぞれの第2ガイド溝32aが、対向する方向に開口する状態(第2パネル2が挿通可能な状態)で配設されている。また、第2ガイドレール32の先端部は、一対の突起体37、37の端部が対向する状態で設けられている。これにより第2ガイドレール32の先端部の幅は、狭められる。
【0040】
第2パネル2の両端部に、スライド方向Sに沿って延びる嵌合部36が設けられている。第2パネル2の厚さは、第2ガイドレール32の先端部の幅と同じであり、嵌合部36の第2パネル2の厚さ方向の幅は、第2ガイドレール32の先端部の幅よりも厚く設定されている。
【0041】
嵌合部36、36は、一対の枠体3、3に対向して設けられる第2ガイドレール32、32に挿通され、嵌合されて保持される。すなわち、一対の枠体3、3は、第2パネル2を介して接続される。
【0042】
このように、第1パネル1、及び第2パネル2が枠体3を介して相互に固定されることで、外壁111は地盤140の土圧を受け止めて、掘削側面170の崩壊を防止するとともに、安定して断面視矩形の平面形状を保持できる。
【0043】
図5(a)(b)に示す通り、第1パネル1は、第1鋼板41、第1外縁補剛材41a、及び第1中間補剛材41bを有している。第1鋼板41は正面視矩形の平板であり、一方の面は掘削側面170に当接し、他方の面は、第1外縁補剛材41a、及び第1中間補剛材41bが溶接によって固定されている。第1外縁補剛材41aは、断面視コ字形の部材であり、第1鋼板41の外縁部(両端部及び上下端部)に四方に組まれ溶接によって固定されている。第1中間補剛材41bは、断面視コ字形の部材であり、第1外縁補剛材41aの内部領域に水平に延びて溶接によって固定されている。これにより第1パネル1は、充分な剛性を具備するとともに、地盤140からの土圧を受け止める強度を確保できる。第1外縁補剛材41a、及び第1中間補剛材41bは、汎用の溝形鋼とすることが好ましい。これにより、第1パネル1の製作コストを低減できる。
【0044】
図6(a)(b)に示す通り、第2パネル2は、第2鋼板42、第2外縁補剛材42a、第2中間補剛材42b、及び嵌合部36を有している。第2鋼板42は、正面視矩形の平板であり、一方の面は掘削側面170に当接し、他方の面は、第2外縁補剛材42a、及び第2中間補剛材42bが溶接によって固定されている。第2外縁補剛材42aは、断面視コ字形の部材であり、第2鋼板42の外縁部(両端部及び上下端部)に四方に組まれている。第2中間補剛材42bは、断面視コ字形の部材であり、第2外縁補剛材42aの内部領域に水平に延びて配設されている。これにより第2パネル2は、充分な剛性を具備するとともに、地盤140からの土圧を受け止める強度を確保できる。第2外縁補剛材42a、及び第2中間補剛材42bは、汎用の溝形鋼とすることが好ましい。これにより、第2パネル2の製作コストを低減できる。
【0045】
第2パネル2の両端部の縁端に、スライド方向Sに沿って延びる正面視矩形の嵌合部36が溶接によって固定されている。嵌合部36は、第2ガイド溝32aに収容された状態で、第2ガイドレール32に嵌合している。嵌合部36の幅は、第2ガイドレール32の先端部の間隔よりも厚く設定されている。
【0046】
第2パネル2のそれぞれの端部は、対向する一対の枠体3,3に設けられた第2ガイドレール32に嵌合されている。一対の枠体3、3は相互に固定されていないため、枠体3の相対的な移動によって、第2パネル2は、対向する枠体3の方向に抜け落ちる可能性がある。しかし、上述した通り、嵌合部36の幅は、第2ガイドレール32の先端部に設けられる突起体37、37の間隔よりも厚く設定されているため、突起体37、37によって、嵌合部36の移動は制限され、第2ガイド溝32aから抜け落ちることはない。
【0047】
第1パネル1、及び第2パネル2は、図7に示す通り、複数のパネルをスライド方向Sに積層する構造としてもよい。具体的には下層第1パネル1a、及び下層第2パネル2aに積層第1パネル1b、及び積層第2パネル2bをスライド方向Sに積層する構造である。それぞれのパネルを小型化することで取り回しが容易となり、現場作業の効率化を図ることができる。また、積層第1パネル1b、及び積層第2パネル2bは複数のパネルで構成してもよい。パネル枚数は、掘削深さ、現場での取り回しの容易さ等を勘案して適切に定めることが好ましい。
【0048】
図1に示す通り、外壁111の内面(避難空間150側の面)に当接するコンクリート製のコンクリート壁51が設けられている。さらに、コンクリート壁51の内面に当接する鋼製の鋼板壁52が、設けられている。コンクリート壁51は、地下水を遮水するとともに放射線を遮蔽するためのものである。コンクリート壁51の厚さは20cm〜50cmであることが好ましく、より好ましくは30cm〜50cmである。これにより核シェルターとして用いることが可能な、充分な放射線遮蔽性能を具備する。ここで、コンクリート製とは、無筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造、及び鉄骨コンクリート造をいう。本実施形態におけるコンクリート壁51は、コンクリート製であるが、より好ましくは無筋コンクリート造である。これにより、設置コストを低減できる。
【0049】
鋼板壁52は、コンクリート壁51を築造するとき、打設中のコンクリートを保持するためのものである。すなわち、コンクリート打設時に必要となる型枠の役割を果たす。鋼板壁52はコンクリート打設後も存置することから、型枠と異なり撤去を要しない。これにより、工期の短縮を図ることができる。
【0050】
床120は、掘削底面の不陸を整正して、平坦化を図るとともに、側壁110を支持するためのものである。なお、掘削底面からの湧水が認められる場合は砕石を敷きならして転圧してもよい。床120は、コンクリート製であることが好ましい。
【0051】
天井130はコンクリート製であり、図1,2に示す通り、避難空間150上方に配設される天井本体6と、天井本体6の外縁から垂直に立ち上がる天井フランジ部61を有している。また、天井本体6の中央部には、出入りするための天井開口部62が設けられている。さらに、天井開口部62を開閉するための扉63が取り付けられている。
【0052】
天井本体6は地上に設けられており、天井フランジ部61は、地上から突出している。地面と天井フランジ部61の間に生じる段差は、外周に設けられた盛土64で擦り付けられている。盛土64は、掘削で発生した土を流用してもよい。
【0053】
天井本体6と天井フランジ部61で画定される凹部6aは貯水可能となっている。凹部6aに貯水した水が蒸発するときの潜熱効果によって、火災発生時において、避難空間150の温度上昇を抑制できる。天井フランジ部61の立ち上がり高さは、凹部6aに貯水して満水としたとき、扉63が水没する高さに設定することが好ましい。
【0054】
凹部6aに砕石を敷き詰めてもよい。これにより、凹部6aに起因する段差が解消され、地下シェルター100に避難するとき、往来の障害となることがない。
【0055】
天井本体6は平面視矩形であり、平面視で側壁110を内包している。天井本体6の厚さは20cm〜50cmであることが好ましく、より好ましくは30cm〜50cmである。これにより核シェルターとして用いることが可能な、充分な放射線遮蔽性能を具備する。
【0056】
天井本体6の中央部に、平面視矩形の天井開口部62が設けられている。また天井開口部62を開閉するための扉63が配設されている。
【0057】
扉63はコンクリート製であり、上方に回動して天井開口部62を開閉する。扉63を閉じたときの天井開口部62の水密性を高めるために、扉63の外周に沿って天井本体6に当接する環状のパッキン(図示略)が設けられている。扉63の厚さは20cm〜50cmであることが好ましく、より好ましくは30cm〜50cmである。これにより核シェルターとして用いることが可能な、充分な放射線遮蔽性能を具備する。また、扉63は、上方が開口した鋼製の直方体の本体の内部にコンクリートを充填した構造としてもよい。これにより扉63の強度を高めることができる。
【0058】
避難空間150の上端部に、天井130に当接する状態で断熱体160が設けられている。断熱体160は、火災のとき、避難空間150の内部温度の上昇を抑制するためのものであり、軽量で、断熱効果が高い発泡プラスチック系の断熱素材であることが好ましい。
【0059】
地下シェルター100の築造手順について図7(a)〜(d)を参照して説明する。
【0060】
小型重機を使用して、地盤140を予掘りする。予掘り深さは掘削側面170が自立する深さ以下とする。予掘りした地盤140に、一対の枠体3、3を立設する。立設作業は、一対の枠体3、3間の距離、及び枠体3の垂直性を確認して慎重に行う。
【0061】
下層第1パネル1a、及び下層第2パネル2aを第1ガイドレール31、及び第2ガイドレール32に挿入して嵌合し、外壁111の下層を築造する(図7(a)参照)。
【0062】
外壁111の下層の内面側を小型重機、及び人力で掘削する。掘削は、掘削側面170の安定を確認しながら慎重に行う。次に、一対の枠体3、3を交互に押し込む。この作業を交互に繰り返して、下層第1パネル1a、及び下層第2パネル2aを掘削側面170に当接した状態で、地表近傍まで沈降させる(図7(b)参照)。
【0063】
積層第1パネル1b、及び積層第2パネル2bを、枠体3に設けられた第1ガイドレール31、及び第2ガイドレール32に挿入して嵌合し、外壁111を築造した後、前述した沈降作業を繰り返す(図7(c)、(d)参照)。
【0064】
外壁111を掘削側面170に当接した状態で計画深さまで沈降させた後、掘削底面の転圧を行い、不陸を整正して、平坦化を図る。なお、湧水等が認められる場合は、掘削底面に、砕石を敷き均し転圧する作業を追加してもよい。掘削底面にコンクリートを打設して床120を構築する。
【0065】
外壁111の隙間をコーキングする。セパレータ(図示略)を用い外壁111と所定の間隔を確保した状態で、鋼板壁52を築造する。鋼板壁52は、コンクリート打設のときの内側の型枠として機能するため、別途、型枠を設ける必要はない。なお、鋼板壁52に替えて、コンクリート型枠を築造してもよい。ただし、この場合、型枠の脱型作業が別途必要となる。
【0066】
外壁111と鋼板壁52の間に、コンクリートを打設して、コンクリート壁51を築造する。コンクリート壁51の水密性を向上させるため、打設するコンクリートは、単位水量を可能な限り少なくするとともに、コンクリート打設後十分な湿潤養生を行う。鋼板壁52を型枠として用いる場合は、型枠の脱型作業を要しないことから、打設するコンクリートは長期間に渡り養生された状態が継続する。避難空間150から、型枠支保工を立ち上げ、コンクリートを打設して天井本体6を築造する。その後、天井フランジ部61を築造する。天井本体6に設けられた天井開口部62から断熱体160を搬入して、所定の場所に配設する。天井開口部62に扉63を据え付ける。上述した手順を経て、地下シェルター100を築造できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、放射線被爆災害に対しても避難可能な家庭用のシェルターとして利用できる。特に、設置場所が限定される住宅密集地での活用が期待できるので、産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0068】
1 :第1パネル
2 :第2パネル
3 :枠体
6 :天井本体
31 :第1ガイドレール
32 :第2ガイドレール
33 :支柱
33a :支柱本体
33b :下端部
34 :横梁
36 :嵌合部
37 :突起体
51 :コンクリート壁
52 :鋼板壁
100 :地下シェルター
110 :側壁
111 :外壁
112 :内壁
120 :床
130 :天井
140 :地盤
150 :避難空間
170 :掘削側面
S :スライド方向
【要約】      (修正有)
【課題】限られたスペースに設置できるとともに、地震・津波・火災災害、及び放射能被爆被害に避難可能な家庭用の地下シェルターを、短工期に、かつ安価に提供する。
【解決手段】地下シェルター100は、貯水可能な天井130、外壁111、及びコンクリート製の床120で構成されて、内部に避難空間150が設けられる。側壁110は外壁111、放射線遮蔽性能を具備するコンクリート壁51、及び鋼板壁52で構成される。外壁111は、掘削側面170に当接する一対の第1パネル、及び第2パネルを枠体でスライド可能に嵌合し保持する構造となっている。これにより、外壁111は、掘削側面170に当接した状態で築造可能となり、地盤140からの土圧を受け止めて、掘削側面170の崩落を防止する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7