特許第6552149号(P6552149)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンコール株式会社の特許一覧

特許6552149超音波トランスデューサー及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6552149
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20190722BHJP
   H04R 31/00 20060101ALI20190722BHJP
   G01S 7/521 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   H04R17/00 330H
   H04R17/00 330J
   H04R17/00 332A
   H04R31/00 330
   G01S7/521 A
【請求項の数】36
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2019-529658(P2019-529658)
(86)(22)【出願日】2019年2月18日
(86)【国際出願番号】JP2019005744
【審査請求日】2019年5月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175722
【氏名又は名称】サンコール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】高杉 知
【審査官】 大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−99566(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/099696(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0336095(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/521
H04R 17/00
H04R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚方向一方側及び他方側をそれぞれ向く第1面及び第2面を有し、板厚方向に振動可能な弾性板と、
前記弾性板の第1面に並列状態で固着された複数の圧電素子と、
前記複数の圧電素子を覆うように前記弾性板の第1面に設けられた高分子材料製の封止部材とを備え、
前記弾性板は、前記複数の圧電素子がそれぞれ装着される複数の振動領域と、平面視において前記複数の振動領域をそれぞれ囲む複数の低剛性領域と、平面視において前記複数の低剛性領域をそれぞれ囲む複数の拘束領域と、一の拘束領域と当該一の拘束領域より径方向外方に位置する外方領域とを区画する境界領域とを含み、
前記低剛性領域は、当該領域の径方向内方に位置する前記振動領域及び当該領域の径方向外方に位置する前記拘束領域に比して低剛性とされ、
前記境界領域は、一の拘束領域及び外方領域を分断するスリット部と、一の拘束領域を外方領域に機械的に連結するブリッジ部とを有しており、
前記封止部材は、前記複数の圧電素子のそれぞれを平面視において囲むように配置された複数の筒状部であって、基端面が前記スリット部を跨ぐ位置で前記弾性板の第1面に接合された複数の筒状部と、前記複数の筒状部の自由端側をそれぞれ閉塞する複数の閉塞部と、前記筒状部の基端面から前記スリット部の内部へ延びる充填部とを有していることを特徴とする超音波トランスデューサー。
【請求項2】
前記封止部材は、第1高分子材料によって形成され、前記充填部及び前記筒状部を一体形成する第1封止部材と、第2高分子材料によって形成され、前記閉塞部を形成する第2封止部材とを含むことを特徴とする請求項1に記載の超音波トランスデューサー。
【請求項3】
前記第1高分子材料は、硬化前の状態を基準にして、前記第2高分子材料よりも低粘度とされていることを特徴とする請求項2に記載の超音波トランスデューサー。
【請求項4】
前記複数の筒状部、前記閉塞部及び前記充填部は、同一の高分子材料で一体形成されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波トランスデューサー。
【請求項5】
前記低剛性領域は、前記弾性板の第1面に開く溝を有していることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の超音波トランスデューサー。
【請求項6】
前記低剛性領域は、前記振動領域及び前記拘束領域の間を分断する開口部と、前記振動領域及び前記拘束領域の間を連結する連結部とを含み、前記開口部及び前記連結部は前記振動領域の外周縁に沿って交互に設けられていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の超音波トランスデューサー。
【請求項7】
前記低剛性領域は、第1面が前記振動領域及び前記拘束領域の第1面よりも第2面に近接された凹状薄肉領域とされており、
前記圧電素子は、平面視において前記振動領域と重合する中央部と、前記中央部から径方向外方へ延び、平面視において前記低剛性領域内において終焉する延在部とを含み、
前記中央部における下面電極層が前記振動領域の第1面に絶縁性接着剤によって固着され、且つ、前記延在部おける下面電極層が導電性接着剤によって前記低剛性領域の第1面に電気的且つ機械的に接続されていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の超音波トランスデューサー。
【請求項8】
前記薄肉領域の底面には前記振動領域の第1面よりも低い隆起部であって、当該薄肉領域の内側面と共働して接着剤滞留領域を形成する隆起部が設けられ、
前記延在部における下面電極層と前記低剛性領域の第1面とを電気的且つ機械的に接続する前記導電性接着剤は前記接着剤滞留領域内に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の超音波トランスデューサー。
【請求項9】
前記振動領域、前記低剛性領域及び前記境界領域の第1面を開放するように前記弾性板の第1面に固着された質量部材を備えていることを特徴とする請求項1から8の何れかに記載の超音波トランスデューサー。
【請求項10】
前記質量部材及び前記筒状部は、上端部が前記圧電素子の上面よりも前記弾性板の第1面から離間するように設けられ、
前記閉塞部は、前記圧電素子の上面電極層との間に間隙を存するように前記質量部材及び前記筒状部を覆っており、
前記弾性板の第1面、前記質量部材及び前記閉塞部によって囲まれる、前記圧電素子を収容する収容空間には、発泡性樹脂製の吸音材が充填されていることを特徴とする請求項9に記載の超音波トランスデューサー。
【請求項11】
前記筒状部は、上端部が前記圧電素子の上面よりも前記弾性板の第1面から離間するように設けられ、且つ、前記閉塞部は、前記圧電素子の上面電極層との間に間隙を存するように設けられており、
前記弾性板の第1面、前記筒状部及び前記閉塞部によって囲まれる、前記圧電素子を収容する収容空間には、発泡性樹脂製の吸音材が充填されていることを特徴とする請求項1から8の何れかに記載の超音波トランスデューサー。
【請求項12】
前記弾性板の第2面には、前記振動領域を外方に開放する開口を有する防護部材が固着されていることを特徴とする請求項1から11の何れかに記載の超音波トランスデューサー。
【請求項13】
前記防護部材の外表面には、前記開口に対応した位置に貫通孔が設けられた剛性の防護板が固着されていることを特徴とする請求項12に記載の超音波トランスデューサー。
【請求項14】
前記閉塞部の外表面には剛性の補強板が固着されていることを特徴とする請求項1から13の何れかに記載の超音波トランスデューサー。
【請求項15】
前記弾性板の第2面に固着された防護部材であって、前記振動領域を外方に開放する開口が設けられた防護部材と、
前記防護部材の外表面に設けられた剛性の防護板であって、前記防護部材の開口に対応した位置に貫通孔が設けられた防護板と、
前記閉塞部の外表面に設けられた剛性の補強板とを備え、
前記防護板は、前記防護部材の外表面に固着される中央部と、前記中央部から板面方向外方へ延びる延在部とを有し、
前記補強板は、前記閉塞部の外表面に固着される中央部と、前記中央部から板面方向外方へ延びる延在部とを有し、
前記補強板の延在部及び前記防護板の延在部がスペーサを介して連結されていることを特徴とする請求項1から11の何れかに記載の超音波トランスデューサー。
【請求項16】
前記弾性板の第2面に固着された防護部材であって、前記振動領域を外方に開放する開口が設けられた防護部材と、
前記防護部材の外表面に沿って延び、前記防護部材の開口に対応した位置に貫通孔が設けられた端壁部並びに前記防護部材及び前記弾性板の外周を囲繞するように前記端壁部から延びる周壁部を含む防護容器と、
前記閉塞部の外表面を覆った状態で前記防護容器の周壁部の自由端開口を閉塞するように前記周壁部に連結される補強板とを備えることを特徴とする請求項1から11の何れかに記載の超音波トランスデューサー。
【請求項17】
前記補強板には、内表面及び外表面を連通する貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項15又は16に記載の超音波トランスデューサー。
【請求項18】
前記弾性板は導電性金属板とされており、
前記圧電素子は、圧電本体と、前記圧電本体の厚み方向両側に配置された一対の上面電極層及び下面電極層とを有し、
前記弾性板には、前記第1面上に設けられる絶縁層及び前記絶縁層上に積層される複数の配線導体を含む配線体が設けられ、
前記下面電極層は導電性接着剤によって前記弾性板の第1面に機械的且つ電気的に接合され、前記上面電極層は導電性接着剤又ははんだによって対応する前記配線導体に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1から17の何れかに記載の超音波トランスデューサー。
【請求項19】
前記上面電極層及び対応する前記配線導体の間を電気的に接続する前記導電性接着剤又ははんだと前記弾性板の第1面との間には絶縁性接着剤が介挿されていることを特徴とする請求項18に記載の超音波トランスデューサー。
【請求項20】
前記複数の拘束領域は、前記弾性板の第1板面方向に沿って配列されたm個(mは1以上整数)の拘束領域によって形成される拘束領域群が前記第1板面方向と直交する第2板面方向にn行(nは1以上の整数)、設けられることによって現出されるm×n個の拘束領域を有し、
前記スリット部は、前記一の拘束領域内の振動領域に装着される一の圧電素子の第2板面方向両側に位置し、前記第1板面方向に沿って延びる一対の第1板面方向スリットと、前記一の圧電素子の第1板面方向両側に位置し、前記第2板面方向に沿って延びる一対の第2板面方向スリットとを含み、
前記一対の第1板面方向スリットは前記一の圧電素子の第1板面方向長さよりも長く且つ前記一対の第2板面方向スリットは前記一対の圧電素子の第2板面方向長さよりも長いものとされ、
周方向に隣接する前記第1板面方向スリット及び前記第2板面方向スリットの端部同士の間によって画される4箇所が前記ブリッジ部を形成していることを特徴とする請求項1から19の何れかに記載の超音波トランスデューサー。
【請求項21】
隣接する拘束領域の間には単一の共通スリットが設けられており、前記単一の共通スリットが隣接する拘束領域の双方の外周縁を画していることを特徴とする請求項20に記載の超音波トランスデューサー。
【請求項22】
板厚方向一方側及び他方側をそれぞれ向く第1面及び第2面を有し、板厚方向に振動可能な弾性板と、それぞれが圧電本体並びに前記圧電本体の厚み方向両側に配置された上面電極層及び下面電極層を有し、前記弾性板に設けられた複数の振動領域の第1面に前記下面電極層が固着された複数の圧電素子と、絶縁層及び前記絶縁層上に設けられ、前記複数の圧電素子の上面電極層にそれぞれ電気的に接続される複数の配線導体を含む配線体と、前記複数の圧電素子を覆うように前記弾性板の第1面に設けられた高分子材料製の封止部材と、前記弾性板の第2面に固着された防護部材であって、前記振動領域を外方に開放する開口が設けられた防護部材とを備え、前記弾性板は、平面視において前記複数の振動領域をそれぞれ囲む複数の低剛性領域と、平面視において前記複数の低剛性領域をそれぞれ囲む複数の拘束領域と、平面視において一の拘束領域と当該一の拘束領域より径方向外方に位置する外方領域とを区画する境界領域とを含み、前記境界領域は、前記一の拘束領域及び前記外方領域を分断するスリット部と、前記一の拘束領域を前記外方領域に機械的に連結するブリッジ部とを有し、前記封止部材は、平面視において前記複数の振動領域をそれぞれ囲む複数の筒状部であって、基端面が前記境界領域を含む位置で前記弾性板の第1面に接合された複数の筒状部と、前記複数の筒状部の自由端側の開口をそれぞれ閉塞する複数の閉塞部と、前記筒状部の基端面から前記スリット部の内部へ延びる充填部とを有している超音波トランスデューサーの製造方法であって、
前記弾性板を形成する導電性の弾性板形成体を用意する工程と、
前記配線体を設置する配線体設置工程と、
前記弾性板形成体に対してエッチングを行って前記スリット部及び前記低剛性領域を形成する弾性板エッチング工程と、
前記複数の振動領域の第1面に前記複数の圧電素子の下面電極層をそれぞれ導電性接着剤によって接着させる圧電素子実装工程と、
前記複数の配線導体の先端部を対応する前記圧電素子の上面電極層に導電性接着剤又ははんだによって電気的に接続する電気接続工程と、
前記開口を介して前記振動領域を外方へ開放しつつ前記スリット部の第2面側を閉塞するように前記防護部材を前記弾性板の第2面に固着する防護部材設置工程と、
前記封止部材を設置する封止部材設置工程とを備え、
前記配線体設置工程、前記弾性板エッチング工程及び前記圧電素子実装工程は任意の順番に実行可能とされ、
前記封止部材設置工程は、前記充填部及び前記筒状部を一体的に形成する第1封止部材を設置する第1封止部材設置工程と、前記閉塞部を形成する第2封止部材を設置する第2封止部材設置工程とを含み、
前記第1封止部材設置工程は、前記筒状部を設けるべき領域を、上方が開放された状態で画する筒状部用型枠を設置する処理と、前記弾性板の第1面の側から前記筒状部用型枠内に第1高分子材料を塗布し、硬化させる処理とを含むことを特徴とする超音波トランスデューサーの製造方法。
【請求項23】
前記第1封止部材設置工程の前又は後で、且つ、前記第2封止部材設置工程の前に、前記圧電素子を囲繞するように発泡性樹脂を塗布して硬化させることによって吸音材を設置する吸音材設置工程がさらに備えられていることを特徴とする請求項22に記載の超音波トランスデューサーの製造方法。
【請求項24】
前記第2封止部材設置工程は、前記筒状部及び前記吸音材の上面に、硬化前の状態を基準にして、第1高分子材料よりも高粘度の第2高分子材料を塗布し、硬化させるように構成されていることを特徴とする請求項23に記載の超音波トランスデューサーの製造方法。
【請求項25】
板厚方向一方側及び他方側をそれぞれ向く第1面及び第2面を有し、板厚方向に振動可能な弾性板と、それぞれが圧電本体並びに前記圧電本体の厚み方向両側に配置された上面電極層及び下面電極層を有し、前記弾性板に設けられた複数の振動領域の第1面に前記下面電極層が固着された複数の圧電素子と、絶縁層及び前記絶縁層上に設けられ、前記複数の圧電素子の上面電極層にそれぞれ電気的に接続される複数の配線導体を含む配線体と、前記弾性板の第1面に固着された質量部材と、前記複数の圧電素子を覆うように前記弾性板の第1面に設けられた高分子材料製の封止部材と、前記弾性板の第2面に固着された防護部材であって、前記振動領域を外方に開放する開口が設けられた防護部材とを備え、前記弾性板は、平面視において前記複数の振動領域をそれぞれ囲む複数の低剛性領域と、平面視において前記複数の低剛性領域をそれぞれ囲む複数の拘束領域と、平面視において前記複数の拘束領域の全体を囲むベース領域と、隣接する一の拘束領域及び他の拘束領域の間並びに隣接する拘束領域及びベース領域の間に位置し、前記複数の拘束領域のそれぞれの境界を画する境界領域とを含み、前記境界領域は、前記一の拘束領域を周囲から分断するスリット部と、前記一の拘束領域を周囲に機械的に連結するブリッジ部とを有し、前記質量部材は、前記複数の拘束領域にそれぞれ固着される複数の拘束領域用質量部材と、前記ベース領域に固着されるベース領域用質量部材とを含み、前記封止部材は、平面視において前記複数の振動領域をそれぞれ囲む複数の筒状部であって、基端面が前記境界領域を含む位置で前記弾性板の第1面に接合された複数の筒状部と、前記複数の筒状部の自由端側の開口をそれぞれ閉塞する複数の閉塞部と、前記筒状部の基端面から前記スリット部の内部へ延びる充填部とを有している超音波トランスデューサーの製造方法であって、
前記弾性板を形成する導電性の弾性板形成体を用意する工程と、
前記配線体を設置する配線体設置工程と、
前記弾性板形成体に対してエッチングを行って前記スリット部及び前記低剛性領域を形成する弾性板エッチング工程と、
前記複数の振動領域の第1面に前記複数の圧電素子の下面電極層をそれぞれ導電性接着剤によって接着させる圧電素子実装工程と、
前記複数の配線導体の先端部を対応する前記圧電素子の上面電極層に導電性接着剤又ははんだによって電気的に接続する電気接続工程と、
前記複数の拘束領域のそれぞれに前記拘束領域用質量部材を固着する処理及び前記ベース領域に前記ベース領域用質量部材を固着する処理を含む質量部材設置工程と、
前記開口を介して前記振動領域を外方へ開放しつつ前記スリット部の第2面側を閉塞するように前記防護部材を前記弾性板の第2面に固着する防護部材設置工程と、
前記封止部材を設置する封止部材設置工程とを備え、
前記配線体設置工程、前記弾性板エッチング工程及び前記圧電素子実装工程は任意の順番に実行可能とされ、
前記質量部材設置工程及び前記防護部材設置工程は任意の順番に実行可能とされ、
前記封止部材設置工程は、前記充填部及び前記筒状部を一体的に形成する第1封止部材を設置する第1封止部材設置工程と、前記閉塞部を形成する第2封止部材を設置する第2封止部材設置工程とを含み、
前記第1封止部材設置工程は、隣接する一の拘束領域用質量部材及び他の拘束領域用質量部材の間、並びに、隣接する拘束領域用質量部材及びベース領域用質量部材の間に、前記弾性板の第1面の側から第1高分子材料を塗布し、硬化させることを特徴とする超音波トランスデューサーの製造方法。
【請求項26】
前記質量部材設置工程は、前記複数の拘束領域用質量部材と、前記ベース領域用質量部材と、隣接する一の拘束領域用質量部材及び他の拘束領域用質量部材の上端部同士を連結する拘束領域間ブリッジと、隣接する拘束領域用質量部材及びベース領域用質量部材の上端部同士を連結する拘束領域/ベース領域間ブリッジとを含む質量板を用意する処理と、前記質量板を前記弾性板の第1面の所定位置に固着する処理と、前記拘束領域間ブリッジ及び前記拘束領域/ベース領域間ブリッジを切断して、前記複数の拘束領域用質量部材及び前記ベース領域用質量部材を分離させる処理とを有していることを特徴とする請求項25に記載の超音波トランスデューサーの製造方法。
【請求項27】
前記質量板を用意する処理は、前記拘束領域用質量部材及び前記ベース領域用質量部材の高さに応じた厚みを有する板状金属ブロックを用意する処理と、前記金属ブロックの一方側の表面から前記拘束領域間ブリッジ及び前記拘束領域/ベース領域間ブリッジに対応した領域をハーフエッチングする処理とを含むことを特徴とする請求項26に記載の超音波トランスデューサーの製造方法。
【請求項28】
前記第1封止部材設置工程の前又は後で、且つ、前記第2封止部材設置工程の前に、一の拘束領域用質量部材によって囲まれる空間内において前記圧電素子を囲繞するように発泡性樹脂を塗布して硬化させることによって吸音材を設置する吸音材設置工程がさらに備えられていることを特徴とする請求項25から27の何れに記載の超音波トランスデューサーの製造方法。
【請求項29】
前記防護部材を前記弾性板の第2面に固着する前、又は、後の何れかに、平面視において前記防護部材に重合する中央部及び前記中央部から板面方向外方へ延びる延在部を有し、前記防護部材の開口を外方に連通させる貫通孔が設けられた防護板を用意し、前記防護板の中央部を、前記貫通孔及び前記開口を位置合わせさせた状態で前記防護部材の外表面に固着する防護板設置工程と、
平面視において前記弾性板に重合する中央部及び前記中央部から板面方向外方へ延びる延在部を有し、内表面及び外表面を連通する貫通孔が設けられた補強板を用意し、当該補強板の延在部及び前記防護板の延在部をスペーサを介して連結する補強板設置工程とを備え、
前記第2封止部材設置工程は、前記補強板の貫通孔を介して、硬化前の粘度が第1高分子材料よりも高粘度の第2高分子材料を塗布し、硬化させるように構成されていることを特徴とする請求項25から28の何れかに記載の超音波トランスデューサーの製造方法。
【請求項30】
前記防護部材を前記弾性板の第2面に固着する前、又は、後の何れかに、前記防護部材の外表面に沿って延び前記防護部材の開口に対応した貫通孔が設けられた端壁部と前記防護部材及び前記弾性板の外周を囲繞するように前記端壁部から延びる周壁部とを有する防護容器を用意し、前記貫通孔及び前記開口を位置合わせさせた状態で前記端壁部を前記防護部材の外表面に固着させる防護容器設置工程と、
前記弾性板に沿って延び、内表面及び外表面を連通する貫通孔が設けられた補強板を用意し、前記防護容器の周壁部の自由端開口を閉塞するように前記補強板を前記周壁部に連結する補強板設置工程とを備え、
前記第2封止部材設置工程は、前記補強板の貫通孔を介して、硬化前の粘度が第1高分子材料よりも高粘度の第2高分子材料を塗布し、硬化させるように構成されていることを特徴とする請求項25から28の何れかに記載の超音波トランスデューサーの製造方法。
【請求項31】
前記防護容器の周壁部は、前記防護部材及び前記弾性板の外周との間に間隙を存する状態で当該防護部材及び前記弾性板の外周を囲繞しており、
前記第2封止部材設置工程は、第2高分子材料を、平面視において前記弾性板の上方に位置する領域に加えて、前記防護容器の周壁部と前記防護部材及び前記弾性板の外周との間の間隙にも塗布するように構成されていることを特徴とする請求項30に記載の超音波トランスデューサーの製造方法。
【請求項32】
前記防護容器の周壁部は、前記防護部材及び前記弾性板の外周に接する状態で当該防護部材及び前記弾性板の外周を囲繞していることを特徴とする請求項30に記載の超音波トランスデューサーの製造方法。
【請求項33】
前記低剛性領域は、前記振動領域の外周縁に沿って設けられた前記第1面の側に開く溝、又は、前記振動領域の外周縁に沿って設けられた複数の開口部であって、周方向に隣接する開口部の間に連結部が残された複数の開口部とされており、
前記弾性板エッチング工程は、前記スリット部の形成に加えて、前記低剛性領域の前記溝又は前記複数の開口部を形成することを特徴とする請求項22から32の何れかに記載の超音波トランスデューサーの製造方法。
【請求項34】
前記低剛性領域は、当該低剛性領域の第1面が前記振動領域及び前記拘束領域の第1面よりも第2面に近接された、第1面側に開く凹状の薄肉領域とされており、
前記薄肉領域の底面には、前記振動領域及び前記拘束領域の第1面よりも低い隆起部であって、前記薄肉領域の内側面と共働して接着剤滞留領域を形成する隆起部が設けられ、
前記圧電素子は、平面視において前記振動領域と重合し、絶縁性接着剤によって前記振動領域の第1面に接合される中央部と、前記中央部から径方向外方へ延び且つ平面視において前記低剛性領域内において終焉し、前記接着剤滞留領域に配設された導電性接着剤によって前記低剛性領域の第1面に接合される延在部とを有しており、
前記弾性板エッチング工程は、前記弾性板形成体に対してエッチングを行って前記スリット部を形成するフルエッチング処理と、前記低剛性領域に相当する領域に対して第1面の側からハーフエッチングを行って凹状薄肉領域である前記低剛性領域を形成するハーフエッチング処理とを含み、
前記ハーフエッチング処理は、前記振動領域に対応した領域及び前記拘束領域に対応した領域をマスクで覆うと共に、前記隆起部に対応した領域をサイドエッチング量の2倍よりも狭い幅を有するマスクで覆った状態で行うことにより、前記低剛性領域を第1面側に開く凹状薄肉領域としつつ、前記凹状薄肉領域の底面に前記振動領域及び前記拘束領域よりも低い前記隆起部を残すように構成されていることを特徴とする請求項22から32の何れかに記載の超音波トランスデューサーの製造方法。
【請求項35】
前記配線体設置工程は、前記弾性板の第1面に前記絶縁層を形成する絶縁層形成部材及び前記複数の配線導体を形成する配線導体形成部材を設け、前記絶縁層形成部材及び前記配線導体形成部材の不要部分をエッチング除去して前記絶縁層及び前記複数の配線導体を形成するように構成されていることを特徴とする請求項22から34の何れかに記載の超音波トランスデューサーの製造方法。
【請求項36】
前記電気接続工程の前に、前記複数の配線導体の先端部及び対応する前記圧電素子の間に絶縁性樹脂を塗布する工程を備え、
前記電気接続工程における前記導電性接着剤又は前記はんだは、当該導電性接着剤又は当該はんだと前記弾性板の第1面との間に前記絶縁性樹脂が介挿された状態で、前記複数の配線導体の先端部を対応する前記圧電素子の上面電極層に電気的に接続していることを特徴とする請求項22から35の何れかに記載の超音波トランスデューサーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の圧電素子が並列配置されてなり、フェイズドアレイセンサーとして好適に利用可能な超音波トランスデューサー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子及び振動板を含む複数の振動体が並列配置されてなる超音波トランスデューサーは、物体の形状を検知したり又は広範囲に亘って物体の有無を検知する為のフェイズドアレイセンサーとして好適に利用可能であるが、この場合には前記超音波トランスデューサーには下記事項が求められている。
【0003】
即ち、複数の振動体間においてグレーティングローブ現象が発生することを抑制する為には、前記複数の振動体の配列ピッチを当該振動体が放射する超音波の波長λの1/2以下にする必要がある。
【0004】
一方、数メートル先の物体を検知する為には、超音波トランスデューサーに用いられる振動体が放射する超音波の周波数を40kHz程度の低周波数に設定する必要がある。
【0005】
周波数40kHzの超音波の波長λは8.6mmであるから、振動体が放射する超音波の周波数を40kHzとしつつ、グレーティングローブ現象の発生を抑制する為には、複数の振動体の配列ピッチを8.6mm/2=4.3mm以下にする必要がある。
【0006】
しかしながら、現状、40kHzの超音波を放射可能な振動体の直径は10mm程度であり、従って、現状の振動体を用いて前記要望を満たすことは不可能である。
【0007】
この点に関し、40kHzの超音波を放射する通常の振動体に導波管(音響管)を組み合わせた構成(以下、第1従来構成という)が提案されている。
【0008】
前記第1従来構成は、並列配置された複数の振動体のそれぞれに導波管の一端側開口を連結させ、且つ、前記導波管の他端側開口の配列ピッチを前記振動体が放射する超音波の波長の1/2以下とさせ得るように構成されている。
【0009】
しかしながら、前記第1従来構成においては、導波管を含むセンサーの全体サイズが大きくなるという問題がある。
また、導波管内において生じる超音波の反射が、超音波の放射プロファイルに悪影響を及ぼすという問題もある。
【0010】
前記第1従来構成とは異なる構成として、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて製造した複数の振動体を備えた超音波トランスデューサー(以下、第2従来構成という)が提案されている(例えば、下記特許文献1及び2参照)。
【0011】
前記第2従来構成においては、圧電素子によって振動される振動板のサイズを400〜800μmとすることができ、複数の振動体をλ/2以下の配列ピッチで配列させることが可能となる。
【0012】
しかしながら、前記第2従来構成においては、振動板のサイズが小さくなり過ぎてしまい、数メートル先の物体を検知する為に必要な40kHz程度の低周波数の超音波を発生させることが困難となる。
また、製造工程の複雑化に伴って製造コストが高騰化するという問題も生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2010−164331号公報
【特許文献2】特開2013−046086号公報
【発明の概要】
【0014】
本発明は、斯かる従来技術に鑑みなされたものであり、並列配置された複数の圧電素子を備えた超音波トランスデューサーであって、前記複数の圧電素子がそれぞれ形成する複数の振動体の配列ピッチを狭めつつ、前記複数の振動体間における振動伝播を可及的に防止し得る超音波トランスデューサーの提供を目的とする。
また、本発明は、前記超音波トランスデューサーを効率良く製造し得る製造方法の提供を他の目的とする。
【0015】
前記目的を達成するために、板厚方向一方側及び他方側をそれぞれ向く第1面及び第2面を有し、板厚方向に振動可能な弾性板と、前記弾性板の第1面に並列状態で固着された複数の圧電素子と、前記複数の圧電素子を覆うように前記弾性板の第1面に設けられた高分子材料製の封止部材とを備え、前記弾性板は、前記複数の圧電素子がそれぞれ装着される複数の振動領域と、平面視において前記複数の振動領域をそれぞれ囲む複数の低剛性領域と、平面視において前記複数の低剛性領域をそれぞれ囲む複数の拘束領域と、一の拘束領域と当該一の拘束領域より径方向外方に位置する外方領域とを区画する境界領域とを含み、前記低剛性領域は、当該領域の径方向内方に位置する前記振動領域及び当該領域の径方向外方に位置する前記拘束領域に比して低剛性とされ、前記境界領域は、一の拘束領域及び外方領域を分断するスリット部と、一の拘束領域を外方領域に機械的に連結するブリッジ部とを有しており、前記封止部材は、前記複数の圧電素子のそれぞれを平面視において囲むように配置された複数の筒状部であって、基端面が前記スリット部を跨ぐ位置で前記弾性板の第1面に接合された複数の筒状部と、前記複数の筒状部の自由端側をそれぞれ閉塞する複数の閉塞部と、前記筒状部の基端面から前記スリット部の内部へ延びる充填部とを有している超音波トランスデューサーを提供する。
【0016】
本発明に係る超音波トランスデューサーによれば、前記複数の振動領域の配列ピッチを狭めつつ、前記境界領域におけるスリット部によって前記複数の振動体間において弾性板を介して振動が伝播することを可及的に防止乃至は低減することができる。
従って、前記複数の圧電素子間の相互干渉を有効に防止乃至は低減しつつ、低周波数の超音波を有効に放射することができる。
【0017】
さらに、前記超音波トランスデューサーにおいては、前記振動領域が前記低剛性領域を介してフレキシブルに支持されることになり、前記振動領域の面積を小さくしても低い共振周波数を実現でき、前記振動領域の音圧を高めることができる。
さらに、前記超音波トランスデューサーにおいては、前記スリット部に高分子材料製封止部材のスリット充填部が充填されているので、前記拘束領域の姿勢安定化を図ることができ、前記超音波トランスデューサーの信頼性を向上させることができる。
【0018】
一形態においては、前記封止部材は、第1高分子材料によって形成され、前記充填部及び前記筒状部を一体形成する第1封止部材と、第2高分子材料によって形成され、前記閉塞部を形成する第2封止部材とを含むものとされる。
好ましくは、前記第1高分子材料は、硬化前の状態を基準にして、前記第2高分子材料よりも低粘度とされる。
【0019】
他形態においては、前記複数の筒状部、前記閉塞部及び前記充填部は同一の高分子材料で一体形成される。
【0020】
一形態においては、前記低剛性領域は、前記弾性板の第1面に開く溝を有するものとされる。
斯かる構成によれば、前記溝を、前記振動領域に前記圧電素子を実装させる際のアライメントマークとして利用することができる。
【0021】
他形態においては、前記低剛性領域は、前記振動領域及び前記拘束領域の間を分断する開口部と、前記振動領域及び前記拘束領域の間を連結する連結部とを含むものとされ、前記開口部及び前記連結部は前記振動領域の外周縁に沿って交互に設けられる。
斯かる構成によれば、前記開口部及び前記連結部を、前記振動領域に前記圧電素子を実装させる際のアライメントマークとして利用することができる。
【0022】
さらに他形態においては、前記低剛性領域は、第1面が前記振動領域及び前記拘束領域の第1面よりも第2面に近接された凹状薄肉領域とされる。
【0023】
この場合、前記圧電素子は、平面視において前記振動領域と重合する中央部と、前記中央部から径方向外方へ延び、平面視において前記低剛性領域内において終焉する延在部とを含むものとされ、前記中央部における下面電極層が前記振動領域の第1面に絶縁性接着剤によって固着され、且つ、前記延在部おける下面電極層が導電性接着剤によって前記低剛性領域の第1面に電気的且つ機械的に接続される。
斯かる構成によれば、前記低剛性領域の外周縁を、前記振動領域に前記圧電素子を実装させる際のアライメントマークとして利用することができる。
【0024】
好ましくは、前記薄肉領域の底面には前記振動領域の第1面よりも低い隆起部であって、当該薄肉領域の内側面と共働して接着剤滞留領域を形成する隆起部が設けられ、前記延在部における下面電極層と前記低剛性領域の第1面とを電気的且つ機械的に接続する前記導電性接着剤は前記接着剤滞留領域内に設けられる。
【0025】
斯かる構成によれば、前記圧電素子の中央部及び前記振動領域を機械的に接合する絶縁性接着剤と、前記圧電素子の延在部の下面電極層及び前記低剛性領域を電気的に接続する導電性接着剤との意に反した混合を有効に防止することができ、前記圧電素子の下面電極層と前記弾性板との電気接続の信頼性を高めることができる。
【0026】
前記種々の構成において、好ましくは、本発明に係る超音波トランスデューサーは、前記振動領域、前記低剛性領域及び前記境界領域の第1面を開放するように前記弾性板の第1面に固着された質量部材を備えることができる。
【0027】
斯かる構成によれば、前記拘束領域の振動を抑制し、前記複数の振動領域間のクロスストロークを低減できると共に、前記振動領域の振動振幅を増大させて発生音波の音圧を高めることができる。
【0028】
好ましくは、前記質量部材及び前記筒状部は、上端部が前記圧電素子の上面よりも前記弾性板の第1面から離間するように設けられ、前記閉塞部は、前記圧電素子の上面電極層との間に間隙を存するように前記質量部材及び前記筒状部を覆うものとされ、前記弾性板の第1面、前記質量部材及び前記閉塞部によって囲まれる、前記圧電素子を収容する収容空間には、発泡性樹脂製の吸音材が充填される。
【0029】
斯かる構成によれば、前記弾性板の第1面の側からの音波漏洩を効果的に抑制することができる。
【0030】
一形態においては、本発明に係る超音波トランスデューサーは、前記弾性板の第2面に接合された防護部材であって、前記振動領域を外方に開放する開口を有する防護部材を備えることができる。
【0031】
斯かる構成によれば、前記弾性板への外部からの接触を有効に防止でき、前記弾性板の損傷を有効に防止することができる。
【0032】
前記防護部材を備えた一形態においては、好ましくは、前記防護部材の外端面には、前記開口に対応した位置に貫通孔を有する剛性の防護板が接合される。
【0033】
斯かる構成によれば、前記防護部材表面の損傷を有効に防止できると共に、前記防護部材の表面の振動を抑制することができる。
【0034】
前記防護部材を備えた一形態においては、好ましくは、本発明に係る超音波トランスデューサーは、前記閉塞部の外表面に固着された剛性の補強板を備えることができる。
【0035】
前記防護部材、前記防護板及び前記補強板を備えた構成において、好ましくは、前記防護板は、前記防護部材の外表面に固着される中央部と、前記中央部から板面方向外方へ延びる延在部とを有するものとされ、前記補強板は、前記閉塞部の外表面に固着される中央部と、前記中央部から板面方向外方へ延びる延在部とを有するものとされる。
そして、前記補強板の延在部及び前記防護板の延在部がスペーサを介して連結される。
【0036】
斯かる構成によれば、外力による前記弾性板の変形をより効果的に抑制でき、前記弾性板及び前記圧電素子の損傷を有効に防止乃至は低減できる。
【0037】
前記防護板に代えて防護容器を備えることができる。
前記防護容器は、前記防護部材の外表面に沿って延び、前記防護部材の開口に対応した位置に貫通孔が設けられた端壁部と、前記防護部材及び前記弾性板の外周を囲繞するように前記端壁部から延びる周壁部とを有するものとされる。
この場合、前記補強板は、前記閉塞部の外表面を覆った状態で前記防護容器の周壁部の自由端開口を閉塞するように前記周壁部に連結される。
【0038】
斯かる構成によっても、外力による前記弾性板の変形をより効果的に抑制でき、前記弾性板及び前記圧電素子の損傷を有効に防止乃至は低減できる。
【0039】
例えば、前記補強板には、内表面及び外表面を連通する貫通孔が設けられる。
【0040】
前記種々の構成において、前記弾性板は導電性金属板とされ、前記圧電素子は、圧電本体と、前記圧電本体の厚み方向両側に配置された一対の上面電極層及び下面電極層とを有するものとされる。
【0041】
この場合において、好ましくは、前記弾性板には、前記第1面上に設けられる絶縁層及び前記絶縁層上に積層される複数の配線導体を含む配線体が設けられ、前記下面電極層は導電性接着剤によって前記弾性板の第1面に機械的且つ電気的に接合され、前記上面電極層は導電性接着剤又ははんだによって対応する前記配線導体に電気的に接続される。
【0042】
斯かる構成によれば、簡易な構造で前記圧電素子と外部電圧との電気的接続を実現することができる。
【0043】
好ましくは、前記上面電極層及び対応する前記配線導体の間を電気的に接続する前記導電性接着剤又ははんだと前記弾性板の第1面との間には絶縁性接着剤が介挿される。
【0044】
斯かる構成によれば、前記導電性接着剤又は前記はんだが前記弾性板の第1面に意に反して接触して前記上面電極層及び前記下面電極層が短絡することを有効に防止することができる。
【0045】
前記種々の構成において、例えば、前記複数の拘束領域は、前記弾性板の第1板面方向に沿って配列されたm個(mは1以上整数)の拘束領域によって形成される拘束領域群が前記第1板面方向と直交する第2板面方向にn行(nは1以上の整数)、設けられることによって現出されるm×n個の拘束領域を有するものとされる。
【0046】
この場合、好ましくは、前記スリット部は、前記一の拘束領域内の振動領域に装着される一の圧電素子の第2板面方向両側に位置し、前記第1板面方向に沿って延びる一対の第1板面方向スリットと、前記一の圧電素子の第1板面方向両側に位置し、前記第2板面方向に沿って延びる一対の第2板面方向スリットとを含むものとされ、前記一対の第1板面方向スリットは前記一の圧電素子の第1板面方向長さよりも長く且つ前記一対の第2板面方向スリットは前記一対の圧電素子の第2板面方向長さよりも長いものとされ、周方向に隣接する前記第1板面方向スリット及び前記第2板面方向スリットの端部同士の間によって画される4箇所が前記ブリッジ部を形成するように構成される。
【0047】
より好ましくは、隣接する拘束領域の間には単一の共通スリットが設けられ、前記単一の共通スリットが隣接する拘束領域の双方の外周縁を画するものとされる。
【0048】
また、本発明は、板厚方向一方側及び他方側をそれぞれ向く第1面及び第2面を有し、板厚方向に振動可能な弾性板と、それぞれが圧電本体並びに前記圧電本体の厚み方向両側に配置された上面電極層及び下面電極層を有し、前記弾性板に設けられた複数の振動領域の第1面に前記下面電極層が固着された複数の圧電素子と、絶縁層及び前記絶縁層上に設けられ、前記複数の圧電素子の上面電極層にそれぞれ電気的に接続される複数の配線導体を含む配線体と、前記複数の圧電素子を覆うように前記弾性板の第1面に設けられた高分子材料製の封止部材と、前記弾性板の第2面に固着された防護部材であって、前記振動領域を外方に開放する開口が設けられた防護部材とを備え、前記弾性板は、平面視において前記複数の振動領域をそれぞれ囲む複数の低剛性領域と、平面視において前記複数の低剛性領域をそれぞれ囲む複数の拘束領域と、平面視において一の拘束領域と当該一の拘束領域より径方向外方に位置する外方領域とを区画する境界領域とを含み、前記境界領域は、前記一の拘束領域及び前記外方領域を分断するスリット部と、前記一の拘束領域を前記外方領域に機械的に連結するブリッジ部とを有し、前記封止部材は、平面視において前記複数の振動領域をそれぞれ囲む複数の筒状部であって、基端面が前記境界領域を含む位置で前記弾性板の第1面に接合された複数の筒状部と、前記複数の筒状部の自由端側の開口をそれぞれ閉塞する複数の閉塞部と、前記筒状部の基端面から前記スリット部の内部へ延びる充填部とを有している超音波トランスデューサーの製造方法であって、前記弾性板を形成する導電性の弾性板形成体を用意する工程と、前記配線体を設置する配線体設置工程と、前記弾性板形成体に対してエッチングを行って前記スリット部及び前記低剛性領域を形成する弾性板エッチング工程と、前記複数の振動領域の第1面に前記複数の圧電素子の下面電極層をそれぞれ導電性接着剤によって接着させる圧電素子実装工程と、前記複数の配線導体の先端部を対応する前記圧電素子の上面電極層に導電性接着剤又ははんだによって電気的に接続する電気接続工程と、前記開口を介して前記振動領域を外方へ開放しつつ前記スリット部の第2面側を閉塞するように前記防護部材を前記弾性板の第2面に固着する防護部材設置工程と、前記封止部材を設置する封止部材設置工程とを備え、前記配線体設置工程、前記弾性板エッチング工程及び前記圧電素子実装工程は任意の順番に実行可能とされ、前記封止部材設置工程は、前記充填部及び前記筒状部を一体的に形成する第1封止部材を設置する第1封止部材設置工程と、前記閉塞部を形成する第2封止部材を設置する第2封止部材設置工程とを含み、前記第1封止部材設置工程は、前記筒状部を設けるべき領域を、上方が開放された状態で画する筒状部用型枠を設置する処理と、前記弾性板の第1面の側から前記筒状部用型枠内に第1高分子材料を塗布し、硬化させる処理とを含む超音波トランスデューサーの第1の製造方法を提供する。
【0049】
斯かる第1の製造方法によれば、前記構成を備えた超音波トランスデューサーを低コストで歩留まり良く製造することができる。
【0050】
前記第1の製造方法は、前記第1封止部材設置工程の前又は後で、且つ、前記第2封止部材設置工程の前に、前記圧電素子を囲繞するように発泡性樹脂を塗布して硬化させることによって吸音材を設置する吸音材設置工程を備えることができる。
【0051】
例えば、前記第1封止部材設置工程は、前記筒状部の上端部が前記圧電素子の上面より上方に位置するように前記第1封止部材を設置するものとした上で、前記吸音材設置工程を、前記第1封止部材設置工程の後で且つ前記第2封止部材設置工程の前に、行うことができる。
【0052】
斯かる製造方法によれば、前記第1封止部材を吸音材用型枠として用いることができ、吸音材を制御性良く設置することができる。
【0053】
前記第1の製造方法において、好ましくは、前記第2封止部材設置工程は、前記筒状部及び前記吸音材の上面に、硬化前の状態を基準にして、第1高分子材料よりも高粘度の第2高分子材料を塗布し、硬化させるように構成される。
【0054】
また、本発明は、板厚方向一方側及び他方側をそれぞれ向く第1面及び第2面を有し、板厚方向に振動可能な弾性板と、それぞれが圧電本体並びに前記圧電本体の厚み方向両側に配置された上面電極層及び下面電極層を有し、前記弾性板に設けられた複数の振動領域の第1面に前記下面電極層が固着された複数の圧電素子と、絶縁層及び前記絶縁層上に設けられ、前記複数の圧電素子の上面電極層にそれぞれ電気的に接続される複数の配線導体を含む配線体と、前記弾性板の第1面に固着された質量部材と、前記複数の圧電素子を覆うように前記弾性板の第1面に設けられた高分子材料製の封止部材と、前記弾性板の第2面に固着された防護部材であって、前記振動領域を外方に開放する開口が設けられた防護部材とを備え、前記弾性板は、平面視において前記複数の振動領域をそれぞれ囲む複数の低剛性領域と、平面視において前記複数の低剛性領域をそれぞれ囲む複数の拘束領域と、平面視において前記複数の拘束領域の全体を囲むベース領域と、隣接する一の拘束領域及び他の拘束領域の間並びに隣接する拘束領域及びベース領域の間に位置し、前記複数の拘束領域のそれぞれの境界を画する境界領域とを含み、前記境界領域は、前記一の拘束領域を周囲から分断するスリット部と、前記一の拘束領域を周囲に機械的に連結するブリッジ部とを有し、前記質量部材は、前記複数の拘束領域にそれぞれ固着される複数の拘束領域用質量部材と、前記ベース領域に固着されるベース領域用質量部材とを含み、前記封止部材は、平面視において前記複数の振動領域をそれぞれ囲む複数の筒状部であって、基端面が前記境界領域を含む位置で前記弾性板の第1面に接合された複数の筒状部と、前記複数の筒状部の自由端側の開口をそれぞれ閉塞する複数の閉塞部と、前記筒状部の基端面から前記スリット部の内部へ延びる充填部とを有している超音波トランスデューサーの製造方法であって、前記弾性板を形成する導電性の弾性板形成体を用意する工程と、前記配線体を設置する配線体設置工程と、前記弾性板形成体に対してエッチングを行って前記スリット部及び前記低剛性領域を形成する弾性板エッチング工程と、前記複数の振動領域の第1面に前記複数の圧電素子の下面電極層をそれぞれ導電性接着剤によって接着させる圧電素子実装工程と、前記複数の配線導体の先端部を対応する前記圧電素子の上面電極層に導電性接着剤又ははんだによって電気的に接続する電気接続工程と、前記複数の拘束領域のそれぞれに前記拘束領域用質量部材を固着する処理及び前記ベース領域に前記ベース領域用質量部材を固着する処理を含む質量部材設置工程と、前記開口を介して前記振動領域を外方へ開放しつつ前記スリット部の第2面側を閉塞するように前記防護部材を前記弾性板の第2面に固着する防護部材設置工程と、前記封止部材を設置する封止部材設置工程とを備え、前記配線体設置工程、前記弾性板エッチング工程及び前記圧電素子実装工程は任意の順番に実行可能とされ、前記質量部材設置工程及び前記防護部材設置工程は任意の順番に実行可能とされ、前記封止部材設置工程は、前記充填部及び前記筒状部を一体的に形成する第1封止部材を設置する第1封止部材設置工程と、前記閉塞部を形成する第2封止部材を設置する第2封止部材設置工程とを含み、前記第1封止部材設置工程は、隣接する一の拘束領域用質量部材及び他の拘束領域用質量部材の間、並びに、隣接する拘束領域用質量部材及びベース領域用質量部材の間に、前記弾性板の第1面の側から第1高分子材料を塗布し、硬化させるように構成された超音波トランスデューサーの第2の製造方法を提供する。
【0055】
斯かる第2の製造方法によれば、前記構成を備えた超音波トランスデューサーを低コストで歩留まり良く製造することができる。
【0056】
前記第2の製造方法において、好ましくは、前記質量部材設置工程は、前記複数の拘束領域用質量部材と、前記ベース領域用質量部材と、隣接する一の拘束領域用質量部材及び他の拘束領域用質量部材の上端部同士を連結する拘束領域間ブリッジと、隣接する拘束領域用質量部材及びベース領域用質量部材の上端部同士を連結する拘束領域/ベース領域間ブリッジとを含む質量板を用意する処理と、前記質量板を前記弾性板の第1面の所定位置に固着する処理と、前記拘束領域間ブリッジ及び前記拘束領域/ベース領域間ブリッジを切断して、前記複数の拘束領域用質量部材及び前記ベース領域用質量部材を分離させる処理とを有するものとされる。
【0057】
斯かる構成によれば、前記複数の拘束領域用質量部材及び前記ベース領域用質量部材の設置処理の簡素化及び高速化を図ることができる。
【0058】
例えば、前記質量板を用意する処理は、前記拘束領域用質量部材及び前記ベース領域用質量部材の高さに応じた厚みを有する板状金属ブロックを用意する処理と、前記金属ブロックの一方側の表面から前記拘束領域間ブリッジ及び前記拘束領域/ベース領域間ブリッジに対応した領域をハーフエッチングする処理とを含むものとされる。
【0059】
前記第2の製造方法は、前記第1封止部材設置工程の前又は後で、且つ、前記第2封止部材設置工程の前に、一の拘束領域用質量部材によって囲まれる空間内において前記圧電素子を囲繞するように発泡性樹脂を塗布して硬化させることによって吸音材を設置する吸音材設置工程を備えることができる。
【0060】
例えば、前記拘束領域用質量部材は、上端部が前記圧電素子の上面より上方に位置するものとした上で、前記吸音材設置工程を、前記第1封止部材設置工程の後で且つ前記第2封止部材設置工程の前に、行うことができる。
【0061】
一形態においては、前記第2の製造方法は、前記防護部材を前記弾性板の第2面に固着する前、又は、後の何れかに、平面視において前記防護部材に重合する中央部及び前記中央部から板面方向外方へ延びる延在部を有し、前記防護部材の開口を外方に連通させる貫通孔が設けられた防護板を用意し、前記防護板の中央部を、前記貫通孔及び前記開口を位置合わせさせた状態で前記防護部材の外表面に固着する防護板設置工程と、平面視において前記弾性板に重合する中央部及び前記中央部から板面方向外方へ延びる延在部を有し、内表面及び外表面を連通する貫通孔が設けられた補強板を用意し、当該補強板の延在部及び前記防護板の延在部をスペーサを介して連結する補強板設置工程とを備えることができる。
【0062】
この場合、前記第2封止部材設置工程は、前記補強板の貫通孔を介して、硬化前の粘度が第1高分子材料よりも高粘度の第2高分子材料を塗布し、硬化させるように構成される。
【0063】
他形態においては、前記第2の製造方法は、前記防護部材を前記弾性板の第2面に固着する前、又は、後の何れかに、前記防護部材の外表面に沿って延び前記防護部材の開口に対応した貫通孔が設けられた端壁部と前記防護部材及び前記弾性板の外周を囲繞するように前記端壁部から延びる周壁部とを有する防護容器を用意し、前記貫通孔及び前記開口を位置合わせさせた状態で前記端壁部を前記防護部材の外表面に固着させる防護容器設置工程と、前記弾性板に沿って延び、内表面及び外表面を連通する貫通孔が設けられた補強板を用意し、前記防護容器の周壁部の自由端開口を閉塞するように前記補強板を前記周壁部に連結する補強板設置工程とを備えることができる。
【0064】
この場合、前記第2封止部材設置工程は、前記補強板の貫通孔を介して、硬化前の粘度が第1高分子材料よりも高粘度の第2高分子材料を塗布し、硬化させるように構成される。
【0065】
前記他形態において、前記防護容器の周壁部は、前記防護部材及び前記弾性板の外周との間に間隙を存する状態で当該防護部材及び前記弾性板の外周を囲繞するものとされえる。
【0066】
この場合、前記第2封止部材設置工程は、第2高分子材料を、平面視において前記弾性板の上方に位置する領域に加えて、前記防護容器の周壁部と前記防護部材及び前記弾性板の外周との間の間隙にも塗布するように構成される。
【0067】
これに代えて、前記防護容器の周壁部は、前記防護部材及び前記弾性板の外周に接する状態で当該防護部材及び前記弾性板の外周を囲繞するものとされ得る。
【0068】
前記第1及び第2の製造方法の種々の構成において、前記低剛性領域は、前記振動領域の外周縁に沿って設けられた前記第1面の側に開く溝、又は、前記振動領域の外周縁に沿って設けられた複数の開口部であって、周方向に隣接する開口部の間に連結部が残された複数の開口部とされ得る。
【0069】
この場合、前記弾性板エッチング工程は、前記スリット部の形成に加えて、前記低剛性領域の前記溝又は前記複数の開口部を形成するように構成される。
【0070】
これに代えて、前記低剛性領域は、当該低剛性領域の第1面が前記振動領域及び前記拘束領域の第1面よりも第2面に近接された、第1面側に開く凹状の薄肉領域とされ、前記薄肉領域の底面には、前記振動領域及び前記拘束領域の第1面よりも低い隆起部であって、前記薄肉領域の内側面と共働して接着剤滞留領域を形成する隆起部が設けられ、前記圧電素子は、平面視において前記振動領域と重合し、絶縁性接着剤によって前記振動領域の第1面に接合される中央部と、前記中央部から径方向外方へ延び且つ平面視において前記低剛性領域内において終焉し、前記接着剤滞留領域に配設された導電性接着剤によって前記低剛性領域の第1面に接合される延在部とを有するものとされる。
【0071】
この場合、前記弾性板エッチング工程は、前記弾性板形成体に対してエッチングを行って前記スリット部を形成するフルエッチング処理と、前記低剛性領域に相当する領域に対して第1面の側からハーフエッチングを行って凹状薄肉領域である前記低剛性領域を形成するハーフエッチング処理とを含むものとされる。
【0072】
前記ハーフエッチング処理は、前記振動領域に対応した領域及び前記拘束領域に対応した領域をマスクで覆うと共に、前記隆起部に対応した領域をサイドエッチング量の2倍よりも狭い幅を有するマスクで覆った状態で行うことにより、前記低剛性領域を第1面側に開く凹状薄肉領域としつつ、前記凹状薄肉領域の底面に前記振動領域及び前記拘束領域よりも低い前記隆起部を残すように構成される。
【0073】
前記第1及び第2の製造方法の種々の構成において、好ましくは、前記配線体設置工程は、前記弾性板の第1面に前記絶縁層を形成する絶縁層形成部材及び前記複数の配線導体を形成する配線導体形成部材を設け、前記絶縁層形成部材及び前記配線導体形成部材の不要部分をエッチング除去して前記絶縁層及び前記複数の配線導体を形成するように構成される。
【0074】
より好ましくは、前記第1及び第2の製造方法は、前記電気接続工程の前に、前記複数の配線導体の先端部及び対応する前記圧電素子の間に絶縁性樹脂を塗布する工程を備え得る。
【0075】
この場合、前記電気接続工程における前記導電性接着剤又は前記はんだは、当該導電性接着剤又は当該はんだと前記弾性板の第1面との間に前記絶縁性樹脂が介挿された状態で、前記複数の配線導体の先端部を対応する前記圧電素子の上面電極層に電気的に接続するものとされる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る超音波トランスデューサーの縦断面図である。
図2図2は、図1におけるII-II線に沿った横断面図である。
図3図3は、図1におけるIII部拡大図である。
図4図4は、図2におけるIV部拡大図であって、封止部材を削除した状態を示している。
図5図5は、前記実施の形態1の第1変形例に係る超音波トランスデューサーの部分拡大平面図であり、一部の構成部材を取り除いた状態を示している。
図6図6は、前記実施の形態1の第2変形例に係る超音波トランスデューサーの部分拡大平面図であり、一部の構成部材を取り除いた状態を示している。
図7図7は、前記実施の形態1の第3変形例に係る超音波トランスデューサーの平面図であり、一部の構成部材を取り除いた状態を示している。
図8図8は、前記実施の形態1の第4変形例に係る超音波トランスデューサーの平面図であり、一部の構成部材を取り除いた状態を示している。
図9図9(a)〜(c)は、前記実施の形態1に係る超音波トランスデューサーの製造方法の工程図である。
図10図10(a)〜(c)は、図9(c)に続く前記製造方法の工程図である。
図11図11は、図10(c)に続く前記製造方法の工程図である。
図12図12は、図11に続く前記製造方法の工程図である。
図13図13は、図12におけるXIII部拡大図である。
図14図14は、図12に続く前記製造方法の工程図である。
図15図15は、図14に続く前記製造方法の工程図である。
図16図16は、図15に続く前記製造方法の工程図である。
図17図17は、前記実施の形態1の第5変形例に係る超音波トランスデューサーの縦断面図である。
図18図18は、前記実施の形態1の第6変形例に係る超音波トランスデューサーの縦断面図である。
図19図19は、前記実施の形態1の封止部材に関する変形構成の縦断面図である。
図20図20は、前記実施の形態1の第5変形例の封止部材に関する変形構成の縦断面図である。
図21図21は、前記実施の形態1の第6変形例の封止部材に関する変形構成の縦断面図である。
図22図22は、本発明の実施の形態2に係る超音波トランスデューサーの縦断面図である。
図23図23は、図22におけるXXIII-XXIII線に沿った横断面図である。
図24図24は、図22におけるXXIV部拡大図である。
図25図25は、前記実施の形態2に係る超音波トランスデューサーの製造方法の工程図であり、図12に続く工程を示している。
図26図26は、図25に続く前記製造方法の工程図である。
図27図27は、図26に続く前記製造方法の工程図である。
図28図28は、図27に続く前記製造方法の工程図である。
図29図29は、図28に続く前記製造方法の工程図である。
図30図30は、前記実施の形態2に係る超音波トランスデューサーの製造方法の工程図であって、質量板を固着した状態の平面図である。
図31図31は、図30におけるXXXI-XXXI線に沿った縦断面図である。
図32図32は、図31におけるXXXII部拡大図である。
図33図33は、図32に対応した拡大図であり、前記質量板における拘束領域間ブリッジ及び拘束領域/ベース領域間ブリッジが切断された状態を示している。
図34図34は、前記実施の形態2の第1変形例に係る超音波トランスデューサーの縦断面図である。
図35図35は、前記実施の形態2の第2変形例に係る超音波トランスデューサーの縦断面図である。
図36図36は、前記実施の形態2の第3変形例に係る超音波トランスデューサーの縦断面図である。
図37図37は、前記実施の形態2の第3変形例に係る超音波トランスデューサーの縦断面図である。
図38図38は、本発明の実施の形態3に係る超音波トランスデューサーの部分縦断面図である。
図39図39は、図38おけるXXXIX-XXXIX線に沿った前記超音波トランスデューサーの横断平面図である。
図40図40(a)〜(c)は、前記実施の形態3に係る超音波トランスデューサーの製造方法の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
実施の形態1
以下、本発明に係る超音波トランスデューサーの一実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1に本実施の形態に係る超音波トランスデューサー1Aの縦断面図を示す。
また、図2及び図3に、それぞれ、図1におけるII-II線に沿った断面図及びIII部拡大図を示す。
【0078】
本実施の形態に係る超音波トランスデューサー1Aは、物体の形状の検知や広範囲に渡る物体の検知等に用いられるフェイズドアレイセンサーとして好適に利用される。
【0079】
具体的には、図1図3に示すように、前記超音波トランスデューサー1Aは、板厚方向一方側及び他方側をそれぞれ向く第1面10a及び第2面10bを有する弾性板10と、前記弾性板10の第1面10aに板面方向に並列状態で固着された複数の圧電素子30と、前記複数の圧電素子30を覆うように前記弾性板10の第1面10aに設けられた封止部材40とを備えている。
【0080】
前記弾性板10は、板厚方向に振動可能な弾性を有する限り、ステンレス、Ni-Fe合金、アルミ合金、チタン合金等の金属板や、炭素繊維強化プラスチック及びセラミックス等の種々の材質で形成され得る。
前記弾性板10は、例えば、厚さ0.03mm〜0.1mmとされる。
本実施の形態においては、前記弾性板10は導電性金属板によって形成されている。
【0081】
前記圧電素子30は、PZT(チタン酸ジリコン酸鉛)からなる圧電本体と、前記圧電本体の厚み方向両側に配置された一対の上面電極層及び下面電極層とを有している。
前記圧電本体は、例えば厚さ0.05mm〜0.3mmとされ、前記上面電極層及び前記下面電極層は、例えば厚さ0.05μm〜数μmのAgやAuによって形成される。
【0082】
前記複数の圧電素子30は、前記下面電極層が前記弾性板10の第1面10aに対向された状態で前記第1面10aに並列状態で固着されている。
【0083】
詳しくは、図1図3に示すように、前記弾性板10には、前記複数の圧電素子30がそれぞれ装着される複数の振動領域12と、平面視において前記複数の振動領域12をそれぞれ囲む複数の低剛性領域26と、平面視において前記複数の低剛性領域26をそれぞれ囲む複数の拘束領域14と、一の拘束領域14と当該一の拘束領域14より径方向外方に位置する外方領域とを区画する境界領域16とが設けられている。
【0084】
本実施の形態に係る超音波トランスデューサー1Aは、図2に示すように、前記弾性板10の第1板面方向D1に沿って配列されたm個(図示の形態においては5個)の前記拘束領域14によって形成される拘束領域群14Aが前記第1板面方向D1と直交する第2板面方向D2にn行(図示の形態においては3行)、設けられることによって現出されるm×n個(図示の形態においては、5×3=15個)の前記拘束領域14を有している。
【0085】
前記複数の拘束領域14がそれぞれ囲繞する前記複数の低剛性領域26も同様にm×n個、設けられ、前記複数の低剛性領域26がそれぞれ囲繞する前記複数の振動領域12も同様にm×n個、設けられている。
そして、前記m×n個の振動領域12のそれぞれに圧電素子30が装着されている。
【0086】
本実施の形態においては、図2に示すように、前記弾性板10は、平面視において前記複数の拘束領域14の全体を囲むベース領域11を有している。
【0087】
この場合、複数の拘束領域14のうち、最外周に位置する拘束領域14、例えば、図2において上から1行目で且つ左から1列目に位置する拘束領域14(1-1)にとっては、右側に隣接する拘束領域14(上から1行目で且つ左から2列目に位置する拘束領域14(1-2))、下側に隣接する拘束領域14(上から2行目で且つ左から1列目に位置する拘束領域14(2-1))、並びに、上側及び左側に隣接する前記ベース領域11が、前記境界領域16を挟んで対向する前記外方領域となる。
【0088】
そして、周囲が他の拘束領域で囲まれている拘束領域14、例えば、図2において上から2行目で且つ左から2列目に位置する拘束領域14(2-2)にとっては、上側に隣接する拘束領域14(上から1行目で且つ左から2列目の拘束領域14(1-2))、右側に隣接する拘束領域14(上から2行目で且つ左から3列目の拘束領域14(2-3))、下側に隣接する拘束領域14(上から3行目(最下行)で且つ左から2列目の拘束領域14(3-2))、及び、左側に隣接する拘束領域14(上から2行目で且つ左から1列目の拘束領域14(2-1))が、前記境界領域16を挟んで対向する前記外方領域となる。
【0089】
なお、本実施の形態においては、図2に示すように、前記複数の拘束領域14は格子状に配列されているが、当然ながら、前記複数の振動領域12は斯かる配置に限定されるものではなく、千鳥状や放射状等に配置され得る。
【0090】
本実施の形態においては、前述の通り、前記弾性板10は導電性金属板とされており、前記圧電素子30は、導電性接着剤38(図3参照)によって前記下面電極層が前記弾性板10の第1面10aに電気的に接続された状態で当該弾性板10の第1面10aに機械的に固着されている。
【0091】
図4に、図2におけるIV部拡大図であって、前記封止部材40を削除した状態の拡大図を示す。
前記境界領域16は、図4に示すように、当該境界領域16が外周縁を画する一の拘束領域14及び当該一の拘束領域14の径方向外方に隣接する前記外方領域を分断するスリット部17と、前記一の拘束領域14の前記外方領域に対する機械的連結を維持するブリッジ部18とを有している。
【0092】
前記封止部材40は、図3に示すように、平面視において前記複数の振動領域12をそれぞれ囲む複数の筒状部42であって、基端面が前記境界領域16を含む位置で前記弾性板10の第1面10aに接合された複数の筒状部42と、前記複数の筒状部42の自由端側の開口をそれぞれ閉塞する複数の閉塞部44と、前記筒状部42の基端面から前記スリット部17の内部へ延びる充填部41とを有している。
前記封止部材40は、例えば、シリコーン等の高分子材料によって形成される。
【0093】
このように、本実施の形態に係る超音波トランスデューサー1Aにおいては、一枚の前記弾性板10上に複数の圧電素子30を装着することによって当該複数の圧電素子30によって振動される複数の振動領域12間の可及的な近接配置を実現しつつ、一の振動領域12の振動が当該一の振動領域12の径方向外方に位置する外方領域に伝搬することを前記スリット部17によって有効に防止乃至は低減することができる。
【0094】
従って、前記圧電素子30及び前記振動領域12から低周波数(例えば、30kHz〜40kHz)の超音波を放射させることができ、且つ、前記複数の圧電素子30の間でグレーティングローブ現象が生じることを有効に防止乃至は低減できる。
【0095】
さらに、前記超音波トランスデューサー1Aにおいては、前述の通り、高分子材料製の前記封止部材40における前記充填部41が前記スリット部17に充填されており、これにより、一の振動領域12の振動が隣接する他の振動領域12に伝播することを前記スリット部17によって有効に防止乃至は低減するという効果を得つつ、拘束領域14の姿勢安定化、延いては前記振動領域12の動作安定化を図ることができる。
【0096】
本実施の形態においては、図4に示すように、前記スリット部17は、前記一の拘束領域14内の振動領域12に装着される一の圧電素子30の第2板面方向D2両側に位置し、前記第1板面方向D1に沿って延びる一対の第1板面方向スリット17aと、前記一の圧電素子30の第1板面方向D1両側に位置し、前記第2板面方向D2に沿って延びる一対の第2板面方向スリット17bとを含んでいる。
【0097】
前記一対の第1板面方向スリット17aは前記一の圧電素子30の第1板面方向長さ30aよりも長く且つ前記一対の第2板面方向スリット17bは前記一の圧電素子30の第2板面方向長さ30bよりも長いものとされ、且つ、周方向に隣接する前記第1板面方向スリット17a及び前記第2板面方向スリット17bの端部同士の間によって画される4箇所に前記ブリッジ部18が設けられている。
【0098】
斯かる構成によれば、矩形配置された前記複数の圧電素子30の間で振動が伝搬することを有効に防止しつつ、前記複数の拘束領域14を安定的に保持することができる。
【0099】
また、本実施の形態においては、前述の通り、隣接する拘束領域14の間には単一の境界領域16のみが存在しており、前記単一の境界領域16のスリット17が隣接する拘束領域14の双方の外周縁を画している。
【0100】
斯かる構成によれば、前記複数の圧電素子30間の振動伝搬を有効に防止しつつ、前記複数の拘束領域14の設置面積を可及的に低減することができる。
【0101】
なお、前記スリット部17及び前記ブリッジ部18は、種々の構成を取り得る。
図5に、異なる構成のスリット部21及びブリッジ部22を備えた第1変形例に係る超音波トランスデューサー1Bの部分拡大平面図を示す。
【0102】
図5に示す前記第1変形例1Bにおいては、前記スリット部21は円弧状とされている。
そして、一の拘束領域14を4つの前記スリット部21が囲繞するように構成されており、周方向に隣接する2つの前記スリット部21の間に前記ブリッジ部22が設けられている。
【0103】
また、図6に、さらに異なる構成のスリット部23及びブリッジ部24を備えた第2変形例に係る超音波トランスデューサー1Cの部分拡大平面図を示す。
【0104】
図6に示す前記第2変形例1Cにおいては、前記スリット部23は平面視略L字状とされている。
そして、一の拘束領域14を4つの前記スリット部23が囲繞するように構成されている。
【0105】
詳しくは、周方向に隣接する2つのL字状スリット23は、一方のスリット23の一部23aが他方のスリット23の一部23bよりも径方向内方に位置する状態で周方向に関しオーバーラップするように配置されており、前記一方のスリット23の一部23a及び前記他方のスリット23の一部23bの間の径方向間隙が前記ブリッジ部24を形成している。
【0106】
種々の構成のスリット部17(21、23)及びブリッジ部18(22、24)において、好ましくは、前記境界領域16の周方向長さをLとした場合に、前記複数のスリット部17(21、23)の周方向の合計長さLaがLa≧0.9×Lを満たすように構成することができる。
【0107】
前述の通り、本実施の形態に係る超音波トランスデューサー1Aにおいては、前記振動領域12の周囲には、前記振動領域12及び前記拘束領域14に比して低剛性の前記低剛性領域26が設けられている。
【0108】
斯かる構成を備えることにより、前記振動領域12の振動特性を高めることができる。
従って、前記振動領域12のサイズを小さくして前記複数の振動領域12の配列ピッチを小さくしつつ、低周波数の音波を発生させることができる。
【0109】
本実施の形態においては、図2及び図4に示すように、前記振動領域12の外形状と前記圧電素子30の外形状とを同一としつつ、前記弾性板10の第1面10aのうち前記振動領域12の外周縁に沿った領域に溝27を設け、前記溝27によって前記低剛性領域26を形成している。
【0110】
斯かる構成によれば、前記溝27によって前記低剛性領域26を形成しつつ、前記溝27を前記振動領域12に前記圧電素子30を実装させる際のアライメントマークとしても利用することができる。
【0111】
図7に、前記低剛性領域26が異なる構造によって形成されている第3変形例に係る超音波トランスデューサー1Dの部分拡大平面図を示す。
【0112】
図7に示す第3変形例1Dにおいては、前記弾性板10のうち前記振動領域12の外周縁に沿った領域に、当該振動領域12の内外を分断する開口部28a及び当該振動領域12の内外を連結する連結部28bが周方向に交互に設けられており、前記開口部28a及び前記連結部28bによって前記低剛性領域26が形成されている。
前記開口部28a及び前記連結部28bも、前記溝27と同様に、前記振動領域12に前記圧電素子30を実装させる際のアライメントマークとしても利用することができる。
【0113】
なお、本実施の形態においては、前記振動領域12は平面視円形状とされ、且つ、前記圧電素子30はこれと同一形状の平面視円形状とされているが、当然ながら、本発明は斯かる形態に限定されるものではない。
図8に、平面視矩形状の振動領域12及び圧電素子30を備えた第4変形例に係る超音波トランスデューサー1Eの平面図であって、前記封止部材40及び前記吸音材50を削除した状態の平面図を示す。
【0114】
図1及び図3等に示すように、本実施の形態に係る超音波トランスデューサー1Aは、さらに、前記圧電素子30の上面電極層を覆う吸音材50を備えている。
【0115】
詳しくは、本実施の形態においては、図3に示すように、前記筒状部42は、上端部が前記圧電素子30の上面よりも前記弾性板10の第1面10aから離間するように設けられ、且つ、前記閉塞部44は、前記圧電素子30の上面電極層との間に間隙を存するように設けられている。
【0116】
その上で、前記弾性板10の第1面10a、前記筒状部42及び前記閉塞部44によって囲まれる、前記圧電素子30を収容する収容空間には、発泡性シリコーン等の発泡性樹脂によって形成された吸音材50が充填されている。
【0117】
前記吸音材50を備えることにより、前記振動領域12から後方(前記弾性板1の板厚方向に関し第1面10a側)への超音波の漏洩を防止乃至は低減できると共に、バースト状の超音波が放射された後において、当該超音波の残響を有効に抑制することができる。
【0118】
図1及び図3に示すように、本実施の形態に係る超音波トランスデューサー1Aは、さらに、前記封止部材40の閉塞部44の外表面に固着された補強板60を有している。
前記補強板60はステンレス等の剛性板によって形成される。
【0119】
前記補強板60を備えることにより、振動特性を阻害することなく前記超音波トランスデューサー1Aの強度を高めることができる。
【0120】
本実施の形態に係る超音波トランスデューサー1Aは、さらに、前記弾性板10の第2面10bに接合された防護部材70であって、前記振動領域12を外方に開放する開口72を有する防護部材70を備えている。
前記防護部材70は、例えば、厚さ0.5mm〜1.5mm程度のシリコーンによって形成される。
【0121】
前記防護部材70を備えることにより、振動特性を阻害することなく前記弾性板10を保護することができる。
【0122】
前記超音波トランスデューサー1Aは、さらに、前記防護部材70の外表面に接合された剛性の防護板75を有している。
前記防護板75には、前記防護部材70の前記開口72に対応した位置に貫通孔77が設けられている。
前記防護板75は、例えば、厚さ0.1mm〜0.5mm程度のステンレス、Ni-Fe合金、アルミ合金、チタン合金等の金属板によって形成される。
【0123】
前記防護板75を備えることにより、前記防護部材70の損傷を有効に防止乃至は低減しつつ、前記防護部材70が意に反して振動することを有効に抑制することができる。
【0124】
さらに、本実施の形態に係る超音波トランスデューサー1Aは、図1図4に示すように、前記圧電素子30の前記上面電極層に電圧を印可する為の配線体80を備えている。
【0125】
前記配線体80は、前記弾性板10の第1面10a上に固着された絶縁層82と、前記絶縁層82上に積層される導体層84とを有している。
前記絶縁層82は、例えば、厚さ18μm〜25μm程度のポリイミドによって形成される。
前記導体層84は、例えば、厚さ12μm〜18μm程度のCu/Auによって形成される。
【0126】
前記導体層84は、前記複数の圧電素子30の上面電極層にそれぞれ電気的に接続される複数の配線導体85を有している。
【0127】
図3に示すように、前記複数の配線導体85は、先端部が対応する前記圧電素子30の上面電極層に導電性接着剤又ははんだ87を介して電気的に接続され、且つ、基端部が外部との接続用パッド86(図2参照)を形成している。
【0128】
本実施の形態においては、図3に示すように、前記配線導体85の先端部及び前記圧電素子30の上面電極層を電気的に接続する前記導電性接着剤又は前記はんだ87と前記弾性板10の第1面10aとの間には絶縁性樹脂88が介挿されており、これにより、前記配線導体85及び上面電極層が前記弾性板10に短絡することを有効に防止している。
【0129】
なお、前述の通り、前記複数の圧電素子30の下面電極層は、導電性接着剤38を介して導電性の前記弾性板10に電気的に接続されている。
そして、前記弾性板10には、当該弾性板10に電気的に接続された状態の下面電極層用パッド89(図2参照)が設けられている。
【0130】
前記配線体80には、前記導体層84が外部に接触することを有効に防止する為に前記導体層84を囲繞する絶縁性カバー層(図略)が設けられ得る。
【0131】
次に、前記超音波トランスデューサー1Aの製造方法の一例について説明する。
前記製造方法は、前記弾性板10を形成する導電性の弾性板形成体110を用意する工程と、前記配線体80を設ける配線体設置工程とを有している。
【0132】
前記製造方法においては、前記配線体設置工程は、前記弾性板形成体110の板厚方向一方側の第1面に前記絶縁層82を形成する絶縁層形成部材182及び前記複数の配線導体85を形成する配線導体形成部材185を含む配線体形成部材180を設ける工程(図9(a))と、前記配線体形成体180の不要部分をエッチング除去して前記絶縁層82及び前記複数の配線導体85を含む前記配線体80を形成する工程(図9(b)及び(c))とを含んでいる。
【0133】
本実施の形態においては、前記配線体80を形成する工程は、まず、前記配線導体形成部材185の不要部分をエッチング除去して前記複数の配線導体85を形成し(図9(b))、その後に、前記絶縁層形成部材182の不要部分をエッチング除去して前記絶縁層82を形成するように構成されている(図9(c))。
【0134】
前記製造方法は、さらに、前記弾性板形成体110に対してエッチングを行って前記スリット部17を形成する弾性板エッチング工程(図10(a)及び(b))を有している。
【0135】
本実施の形態においては、前記弾性板エッチング工程は、前記スリット部17の形成に加えて、前記弾性板10の第1面10aのうち前記振動領域12の外周縁に沿った領域への溝27の形成を行うように構成されている(図10(a)参照)。
【0136】
なお、本実施の形態においては、まず、ハーフエッチングによって前記溝27を形成し、その後に、前記スリット部17を形成しているが、前記溝27及び前記スリット部17の形成順序は問わない。
【0137】
また、前記変形例1Dにおけるように、前記低剛性領域26を前記複数の開口部28aによって現出させる場合には、前記弾性板エッチング工程は、前記溝27の形成に代えて、前記振動領域12の外周縁に沿った複数の開口部28aであって、周方向に隣接する開口部28aの間に前記連結部28bが残された複数の開口部28aの形成を行うように構成される。
【0138】
前記製造方法は、さらに、前記複数の振動領域12の第1面10aに前記複数の圧電素子30の下面電極層をそれぞれ導電性接着剤38によって接着させる圧電素子実装工程を有している。
【0139】
具体的には、前記圧電素子実装工程は、前記複数の振動領域12の第1面10aに導電性接着剤38を塗布する工程(図10(c))と、前記導電性接着剤38の上に前記圧電素子30を装着させ、前記導電性接着剤38を硬化させる工程(図11)とを有している。
【0140】
図10(a)〜(c)中の符号39は、前記導電性接着剤38の塗布前に前記振動領域12の第1面10aに設けられる金メッキであり、前記導電性接着剤38と前記振動領域12の第1面10aとの電気的接続の信頼性を向上させる為のものである。
【0141】
なお、前記配線体設置工程、前記弾性板エッチング工程及び前記圧電素子実装工程は、任意の順番で実施可能である。
【0142】
前記製造方法は、さらに、前記複数の配線導体85の先端部を対応する前記圧電素子30の上面電極層に導電性接着剤又ははんだ87によって電気的に接続する電気接続工程(図12及び図13)を有している。
【0143】
ここで、本実施の形態においては、前記導電性接着剤87が前記弾性板10に接触して、前記上面電極層及び前記下面電極層が短絡することを有効に防止する為に、前記製造方法は、前記電気接続工程の前に、前記複数の配線導体85の先端部及び対応する前記圧電素子30の間に絶縁性接着剤88を塗布する工程(図13)を有している。
【0144】
この場合、前記電気接続工程における前記導電性接着剤又は前記はんだ87は、当該導電性接着剤又は当該はんだ87と前記弾性板10の第1面10aとの間に前記絶縁性接着剤88が介挿された状態で、前記複数の配線導体85の先端部を対応する前記圧電素子30の上面電極層に電気的に接続するように、塗布される。
【0145】
前記製造方法は、さらに、前記防護部材70を設置する防護部材設置工程及び前記防護板75を設置する防護板設置工程(図14)を有している。
【0146】
前記防護部材70は、前記開口72を介して前記振動領域12を外方に開放しつつ、前記スリット部17の第2面側を閉塞するように、前記弾性板10の第2面10bに固着される。
【0147】
本実施の形態においては、前記防護部材設置工程及び前記防護板設置工程は、前記防護部材70を用意する処理と、前記防護板70の外表面に予め前記防護板75を接着して防護プリアッセンブリを形成する処理と、前記防護プリアッセンブリを前記弾性板10の第2面10bに接着させる処理と有している。
【0148】
当然ながら、前記防護部材設置工程及び前記防護板設置工程を、前記防護部材70を前記弾性板10の第2面10bに接着させる処理と、前記防護部材70の外表面に前記防護板75を接着させる処理とを有するように変形することも可能である。
【0149】
次いで、前記製造方法は、前記封止部材40を設置する封止部材設置工程を有している。
本実施の形態においては、前記封止部材設置工程は、前記充填部41及び前記筒状部42を一体的に形成する第1封止部材40aの設置工程と、前記閉塞部44を形成する第2封止部材40bの設置工程とを有している。
【0150】
本実施の形態においては、前記第1封止部材設置工程は、図15に示すように、前記筒状部42を設けるべき領域(筒状部設置領域)を、上方が開放された状態で画する筒状部用型枠49を設置する処理と、前記弾性板10の第1面10aの側から前記筒状部用型枠49内にシリコーン等の第1高分子材料を塗布し、硬化させる処理とを有している。
【0151】
前記第1高分子材料は、例えば、硬化前の粘度が400mPa・s〜1000mPa・s程度の比較的低粘度の液状シリコーンを好適に用いることができる。
【0152】
このように、前記第1高分子材料として、硬化前の状態において低粘度の液状シリコーンを用いることによって、前記スリット部17の内部及び前記筒状部設置領域に、隙間の発生を有効に防止乃至は低減しつつ第1高分子材料を充填することができる。
【0153】
なお、この際、前記スリット部17の下側(前記弾性板の第2面側)の開口は、前記防護部材70によって閉塞されている。
従って、前記スリット部17に注入された第1高分子材料の硬化前の粘度が低粘度であったとしても、第1高分子材料が前記スリット部17の下側(第2面の側)の開口から流出することは有効に防止される。
【0154】
前記第1高分子材料が熱硬化型である場合には、前記筒状部設置領域への前記第1高分子材料の塗布後に、硬化温度(例えば、100℃〜150℃)の加熱を行うことにより、硬化処理を行うことができる。
【0155】
本実施の形態においては、前記製造方法は、前記第1封止部材設置工程の後であって、前記第2封止部材設置工程の前に、前記吸音材50を設置する吸音材設置工程を有している(図16)。
【0156】
この際、前記吸音材50を設置すべき領域は前記筒状部42によって囲まれており、従って、前記吸音材設置工程は、前記筒状部42によって囲まれる空間内に前記吸音材55を形成する発泡性シリコーン等の発泡性樹脂を塗布し、硬化させるように構成されており、これにより、前記吸音材を安定して設置することができる。
【0157】
前述の通り、本実施の形態においては、前記吸音材設置工程を前記第1封止部材設置工程の後に実行するように構成されているが、前記吸音材設置工程を前記第1封止部材設置工程の前に実行するように構成することも可能である。
この場合、前記筒状部材用型枠49は省略される。
【0158】
本実施の形態においては、前記第2封止部材設置工程は、前記第1封止部材設置工程及び前記吸音材設置工程の後に実施される。
【0159】
前記第2封止部材設置工程は、前記筒状部42及び前記吸音材50が設置された後に、前記筒状部42及び前記吸音材50の上面に、シリコーン等の第2高分子材料を塗布し、硬化させるように構成される(図1及び図3参照)。
【0160】
この場合、前記第2高分子材料は、硬化前の粘度が前記第1高分子材料よりも高粘度の液状シリコーン、例えば、硬化前の粘度が1000mPa・s〜100000mPa・s程度の高粘度の液状シリコーンを用いることができる。
【0161】
前記第2高分子材料が熱硬化型である場合には、前記筒状部42及び前記吸音材50の上面への前記第2高分子材料の塗布後に、硬化温度(例えば、100℃〜150℃)の加熱を行うことにより、硬化処理を行うことができる。
【0162】
前記製造方法は、前記閉塞部44(前記第2封止部材40b)が設置された後に、前記閉塞部44の外表面に前記補強板60を接着する補強板設置工程を含んでいる(図1及び図3参照)。
【0163】
これに代えて、前記第2封止部材40bの設置及び前記補強板60の設置を同時に行うことも可能である。
即ち、前記閉塞部44を形成する第2封止部材40bを別途に用意し、前記第2封止部材40bの外表面に前記補強板60を接着して、補強板付き第2封止部材を予め形成し、前記補強板付き第2封止部材を前記筒状部42及び前記吸音材50の上面に接着することによって、前記第2封止部材40b及び前記補強板60を設置することも可能である。
【0164】
本実施の形態に係る前記超音波トランスデューサー1Aは平板状の防護板75を有しているが(図1等参照)、前記防護板75に代えて防護容器175を備えることも可能である。
【0165】
図17に、前記防護容器175を備えた第5変形例に係る超音波トランスデューサー1Fの縦断面図を示す。
【0166】
前記防護容器175は、前記防護部材70の外表面に固着され、前記防護部材70の前記開口72に対応した位置に貫通孔177が設けられた端壁部176と、前記防護部材70、前記弾性板10及び前記封止部材44の側壁を囲繞するように前記端壁部176から延びる周壁部178とを有している。
【0167】
前記変形例1Fにおいては、前記補強板60は前記周壁部178の自由端側開口を閉塞するように前記周壁部178に固着される。
【0168】
前記防護容器175は、前記筒状部42及び前記閉塞部44を塗布する際の型枠としても作用する。
前記防護容器175は、例えば、エポキシ樹脂等の樹脂材料、又は、ステンレス、Ni-Fe合金、アルミ合金、チタン合金等の金属によって好適に形成される。
【0169】
図18に、他の防護容器175’を備えた第6変形例に係る超音波トランスデューサー1Gの縦断面図を示す。
【0170】
図17に示す変形例1Fにおいては、前記防護容器175の前記周壁部178は、前記防護部材70、前記弾性板10及び前記筒状部42の側面と接するように構成されている。
【0171】
これに代えて、図18に示す変形例1Gの防護容器175’は、前記防護容器175に比して、前記周壁部178の代わりに周壁部178’を有している。
前記周壁部178’は、前記防護部材70、前記弾性板10及び前記筒状部42の側面との間に間隙が存するように構成されている。
前記間隙には、前記閉塞部44を形成する前記第2高分子材料が充填されている。
【0172】
なお、本実施の形態1A、前記第5変形例1F及び前記第6変形例1Gにおいては、前記圧電素子30の上面には前記吸音材50が設けられ、且つ、前記封止部材40は前記充填部41及び前記筒状部42を形成する第1封止部材40aと前記閉塞部44を形成する第2封止部材40bとを有しているが、本発明は斯かる形態に限定されるものではない。
【0173】
例えば、前記吸音材50、前記第1封止部材40a及び前記第2封止部材40bに代えて単一の封止部材40’を備えることも可能である。
【0174】
図19図20及び図21に、それぞれ、本実施の形態(図1)、第5変形例(図17)及び第6変形例(図18)に係る超音波トランスデューサー1A、1F、1Gにおいて、前記吸音材50、前記第1封止部材40a及び前記第2封止部材40bに代えて、前記充填部41、前記筒状部42及び前記閉塞部44を一体的に有する単一の封止部材40’を備えた超音波トランスデューサー1A’、1F’、1G’の縦断面図を示す。
前記単一の封止部材40は’、前記第1封止部材40aと同一材料の前記第1高分子材料で形成され得る。
【0175】
実施の形態2
以下、本発明に係る超音波トランスデューサーの他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図22に本実施の形態に係る超音波トランスデューサー2Aの縦断面図を示す。
また、図23及び図24に、それぞれ、図22におけるXXIII-XXIII線に沿った断面図及びXXIV部拡大図を示す。
なお、図中、前記実施の形態1におけると同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明を適宜省略する。
【0176】
図22図24に示すように、本実施の形態に係る前記超音波トランスデューサー2Aは、主として、前記弾性板10の第1面10aに固着された質量部材210を備えている点、並びに、前記補強板60及び前記防護板75に代えて、スペーサ250を介して互いに対して連結される補強板260及び防護板275を備えている点において、前記実施の形態1に係る超音波トランスデューサー1Aと相違している。
【0177】
前記質量部材210は、前記振動領域12、前記低剛性領域26及び前記境界領域16の第1面を開放するように前記弾性板10の第1面10aに固着されている。
【0178】
本実施の形態においては、図22図24に示すように、前記質量部材210は、平面視において前記振動領域12及び前記低剛性領域26を囲むように前記拘束領域14の第1面に固着された振動領域用質量部材210aと、平面視において前記複数の拘束領域14の全体を囲むように前記ベース領域11に固着されたベース領域用質量部材210bとを含んでいる。
【0179】
前記質量部材210は、ステンレス、Ni-Fe合金等の厚さ0.1mm〜1.0mm程度の金属とされる。
前記質量部材210は、接着剤又はレーザーによるスポット溶接によって前記弾性板の所望位置に固着される。
【0180】
前記質量部材210を備えることにより、前記振動領域12から伝播する振動によって前記拘束領域14が振動することを有効に有効乃至は低減することができる。
【0181】
なお、図24に示すように、前記拘束領域用質量部材210aの基端面のうち前記配線体80上の位置する部分には、前記配線体80との干渉を防止する凹み又は切り欠き211が設けられている。
【0182】
斯かる構成を備えることにより、前記拘束領域用質量部材210aを前記振動領域12の全周に亘って設けつつ、前記拘束領域用質量部材210と前記配線体80との接触を有効に防止することができる。
【0183】
図22及び図24に示されるように、本実施の形態においては、前記質量部材210は、上端部が前記圧電素子30の上面よりも前記弾性板10の第1面10aから離間するように設けられている。
【0184】
本実施の形態においては、前記充填部41及び前記筒状部42を一体形成する前記第1封止部材40aは、一の低剛性領域26を囲繞する一の拘束領域14に固着された拘束領域用質量部材210aと、前記一の拘束領域14に対して前記境界領域16を挟んで対向する外方領域(隣接する他の拘束領域14、又は、隣接する前記ベース領域11)に固着された質量部材210(拘束領域用質量部材210a又はベース領域用質量部材210b)とによって挟まれる空間内に充填されており、上端部が前記質量部材210と同一位置とされている。
【0185】
また、前記吸音材50は、対応する圧電素子30が固着された振動領域12を囲繞する拘束領域14に固着された拘束領域用質量部材210aを型枠として、当該質量部材210a内において前記圧電素子30を覆うように充填されており、上端部が前記質量部材210aと同一位置とされている。
【0186】
図22に示すように、前記防護板275は、平面視において前記防護部材70に重合し且つ前記貫通孔77が設けられた中央部276と、前記中央部276から板面方向外方へ延びる延在部278とを有しており、前記貫通孔77及び前記開口72が位置合わせされた状態で前記中央部276が前記防護部材70の外表面に固着されている。
【0187】
前記補強板260は、平面視において前記弾性板10に重合する中央部262と、前記中央部262から板面方向外方へ延びる延在部264とを有している。
【0188】
そして、前記補強板260の延在部264及び前記防護板275の延在部278が所定長さを有するスペーサ250を介して互いに対して連結されている。
前記スペーサ250は、例えば、ステンレス等の金属製とすることができる。
ここで、前記スペーサ250の所定長さは、前記超音波トランスデューサー2Aの厚みに応じて設定される。
【0189】
本実施の形態においては、図22に示すように、前記スペーサ250は中空の筒状体とされており、前記スペーサ250の中空部に内挿されるネジ部材255を介して前記補強板260の延在部264及び前記防護板275の延在部278が連結されている。
【0190】
これに代えて、前記スペーサ250を前記補強板260の延在部264及び前記防護板275の延在部278に接着することも可能である。
【0191】
このように、前記スペーサ250を介して前記補強板260及び前記防護板275を連結することによって、前記超音波トランスデューサー2Aの強度を向上させることができる。
【0192】
なお、当然ながら、前記スペーサ250を介して前記補強板260及び前記防護板275を連結する構成は、前記実施の形態1に係る超音波トランスデューサー1Aに適用することも可能である。
【0193】
次に、前記超音波トランスデューサー2Aの製造方法の一例について説明する。
前記製造方法は、前記電気接続工程(図12及び図13)までは前記実施の形態1における製造方法と同一工程を有している。
【0194】
前記製造方法は、前記電気接続工程の後に、前記質量部材210を前記拘束領域14及び前記ベース領域11の所定箇所に固着する質量部材設置工程を有している(図25)。
【0195】
本実施の形態においては、前記質量部材設置工程は、図23に示すように、前記複数の拘束領域14にそれぞれ前記拘束領域用質量部材210aを固着する処理と、前記複数の拘束領域14の全体を囲繞する前記ベース領域11の所定箇所に前記ベース領域用質量部材210bを固着する処理とを含んでいる。
【0196】
前記質量部材210を構成する前記拘束領域用質量部材210a及び前記ベース領域用質量部材210bは、前述の通り、ステンレス、Ni-Fe合金等の厚さ0.1mm〜1.0mm程度の金属とされ、接着剤又はレーザーによるスポット溶接によって、それぞれの所定位置に固着される。
【0197】
次いで、前記製造方法は、前記吸音材50を設置する吸音材設置工程を有している(図26)。
この際、前記吸音材50を設置すべき領域は前記拘束領域用質量部材210aによって囲まれており、従って、前記拘束領域用質量部材210aによって囲まれる空間内において前記圧電素子30を覆うように発泡性シリコーン等の発泡性樹脂を充填することによって、前記吸音材50を安定して設置することができる。
【0198】
前記製造方法は、さらに、前記防護部材70を設置する防護部材設置工程及び前記防護板275を設置する防護板設置工程(図27)を有している。
【0199】
本実施の形態においては、前記防護部材設置工程及び前記防護板設置工程は、前記防護部材70を用意する処理と、前記防護部材70の外表面に予め前記防護板275を接着して防護プリアッセンブリを形成する処理と、前記防護プリアッセンブリを前記弾性板10の第2面10bに接着させる処理と有している。
【0200】
当然ながら、前記防護部材設置工程及び前記防護板設置工程を、前記防護部材70を前記弾性板10の第2面10bに接着させる処理と、前記防護部材70の外表面に前記防護板275を接着させる処理とを有するように変形することも可能である。
【0201】
なお、前記防護部材設置工程及び前記防護板設置工程は、前記質量部材設置工程及び前記吸音材設置工程の後に行うこともできるし、前記質量部材設置工程及び前記吸音材設置工程の前に行うこともできる。
若しくは、前記防護部材設置工程及び前記防護板設置工程を、前記質量部材設置工程及び前記吸音材設置工程の間に行うことも可能である。
【0202】
前記製造方法は、少なくとも前記質量部材設置工程及び前記防護部材設置工程が終了した後に、前記封止部材40を設置する封止部材設置工程を有している。
【0203】
前記封止部材設置工程は、前記充填部41及び前記筒状部42を一体的に形成する第1封止部材40aの設置工程と、前記閉塞部44を形成する第2封止部材40bの設置工程とを有している。
【0204】
前記第1封止部材設置工程は、前記質量部材210a、210bを型枠として用いて、前記筒状部42を設けるべき領域に第1高分子材料を塗布し且つ硬化させるように構成されている(図28)。
【0205】
詳しくは、前記第1封止部材設置工程は、隣接する一の拘束領域用質量部材210a及び他の拘束領域用質量部材210aの間、並びに、隣接する拘束領域用質量部210a材及びベース領域用質量部材210bの間に、第1高分子材料を塗布し、硬化させることにより、前記充填部41及び前記筒状部42を一体的に形成する第1封止部材40aを設置するように構成されている。
【0206】
前記製造方法は、前記第2封止部材設置工程の前で、且つ、少なくとも前記防護板275が設置された後に、前記補強板260を設置する工程を有している(図29)。
【0207】
前記補強板設置工程は、前記スペーサ250を介して前記防護板275の延在部278及び前記補強板260の延在部264を連結することで、前記補強板260を設置するように構成されている。
【0208】
前記製造方法は、前記補強板設置工程の後に、前記第2封止部材設置工程を実行する(図22)。
【0209】
本実施の形態においては、図22図24及び図29に示すように、前記補強板260には、内表面及び外表面を連通する貫通孔263が設けられており、前記第2封止部材設置工程は、前記補強板260の貫通孔263を介して外方から前記第2高分子材料を注入するように構成されている。
斯かる構成によれば、前記閉塞部44の厚みを制御性良く形成することができる。
【0210】
前述の通り、本実施の形態においては、前記質量部材設置工程は、前記複数の拘束領域14にそれぞれ拘束領域用質量部材210aを固着する処理と、前記ベース領域11の所定位置に前記ベース領域用質量部材210bを固着する処理とを含んでいる。
【0211】
なお、前述の通り、本実施の形態においては、前記吸音材設置工程の後に前記第1封止部材設置工程を実行するように構成されているが、これに代えて、前記第1吸音材設置工程を前記第1封止部材設置工程の後に行うことも可能である。
【0212】
即ち、前記質量部材210a、210bが設置され且つ前記防護部材70が設置された後に、前記吸音材50より先に前記第1封止部材40aを設置し、その後に、前記吸音材50を設置することも可能である。
【0213】
ここで、前記複数の拘束領域用質量部材210a及び前記ベース領域用質量部材210bは、それぞれ、別体とされており、従って、前記複数の拘束領域用質量部材210a及び前記ベース領域用質量部材210bのそれぞれについて、位置合わせ処理及び固着処理が必要となる。
【0214】
この点に関し、前記複数の拘束領域用質量部材210a及び前記ベース領域用質量部材210bが下記ブリッジ215、216を介して一体的に連結されている質量板200を用いれば、前記質量部材設置工程の簡素化及び高速化を図ることができる。
【0215】
図30に、前記電気接続工程後の前記弾性板10に前記質量板200を固着したプリアッセンブリの平面図を示す。
また、図31及び図32に、それぞれ、図30におけるXXXI-XXXI線に沿った断面図及び図31におけるXXXII部拡大図を示す。
【0216】
図30図32に示すように、前記質量板200は、前記複数の拘束領域用質量部材210aと、前記ベース領域用質量部材210bと、隣接する一の拘束領域用質量部材210a及び他の拘束領域用質量部材210aの上端部同士を連結する拘束領域間ブリッジ215と、隣接する拘束領域用質量部材210a及びベース領域用質量部材210bの上端部同士を連結する拘束領域/ベース領域間ブリッジ216とを有している。
【0217】
前記拘束領域間ブリッジ215及び前記拘束領域/ベース領域間ブリッジ216は、破断容易なように、前記拘束領域用質量部材210a及び前記ベース領域用質量部材210bよりも薄肉とされている。
【0218】
前記質量板200は、例えば、前記拘束領域用質量部材210a及び前記ベース領域用質量部材210bの高さに応じた厚み(例えば、0.2mm〜1.0mm)を有するステンレス等の板状金属ブロックを用意し、前記金属ブロックの一方側の表面から前記拘束領域間ブリッジ215及び前記拘束領域/ベース領域間ブリッジ216に対応した領域をハーフエッチングすることによって効率的に形成することができる。
【0219】
前記拘束領域間ブリッジ215及び前記拘束領域/ベース領域間ブリッジ216は、例えば、0.03mm〜0.07mm程度の厚みとすることができる。
【0220】
前記質量板200を用いた質量部材設置工程は、前記質量板200を所定位置で前記弾性板10の第1面10aに固着する処理と、前記拘束領域間ブリッジ215及び前記拘束領域/ベース領域間ブリッジ216を切断して、前記複数の拘束領域用質量部材210a及び前記ベース領域用質量部材210bを分離させる処理とを有するものとされる。
【0221】
図33に、前記拘束領域間ブリッジ215及び前記拘束領域/ベース領域間ブリッジ216が切断された状態の図32に対応した縦断面図を示す。
【0222】
前記拘束領域間ブリッジ215及び前記拘束領域/ベース領域間ブリッジ216の切断は、例えば、レーザー光の照射によって行うことができる。
【0223】
前記質量板200を用いた質量部材設置工程によれば、質量部材210a、210bの設置に際し、位置合わせ処理及び固着処理を1回行うだけでよく、質量部材210a、210bの設置の簡素化及び高速化を図ることができる。
【0224】
本実施の形態に係る超音波トランスデューサー2Aに対しても種々の変形が可能である。
図34に、本実施の形態に係る超音波トランスデューサー2Aに比して、前記防護板275に代えて前記防護容器175を、前記補強板260に代えて補強板60’を、それぞれ備えた変形例に係る超音波トランスデューサー2Bの縦断面図を示す。
【0225】
前記補強板60’は、内表面及び外表面を連通する貫通孔63が設けられている点を除き、前記補強板60と同一構成とされている。
【0226】
また、図35に、前記変形例2Bに比して、前記防護容器175に代えて前記他の防護容器175’を備えた変形例に係る超音波トランスデューサー2Cの縦断面図を示す。
【0227】
なお、前記防護容器175又は前記防護容器175’を備えた構成においては、前記充填部41、前記筒状部42及び前記閉塞部44を一体的に有する前記封止部材40’を備えることができる。
【0228】
図36に、前記変形例2Cにおいて、前記充填部41、前記筒状部42及び前記閉塞部44を一体的に有する前記封止部材40’を備えた変形例2C’の縦断面図を示す。
前記封止部材40’は、前記スリット部17への前記充填部41の充填を考慮して、硬化前の状態において低粘度の前記第1高分子材料を用いても、前記防護容器175’の存在によって、前記第1高分子材料が硬化前に流れ出ることを防止できる。
【0229】
さらに、図37に、本実施の形態に係る超音波トランスデューサー2Aに比して、前記防護板275に代えて前記防護板75を備え、且つ、前記補強板260を削除した変形例に係る超音波トランスデューサー2Dの縦断面図を示す。
【0230】
実施の形態3
以下、本発明に係る超音波トランスデューサーのさらに他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図38に、本実施の形態に係る超音波トランスデューサー3Aの部分縦断面図を示す。
また、図39に、図38おけるXXXIX-XXXIX線に沿った前記超音波トランスデューサー3Aの横断平面図を示す。
なお、図中、前記実施の形態1及び2におけると同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明を適宜省略する。
【0231】
本実施の形態に係る超音波トランスデューサー3Aは、主として、前記弾性板10及び前記複数の圧電素子30の代わりに弾性板310及び複数の圧電素子330を有している点において、前記実施の形態1に係る超音波トランスデューサー1Aと相違している。
【0232】
前記弾性板310は、板厚方向一方側及び他方側をそれぞれ向く第1面310a及び第2面310bを有し、板厚方向に振動可能な導電性金属板によって形成されている。
【0233】
図38及び図39に示すように、前記弾性板310は、板面方向に並列状態で設けられ、前記複数の圧電素子330がそれぞれ装着される複数の振動領域312と、平面視において前記複数の振動領域312をそれぞれ囲む複数の低剛性領域326と、平面視において前記複数の低剛性領域326をそれぞれ囲む拘束領域314と、一の拘束領域314と当該一の拘束領域314より径方向外方に位置する外方領域とを区画する境界領域316とを有している。
【0234】
前記弾性板310は、前記弾性板10と同様に、前記複数の拘束領域314の全体を囲むベース領域311を有している。
従って、一の拘束領域314にとっては、隣接する他の拘束領域314及び隣接するベース領域311が前記外方領域となる。
【0235】
前記境界領域316は、前記境界領域16と同様、前記スリット部17及び前記ブリッジ部18を有している。
【0236】
前記低剛性領域326は、第1面が前記振動領域312及び前記拘束領域314の第1面よりも第2面に近接された、第1面側に開く凹状の薄肉領域とされている。
【0237】
即ち、前記弾性板310の第2面310bは、前記振動領域312、前記低剛性領域326及び前記拘束領域314に亘って面一とされる一方で、前記第1面310aは前記低剛性領域326において凹まされている。
【0238】
前記圧電素子330は、前記振動領域312よりも大きく且つ前記低剛性領域326よりも小さい外径を有している。
即ち、前記圧電素子330は、平面視において前記振動領域312と重合する中央部331と、前記中央部331から径方向外方へ延び、平面視において前記低剛性領域326内において終焉する延在部333とを有している。
【0239】
図38に示すように、前記中央部331における下面電極層が前記振動領域312の第1面に絶縁性接着剤340によって固着され、且つ、前記延在部おける下面電極層が導電性接着剤345によって前記低剛性領域326の第1面に電気的且つ機械的に接続されている。
【0240】
なお、前記圧電素子330の上面電極層と対応する前記配線導体85とは、前記実施の形態1におけると同様に、導電性接着剤又ははんだ87によって行われており、前記導電性接着剤又ははんだ87と前記弾性板310の第1面310a及び前記導電性接着剤345との間には絶縁性接着剤88が介挿されている。
【0241】
本実施の形態においては、図39に示すように、前記振動領域312は平面視円形状とされ、前記圧電素子330は平面視矩形状とされ、且つ、前記低剛性領域326は平面視矩形状とされているが、当然ながら、本発明は斯かる形状に限定されるものではない。
【0242】
即ち、前記圧電素子330の外径が、前記振動領域312の外径よりも大で且つ前記低剛性領域326の外径よりも小である限り、前記振動領域312、前記圧電素子330及び前記低剛性領域326の全てを平面視円形状とする等、種々の形状が可能である。
【0243】
好ましくは、前記低剛性領域326は、前記圧電素子330と同一外形状で且つ前記圧電素子330の外径より若干大きい外径を有するものとされる。
斯かる構成によれば、前記低剛性領域326の外周縁を、前記振動領域312に前記圧電素子330を実装させる際のアライメントマークとして利用することができる。
【0244】
このように、本実施の形態においては、前記振動領域312と前記圧電素子330の中央部331との機械的接合を絶縁性接着剤340によって行うことで前記圧電素子330の支持安定化を図りつつ、前記低剛性領域326と前記圧電素子330の延在部333の下面電極層とを導電性接着剤345によって連結することで前記圧電素子330の下面電極層と前記弾性板310との電気的連結を得ている。
【0245】
さらに、前記超音波トランスデューサー3Aにおいては、図38に示すように、前記低剛性領域326を形成する薄肉領域の底面(第1面)には、前記振動領域312の第1面310aよりも低い隆起部328であって、前記薄肉領域の内側面と共働して接着剤滞留領域を形成する隆起部328が設けられている。
【0246】
そして、前記延在部333における下面電極層と前記低剛性領域326の第1面310aとを電気的に接続する前記導電性接着剤345は前記接着剤滞留領域内に設けられている。
【0247】
斯かる構成によれば、前記圧電素子330の中央部331及び前記振動領域312を機械的に接合する絶縁性接着剤340と、前記圧電素子330の延在部333の下面電極層及び前記低剛性領域326を電気的に接続する導電性接着剤345とが意に反して混合し、前記圧電素子330の下面電極層と前記弾性板310との電気接続の信頼性が損なわれることを有効に防止することができる。
【0248】
なお、本実施の形態においては、図38及び図39に示すように、前記隆起部328は2箇所において設けられているが、当然ながら、本発明は斯かる形態に限定されるものでは無く、前記隆起部328を1箇所のみ又は3箇所以上設けることも可能である。
【0249】
本実施の形態に係る超音波トランスデューサー3Aは、例えば、前記実施の形態1に係る超音波トランスデューサー1Aの製造方法に比して、下記変更を加えた製造方法によって好適に製造され得る。
【0250】
即ち、本実施の形態の製造方法においては、前記スリット部17を形成する前記弾性板エッチング工程は、前記スリット部17をエッチング除去するフルエッチング処理に加えて、前記低剛性領域326をハーフエッチングするハーフエッチング処理を有している(図40(a))。
【0251】
前記ハーフエッチング処理に際し、前記隆起部328に対応した領域については、サイドエッチング量の2倍よりも若干狭い幅を有するレジストマスクで覆っておく。これにより、前記隆起部328をその頂上の位置が前記振動領域312及び前記拘束領域314の第1面310aより低くなるように残すことができ、圧電素子330の下面との接触を防止することができる。
【0252】
次に、前記接着剤滞留領域内に導電性接着剤328を、前記振動領域312に絶縁性接着剤340をそれぞれ塗布し(図40(b))、前記圧電素子330を装着後(図40(c))、導電性接着剤328及び絶縁性接着剤340の硬化処理を行う。
【0253】
なお、図38中の符号346は、導電性接着剤345及び前記弾性板310間の電気接続の信頼性を向上させる為に、前記接着剤滞留領域への導電性接着剤345の塗布前に、前記接着剤滞留領域の第1面に設けられるAuメッキである。
【符号の説明】
【0254】
1A〜1G、2A〜2D、3A 超音波トランスデューサー
10、310 弾性板
10a、310a 第1面
10b、310b 第2面
11、311 ベース領域
12、312 振動領域
14、314 拘束領域
16、316 境界領域
17 スリット部
17a、17b 第1及び第2板面方向スリット
18 ブリッジ部
26、326 低剛性領域
27 溝
28a 開口部
28b 連結部
30、330 圧電素子
40 封止部材
40a 第1封止部材
40b 第2封止部材
41 充填部
42 筒状部
44 閉塞部
50 吸音材
60、260 剛性補強板
70 防護部材
72 開口
75、175、275 防護板
77、177 貫通孔
80 配線体
82 絶縁層
85 配線導体
87 導電性接着剤又ははんだ
88 絶縁性接着剤
110 弾性板形成体
182 絶縁層形成部材
185 配線導体形成部材
210 質量部材
210a 拘束領域用質量部材
210b ベース領域用質量部材
215 拘束領域間ブリッジ
216 拘束領域/ベース領域間ブリッジ
250 スペーサ
262 中央部
263 貫通孔
264 延在部
276 中央部
278 延在部
328 隆起部
331 中央部
333 延在部
340 絶縁性接着剤
345 導電性接着剤
【要約】
本発明に係る超音波トランスデューサーは、板厚方向に振動可能な弾性板と、弾性板の第1面に並列状態で固着された複数の圧電素子と、前記複数の圧電素子を覆う高分子材料製の封止部材とを備え、前記弾性板は、前記複数の圧電素子がそれぞれ装着される複数の振動領域と、複数の振動領域をそれぞれ囲む複数の低剛性領域と、複数の低剛性領域をそれぞれ囲む複数の拘束領域と、一の拘束領域と当該一の拘束領域より径方向外方に位置する外方領域とを区画する境界領域とを含み、前記境界領域は、前記一の拘束領域及び前記外方領域を分断するスリット部と、前記一の拘束領域を前記外方領域に機械的に連結するブリッジ部とを有している。前記封止部材は、複数の圧電素子のそれぞれを平面視において囲む複数の筒状部であって、基端面が前記スリット部を跨ぐ位置で弾性板の第1面に接合された複数の筒状部と、複数の筒状部の自由端側をそれぞれ閉塞する複数の閉塞部と、前記筒状部の基端面から前記スリット部の内部へ延びる充填部とを有している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40