【実施例】
【0020】
(実施例)
図1は、実施例の建材2の平面図を示している。建材2は、樹脂層4と、樹脂層4の裏面に付着しているネット6を備えている。ネット6の表面に樹脂層4が付着しているといってもよい。型内の底面に沿ってネット6を敷き、その型内に硬化前の樹脂を流しいれ、型内で樹脂を硬化することで、ネット6の表面に樹脂層4が付着している建材を製造することができる。樹脂層4は、1辺が約50cmの略正方形であり、4隅に切欠き4a,4b,4c,4dが形成されている。各切欠きの1辺は約2.5cmである。ネット6は、樹脂層4の左辺から外側に延びており、延びている部分6eの幅Lは約5cmである。ネット6は、樹脂層4の下辺からも外側に延びており、延びている部分6fの幅Lは約5cmである。切欠き4aの部分にもネット6aが延びている。切欠き4aの位置で延びている部分6aは、1辺が約5cmの正方形である。切欠き4bの部分にもネット6bが延びている。切欠き4bの位置で延びている部分6bは、1辺が約5cmの正方形である。部分6bと部分6eは、部分的に重複している。部分6bの左側では、ネット6が切欠かれている。切欠き6jは、1辺が2.5cmである。切欠き6jが形成されているために、建材2を順に貼っていったときに、樹脂層4の切欠き以外の分では、先に貼られた樹脂層4の表面にネット6が被ってくることがない。切欠き4cの部分にもネット6cが延びている。切欠き4cの位置で延びている部分6cは、1辺が約5cmの正方形である。部分6cと部分6e及び部分6fは部分的に重複している。切欠き4dの部分にもネット6dが延びている。切欠き4dの位置で延びている部分6dは、1辺が約5cmの正方形である。部分6dと部分6fは部分的に重複している。部分6aは、ネット6e,6fが延びている樹脂層4の左辺と下辺に接しない位置にある頂点に形成されている切欠き4aに延びている。
【0021】
図8に、建材2の断面図が示されている。樹脂層4はネット6の表面に付着している。施工後は、下地層60と樹脂層4はネット6の網目を通して一体化する。ネット6は、下地層60と樹脂層4の一体化層の中間に埋め込まれ、下地層60によってネット6から樹脂層4が剥がれることが防止される。ネット6を後記するアンカーピンで躯体50に固定すると、樹脂層4も躯体50に固定される。
【0022】
図6に示すように、本実施例の場合は、躯体50の表面にモルタル層52を介してタイル54が貼られている。既存仕上げ層がタイル54の場合を例示しているが、既存仕上げ層はタイルに限定されない。なお参照番号56は、目地セメントである。
躯体表面を補修する際には、
図7に示すように、既存仕上げ層54の表面にプライマーを塗布し、プライマー膜の表面に、樹脂またはセメントまたはそれら混合物(接着剤となる)を塗布する。接着剤となる層を、以下では下地層60という。下地層60は、建材2のサイズごとに塗布してもよいし、複数枚の建材に対応する面積の躯体表面に一度に塗布してもよい。ただし、塗布した下地層60が硬化する前に貼り付けることができる建材の枚数に合わせて一度に塗布する下地層60の面積を決定する。
下地層60を塗布した後に建材2を貼りつけていく。この作業は下地層60が硬化する前に実施する。硬化前の下地層60の表面にネット6を密着させると、ネット6の網目を介して下地層60と樹脂層4が接着して一体化する。下地層60には、樹脂層4と融合して一致化する樹脂材料を用いることが好ましい。この結果、
図8に示すように、ネットの網目を介して下地層60と樹脂層4が一体化する。下地層60と樹脂層4がネット6の網目を通して結合することで一体化し、その一体化層の中間にネット6が埋め込まれた状態が得られる。
【0023】
図1は、躯体表面に最初の1枚の建材2を貼った状態を示している。
図2は、その左隣に2枚目の建材22を貼った状態を示している。施工時には、先に貼った建材2からネットが延びている側の隣接位置に、次の建材22を貼っていく。このために、1枚目の建材2から延びているネット6eは2枚目の建材22で覆われる。2枚目の建材22の右辺に沿った位置では、2枚のネットが重複することになる。本実施例では、末尾の数字が2であることは、建材であることを意味し、10の桁の数字が、2枚目・3枚目・4枚目であることを示している。
【0024】
図3は、1枚目の建材2の下隣に3枚目の建材32を貼った状態を示している。実際の施工時には、先に貼った建材の左隣に次の建材を貼っていき、その列が張り終えた後に、その下の列に貼っていく。
図1から
図4は、4枚の建材が隣接する位置の切欠き(最初の建材2の切欠き4cと、2枚目の建材22の切欠き24dと、3枚目の建材32の切欠き34bと、4枚目の建材42の切欠き44aが連続する位置)において、4枚のネット6が重複する過程を示すものであり、左側に連続する建材の図示が省略されている。
図3に示すように、3枚目の建材32を貼ることで、1枚目の建材2から延びているネット6fは3枚目の建材32で覆われる。3枚目の建材32の上辺に沿った位置では、2枚のネットが重複することになる。
【0025】
図4は、2枚目の建材22の下隣であって、3枚目の建材32の左隣の位置に、4枚目の建材42を貼った状態を示している。4枚目の建材42を貼ることで、2枚目の建材22から延びているネット26fは4枚目の建材42で覆われる。4枚目の建材42の上辺に沿った位置では、2枚のネットが重複することになる。また、4枚目の建材42を貼ることで、3枚目の建材32から延びているネット36eは4枚目の建材42で覆われる。4枚目の建材42の右辺に沿った位置では、2枚のネットが重複することになる。また、4枚目の建材42を貼ると、4枚の建材が隣接する位置において、4個の切欠き(最初の建材2の切欠き4cと、2枚目の建材22の切欠き24dと、3枚目の建材32の切欠き34bと、4枚目の建材42の切欠き44a)が連続し、正方形の切欠き5が出現する。その正方形の切欠き5では、4枚のネット6(最初の建材2のネット6cと、2枚目の建材22のネット26dと、3枚目の建材32のネット36bと、4枚目の建材42のネット46a)が重複することになる。
【0026】
図5は、4個の切欠き(最初の建材2の切欠き4cと、2枚目の建材22の切欠き24dと、3枚目の建材32の切欠き34bと、4枚目の建材42の切欠き44a)が連続することで出現する正方形状の切欠き5において、4枚のネット6(最初の建材2のネット6cと、2枚目の建材22のネット26dと、3枚目の建材32のネット36bと、4枚目の建材42のネット46a)が重複する関係を、より分かりやすく示している。また、4枚目の建材を貼ることで、前記の正方形状の切欠き5以外の部分では、樹脂層の表面側にネットが露出することがないことが確認される。特に、
図5(3)に示すように、3枚目の建材32のネット36には切欠き36jが形成されており、
図5(4)に示すように、4枚目の建材42のネット46の切欠き44aで延びているネット46aの形状は、4個の切欠きが連続することで出現する正方形状の切欠き5に対応している。そのために、正方形状の切欠き5の内部では4枚のネット6が重複し、切欠き5以外の部分では樹脂層4の表面側にネット6が露出することがないことが確認される。
【0027】
図8以降は、4枚の建材が貼られた後の断面図を示している。1枚目の建材2から、4個の切欠き4c,24d,34b,44aが連続することで形成される正方形状の切欠き5を経て、3枚目の建材32に至る線分に沿った断面を示している。
【0028】
躯体表面に建材を貼ったら、後記するアンカーピンを使ってネット6を躯体表面に固定していく。本実施例では、4個の切欠き4c,24d,34b,44aが連続することで出現する正方形状の切欠き5の位置において、アンカーピンを躯体50に固定する。すなわち、4枚のネット6(最初の建材2のネット6cと、2枚目の建材22のネット26dと、3枚目の建材32のネット36bと、4枚目の建材42のネット46a)が重複している位置で、アンカーピンを躯体50に固定する。
【0029】
図9は、重複している4枚のネット越しに、躯体50に穿孔した状態を示す。孔62が形成される。
図10は、アンカーピン64を孔62に挿入した状態を示している。アンカーピン64は、ネット6の網目よりも大きな頭部65を備えており、その頭部65が重複したネット6c,26d,36b,46aを躯体50側に押し付ける。
図10以降では、切欠き部における4枚のネット6c,26d,36b,46aが密着して1枚となっている状態を図示している。
【0030】
図11は、アンカーピン64に芯棒70を打ち込む様子を示している。アンカーピン64の軸芯に沿って貫通孔66が形成されている。その貫通孔66の壁面は、アンカーピンの先端部では傾斜しており(参照番号68を参照)、アンカーピンの先端に向かって貫通孔の径は細くなっている。そこに芯棒70を打ち込むと、
図12に示すように、アンカーピン64の先端部の直径が拡大する。そのために、アンカーピン54の先端近傍の拡大された側壁72は、コンクリートの躯体50に喰い込み、アンカーピン64が躯体50に強固に固定される。なお、必要であれば、芯棒70を打ち込むに先だって、貫通孔から接着剤を注入しておいてもよい。
図13は、4個の切欠き4c,24d,34b,44aが連続することで出現した正方形状の切欠き5の位置に、装飾板74を貼った状態を示す。装飾板74を貼ると、ネット6とアンカーピン64が被覆されて外観が向上する。また装飾板74がポイントとなって躯体表面の意匠性が向上する。
【0031】
ピンネット工法では、1辺が50cmの正方形格子の各頂点位置にアンカーピンを固定することが推奨されている。また、ネットとネットの継ぎ目では、5cmのオーバーラップを設けることが推奨されている。実施例の建材2を用いると、上記の条件を満たすことができる。
【0032】
本実施例の建材2では、樹脂層4が中間層と表面層を兼用している。そこで、建材2を貼り、アンカーピンを固定し、必要なら装飾板74を貼ることでピンネット工法が完成する。従来のピンネット工法と比較すると、必要工程数を著しく削減することができる。
【0033】
本実施例では、4個の切欠きが連続することで出現する正方形状の切欠き5の位置にアンカーピン64を固定する。さらに、4枚目の建材42の上辺に沿った位置、及びまたは右辺に沿った位置で、樹脂層4越しにアンカーピンを固定してもよい。
装飾性と耐久性に高いアンカーピンを用いる場合には、アンカーピンの頭部が樹脂層4の表面に露出していてもよい。その場合には、樹脂層4の四隅に切欠きを設けなくてもよい。ネット6e,6fを使って重ね張りし、隣接するネットが重複する位置で樹脂層4越しにアンカーピンを固定していけば、ピンネット工法が完成する。
【0034】
(第2実施例)
樹脂層4に代えて、金属板、陶器板(陶器タイル)、磁器板(磁器タイル)あるいはガラス板といった材質で形成した壁パネルを利用してもよい。壁に用いることができる材質であれば、壁パネルの材質は特に限定されない。
壁パネルを利用する場合は、
図14に示すように、ネット6の表面に接着剤80を利用して壁パネル82を付着させる。
図19を参照して後記するように、接着剤80はネット6の網目を通して下地層60に一体化するために、ネット6と壁パネル82は強固に付着する。
【0035】
壁パネル82に躯体に対する付着力を強化するために、
図15に示すように、壁パネル82の裏面に柱状の突起82aを形成してもよい。建材を躯体に貼り付ける際に、突起82aを受け入れる孔を躯体に穿孔し、そこにケミカルアンカー技術によって柱状突起82aを固定すると、壁パネル82が躯体からはがれることを防止することができる。
図16に示すように、壁パネル82の裏面に凹部82bを形成してもよい。凹部82bの横断面が裏面側で狭く、表面側で拡大していることが好ましい。凹部82b内にネット6が入り込んだ状態で接着剤80で固定すると、ネット6と壁パネル82の付着量が増大する。
【0036】
図17は、4枚の壁パネル82,84,86,88の境界に出現する切欠き92と、切欠き92に埋め込んだアンカーピンの頭部94を示している。
図18は、アンカーピンの頭部94に、装飾・剥離防止板96を固定した状態を示している。装飾・剥離防止板96は、隣接する4枚の壁パネル82,84,86,88の一部を被覆し、躯体側に押し付けている。装飾・剥離防止板96は、切欠き92の周囲を装飾し、4枚の壁パネル82,84,86,88が躯体から剥離するのを防止する。
図19は、
図18の断面を示す。アンカーピンの頭部94と、装飾・剥離防止板96以外の点は、
図13と同じであり、重複説明を省略する。
図19に示すように、この実施例で用いるアンカーピンの頭部94の外周にはねじが切られている。装飾・剥離防止板96の裏面には、頭部94のねじに噛み合うねじが切られており、両者を噛み合わせることで、装飾・剥離防止板96はアンカーピン64に固定される。アンカーピン64に固定された装飾・剥離防止板96が4枚の壁パネル82,84,86,88の頂点近傍を躯体に向けて押し付けるので、壁パネル82,84,86,88が躯体から剥離することがない。装飾・剥離防止板96はアンカーピン64に固定されるものであり、全体をアンカーピンということができる。アンカーピン本体64と装飾・剥離防止板96でアンカーピンを構成している。
【0037】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。