特許第6552203号(P6552203)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6552203液体デフレクタを備えている気体/液体交換カラム用の分配トレイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552203
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】液体デフレクタを備えている気体/液体交換カラム用の分配トレイ
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20190722BHJP
   B01J 19/32 20060101ALI20190722BHJP
   B01D 3/32 20060101ALI20190722BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   B01J19/00 311Z
   B01J19/32
   B01D3/32 A
   B01D53/18 130
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-9198(P2015-9198)
(22)【出願日】2015年1月21日
(65)【公開番号】特開2015-136699(P2015-136699A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2017年12月12日
(31)【優先権主張番号】1450482
(32)【優先日】2014年1月21日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ロエステ
(72)【発明者】
【氏名】ヤシーヌ アルン
【審査官】 菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第96/028232(WO,A1)
【文献】 特開平08−150314(JP,A)
【文献】 特開昭61−035801(JP,A)
【文献】 特開平07−047258(JP,A)
【文献】 実開昭57−128332(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00
B01D 3/32
B01D 53/18
B01J 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体と液体との間での熱および物質の少なくとも一方の交換を意図したカラム用分配トレイであって、前記トレイ(2)に前記気体を通過させる手段(4)と、前記トレイ(2)に前記液体を通過させる少なくとも1個のチムニー(6)と、を有するトレイにおいて、
前記トレイ(2)は、前記チムニー(6)からの前記液体を好ましい方向に分配するように前記トレイの下部よりも下に突出している液体分配手段(5)をさらに有し、
前記トレイ(2)は、構造化されている充填物(3)の上方に配置されており、
前記液体分配手段(5)は、横断平面内で、前記構造化されている充填物(3)の上部の層の複数のプレートの主方向に対して実質的に垂直に向いており、
前記液体分配手段は、少なくとも1個の液体通過手段(7、11)を備えているパイプ(5)を有しており、
前記パイプは、該トレイ(2)に実質的に平行であり、
前記パイプ(5)は、前記チムニー(6)からの前記噴流を前記液体通過手段(7、11)に向けて分散させる分散プレート(8)を有していることを特徴とする、トレイ。
【請求項2】
前記液体分配手段(5)は、前記液体を少なくとも1つの噴流の形態で分配する、請求項1に記載のトレイ。
【請求項3】
前記液体分配手段(5)は、ねじ留め、溶接、接着、または前記チムニー(6)への挿入によって、前記チムニー(6)に固定されている、請求項1または2に記載のトレイ。
【請求項4】
前記気体通過させる手段は、前記トレイ(2)の上部よりも上に突出しているケーシング(4)からなる、請求項1ないしのいずれか1項に記載のトレイ。
【請求項5】
前記液体通過手段は、前記パイプ(5)上に配置されているオリフィス(7、11)またはチューブである、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のトレイ。
【請求項6】
前記パイプ(5)は、前記パイプ(5)の軸線方向に揃えられている複数のオリフィス(7)またはチューブを有している、請求項に記載のトレイ。
【請求項7】
前記オリフィスは、スロット(11)の形状を有している、請求項に記載のトレイ。
【請求項8】
前記液体通過手段は、前記液体分配手段の上部に位置しており、
前記液体分配手段(5)は、前記液体を下側に送るデフレクタ(12)を前記液体通過手段の出口の位置に備えている、請求項に記載のトレイ。
【請求項9】
前記液体分配手段(5)は、数個の前記チムニー(6)によって共有されている、請求項1ないしのいずれか1項に記載のトレイ。
【請求項10】
気体と液体との間での熱および物質の少なくとも一方の交換を意図したカラムであって、
2つの流体が、構造化されている充填物(3)によって接触するカラムにおいて、
2つの前記流体を前記構造化されている充填物(3)上に分配する、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のトレイ(2)を少なくとも1つ有していることを特徴とする、カラム。
【請求項11】
前記液体分配手段(5)は、横断平面内で、前記構造化されている充填物(3)の上部の層の複数のプレートの方向に対して実質的に垂直に向いている、請求項10に記載のカラム。
【請求項12】
気体処理、CO2回収、蒸溜、または空気変換方法への、請求項10または11に記載のカラムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体/液体接触カラムの分野に関し、特に、気体処理ユニット、CO回収ユニット、または蒸溜ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
気体処理ユニット、アミン洗浄過程を使用するCO回収ユニット、および蒸溜ユニットの少なくともいずれかは、気体と液体との間で物質および熱の少なくとも一方を交換するための複数のカラムを有している。複数のカラムは、例えば、液体状または気体状の流体を吸収し再生する複数のカラムであってよい。これらのカラムは、気体/液体の向流または並流の流れの複数の条件下で動作する。
【0003】
これらの気体処理ユニット、CO回収ユニット、蒸溜ユニット、および脱水ユニットの少なくとも1つで使用される複数のカラムは、複数のカラム内を循環する気体と流体との間の物質および熱交換の少なくとも一方の原理の下で一般的に動作する。図1は、分配トレイを備えている気体処理カラム上部1の特定の状態を示している。従来は、この気体処理カラム1は、接触器、特に充填物で満たされている数個の部分3を有しており、分配トレイ2は各部分3の上方に配置されている。気体/液体接触器3は、交換が行われるように気体Gを液体Lに接触させる。
【0004】
例えば、吸収/再生または蒸溜用の複数のカラムで使用される標準的な複数の分配トレイ2は、気体Gを通過できるようにする複数のチムニー4(図2を参照)つまりケーシングを備えている収集器/分配トレイからなる。流体の分配は、トレイ2の下部に位置している複数のオリフィス5を流体が通過することによって起こり、気体の分配はケーシング4を通して起こる。各ケーシング4は、向流または並流動作モードに従い、気体を、カラム1の下部からカラム1の上部へ、または上部から下部へ通過させる。複数のケーシング4は、トレイ2の一方の側を越えて向こう側に延びており、トレイ2に対して垂直である。各ケーシング4は、トレイ2のいずれかの側で開いている内側容積を区切る例えば平行6面体または円柱状の数個の壁からなる。液体が複数のケーシング4に流入するのを防止するために、トレイ2(向流または並流モードに従って)の上方で開いている気体出口または入口は、キャップによって覆われる(先端面取部とも呼ばれる)ことが好ましい。分配トレイ2の目的は、液体Lを気体/液体接触器3上に均一に分配することである。
【0005】
気体と液体との間の交換を最適化するために、多くの分配トレイが設計されてきた。これらの分配/収集トレイは、主に以下の2つの大きな集団に分かれる。
【0006】
−英国特許第1,169,878号明細書、米国特許第4,808,350号明細書、米国特許第4,472,325号明細書、米国特許第4,427,605号明細書、米国特許第4,839,108号明細書、仏国特許発明第2,203,659号明細書に記載されているような複数のチムニーを備えている分配/収集装置。この種類の複数のチムニーを備えている装置については、液体は、トレイ上に設けられている複数のオリフィスを介して、あるいは、複数のオリフィスまたは複数のスロットを備えている複数の液体通路チムニー(図2の例を参照)を介して分配され、気体は複数の気体通路チムニーまたはケーシングを通して分配される。液体の分配は、トレイに設けられている複数のオリフィスを通して、または複数の液体通路チムニーによって起こる。トレイ上に設けられている複数のオリフィスを通した液体分配は、液体の流速の高い柔軟性を得ることができないことがよく知られている。複数のチムニーを使用した液体分配は、良好な柔軟性をもたらすが、多くのオリフィスやチムニーを使用しないと、接触器上で流体を均一に分配することができず、複雑で重いトレイ(多数の液体通路チムニー)になる。
【0007】
−米国特許第4,909,967号明細書、米国特許第4,816191号明細書、米国特許第4,981,265号明細書、独国特許発明第2,752,391号明細書、国際公開第8,802,647号、仏国特許発明第2,569,129号明細書に記載されているような専用の供給分配器(上流収集装置または中間供給)を含む分配ケーシングを備えている装置、または米国特許第44,689,183号明細書、米国特許第5,132,055号明細書、米国特許第4,432,913号明細書に記載されているような気体の通過のための複数のケーシングを備えている分配/収集装置。これらの分配器型は、複数の気体通路ケーシング上に配置されている複数の液体分配装置を備えることがほとんどである。
【0008】
さらに、接触器上に液体分配用の複数のデフレクタを備えている複数の分配トレイが開発されている(例えば米国特許出願公開第2010−019,061号明細書、米国特許出願公開第2009−0,134,063号明細書、米国特許第5,403,561号明細書、中国特許出願公開第100,364,652号明細書を参照)。しかし、それらのほとんどは、デフレクタの目的が液体を液滴の形態で分散させることである並流条件の下で動作する複数のカラム用に設計されている。ここで、向流プロセスで使用される複数の液体分配器において、プロセスの効率を低下させ、気体と共に運ばれがちな液滴の形成は、防止する必要がある。向流プロセスにおけるデフレクタ出口での液体の流れは密集した噴流でなければならない。また、これらのデフレクタの目的は、全ての方向で流体の均一な分配を実現することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】英国特許第1,169,878号明細書
【特許文献2】米国特許第4,808,350号明細書
【特許文献3】米国特許第4,472,325号明細書
【特許文献4】米国特許第4,427,605号明細書
【特許文献5】米国特許第4,839,108号明細書
【特許文献6】仏国特許発明第2,203,659号明細書
【特許文献7】米国特許第4,909,967号明細書
【特許文献8】米国特許第4,816191号明細書
【特許文献9】米国特許第4,981,265号明細書
【特許文献10】独国特許発明第2,752,391号明細書
【特許文献11】国際公開第8,802,647号
【特許文献12】仏国特許発明第2,569,129号明細書
【特許文献13】米国特許第44,689,183号明細書
【特許文献14】米国特許第5,132,055号明細書
【特許文献15】米国特許第4,432,913号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第2010−019,061号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2009−0,134,063号明細書
【特許文献18】米国特許第5,403,561号明細書
【特許文献19】中国特許出願公開第100,364,652号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
複数の充填物内での液体の流れは、充填技術に依存して異なる。無作為の充填物上では、充填床内の液体分配(分散)は等方性である。一方、構造化されている充填物上では、複数のプレートが液体の分散方向を複数のプレートに平行な複数の方向に大きく制限する(しかし、複数のプレートに垂直な特定の2次分散が複数のプレート上の複数の小さい開口、一般的にはオリフィスのせいで発生することがある)。複数のプレートに垂直な方向の分散は、その後、複数のプレートが概ね90°で配置されている次の充填物部分への移動時に発生するが、第1の部分(上側の部分)では確実ではない。従来の分配トレイについては、液体の分配の方向が設定されていないので、第1の構造化されている充填物部分の使用されていない表面積は70%と見積もられる。
【0011】
これらの問題を克服するために、本発明は気体と液体との間での熱および物質の少なくとも一方の交換を意図しているカラム用の分配トレイに関する。トレイは、気体通過手段、複数の液体通過チムニー、および液体を好ましい複数の方向に分配する分配手段を有している。したがって、本発明は、良好な液体分配品質を提供し、方向が設定されている分配手段を使用して少なくとも第1の構造化されている充填物部分で気体/液体交換効率を改善できる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、気体と液体との間で熱および物質の少なくとも一方の交換を意図したカラム用分配トレイであって、気体にトレイを通過させる手段と、液体にトレイを通過させる少なくとも1個のチムニーとを有しているトレイに関する。トレイは、チムニーからの液体を好ましい方向に分配するようにトレイの下部よりも下に突出している液体分配手段をさらに有している。
【0013】
本発明によれば、液体分配手段は液体を少なくとも1つの噴流の形態で分配する。
【0014】
トレイは、構造化されている充填物の上方に配置されており、液体分配手段は、横断平面内で、構造化されている充填物の上部の層の複数のプレートの方向に対して実質的に垂直に向いていることが有利である。
【0015】
液体分配手段は、ねじ留め、溶接、接着、またはチムニーへの挿入によって、チムニーに固定されていることが有利である。
【0016】
気体通過手段は、トレイの上部よりも上に突出しているケーシングからなることが好ましい。
【0017】
本発明の一実施態様によれば、液体分配手段は少なくとも1個の液体通過手段を備えているパイプを有しており、パイプはトレイに実質的に平行である。
【0018】
変形例によれば、液体通過手段は、パイプ上に配置されているオリフィスまたはチューブである。
【0019】
パイプは、パイプの軸線方向に揃えられている複数のオリフィスまたはチューブを有していることが有利である。
【0020】
オリフィスは、スロットの形状を有していることが有利である。
【0021】
パイプは、チムニーからの噴流を液体通過手段に向けて分散させる分散プレートを有していることが好ましい。
【0022】
本発明の一態様によれば、液体通過手段は液体分配手段の上部に位置しており、液体分配手段は、液体を下側に送るデフレクタを液体通過手段の出口の位置に備えている。
【0023】
一実施態様によれば液体分配手段は数個のチムニーによって共有されている。
【0024】
さらに、本発明は、気体と液体との間で熱および物質の少なくとも一方の交換を意図したカラムであって、2つの流体が構造化されている充填物によって接触しているカラムに関する。
【0025】
カラムは、2つの流体を構造化されている充填物上に分配する少なくとも1つの本発明の分配トレイを有している。
【0026】
液体分配手段は、横断平面内で、構造化されている充填物の上部の層の複数のプレートの方向に対して実質的に垂直に向いていることが好ましい。
【0027】
また、本発明は、前述のカラムの気体処理、CO回収、蒸溜、または空気変換方法への使用に関する。
【0028】
本発明の方法のその他の特徴と利点とは、添付の図面を参照して、非限定的な例により説明する実施形態の以降の説明を読むことで明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】分配トレイを備えている気体処理つまりCO回収カラム上部の特定の状態を示している前述の図である。
図2】従来技術の分配トレイの前述の図である。
図3】構造化充填物の一例の図である。
図4】本発明の分配トレイの一例の図である。
図5】本発明の分配トレイのチムニーの図である。
図6】本発明の分配トレイの液体分配手段の模式図である。
図7】本発明の液体分配手段の第1の実施形態の図である。
図8】本発明の液体分配手段の第2の実施形態の図である。
図9】本発明の液体分配手段の第3の実施形態の図である。
図10】本発明の液体分配手段の第4の実施形態の図である。
図11】本発明の液体分配手段の第5の実施形態の図である。
図12a】本発明の液体分配手段の第6の実施形態の図である。
図12b】本発明の液体分配手段の第6の実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、気体と液体との間で熱および物質の少なくとも一方を交換することを意図しているカラム用の分配トレイであって、従来は、ケーシングなどのトレイを通して気体を通過させる少なくとも1つの手段と、トレイを通して液体を通過させる少なくとも1個のチムニーと、少なくとも液体分配手段とを有しているトレイに関する。分配トレイは、その上側表面上に液体保護レベルを構成できるようにしている。複数のケーシングと複数のチムニーとは、トレイの上部よりも上に(カラムの上部に向いて)突出しているのに対して、液体分配手段は、トレイの下部よりも下に(カラムの下部に向いて)突出している。本発明によれば、液体分配手段は、トレイの下方で複数のチムニーから来る液体を好ましい方向に分配する。好ましい方向は、トレイの用途(蒸溜、気体処理等)とカラム内で使用する接触器(例えば構造化されている充填物)の種類および方向の少なくとも一方に依存して決定される。本発明の分配トレイは、熱および物質の少なくとも一方の交換カラム内の複数の向流、つまり、複数のケーシングを通した上向きに流れる気体、および複数のチムニーと分配手段とを通して下向きに流れる液体に適している。しかし、本発明の分配トレイは並流にも適している。
【0031】
図4は本発明の実施形態の分配トレイを示している。この実施形態の例について、分配トレイ2は、トレイ2を通して気体を通過させる複数のケーシング4と、トレイ2を通して液体を通過させる複数のチムニー6と、液体分配手段5とを備えている。液体分配手段5は、複数のチムニー6に接続されており、液体を好ましい方向に分配するように同じ方向を向いている。液体は、複数の液体チムニー6に設けられており、デフレクタとも呼ばれる複数のオリフィスを通して、液体分配手段5に向けて分配される。例として図示している実施形態によれば、チムニー6ごとに液体分配手段5が存在する。
【0032】
気体の通過を意図しているケーシング4は、向流モードで動作しているカラムに対して、トレイの下側から上側へ気体を通過させる。気体通過ケーシング4は、気体を通過させる広い開口を実現し、圧力の低下を制限するように、実質的に平行6面体の形状を有していることが有利である。さらに、分配トレイ2が気体の通過用の数個のケーシング4を有している場合、それらを互いに平行に配置することができる。気体通過ケーシング4は、液体が複数のケーシング4内に流入するのを防止するためのキャップ(先端面取部とも呼ばれる)によって覆われることが好ましい。
【0033】
液体通過手段7は、トレイ2の上部から下側へ液体を通過させる。本発明によれば、トレイ2を通して液体を通過させる手段は、一式のチムニー6からなる。これらのチムニー6は実質的に筒状であって、気体を通過させるように複数のケーシング4の間に配置されている。チムニー6の数は、気体通過ケーシング4の数よりも多いことが有利である。液体の通過用のチムニー6のピッチは、三角形または正方形とすることができる。
【0034】
図5は、本発明の分配トレイ2に使用可能なチムニー6の一例である。チムニー6の高さHは、気体通過ケーシング4の高さよりも低い(例えば、チムニー6は600mmの高さとし、ケーシング4は700mmの高さとすることができる)。液体が複数の気体通過ケーシング4に流入するのを防止するために、液体ガード高さが高い時には、チムニー6は開口10を有している。この開口は、チムニー6内で圧力が均衡できるようにもする。さらに、チムニー6は、液体がチムニー6内に直接流入するのを防止するようにキャップ(つまり先端面取部)を有している。チムニー6は、少なくとも1個の、好ましくは図示のように2個の、液体のチムニー6内への流入用の半径方向のオリフィス9を有しており、液体は重力よってトレイ2の下に運ばれる。チムニー6が少なくとも2個の半径方向のオリフィス9を有している場合、それらは、hR1とhR2の異なる高さに位置していることが好ましい。したがって、液体流速が低いときには、トレイ2上の液体ガード高さ(トレイ高さに対する液体の高さ)が低く、第1の半径方向のオリフィスだけがトレイ2を通して液体を流れさせる。液体流速がより高いときには、液体ガード高さが増加し、第1と第2の半径方向のオリフィスがトレイ2を通して液体を流れさせる。この性質によって、分配トレイは、様々な流速に適しており、そのため柔軟である。チムニー6は、数個のオリフィスレベル(2個以上)を有することもできる。
【0035】
液体分配手段5は、複数のチムニー6に収容されている液体の接触器、特に充填物3上への分配を可能にする(図1)。充填物3は、図3に示しているように構造化されている充填物とすることができる。この図と、次の複数の図において、充填物は、非限定的な態様で模式的に示している。構造化されている充填物は、液体と気体との間の交換を促進するように向けられている一式のプレートから一般に構成されている。構造化されている充填物の例は、特に仏国特許発明第2,913,353号明細書(米国特許出願公開第2010/0,213,625号明細書)に記載されている。図3に示している例によれば、構造化されている充填物3は少なくとも2つの構造化されている充填物部分(T1とT2)からなる。従来、一方が他方の上に配置されているこれらの部分T1およびT2は、互いに垂直に向けられている。上側部分T1の利用される表面積を増加させるために、液体分配の方向が、液体分配手段5によって設定されている。そのため、液体分配手段は、構造化されている充填物3の上側部分T1の複数のプレートの横断平面内の方向に対して実質的に垂直に配置することができる。実際に、構造化されている充填物3を構成している複数のプレートは、横断平面内に主方向を有しており、液体分配手段5はこの方向に垂直である。そのため、第1の部分T1の全ての充填物プレートも利用される。
【0036】
本発明の実施形態によれば、分配手段5は、少なくとも1個のチムニー6への接続の手段を備えた、円柱パイプの形状を有している。その代わりに、パイプは、たとえば、角柱、平行6面体等の他の形状であってもよい。パイプは、実質的にトレイ2に平行であってよい。パイプは、特に先端面取部付きであることが好ましく、複数のオリフィスまたはチューブの形態の液体通過手段を備えていてもよく、液体通過手段は、パイプから充填物への液体の好ましい方向での分配を可能にする。液体通過手段は、液滴を形成せずに液体噴流の形態で液体を分配することが有利である。パイプは、接続手段、特にねじ留め、溶接、接着、またはチムニー内への挿入によって、少なくとも1個のチムニーに固定されている。パイプの接続は、特に内側または外側のねじ部分によって達成することができる。
【0037】
図6は、構造化されている充填物3の上方に配置されている分配トレイ2の一例を示している。図6においては、気体にトレイ2を通過させる手段を示していない。図示の実施形態によれば、液体を通過させる複数のチムニー6は、トレイ2の両側に突出している。複数の円柱状パイプ5がトレイ2の下側の複数のチムニー6の突出部上に固定されている。複数の円柱状パイプ5は、トレイ2に平行であって、構造化されている充填物3の向き、つまり横断方向の平面内の構造化されている充填物3の上部の層の複数のプレートの方向に垂直である。構造化されている充填物3を構成している複数のプレートは、横断平面内に主方向を有しており、パイプ5はこの方向に垂直である。円柱状のパイプ5は、複数の液体噴流を構造化されている充填物3上に形成する数個の液体通過手段を有している。複数の液体噴流Lは、図6において黒色で示されている。したがって、液体は充填物3上で好ましい方向により均一に、そして噴流の形態で分配され、それによって、充填物3の位置での気体と液体との間の物質および熱の少なくとも一方の交換を促進する。
【0038】
図7から図12は、円柱状パイプの形態の分配手段5のさまざまな実施形態を示している。これらの図について、同一の要素は同じ符号を有している。これらの図の説明については、図6の分配手段とは異なる変更だけを説明する。
【0039】
図7は、本発明の液体分配手段5の第1の実施形態を示している。この実施形態によれば、分配パイプ5の下側の部分は、水ガードレベルを維持し、したがって液体の流れを均等に分配するのに十分に小さい数個のオリフィス7を有している。複数のオリフィス7は、円柱状のパイプ5の軸線方向に揃えることができる。複数のオリフィス7は実質的に円形であることが有利である。パイプ5は、接続手段によって、チムニー6の下側の突出部の外側表面に固定されている。
【0040】
図8は、液体分配手段の第2の実施形態を示している。液体通過手段7が図7の液体通過手段7と同一であるこの実施形態によれば、パイプ5は下降する液体の流れの慣性を分散させ、供給の不均質を防止するように円柱状パイプ5内に配置されており、液体チムニー6の下方に位置しているプレートつまりデフレクタ8をさらに有している。この図に示しているように、チムニー6の下側の突出は先端が面取りされている。チムニーの突出部の形状は、限定的ではなく、説明する全ての実施形態と組み合わせることができる。
【0041】
図9は、液体分配手段5の第3の実施形態を示している。この実施形態によれば、液体通過手段7は、円柱状パイプ5の下側部分にスロット11によって設けられている。スロット11は、長方形の、長い、または同様の形状を有することができる。この図において、デフレクタ8が示されているが、これは任意採用である。
【0042】
図10は、液体分配手段の第4の実施形態を示している。この実施形態によれば、チムニー6は、トレイ2の下側に下側突出部を有しておらず、主な液体出口が分配トレイ2の下側プレートと同一面のオリフィスによって設けられており、円柱状パイプ5はこのオリフィス内にたとえばねじ込みによって挿入されている。ここで図示しているように、円柱状パイプ5は、第1の実施形態を参照して説明したような数個のオリフィス7を有している。本実施形態は、第3の実施形態を組み合わせることが可能で、複数のオリフィス7はスロット11によって置き換えることができる。また、この図において、デフレクタ8を示しているが、これは任意採用である。
【0043】
図11は、液体分配手段5の第5の実施形態を示している。本実施形態によれば、円柱状パイプ5は、トレイ2の下方に突出している数個のチムニー6に同時に固定され、特にカラムの一方の端部から他方の端部にまっすぐに延びるように固定されている。この実施形態は、一連のオリフィス7と一連のデフレクタ8と共に図示されている。しかし、一連のオリフィス7は、1個または2個以上のスロット11に置き換えることができる。さらに、複数のデフレクタ8は任意採用である。
【0044】
図12a(正面図)と12b(側面図)は液体分配手段の第6の実施形態を示している。この実施形態によれば、円柱状パイプ5は、開口をスロットの形態でその上部に備え、細かい液滴の形成を防止しながら液体を下向きに駆動するデフレクタ12を備えている。図12bの複数の矢印は円柱状パイプ5内の液体の流れを図示している。
【0045】
あるいは、図示していない変形例の実施形態によれば、第1、第2、および第4の実施形態の複数のオリフィス7を複数の垂直チューブに置き換えることができる。液体噴流の方向を最適化するために、複数のチューブに先端面取部を付けることができる。
【0046】
液体分配手段(デフレクタ)は、複数の新しい分配トレイ用に作ったり、既存のトレイを修正する場合には、複数の既存の分配器に取り付けたりすることもできる。
【0047】
したがって、本発明は、方向が設定されている分配手段を通して、少なくとも第1の構造化されている充填物部分上で、分配を改善することができる。本発明は、わずかな空間の要件だけで、噴射点の数を増加できるようにもする。したがって、本発明は、2個の分配トレイの間の充填物高さにわたって全利用表面積を3%から5%ほど潜在的に増加させることができる。それは第2の充填物部分上での分配も改善されるため、この増加は、さらに大きくすることができる。
【0048】
本発明は、2つの流体の間の物質および熱の少なくとも一方の交換用のカラム1にも関し、2つの流体は少なくとも1個の気体/液体接触器3によって接触し、カラム1は少なくとも液体状流体用の第1の入口と、少なくとも気体状流体用の第2の入口と、少なくとも気体状流体用の第1の出口と、少なくとも液体状流体用の第2の出口とを有している。カラム1は、前述のように分配トレイ2も有しており、接触器3上での複数の流体の分配を可能にする。
【0049】
分配トレイ2がカラムの上部に配置されている特定の場合において、カラムの主な送達ラインからの液体噴流を砕くように、分配トレイ2の上方に配置されている分割部を分配トレイ2に設けることができる。分割部は、液体の分配トレイ2上への良好な分配も実現する。
【0050】
気体/液体接触器3は、構造化されている充填床であることが有利である。この場合、分配手段は、充填物内の物質および熱の少なくとも一方の交換を促進する好ましい方向に液体を分配するように構造化されている充填物の上部層の方向に対して垂直に向けられている。
【0051】
気体と液体とが、複数の向流条件下でカラム1を通して流れることが好ましい。
【0052】
本発明のカラムは、気体処理、CO回収(たとえばアミン洗浄)、蒸溜、または空気変換方法に使用することができる。さらに、発明は、任意の種類の溶媒と共に使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12a
図12b