【実施例】
【0029】
次に本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。本発明のポリエステルおよびポリエステル・炭素繊維複合材についての評価方法は以下の通りである。尚、実施例1〜4は参考例とする。
(1)PET等の固有粘度(IV値)の測定法
1,1,2,2ーテトラクロロエタンとフェノールの等重量の混合溶媒を使用し、キャノンフエンスケ粘度計で25℃にて測定した。または、メーカーのカタログ値を採用した。
(2)メルトフローレート(MFR)の測定法
JIS K7210の条件20に従い、温度255−280℃、荷重2.16kgの条件で測定した。但し、樹脂は予め120℃×12時間または140℃×4時間で、熱風乾燥または真空乾燥されたものを使用した。
(3)比重の測定法
JIS K7112のA法(水中置換法)に従い、樹脂ペレットについてアルコールを液体として測定した
(4)機械的強度の測定法
小型試験片の作成:住友重機械工業(株)製の射出成形機SE18DUZ(型締め圧18トン、スクリュー径16mm)を使用し、成形温度270℃、金型温度35℃、冷却時間15−20秒の条件で成形した。
試験片の形状:引張試験片 JIS K7162 5A型(厚み2mm)
曲げ試験片 短冊型 80mm×10mm(厚み2mm)
引張試験:引張速度2mm/分にて実施し、5点の平均値で評価した(JIS K7073ほか)。
曲げ試験:3点曲げ試験を実施し、5点の平均値で評価した(JIS K7074ほか)。
(5)電気特性の測定法
JIS K 6911に準じて測定した。
(6)カルボキシル基等の測定法
JIS K 0070に準じ、Boehm法で測定した。炭素繊維またはポリエステルのサンプルに水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムを別々に加え、電位差自動測定装置を使用して塩酸溶液を用いて逆滴定をした。全酸性官能基量(全酸量)を水酸化ナトリウム添加後の塩酸溶液による逆滴定で、また強酸性官能基量(カルボキシル基量)を炭酸水素ナトリウム添加後の塩酸溶液による逆滴定で測定した。なお、弱酸性官能基量(フェノール系水酸基量)は、全酸量―カルボキシル基量から求めた。例えば、カルボキシル基量は、電池負極のカーボン材の場合にはその表面では0.01−0.15mmol/g、PET樹脂で0.04mmol/g以下であるとされている。
【0030】
[製造例1]
[カルボキシル基を含有する再生炭素繊維のアルカリ液の電解酸化に依る製造と分析例]
特許文献7(特開2013−249386号)に準じて、航空機組立時に副生したCFRPの端材約30Kgを10cm角以下に裁断し、電気炉で400−500℃にて熱硬化性エポキシ樹脂部分を焼成除去して再生炭素繊維(集結体)約15Kgを得た。
再生炭素繊維(集結体)5gを500ccのビーカーに入れ、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液200mLに浸漬させた。再生炭素繊維集結体側を陽極とし、陰極側をチタニウム電極として、3V×0.5Aにての直流電解反応を1時間実施したこの電解酸化処理に依り開繊した再生炭素繊維を中性になるまで水洗し、乾燥してから保管した。これを3回繰り返した。
再生炭素繊維1gを各200ccの三角フラスコに秤量し、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液または炭酸水素ナトリウム水溶液の各50mLに浸漬させた。栓をしてからその2体を24時間浸透機にかけた。各容器の上澄み液5mLを0.05mol/L塩酸水溶液で滴定し、全酸量とカルボキシル基量とを同定した。このBoehm法に依る分析を焼成後の再生炭素繊維と新品炭素繊維についても実施し、その結果を比較して以下に示す。
【表1】
カルボキシル基は、新品炭素繊維には極めて微量にしか存在しないが、本発明の焼成後の再生炭素繊維には0.03−0.05mmol/gも存在し、電解酸化後の再生炭素繊維にはその2−3倍の0.10mmol/gにまで増加していた。尚、PET樹脂では0.04以下mmol/gであるので、本発明の再生炭素繊維のカルボキシル基量は共重合させるに充分である。
【0031】
[製造例2]
[カルボキシル基を含有する再生炭素繊維のアルカリ液の電解酸化に依る製造例]
製造例1で得た再生炭素繊維集結体約1Kgを10Lの電解槽に入れ、水酸化カリウム水溶液を張込んだ。この再生炭素繊維集結体を金属製板の陽極側とし、陰極側をチタニウム製電極として、低電流・低電圧の直流電解反応を4時間実施した再生炭素繊維集結体は、殆どが開繊していたが、更に機械的に開繊して黒色光沢性の再生炭素繊維を得た。繊維長は、5−10cmであった。約50%のアルカリ水を含む再生炭素繊維を酸性溶液で中和し、水洗した後に180℃で一夜乾燥して保管した。同様操作を数回繰り返し、再生炭素繊維5Kgを得た。
【0032】
[実施例1]
[粉末状PET樹脂と再生炭素繊維・中繊維14%と多官能エポキシ樹脂に依るPET・炭素繊維共重合体ペレットR1の製造例]
原材料が少量なので、口径15mm×二軸の卓上式押出機を使用して、以下を実施した。
A成分の粉末状PET樹脂(東邦樹着工業(株)製:IV値0.92のペレットの粉砕物)85重量部(737g、120℃・12時間での熱風乾燥後の水分含有率約150ppm)、B成分の再生炭素繊維・中繊維(製造例2で試作された様に、炭素繊維強化エポキシ樹脂複合材の切断片を約500℃で焼成してエポキシ樹脂を除去し、電解酸化処理と開繊の後に、中性化洗浄し、繊維長10−30mmに裁断して180℃一夜の乾燥をしたもの)15重量部(約130g)、C成分の結合剤として多官能エポキシ化合物(日油(株)製のマープルーフG−0130S:重量平均分子量Mw9,000、数平均分子量Mn5,500、エポキシ等量WPE530g/eq.、官能基:重量平均基準17個/分子、数平均基準10個/分子)1重量部(8.6g)、D成分の結合反応触媒としてステアリン酸カルシウム/ステアリン酸ナトリウム/ステアリン酸リチウム(50/25/25重量比)複合物の0.2重量部(1.7g)およびE成分の展着剤の流動パラフィン0.2重量部(1.7g)を原料とした。
(株)テクノベル製の同方向2軸押出機(KZW15−30MG:スクリュー口径15mm、L/D=30、回転数200rpm)を使用し、この押出機のスクリューとダイスの設定温度を240−265℃とし、B成分の再生炭素繊維・中繊維のみを除く4成分をポリエチレン袋内で手動にて混合した粉末状の白色混合物をホッパーに投入し、回転式フィーダーで1Kg/時の所定速度にて供給した。一方、押出機の出口側ベント孔部(C4)に特殊形態冶具を装備して再生炭素繊維・中繊維をほぼ一定速度で押込むことによって反応押出を行った。
ストランドを口径3mmの水平ノズルから約2m/分の速度にて水中に連続的に押出し、回転カッターで切断して黒色樹脂ペレットR1(630g)を製造した。ストランド金型の樹脂圧力は2.2MPaに上昇し、金型出口から水盤へのストランドはほぼ直線状に張り、溶融張力が増大した。これにより、異型押出成形による山形鋼、L字鋼やH字鋼の製造が可能となった。なお、原材料の消費量から再生炭素繊維の含有量は、約14%と計算された。
この温かい黒色樹脂ペレットR1(円柱型形状:口径2.6mm×長さ3.9mm)を直ちに140℃・4時間熱風乾燥して後に、アルミ・ポリエチレン積層の防湿袋に貯蔵したペレットの形状は、改質効果に依り口径と長さが、PETのみの場合に比べて共に増大した。
【0033】
この乾燥した黒色ペレットR1を射出成形して引張試験片および曲げ試験片を製作した。引張強さ99MPa、ヤング率6.2GPaおよび曲げ強さ147MPa、曲げ弾性率6.6GPaであった。
比較例1のPET樹脂のみの透明ペレットP1に比べると、本例1の再生炭素繊維・中繊維14%と改質剤の共重合効果は、引張強さ1.7倍、ヤング率3.3倍、曲げ強さ1.8倍、曲げ弾性率3.1倍であった。大幅に、改善された。
また、引張試験で破断した断面を白色光式レーザー顕微鏡で観察したら、再生炭素繊維・中繊維は殆ど全てが切断されて樹脂表面に切株が整然と並んでいた。即ち、再生炭素繊維・中繊維がPET樹脂から抜けることがなく、それら二者間の密着性は、共重合効果により抜群に強かった。
【0034】
[実施例2]
[粉末状PET樹脂と粉末状再生炭素繊維15%と多官能エポキシ樹脂に依るPET・炭素繊維共重合体ペレットR2の製造例]
A成分のポリエステルとして粉末状ペット(PET)樹脂(実施例1と同じ、熱風乾燥品)85重量部(737g、実施例1と同じ、熱風乾燥品)、B成分の粉末状再生炭素繊維(航空機の機体組立時に炭素繊維強化エポキシ樹脂複合材をボーリング時に派生した切粉として派生した粉末状物を約500℃で焼成し、中性化まで水洗浄し、180℃一夜の乾燥後に80メッシュで篩分けした黒色粉体)15重量部(130g)、C成分の結合剤として多官能エポキシ化合物(日油(株)製のマープルーフG−0130S:実施例1と同じ)1重量部(8.6g)、D成分の結合反応触媒(実施例1と同じ)0.2重量部(1.7g)およびE成分の展着剤の流動パラフィン0.2重量部(1.7g)をポリエチレン袋内で手動にて混合した。
(株)テクノベル製の同方向2軸押出機(KZW15−30MG:スクリュー口径15mm、L/D=30、回転数200rpm、1ベント方式)を使用した。この押出機のスクリューとダイスの設定温度を240−265℃とし、C4部で真空引きしながら、上記の粉末状の黒色混合物をホッパーに投入し、回転式フィーダーで1.5Kg/時の所定速度にて供給することによって反応押出を行った。ストランドを口径3mmの水平ノズルから約2m/分の速度にて水中に連続的に押出し、回転カッターで切断して黒色樹脂ペレットR2(798g)を製造した。ストランド金型の樹脂圧力は、比較例1の粉末状PET樹脂のみに比べて6.4MPaに急上昇し、金型出口から水盤へのストランドが直線状に張り、溶融張力が増大した。これにより、異型押出成形による山形鋼、L字鋼やH字鋼等の製造が可能となった。
本例の黒色ストランドは、艶が良く、180度折り曲げで割れず針金の様に永久塑性変形性(Dead Hold性)を示した。この温かい黒色樹脂ペレットR2(円柱型形状:口径2.4mm×長さ2.8mm)を直ちに140℃・4時間熱風乾燥して後に、アルミ・ポリエチレン積層の防湿袋に貯蔵した。
【0035】
この乾燥した黒色ペレットR2を射出成形して、引張試験片および曲げ試験片を製作した。引張強さ59MPa、ヤング率2.6GPaおよび曲げ強さ91MPa、曲げ弾性率2.8GPaであった。
比較例1のPET樹脂のみの透明ペレットP1に比べると、本例2の粉末状再生炭素繊維15%と改質剤の共重合効果は、引張強さ同じ、ヤング率1.4倍、曲げ強さ1.1倍、曲げ弾性率1.3倍であった。かなり改善が見られた。
【0036】
[比較例1]
[粉末状PET樹脂のみによるペレットP1の製造例]
A成分の粉末状PET樹脂(実施例1と同じ、乾燥品)100重量部(2,500g)のみを使用し、実施例2とほぼ同様な条件にて押出機でペレットP1を製造し、透明ペレット2,400gを得た。ストランド金型の樹脂圧力は2.7MPaで、金型出口から水盤中のストランドは蛇行して溶融張力がやや小さかった。本例の透明ストランドは、艶が良く、180度折り曲げで割れなかったが、永久塑性変形性は無くて元の形状に戻った。 この透明ペレットP1は、MFR(255℃、荷重2.16Kg)が40g/10分、比重が1.373であった。
この乾燥したPET樹脂のみの透明ペレットP1(円柱型形状:口径2.5mm×長さ3.5mm)を射出成形して引張試験片および曲げ試験片を製作した。引張強さ59MPa、ヤング率1.9GPaおよび曲げ強さ84MPa、曲げ弾性率2.1GPaであった。
【0037】
[比較例2]
[粉末状PET樹脂と再生炭素繊維・中繊維とのPET・炭素繊維組成物複合材ペレットB1の製造例]
A成分の粉末状PET樹脂(実施例1と同じ、熱風乾燥品)85重量部(約737g)、B成分の再生炭素繊維・中繊維(実施例1と同じ、熱風乾燥品)15重量部(約130g)およびE成分の展着剤の流動パラフィン0.2重量部(1.7g)を原料とした。
(株)テクノベル製の同方向2軸押出機(KZW15−30MG:スクリュー口径15mm、L/D=30、回転数200rpm)を使用し、この押出機のスクリューとダイスの設定温度を240−265℃とし、上記の粉末状の白色PFTと展着剤をホッパーに投入し、回転式フィーダーで1Kg/時の所定速度にて供給することによって押出を行った。押出機の出口側ベント孔部(C4)に特殊形態冶具を装備して再生炭素繊維・中繊維を一定速度で押込んで混合した。
ストランドを口径3mmのノズルから約2m/分の速度にて水中に連続的に押出し、回転カッターで切断して黒色樹脂ペレットB1(722g)を製造した。ストランド金型の樹脂圧力は1.6MPaと低く、金型出口から水盤へのストランドは弓なりに垂れて溶融張力が小さかった。
本例の黒色ストランドは、艶が無く、180度折り曲げで割れず針金の様に永久塑性変形性(Dead Hold性)を示した。なお、原材料の消費量から再生炭素繊維の含有量は、約11%と計算された。この温かい黒色樹脂ペレットB1は、円柱型形状(口径1.8mm×長さ3.0mm)であった。
【0038】
[実施例3]
[粉末状PET樹脂と粉末状再生炭素繊維20%と多官能エポキシ樹脂に依るPET・炭素繊維共重合体ペレットR3の製造例]
原材料を増やして、口径25mm×二軸の中規模押出機を使用して、以下を実施した。
A成分のポリエステルとして粉末状PET樹脂(実施例1と同じ、真空乾燥物)80重量部(1,760g)、B成分の粉末状再生炭素繊維(実施例2と同じ、真空乾燥物)20重量部(440g)、C成分の結合剤として多官能エポキシ化合物(日油(株)製のマープルーフG−0130S:実施例1と同じ)1重量部(17.6g)、D成分の結合反応触媒(実施例1と同じ)0.2重量部(3.6g)およびE成分の展着剤の流動パラフィン0.2重量部(3.6g)を原料とした。
(株)創研製の同方向2軸押出機(スクリュー口径25mm、L/D=41、回転数200rpm)を使用した。この押出機のスクリューとダイスの設定温度を240−280℃とし、上記の3成分の黒色混合物をホッパーに投入して、重量式定量フィーダーで5Kg/時の速度にて押出機に供給した。ストランド2本を口径3mmの水平ノズルから約2m/分の速度にて水中に連続的に押出し、回転カッターで切断して黒色樹脂ペレットR3(1.67Kg)を製造した。ストランド金型の樹脂圧力は1.1MPaで、金型出口から水盤へのストランドは直線状となり、溶融張力が大きかった。
本例3の黒色ストランドは、艶が良く、180度折り曲げで割れず針金の様に永久塑性変形性(Dead Hold性)を示した。この温かい黒色樹脂ペレットR3(円柱型形状:口径2.1mm×長さ3.1mm)を直ちに140℃・4時間熱風乾燥して後に、アルミ・ポリエチレン積層の防湿袋に貯蔵した。この黒色ペレットR3は、MFR(255℃、荷重2.16Kg)が24g/10分、比重が1.447であった。
【0039】
この乾燥した黒色ペレットR3を射出成形して、引張試験片および曲げ試験片を製作した。引張強さ56MPa、ヤング率2.0GPaおよび曲げ強さ94MPa、曲げ弾性率3.0GPaであった。
比較例1のPET樹脂のみの透明ペレットP1に比べると、本例3の粉末状再生炭素繊維20%と改質剤の共重合効果は、引張強さ0.93倍、ヤング率1.1倍、曲げ強さ1.1倍、曲げ弾性率1.4倍であった。特に、曲げ弾性率に改善が見られた。
【0040】
[実施例4]
[粉末状PET樹脂と粉末状再生炭素繊維40%と多官能エポキシ樹脂に依るPET・炭素繊維共重合体ペレットR4の製造例]
A成分のポリエステルとして粉末状PET樹脂(実施例1と同じ、真空乾燥物)60重量部(1,320g)、B成分の粉末状再生炭素繊維(実施例2と同じ、真空乾燥物)40重量部(880g)、C成分の結合剤として多官能エポキシ化合物(日油(株)製のマープルーフG−0130S:実施例1と同じ)1重量部(13.2g)、D成分の結合反応触媒(実施例1と同じ)0.2重量部(2.6g)およびE成分の展着剤の流動パラフィン0.2重量部(2.6g)を原料とした。
(株)創研製の同方向2軸押出機(スクリュー口径25mm、L/D=41、回転数200rpm)を使用した。この押出機のスクリューとダイスの設定温度を240−280℃とし、上記の3成分の黒色混合物をホッパーに投入して、重量式定量フィーダーで5Kg/時の速度にて押出機に供給した。鈍い黒色のストランド2本を口径3mmの水平ノズルから約2m/分の速度にて水中に連続的に押出し、回転カッターで切断して黒色樹脂ペレットR4(1.67Kg)を製造した。ストランド金型の樹脂圧力は0.8MPaで、金型出口から水盤へのストランドは直線状となり成形加工性に優れ、かつ溶融張力がほぼ適切だった。
この温かい黒色ペレットR4(円柱型形状:口径1.9mm×長さ3.2mm)を直ちに140℃・4時間熱風乾燥して後に、アルミ・ポリエチレン積層の防湿袋に貯蔵した。この黒色ペレットR4は、MFR(255℃、荷重2.16Kg)が31g/10分、比重が1.512であった。
【0041】
この乾燥した黒色ペレットR4を射出成形して、引張試験片および曲げ試験片を製作した。引張強さ62MPa、ヤング率3.2GPaおよび曲げ強さ108MPa、曲げ弾性率4.4GPaであった。
比較例1のPET樹脂のみの透明ペレットP1に比べると、本例4の粉末状再生炭素繊維40%と改質剤の共重合効果は、引張強さ1.1倍、ヤング率1.7倍、曲げ強さ1.3倍、曲げ弾性率2.1倍であった。この40%充填により、機械的性能のかなりな改善が見られた。
【0042】
[比較例3]
[粉末状PET樹脂と粉末状再生炭素繊維40%とのPET・炭素繊維組成物複合材ペレットB2製造例]
実施例4とほぼ同一条件にて、但しC成分の結合剤として多官能エポキシ化合物およびD成分の結合反応触媒を除いて、A成分の粉末状PET樹脂60重量部(1,320g)、B成分の粉末状再生炭素繊維40重量部(880g)およびE成分の流動パラフィン0.2重量部(2.6g)を原料として押出試験を実施した。
(株)創研製の同方向2軸押出機(スクリュー口径25mm、L/D=41、回転数200rpm)を使用した。この押出機のスクリューとダイスの設定温度を240−280℃とし、上記の3成分の黒色混合物をホッパーに投入して、重量式定量フィーダーで5Kg/時の速度にて押出機に供給した。鈍い黒色のストランド2本を口径3mmの水平ノズルから約2m/分の速度にて水中に連続的に押出し、回転カッターで切断して黒色ペレットB2(1.6Kg)を製造した。
ストランド金型の樹脂圧力は0.6MPaと低く、金型出口から水盤へのストランドは弓なり状に下方に垂れ、溶融張力が小さかった。この黒色ストランドは、吐出が脈動して切れ易く成形加工性が悪く、水冷物は折れ易かった。改質剤無しには、この粉末状再生炭素繊維40%の混練り製造は、困難であると判断した。
この温かい黒色ペレットB2は、円柱型形状(口径1.7mm×長さ3.0mm)であり、MFR(255℃、荷重2.16Kg)が50g/10分、比重が1.525であった。
【0043】
[比較例4]
[PET樹脂ペレットと炭素繊維結束帯15%とのPET・炭素繊維組成物複合材ペレットB3の製造例]
実施例4とほぼ同一条件にて、但しC成分の結合剤として多官能エポキシ化合物およびD成分の結合反応触媒を除いて、A成分のPET樹脂ペレット(市販ペットボトル用、IV値0.80)85重量部(850g)、B成分の炭素繊維結束帯(東レ「トレカ」カットファイバーTS12−006、繊維長6mm)15重量部(150g)を原料として押出試験を実施した。
(株)創研製の同方向2軸押出機(スクリュー口径25mm、L/D=41、回転数200rpm)を使用した。この押出機のスクリューとダイスの設定温度を240−280℃とし、上記の2成分を別々の重量式定量フィーダーでホッパーに投入して、5Kg/時の速度にて押出機に供給した。黒色のストランド2本を口径3mmの水平ノズルから約2m/分の速度にて水中に連続的に押出し、回転カッターで切断して黒色ペレットB3(0.95Kg)を製造した。
ストランド金型の樹脂圧力は0.8MPaと低く、金型出口から水盤へのストランドはやや下方に垂れ、溶融張力が小さかった。この黒色ストランドは、成形加工性が悪くはなかった。
この温かい黒色ペレットB3(円柱型形状:口径1.7mm×長さ3.2mm)を直ちに140℃・4時間熱風乾燥して後に、アルミ・ポリエチレン積層の防湿袋に貯蔵した。この黒色ペレットB3は、MFR(255℃、荷重2.16Kg)が33g/10分、比重が1.434であった。
【0044】
この乾燥した黒色ペレットB3を射出成形して、引張試験片および曲げ試験片を製作した。引張強さ73MPa、ヤング率3.3GPaおよび曲げ強さ119MPa、曲げ弾性率4.2GPaであった。
比較例1のPET樹脂のみの透明ペレットP1に比ベると、本比較例4の工業製品としての炭素繊維結束帯15%の混合効果は、引張強さ1.2倍、ヤング率1.7倍、曲げ強さ1.4倍、曲げ弾性率2.0倍であった。この炭素繊維結束帯15%の充填により、機械的性能のかなりな改善が見られたが、これは粉末状再生炭素繊維40%の共重合体(実施例4)とほぼ同じであるが、再生炭素繊維・中繊維14%の共重合体(実施例1)よりはかなり劣った。
再生炭素繊維は、繊維長を数ミリ以上にすれば同一含有量で従来の工業製品と同等、ないしそれ以上の機械的強度を発現出来る。
【0045】
[実施例5]
[ペット樹脂とLT炭素繊維チョップ15%と改質剤から成る炭素繊維強化・改質ペット樹脂ペレットR5の製造と射出成型体の製造例]
A成分のポリエステルとして汎用ペット樹脂ペレット(ボトルグレード:台湾・南亜3802T、IV値0.80)100重量部(乾燥後の水分含有率約100ppm以下)とC成分の結合剤として多官能エポキシ樹脂0.60重量部、D成分の結合反応の混合触媒0.16重量部とE成分の展着剤としての流動パラフィン0.06重量部をスーパーミキサーで均一混合した。これらを主体樹脂押出用の第1ホッパーに納入した。一方、B成分の炭素繊維としてLT炭素繊維チョップ(米国・ZOLTEK社の
ラージトウPAN系炭素繊維「Panex35」6mm長)をサイドフィーダー用の第2ホッパーに納入した。
同方向2軸押出機(口径60mm、1ベント式)を使用し、この押出機の10ブロックから成るシリンダーとダイスの設定温度を150−270℃およびスクリュー回転数150rpmとした。重量式計量フィーダーを使用し、第1ホッパーからA成分とC成分とD成分等の混合樹脂を100Kg/hの速度で反応押出を行い、また第2ホッパーから炭素繊維チョップを17.6Kg/h(炭素繊維の含有量15%)の速度で連続的にサイドフィードした。
ストランドを口径3mmの斜め下方向のノズルから水中に連続的に押出し、回転カッターで切断して黒色樹脂ペレットR5を製造した。金型出口から水盤中へのストランドは直線状であり溶融張力が増加していた。
この黒色樹脂ペレットR5収量は約180Kgであった。その形状は、円柱状で直径約3.4mm×長さ約6mmであった。また、MFR(260℃、荷重2.16Kg)は、6.2g/10分であった。
【0046】
この炭素繊維強化・改質ペット樹脂の黒色ペレットR5を120℃・一夜熱風乾燥し、日精樹脂工業(株)製のハイブリッド式射出成形機FNZ60(型締め圧140トン、スクリュー径60mm)を使用し、成形温度280℃、金型温度130−145℃、射出圧力53MPa、射出速度12mm/s、スクリュー回転数80rpmおよび冷却時間20秒の条件にて、下記の射出成形体を成形する事が出来た。
多目的試験片の形状:ISO 20753、JIS K7139 A1型
全長さ120mm、厚み4mm、チャック部の幅20mm、くびれ部の幅10mm、
同その長さ80mm(Zランナー方式)
尚、この炭素繊維(CF15%)強化・改質ペット樹脂ペレットR5は、バリの副生が無くて良好な射出成型性を示した。試験片の表面は平滑で艶があった。引張速度2mm/分および曲げ速度5mm/分での試験を実施した。
引張強度171MPa、ヤング率7.70GPaおよび曲げ強さ291MPa、曲げ弾性率12.0GPaであった。
比較例1のPET樹脂のみの透明ペレットP1に比べると、本例R5でのZOLTEK炭素繊維約15%の混合効果は、引張強さ2.9倍、ヤング率4.1倍、曲げ強さ3.5倍、曲げ弾性率5.7倍であった。成形加工性が良好で、機械的強度が大幅改善された炭素繊維強化・改質ペット樹脂および射出成形体が得られた。
【0047】
[実施例6]
[ペット樹脂とLT炭素繊維チョップ30%と改質剤から成る炭素繊維強化・改質ペット樹脂ペレットR6の製造と射出成型体の製造例]
実施例1とほぼ同一条件にて、ペレットR6の製造を実施した。但し、炭素維繊チョップの含有量を約30%にする為にサイドフィードの速度を2倍にした。A成分のポリエステルとして汎用ペット樹脂ペレット(ボトルグレード:台湾・南亜3802T、IV値0.80)100重量部(乾燥後の水分含有率約100ppm以下)とC成分の結合剤として多官能エポキシ樹脂0.56重量部、D成分の結合反応の混合触媒0.16重量部とE成分の展着剤としての流動パラフィン0.06重量部をスーパーミキサーで均一混合した。これらを主体樹脂押出用の第1ホッパーに納入した。一方、B成分の炭素繊維としてLT炭素繊維チョップ(米国・ZOLTEK社の
ラージトウPAN系炭素繊維「Panex35」6mm長)をサイドフィーダー用の第2ホッパーに納入した。
同方向2軸押出機(口径60mm、1ベント式)を使用し、この押出機の10ブロックから成るシリンダーとダイスの設定温度を150−270℃およびスクリュー回転数150rpmとした。重量式計量フィーダーを使用し、第1ホッパーからA成分とC成分とD成分等の混合樹脂を100Kg/hの速度で反応押出を行い、また第2ホッパーから炭素繊維チョップを42Kg/h(炭素繊維の含有量30%)の速度で連続的にサイドフィードした。
ストランドを口径3mmの斜め下方向のノズルから水中に連続的に押出し、回転カッターで切断して黒色樹脂ペレットR6を製造した。金型出口から水盤中へのストランドは直線状であり溶融張力が増加していた。
この黒色樹脂ペレットR6の収量は約250Kgであった。その形状は、円柱状で直径約3.4mm×長さ約6mmであった。また、MFR(260℃、荷重2.16Kg)は、6.7g/10分であった。
【0048】
この炭素繊維強化・改質ペット樹脂の黒色ペレットR6を120℃・一夜熱風乾燥し、日精樹脂工業(株)製のハイブリッド式射出成形機FNZ60(型締め圧140トン、スクリュー径60mm)を使用し、成形温度290℃、金型温度130−145℃、射出圧力63MPa、射出速度12mm/s、スクリュー回転数80rpmおよび冷却時間20秒の条件にて、下記の射出成形体を成形する事が出来た。
多目的試験片の形状:ISO 20753、JIS K7139 A1型
全長さ120mm、厚み4mm、チャック部の幅20mm、くびれ部の幅10mm、
同その長さ80mm(Zランナー方式)
尚、この炭素繊維(CF30%)強化・改質ペット樹脂ペレットR6は、バリの副生が無くて良好な射出成型性を示した。試験片の表面はほぼ平滑で艶があった。引張速度2mm/分および曲げ速度5mm/分での試験を実施した。
引張強度209MPa、ヤング率11.6GPaおよび曲げ強さ331MPa、曲げ弾性率21.7GPaであった。
比較例1のPET樹脂のみの透明ペレットP1に比べると、本例R6でのZOLTEK炭素繊維約30%の混合効果は、引張強さ3.5倍、ヤング率6.1倍、曲げ強さ3.9倍、曲げ弾性率10.3倍であった。成形加工性が良好で、機械的強度が大幅改善された炭素繊維強化・改質ペット樹脂および射出成形体が得られた。