特許第6552213号(P6552213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552213
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】電子レンジ調理用容器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20190722BHJP
   A47J 36/04 20060101ALI20190722BHJP
   F24C 7/02 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   A47J27/00 107
   A47J36/04
   F24C7/02 551A
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-30844(P2015-30844)
(22)【出願日】2015年2月19日
(65)【公開番号】特開2016-150210(P2016-150210A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2017年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 真
【審査官】 久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−129435(JP,A)
【文献】 特開2013−147292(JP,A)
【文献】 米国特許第06639199(US,B1)
【文献】 特開2006−160788(JP,A)
【文献】 再公表特許第2003/099558(JP,A1)
【文献】 特開平08−080560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
A47J 36/04
F24C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂を含む熱可塑性樹脂で形成された上方に開口した透明な容器本体と、
前記容器本体内の底部に設けられ電子レンジのマイクロ波により発熱する発熱膜と、
前記容器本体と前記発熱膜との間に設けられた断熱シートと、
を備え
前記容器本体を形成する前記熱可塑性樹脂にアミド系有機結晶核剤が添加されている電子レンジ調理用容器。
【請求項2】
前記容器本体と同一の熱可塑性樹脂により形成された前記容器本体の開口を閉じるための蓋を更に備え、
前記容器本体及び前記蓋が一体に形成された構成を有する請求項1に記載された電子レンジ調理用容器。
【請求項3】
前記発熱膜は、前記断熱シートよりも小さく形成され、且つ前記断熱シート上に、前記発熱膜の外周から前記断熱シートがはみ出すように設けられている請求項1又は2に記載された電子レンジ調理用容器。
【請求項4】
前記容器本体を形成する前記熱可塑性樹脂が結晶性を有する請求項1乃至3のいずれかに記載された電子レンジ調理用容器。
【請求項5】
前記容器本体を形成する前記熱可塑性樹脂のヘイズ値が30%以下である請求項1乃至4のいずれかに記載された電子レンジ調理用容器。
【請求項6】
前記アミド系有機結晶核剤が脂肪酸モノアミド及び脂肪酸ビスアミドから選ばれる1種又は2種以上の化合物である請求項1乃至5のいずれかに記載された電子レンジ調理用容器。
【請求項7】
前記脂肪酸モノアミド及び脂肪酸ビスアミドから選ばれる1種又は2種以上の化合物における脂肪酸の炭素数が8以上24以下である請求項記載された電子レンジ調理用容器。
【請求項8】
前記アミド系有機結晶核剤の添加量が、前記ポリ乳酸樹脂100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下である請求項乃至のいずれかに記載された電子レンジ調理用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子レンジ調理用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各世帯における構成が少人数化し、またシニア層が増加している。その結果、食の分野において、一度の食事で必要となる食料は少量で足りるということに起因し、電子レンジが利用される場面が多くなっている。例えば、各世帯では、作り置きしておいた食料を必要量だけ電子レンジで温めて食べるということが日常的に行われている。また、食料品店では、少人数世帯を対象とした惣菜等が販売されており、店内にはそれを温めるための電子レンジが設置されている。更に、少人数分の食材が容器に収容され、それをそのまま電子レンジを用いて調理することができるようにした商品の開発も行われている。
【0003】
食材を収容した状態で電子レンジを用いて調理することができる容器について、特許文献1には、電子レンジを用いて加熱調理するための紙製の容器であって、食材の状態を視認できる窓部を上面に設けたものが開示されている。また、特許文献2には、電子レンジを用いて焼き調理或いは蒸し調理するための紙製の容器であって、トレイ状の容器本体内に、厚紙のシート状基材の表面に電子レンジのマイクロ波により発熱する金属蒸着膜を設けた発熱体が配設されたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−184718号公報
【特許文献2】特開2013−129435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、焼き調理を行う場合には、調理中に食材の焼け具合を広範囲に目視確認することが望まれる。しかしながら、特許文献1及び2に開示された紙製の容器では、電子レンジを用いて焼き調理を行う場合、上方からしか食材の状態を目視確認できないため、その焼け具合を目視確認できる範囲が狭いことに加え、調理前後に電子レンジ外で容器内の食材の焼け具合を目視確認することはできても、調理中に電子レンジ内に置かれた容器内の食材の焼け具合を目視確認することは難しいという問題がある。
【0006】
本発明の課題は、電子レンジを用いて焼き調理を行う場合に、調理中でも食材の焼け具合を広範囲に目視確認することができ、しかも容器本体が焼き調理の熱により損傷を受けるのを抑制することができる電子レンジ調理用容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、熱可塑性樹脂で形成された上方に開口した透明な容器本体と、前記容器本体内の底部に設けられ電子レンジのマイクロ波により発熱する発熱膜と、前記容器本体と前記発熱膜との間に設けられた断熱シートとを備えた電子レンジ調理用容器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上方に開口した透明な容器本体が熱可塑性樹脂で形成されているので、電子レンジを用いて焼き調理を行う場合に、調理中でも食材の焼け具合を上方及び側方から広範囲に目視確認することができ、しかも容器本体と発熱膜との間に断熱シートが設けられているので、容器本体が焼き調理の熱により損傷を受けるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る電子レンジ調理用容器の蓋を閉じた状態を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る電子レンジ調理用容器の蓋を開いた状態を示す斜視図である。
図3】実施形態に係る電子レンジ調理用容器の分解斜視図である。
図4】実施形態に係る電子レンジ調理用容器の縦断面図である。
図5】発熱シート及び断熱シートの斜視図である。
図6】発熱シート及び断熱シートの断面図である。
図7】発熱シートの断面図である。
図8】実施例1の電子レンジ調理用容器のフードパックの斜視図である。
図9】実施例2の電子レンジ調理用容器のフードパックの容器本体及び蓋を構成する樹脂容器の(a)平面図及び(b)側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1〜4は、実施形態に係る電子レンジ調理用容器10を示す。この実施形態に係る電子レンジ調理用容器10は、電子レンジによる食材Fの焼き調理に好適に用いることができるものである。
【0012】
実施形態に係る電子レンジ調理用容器10は、上方に開口した透明な容器本体11とその開口を閉じるための蓋12とを備え、それらの容器本体11及び蓋12が一体に形成されてフードパックPに構成されている。そして、容器本体11内の底部に発熱シート13が設けられており、また、容器本体11と発熱シート13との間に断熱シート14が設けられている。
【0013】
容器本体11は、平面視が長方形の浅底のトレイ状に形成されている。容器本体11は、透明性を得る観点から、透明な熱可塑性樹脂で形成されていることが好ましい。熱可塑性樹脂の透明性は、容器成形前の材料の熱可塑性樹脂の樹脂シート材の一部を切り取り、透明度の指標となるヘイズ値を測定することにより評価できる。ヘイズ値の値は小さいほど、透明性に優れることを示す。熱可塑性樹脂のヘイズ値は、電子レンジを用いて焼き調理を行う場合に、調理中でも食材Fの焼け具合を上方及び側方から広範囲に目視確認できる観点から、好ましくは30%以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは15%以下であり、また、耐熱性を得る観点から、好ましくは0.5%以上、より好ましくは3%以上、更に好ましくは5%以上である。この熱可塑性樹脂のヘイズ値は、JIS K7105に基づき、積分球式光線透過率測定装置を用いて測定することができる。
【0014】
容器本体11を形成する熱可塑性樹脂としては、耐熱性及び透明性を有する熱可塑性樹脂が挙げられ、例えば、ポリ乳酸樹脂(以下「PLA」という。)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下「PET」という。)、ポリプロピレンテレフタレート樹脂(以下「PPT」という。)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(以下「PBT」という。)などのポリエステル系樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、単一種のみで構成されていても、また、複数種のブレンド樹脂で構成されていても、どちらでもよい。熱可塑性樹脂は、成形性及び耐熱性の観点から結晶性を有することが好ましい。熱可塑性樹脂は、結晶性ポリエステル系樹脂を含むことが好ましく、その中でもPLAを含むこと、並びにPET、PPT、及びPBTのうち2種以上のブレンド樹脂を含むことがより好ましく、PLAのみを含むこと、並びにPET及びPBTのブレンド樹脂のみを含むことが更に好ましい。
【0015】
熱可塑性樹脂のPLAとしては、モノマーとして乳酸成分のみを縮重合させたポリ乳酸、及びモノマーとして乳酸成分と乳酸以外のヒドロキシカルボン酸成分(以下「ヒドロキシカルボン酸成分」という。)とを縮重合させた共重合体のポリ乳酸が挙げられる。熱可塑性樹脂のPLAは、これらのいずれか一方のみで構成されていても、また、両方を含んで構成されていても、どちらでもよい。
【0016】
PLA中の乳酸成分には、L−乳酸(L体)及びD−乳酸(D体)の光学異性体が存在する。熱可塑性樹脂のPLAは、耐熱性の観点から、乳酸成分として、L体含有量が高い、従って、D体含有量が低いことが好ましい。具体的には、PLA中の乳酸成分のL体含有量は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98.7モル%以上、更に好ましくは99.5モル%以上である。また、PLA中の乳酸成分のD体含有量は、好ましくは5モル%以下、より好ましくは1.3モル%以下、更に好ましくは0.5モル%以下である。PLA中の乳酸成分のL体及びD体含有量は、「ポリオレフィン等合成樹脂製食品容器包装等に関する自主基準 第3版改訂版 2004年6月追補 第3部 衛生試験法 P12-13」記載のL体及びD体含有量の測定方法に基づいて求めることができる。
【0017】
共重合体のPLA中のヒドロキシカルボン酸成分としては、例えば、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。共重合体のPLA中のヒドロキシカルボン酸成分は、単一種のみで構成されていても、また、複数種で構成されていても、どちらでもよい。
【0018】
熱可塑性樹脂中のPLAの含有量は、耐熱性及び透明性の観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
【0019】
また、熱可塑性樹脂がPLAを含む場合、熱可塑性樹脂は、耐熱性及び透明性の観点から、結晶核剤が添加されていることが好ましい。このとき用いられる結晶核剤は、耐熱性及び透明性の観点から、好ましくは有機結晶核剤、より好ましくはアミド系有機結晶核剤である。
【0020】
アミド系有機結晶核剤としては、アミド結合を1つ以上有する化合物であれば特に限定はなく、アミド結合以外に水酸基及び/又はエステル基を有する化合物が好適に用いられる。かかる化合物としては、例えば脂肪酸モノアミド及び脂肪酸ビスアミドが挙げられる。このとき用いられるアミド系有機結晶核剤は、耐熱性、透明性、及び結晶化速度の観点から、好ましくは、脂肪酸モノアミド及び脂肪酸ビスアミドから選ばれる1種又は2種以上、より好ましくは脂肪酸ビスアミドである。
【0021】
脂肪酸モノアミド、脂肪酸ビスアミドにおける脂肪酸の炭素数は、耐熱性、透明性、及び結晶化速度の観点から、好ましくは8以上、より好ましくは12以上、さらに好ましくは16以上であり、また、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、さらに好ましくは20以下である。
【0022】
脂肪酸ビスアミドとしては、具体的には、例えば、メチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、キシリレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド等が挙げられる。
【0023】
結晶核剤の添加量は、耐熱性、透明性、及び結晶化速度の観点から、PLA100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上であり、また、透明性の観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは1質量部以下、更に好ましくは0.7質量部以下である。
【0024】
熱可塑性樹脂がPET、PPT、及びPBTのうち2種以上のブレンド樹脂を含む場合、熱可塑性樹脂中のPET、PPT、及びPBTのうち2種以上のブレンド樹脂の含有量は、耐熱性及び透明性の観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
【0025】
熱可塑性樹脂がPET及びPBTのブレンド樹脂を含む場合、熱可塑性樹脂のPET及びPBTのブレンド樹脂は、耐熱性、透明性、及び結晶化速度の観点から、PET及びPBTのブレンド質量比(PET/PBT)が好ましくは10/90以上、より好ましくは20/80以上、更に好ましくは30/70以上であり、また、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは70/30以下、更により好ましくは50/50以下である。
【0026】
熱可塑性樹脂の融点は、耐熱性の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは150℃以上であり、また、成形性の観点から、好ましくは260℃以下、より好ましくは230℃以下、更に好ましくは200℃以下である。なお、熱可塑性樹脂の融点は、JIS K7121に基づく示差走査熱量測定(DSC)の昇温法による結晶融解吸熱ピーク温度より測定することができる。
【0027】
容器本体11を形成する熱可塑性樹脂には、可塑剤、加水分解抑制剤等が添加されていてもよい。
【0028】
可塑剤としては、例えば、多価カルボン酸とモノアルコール又はその(ポリ)オキシアルキレン付加物とのエステル等が挙げられる。可塑剤の添加量は、透明性の観点から、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であり、また、透明性及び結晶化速度の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
【0029】
加水分解抑制剤としては、加水分解抑制の観点から、ポリカルボジイミド化合物やモノカルボジイミド化合物などのカルボジイミド化合物等が好適に用いられる。加水分解抑制剤の添加量は、加水分解抑制の観点から、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.15質量部以上であり、また、透明性の観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。
【0030】
蓋12は、平面視が容器本体11とほぼ同一の長方形の容器本体11よりも更に浅底のトレイ状に形成されている。蓋12は、容器本体11と同一の透明な熱可塑性樹脂で形成されている。
【0031】
容器本体11及び蓋12は、それらの開口端の一方の長辺間がヒンジ部15を介して結合し、それらの開口同士が対向して開閉する全体が透明なフードパックPに構成されている。なお、容器本体11及び蓋12の開口端部には、密封可能なように係合構造が形成できるように構成されていてもよい。
【0032】
容器本体11及び蓋12で構成されたフードパックPの透明度の指標となるヘイズ値は、調理中でも食材Fの焼け具合を上方及び側方から広範囲に目視確認できる観点から、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、更に好ましくは15%以下であり、また、耐熱性を得る観点から、好ましくは0.5%以上、より好ましくは3%以上、更に好ましくは5%以上である。フードパックPのヘイズ値は、容器の平な箇所の一部を切り取り、JIS K7105に基づき、積分球式光線透過率測定装置を用いて測定することができる。
【0033】
容器本体11及び蓋12で構成されたフードパックPは、JIS S2029:2002に規定された耐熱性試験において、好ましくは評価温度130℃で、より好ましくは評価温度150℃で、反りやへこみを生じないことが好ましい。
【0034】
容器本体11及び蓋12で構成されたフードパックPは、透明な熱可塑性樹脂の樹脂シート材を用いた真空成形、圧空成形、両面真空成形、熱板成形等の熱成形により製造することができる。また、樹脂シート材は、例えば単軸押出機や二軸押出機を用いた押出成形により製造することができる。樹脂シート材の厚さは、耐熱性及び成形性の観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.15mm以上、更に好ましくは0.2mm以上であり、また、透明性及び成形性の観点から、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは0.8mm以下、更に好ましくは0.5mm以下である。樹脂シート材は、延伸加工の設備負荷及び工程負荷を低減し、また、熱成形における賦形性、つまり複雑な形状が成形可能となるという観点から、延伸加工されずに透明性を有することが好ましい。
【0035】
図5及び6は発熱シート13及び断熱シート14を示す。図7は発熱シート13を示す。
【0036】
発熱シート13は、シート状の基材13aとその上に積層された発熱膜13bとその上に積層された被覆フィルム13cとを有する。発熱シート13の厚さは例えば0.05〜0.5mmである。
【0037】
基材13aとしては、例えば、耐熱性に優れる紙、ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂などの樹脂フィルム等が挙げられる。基材13aの厚さは例えば0.005〜0.25mmである。
【0038】
発熱膜13bとしては、例えば、電子レンジからのマイクロ波により渦電流を発生し、その電気抵抗のジュール熱により発熱するアルミニウムやニッケルなどの金属膜等が挙げられる。発熱膜13bの厚さは例えば20〜100Åである。
【0039】
被覆フィルム13cとしては、例えば耐熱性に優れるポリエステル樹脂やポリアミド樹脂等の樹脂フィルムが挙げられる。被覆フィルム13cの厚さは例えば0.005〜0.25mmである。
【0040】
発熱シート13は、基材13a上へのアルミニウム等の金属の蒸着やアルミニウム等の金属フィラーをバインダー樹脂に分散させたコーティング剤のコーティングにより発熱膜13bを形成し、その発熱膜13b側を被覆フィルム13cで被覆して接着若しくは融着することにより、又は、被覆フィルム13c上に蒸着やコーティングにより発熱膜13bを形成し、それを基材13aに、発熱膜13bが基材13a側となるように接着若しくは融着することにより製造することができる。
【0041】
断熱シート14としては、例えば、耐熱性に優れる紙、ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂などの樹脂シート等が挙げられる。断熱シート14の厚さは、容器本体11が焼き調理の熱により損傷を受けるのを抑制する観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.5mm以上であり、また、経済性の観点から、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下、更に好ましくは1.0mm以下である。
【0042】
発熱シート13及び断熱シート14は、容器本体11の底部の形状に対応した長方形に形成されている。発熱シート13は、断熱シート14に、基材13aが断熱シート14側となるように積層されている。発熱シート13の熱の影響が容器本体11に及ぶのを阻止する観点から、発熱シート13、従って、発熱膜13bは、断熱シート14よりも小さく形成され、且つ断熱シート14上に、発熱膜13bの外周から断熱シート14がはみ出すように設けられると共に、耐熱接着剤を介して断熱シート14に接着されていることが好ましい。断熱シート14のはみ出し幅は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、更に好ましくは2mm以上であり、また、経済性の観点から、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、更に好ましくは3mm以下である。断熱シート14は、耐熱接着剤を介して容器本体11の底部に接着されていてもよい。
【0043】
実施形態に係る電子レンジ調理用容器10を用いた焼き調理では、まず、容器本体11の底部に断熱シート14を介して設けられた発熱シート13上に食材Fを載せて蓋12を閉じた後、電子レンジに入れて所定出力及び所定時間マイクロ波を照射する。食材Fとしては、例えば、生魚、生肉、生野菜等が挙げられる。電子レンジのマイクロ波の出力は例えば400〜2000Wであり、照射時間は、食材Fの種類や量にも依るが、例えば10〜300秒である。
【0044】
以上の構成の実施形態に係る電子レンジ調理用容器10によれば、上方に開口した容器本体11及び蓋12で構成されたフードパックPが透明な熱可塑性樹脂で形成されているので、電子レンジを用いて焼き調理を行う場合に、調理中でも食材Fの焼け具合を上方及び側方から広範囲に目視確認することができ、しかも容器本体11と発熱膜13bを含む発熱シート13との間に断熱シート14が設けられているので、容器本体11及び蓋12で構成されたフードパックPが焼き調理の熱により損傷を受けるのを抑制することができる。また、実施形態に係る電子レンジ調理用容器10内に食材Fを収容した状態で食料品店において販売することができ、この場合、容器外から食材Fがよく見えるので、顧客は容器内の食材Fを十分に確認することができ、購入後は、店内或いは自宅において電子レンジを用いて食材Fに全く手を触れることなく調理を行うことができる。更に、容器本体11及び蓋12で構成されたフードパックPがPLAで形成されていれば、PLAが生分解性を有するので、使用後には普通ゴミとしてそのまま廃棄することができる。
【0045】
上記実施形態では、容器本体11及び蓋12が一体に構成されたフードパックPとしたが、特にこれに限定されるものではなく、容器本体及び蓋が別体に構成されていてもよい。この場合、蓋は、容器本体と同一の熱可塑性樹脂で形成されていても、また、異なる透明な材料で形成されていても、どちらでもよい。
【0046】
上記実施形態では、断熱シート14上に発熱膜13bを有する発熱シート13が設けられた構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、断熱シート上に発熱膜が直接蒸着等されていてもよい。
【実施例】
【0047】
(試験評価方法)
<実施例1>
二軸押出機(池貝鉄工社製 型番:PCM-45)に、熱可塑性樹脂のPLA(ネイチャーワークスLLC社製 商品名:Ingeo Biopolymer 2500HP、D体含有量:0.3モル%、融点:165〜180℃)と、この熱可塑性樹脂100質量部に対して、1.6質量部の可塑剤のアセチルクエン酸トリブチル(田岡化学工業株式会社製)と、0.5質量部の結晶核剤のエチレンビスステアリン酸アミド(日本化成社製 商品名:スリパックスE)とを投入すると共に溶融混練し、押出成形された成形物をストランドカットしてPLAのペレットを得た。混練条件は、回転数100rpm及び溶融混練温度190℃であった。そして、得られたPLAのペレットを70℃の減圧雰囲気下で1日乾燥し、水分量を500ppm以下にした。
【0048】
冷却ロール及び加熱ロールを備えた単層シート押出成形機(プラスチック工学研究所社製 型式:BNT-32)に、上記乾燥させたPLAのペレットを投入すると共に溶融混練し、押出成形により幅40cm及び厚さ0.3mmの透明な樹脂シート材を得た。成形条件は、二軸混練部のシリンダー温度:200℃、ダイス(出口)温度:190℃、巻取速度(引き取り速度):毎分2m、冷却ロール温度:20℃、及び冷却ロール接触後の樹脂シート材の温度:25〜30℃であった。二軸混練部のシリンダー温度、ダイス(出口)温度、及び冷却ロール接触後の樹脂シート材の温度は接触式温度計を用いて実測した。なお、得られた樹脂シート材には、単軸乃至二軸の延伸加工を行わなかった。また、得られた樹脂シート材のヘイズ値は13%であった。
【0049】
単発真空圧空成形機(株式会社 脇坂エンジニアリング製 型番:FVS-500P WAKITEC)のガイドに、上記得られた樹脂シート材を取り付け、真空成形により図8に示すような上記実施形態と同種の容器本体11及び蓋12で構成された長さ16.5cm、幅10.0cm、及び厚さ3.6cmのフードパックPを得た。得られたフードパックPのヘイズ値は13%であった。成形条件は、予熱ヒータ温度:400℃、予熱時間:5.5秒、予熱後の樹脂シート材の温度:80℃、金型温度:100℃、及び金型保持時間:12秒であった。賦形後には、エア冷却を行なって脱型した。なお、予熱後の樹脂シート材の温度は直接表面温度計を用いて実測した。
【0050】
ポリエステル樹脂の被覆フィルム上にアルミニウムの発熱膜を蒸着したものを、薄紙の基材に、発熱膜が基材側となるように接着した長さ12.5cm、幅6.0cm、及び厚さ0.07mmの発熱シート(凸版印刷株式会社製 商品名:サセプター)を準備した。また、長さ13.0cm、幅6.5cm、及び厚さ0.8mmの厚紙の断熱シートを準備した。発熱シート(発熱膜)を、その外周から断熱シートが幅約2.5mmはみ出すと共に基材が断熱シート側となるように、断熱シート上の中央に設け、耐熱接着剤を介して断熱シートに接着した。そして、この発熱シート及び耐熱シートを、上記フードパックの容器本体内の底部に、発熱シートが上方を向くように設けて電子レンジ調理用容器を構成した。
【0051】
上記電子レンジ調理用容器における容器本体内の底部に設けられた発熱シート上に、生塩サバの切り身30gを、皮が発熱シート側となるように載せて蓋を閉めた。そして、内部に生塩サバを収容した電子レンジ調理用容器を電子レンジ(パナソニック社製 型番:NE-1801)に入れ、マイクロ波の出力を600W及び照射時間を80秒(1g当たり2.67秒)として、塩サバの焼き調理を行った。
【0052】
以上の電子レンジ調理用容器を用いた塩サバの電子レンジでの焼き調理について、以下の試験評価を行った。
【0053】
電子レンジでの調理中に塩サバの焼け具合を上方及び側方から広範囲に目視確認することができるか否かを、「できる」をA及び「できない」をBと評価した。
【0054】
調理後の塩サバの皮側の焼け具合を、調理後の食味の香ばしさの有無により、「香ばしい」をA及び「香ばしくない」をBと評価した。
【0055】
調理後の電子レンジ調理用容器のフードパックの変形の有無を、「変形無」をA及び「変形有」をBと評価した。
【0056】
調理後の電子レンジ調理用容器のフードパックの溶融(穴あき)の有無を、「溶融無」をA及び「溶融有」をBと評価した。
【0057】
<実施例2>
混練機(東洋精機社製 商品名:ラボプラストミル)に、PETシート(帝人社製 商品名:A-PET樹脂シート グレードFR、融点:254℃)を裁断してペレット状にしたもの、及びPBT(ポリプラスチックス社製 商品名:DURANEX PBT 700FP EF201R、融点:223℃)のペレットを、PET/PBTのブレンド質量比が40/60となるように投入すると共に溶融混練して均一なPET及びPBTのブレンド樹脂を得た。得られたブレンド樹脂の融点は220℃であった。混練条件は、回転数50rpm、溶融混練温度230℃、及び混練時間10分であった。
【0058】
ハードクロムメッキ仕上げした厚さ0.5mmのステンレス板(ASANUMA&CO.LTD製 商品名:フェロタイププレートデラックス)上に、一辺20cmの正方形の空間が形成された周縁幅2cm及び厚さ300μmのスペーサを配置し、そのスペーサの内側に上記ブレンド樹脂を裁断してペレット状にしたものを所定量設け、更にその上から同一のステンレス板を載せた。そして、それをプレス機(東洋精機社製 商品名:ラボプレス)にセットし、プレス成形により透明な樹脂シート材を得た。成形条件は、温度280℃及び圧力5Kg/cmで5分、温度280℃及び圧力200Kg/cmで5分、並びに温度15℃及び圧力5Kg/cmで1分の順であった。なお、得られた樹脂シート材には、単軸乃至二軸の延伸加工を行わなかった。また、得られた樹脂シート材のヘイズ値は11%であった。
【0059】
上記得られた樹脂シート材を折り曲げ加工することにより、図9に示すように、底面が一辺10cmの正方形、開口形状が一辺18.5cmの正方形、及び高さが4.2cmで、底面から開口に向かって側面が内側に没入するように内径が拡大した形状の樹脂容器を一対作製した。そして、これらの一対の樹脂容器により、一方を容器本体11及び他方を蓋12とし、開口同士を突き合わせることによりフードパックPを構成した。得られたフードパックPのヘイズ値は11%であった。
【0060】
ポリエステル樹脂の被覆フィルム上にアルミニウムの発熱膜を蒸着したものを、薄紙の基材に、発熱膜が基材側となるように接着した一辺9.5cm及び厚さ0.07mmの正方形の発熱シート(凸版印刷株式会社製 商品名:サセプター)を準備した。また、一辺10.0cm及び厚さ0.8mmの正方形の厚紙の断熱シートを準備した。発熱シート(発熱膜)を、その外周から断熱シートが幅約2.5mmはみ出すと共に基材が断熱シート側となるように、断熱シート上の中央に設け、耐熱接着剤を介して断熱シートに接着した。そして、この発熱シート及び耐熱シートを、上記フードパックPの容器本体11である一方の樹脂容器の底部に、発熱シートが上方を向くように設けた。
【0061】
上記容器本体11である一方の樹脂容器の底部に設けられた発熱シート上に、生塩サバの切り身30gを、皮が発熱シート側となるように載せた後、上記フードパックPの蓋12である他方の樹脂容器を、開口同士を突き合わせるように被せ、それらの縁をシールテープ(JIS K6885に記載のシール用四ふっ化エチレン樹脂未焼成テープ)で封止し、内部に生塩サバを収容した電子レンジ調理用容器を構成した。そして、この電子レンジ調理用容器を電子レンジ(パナソニック社製 型番:NE-1801)に入れ、マイクロ波の出力を600W及び照射時間を80秒(1g当たり2.67秒)として、塩サバの焼き調理を行った。
【0062】
以上の電子レンジ調理用容器を用いた塩サバの電子レンジでの焼き調理について、実施例1と同様の試験評価を行った。
【0063】
<比較例>
紙製のフードパックの底に実施例1及び2で用いたのと同種の発熱シートが設けられた市販の電子レンジ調理用容器(旭化成ホームプロダクツ社製 商品名:クックパー レンジで焼き魚ボックス一切れ用)を用い、発熱シート上に、生塩サバの切り身30gを、皮が発熱シート側となるように載せた。そして、説明書に従って容器を組み立てた後、内部に生塩サバを収容した電子レンジ調理用容器を電子レンジ(パナソニック社製 型番:NE-1801)に入れ、マイクロ波の出力を600W及び照射時間を80秒(1g当たり2.67秒)として、塩サバの焼き調理を行った。
【0064】
以上の電子レンジ調理用容器を用いた塩サバの電子レンジでの焼き調理について、実施例1と同様の試験評価を行った。
【0065】
(試験評価結果)
表1は試験評価結果を示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1によれば、実施例1及び2並びに比較例のいずれも、塩サバの焼け具合は良好であり、また、電子レンジ調理用容器のフードパックの変形及び溶融も認められなかった。実施例1及び2においてフードパックの変形及び溶融が認められなかったのは、フードパックが耐熱性の高い結晶性ポリエステル系樹脂で形成されていることに加え、容器本体と発熱膜を含む発熱シートとの間に断熱シートが設けられていたため、発熱シートの熱の影響が容器本体に及ぶのが阻止されたからであると考えられる。比較例においてフードパックの変形及び溶融が認められなかったのは、フードパックが紙製であったことによるものである。
【0068】
実施例1及び2では、フードパックが熱可塑性樹脂で形成されているので、電子レンジでの調理中に塩サバの焼け具合を上方及び側方から広範囲に目視確認することができたのに対し、比較例では、フードパックが紙製であるので、塩サバの焼け具合を電子レンジでの調理中に目視確認することができなかった。実施例1及び2では、調理中の熱によるフードパック内部の視認性への影響は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は電子レンジ調理用容器について有用である。
【符号の説明】
【0070】
F 食材
P フードパック
10 電子レンジ調理用容器
11 容器本体
12 蓋
13 発熱シート
13a 基材
13b 発熱膜
13c 被覆フィルム
14 断熱シート
15 ヒンジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9