(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、圧電振動子が搭載される電子機器の小型化に伴い、圧電振動片の一層の小型化とクリスタルインピーダンス(CI値)の低下(80kΩ以下に低下)の要求がますます厳しくなってきた。圧電振動片を小型化した場合、圧電振動片のクリスタルインピーダンス(以下「CI値」という)が高くなりやすく、所望の振動特性が得られなくなるおそれがある。
【0006】
一方、CI値を低下させる方法として、振動腕部の先端に幅広のハンマー部を形成する方法がある。しかし、圧電振動片の小型化を追求した場合、ハンマー部を幅広に形成するにはスペース的な制限があり、その結果として、充分にCI値を低下させることが難しい。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みたものであって、小型化とCI値の低下の両立が可能な圧電振動片及び圧電振動子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の圧電振動片は、第1方向に沿って延びる一対の振動腕部と、一対の前記振動腕部を固定する基部と、を備えた圧電振動片であって、前記一対の振動腕部は、前記第1方向に交差する第2方向に並んで配置され、前記第1方向の基端側が前記基部に固定されるとともに、前記第1方向の先端側が振動可能とされ、前記振動腕部の前記基端側における前記第2方向の両側には、前記振動腕部の前記第2方向の幅を前記先端側から前記基端側にかけて漸次広げるように、一対の傾斜面が形成され、前記一対の傾斜面が形成されている領域の前記第1方向における長さは、前記振動腕部の基端部から先端部までの全長に対して、0.25倍以上かつ0.5倍以下の長さに設定されている。
【0009】
本発明によれば、振動腕部の基端側に設けられた一対の傾斜面の長さが、振動腕部の全長に対して0.25倍以上かつ0.5倍以下に設定されているので、小型化を追求した場合でも、CI値を80kΩ以下に低減し、発振周波数を40kΩ以下に低減することができる。
【0010】
また、前記一対の傾斜面のうち前記第2方向の内側に配置された内側傾斜面の、前記基端側の基端側端部は、前記基部の前記先端側の端面に連結され、前記一対の傾斜面のうち前記第2方向の外側に配置された外側傾斜面の、前記基端側の基端側端部は、前記基部の前記第2方向の端面に連結され、前記外側傾斜面の前記基端側端部は、前記内側傾斜面の前記基端側端部より、前記先端側に配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、外側傾斜面の基端側端部が内側傾斜面の基端側端部よりも先端側に配置されているので、外側傾斜面と内側傾斜面とが振動腕部の中心線に対して略左右対称に形成されている場合と比較して、基部の第2方向における幅を狭くできる。したがって、圧電振動片の強度向上と小型化が実現できる。
【0012】
また、前記振動腕部の表裏面に、前記第1方向に沿うように延びかつ前記振動腕部の基端側から先端側に亘って前記第2方向における幅が一定の溝部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、溝部が形成されることで電界効率が向上し、CI値が低下する。更に溝部の幅が一定であることにより、溝部内に、意図せずに形成されたエッチング残り等を生じさせることがない。したがって、振動特性を向上させることができる。因みに、溝幅が途中で変わると、変曲点において強度が低下したりエッチング残りが生じたりするおそれがある。また、外側傾斜面の基端側端部が内側傾斜面の基端側端部よりも先端側に配置されている場合は、外側傾斜面に形成された電極と溝部内に形成された電極とが近くなるので、振動腕部の基端側おける電界効率が向上し、CI値低下に貢献できる。
【0014】
また、前記溝部の先端側溝端部は、前記外側傾斜面の前記先端側端部よりも前記先端側に配置され、前記溝部の基端側溝端部は、前記外側傾斜面の前記基端側端部よりも前記基端側に配置されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、溝部を長く形成することができる。したがって、電界効率のアップに貢献できる。
【0016】
また、前記振動腕部は、該振動腕部の全長が0.1mm以下、発振周波数が40kHz以下、かつCI値が80kΩ以下であることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、超小型の圧電振動子を構成することができ、電子機器の小型化及び消費電力低減に貢献することができる。
【0018】
また、前記一対の振動腕部の前記第2方向における外側において、それぞれ前記第1方向に沿うように延びる一対の支持腕部と、前記基部と前記支持腕部とを連結する連結部と、を有し、前記一対の支持腕部には、外部に対して電気的に接続されるマウント電極が形成されていることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、支持腕部のマウント電極を介して例えばパッケージ等に実装できるので、振動腕部と支持腕部のマウント電極との距離を長く確保することができる。これにより、圧電振動片の全長を増大させることなく、振動漏れを抑制できる。したがって、圧電振動片のさらなる小型化を実現しつつ、振動漏れを抑制できる。
【0020】
また、前記一対の振動腕部の間において、前記第1方向に沿うように延びる支持腕部を有し、前記支持腕部には、外部に対して電気的に接続されるマウント電極が形成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、支持腕部のマウント電極を介して例えばパッケージ等に実装できるので、振動腕部と支持腕部のマウント電極との距離を長く確保することができる。これにより、圧電振動片の全長を増大させることなく、振動漏れを抑制できる。また、圧電振動片は、一本の支持腕部が一対の振動腕部の間に配置されるので、一対の支持腕部を一対の振動腕部の外側に配置する構造に比べ、第2方向の幅を狭くできる。したがって、圧電振動片のさらなる小型化を実現しつつ、振動漏れを抑制できる。
【0022】
また、本発明の圧電振動子は、互いに接合されたベース基板とリッド基板とを有し、両基板の間に形成されたキャビティに前記圧電振動片を収容するパッケージと、を備えることを特徴としている。
【0023】
本発明によれば、小型化の達成と発振周波数の低減との両立を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、小型化を追求した場合でも、CI値を80kΩ以下に低減することができ、発振周波数を40kΩ以下に低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
(第一実施形態)
図1は、圧電振動片1の表面側の平面図である。本実施形態では、圧電振動片1として、溝部付きタイプの音叉型の圧電振動片を例に挙げて説明する。
図1に示すように、圧電振動片1は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の圧電板2を備えている。
【0028】
圧電板2は、中心軸Oに平行な方向(以下、「第1方向」と表記する)に沿って延在するように形成された振動部3と、振動部3の基端部を支持する基部4と、を備えている。振動部3は、中心軸Oに直交する方向(以下、「第2方向」と表記する)に並んで配置された一対の振動腕部3a、3bを有している。
【0029】
一対の振動腕部3a、3bは、第1方向に沿うように配置されている。振動腕部3a、3bは、先端側の第2方向の幅が、基端側の第2方向の幅よりも広くなるように形成されている。即ち、一対の振動腕部3a、3bの先端部には、基端側に比べて幅を拡大したハンマー部43a、43bが設けられている(いわゆる、ハンマーヘッドタイプ)。
このように、ハンマー部43a、43bが設けられることで、振動腕部3a、3bの先端部をより重くすることができ、振動時における慣性モーメントを増大できる。そのため、振動腕部3a、3bを振動しやすくすることができ、その分、振動腕部3a、3bの長さを短くすることができて小型化が図り易くなる。
【0030】
基部4は、一対の振動腕部3a、3bのうち第1方向における一方の端部同士を連結している。基部4には、連結部6を介して支持部7が連結されている。支持部7は、支持基部8と、支持腕部9(一対の支持腕部9a、9b)と、を有している。連結部6は、基部4と支持基部8との間に設けられている。連結部6は、基部4の第2方向における両端面から第2方向の外側に向かって延びるとともに、支持基部8に連結されている。
一対の支持腕部9a、9bは、支持基部8から第1方向へそれぞれ延びている。一対の支持腕部9a、9bは、第2方向において、振動部3の両側に配置されている。本実施形態の圧電振動片1は、振動部3が第2方向において一対の支持腕部9a、9bの間に配置される、いわゆるサイドアームタイプの圧電振動片である。
【0031】
図2は、
図1に示すA−A線に沿った断面図である。
図1及び
図2に示すように、上記の一対の振動腕部3a、3bの主面(表裏面)上には、振動腕部3a、3bの基端部から先端部に向かって、一定幅の溝部5が形成されている。この溝部5は、振動腕部3a、3bの基端部側から中間部を越える範囲に亘って形成されている。これにより、一対の振動腕部3a、3bは、それぞれ
図2に示すように断面H型となっている。なお、溝部5の基端側における形成領域の詳細については後述する。
【0032】
図1に示すように、このように形成された圧電板2の外表面上には、一対の励振電極10、11、一対のマウント電極12、13がそれぞれ形成されている。このうち、一対の励振電極10、11は、電圧が印加されたときに一対の振動腕部3a、3bを互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、一対の振動腕部3a、3bの外表面にそれぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。
【0033】
具体的には、一方の励振電極10が、主に一方の振動腕部3aの溝部5内と他方の振動腕部3bの側面上とに形成され、他方の励振電極11が、主に他方の振動腕部3bの溝部5内と一方の振動腕部3aの側面上とに形成されている。
【0034】
一対の励振電極10、11は、基部4の主面及び側面を含む外表面上に形成される基部引出電極14に、それぞれ電気的に接続されている。一対のマウント電極12、13は、一対の支持腕部9a、9bの主面の先端部に設けられている。一対のマウント電極12、13は、それぞれ基部引出電極14から腕部引出電極15、16を介して電気的に接続されている。腕部引出電極15、16は、それぞれ連結部6、支持基部8及び支持腕部9a、9bの主面に沿って形成されている。このように、一対の励振電極10、11は、一対のマウント電極12、13を介して電圧が印加されるようになっている。
【0035】
なお、上述した励振電極10、11、マウント電極12、13、基部引出電極14、及び腕部引出電極15、16は、例えば、クロム(Cr)と金(Au)との積層膜であり、水晶と密着性の良いクロム膜を下地として成膜した後に、表面に金の薄膜を施したものである。但し、この場合に限られず、例えば、クロムとニクロム(NiCr)の積層膜の表面にさらに金の薄膜を積層しても構わないし、クロム、ニッケル、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の単層膜でも構わない。
【0036】
また、一対の振動腕部3a、3bの先端のハンマー部43a、43b部には、
図1に示すように、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜17(粗調膜17a及び微調膜17bからなる)が形成されている。この重り金属膜17を利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部3a、3bの周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができるようになっている。
【0037】
本実施形態では、振動腕部3a、3bの基端側における第2方向の両側に、一対の傾斜面20が形成される。傾斜面20は、振動腕部3a、3bの第2方向の幅を先端側から基端側にかけて漸次広げるようにして形成されている。したがって、一対の傾斜面20が形成されている部分は、先端側より幅が広がった拡幅部とも言う。
【0038】
ここで、振動腕部3a、3bの基端部から先端部までの全長をL1とし、一対の傾斜面20が形成されている領域(拡幅部)の第1方向における長さをL2とするとき、L2は、L1の0.25倍以上かつ0.5倍以下の長さに設定されている。つまり、L2/L1=0.25〜0.5に設定されている。
このように設定することで、CI値80kΩ以下を実現し、発振周波数40kΩ以下を実現できる。その点についての詳細は後述する。
【0039】
図3は、
図1に示した傾斜面20を仮想外側部21と共に表した模式図である。なお、
図3においては、仮想外側部21の外形を二点鎖線で図示している。
一対の傾斜面20のうち第2方向の内側に配置された内側傾斜面22の、基端側の基端側端部22aは、基部4の先端側の端面23に連結される。また、一対の傾斜面20のうち第2方向の外側に配置された外側傾斜面24の、基端側の基端側端部24aは、基部の第2方向の端面25に連結される。
【0040】
外側傾斜面24の基端側端部24aは、内側傾斜面22の基端側端部22aより、先端側に配置されている。また、外側傾斜面24の先端側の先端側端部24bと、内側傾斜面22の先端側の先端側端部22bとは、第1方向の同じ位置に配置される。そして、外側傾斜面24と、内側傾斜面22の先端側の一部22cとは、平面視において、振動腕部3a、3bを第2方向に二等分する中心線Q1に対して略左右対称に形成されている。
【0041】
外側傾斜面24と内側傾斜面22とは、
図3に示す平面視において、直線とすることができる(なお、ここでの直線とは、厳密な直線のみならず、加工工程で意図せず形成された微少の凹凸を含む場合も、巨視的には直線と解釈できる限りは「直線」と解釈するものとする。以下、「直線」の定義はこれに倣うものとする)。
また、外側傾斜面24と内側傾斜面22とは、
図3に示す平面視において、傾斜角が徐々に変化する複数の直線を連続させた折線とすることができる。さらに、外側傾斜面24と内側傾斜面22とは、
図3に示す平面視において、基部4に向かって曲率が徐々に小さくなる曲線とすることができる。また、外側傾斜面24と内側傾斜面22とは、
図3に示す平面視において、上記の直線や折線と、曲線とを連続させた線とすることができる。
【0042】
ここで、溝部5の基端側溝端部5aは、外側傾斜面24の基端側端部24aよりも基端側に配置される。また、溝部5の先端側溝端部5bは、外側傾斜面24の先端側端部24bよりも先端側に配置される。さらに、基部4の第2方向の端面25における先端側の一部に形成された励振電極10(11)と、溝部5の内壁面に形成された励振電極11(10)とは、対向配置されている(励振電極10、11については
図2参照)。
したがって、基部4の第2方向の幅が狭くなる分、溝部5の内壁面と基部4の端面25との幅W1は、従来技術における溝部の内壁面と基部の端面との幅W2と比べて狭くなる。これにより、溝部5を備えた圧電振動片1は、外側傾斜面24の近傍における電界効率が向上する。
【0043】
この圧電振動片1は、振動腕部3a、3bの全長が0.1mm以下に設定された超小型のものであり、その上で、発振周波数が40kHz以下、CI値が80kΩ以下に抑えられている。この圧電振動片1を利用すれば、超小型の圧電振動子を構成することができ、電子機器の小型化及び消費電力低減に貢献することができる。
【0044】
次に、圧電振動片1の作用を説明する。
この圧電振動片1によれば、振動腕部3a、3bの第2方向の両側に、第2方向の幅を基端側にかけて漸次広げる一対の傾斜面20が形成される。この傾斜面20は、振動腕部3a、3bの基部4に対する接続部分を基部4に向かって徐々に幅広とする。これにより、振動腕部3a、3bは、耐衝撃性が高められる。また、耐衝撃性が高まることにより、圧電振動片1のクリスタルインピーダンス(以下、CI値)が低下することも、発明者らの鋭意検討によって見出されている。
【0045】
また、振動腕部3a、3bの基端部から先端部までの全長L1と、一対の傾斜面20が形成されている領域(拡幅部)の第1方向における長さL2の比、即ち、L2/L1が0.25〜0.5の範囲に設定されている。これにより、圧電振動片1の小型化を追求した場合でも、CI値を80kΩ以下に低減し、発振周波数を40kΩ以下に低減することができることが、発明者らの鋭意検討によって見出されている。
【0046】
この点について、
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は、振動腕部の全長L1と傾斜面の長さL2の比を違えた圧電振動片1の4種のサンプル(a)〜(d)を示している。また、
図5は、L1とL2の比を違えた複数種の圧電振動片を使用して得られた実験結果を示す特性図で、(a)はL2/L1と発振周波数の関係を示す図、(b)はL2/L1とCI値の関係を示している。
【0047】
図4(a)のサンプルは、L2/L1=0.2の場合の例で、L1を750μmとすると、L2は150μmとされている。
図4(b)のサンプルは、L2/L1=0.3の場合の例で、L1を750μmとすると、L2は225μmとされている。
図4(c)のサンプルは、L2/L1=0.4の場合の例で、L1を750μmとすると、L2は300μmとされている。
図4(d)のサンプルは、L2/L1=0.5の場合の例で、L1を750μmとすると、L2は375μmとされている。
【0048】
これら4つのサンプルについて実験をしたところ、
図5(a)、(b)に示すような結果が得られた。この
図5(a)の結果から分かるように、L2/L1の値が0.5より大きくなると、発振周波数F#1が40kHzを超えてしまう。いま、要求される発振周波数は40kHz以下であるから、L2/L1の値は0.5以下に抑えなければならない。
【0049】
また、
図5(b)の結果から分かるように、L2/L1の値が0.2以下になると、CI値(ここでは、CI#1値)が80kΩを超えてしまうことが分かった。そこで、境界値を探すために更にL2/L1=0.25のサンプルについて追加実験してみた。その結果、L2/L1の値が0.25以上なら、CI値を80kΩに抑えられることが分かった。
【0050】
以上のことから、
図4に示した(a)〜(d)の4つのサンプルのうち、(a)L2/L1=0.2のサンプルはNG(不合格)の判定、(c)〜(d)のサンプルはOK(合格)の判定を得るに至った。
【0051】
以上のように、L2/L1を0.25〜0.5に設定することで、CI値80kΩ以下を実現し、発振周波数40kΩ以下を実現できることが判明した。
【0052】
ところで、振動腕部3a、3bは、先端側が第2方向に変位するので、従来では、振動バランスを統一する目的で傾斜面20の全てが略左右対称となるように形成されていた。しかし、基部4は、傾斜面20が略左右対称の状態で徐々に幅広に形成されると、第2方向の幅が広くなってしまう。基部4が幅広となることは、小型化の支障となる。また、基部4は、振動漏れを抑制するために幅を狭くしたい要請がある。このため、基部4は、括れ(いわゆるノッチ)を有するものもあるが、この場合、形状が複雑となる。
【0053】
そこで、本実施形態の圧電振動片1では、外側傾斜面24の基端側端部24aが、内側傾斜面22の基端側端部22aより、先端側に配置される。つまり、外側傾斜面24は、略左右対称となった傾斜面20のうち、
図3に示す第1方向に沿う仮想線Q2よりも外側の部分(仮想外側部21、ハッチングを施した部分。)が除かれた形状となっている。なお、「除かれる」とは、切断される意味に限定されるものではなく、元々その形状で形成されることを含む。仮想線Q2の位置は、基部4の第2方向の端面25に沿う位置となる。基部4は、仮想外側部21が不要となる分、第2方向の幅を狭く形成できる。
【0054】
このとき、内側傾斜面22と外側傾斜面24とは、全体的に見ると第2方向に振動腕部3a、3bを二等分する中心線に対して略左右対称とならない。しかしながら、本実施形態の圧電振動片1においては、基部4の幅を狭くすることで振動特性上のメリットが大きいことが知見された。これにより、圧電振動片1は、ノッチの無い簡素な形状で振動漏れを抑制できるとともに、小型化が可能となる。さらには、振動腕部3a、3bの強度も確保することができる。
【0055】
また、この圧電振動片1によれば、振動腕部3a、3bの表裏面に、溝部5が形成される。振動腕部3a、3bは、溝部5の内壁面と、基部4の第2方向の端面(外側傾斜面24も含む)と、に電界が形成されることで屈曲振動する。溝部5の内壁面と基部4の端面との幅が広いと、電界効率が低下する。
【0056】
本実施形態の圧電振動片1では、基部4の第2方向の幅が狭くなる分、溝部5の内壁面と基部4の端面25との幅W1が、従来技術における溝部の内壁面と基部の端面との幅W2と比較して狭くなる。これにより、溝部5を備えた圧電振動片1は、特に上記した仮想外側部21が除かれることで、外側傾斜面24の近傍における電界効率が向上する。つまり、外側傾斜面24に形成された電極と溝部5内に形成された電極とが近くなるので、振動腕部3a、3bの基端側おける電界効率が向上する。その結果、CI値が下がり、省電力化が可能となる。
【0057】
また、振動腕部3a、3bの基端部近傍の電界効率を向上させることは、例えば振動腕部3a、3bの先端部の電界効率を向上させる場合と比較して、より振動特性を向上しやすくなることが、本発明者らの鋭意検討によって判明している。具体的には、所望の周波数を安定して得やすくなることや、CI値を低下させることができるなどの効果が期待できる。
【0058】
また、この圧電振動片1によれば、溝部5の幅が一定であることにより、溝部5内に、意図せずに形成されたエッチング残り等を生じさせることがない。したがって、振動特性を向上させることができる。因みに、溝幅が途中で変わると、変曲点において強度が低下したりエッチング残りが生じたりするおそれがある。
【0059】
また、この圧電振動片1によれば、溝部5の先端側溝端部5bが外側傾斜面24の先端側端部24bよりも先端側に配置され、溝部5の基端側溝端部5aが外側傾斜面24の基端側端部24aよりも基端側に配置されているので、溝部5を長く形成することができ、電界効率のアップに貢献できる。
【0060】
また、この圧電振動片1によれば、支持腕部9のマウント電極12、13を介して例えばパッケージ等に実装できる。この圧電振動片1は、基部4において、連結部6と、支持腕部9のマウント電極12、13との距離を長く確保することができる。これにより、圧電振動片1の全長を増大させることなく、振動漏れを抑制できる。その結果、CI値が上昇するのを抑え、出力信号の品質が低下するのを抑えることが可能となる。そして、基部4は、それぞれの振動腕部3a、3bの上記の仮想外側部21が不要となる分、第2方向の幅を狭く形成できる。
【0061】
また、この圧電振動片1によれば、振動腕部3a、3bの先端に、幅を拡大したハンマー部43a、43bが形成されている。このハンマー部43a、43bの第1方向における全長L3は、振動腕部3a、3bの全長L1に対して、30%以上かつ45%以下であることが望ましい。30%以上の長さL3のハンマー部43a、43bを設けた場合、CI値を80Ω以下に抑えやすくなる。一方、ハンマー部43a、43bの長さL3を振動腕部3a、3bの全長L1の45%以下に抑えることで、必要な強度を確保することができるからである。
【0062】
(第一実施形態の第一変形例)
次に、第一実施形態の第一変形例に係る圧電振動片1Bを説明する。
図6は、第一実施形態の第一変形例に係る圧電振動片1Bの表面側の構成を示す平面図である。なお、以下の説明では、上述した構成と共通する構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。また、図中では励振電極10、11やマウント電極12、13等は上述した実施形態と同様の構成であるため、図示を省略する。
【0063】
第一変形例に係る圧電振動片1Bは、基部4Bの先端側の端面23に、一対の振動腕部3a、3bの間で、支持腕部9Bが形成されている。第一変形例に係る圧電振動片1Bは、支持腕部9Bが第1方向に沿い先端側に向かって延びて形成されている、いわゆるセンターアームタイプの圧電振動片である。支持腕部9Bには、マウント電極12B、13Bが形成される。
【0064】
この圧電振動片1Bによれば、支持腕部9Bを介して例えばパッケージ等に実装できる。この圧電振動片1Bは、振動腕部3a、3bと、支持腕部9Bのマウント電極12B、13Bと、の距離を長く確保することができる。これにより、圧電振動片1Bの全長を増大させることなく、振動漏れを抑制できる。その結果、CI値が上昇するのを抑え、出力信号の品質が低下するのを抑えることが可能となる。
【0065】
また、圧電振動片1Bは、一つの支持腕部9Bが一対の振動腕部3a、3bの間に配置されるので、一対の支持腕部を外側に配置する構造に比べ、第2方向の幅を狭く形成できる。そして、基部4Bは、それぞれの振動腕部3a、3bの上記の仮想外側部21が不要となる分、第2方向の幅を狭く形成できる。
【0066】
(第一実施形態の第二変形例)
次に、第一実施形態の第二変形例に係る圧電振動片1Cを説明する。
図7は、第一実施形態の第二変形例に係る圧電振動片1Cの表面側の構成を示す平面図である。
第二変形例に係る圧電振動片1Cは、基部4Cが、一対の第2方向の端面25と、基部4Cの先端側の端面23と、基部4Cの後端側の端面28と、を四辺部に有する四角板状に形成されている。基部4Cには、外部に対して電気的に接続されるマウント電極(
図7において不図示)が形成されている。
【0067】
この圧電振動片1Cによれば、基部4Cを介して例えばパッケージ等に実装できる。この圧電振動片1Cは、基部4Cから延出する支持腕部が不要となり、基部4Cの第2方向の幅を小さくできる。そして、基部4Cは、それぞれの振動腕部3a、3bの上記の仮想外側部21が不要となる分、第2方向の幅をさらに狭く形成できる。
【0068】
(第二実施形態)
次に、
図8及び
図9に基づいて、上述した圧電振動片1、圧電振動片1B又は圧電振動片1Cを具備する圧電振動子50について説明する。また、図中では圧電振動片1の外形形状のみを示し、励振電極10、11やマウント電極12、13等は上述した実施形態と同様の構成であるため、図示を省略する。なお、以下では省略するが、圧電振動片1B、圧電振動片1Cを搭載した場合であっても、同様の説明が可能である。
【0069】
図8は、第二実施形態に係る圧電振動子50の全体構成を示す分解斜視図である。
図9は、
図8におけるB−B断面に沿った構成を示す断面図である。
図8及び
図9に示すように、本実施形態の圧電振動子50は、内部に気密封止されたキャビティCを有するパッケージ51と、キャビティC内に収容された上述した圧電振動片1と、を備えたセラミックパッケージタイプの表面実装型振動子である。
【0070】
この圧電振動子50は、概略直方体状に形成されている。本実施形態では、平面視において圧電振動子50の長手方向を長さ方向といい、短手方向を幅方向といい、これら長さ方向及び幅方向に対して直交する方向を厚さ方向という。
【0071】
パッケージ51は、パッケージ本体(ベース基板)53と、このパッケージ本体53に対して接合されるとともに、パッケージ本体53との間にキャビティCを形成する封口板(リッド基板)54と、を備えている。
パッケージ本体53は、互いに重ね合わされた状態で接合された第1ベース基板55及び第2ベース基板56と、第2ベース基板56上に接合されたシールリング57と、を備えている。
【0072】
第1ベース基板55は、平面視略長方形状に形成されたセラミックス製の基板とされている。第2ベース基板56は、第1ベース基板55と同じ外形形状である平面視略長方形状に形成されたセラミックス製の基板とされており、第1ベース基板55上に重ねられた状態で焼結等によって一体的に接合されている。
【0073】
第1ベース基板55及び第2ベース基板56の四隅には、平面視1/4円弧状の切欠部58が、両基板55、56の厚さ方向の全体に亘って形成されている。これら第1ベース基板55及び第2ベース基板56は、例えばウエハ状のセラミック基板を2枚重ねて接合した後、両セラミック基板を貫通する複数のスルーホールを行列状に形成し、その後、各スルーホールを基準としながら両セラミック基板を格子状に切断することで作製される。
その際、スルーホールが4分割されることで、上述した切欠部58となる。また、第2ベース基板56の上面は、圧電振動片1がマウントされる実装面56aとされている。
【0074】
なお、第1ベース基板55及び第2ベース基板56はセラミックス製としたが、その具体的なセラミックス材料としては、例えばアルミナ製のHTCC(High Temperature Co−Fired Ceramic)や、ガラスセラミックス製のLTCC(Low Temperature Co−Fired Ceramic)等が挙げられる。
【0075】
シールリング57は、第1ベース基板55及び第2ベース基板56の外形よりも一回り小さい導電性の枠状部材であり、第2ベース基板56の実装面56aに接合されている。
具体的には、シールリング57は、銀ロウ等のロウ材や半田材等による焼付けによって実装面56a上に接合、或いは、実装面56a上に形成(例えば、電解メッキや無電解メッキの他、蒸着やスパッタ等により形成)された金属接合層に対する溶着等によって接合されている。
【0076】
なお、シールリング57の材料としては、例えばニッケル基合金等が挙げられ、具体的にはコバール、エリンバー、インバー、42−アロイ等から選択すればよい。特に、シールリング57の材料としては、セラミック製とされている第1ベース基板55及び第2ベース基板56に対して熱膨張係数が近いものを選択することが好ましい。例えば、第1ベース基板55及び第2ベース基板56として、熱膨張係数6.8×10
-6/℃のアルミナを用いる場合には、シールリング57としては、熱膨張係数5.2×10
-6/℃のコバールや、熱膨張係数4.5〜6.5×10
-6/℃の42−アロイを用いることが好ましい。
【0077】
封口板54は、シールリング57上に重ねられた導電性基板であり、シールリング57に対する接合によってパッケージ本体53に対して気密に接合されている。そして、この封口板54とシールリング57と第2ベース基板56の実装面56aとで画成された空間が、気密に封止された上述したキャビティCとして機能する。
【0078】
なお、封口板54の溶接方法としては、例えばローラ電極を接触させることによるシーム溶接や、レーザ溶接、超音波溶接等が挙げられる。また、封口板54とシールリング57との溶接をより確実なものとするため、互いになじみの良いニッケルや金等の接合層を、少なくとも封口板54の下面と、シールリング57の上面とにそれぞれ形成することが好ましい。
【0079】
ところで、第2ベース基板56の実装面56aには、圧電振動片1との接続電極である一対の電極パッド61A、61Bが幅方向に間隔をあけて形成されているとともに、第1ベース基板55の下面には、一対の外部電極62A、62Bが長さ方向に間隔をあけて形成されている。
【0080】
これら電極パッド61A、61B及び外部電極62A、62Bは、例えば蒸着やスパッタ等で形成された単一金属による単層膜、または異なる金属が積層された積層膜であり、互いにそれぞれ導通している。
【0081】
第1ベース基板55には、一方の外部電極62Aに導通し、第1ベース基板55を厚さ方向に貫通する一方の第1貫通電極63Aが形成されている。また、第2ベース基板56には、一方の電極パッド61Aに導通し、第2ベース基板56を厚さ方向に貫通する一方の第2貫通電極64Aが形成されている。そして、第1ベース基板55と第2ベース基板56との間には、一方の第1貫通電極63Aと一方の第2貫通電極64Aとを接続する一方の接続電極65Aが形成されている。これにより、一方の電極パッド61Aと一方の外部電極62Aとは、互いに導通している。
【0082】
また、第1ベース基板55には、他方の外部電極62Bに導通し、第1ベース基板55を厚さ方向に貫通する他方の第1貫通電極63Bが形成されている。さらに、第2ベース基板56には、他方の電極パッド61Bに導通し、第2ベース基板56を厚さ方向に貫通する他方の第2貫通電極64Bが形成されている。そして、第1ベース基板55と第2ベース基板56との間には、他方の第1貫通電極63Bと他方の第2貫通電極64Bとを接続する他方の接続電極65Bが形成されている。これにより、他方の電極パッド61Bと他方の外部電極62Bとは、互いに導通している。
なお、他方の接続電極65Bは、後述する凹部66を回避するように、例えばシールリング57の下方をシールリング57に沿って延在するようにパターニングされている。
【0083】
第2ベース基板56の実装面56aには、各振動腕部3a、3bの先端部に対向する部分に、落下等による衝撃の影響によってこれら各振動腕部3a、3bが厚さ方向に変位(撓み変形)した際に、各振動腕部3a、3bとの接触を回避する凹部66が形成されている。この凹部66は、第2ベース基板56を貫通する貫通孔とされているとともに、シールリング57の内側において四隅が丸みを帯びた平面視正方形状に形成されている。
【0084】
圧電振動片1は、図示しない金属バンプや導電性接着剤等を介し、電極パッド61A、61Bにマウント電極12、13(
図1参照)がそれぞれ接触するようにマウントされている。これにより、圧電振動片1は、第2ベース基板56の実装面56a上から浮いた状態で支持されるとともに、一対の電極パッド61A、61Bにそれぞれ電気的に接続された状態とされる。
【0085】
このように構成された圧電振動子50を作動させる場合には、外部電極62A、62Bに対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片1の励振電極10、11に電流を流すことができ、一対の振動腕部3a、3bを所定の周波数で振動させることができる。そして、この振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として圧電振動子50を利用することができる。
【0086】
本実施形態の圧電振動子50によれば、安定した振動特性を有する高品質で小型化可能な圧電振動片1を備えているので、作動の信頼性に優れた高品質な圧電振動子50とすることができる。また、簡素な形状の圧電振動片1を備えているので、製造コストの低い圧電振動子50とすることができる。
【0087】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこれら実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
上記した圧電振動片1、1B、1Cは、それぞれの基部4、4B、4Cの第2方向の端面25に、第2方向の幅を狭くする括れ(ノッチ)が設けられても良い。括れを設けることにより、仮想外側部21が除かれることによる振動漏れの抑制作用に加え、さらに振動漏れの抑制作用を高めることができる。
【0088】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。