(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[1.第1の実施形態]
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、特に(3)〜(5)の点について重点的に説明する。
(1)概略構成
(2)制御手段C
(3)針棒1を上下に揺動させる針棒上下揺動部A
(4)針棒1を左右に振幅させる針棒左右振幅部
(5)針棒1の上下動の位相を補正する針棒位相補正部
(1)〜(5)以外のミシンの詳細な構成についての説明は省略するが、本発明の実施形態は、ジグザグ縫いミシンなどの現在又は将来において利用可能なあらゆるミシンに適用することができる。
【0022】
[1−1.構成]
(1)概略構成
図1は、本実施形態のミシンの内部構造を示す線図である。
図1において、布送り方向をY方向、布送り方向に直交する方向をX方向、垂直方向をZ方向とする。
図1に示す様に、ミシンは、針棒1と釜2を有する。針棒1は、上糸を針穴1aに通す針1bを支持する部材である。針1bには、糸供給源から上糸が、不図示の天秤を介して供給される。天秤は、針1bに供給される上糸の供給量を変化させる。釜2は、下糸が巻かれたボビンを収納する不図示の内釜と、上糸を捕捉する外釜2aを有する。外釜2aは、剣先2bで上糸を捕捉する。不図示の第1のモータ5による駆動力は、上軸3を回転運動させ、針棒1や図示しない天秤に伝達される。また、上軸3の回転運動は、歯付きプーリ3a、歯付きプーリ4a及び歯付きベルト6により下軸4にも伝達され、釜2や図示しない布送り機構に伝達される。
【0023】
(2)制御手段C
図2は、本実施形態のミシンの制御手段Cの構成を示す図である。本実施形のミシンでは、ユーザが指定したジグザグ縫いの大きさに応じた縫い目を形成するために制御手段Cを備える。制御手段Cは、振幅幅決定部C1とモータ制御部C2とを備える。この制御手段Cには、振幅入力部I1と縫製指示入力部I2とが接続される。
【0024】
振幅入力部I1は、ユーザが希望する振幅の大きさを受け付ける。振幅入力部I1は、受け付けた振幅の大きさに応じた信号を出力する。振幅入力部I1は、タッチパネルや機械式ダイヤルや調整つまみ等の入力インターフェースである。
【0025】
縫製指示入力部I2は、ユーザからの縫製指示を受け付ける。縫製指示入力部I2は、受け付けた縫製指示に従い信号を出力する。縫製指示入力部I2は、フットコントローラーやミシンに設けられるスイッチなどの入力インターフェースである。
【0026】
振幅幅決定部C1は、ユーザの希望に応じた針棒1の振幅量を決定する。振幅幅決定部C1は、振幅入力部I1からの信号を受け付ける。そして信号に応じた振幅量を決定する。決定した振幅量はモータ制御部C2に伝達される。
【0027】
モータ制御部C2は、第1のモータ5及び第2のモータ5aに対する駆動指示を出力する。駆動指示は、縫製指示入力部I2からの信号や振幅幅決定部C1からの振幅量に応じて出力される。
【0028】
図3は第2のモータ5aのモータ軸クランクの接続部の移動位置を示す図である。第2のモータ5aは、出力点P2に対して駆動力を伝達し、その位置を移動させる。第2のモータ5aでは、振幅幅決定部C1からの振幅量に応じて出力点P2を移動させる位置を変更する。
【0029】
(3)針棒上下揺動部A
針棒上下揺動部Aは、第1のモータ5、上軸3、針棒クランク7、針棒クランクロッド8、補助ロッド13、針棒抱き9、針棒1から構成される。上軸3と針棒1は、針棒クランク7、針棒クランクロッド8、補助ロッド13及び針棒抱き9を介して連結される。上軸3からの駆動力は針棒1に伝達される。
【0030】
上軸3は、ミシン内部に固定された不図示の軸受けにより、回動自在に支持されている。上軸3は、布送り方向とは直交する方向(
図1中X方向)の回転軸を有する。上軸3には、第1のモータ5からの駆動力が伝達され、回転軸を中心に回転する。上軸3の先端部には、針棒クランク7が設けられる。
【0031】
針棒クランク7は、上軸3の一端を略直角方向に折り曲げたものである。針棒クランク7は、上軸3と同期して回転する。針棒クランク7の先端部には、針棒クランクロッド8との接続部7aが設けられる。接続部7aは、針棒クランク7の先端部を略直角方向に折り曲げたものである。接続部7aは、布送り方向とは直交する方向(
図1中X方向)に延びる軸である。この接続部7aを介して針棒クランク7と針棒クランクロッド8の上端とが接続される。針棒クランクロッド8は、接続部7aを中心に回動自在に接続される。また、針棒クランクロッド8は、接続部7aに沿って布送り方向とは直交する方向(
図1中X軸方向)にスライド可能に接続される。
【0032】
針棒クランクロッド8は、上下方向を逆さにした略T文字形状である。針棒クランクロッド8は、垂直部8aと水平部8bとから構成される。
【0033】
垂直部8aは、垂直方向(
図1中Z方向)に延びる軸状の部材である。垂直部8aの上端には、針棒クランクロッド8が接続される。また、垂直部8aの下端には水平部8bが位置する。
【0034】
水平部8bは、棒状の部材である。水平部8bは、上軸3と平行、つまり布送り方向に対して直交する方向(
図1中X方向)に延びる。水平部8bの一方の端部は案内体12の垂直軸12aと接続する。水平部8bは、この垂直軸12aに沿って、垂直方向にスライド可能である。また、水平部8bは垂直軸12aを中心に回動自在に接続される。
【0035】
後述するように、垂直軸12aは案内軸11を中心に回転移動する。この際、垂直軸12aに合わせて水平部8bも移動する。垂直軸12aの移動による水平部8bの移動方向は、布送り方向である。また、移動前の水平部8bと移動後の水平部8bとは平行になる。水平部8bの向きは、上記構成により水平部8bの位置が変化しても、布送り方向とは直交する方向(
図1中X軸方向)に保たれる。
【0036】
水平部8bの他方の端部は補助ロッド13と接続する。補助ロッド13は、棒状の部材である。補助ロッド13の一端は水平部8bに沿ってスライド可能に接続される。また、補助ロッド13は、水平部8bを中心に回動自在に接続される。この構成により、補助ロッド13は、水平部8bの位置の水平方向の位置の変化に応じて、傾きを変化させる。一方、水平部8bが垂直方向に平行移動する際には、Y視した場合、すなわち布送り方向(
図1中Y軸方向)から見た場合の傾きが一定になるように支持される。
図1において、水平部8bは、補助ロッド13が鉛直方向に傾く位置に配置される。この状態で、水平部8bが垂直軸12aに沿って垂直方向に往復する。この場合には、補助ロッド13は、鉛直方向に傾いたまま、その傾きを保持しつつ、垂直方向に往復運動する。そのため、補助ロッド13の上下方向の動力を、針棒抱き9を介して伝達されている針棒1は、水平部8bの垂直方向の往復運動に合わせて、垂直方向に往復運動する。
【0037】
以上のように、第1のモータ5、上軸3、針棒クランク7、針棒クランクロッド8、補助ロッド13、及び針棒1は、針棒上下揺動部Aを構成する。第1のモータ5により発生した駆動力は、上軸3、針棒クランク7、針棒クランクロッド8、及び補助ロッド13を介して、針棒1を垂直方向に揺動させる。針棒上下揺動部Aのうち上軸3、針棒クランク7、及び針棒クランクロッド8は、スライダクランク機構と言い換えることもできる。
【0038】
図4は、針棒1が中基線に位置する場合の上軸3、針棒クランク7、針棒クランクロッド8の位置関係を示した図である。
図4の上下方向が
図1の垂直方向(Z軸方向)に方向に相当する。
図4の左右方向が
図1の布送り方向(Y軸方向)に相当する。
図4に示すように、上軸3は入力軸I、針棒クランク7は節a、針棒クランクロッド8は節b、針棒クランク7の接続部7aは間接c、針棒クランクロッド8の水平部8bは出力点P1、また垂直軸12aは出力軸OAとみなすこともできる。
図4においては、
図1においてX視した場合に、出力軸OAが上軸3と同一平面上に位置する、すなわち交差している。この位置にある出力軸OAを出力軸OA
1とし、水平部8bが出力軸OA
1上を往復運動する。
【0039】
一方、スライダクランク機構は出力軸OAを出力軸OA
1から平行移動させることで、偏りスライダクランク機構となる。
図5は、針棒1が右基線に位置する場合の上軸3、針棒クランク7、針棒クランクロッド8の位置関係を示した図である。
図5に示すような偏りスライダクランク機構では、
図1においてX視した場合に出力軸OAが上軸3と同一平面上に位置しない、すなわち交差しない。この位置にある出力軸OAを出力軸OA
2とし、水平部8bが、出力軸OA
2上を往復運動する。
【0040】
(4)針棒左右振幅部
針棒左右振幅部は、第2のモータ5a、振幅ロッド5b、針棒支持体5c、及び針棒1とから構成される。第2のモータ5aと針棒1は、振幅ロッド5b、及び針棒支持体5cを介して連結している。それらを介して第2のモータ5aの駆動力は、針棒1に伝達される。
【0041】
第2のモータ5aは、制御手段Cの指示により駆動し回転軸51aを回転させる。第2のモータ5aは、回転軸51aを時計まわり方向に回転させる正回転動作と、回転軸51aを反時計まわり方向に回転させる反回転動作との切り替えが可能である。
【0042】
第2のモータ5aの回転軸51aは、布送り方向(
図1中Y軸方向)に延びる軸である。回転軸51aの先端部にはモータ軸クランク51bが設けられる。モータ軸クランク51bは、回転軸51aの一端を略直角方向に折り曲げたものである。モータ軸クランク51bは、回転軸51aと同期して回転する。モータ軸クランク51bには、振幅ロッド5bとの接続部51cが設けられる。接続部51cは、モータ軸クランク51bの先端部を略直角方向に折り曲げたものである。接続部51cは、り、布送り方向(
図1中Y軸方向)に延びる軸である。第2のモータ5aは、接続部51cを出力点P2として駆動力を伝達させて、出力点P2を移動させる。
【0043】
図3は、モータ軸クランク51bの先端部の接続部51c、すなわち出力点P2の軌跡を示した図である。接続部51cは、布送り方向(
図1中Y軸方向)から見た場合に、Z−X平面上において回転軸51aを中心とした円周上を移動する。接続部51cは、円周上に設けられる左基線ポイントP2
left、中基線ポイントP2
center、右基線ポイントP2
right間を移動する。左基線ポイントP2
leftとは、針1bが左基線となる接続部51cの位置である。中基線ポイントP2
centerとは、針1bが中基線となる接続部51cの位置である。右基線ポイントP2
rightとは、針1bが右基線となる接続部51cの位置である。
【0044】
このように移動する接続部51cを介して、モータ軸クランク51bと振幅ロッド5bとは接続する。振幅ロッド5bは、接続部51に沿って、布送り方向(図中Y軸方向)にスライド可能に接続される。また、振幅ロッド5bは接続部を中心に回動自在に接続される。したがって、接続部51cが回転運動することにより布送り方向とは直交する方向(
図1中X軸方向)において距離L動いた場合には、振幅ロッド5bも布送り方向とは直交する方向(
図1中X軸方向)に距離L移動する。
【0045】
また、振幅ロッド5bの中央部には、垂直方向(
図1中Z方向)に延びる腕52aが設けられる。腕52aは、後述する案内体12の案内体腕12bと接続する。案内体腕12bは、案内軸11を中心に回転移動する。
【0046】
振幅ロッド5bは、針棒支持体抱き53aを介して針棒支持体5cと接続する。針棒支持体5cは、針棒支持体抱き53a、針棒支持軸53b、下腕53c、上腕53dとから構成される。針棒支持軸53bは、垂直方向に延びる棒状の部材である。針棒支持軸53bは、上端部をミシンの本体に固定された軸10と接続する。この軸10は、布送り方向(
図1中Y軸方向)に延びる軸である。針棒支持軸53bは、軸10を中心に自在に回動する。針棒支持軸53bの下端は、略直角方向に折れ曲がっており、下腕53cとなる。下腕53cは、布送り方向とは直交する方向(
図1中X方向)に延びる部材である。下腕53cの先端部には、針棒1との接続部が設けられる。また、針棒支持軸53bの中央部には上腕53dが設けられる。上腕53dは、布送り方向とは直交する方向(
図1中X方向)に延びる部材である。上腕53dの先端部には、針棒1との接続部が設けられる。下腕53cと上腕53dは、針棒1を垂直方向にスライド可能に支持する。
【0047】
以上のように第2のモータ5a、振幅ロッド5b、針棒支持体5c、針棒1は、針棒左右振幅部を構成する。第2のモータ5aにより発生した駆動力は、振幅ロッド5b及び針棒支持体5cを介して、針棒1を布送り方向とは直交する方向(
図1中X方向)に搖動させる。
【0048】
(5)針棒位相補正部
針棒位相補正部は、第2のモータ5a、振幅ロッド5b、案内体12、針棒クランクロッド8から構成される。第2のモータ5aと針棒クランクロッド8は、振幅ロッド5b及び案内体12を介して連結される。第2モータ5aで発生した駆動力により、針棒クランクロッド8の水平部8aの出力軸OAである垂直軸12aを移動させる。
【0049】
振幅ロッド5bは、案内体12と接続される。案内体12は、ミシン本体に固定された案内軸11を中心に回動する部材である。案内体12は、垂直軸12a、案内体腕12b、上腕12c、下腕12dから構成される。
【0050】
垂直軸12aは、案内軸11に沿って垂直方向(
図1中Z軸方向)に延びる軸である。垂直軸12aは、針棒クランクロッド8の水平部8bと接続する。垂直軸12aは、垂直軸12aに対してスライドする針棒クランクロッド8の水平部8bの動きを規制する部材である。垂直軸12aは、上腕12c及び下腕12dを介して接続される。案内軸11は、ミシン本体に固定され垂直方向(
図1中Z軸方向)に延びる棒状の部材である。上腕12c及び下腕12dは、案内軸11を中心に回動自在に接続する。
【0051】
案内体腕12bは、水平方向に延びる棒状の部材である。案内体腕12bの一方の端部は腕52aと接続される。腕52aは、振幅ロッド5bの垂直方向に延びる軸である。案内体腕12bは、腕52aを中心に回動自在に接続される。
【0052】
また、案内体腕12bの他方の端部は、上腕12cと接続される。上腕12cと案内体腕12bは角度を固定し接続される。案内体腕12bは、腕12cと接続する部分で、案内軸11と接続する。案内体腕12bは、案内軸11を中心に回動自在に接続する。
【0053】
この案内体12に振幅ロッド5bを介して、第2のモータ5aの駆動力が伝達される。案内体12はこの駆動力により案内軸11を中心に回転する。すなわち、振幅ロッド5bが布送り方向とは直交する方向(
図1中X軸方向)の距離L移動した場合は、案内体12はその距離L分だけ回転運動を行う。
【0054】
案内体腕12bが案内軸11を中心に回転移動すると、それに伴って、上腕12c、垂直軸12a、下腕12dも同期して移動する。つまり、案内体腕12bと腕12cは、角度を固定し接続されている。そのため、上腕12cは案内体腕12bと同期して案内軸11を中心に回転する。また、上腕12cと垂直軸12aも角度を固定して接続されている。そのため、上腕12cと同期して、垂直軸12aも案内軸11を中心に動く。
【0055】
図1中X視した場合、垂直軸12aは、垂直方向に延びたまま平行移動する。すなわち、移動しても垂直軸12aの傾きは一定である。垂直軸12aが移動すると、それに伴い、水平部8bの出力軸OAが移動する。
【0056】
以上のように第2のモータ5a、振幅ロッド5b、案内体12、針棒クランクロッド8は、針棒位相補正部を構成する。第2のモータ5aにより発生した駆動力は、振幅ロッド5b、及び案内体12を介して、水平部8bの出力軸OAを平行移動させる。
【0057】
[1−2.作用]
以上のような構成を要するミシンの各部の動作について説明する。
【0058】
(1)第2のモータ5a駆動時の各部の動作
図6は、接続部51cを右基線ポイントP2
rightに位置させた場合のミシンの構成を示す図である。
図6において、接続部51cは
図1の位置から反時計周り方向(矢印R1)に移動している。接続部51cの移動に伴い、振幅ロッド5bが布送り方向とは直交する方向図(矢印R2)に移動する。振幅ロッド5bが移動することにより、針棒支持体5cも、布送り方向とは直交する方向(図中X方向)で、布送り方向に対して右方向(矢印R3)に移動する。これにより、針棒1も、布送り方向に対して右方向(矢印R3)に移動する。
【0059】
また、振幅ロッド5bと連結する案内体12は、振幅ロッド5bが移動することにより、案内軸11を中心に回転運動する。すなわち、案内体12の案内体腕12bが、案内軸11を中心に時計回り方向(矢印R4)に回転移動する。これに伴い、案内体腕12bと同期して動く垂直軸12aは、案内軸11を中心に時計回り方向(矢印R5)に回転移動する。これにより、垂直軸12aは、X視した場合に、布送り方向の上流側に平行移動する。
【0060】
図7は、接続部51cを左基線ポイントP2
leftに位置させた場合のミシンの構成を示す図である。
図7において、接続部51cは
図1の位置から時計周り方向(矢印L1)に移動している。接続部51cの移動に伴い、振幅ロッド5bが布送り方向とは直交する方向図(矢印L2)に移動する。振幅ロッド5bが移動することにより、針棒支持体5cも、布送り方向とは直交する方向(図中X方向)で、布送り方向に対して左方向(矢印L3)に移動する。これにより、針棒1も、布送り方向に対して左方向(矢印L3)に移動する。
【0061】
また、振幅ロッド5bと連結する案内体12は、振幅ロッド5bが移動することにより、案内軸11を中心に反時計回りに回転運動する。すなわち、案内体12の案内体腕12bが、案内軸11を中心に反時計回り方向(矢印L4)に回転移動する。これに伴い、案内体腕12bと同期して動く垂直軸12aは、案内軸11を中心に反時計回り方向(矢印L5)に回転移動する。これにより、垂直軸12aは、X視した場合に、布送り方向の下流側に平行移動する。
【0062】
(2)出力軸OAの移動
以下では、接続部51cが中基線ポイントP2
centerに位置する場合の出力軸OA
1と、接続部51cが右基線ポイントP2
rightに位置する場合の出力軸OA
2との違いについて説明する。
【0063】
(2−1)中基線における出力軸OA
1
前述したように、
図4の入力軸Iは上軸3、節aは針棒クランク7、節bは針棒クランクロッド8である。また、間接cは接続部7aであり、出力点P1は水平部8bである。この場合、モータ軸クランクの接続部51cである出力点P2は、中基線ポイントP2
centerに位置する。
【0064】
図4において、入力軸Iは1点に位置を固定して回転する。入力軸Iの回転角度をε[゜]とする。節aの一端には、間接cが設けられる。節aは、入力軸Iと同期して回転する。間接cは、入力軸Iを中心とし、半径を節aとする円Oの円周上を移動する。円Oにおいて、間接cが垂直方向(Z軸方向)において最も高い位置となる場合の入力軸Iの回転角度を基準角(ε=0゜)とする。
【0065】
入力軸Iの回転による駆動力は、節a及び節bを介して出力点P1に伝達される。出力点P1となる針棒クランクロッド8の水平部8bは、垂直軸12aにより垂直方向(Z軸方向)に動きが規制される。つまり、垂直軸12aにより、出力点P1は、入力軸Iと円Oの最下点(ε=180゜)との延長線上を往復運動する。出力点P1が往復運動する軸を出力軸OA
1とする。
【0066】
入力軸Iの回転角度が0[゜]の場合には、間接cは最上位点に位置する。この際、出力点P1も出力軸OA
1の最上位点に位置する。また、入力軸Iの回転角度が180[゜]の場合には、間接cは最下位点に位置する。この際、出力点P1も出力軸OA
1の最下位点に位置する。
【0067】
また、
図4上出力軸OA
1と針棒1とは重なって配置される。出力点P1である針棒クランクロッド8の水平部8bと針棒1の針棒抱き9とは、補助ロッド13により連結されている。このため、水平部8bと針棒抱き9とは同期して動く。つまり、出力点P1が出力軸OA
1の最上位点にある場合(ε=0゜)には、針棒抱き9もその動作軸における最上位点に位置する。一方、出力点P1が出力軸OA
1の最下位点にある場合(ε=180゜)には、針棒抱き9もその動作軸における最下位点に位置する。
図8では、入力軸の回転角度ε=180[゜]付近における針1bの軌跡(針変位量)を示す。
図8に示す様に、入力軸の回転角度ε=180゜において、針1bは最下位点に位置する。
【0068】
(2−2)右基線における針棒クランクロッドの出力軸OA
2
図5は、
図3において接続部51cが右基線ポイントP2
rightに位置する場合にX視した、上軸3(入力軸I)、針棒クランク7(節a)、及び針棒クランクロッド8(節b)の位置関係を示した図である。
図5では、出力軸OAが、出力軸OA
1の位置から布送り方向(Y軸方向)において距離d移動している。
図5における出力点を出力点P1dとする。出力点P1dが往復運動する軸を出力軸OA
2とする。
【0069】
図5においても、入力軸Iは1点に位置を固定して回転する。入力軸Iの回転による駆動力は、節a及び節bを介して出力点P1dに伝達される。出力点P1dとなる針棒クランクロッド8の水平部8bは、垂直軸12aにより垂直方向(Z軸方向)に動きが規制される。垂直軸12aの位置が、中基線の場合の位置からY軸と平行に距離d移動している。そのため、出力軸OA
2の位置も、出力軸OA
1に対して距離d平行移動する。
【0070】
出力点P1dは、出力軸OA
2上を往復運動する。出力軸OA
2の位置は、入力軸Iと円Oの最下点(ε=180゜)との延長線上よりズレている。このため、
図4の中基線の場合と異なり入力軸の回転角度ε=0゜の場合でも、出力点P1dは出力軸OA
2の最上位点に位置しない。出力点P1dが出力軸OA
2における最上位点に位置する場合は、Y−Z平面において節aと節bとが重なる場合である。その際の入力軸の回転角度をε
h[゜]とする。同様に、入力軸の回転角度ε=180゜の場合でも、出力点P1dは出力軸OA
2の最下位点に位置しない。出力点P1dが出力軸OA
2における最下位点に位置する場合は、Y−Z平面において節aと節bとが重ならず一直線になる場合であり、その際の入力軸の回転角度をε
l[゜]とする。
【0071】
また、
図5上、出力軸OA
2と針棒1とは、距離d離れて配置される。すなわち、Y−Z平面上において、針棒1は入力軸Iと円Oの最下点(ε=180゜)との延長線上に位置する。これに対して、出力軸OA
2は針棒1から平行に距離d移動している。この場合にでも、補助ロッド13により、水平部8bと針棒抱き9とは同期して動く。言い換えると水平部8bと針棒抱き9との垂直方向の移動量は等しくなる。つまり、出力点P1dが出力軸OA
2の最上位点にある場合(ε=ε
h゜)には、針棒1もその動作軸における最上位点に位置する。また、出力点P1dが出力軸OA
2の最下位点にある場合(入力軸の回転角度ε=ε
l゜)には、針棒1もその動作軸における最下位点に位置する。
【0072】
図9は、入力軸の回転角度ε=180゜付近における針1bの軌跡を示す図である。
図9に示す様に、中基線の場合と比較して針1bの最下位点の高さはほぼ変わらず、最下位点となるタイミングが早くなる。つまり、入力軸の回転角度εを0゜から徐々に増やすと、それに伴い針1bは徐々に下がる。そして、入力軸の回転角度ε=ε
l゜<180゜において針1bは最下位点に位置する。
【0073】
また、入力軸の回転角度ε
l゜における針1bの最下位点の高さは、補助ロッド13により中基線における針1bの最下位点の高さとほぼ等しくなる。
【0074】
(2−3.補助ロッドによる高さ補正)
針1bの運動軌跡は、出力点P1dの軌跡とほぼ連動しており、この出力点P1dの運動軌跡の最下位は、出力点P1の運動軌跡における最下位点より高い位置にある。そのため、右基線における針1bの最下位点は、中基線における針1bの最下位点より高くなるはずであるが、補助ロッド13が針1bの位置を補正することで、右基線の針1bの最下位点の高さは、中基線における針1bの最下位点の高さとほぼ等しくなる。以下では、補助ロッド7による針1bの高さ補正について説明する。
【0075】
図10は、出力軸OA
1と出力軸OA
2における出力点のストローク範囲を示す図である。
図10では、入力軸Iに対して交差する出力軸OA
1における出力点P1(水平部8b)の上下移動のストロークS1を太点線の矢印で示し、入力軸Iに対して交差しない出力軸OA
2における出力点P1(水平部8b)の上下移動のストロークS2を太実線の矢印で示す。
図10に示すように出力軸OAを変化させた場合、出力点P1(水平部8b)の最上位位置および最下位位置は、それぞれ節bを半径とする円弧上に位置し、S2はS1に対しその矢高分(=Δh1)上方にシフトする。
【0076】
一方、
図11は、出力軸OA
1と出力軸OA
2の場合の補助ロッド13の傾きと針棒抱き9のストローク範囲を示す図である。
図11では説明のために、出力点P1(水平部8b)の位置は出力軸OAが変化しても同じ高さにあると仮定している。
図11では、入力軸Iに対して交差する出力軸OA
1における針棒抱き9の上下移動のストロークS3を太点線の矢印で示し、入力軸Iに対して交差しない出力軸OA
2における針棒抱き9の上下移動のストロークS2を太実線の矢印で示す。本実施形態では
図1上X視した場合、針棒1は出力軸OAと同軸上に配置されている。したがって、出力軸OAがOA
1にある場合、出力軸OAと針棒1bが同軸上に位置する。そのため、補助ロッド13も同軸上に位置し出力点P1の上下運動を針棒1bに伝達する。一方、出力軸OAをOA
2に移動させた場合、出力軸OAと針棒1bの相対位置が変化する。そして、補助ロッド13がその傾きを変えることで、位置変化に対応する。これにより、
図11に示すように出力軸OAを変化させ、補助ロッド13がθ°傾いた場合、ストロークS4はストロークS3に対し補助ロッド13の傾き分(Δh2=補助ロッド13の長さ×(1−sinθ))下方にシフトする。
【0077】
本実施形態では、
図10で示したスロトークS2の上方シフトと、
図11で示したストロークの下方シフトS4が同時に作用する。つまり、補助ロッド13は出力軸OAの変更に伴い傾きを変えることで出力軸OAを変更することによって生じるストロークS2の上方シフトを補正する作用が得られる。この作用により、左の基線と中基線の場合の針1bの最下位点の高さが、ほぼ等しくなる。
【0078】
以上のように出力軸OAの位置を移動させることにより、針棒1の軌跡を変更させることができる。すなわち、
図4の中基線の位置から、
図5の右基線の位置に変更することで、右基線の針棒位相を中基線の針棒位相と比較して早める補正を行っている。一方、左基線の場合には、中基線の針棒位相と比較して遅くする補正を行っている。
【0079】
(3)縫い目の形成
本実施形態のミシンでは、針1bの針穴1aに上糸を通し、下糸が巻かれたボビンが内釜に収納された状態で、上軸3が駆動されることにより、縫い目が形成される。具体的には、第1のモータ5により上軸3が駆動されると、上軸3の回転運動をスライダクランク機構が往復運動に変換する。これにより、針棒1が上下動される。また、上軸3の回転は、上軸プーリ3a、歯付ベルト6、下軸プーリ4aを介して下軸4に伝えられる。上軸3の回転により下軸4が回転されると、釜2が回転される。
【0080】
このような動作において、針1bが布を貫通し針最下位点まで移動する。その後、針1bはある程度上昇するが、上糸は布との摩擦により布の上面に抜けることができないため、布の下面において糸輪が形成される。この糸輪内を外釜2aの剣先2bが通過することで、糸輪を下糸が巻かれたボビンがくぐり、上糸と下糸が絡み合うことで縫い目が形成される。この時の針1bと釜2の剣先2bが交差し剣先2bが糸輪を捕捉する際の位相を針釜交差位相とする。
図12では、ミシンにおいて、針先軌跡と釜2の剣先軌跡と、針釜交差位相との相関を示す。
図12の横軸は上軸3および下軸4の位相を示し、縦軸は針1bの先端および外釜2aの剣先2bの軌跡を擬似的に表したものである。
図12では、針釜交差位相は205[゜]付近であり、針釜交差位相における針1bが下死点から上昇する量を、針変位量δとして示す。
【0081】
(3−1)糸輪の形成
図13は、各針変位量δにおける糸輪の形状を示す図である。糸輪の大きさは、針1bが最下点から上昇する量に依存する。δ1は、針1bの過小変位量を示している。δ1のように針1bの変位量が小さすぎると糸輪を形成することができない、または形成できたとしても糸輪が小さく剣先2bが糸輪に入りこむことができない状態となる。一方、δ4は、針1bの過大変位量を示している。δ4のように針1bの変位量が大きすぎると糸輪が大きくなりすぎ、糸の自重やひねりにより潰れてしまい、剣先2bが糸輪に入り込むことができない。このように、針変位量が小さすぎたり大きすぎたりすると、縫い目を形成することができない。
【0082】
従って、正常な縫い目を形成するためには、針変位量を糸輪が形成でき、外釜2aの剣先2bが糸輪の内側に入り込むことができる量とすることが必要となる。
図13では、必要最小変位量をδ2とし、許容最大変位量をδ3として示す。正常な縫い目を形成するには、針変位量をδ2以上δ3以下とする必要がある。
【0083】
(3−2)従来のミシンにおけるジグザグ縫い時における針1bの軌跡
針棒振幅機構が、第2のモータ5aの駆動力で針棒1を布送り方向に対して交差するように揺動させることにより、ジグザグの縫い目が形成される。従来のミシンにおいて、ジグザグ縫いを行った場合の、針1bと外釜2aの剣先2bの相対動作の変化を
図14に示す。
図14の横軸は上軸3および下軸4の位相を示し、縦軸は針1bの先端および外釜2aの剣先2bの軌跡を擬似的に表したものである。なお、剣先2bの軌跡は、実際の軌跡とは多少異なるが、説明の便宜上連続した線で図示されている。
図14の例では、釜2は反時計回りに回転するものとする。
【0084】
図14において、実線で書かれた針1bの軌跡は、針棒左右振幅部が動作しておらず、針1bが中央である中基線にある状態を示している。また、太線で書かれた軌跡は、針棒左右振幅部により、針1bが左右に揺動している状態を示している。図中の針釜交差位相では、針1bと剣先2bは最も近接した状態にある。この針釜交差位相において、上糸の糸輪内に剣先2bが入り込む。
【0085】
上述の通り、縫い目を形成するためには、針変位量を必要最小変位量δ2以上、許容最大変位量δ3以下に設定する必要がある。しかし、ジグザグ縫い時には、釜2の位置は一定であるが、針1bが中基線にある状態から左右に揺動するため、針1bと釜2の相対的な位置関係が変化する。この位置関係の変化は、針変位量にも影響を与える。
【0086】
例えば、従来のミシンにおいて針1bを右に移動させた場合の針変位量をδR1とすると、中基線にある状態の針変位量δよりも小さくなる。また、針1bを左に移動させた場合の針変位量をδL1とすると、中基線にある状態の針変位量δよりも大きくなる。すなわち、中基線にある状態の針変位量δを適切な値に設定していたとしても、針1bが左右に揺動することにより、δR1が最小必要変位量δ2未満となる、またはδL1が許容最大変位量δ3を超え、正常な糸輪を形成することができなくなる場合がある。
【0087】
このような針1bの位置変化による針変位量の変化は、針1bを左右に揺動させる振幅量Zに比例して増大する。従って、従来のミシンにおいては、針変位量がδ2<δR1<δ<δL1<δ3の関係を満たさなければ縫い目を形成できないことから、振幅量Zの最大値が自ずと決定されてしまい、たとえそれ以上の大きな振幅を必要とする模様を縫いたいというニーズがあったとしても技術的に困難であった。
【0088】
(3−3)本実施形態ミシンの動作
以下では、ミシン全体がどのように動くのかの説明を行う。
【0089】
本実施形態のミシンでジグザグ縫いを行う場合には、第2のモータ5aの駆動力により接続部51cの位置を変更させて、針棒1を左右に振幅させる。また、接続部51cの位置が変化すると、それに伴い針1bの基線と、出力軸OAの位置が変化する。
【0090】
本実施形態のミシンにおいてもジグザグ縫いを行うと前述の通り針1bの基線に応じて針変位量が変化する。一方で、針変位量は出力軸OAの位置に応じても変化する。本実施形態のミシンの針変位量は、基線に応じた針変位量と出力軸OAの位置に応じた針変位量とを合成した針変位量となる。
【0091】
(a)出力軸OAの位置に応じた針変位量
図15は、出力軸OAの位置の変化に応じた針変位量に着目した場合の接続部51cの位置、出力軸OAの位置、及び針1bと剣先2bの位相を示す。
図15では、説明のために針1bの基線の変化による針変位量は無視している。
【0092】
図15の出力軸OAの位置は、
図1においてX視した場合の針棒1の位置を基準位置0とする。基準位置より布送り方向上流側をプラス、布送り方向下流側をマイナスとする。
【0093】
図15に示すように、接続部51cは第2のモータ5aの駆動タイミングに合わせてP2
leftまたはP2
rightへ移動する。その際、出力軸OAも接続部51に合わせて移動する。接続部51がP2
rightに移動する場合には、出力軸OAは基準位置より布送り方向上流側にd離れた位置に移動する。接続部51がP2
leftに移動する場合には、出力軸OAは基準位置より布送り方向下流側にd(−dとする)離れた位置に移動する。
【0094】
図15の針1bの運動軌跡における実線は、出力軸OAが基準位置0にある場合の針1bの軌跡を示している。この場合、接続部51cは常にP2
ceterに位置している。つまり、
図15の実線では、出力軸の位置を変更していない。そのため、針上下運動を示す運動軌跡は、正弦波のような波形となる。
【0095】
一方、
図15の太線は、出力軸OAの偏り量を0からd、dから−dに変更した場合の針1bの軌跡を示している。すなわち接続部51cを出力軸OAの位置をP2
centerからP2
rightへ、P2
rightからP2
leftへ変化させた場合の針1bの軌跡を示している。出力軸における偏り量をdとすることで、針1bの運動軌跡は、出力軸OAが基準位置にある場合と比較して最下点タイミングが早くなる。このため、針釜交差位相における針変位量をδR2は、針変位量をδR1よりも大きな値となる。一方、出力軸における偏り量を−dとすることで、針1bの運動軌跡は、出力軸OAが基準位置にある場合と比較して最下点タイミングが遅くなる。このため、針釜交差位相における針変位量をδL2は、針変位量をδL1よりも小さい値となる。
【0096】
(b)針1bの基線に応じた針変位量と出力軸OAの位置に応じた針変位量との合成
図16の実線は、出力軸OAが基準位置あり針1bが中基線にある場合の針1bの運動軌跡を示している。
図16の実線の針釜交差位相における針変位量はδである。
図16の破線は、
図14の太線と同様に、出力軸OAの位置の変更をせずに針の基線を左右に変更した場合の針1bの運動軌跡を示している。
図16の破線の針釜交差位相における右基線の場合の針変位量はδR1であり、左基線の場合の針変位量はδL1である。
図16の太線は、針の基線に合わせて出力軸OAの位置を変更した場合の針1bの軌跡を示している。
【0097】
図16の破線の様に中基線の場合と比較して針最下点タイミングが遅くなる。そのため、針変位量δR1は針変位量δより小さくなる。本実施形態では、針1bの基線を右基線とすると共に出力軸OAの位置を変更し針最下点タイミングを早くする補正を行う。出力軸OAの位置を変更による補正量は、針1bの基線の変更による針最下点タイミング変化量と近似する。その結果、
図16の太線に示すように本実施例においては針の位置が右基線にも関わらず、その運動軌跡および針変位量は、針が中基線にある場合に近似する。
【0098】
つまり、右基線における針変位量の大小関係は、δR1<δ≒δR3<δR2となる。その結果例えば、針変位量δR1が最小必要変位量δ2未満となっていた振幅量においても、出力軸OAの位置を変更することで針変位量δR3を最小必要変位量δ2以上とすることができる。
【0099】
同様に、出力軸の位置が基準位置に固定した状態で、針1bの基線を左基線に変更すると、
図16の破線の様に中基線の場合と比較して針最下点タイミングが早くなる。そのため、針変位量δL1は針変位量δより大きくなる。本実施形態では、針1bを左基線とすると共に出力軸OAの位置を変更し針最下点タイミングを遅くする補正を行う。その結果、
図16の太線に示すように本実施例においては針の位置が左基線にも関わらず、その運動軌跡および針変位量は、針が中基線にある場合に近似する。つまり、左基線における針変位量の大小関係は、δL2<δ≒δL3<δL1となる。その結果例えば、針変位量δL1が許容最大変位量δ3を超えていた振幅量においても、出力軸OAの位置を変更することで針変位量を小さくすることができる。
【0100】
[1−3.効果]
本実施形態のミシンでは、以下の様な効果を奏することができる。
【0101】
前述した通り、ある振幅幅においてジグザグ縫いを行った場合、振幅量Zに応じてδR1は小さくなり、δL1は大きくなる。縫い目を形成するためには、針変位量がδ2<δR1<δ<δL1<δ3の関係を満たす必要がある。そのため、振幅量Zの最大値が自ずと決まっていた。一方、本実施形態においては、出力軸OAの位置を変更することで針1bの針変位量の補正を行っている。このため、針変位量がδR1<δ2<δ<δ3<δL1となる振幅量のおいても、針変位量δR1を補正した針変位量δR3をδ2以上とし、針変位量δL1を補正した針変位量δL3をδ3以下とすることができる。
【0102】
これにより、本実施形態のミシンでは、従来技術では縫い目を形成することができなかった振幅量においても、針変位量をδ2<δR3<δ<δL3<δ3とすることができる。これにより、従来より幅広い振幅のジグザグ縫いや模様縫いが可能となり、より多くの縫い模様の選択肢をミシン利用者に対して提供することが可能となった。
【0103】
また、本実施形態では、出力軸OAの位置の変更による針1bの高さを、補助ロッド13により補正する。これにより、針の基線を変更した場合にでも、針1bの最下位点及び最上位点の位置がほぼ変化しない。したがって、針1bが振幅動作によりどのような位置にあっても針と釜の上下の位置関係が変化しない。つまり、中基線において最適に設定されている針変位量と針と釜の上下位置関係を、針の位置が変化したとしても良好に保つことができ、確実な縫い目を形成することが可能となる。
【0104】
さらに、本実施形態のミシンでは、上軸3や針棒クランク7、針棒支持体5cの動作方向等の主要な部品の位置関係や動作方向は同じであるため、従来のミシンに大幅な設計変更をすることなく、上記の効果を得ることが可能となる。
【0105】
[2.他の実施形態]
以上のように本発明の実施形態を説明したが、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。そして、この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0106】
(a)
図1に示す本実施形態は、概要図を用いている。したがって、特に本発明に直接関係のない部分、または一般的な設計事項に関しては一部省略して図示しており、それぞれ詳細な説明は省いている。例えば、第2のモータ5aの接続部51cは回転軸5aを中心に円弧運動を行うが、一方、接続部51cによって駆動される振幅ロッド5bは左右方向(X方向)の直線運動が行なわれるよう図示されている。厳密にいえば、振幅ロッド5bは、接続部51cの円弧運動の矢高方向(Z方向)の駆動力も伝達され上下方向(Z方向)にも駆動される。しかし、例えば、振幅ロッド5bにおける接続部51cとの接続部、図中は丸穴部となっているが、これをZ方向に長手方向を持つ長穴にすることで矢高方向の駆動力を吸収することが可能である。
【0107】
(b)本実施形態では、案内体12は案内軸11に対し、平行関係を保ったまま回転している。しかしながら、設計上の都合で例えば案内軸11と針棒支持体5cのような振り子機構としても良い。先述したように案内体12の、針棒クランク7の回転略平面上における動作が確保できていれば、振り子機構であることに起因する本発明の効果への影響は少なく、ほぼ同様の効果を得ることは可能である。
【0108】
(c)また、本実施形態では、案内体12は上軸3に対してそれぞれの延長した中心軸が交差する位置および交差しない位置へ移動させることで、針棒1の運動軌跡を変更していた。しかしながら、設計上の制約で、例えば支持体12と上軸3の延長した中心軸が、常に交差しない位置関係にあったとしても、その偏り量dを増減させることができる機構であれば、本発明の効果を得ることは可能である。
【0109】
(d)本実施形態では、針棒1を上下方向に搖動させる第1のモータ5と、針棒1を左右に振幅させる第2のモータ5aとの2つのモータを用いて、ジグザグの縫い目を形成したが、駆動用モータの数は、2つに限られない。例えば、モータの数を1つ、第1のモータ5のみとし、そのモータの駆動力を、針棒上下揺動部に伝達すると共に針棒左右振幅部とにも伝達させ、円盤カム等を介すことで針棒左右振幅部に対し一定の動作パターンを与えることも可能である。これにより、1つのモータで本実施形態と同様の効果を得ることができる。この場合の利点としては、モータが1つであるため、モータ同士の同期を取る必要が無いため、モータの制御を簡単にすることができる。
【0110】
(e)本実施形態では、振幅ロッド5bの動作を利用して案内体12を動作させているが、他の方法を用いることもできる。例えば、モータ5aのモータ軸に対してリンクや歯車、カム、プーリなどの機械要素を2個設け、それぞれを針棒支持体5cと支持体12の駆動に用いても同様の効果を得ることができる。
【0111】
(f)本実施形態では、釜2aが水平方向に回転する水平釜用いて説明を行ったが、特段水平釜である必要は無く、例えば釜が垂直方向に回転する垂直釜においても同様の効果を得ることができる。