(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載のポリオレフィン系樹脂製デスクマットは、柔軟性はあるものの、耐汚染性に関してはまだ不十分なものであり、たとえば油性マーキングペンなどによる汚れ等の付着を十分に防止することはできなかった。
【0008】
また、上記特許文献2に記載の、硬さが65〜95である熱可塑性ポリウレタンエラストマー層を有するデスクマットでは、複写紙の印字インクが付着することを防止できるものの、耐汚染性を高めるために表面を硬くしている結果、マット全体としての柔軟性が不足し、マットの保管や輸送時には、マットを丸めて保管や輸送することが難しいという問題があった。すなわち、従来、耐汚染性と柔軟性とを両立することは困難であった。また、特許文献2に記載のデスクマットは、印字インクの付着を防止できる程度の耐汚染性(耐転写性)を有するものの、油性マーキングペンなどによる汚れ等の付着を防止するという点に関しては未だ十分ではなかった。
【0009】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、柔軟性を有し、かつ非常に優れた耐汚染性を有する樹脂製マット、及び、該樹脂製マットを有するテーブルマットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を進めた結果、少なくとも保護層と基材層とを有する樹脂製マットであって、該樹脂製マットの保護層側からダイナミック超微小硬度計により測定した硬度が所定の範囲内である樹脂製マットを作ることで、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の第1の態様は、少なくとも保護層と基材層とを有する樹脂製マットであって、樹脂製マットの保護層側からダイナミック超微小硬度計により測定した硬度が27〜55MPaであることを特徴とする樹脂製マットである。
【0012】
本発明の第1の態様において、保護層の、下記式(A)より算出される架橋密度(n)が、0.029〜1.500mol/cm
3であることが好ましい。
n=E’(T)/3RT ・・・式(A)
(式(A)中、E’(T)は温度Tでの貯蔵弾性率E’(単位:dyne/cm
2)を、Rは気体定数を、Tは動的ガラス転移温度Tgよりも40K高い温度(単位:K)を、それぞれ表す。)
【0013】
本発明の第1の態様において、10%モジュラスが、20〜60N/10mmであることが好ましい。本発明において「10%モジュラス」とは、JIS K 7127に準拠して樹脂製マットを引張速度50mm/分で引っ張り、10%のひずみを与えた時に測定される強度を意味する。
【0014】
本発明の第1の態様において、保護層の水接触角が95°以上であることが好ましい。本発明において「水接触角」とは、JIS R 3257に準拠して測定した値を意味する。
【0015】
本発明の第1の態様において、ヘイズが20%以下であることが好ましい。本発明における「ヘイズ」とは、JIS K 7105に準拠して測定した値を意味する。
【0016】
本発明の第1の態様において、全光線透過率が70%以上であることが好ましい。
本発明における「全光線透過率」とは、JIS Z 8722に準拠し、UV分光光度計を用いて測定した波長555nmにおける透過率を意味する。
【0017】
本発明の第1の態様において、基材層は、ポリ塩化ビニル系樹脂からなることが好ましい。
【0018】
本発明の第1の態様において、保護層は、シリコーン変性アクリルレート系樹脂からなることが好ましい。
【0019】
本発明の第2の態様は、上記本発明の第1の態様に係る樹脂製マットを少なくとも1層有するテーブルマットである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、柔軟性を有し、かつ非常に優れた耐汚染性を有する樹脂製マット、及び、該樹脂製マットを有するテーブルマットを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細を説明する。但し、本発明の範囲は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、数値AおよびBについて「A〜B」という表記は「A以上B以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Bのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Aにも適用されるものとする。
【0022】
本発明の樹脂製マットは、少なくとも保護層と基材層とを有する樹脂製マットであって、上記樹脂製マットの上記保護層側からダイナミック超微小硬度計により測定した硬度が27〜55MPaであることが重要である。また、硬度は、30〜50MPaであることが好ましく、35〜45MPaであることがより好ましい。樹脂製マットの保護層側から測定する硬度を27MPa以上とすることで、耐汚染性が非常に優れ、油性マーキングペンなどの付着も防止することができ、また、硬度を55MPa以下とすることで、樹脂製マットに十分な柔軟性を付与することができ、輸送や保管時に小さい曲率で丸めて保管した場合にも、保護層が割れることを抑制することができ、また保護層と基材層とが剥離することも抑制することができる。
なお、ダイナミック超微小硬度計により測定した硬度試験の条件は、超微小硬度計DUH−W201((株)島津製作所製)を使用し、下記条件で測定しn=3の平均値を硬度の値とした。
測定環境 :23℃、50%RH
使用圧子 :三角錐圧子(115°)
試験モード:圧子押込み試験
押込み深さ:1μm
負荷速度 :5(0.028439mN/sec)
保持時間 :5sec
【0023】
また、本発明の樹脂製マットの保護層は、下記式(A)より算出される架橋密度(n)が、0.029mol/cm
3以上であることが好ましく、0.035mol/cm
3以上であることがより好ましく、0.040mol/cm
3以上であることが更に好ましい。また、架橋密度(n)が、1.500mol/cm
3以下であることが好ましく、1.000mol/cm
3以下であることがより好ましく、0.500mol/cm
3以下であることが更に好ましく、0.100mol/cm
3以下であることが特に好ましい。保護層の架橋密度を上記とすることで、耐汚染性が非常にすぐれ、油性マーキングペンなどの付着も防止することができ、また、樹脂製マットに十分な柔軟性を付与することができる。
n=E’(T)/3RT ・・・式(A)
(式(A)中、E’(T)は温度Tでの貯蔵弾性率E’(単位:dyne/cm
2)を、Rは気体定数を、Tは動的ガラス転移温度Tgよりも40K高い温度(単位:K)を、それぞれ表す。)
【0024】
また、本発明の樹脂製マットの保護層は、水接触角が95°以上であることが好ましく、98°以上であることがより好ましく、100°以上であることが更に好ましい。水接触角を95°以上とすることで、油性マーキングペンなどの付着をより防止することができる。なお、水接触角の上限は特に規定することはないが、現段階の公知の技術において可能な範囲で、角度が大きいほどより好ましい。
【0025】
本発明の樹脂製マットが有する保護層の材質は、本発明に規定する数値を満たすものであれば特に限定されることはないが、硬化型の樹脂であることが好ましい。硬化型の樹脂としては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレートなどのオリゴマー成分を含む樹脂組成物を硬化させてなるアクリレート系樹脂が挙げられる。また、上記樹脂組成物中にはアクリレート系樹脂を構成するモノマー成分を添加することもできる。また、上記オリゴマー成分やモノマー成分を変性させることができ、とりわけシリコーン変性されていることが好ましい。よって保護層は、シリコーン変性されたアクリレート系樹脂からなることが好ましく、中でもシリコーン変性されたウレタンアクリレート系樹脂からなることがより好ましい。保護層をシリコーン変性されたウレタンアクリレート系樹脂により形成することにより、撥水性により優れた性能を有することができ、耐汚染性により優れた性能とすることができる。
【0026】
上記アクリレート系樹脂のモノマー成分としては、単官能モノマーや多官能モノマーがあり、単官能モノマーとしては2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、イソボロニルアクリレート(IBXA)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)、スチレン(St)などが挙げられ、多官能モノマーとしては、2官能モノマーとして、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(NPGDA)、ポリプロピレングリコールジアクリレート(PPGDA)、3官能モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、トリメチロールメラミントリアクリレート(TMMTA)、4官能モノマーとして、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PET
4A)、5官能モノマーとして、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、6官能モノマーとして、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)などが挙げられる。
【0027】
また、保護層を形成する際に硬化の工程を必要とする場合、上記樹脂組成物には開始剤が添加される。開始剤としては、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロオキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、ジメチルアミノエチルメタクリレートなどを使用することができ、これらの開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
本発明の樹脂製マットは、10%モジュラスが、20〜60N/10mmであることが好ましく、25〜55N/10mmであることがより好ましく、30〜50N/10mmであることが更に好ましい。樹脂製マットの10%モジュラスを上記とすることで、樹脂製マットを丸めた状態で保管したり、輸送した場合にも、樹脂製マットが折れたり、白化することを抑制することができる。
【0029】
本発明の樹脂製マットが有する基材層に使用する樹脂は、特に限定することはなく公知の樹脂を使用することができる。たとえば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等を使用することができる。中でも、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を好ましく使用することができ、とりわけ、ポリ塩化ビニル系樹脂を好ましく使用することができる。以下、基材層に使用できるポリ塩化ビニル系樹脂、及び、ポリオレフィン系樹脂について説明する
【0030】
[ポリ塩化ビニル系樹脂]
本発明において、ポリ塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルとこれに共重合可能なコモノマーとの重合体、及びこれらの重合体の混合物のことをいう。ポリ塩化ビニル系樹脂は、懸濁重合法、塊状重合法、微細懸濁重合法又は乳化重合法等の公知の製造方法のうち、いずれの方法により製造されたものであってもよい。コモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のビニルエステル類、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル類、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、ジブチルマレエート、ジエチルマレエート等のマレイン酸エステル類、ジブチルフマレート、ジエチルフマレート等のフマル酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニルオクチルエーテル等のビニルエーテル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル類、エチレン、プロピレン、スチレン等のα−オレフィン類、塩化ビニリデン、臭化ビニル等の塩化ビニル以外のハロゲン化ビニル類又はハロゲン化ビニリデン類、ジアリルフタレート、エチレングリコールジメタクリレート等の多官能性単量体があげられる。勿論、コモノマーは、上述のものに限定されるものではない。コモノマーは、塩化ビニル系樹脂の構成成分中、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下の範囲にするのがよい。
【0031】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、700〜2500の範囲であることが好ましく、800〜1300であることがより好ましい。また、異なる平均重合度のものを2種以上混合して用いてもよい。混合方法としては、基材層となるフィルムの製膜加工時に2種類以上の樹脂を混合する方法が一般的であるが、ポリ塩化ビニル系樹脂の重合時に重合条件をコントロールすることによって、見掛け上2種類以上の平均重合度の異なるポリ塩化ビニル系樹脂が混合されたことになる方法であってもよい。
【0032】
[可塑剤]
本発明において、基材層にポリ塩化ビニル系樹脂を使用する場合、ポリ塩化ビニル系樹脂は可塑剤を含有することが好ましい。上記可塑剤は、可塑剤の種類によりその含有量も相違するが、一般的には、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、5〜100質量部含有することが好ましく、10〜80質量部含有することがより好ましい。可塑剤を5質量部以上含有することにより、基材層を製造する際の成形性や加工性を改善することができ、また、100質量部以下とすることにより、基材層から可塑剤がブリードアウトすることなく、十分な成形性や加工性を改善することができる。
【0033】
本発明において、ポリ塩化ビニル系樹脂に使用できる可塑剤は、特に限定することは無く公知の可塑剤を使用することができる。例えば、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジオチルデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル、イソフタル酸ジ−2−エチルヘキシルなどのフタル酸系可塑剤;アジピン酸−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−2−デシル、セバチン酸ジブチル、セバチン酸−2−エチルヘキシルなどの脂肪酸エステル可塑剤;リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸−2−エチルヘキシルジフェニル、リン酸トリクレジルなどのリン酸エステル系可塑剤;トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリオクチルなどのトリメリット酸エステル系可塑剤;アジピン酸系ポリエステル可塑剤;フタル酸系ポリエステル可塑剤などのポリエステル系可塑剤;テレフタル酸系可塑剤が使用することができる。
【0034】
本発明に使用できるポリ塩化ビニル系樹脂には、必要に応じて、成型用の合成樹脂に通常配合される公知の樹脂添加剤、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、耐候助剤、熱安定剤、安定化助剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、防菌防黴剤及び着色剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0035】
[ポリオレフィン系樹脂]
本発明に使用できるポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0036】
ポリエチレン系樹脂としては、エチレンの単独重合体、エチレンを主成分とするエチレンと共重合可能な他の単量体との共重合体(低密度ポリエチレン(LDPE)、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン系触媒を用いて重合して得られたエチレン−α−オレフィン共重合体(メタロセン系ポリエチレン)等)及びこれらの混合物等が例示できる。
【0037】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンの共重合体、リアクター型のポリプロピレン系熱可塑性エラストマー及びこれらの混合物等が例示できる。
【0038】
上記プロピレンの共重合体としては、プロピレンとエチレン若しくは他のα−オレフィンとのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)、又はブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、ゴム成分を含むブロック共重合体あるいはグラフト共重合体等が挙げられる。上記プロピレンと共重合可能な他のα−オレフィンとしては、炭素原子数が4〜12のものが好ましく、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン等が挙げられ、その1種又は2種以上の混合物が用いられる。通常、α−オレフィンの混合割合はプロピレンに対して1〜10質量%程度である。
【0039】
本発明の樹脂製マットは、ヘイズが20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、13%以下であることが更に好ましく、11%以下であることがとりわけ好ましい。ヘイズを20%以下とすることにより透明性が好ましいものとなり、例えば樹脂製マットの下面に設置される書面等の視認性が良好となり好ましい。また、ヘイズの下限は特に限定することはないが、視認性を良くすることを考慮すると0%に近いほど好ましい。
【0040】
本発明の樹脂製マットは、全光線透過率が70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。全光線透過率を70%以上とすることにより、光の透過性が好ましいものとなり、さらに透明性が良好となる。これにより、例えば樹脂製マットの下面に位置する、床のデザインや、机と樹脂製マットとの間に設置される書面等の視認性が良好となり好ましい。また、全光線透過率の上限は特に限定することはないが、視認性を良くすることを考慮すると100%に近いほど好ましい。
【0041】
[樹脂製マットの製造方法]
本発明の樹脂製マットを製造する方法としては、たとえば、以下に示す方法により、まず基材層を作製し、その後、基材層に保護層を積層する方法が挙げられる。
【0042】
(基材層の作製)
本発明の樹脂製マットの基材層を作製する方法としては、たとえば、上記のポリ塩化ビニル系樹脂を使用する場合、ポリ塩化ビニル系樹脂に対して、上記の各成分を所定量添加してポリ塩化ビニル系樹脂組成物を作製し、該ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を成形する方法が挙げられる。
より詳しくは、まず、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の原料(上記各成分)を攪拌機でブレンドし、バンバリーミキサー、1軸押し出し機、ロール、ニーダー等の公知の混練機を用いて加熱溶融状態で混練することによってポリ塩化ビニル系樹脂組成物を得る。このようにして得られるポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、ペレット状、粒子状、フレーク状、粉末状等の形状で得ることができる。次に、得られたポリ塩化ビニル系樹脂組成物をカレンダーロールや、Tダイ成形機でシートに成形することによって樹脂製マットの基材層を得ることができる。
【0043】
本発明の樹脂製マットは、上記方法により得られる基材層を少なくとも1層有していればよく、樹脂製マットが有する基材層は単層であってもよく、また多層であってもよい。また、本発明の基材層の厚み(多層である場合には、多層の合計厚み)は、特に限定されるものではないが、マットの透明性や緩衝性を好ましくする観点からは、0.03〜5mmが好ましく、0.05〜4mmがより好ましく、0.08〜3mmが更に好ましい。
【0044】
(保護層の積層)
上記により作製した基材層に保護層を積層する方法としては、特に制限はなく、まず、保護層を形成する硬化型の樹脂の原料(上記各成分)を攪拌機でブレンドして樹脂組成物を作製し、該樹脂組成物を基材層表面に、ローラー塗膜、刷毛塗り、エアスプレー、エアレススプレーなどの塗布方法により塗布し、その後硬化させることにより、積層することができる。基材層表面に塗布した樹脂組成物を硬化させる方法は特に限定されず、硬化型の樹脂が熱硬化型樹脂である場合には、公知の方法により加熱することにより硬化させることができる。また、硬化型の樹脂が光硬化型樹脂である場合には、例えば、電子線、放射線、紫外線などのエネルギー線を公知の方法により照射することにより硬化させることができる。
【0045】
形成される保護層の厚みは、乾燥後の厚みで1〜50μmであることか好ましく、1〜35μmであることがより好ましく、1〜20μmであることが更に好ましく、1〜10μmであることが特に好ましい。保護層の厚みを1μm以上とすることで耐汚染性を良好とすることができ、また厚みを50μm以下とすることで、樹脂製マットを巻取りした際も、保護層に割れが発生したり、保護層と基材層とが剥離したりすることを抑制することができる。
【0046】
本発明の樹脂製マットは、該樹脂製マットを少なくとも1層有する種々のマットに使用することができる。たとえば、テーブルマットやデスクマットやフロアーマットに使用することもできる。
【実施例】
【0047】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の測定評価は以下に示す方法で行った。また、実施例及び比較例で使用した原料は、下記の通りである。
【0048】
[硬度の測定]
超微小硬度計DUH−W201((株)島津製作所製)を使用し、下記条件で測定しn=3の平均値を硬度の値とした。得られた結果を表1に示す。
測定環境 :23℃、50%RH
使用圧子 :三角錐圧子(115°)
試験モード:圧子押込み試験
押込み深さ:1μm
負荷速度 :5(0.028439mN/sec)
保持時間 :5sec
【0049】
[架橋密度の測定]
JIS K 7244−4に従い、得られた保護層から採取したサンプルを、室温〜200℃、昇温速度3℃/分、周波数1Hzにて、動的粘弾性測定装置DVA−200(アイティー計測制御(株)製)を用いて動的粘弾性測定を実施した。
得られた結果から下記式(A)より架橋密度(n)を算出した。
n=E’(T)/3RT ・・・式(A)
(式(A)中、E’(T)は温度Tでの貯蔵弾性率E’(単位:dyne/cm
2)を、Rは気体定数を、Tは動的ガラス転移温度Tgよりも40K高い温度(単位:K)を、それぞれ表す。)
得られた結果を表1に示す。
【0050】
[10%モジュラスの強度測定]
JIS K 7127に従い、得られた樹脂製マット(保護層+基材層)から採取した試験片(1号ダンベル)を23℃、60%RHの雰囲気下、島津卓上計精密万能試験機オートグラフAGS−5kNX((株)島津製作所製)にて、引張速度:50mm/分で引っ張り、10%モジュラス(N/10mm)を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0051】
[油性マーキングペン拭き取り性]
ゼブラ社製マッキーケア極細の黒色細字を使用して、得られた樹脂製マット(保護層+基材層)の保護層面側に文字を書き、10秒後にティッシュで乾拭きをし、拭き取り性を目視により下記の評価方法で判定した。得られた結果を表1に示す。
○:きれいに拭き取れる
△:わずかに跡が残るが、拭き取れる
×:拭き取れない
【0052】
[折り曲げ性]
得られた樹脂製マット(保護層+基材層)から幅80cm、長さ120cmの寸法でサンプルを切り出し、61mmφの径の巻き芯(紙製)に巻きつけた後、サンプルを元に戻し、表面の外観状態を観察した。得られた結果を表1に示す。
○:保護層の割れなし
△:保護層に実使用上問題のない程度の割れあり
×:保護層に目立つ割れあり
【0053】
[ヘイズの測定]
日本電色工業社製ヘイズメーター(型番:NDH2000)を使用し、JIS K 7105に準じて、得られた樹脂製マット(保護層+基材層)から試験片を採取し、ヘイズを測定した。得られた結果を表1に示す。
【0054】
[全光線透過率の測定]
得られた樹脂製マット(保護層+基材層)の555nmにおける全光線透過率を分光光度計((株)島津製作所製、UV−2450型:積分球ユニット装着)により測定した。得られた結果を表1に示す。
【0055】
[接触角の測定]
協和界面科学社製極小接触角計(型番:DM700)を使用し、JIS R 3257に準じて、得られた樹脂製マット(保護層+基材層)から試験片を採取し、保護層側の面の水接触角を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0056】
[基材層に使用した材料]
・熱可塑性樹脂:ポリ塩化ビニル系樹脂(カネカ社製「カネビニールS1001」、平均重合度:1050)
・可塑剤:フタル酸系可塑剤(ジェイ・プラス社製「DOP」)
・安定化補助剤:エポキシ大豆油(DIC社製「M−6」)
・安定剤:Ba−Zn系安定剤(勝田化工社製「BZ−34C」)
[保護層に使用した材料]
A−1:シリコーン変性ウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂組成物(硬化後の架橋密度:0.030mol/cm
3)
A−2:シリコーン変性ウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂組成物(硬化後の架橋密度:0.049mol/cm
3)
A−3:シリコーン変性ウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂組成物(硬化後の架橋密度:0.061mol/cm
3)
A−4:シリコーン変性ウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂組成物(硬化後の架橋密度:0.064mol/cm
3)
A−5:シリコーン変性ウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂組成物(硬化後の架橋密度:0.028mol/cm
3)
A−6:シリコーン変性ウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂組成物(硬化後の架橋密度:2.515mol/cm
3)
希釈剤:IPA(イソプロピルアルコール)(三協化学社製「IPA」)
【0057】
[基材層の作製]
ポリ塩化ビニル系樹脂を100質量部、ポリエステル系可塑剤を40質量部、エポキシ大豆油を10質量部、Ba−Zn系安定剤を2質量部とし、ヘンシェルミキサー機を使用して混合し、Tダイ成形機にて、シリンダー温度:140〜160℃、ダイス温度:175〜180℃に設定し、厚み1.5mmの基材層を成形した。
【0058】
[実施例1]
紫外線硬化樹脂組成物(A−1)を50wt%、希釈溶剤IPAを50wt%とし、上記基材層へロールコートし、60℃の条件で60秒間乾燥し、積算照射量400mJで紫外線硬化させ、厚み1.5mmの基材層上に、厚み5μmの保護層を保持した樹脂製マットを得た。
【0059】
[実施例2〜4、比較例1、2]
実施例1で使用したシリコーン変性ウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂組成物(A−1)に代えて、それぞれ、シリコーン変性ウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂組成物(A−2)〜(A−6)を使用した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜4及び比較例1、2に係る樹脂製マットを得た。
得られた樹脂製マットを使用し、各評価を行い、得られた結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1より、実施例1〜4に係る樹脂製マットは、油性マーキングペンの拭き取り性に優れ、かつ折り曲げ性にも優れている結果が得られた。一方、比較例1に係る樹脂製マットは、硬度が低いため油性マーキングペンの拭き取り性に劣ることが分かる。また、比較例2に係る樹脂製マットは、硬度が高いため、折り曲げ性に劣ることが分かる。
従って、本発明の樹脂製マットは、柔軟性を有し、かつ非常に優れた耐汚染性を有することが確認できた。