特許第6552273号(P6552273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552273
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】バッテリ固定用フックボルト保持構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/04 20060101AFI20190722BHJP
   F16B 5/00 20060101ALI20190722BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   B60R16/04 E
   F16B5/00 F
   F16B5/02 N
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-106769(P2015-106769)
(22)【出願日】2015年5月26日
(65)【公開番号】特開2016-216011(P2016-216011A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(73)【特許権者】
【識別番号】598059675
【氏名又は名称】株式会社ヴイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】三浦 義樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆之
(72)【発明者】
【氏名】黒川 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】河上 泰章
【審査官】 中屋 裕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−032241(JP,U)
【文献】 特開2014−041815(JP,A)
【文献】 実開昭58−044245(JP,U)
【文献】 国際公開第2011/136107(WO,A1)
【文献】 実開平04−085571(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/04
F16B 5/00
F16B 5/02
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリを固定するフックボルトを保持するバッテリ固定用フックボルト保持構造であって、
前記フックボルトは、第1方向に沿って延びるボルト本体と、前記第1方向に交差する第2方向側へ前記ボルト本体の端部から折れ曲がるように延びるフック部と、を備えており、
前記バッテリ固定用フックボルト保持構造は、
前記フック部が挿入されて通過される開口部が形成されたブラケットと、
前記ブラケットに対して固定され、前記フックボルトを保持する留め具と、を備え、
前記留め具は、
前記フック部を支持する支持片と、
前記開口部を通過した前記フック部に当接して、前記第2方向とは反対側への前記フックボルトの傾倒を規制する第1当接部と、
前記開口部を通過した前記フック部に当接して、前記第1及び第2方向に交差する第3方向への前記フックボルトの傾倒を規制する第2当接部と、
前記ブラケットの前記第2方向とは反対側に当接するベース板と、
前記ベース板に連結され、前記開口部を通過し、前記第3方向において前記フック部を挟んで対向する一対の側壁と、
前記一対の側壁にそれぞれ設けられ、可撓性を有し斜め上方に突出する一対の前記支持片と、を有し、
前記一対の支持片が互いに反対方向に撓むことで、前記一対の支持片間に、前記フック部が通過可能な隙間が形成される、
バッテリ固定用フックボルト保持構造。
【請求項2】
前記一対の側壁は、前記ブラケットの前記ボルト本体とは反対側で上方に延びる立上り部を有し、
前記第2当接部は、前記一対の側壁の前記立上り部の前記第3方向に対向する面である請求項1に記載のバッテリ固定用フックボルト保持構造。
【請求項3】
前記第1当接部は、前記一対の側壁同士を連結するように形成されている請求項1又は2に記載のバッテリ固定用フックボルト保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ固定用フックボルト保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるバッテリは、例えば、車体の台座上に配置されている。このようなバッテリは、台座に係止され上下方向に延在するフックボルトを用いて、車体に対して固定される。フックボルトは、下端部のフック部が台座廻りの係合穴に係合されて、上下方向に延在している。バッテリの上面にはクランプ部材が配置され、このクランプ部材には、フックボルトの上端部が挿通される開口部が設けられている。クランプ部材の開口部を通り、上方に突出するクランプ部材の上端部には、ナットが取り付けられている。このナットを締め付けることで、クランプ部材が下方に付勢されて、クランプ部材と台座とによってバッテリが挟まれて車体に対して固定される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−67251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなバッテリ固定用フックボルト保持構造では、例えばバッテリを交換する際において、フックボルトに取り付けられたナットを緩め、クランプ部材を取り外すと、フックボルトが傾倒してしまう場合がある。そのため、バッテリを再度固定する際には、フックボルトを直立させる必要があり、当該固定作業に手間がかかるおそれがある。
【0005】
また、バッテリの周辺において、他の部品などが接近して配置されていると、バッテリ廻りの隙間が狭く、係合穴の視認性が低くなる場合がある。そのため、係合穴から外れたフックボルトを、係合穴に再度係合させる際、手間がかかるおそれがある。
【0006】
さらに、係合穴の廻りには、ワイヤハーネスなど他の部品が配置されていると、フック部を係合穴に係合させる前に、フック部が他の部品に引っ掛かり、フックボルトが誤った位置に組み付けられてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、バッテリの固定作業を容易なものとし、誤った位置へのフックボルトの組み付けを防止することが可能なバッテリ固定用フックボルト保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のバッテリ固定用フックボルト保持構造は、バッテリを固定するフックボルトを保持するバッテリ固定用フックボルト保持構造であって、フックボルトは、第1方向に沿って延びるボルト本体と、第1方向に交差する第2方向側へボルト本体の端部から折れ曲がるように延びるフック部と、を備えており、バッテリ固定用フックボルト保持構造は、フック部が挿入されて通過される開口部が形成されたブラケットと、ブラケットに対して固定され、フックボルトを保持する留め具と、を備え、留め具は、フック部を支持する支持片と、開口部を通過したフック部に当接して、第2方向とは反対側へフックボルトの傾倒を規制する第1当接部と、開口部を通過したフック部に当接して、第1及び第2方向に交差する第3方向へのフックボルトの傾倒を規制する第2当接部と、を有する。
【0009】
このバッテリ固定用フックボルト保持構造では、留め具に設けられた支持片によってフック部が支持されるので、フック部の下方への移動が抑制されて、フックボルトの開口部からの脱落が防止される。また、バッテリ固定用フックボルト保持構造では、留め具の第1当接部が、開口部を通過したフック部に当接して、第2方向とは反対側へのフックボルトの傾倒が抑制される。また、バッテリ固定用フックボルト保持構造では、留め具の第2当接部が、開口部を通過したフック部に当接して、第3方向へのフックボルトの傾倒が抑制される。
【0010】
このように、ブラケットに対して固定された留め具によって、フックボルトの開口部からの脱落、第2方向とは反対側へのフックボルトの傾倒、及び第3方向へのフックボルトの傾倒が抑制されて、フックボルトの姿勢が保持される。そのため、バッテリの交換作業時にフックボルトを再度組み付ける必要がなく、フックボルトが誤った位置に組み付けられることが防止される。また、フックボルトの傾倒が抑制されたフックボルトの姿勢が保持されるので、姿勢が保持された状態のフックボルトに、クランプ部材やナットを容易に取り付けることができる。その結果、バッテリの固定作業を容易とすると共に、誤った位置へのフックボルトの組み付けを防止することができる。
【0011】
また、留め具は、ブラケットの第2方向とは反対側に当接するベース板と、ベース板に連結され、開口部を通過し、第3方向においてフック部を挟んで対向する一対の側壁と、一対の側壁にそれぞれ設けられ、可撓性を有し斜め上方に突出する一対の支持片と、を備え、一対の支持片が互いに反対方向に撓むことで、一対の支持片間に、フック部が通過可能な隙間が形成される構成でもよい。この構成によれば、ベース板をブラケットに当接させることで、留め具をブラケットに対して位置決めすることができる。また、留め具において、ブラケットに当接する部分を、板状にすることで、狭いスペースにベース板を好適に配置することができる。
【0012】
また、この留め具では、開口部を通過する一対の側壁から斜め上方に突出する一対の支持片が可撓性を有し、当該一対の支持片が撓むことで、フック部が通過可能な隙間が形成される。これにより、下方からフック部を押し上げることで、一対の支持片間の隙間を通過させて、フック部を装着することができる。フック部の通過後、元の位置に復帰した一対の支持片によって、フック部が支持されてフック部の脱落が防止される。
【0013】
また、一対の側壁は、ブラケットのボルト本体とは反対側で上方に延びる立上り部を有し、第2当接部は、一対の側壁の前記立上り部の第3方向に対向する面である構成でもよい。この構成によれば、第3方向からフック部を挟むように第2当接部を形成し、この第2当接部にフック部が当たることで、第3方向へのフック部の傾倒が抑制される。
【0014】
また、第1当接部は、一対の側壁同士を連結するように形成されている構成でもよい。この構成では、一対の側壁同士を連結する第1当接部にフック部が当接することで、第2方向とは反対側へのフックボルトの傾倒が抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のバッテリ固定用フックボルト保持構造によれば、バッテリの固定作業を容易なものとし、誤った位置へのフックボルトの組み付けを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のバッテリ固定用フックボルト保持構造を示す概略図である。
図2】バッテリが載置される台座部、及びこの台座部のブラケットに装着される留め具を示す斜視図である。
図3】フックボルトのフック部が留め具を介してブラケットに支持された状態を示す断面図である。
図4】留め具の背面図である。
図5】留め具の平面図である。
図6】留め具のVI−VI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1に示されるバッテリ固定構造1は、バッテリ固定用フックボルト保持構造(以下、「フックボルト保持構造」と記す)2を用いて、車体3にバッテリ4を固定するものである。バッテリ固定構造1では、車体3のプレート5に設けられた台座6上にバッテリ4を載置して固定する。バッテリ4を搭載する車両としては、例えば中型バスが挙げられる。
【0019】
なお、車両は、特に限定されるものではなく、例えばトラック等の商用車であってもよく、大型車両や中型車両、普通乗用車、小型車両又は軽車両等の何れであってもよい。また、車両は、駆動源としてエンジンのみを備えた車両でもよく、駆動源としてエンジン及びモータを備えたハイブリッド車両でもよく、その他の電気自動車でもよい。また、以下の説明において、「前」、「後」を示す場合には、車両の前後方向に対応するものである。また、各図においてX軸、Y軸、Z軸を図示している。Z軸方向は上下方向(第1方向)であり、Y軸方向は前後方向(第2方向)であり、X軸方向は車幅方向(第3方向)である。
【0020】
バッテリ4は、例えばエンジンルームに配置されている。プレート5は、エンジンルームの底部を覆うものであり、このプレート5上に台座6が配置されている。また、プレート5は、後側において、上方に配置されるように傾斜している。台座6の天板7は、バッテリ4が載置される平面部を有し、この平面部は略水平な面を構成している。
【0021】
台座6の前側には、天板7から下方に延びる前壁部8が形成されている。この前壁部8は、天板7とプレート5とを連結している。前壁部8は、例えば溶接により、天板7及びプレート5に接合されている。また、前壁部8は、天板7と別部材として形成されていてもよく、天板7と一体として形成されているものでもよい。前壁部8は、例えば、上端が下端よりも後側に配置されるように、傾斜している。
【0022】
また、前壁部8には、板厚方向(前後方向Y)に貫通する係合穴9が設けられている。この係合穴9は、上下方向Zに長径を有する長円として形成されている。この係合穴9には、後述するフックボルト13が係合される。
【0023】
また、天板7の後端部は、プレート5に連結されている。天板7の後端部は、例えば溶接によってプレート5に接合されている。天板7は、プレート5に対して、他の部材を介して接合されていてもよい。プレート5は、天板7の後端部よりも後側において、天板7よりも上方に配置されるように傾斜している。
【0024】
台座6の後側には、上方に延びるブラケット10が形成されている。ブラケット10は、板状を成し、正面視において、例えば、三角形を成すように形成されている。ブラケット10の下端部は、台座6に接合されている。ブラケット10の中央には、板厚方向に貫通する係合穴11が設けられている。この係合穴11は、上下方向Zに長径を有する長円として形成されている。この係合穴11には、後述するフックボルト14が係合される。
【0025】
また、ブラケット10には、図2に示されるように、車幅方向Xにおいて係合穴11の両側に取付用穴12が設けられている。この取付用穴12には、後述する留め具24の取付部30が係合される。
【0026】
フックボルト保持構造2は、バッテリ4を固定するフックボルト13,14を保持するものである。フックボルト13,14は、直線部分であるボルト本体15,16と、ボルト本体15,16の一方の端部から折り返されたフック部17,18と、を備える。
【0027】
フックボルト13は、バッテリ4の前方に配置されて、係合穴9に係合され、フックボルト14は、バッテリ4の後方に配置されて、係合穴11に係合される。ボルト本体15,16の上端部には、ナット21,22が取り付けられる。
【0028】
また、バッテリ固定構造1は、バッテリ4の上面に配置されて、バッテリ4を下方に押し付けるクランプ部材23を備えている。クランプ部材23は、前後方向Yにおいて、バッテリ4を跨ぐように配置される金属製の帯状部材である。クランプ部材23の両端部は、前後方向Yにおいて、バッテリ4より外方に張り出すように配置されている。このクランプ部材23の両端部には、上下方向Zに貫通する開口部が形成されている。そして、この開口部にフックボルト13,14の上端部が挿通され、この上端部にナット21,22が取り付けられる。
【0029】
ここで、フックボルト保持構造2は、図3図5に示されるように、ブラケット10に対して固定され、フックボルト14を保持する留め具24を備えている。留め具24は、ベース板25と、一対の挟持板(側壁)26とを備える。
【0030】
ベース板25は、ブラケット10の正面に当接する板状の部分である。ベース板25の車幅方向Xの中央には、ブラケット10の係合穴11に対応する開口領域27が形成されている。ブラケット10は、車幅方向において開口領域27の両側に形成された一対の側部28と、開口領域27の上方で一対の側部28を連結する連結部29と、を有する。
【0031】
ベース板25は、板厚方向から見て、例えば三角形を成すように形成されている。開口領域27は、三角形の底辺の中央に対応する位置から、底辺に対向する頂点に向かって延びている。また、一対の側部28には、後側に突出する一対の取付部30がそれぞれ設けられている。取付部30は、前後方向Yに交差する断面において、例えば十字状を成すように形成されている。具体的には、取付部30は、上下方向Zに突出する凸部30a,30bと、車幅方向Xの外側に突出する凸部30cと、車幅方向Xの内側に突出する係止爪30dとを有する。
【0032】
凸部30a〜30cは、ブラケット10の取付用穴12の周縁にそれぞれ当接し、ブラケット10に対するベース板25の位置決めを行う。また、係止爪30dは、可撓性を有し、車幅方向Xに揺動可能となっている。係止爪30dは、取付用穴12を通過する際に、取付用穴12の周縁に当たって車幅方向Xの外側に倒れた後、取付用穴12を通過した後に、車幅方向Xの内側に復帰して、ブラケット10の後側の面に当接して係止される。
【0033】
一対の挟持板26は、図3に示されるように、係合穴11を通過する延出部31と、延出部31から上方に延びる立上り部(第2当接部)32と、それぞれを有する。延出部31の上端部には、図6に示されるように、係合穴11の開口の内部において、車幅方向Xの外側からフック部18に当接する挟持部33が設けられている。
【0034】
また、延出部31には、係合穴11の開口の内部において、斜め上方に突出するフック部保持爪(支持片)34が設けられている。車幅方向Xにおいて、フック部18の両側に配置された一対のフック部保持爪34は、可撓性を有し、この一対のフック部保持爪34が互いに反対方向に撓むことで、一対のフック部保持爪34間に、フック部18が通過可能な隙間が形成される。
【0035】
また、延出部31の下端部31aは、下方に向かうにつれて、車幅方向Xの外側に向かって配置されている。すなわち、一対の延出部31の下端部は、下方に向かうにつれて、互いに離間するように配置されている。また、延出部31の下端部において、車幅方向Xの端部は、係合穴11の周縁に当接している。これにより、延出部31の車幅方向Xの移動が拘束される。
【0036】
また、立上り部32は、フック部18の端部18aを車幅方向Xの外側から覆うように形成されている。フック部18の端部18aは、一対の立上り部32によって、車幅方向Xの両側から挟まれている。立上り部32は、フック部18の端部18aに当接して、フック部18の端部18aの車幅方向Xへの移動を拘束するものである。
【0037】
また、留め具24は、図3に示されるように、一対の立上り部32同士を連結する傾斜板(第1当接部)35及び天板(第1当接部)36を備える。傾斜板35は、上方に向かうにつれて、後側に配置されるように形成されている。すなわち、傾斜板35は、上方に向かうにつれて、ベース板25と離れるように離間している。この傾斜板35の角度は、例えば、フック部18の端部18aの傾きに対応している。また、傾斜板35より下方においては、一対の立上り部32同士は、連結されていない。この傾斜板35は、フック部18の端部18aのベース板25へ接近する方向への移動を拘束する。
【0038】
また、天板36は、一対の立上り部32の上端部同士を連結している。また、この天板36は、フック部18がフック部18の湾曲に沿って移動した場合に、フック部18の端部18aが当接可能となっている。天板36にフック部18の端部18aが当接することで、フック部18の上方への移動が規制される。
【0039】
次に、留め具24のブラケット10に対する装着について説明する。まず、留め具24を準備し、留め具24の一対の挟持板26をブラケット10の係合穴11に挿入する。次に、留め具24のベース板25をブラケット10に対向して配置し、取付部30が取付用穴12の正面となる位置に配置して、ベース板25をブラケット10に向かって接近させる。これにより、取付部30を取付用穴12に装着し、ベース板25をブラケット10に密着させる。このとき、取付部30の係止爪30dが、ブラケット10の後側の面に係止されて、留め具24のブラケット10からの脱落が防止される。また、取付部30の凸部30a〜30c及び係止爪30dが、取付用穴12の周縁にそれぞれ当接されるので、留め具24が位置決めされて、留め具24の位置が拘束される。具体的には、車幅方向X及び上下方向Zにおいて、ブラケット10に対する留め具24の位置が拘束される。
【0040】
留め具24がブラケット10に装着された状態において、図6に示されるように、一対の延出部31の車幅方向Xの両端部(具体的には、下端部31a)は、係合穴11の周縁に当接している。これにより、留め具24の車幅方向Xへの移動が拘束される。
【0041】
また、留め具24がブラケット10に装着された状態において、図3に示されるように、延出部31は、係合穴11を前後方向Yに通過し、立上り部32は、ブラケット10の後側で、延出部31から上方に延びるように配置されている。
【0042】
次に、フックボルト14の留め具24に対する装着について説明する。まず、フックボルト14を準備し、フックボルト14の上端部を後側に傾けて、フック部18を開口領域27及び係合穴11の内部の下部側に挿入する。次に、ボルト本体16を直立させて、上方に引き上げる。このとき、フック部18は一対のフック部保持爪34に下方から当たり、フック部18の上方への移動に伴って、フック部保持爪34が互いに反対方向に押し拡げられる。これにより、一対のフック部保持爪34間の隙間を広げて、フック部を通過させることができる。フック部18が、フック部保持爪34間の隙間を通過すると、フック部保持爪34は、元の位置に復帰して、斜め下方からフック部18を支持する。このとき、図6に示されるように、フック部18の周面のうち上側部分は、係合穴11の周縁の上側の部分に当接し、フック部18の周面のうち車幅方向の両側の部分は、一対の挟持部33に当接し、フック部18の周面のうち下側の部分は、一対のフック部保持爪34に当接している。なお、フック部18は、一対のフック部保持爪34によって支持されていればよく、係合穴11とフック部18との間に隙間が形成されていてもよく、一対の挟持部33とフック部18との間に隙間が形成されていてもよい。
【0043】
フックボルト14が留め具24に装着されている状態において、フック部18の端部18aは、一対の立上り部32によって、車幅方向Xの両側から覆われている。また、傾斜板35は、フック部18の前側において、端部18aの斜め上方に配置されて、端部18aの前側への移動が拘束される。また、天板36は、フック部18の端部18aを上方から覆うように配置され、端部18aの上方への移動が拘束される。
【0044】
次に、バッテリ4の固定について説明する。上述したように、留め具24をブラケット10に装着した後に、留め具24に対してフックボルト14を装着する。このとき、フックボルト14は、留め具24によって支持されて直立した姿勢が保持されている。
【0045】
具体的には、フック部18は、一対のフック部保持爪34によって下方から支持されているので、フックボルト14の脱落が防止されている。また、ボルト本体16が前側に倒れそうになっても、フック部18の端部18aが傾斜板35又は天板36に当たって、フック部18の位置が規制されるので、ボルト本体16の前側への傾倒が抑制される。また、ボルト本体16が車幅方向Xに倒れそうになっても、フック部18の端部18aが、立上り部32に当たって、フック部18の位置が規制されるので、ボルト本体16の車幅方向への傾倒が抑制される。
【0046】
フックボルト14が直立した状態において、バッテリ4を台座6に載置すると共に、前側のフックボルト13を係合穴9に係合させる。このとき、フックボルト14が直立しているので、作業者は、フックボルト14を押さえる必要がない。また、フックボルト14の位置を気にすることなく、バッテリ4を台座6に載置することができる。また、前側のフックボルト13を係合穴9に係合させる際においても、フックボルト14の配置を気にする必要がない。そのため、一人でもバッテリ固定作業が容易に行える。
【0047】
次に、クランプ部材23をバッテリ4の上面に配置すると共に、フックボルト13,14の上端部をクランプ部材23の開口部に挿入する。そして、クランプ部材23から上方に突き出したフックボルト13,14の上端部にナット21,22をそれぞれ装着し、ナット21,22を締め付けることで、クランプ部材23を下方に押し付けて、バッテリ4を固定する。
【0048】
次に、バッテリ4の交換作業について説明する。まず、ナット21,22を緩めて、フックボルト13,14からナット21,22を外すと共にクランプ部材23を外す。そして、バッテリ4を取外し、新たなバッテリ4を天板7上に載置する。このとき、フックボルト14は、留め具24によって、支持されて、ボルト本体16の直立状態が保持されている。新たなバッテリ4を天板7上に載置した後は、上述の固定のときと同じように、前側のフックボルト13を係合穴9に係止して、直立させて、クランプ部材23を装着して、ナット21,22を締め付けることで、バッテリ4を固定する。このバッテリ固定作業においても、上述の通り、フックボルト14の直立状態が保持されているので、一人で作業を行うことができる。
【0049】
このようなバッテリ固定用フックボルト保持構造2では、留め具24に設けられた一対のフック部保持爪34によって、フック部18が支持されるので、フック部18の下方への移動が抑制されて、フックボルト14の係合穴11からの脱落が防止される。また、バッテリ固定用フックボルト保持構造2では、留め具24の傾斜板35が、フック部18の端部18aに当接して、ボルト本体16の前側への傾倒が抑制される。また、バッテリ固定用フックボルト保持構造2では、留め具24の立上り部32がフック部18の端部18aに当接して、ボルト本体16の車幅方向への傾倒が抑制される。
【0050】
このように、ブラケット10に対して固定された留め具24によって、フックボルト14の係合穴11からの脱落、ボルト本体16の前側への傾倒、及びボルト本体16の車幅方向への傾倒が抑制されて、ボルト本体16の直立状態が保持される。そのため、バッテリ4の交換作業時にフックボルト14を再度組み付ける必要がなく、フックボルト14が誤った位置に組み付けられることが防止される。また、ボルト本体16の傾倒が抑制されてフックボルト14の姿勢が保持されるので、姿勢が保持された状態のフックボルト14に、クランプ部材23やナット21,22を容易に取り付けることができる。その結果、バッテリ4の固定作業を容易とすると共に、誤った位置へのフックボルト14の組み付けを防止することができる。
【0051】
また、留め具は、ブラケット10の正面に当接するベース板25を備えているので、ベース板25をブラケット10に当接させることで、留め具24をブラケット10に対して位置決めすると共に、安定して支持することができる。また、留め具24において、ブラケット10に当接する部分を板状にすることで、ブラケット10とバッテリ4との間の狭いスペースにベース板25を好適に配置することができる。
【0052】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記のような種々の変形が可能である。
【0053】
上記実施形態では、後側のフックボルト14が係合される係合穴11に留め具24を装着しているが、前側のフックボルト13が係合される係合穴9に留め具24を装着してもよい。また、上記実施形態では、留め具24のベース板25が、ブラケット10の正面に配置されるように、留め具24が配置されているが、ブラケット10の背面にベース板25が当接するように、留め具24を配置して、係合穴11に対して後側からフック部18を挿入してもよい。
【0054】
また、留め具24では、傾斜板35を備え、この傾斜板35とフック部18の端部18aとを当接させることで、フック部18の位置を拘束しているが、フック部18に当接する第1当接部は、平面に限定されず、湾曲面でもよく、点状のものでもよく、その他の形状のものでもよい。要は、フック部18に当接して、ボルト本体16の第2方向とは、反対側への傾倒を防止することができればよい。
【0055】
また、留め具24では、一対の立上り部32を備え、この立上り部32とフック部18の端部18aとを当接させることで、フック部18の位置を拘束しているが、フック部18に当接する第2当接部は、平面に限定されず、湾曲面でもよく、点状のものでもよく、その他の形状のものでもよい。要は、フック部18に当接して、ボルト本体16の第3方向への傾倒を防止することができればよい。また、第2当接部は、車幅方向において一方のみに配置されているものでもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、バッテリ4の前側及び後側にフックボルト13,14を配置しているが、フックボルトを1本のみ備える構成でもよい。また、フックボルトは、バッテリ4の車幅方向外側に配置されていてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、フック部保持爪34は、係合穴11の内部で、フック部18を支持する構成としているが、係合穴11の前側、又は係合穴11の後側で、フック部18を支持するものでもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…バッテリ固定構造、2…バッテリ固定用フックボルト保持構造、4…バッテリ、10…ブラケット、11…係合穴(開口部)、14…フックボルト、16…ボルト本体、18…フック部、24…留め具、25…ベース板、26…挟持板(側壁)、32…立上り部(第2当接部)、34…フック部保持爪(支持片)、35…傾斜板(第1当接部)、X…車幅方向(第3方向)、Y…前後方向(第2方向)、Z…上下方向(第1方向)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6