(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに接して積層された易剥離樹脂からなる易剥離樹脂層とポリエチレンテレフタレート層と、前記易剥離樹脂層と前記ポリエチレンテレフタレート層とを挟んで積層された内層と外層と、を有し、前記易剥離樹脂層と前記ポリエチレンテレフタレート層との層間で剥離する包装材であり、
前記易剥離樹脂が、ポリプロピレンエラストマーの無水マレイン酸グラフト共重合体であって、230℃におけるMFRが10g/10分〜15g/10分、密度が0.85g/cm3〜0.90g/cm3、融点が150℃〜160℃、引張破断強度が12MPa以上20MPa以下、引張破断点伸度が640%を超えることを特徴とする包装材。
前記蓋材の、前記裏ハーフカットにより形成される前記開口部を部分的に又は全体的に囲む位置に、前記外層と、前記外層に積層されている前記易剥離樹脂層或いは前記ポリエチレンテレフタレート層とを、前記内層と、前記内層に積層されている前記ポリエチレンテレフタレート層或いは前記易剥離樹脂層とから剥離するための表ハーフカットが形成されていることを特徴とする請求項5に記載の包装体。
前記包装材の、前記裏ハーフカットにより形成される前記開口部を部分的に又は全体的に囲む位置に、前記外層と、前記外層に積層されている前記易剥離樹脂層或いは前記ポリエチレンテレフタレート層とを、前記内層と、前記内層に積層されている前記ポリエチレンテレフタレート層或いは前記易剥離樹脂層とから剥離するための表ハーフカットが形成されていることを特徴とする請求項7に記載の包装体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の包装材は、加熱殺菌処理に耐える耐熱性、及び、開封時の易開封性に優れているものの、リシール性は備えていない。また、上記特許文献2の包装材は、易開封性とリシール性とに優れているものの、耐熱性を備えておらず、加熱殺菌処理には適していない。
【0006】
本発明の課題は、加熱殺菌処理に耐える耐熱性と、易開封性、リシール性を兼ね備えた包装体、及び該包装体のための包装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一は、互いに接して積層された易剥離樹脂からなる易剥離樹脂層とポリエチレンテレフタレート層と、前記易剥離樹脂層と前記ポリエチレンテレフタレート層とを挟んで積層された内層と外層と、を有し、前記易剥離樹脂層と前記ポリエチレンテレフタレート層との層間で剥離する包装材であり、
前記易剥離樹脂が、ポリプロピレンエラストマーの無水マレイン酸グラフト共重合体であって、230℃におけるMFRが10g/10分〜15g/10分、密度が0.85g/cm
3〜0.90g/cm
3、融点が150℃〜160℃、引張破断強度が12MPa以上20MPa以下、引張破断点伸度が640%を超えることを特徴とする。
【0008】
本発明第一の包装材においては、下記の構成を好ましい態様として含む。
前記易剥離樹脂において、無水マレイン酸の含有量が3質量%以下である。
前記内層が、少なくとも最外層としてシーラント層を有する。
前記シーラント層が無延伸ポリプロピレンである。
【0009】
本発明の第二は、容器の開口が蓋材で覆われ、前記蓋材の周縁部が前記容器の開口にシールされて内部が密封された包装体であって、
前記蓋材が、上記本発明の包装材であって、前記内層と、前記内層に積層されている前記ポリエチレンテレフタレート層或いは前記易剥離樹脂層と、に開口部を形成するための裏ハーフカットが形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明第二の包装体においては、前記蓋材の、前記裏ハーフカットにより形成される前記開口部を部分的に又は全体的に囲む位置に、前記外層と、前記外層に積層されている前記易剥離樹脂層或いは前記ポリエチレンテレフタレート層とを、前記内層と、前記内層に積層されている前記ポリエチレンテレフタレート層或いは前記易剥離樹脂層とから剥離するための表ハーフカットが形成されていることを好ましい態様として含む。
【0011】
本発明の第三は、袋状とした包装材の互いに重なる端部同士がシールされることにより内部が密封された包装体であって、
前記包装材が、上記本発明の包装材であって、前記内層と、前記内層に積層されている前記ポリエチレンテレフタレート層或いは前記易剥離樹脂層と、に開口部を形成するための裏ハーフカットが形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明第三の包装体においては、前記包装材の、前記裏ハーフカットにより形成される前記開口部を部分的に又は全体的に囲む位置に、前記外層と、前記外層に積層されている前記易剥離樹脂層或いは前記ポリエチレンテレフタレート層とを、前記内層と、前記内層に積層されている前記ポリエチレンテレフタレート層或いは前記易剥離樹脂層とから剥離するための表ハーフカットが形成されていることを好ましい態様として含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明の包装材は耐熱性に優れているため、該包装材を用いた包装体にレトルト処理を施しても、密封性が損なわれる恐れがない。また、本発明の包装材の易剥離樹脂層とポリエチレンテレフタレート層とは、レトルト処理前後のいずれにおいても、良好に層間剥離するため、包装体において内側に位置する層、即ち、内層と、ポリエチレンテレフタレート層或いは易剥離樹脂層と、に開口部を形成するための裏ハーフカットを形成しておくことで、包装体を容易に開封することができる。さらに、本発明の包装材の剥離樹脂層とポリエチレンテレフタレート層とは、レトルト処理前後のいずれにおいても、良好なリシール性を備えており、一旦開封した開口部を塞いで包装体を再び封止することができる。
【0014】
よって、本発明によれば、開封後にリシールして保存可能なレトルト食品の包装体が提供される。また、本発明の包装体は、レトルト食品に限らず、開封とリシールを繰り返す物品に好ましく適用される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明するが、本発明は下記実施形態に限定されない。また、以下に参照する図面において、同じ符号は同様の構成要素を示す。
【0017】
図1に、本発明の包装材の積層構造の一実施形態の断面模式図を示す。
図1に示すように、本発明の包装材1は、互いが接するように積層された易剥離樹脂層12とポリエチレンテレフタレート(PET)層13とを有している。そして、本発明では、易剥離樹脂層12とPET層13とを挟んで、外層11と内層14とが積層されている。
図1の例では、易剥離樹脂層12の外側に外層11を、PET層13の外側に内層14を積層した構成を示しているが、易剥離樹脂層12の外側に内層14を、PET層13の外側に外層11を積層しても良い。
【0018】
本発明の包装材1においては、後述するように、易剥離樹脂層12とPET層13とはその界面1cにおいて層間剥離し、剥離後に再接着する。ここで、便宜上、
図1の外層11と易剥離樹脂層12とを外層材1a、PET層13と内層14とを内層材1bと呼ぶ。尚、易剥離樹脂層12の外側に内層14を、PET層13の外側に外層11を積層した場合には、外層11とPET層13とが外層材1aに、易剥離樹脂層12と内層14とが内層材1bとなる。
【0019】
本発明の包装体は、本発明の包装材1を用いて構成される。具体的には、本発明の包装材1は、別途用意された容器の開口部を覆う蓋材として用いられる他、それ自体を折り畳んで、或いは、2枚重ねて袋状にして用いられる。いずれの場合にも、内層14が包装体の内側に、外層11が外側に配置するように用いる。
【0020】
本発明の包装材1の外層11としては、PET、ポリプロピレン(PP)、ナイロンなどの樹脂フィルムや、紙、アルミニウム箔などの金属箔や金属蒸着膜などを単独で、或いは複数を組み合わせて用いることができる。特に、金属箔や金属蒸着膜を用いることで、水蒸気や芳香剤などからの香気に対して高いバリア性を付与することができる。また、最外層に印刷層を設けたり、最外層を透明な樹脂層としてその内側に印刷層を設けたりしても良い。尚、易剥離樹脂層12或いはPET層13に積層する側には、易剥離樹脂層12或いはPET層13と接着性の高い層を配置することが望ましい。
【0021】
易剥離樹脂層12は、PET層13と層間剥離し、剥離後に再接着しやすい易剥離樹脂から形成される。本発明に係る易剥離樹脂は、ポリプロピレン(PP)エラストマーの無水マレイン酸グラフト共重合体であって、230℃におけるMFRが10g/10分〜15g/10分、密度が0.85g/cm
3〜0.90g/cm
3、融点が150℃〜160℃、引張破断強度が12MPa以上20MPa以下、引張破断点伸度が640%を超える重合体である。本発明では、上記易剥離樹脂を用い、上記積層構成とすることにより、レトルト処理に耐える耐熱性と熱封緘性が得られ、レトルト処理前後のいずれにおいても易剥離樹脂層12とPET層13との間で良好な易剥離性とリシール性とが得られる。
【0022】
本発明に係る易剥離樹脂は、PPエラストマーに無水マレイン酸をグラフト重合してなる共重合体である。PPエラストマーはそれ自体ではPET樹脂との接着性はないが、無水マレイン酸をグラフト重合することにより、PPエラストマーに極性を持たせ、PET樹脂との接着性を付与することができる。
【0023】
PPエラストマーに無水マレイン酸をグラフト重合させる方法としては、種々の公知の方法が挙げられる。例えば、プロピレン共重合体主鎖を加熱して溶融させ、得られた溶融物にグラフトする重合性単量体及びラジカル重合開始剤を添加し攪拌することによりグラフト重合させる方法;或いは、各成分を押出機に供給して加熱混練しながらグラフト重合させる方法が挙げられる。具体的にはPPエラストマーと、脂肪族飽和炭化水素樹脂と、分岐状低密度ポリエチレン(LDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と、無水マレイン酸とを適当な配合比で二軸押出機に投入し、各バレルごとに160℃〜220℃の範囲で設定し、混練時の樹脂温度が200℃となるように加熱しながら混練してグラフト重合を行うことで得られ、後述する本発明の実施例で用いた易剥離樹脂はこの方法で得たものである。
【0024】
上記樹脂の配合比としては、例えば、後述する本発明の実施例で用いた易剥離樹脂では、PPエラストマー60質量%、脂肪族飽和炭化水素樹脂20質量%、LDPE樹脂17質量%、無水マレイン酸3質量%である。尚、無水マレイン酸の配合量は好ましくは全体の3質量%以下である。
【0025】
本発明の包装材1の内層14は、最外層、即ち包装体とした時に最も内側に配置する層として、シーラント層を備えていることが望ましい。係るシーラント層は、レトルト処理における耐熱性を有する素材で構成され、具体的には、PPが挙げられ、特に、無延伸PP(CPP)が好ましく用いられる。内層14は、上記シーラント層単独であっても、最外層に上記シーラント層を備え、PET層13側に、他の樹脂層等を備えていても良い。
【0026】
本発明の包装材1において、外層11の好ましい厚さは32μm〜50μmであり、32μm未満では正常な開封が難しくなり、50μmを超えると、品質上は問題がないが、コストが増加するため好ましくない。また、易剥離樹脂層12の好ましい厚さは15μm〜25μmであり、15μm未満では、ラミネート加工及び抜き加工の精度維持が難しくなり、25μmを超えるとコストが増加する。また、PET層13の好ましい厚さは8μm〜12μmであり、8μm未満ではラミネート加工等が難しくなる。さらに、内層14の好ましい厚さは20μm以上であり、20μm未満では適当なシール強度が得られなくなる。
【0027】
尚、本発明の包装材1においては、易剥離樹脂層12、PET層13と、これらに積層される外層11,内層14との間に、別途接着剤層を介在させてもかまわない。
【0028】
本発明の包装材1は、押出ラミネートによって好ましく製造される。具体的には、先ずPET層13と、内層14或いは外層11と、の積層体を形成し、次いで、該積層体と、外層11或いは内層14とを、これらの間に、易剥離樹脂を押し出しながらサンドラミネートすることで製造することができる。
【0029】
次に、本発明の包装体について説明する。本発明の包装体は、上記した本発明の包装材1によって、被包装体を包装して得られ、具体的には、本発明の包装材1を蓋材として用い、別途用意した容器に該蓋材をシールした第一の包装体と、本発明の包装材1を袋状とし、互いに重なる端部同士をシールした第二の包装体とが挙げられる。
【0030】
先ず、本発明の第一の包装体について
図2〜
図6を用いて説明する。本発明の第一の包装体は、本発明の包装材1を蓋材として用いる。以下、
図2〜
図6において、蓋材は符号1で示す。また、以下の実施形態には、包装材1として、
図1に示した、易剥離樹脂層12の外側に外層11を、PET層13の外側に内層14を積層した構成を用いた例を示すが、包装材1としては、易剥離樹脂層12の外側に内層14を、PET層13の外側に外層11を積層した構成でも良い。
【0031】
本発明に用いられる容器2は、開口部にフランジを有し、該フランジに蓋材1の周縁部がシールされる。図中の4はシール部である。シールに際しては、容器2側に蓋材1の内層材1b側が配置され、シール方法としては特に限定されないが、内層14にシーラント層を持たせておくことにより、ヒートシールすることができ、好ましい。また、容器2としては各種の樹脂が用いられるが、内層14のシーラント層が良好に熱融着しうる素材が好ましい。具体的には、内層14がシーラント層としてCPP層を備え、容器2がPPからなることが好ましい。
【0032】
本発明においては、前記蓋材1の内層材1b、即ち、
図1に示したPET層13と内層14とに開口部5が形成されるように、蓋材1に裏ハーフカット3を形成しておく。具体的には、外層11及び易剥離樹脂層12を残して、開口部3の形状にPET層13と内層14のみを切断する。また、
図2の例では、蓋材1に開封時に指でつまんで引っ張るように、容器2より突出したタブ1dを設けており、係るタブ1dと容器2の端部との境界に沿って、裏ハーフカット3を形成している。このように、内層材1bに裏ハーフカット3を形成しておくことにより、開封時にタブ1dを指でつまんで蓋材1が容器2から離れるように引っ張り上げると、
図3に示すように、内層材1bのPET層13と外層材1aの易剥離樹脂層12とが境界1cにおいて層間剥離し、タブ1dと開口部5においては内層材1bが外層材1aと共に引っ張り上げられ、開口部5が開放されて容器2内に収納された被包装体(不図示)を取り出すことができる。
【0033】
また、
図3に示すように、蓋材1を開封した状態では、タブ1dと開口部5以外の領域では内層材1bが容器2側に残され、内層材1bのPET層13が露出した状態で容器2の開口を覆っている。本発明においては、蓋材1の易剥離樹脂層12とPET層13とが良好な接着性を有しているため、一旦引っ張り上げた外層材1aを再び容器2側に戻すと、開口部5の周囲において、一旦剥離した易剥離樹脂層12とPET層13とが再接着し、蓋材1が開口部5を塞いだ状態で固定(リシール)される。
【0034】
本発明において、開口部5を形成するための裏ハーフカット3は、
図2(a)に示すようなループ状の閉じられた線状に形成する必要はなく、開口部5が形成されれば非ループ状でもかまわない。例えば、
図4(a)に示すように、開口部5を囲むU字状に形成することができる。
【0035】
また、
図4の例では、
図2の例のようなタブ1dを設けず、蓋材1に、外層材1aを部分的に剥離して開口部を形成するための表ハーフカット6を形成している。表ハーフカット6は、開口部5を部分的に囲む位置、即ち
図4の例では裏ハーフカット3よりもシール部4に近い位置に、外層材1aのみを切断して設けられる。このような構成で、表ハーフカット6に囲まれた領域の端部(
図4(a)においては紙面右側)において外層材1aをめくって容器2から離れる方向に引っ張り上げると、
図5に示すように、裏ハーフカット3に囲まれた領域の内層材1aが外層材1bと共に引っ張り上げられて開口部5が開放される。また、開口部5の周囲には、裏ハーフカット3と表ハーフカット6との間の領域に内層材1bが残されてPET層13が露出しているため、引っ張り上げられた外層材1aを再び容器2側に戻し、開口部5を蓋材1で覆うと、開口部5の周囲において、一旦剥離した易剥離樹脂層12とPET層13とが再接着し、蓋材1が開口部5を塞いだ状態で固定される。
【0036】
尚、表ハーフカット6は、開口部5全体を囲んでもかまわないが、
図4のように、一部を残して部分的に開口部5を囲むことで、開封時に外層材1aの剥離した部分が該一部において剥離されていない部分と繋がり、リシールし易くなるため好ましい。
【0037】
図6は、表ハーフカット6の他の形成例であり、
図2の形態において、開口部5を部分的に囲む位置に表ハーフカット6を設けた形態である。
【0038】
本発明において、開口部5や裏ハーフカット3の形状、位置は
図2〜
図6の形態に限定されない。開口部5は、所望の位置に所望の形状、大きさで形成することができ、2以上形成しても良い。また、裏ハーフカット3は開口部5の位置や大きさに応じて、
図2(a)のようなループ状或いは
図4(a)のような非ループ状が選択される。また、必要に応じて、
図4,
図6に示したような外層材1a側の表ハーフカット6が形成される。
【0039】
次に、本発明の第二の包装体について
図7,
図8を用いて説明する。本発明の第二の包装体は、本発明の包装材1のみを包装材として用いる。
【0040】
本発明の第二の包装体は、
図7に示すように、本発明の包装材1を袋状とし、互いに重なる端部同士をシールして内部を密封してなる。従って、シールする対象が同じ包装材1である点以外は、本発明の第一の包装体と構成は同じである。
【0041】
本発明の包装材1を袋状とするためには、
図7に示すように、同じ大きさ、形状の2枚の包装材1を用意して重ね合わせるか、或いは、1枚の包装材1を折り畳めばよい。尚、1枚の包装材1を折り畳む際には、中央を折り部として二つ折りで折り畳んでもよいが、端部同士をシールできる範囲で重ねた巻三つ折りとしてもよい。後者の場合、シールした側とは内部に収納した被包装体を挟んで相対する側に開口部5を設ける。
【0042】
本発明のおいては、包装材1のみを用いているため、シール部4においては、
図1の内層14同士がシールされる。よって、包装材1としては、内層14の最外層にシーラント層を備えていることが望ましい。
【0043】
図7の例では、前記した第一の包装体と同様に、シール部4から突出するタブ1dを互いにシールした包装材1,1の一方に設けている。そして、タブ1dの根本と、開口部5を形成する位置に、内層材1bを切断する裏ハーフカット3が形成されている。よって、一方の包装材1(
図7(b)、(c)においては紙面上方側)に形成されたタブ1dを、他方の包装材1から離れる方向に引っ張ることによって、
図7(c)に示すように、開口部5とタブ1d以外の領域では外層材1aと内層材1bとが界面1cにおいて層間剥離し、開口部5とタブ1dにおいては開口部5の内層材1bが外層材1aと共に引っ張られて開口部5が開放される。そして、開口部5の周囲においては、内層材1bのPET層13が露出しているため、再び一方の外層材1aを戻して開口部5を塞ぐと、開口部5の周囲において、一旦剥離した外層材1aの易剥離樹脂層12と、内層材1bのPET層13とが再接着して固定される。
【0044】
本発明においても、第一の包装体と同様に、必要に応じて、外層材1aに表ハーフカット6を形成しても良い。
図8は、
図4の第一の包装体と同様に、開口部5を非ループ状とし、開口部5を部分的に囲む位置、
図8においては裏ハーフカット3よりもシール部4に近い位置に、外層材1aを部分的に剥離して開口部を形成するための表ハーフカット6を形成した例である。開封、リシールの方法は、
図4の第一の包装体と同様である。また、
図7の包装体に、
図6に示した第一の包装体と同様の開口部5を部分的に又は全体的に囲む表ハーフカット6を形成しても良い。
【0045】
本発明においても、第一の包装体と同様に、開口部5は、所望の位置に所望の形状、大きさで形成することができ、2以上形成しても良い。また、裏ハーフカット3は開口部5の位置や大きさに応じて、
図7(a)のようなループ状、
図8(a)のような非ループ状のいずれでも良い。また、必要に応じて
図8(a)に示したような外層材1a側の表ハーフカット6が形成される。
【実施例】
【0046】
本発明の包装材1の実施例として、
図1の構成の包装材を作製した。得られた包装材1を用いて、レトルト前後で25mmT字剥離試験を行った。また、得られた包装材1を蓋材として容器にシールして包装体とし、レトルト前後で45°剥離試験を行った。
【0047】
〔包装材の構成〕
外層11:厚さ12μmのPET層/厚さ20μmCPP層
易剥離樹脂層12:厚さ20μm
PET層13:厚さ12μm
内層14:厚さ20μmのCPP層
【0048】
〔樹脂材料〕
PET:東洋紡株式会社製「エスペットE5100」
CPP:東洋紡株式会社製「パイレンP1128」
易剥離樹脂:PPエラストマー60質量%、脂肪族飽和炭化水素樹脂20質量%、LDPE樹脂17質量%、無水マレイン酸3質量%からなるPPエラストマーの無水マレイン酸グラフト共重合体。230℃におけるMFRが10g/10分、密度が0.88g/cm
3、融点が155℃、引張破断強度が12MPa、引張破断点伸度が640%を超える。
【0049】
〔包装材の製造〕
ドライラミネータを使用し、ドライラミネート接着剤(三井化学株式会社製ポリウレタン接着剤、主剤:タケラックA−310,硬化剤:タケネートA−3)の塗布量が3.0g/m
2〜3.5g/m
2となるように設定し、PET層とCPP層とをドライラミネート接着剤を介してドライラミネートし、外層11を形成した。
【0050】
次いで、ドライラミネータを使用し、ドライラミネート接着剤の塗布量が3.0g/m
2〜3.5g/m
2となるように設定し、PET層13と内層14とを上記ドライラミネート接着剤を介してドライラミネートし、PET層13と内層14との積層体を得た。
【0051】
押出ラミネータを使用し、PET層13と内層14との積層体のPET層13と、外層11のCPP層とを対向させ、間に易剥離樹脂を押し出してサンドラミネートし、包装材1を得た。
【0052】
〔25mmT字剥離試験〕
上記包装材1を、縦100mm、横25mmに切り出し、試験片とし、25mmT字剥離試験を行った。25mmT字剥離試験は、JIS Z−1707の「7.5ヒートシール強さ」を評価方法として、上記試験片の易剥離樹脂層12とPET層13との層間をT字剥離(つかみの速度:300mm/min)して強度を測定し、6枚の試験片についての平均強度を剥離強度とした。試験は以下の4条件で行った。結果を表1に示す。
【0053】
(1)上記試験片を用いて、上記25mmT字剥離試験を行い、レトルト前の剥離強度を測定した。
【0054】
(2)上記試験片に120℃で30分のレトルト処理(含気スプレー法)を施した後、25mmT字剥離試験を行い、レトルト後の剥離強度を測定した。
【0055】
(3)上記試験片を、易剥離樹脂層12とPET層13との界面で剥離し、易剥離樹脂層12とPET層13とを再接着させた後、外層11の側からJIS R6235に準じて手動式圧着装置(専用ロール2kg)を押し当てながら20mm/秒の速度で2往復させ、その後、25mmT字剥離試験を行って剥離強度を測定し、測定値をレトルト前のリシール強度とした。
【0056】
(4)上記試験片に120℃で30分のレトルト処理を施した後、易剥離樹脂層12とPET層13との界面で剥離し、易剥離樹脂層12とPET層13とを再接着させた後、外層11の側からJIS R6235に準じて手動式圧着装置(専用ロール2kg)を押し当てながら20mm/秒の速度で2往復させ、その後、25mmT字剥離試験を行って剥離強度を測定し、測定値をレトルト後のリシール強度とした。
【0057】
〔45°剥離試験〕
PP製で開口部の直径が80.1mm、フランジの幅が7mm、容積が130mlの容器に水を充填し、シール幅を7mmとして、上記包装材1を蓋形状に打ち抜いた蓋材を、165℃、0.5MPa、1.5秒の条件でヒートシールし、包装体を得、該包装体の蓋材の45°剥離試験を行った。蓋材の45°剥離試験は、易剥離樹脂層12とPET層13との層間の剥離強度をオートグラフにより、剥離角度45°、剥離速度300mm/minにて測定し、6個の包装体についての平均強度を剥離強度とした。試験は以下の4条件で行った。結果を表1に示す。
【0058】
(1)上記包装体を用いて蓋材の45°剥離試験を行い、レトルト前の剥離強度を測定した。
【0059】
(2)上記包装体に120℃で30分のレトルト処理(含気スプレー法)を施し、1日置いた後、蓋材の45°剥離試験を行い、レトルト後の剥離強度を測定した。
【0060】
(3)上記包装体の蓋材を指で半分程度剥がし、再び手で押さえて再接着させた後、蓋材の45°剥離試験を行って剥離強度を測定し、測定値をレトルト前のリシール強度とした。
【0061】
(4)上記包装体に120℃で30分のレトルト処理(含気スプレー法)を施し、1日置いた後、蓋材を指で半分程度剥がし、再び手で押さえて再接着させた後、蓋材の45°剥離試験を行って剥離強度を測定し、測定値をレトルト後のリシール強度とした。
【0062】
【表1】
【0063】
上記包装材、包装体のいずれにおいても、レトルト処理によって、易剥離樹脂層12とPET層13との間で浮きなどは生じていなかった。
【0064】
上記包装材の剥離強度、リシール強度はいずれも0.1N〜3.0Nであること、また、上記包装体の剥離強度は1.0N〜10.0N、リシール強度は0.1N〜3.0Nであることが易剥離樹脂層12とPET層13との接着強度及び易剥離性の点から好ましい。
【0065】
本発明の包装材、包装体は、上記したように、レトルト前後でいずれも易剥離樹脂層12とPET層13との層間での剥離強度、リシール強度が上記の好ましい範囲内であり、剥離前には易剥離樹脂層12とPET層13とが良好な接着強度を有し、易剥離性、リシール性にも優れていることがわかった。
【0066】
また、本発明の包装材、包装体は、レトルト前後で剥離強度、リシール強度が高くなっており、レトルト工程によって、易剥離樹脂層12とPET層13との接着性が低下しないことがわかった。