(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
誘電体により形成された第1の長さの第1筒体を、互いに隣接する第1筒体の隣接部の壁部が隣接する第1筒体の間で共通となり、且つ前記第1筒体の開口端の各々が平面状に並ぶように複数個隣接配列されて平板状に形成された基板部、
及び誘電体により形成された前記第1の長さより長い第2筒体を、互いに隣接する第2筒体の隣接部の壁部が隣接する第2筒体の間で共通となり、且つ前記第2筒体の開口端の各々が予め定められた平面形状で並ぶように複数個隣接配列され、前記基板部の表面から前記予め定められた平面形状で突出するように前記基板部に結合された凸状部を備えた電波透過部と、
前記凸状部の側面を覆うと共に、前記凸状部の突出側の前記第2筒体の開口端、及び前記基板部の前記凸状部が突出した面側の前記第1筒体の開口端の各々を閉塞して、前記電波透過部を被覆する被覆シートと、
前記電波透過部を収容し、一方の開口端が、前記基板部の前記凸状部と反対側の面により閉塞された枠体と、
を含む電波透過部品。
前記第2筒体は、前記基板部を形成している前記第1筒体と前記第1筒体より開口端の大きさが小さく、長さが前記凸状部の突出高さの長さの第3筒体とからなり、前記凸状部は、互いに隣接する前記第3筒体の隣接部の壁部が隣接する第3筒体の間で共通となり、且つ前記第3筒体の開口端の各々が前記予め定められた平面形状で並ぶように複数個隣接配列されて形成され、前記基板部側の開口端を覆って前記第3筒体を補強する補強シートを介して、前記第1筒体が形成する前記基板部に結合された請求項2記載の電波透過部品。
前記基板部の周囲と前記枠体との間、及び前記凸状部の周囲と前記凸状部を被覆する前記被覆シートとの間に、内部に複数の空洞部を有する誘電体が充填された請求項1から請求項4の何れか1項記載の電波透過部品。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。なお、以下の説明では、一例として電波透過部品を車両に設けて説明する。
【0036】
〔第1の実施の形態〕
図1には、第1の実施の形態に係る電波透過部品10、及びレーダ装置12を示している。レーダ装置12は、図示しない車両の前部に設けられて、例えば、車両前方へ向けて予め定められた周波数の電波を放射する。レーダ装置12は、一例としてミリ波帯と呼ばれる周波数帯(30GHz〜300GHz)のうちで76GHzの周波数(周波数f=76GHz、空気中の波長λ≒3.9mm)の電波を用いる。なお、以下の説明においては、一例として、空気中の電波の波長λを、λ=3.9mmとして説明する。
【0037】
レーダ装置12は、例えば、車両前方へ放射して対象物で反射された電波を受信し、受信した電波を解析することで、対象物との距離、対象物の相対速度、及び対象物との距離と対象物の方向などの車両前方情報を取得する。また、レーダ装置は、例えば、車両に設けられる運転支援システム等に接続され、乗員への車両前方情報の報知、車両前方情報に応じた車両に対する各種の運転制御等に用いられる。
【0038】
なお、レーダ装置12及びレーダ装置12を用いる運転支援システムは、公知の構成を適用でき、以下では、説明を省略する。また、以下では、図示しない車両の前方側を矢印FRで示し、レーダ装置12は、図示しないアンテナから車両前方へ向けて電波を放射するものとして説明する。また、レーダ装置12は、予め定められた角度範囲で電波を放射するものとし、電波の放射範囲の中心を放射方向という。また、以下の説明においては、一例として車両前方(矢印FR方向)を電波の放射方向とし、電波の伝搬経路が電波の放射方向に沿うものとしている。
【0039】
レーダ装置12が設けられる車両は、例えば、フロントグリルに、レーダ装置12から放射される電波の通過用となる開口が形成される。電波透過部品10は、フロントグリルに形成された電波通過用の開口を閉塞するように取り付けられことで、レーダ装置12の電波の伝搬経路上に配置される。電波透過部品10は、フロントグリルの開口を閉塞するように取り付けられることにより、車両内部に設けているレーダ装置12を隠蔽する隠蔽部品として機能する。また、電波透過部品10は、車両のフロントグリル等に取り付けられることにより、意匠部品として機能する。
【0040】
図2には、第1の実施の形態に係る電波透過部品10の要部の断面を示している。
図1及び
図2に示すように、電波透過部品10は、枠体14を備える。枠体14は、例えば、樹脂又は金属が用いられて、所定厚さの筒体形状に形成されている。また、電波透過部品10は、枠体14の開口が車両前後方向へ向けられるように車両に取り付けられる。レーダ装置12から放射された電波は、枠体14内を通過する。第1の実施の形態では、一例をして断面形状が楕円形状に形成された枠体14を用いている。なお、枠体14の断面形状は、電波透過部品10が形成する意匠に応じた任意の形状を適用することができ、また、枠体14の大きさ(断面寸法)は、レーダ装置12から車外への電波の放射範囲に対応する大きさとなっている。
【0041】
図2に示すように、枠体14の内部には、意匠部材16が設けられている。意匠部材16は、枠体14の内形形状に応じた外形形状となる平板状の基板部18、及び基板部18の一方の面から突出された凸状部20により形成されている。第1の実施の形態において意匠部材16は、電波透過部の一例として機能し、基板部18は、基板部の一例として機能し、凸状部20は、凸状部の一例として機能する。なお、以下の説明では、枠体14の軸線方向を、枠体14の高さ方向とし、意匠部材16の凸状部20の突出方向を、意匠部材の高さ方向として説明する。
【0042】
意匠部材16は、電波透過部品10を車両に取り付けた際、高さ方向が枠体14の高さ方向に沿い、基板部18が伝搬方向と交差するように配置され、且つ凸状部20がレーダ装置12と反対方向である車両前方側へ向けられて枠体14に取り付けられる。即ち、電波透過部品10は、一例として意匠部材16の高さ方向が車両前後方向に沿い、凸状部20が車両前方へ向けられて取り付けられる。
【0043】
意匠部材16は、基板部18が、枠体14のレーダ装置12側(車両前方方向と反対側)の端部を閉塞するように配置されて枠体14に収容されている。また、枠体14は、高さが、意匠部材16の高さより高くなっている。これにより、意匠部材16は、枠体14内に収容されるように取り付けられることで、枠体14の外方(意匠部材16の横方向)からの荷重(外力)に対して枠体14により保護されている。
【0044】
図1に示すように、意匠部材16に形成される凸状部20としては、例えば、車両前方側から見た平面視で、各種の文字、図形、模様、及びシンボルマークなどが用いられて、予め定めた立体的な意匠が得られるように形成されている。電波透過部品10は、凸状部20を、車両のメーカー、車種、又はグレード等を特定可能な予め定められた形状とすることで、所謂エンブレムとして機能する。
【0045】
図3(A)及び
図3(B)には、第1の形態に係る意匠部材16の要部を示している。
図3(B)に示すように、意匠部材16の基板部18及び凸状部20は、例えば、六角形状の筒体22を複数配列した形状のハニカム構造体24が用いられている。第1の実施の形態では、ハニカム構造体24を用いて、基板部18及び凸状部20を形成している。第1の実施の形態において、基板部18から凸状部20に連続する筒体22は、第2筒体の一例として機能する。また、第1の実施の形態において、凸状部20の周囲で基板部18を形成する筒体22は、第1筒体の一例として機能する。なお、第1の実施の形態では、一例として六角形状の筒体22を配列した形状とするが、これに限らず、三角形以上の多角形状の筒体を配列した形状を適用しても良い。
【0046】
ハニカム構造体24は、互いに隣接する筒体22の間が誘電体により形成された壁部26により区画されることで、六角形状の筒体22が形成されている。即ち、ハニカム構造体24は、誘電体を用いて形成される筒体22の開口端が平面状となるように複数の筒体22が配列された形状となっている。筒体22を形成する壁部26は、誘電体として、例えば、ポリカーボネイト、ポリエチレン等の合成樹脂が用いられ、厚さが、例えば、電波の波長λの1/20以下となる100μm以下のフィルム状に形成されている。なお、壁部26は、例えば、波長λに対してλ/20以下の厚さであることが好ましい。
【0047】
基板部18は、表面の各々に筒体22が開口された平板形状に形成されている。また、凸状部20は、表面の各々に筒体22が形成されて、筒体22の開口方向側から見た平面形状、及び突出高さが、電波透過部品10に形成される意匠に基づいて定められている。
図3(B)に示すように、基板部18と凸状部20は、筒体22が連続するように形成されている。意匠部材16は、例えば、予め定められた大きさのブロック状のハニカム構造体24を切削することで、基板部18及び凸状部20が一体に形成されても良い。また、意匠部材16は、例えば、2つのブロック状のハニカム構造体24を用い、一方のハニカム構造体24のブロックから基板部18を作成し、他方のハニカム構造体24のブロックから凸状部20を作成し、基板部18の筒体22の開口と、凸状部20の筒体22の開口とを重ねるように、基板部18に凸状部20を接合するなどの手法で形成されても良い。
【0048】
図2に示すように、意匠部材16は、筒体22の各々の開口が電波の放射方向(矢印FR方向)へ向けられるように基板部18及び凸状部20が枠体14に取り付けられる。即ち、意匠部材16は、筒体22の高さ方向が電波の放射方向に沿い、平板状の基板部18の横方向が車両の前後方向と交差する方向に沿うように取り付けられる。
【0049】
図3(B)に示すように、意匠部材16は、ハニカム構造体24を枠体14の内面形状に合わせて切断する際、筒体22の一部の壁部26が除かれることで、枠体14との間に空間(空隙)が生じる。また、意匠部材16は、ハニカム構造体24により凸状部20を形成する際、凸状部20の周縁部の筒体22の一部の壁部26が除かれることで、筒体22が開放される。
【0050】
ハニカム構造体24は、枠体14との間に生じた空隙、及び凸状部20の周縁部の開放された筒体22により形成される空間を埋めるように、発泡スチロール、発布ポリエチレン等の多孔質誘電体を用いた充填材28が充填される。第1の実施の形態において充填材28は、内部に複数の空洞部を有する誘電体の一例として機能する。充填材28としては、例えば、気泡率90%以上の多孔質誘電体であることが好ましく、例えば、気泡率90%以上の発泡スチロール又は発泡ポリエチレンを用いている。
【0051】
図2に示すように、意匠部材16は、表面が被覆フィルム30により緊密に覆われている。第1の実施の形態において被覆フィルム30は、被覆シートの一例として機能する。被覆フィルム30は、ハニカム構造体24を用いて形成された意匠部材16の表面(基板部18の表面18A側の筒体22の開口端、凸状部20の表面20A側の筒体22の開口端、及び凸状部20の側面20B側に開放された筒体22)を覆い、意匠部材16の表面が微細な凹凸のない滑らかな面となるようにしている。なお、凸状部20は、側面20Bが高さ方向に沿うように形成されても良く、また、側面20Bが高さ方向に対して傾斜されて断面形状が台形状となるように形成されていても良い。
【0052】
意匠部材16は、被覆フィルム30が貼付されることで、各筒体22の車両前方側の開口が閉塞される。また、意匠部材16は、凸状部20の周囲の開放された筒体22内の空間を埋めるように充填材28が充填されていることで、被覆フィルム30の領域30Bが波打ってしまうことがない。これにより、意匠部材16は、ハニカム構造体24を用いた意匠性の向上が図られる。
【0053】
また、意匠部材16の基板部18は、凸状部20と反対側の面(裏面、
図3(B)の紙面下側の面)に補強フィルム32が貼付されている。第1の実施の形態において補強フィルム32は、補強シートの一例として機能する。補強フィルム32は、例えば、ハニカム構造体24に形成される壁部26の下端を接合するように、基板部18に貼付されている。
【0054】
ハニカム構造体24は、高さ方向に対しては、高い強度が得られるのに対して、高さ方向と交差する横方向に対しては、強度が低くつぶれが生じ易い。意匠部材16は、被覆フィルム30及び補強フィルム32を用いてハニカム構造体24の壁部26の各々を連結することで、筒体22に閉断面を形成する。意匠部材16は、ハニカム構造体24の各筒体22に閉断面が形成されることで、基板部18及び凸状部20の高さ方向と交差する方向(横方向)に対する耐荷重力が高められる。
【0055】
一般に、誘電体は、厚さが、波長λの1/20以下であれば、実質的に電波の透過性について無視し得るとされている。ここから、被覆フィルム30及び補強フィルム32は、一例としてポリカーボネイト、ポリエチレンなどの合成樹脂が用いられ、厚さが電波の波長λ=3.9mmに対して1/20以下となる100μm(=0.1mm)のシート状に形成されている。
【0056】
被覆フィルム30は、例えば、凸状部20の表面20Aに対応する領域30A及び側面20Bに対応する領域30Bが、インジウムなどの金属材料を蒸着した金属蒸着膜が形成される。金属蒸着膜は、例えば、厚さが0.01μm〜10μmとなるが、微細な粒子により薄膜が形成されることで、金属粒子の隙間を電波が透過する構造となる。
【0057】
また、被覆フィルム30は、基板部18の表面18Aに対応する領域30Cが黒色、赤色、青色などの金属色以外の有色塗料(顔料)が塗布されて着色される。被覆フィルム30の着色は、例えば、領域30Cに有色塗装を行い、有色塗装部分をマスキングした状態で領域30A、30Bに金属塗装(金属蒸着)を行う等の手法を適用することができる。
【0058】
これにより、意匠部材16は、被覆フィルム30が接合されることで、基板部18が有色塗装され、凸状部20が金属蒸着膜により加飾され、意匠性の向上が図られる。即ち、意匠部材16は、誘電体により形成された骨格構造を被覆フィルム30で覆うことで加飾されて高い意匠性が得られている。
【0059】
一方、
図1及び
図2に示すように、第1の実施の形態に係る電波透過部品10は、一例として枠体14の車両前方側の端部に保護カバー34が取り付けられている。第1の実施の形態において保護カバー34は、保護カバーの一例として機能する。保護カバー34は、例えば、透明ガラス又は透明樹脂などの透明誘電体が用いられる。
【0060】
また、保護カバー34は、例えば、枠体14の車両前方側の開口に嵌め込まれて取り付けられる。これにより、電波透過部品10は、枠体14の意匠部材16の凸状部20側が保護カバー34により閉塞される。第1の実施の形態に係る電波透過部品10は、ハニカム構造体24を用いることで、耐荷重性の高い意匠部材16が形成されており、保護カバー34を省略しても良い。電波透過部品10は、枠体14を保護カバー34により閉塞することで、意匠部材16への汚れの付着等を防止し、意匠部材16の意匠面が保護された状態で車両前方側から視認可能となるようにしている。
【0061】
電波透過部品10は、レーダ装置12から放射される電波が意匠部材16を透過し、意匠部材16を透過した電波がさらに、保護カバー34を透過して、車両前方へ放射される。保護カバー34は、意匠部材16を透過した電波を、車両前方の所定の範囲へ向けて放射されるように、厚さ及び表裏面の湾曲状態が定められて形成されている。なお、保護カバー3は、材料の比誘電率εr、屈折、界面における電波の反射、及び正接損失(tanδ)などを考慮して、厚さ及び表裏面の湾曲状態が定められたものであれば良い。また、保護カバー34は、透明であれば、発泡ガラス又は発泡樹脂が用いられて形成されても良い。
【0062】
このような保護カバー34を設ける場合、枠体14内に収容された意匠部材16の凸状部20の先端(金属蒸着により加飾された表面20A)が当接されて接着されることが好ましい。これにより、保護カバー34は、意匠部材16の凸状部20により支持され、撓みが生じてしまうのが防止されると共に、振動の発生が抑制されている。なお、第1の実施の形態では、一例として凸状部20の表面20Aの全域が保護カバー34に当接するようにしているが、少なくとも一部の凸状部20の表面20Aが当接する構成であれば良い。
【0063】
このように構成された電波透過部品10は、レーダ装置12の電波の伝搬経路上に配置されることで、レーダ装置12から枠体14内に電波が放射され、意匠部材16及び保護カバー34を透過して、車両前方へ放射される。
【0064】
ところで、電波透過部品10は、意匠部材16の基板部18及び凸状部20が、複数の筒体22が配列されたハニカム構造体24を用いて形成され、筒体22の各々が電波の放射方向に沿って開口されて配置されていることで電波の透過する空気層が形成されている。また、意匠部材16は、ハニカム構造体24を形成する壁部26の厚さを、電波の透過性に影響を与えない厚さ(例えば、電波の波長λに対して1/20以下)としているので、電波が壁部26を透過する場合でも、電波の指向性に変化が生じてしまうのが抑えられる。
【0065】
従って、電波透過部品10は、ハニカム構造体24を用い三次元の凹凸形状の意匠部材16を形成することで、電波の屈折が抑えられ、電波の指向性に乱れが生じるのが防止される。
【0066】
また、意匠部材16は、意匠面を形成する被覆フィルム30をハニカム構造体24により支持した形態となっている。これにより、意匠部材16は、被覆フィルム30を用いて形成された意匠面を、車両前方側から入力される荷重に対して、耐荷重性が向上される。従って、電波透過部品10は、ハニカム構造体24を用いて意匠部材16が形成されることで、保護カバー34を用いない形態としても良い。
【0067】
さらに、電波透過部品10は、保護カバー34を設けることで、汚れ等に起因する意匠部材16の意匠性の低下を抑制することができる。この際、電波透過部品10は、枠体14を閉塞する保護カバー34を意匠部材16の凸状部20の先端で支持することで、保護カバー34の耐荷重性を向上させることができる。
【0068】
一方、意匠部材16は、電波の一部がハニカム構造体24の壁部26を透過するが、壁部26が誘電体の薄膜により形成されていても壁部26を透過する電波の量が少ないことがより好ましい。
【0069】
図4(A)には、意匠部材16のハニカム構造体24に形成される一つの筒体22を示し、
図4(B)には、筒体22の要部の概略断面を示している。また、
図4(C)には、意匠部材16の基板部18及び凸状部20の各々に形成される筒体22の概略断面を示している。
【0070】
図4(A)及び
図4(B)において、筒体22の高さをh0、互いに対向する壁部26の間隔を筒体22の開口幅wとし、筒体22の高さ方向に対して角度θで電波が入射された場合を仮定する。なお、
図4(A)及び
図4(B)では、電波の進行方向(伝搬方向)を一点鎖線で示している。
【0071】
角度θで入射された電波が、壁部26を透過せずに筒体22の内部(空洞部分)を通過する場合、開口幅w、高さh0、及び角度θの関係は、w>h0・tanθとなる。例えば、θ=30°、高さh0=3mmとすると、開口幅wは、w>1.732mmとなり、θ=30°、高さh0=20mmの場合、開口幅wは、w>11.54mmとなる。
【0072】
従って、筒体22を開口幅w=1.732mm、高さh0=3mmとした場合、及び開口幅w=11.54mm、高さh0=20mmとした場合は、角度θ=30°以内で電波が入射されることで、角度θ=30°を超えて電波が入射された場合と比べて、壁部26を透過せずに筒体22の内部を透過する電波の量が増加する。
【0073】
また、意匠部材16は、ハニカム構造体24の表面側に被覆フィルム30を貼付し、裏面側に補強フィルム32を貼付している。これにより、意匠部材16は、被覆フィルム30及び補強フィルム32が界面となって、入射された電波の一部に反射が生じ、電波の透過量に減少が生じることがある。なお、
図4(C)では、ハニカム構造体24と被覆フィルム30及び補強フィルム32との境界面を界面とし、各界面で反射せずに意匠部材16を透過する電波を一点鎖線で示し、界面の各々で反射した後に被覆フィルム30を透過する電波を破線で示している。
【0074】
図4(C)において、基板部18の高さ(基板部18を形成する筒体22の高さ)をh1、凸状部20の高さをh2とする。ハニカム構造体24は、誘電体により形成されており、ハニカム構造体24を、比誘電率εrの誘電体と見なした場合、意匠部材16の内部を伝搬する電波の波長λgは、空気中の電波の波長λ、意匠部材16の比誘電率εrから、λg=λ/εr
1/2として表される。
【0075】
意匠部材16を透過する電波は、意匠部材16の表裏両側の界面の各々で反射して、被覆フィルム30を透過した電波と、意匠部材16の界面で反射せずに被覆フィルム30を透過した電波とが、同相となることで干渉が防止され、透過量の減少が抑制される。意匠部材16の表裏両側の界面の各々で反射して透過した電波が、反射していない電波と同位相となって放射されるためには、反射していない電波の伝搬距離と意匠部材16の表裏両側の界面の各々で反射して透過した電波の伝搬距離との距離差dが波長λgに対して、d=n・λg/2であれば良い。但し、n=1、2、・・・(正の整数)とする。また、高さh1、h2と距離差dとは、h1=n・d/2、h2=n・d/2となる。但し、高さh1、h2において、nは、同じでも良く、異なっていても良い。
【0076】
電波透過部品10に用いる意匠部材16は、基板部18の高さh1、及び凸状部20の高さh2が、空気中の電波の波長λ、及び意匠部材16の比誘電率εrに基づいて形成されている。即ち、基板部18は、高さh1が、
h1=n・d/2=n・λ/(2・εr
1/2)=(n・λg)/2 ・・・(1)
に近い値となるように形成されている。但し、nは正の整数とする。
【0077】
また、基板部18の高さh1を、(1)式に近い値としているときに、凸状部20は、高さh2が、
h2=n・d/2=n・λ/(2・εr
1/2)=(n・λg)/2 ・・・(2)
に近い値となるように形成されている。但し、nは正の整数とする。
【0078】
これにより、意匠部材16内で反射せずに透過した電波と意匠部材16の表裏両側の界面の各々で反射して透過した電波とが同相と見なされる状態となり、電波透過部品10は、意匠部材16を透過する電波の透過量の減少が抑制される。なお、同相と見なされるとは、位相差に起因する電波の干渉を無視し得る状態を言う。
【0079】
一方、意匠部材16を形成する各筒体22の内部は空気であるから、筒体22内は、波長λの電波が通過(伝搬)していると見なすことができる。この場合、ハニカム構造体24の筒体22内を伝搬する電波の波長は、波長λgと波長λとが混在するが、各筒体22の厚み(壁部26の厚み)が薄く、その量も少ないため、空気中の電波の波長λと見なすことができる。即ち、第1の実施の形態では、複数の筒体22が配列されたハニカム構造体24を用いることで、意匠部材16の誘電率を空気の誘電率に近づくようにしている(比誘電率εrを1に近づくようにしている)。
【0080】
ここから、基板部18は、高さh1が、
h1=n・d/2=n・λ/2 ・・・(3)
に近い値となるように形成されていても良い。但し、nは正の整数とする。
【0081】
また、基板部18の高さh1を、(3)式に近い値としているときに、凸状部20は、高さh2が、
h2=n・d/2=n・λ/2 ・・・(4)
に近い値となるように形成されていても良い。但し、nは正の整数とする。
【0082】
これにより、意匠部材16は、被覆フィルム30及び補強フィルム32で反射せずに透過した電波と、被覆フィルム30及び補強フィルム32で反射したのちに被覆フィルム30を透過した電波とが同相と見なされる。
【0083】
このように基板部18の高さh1、及び凸状部20の高さh2が定められた意匠部材16を用いた電波透過部品10は、電波の透過量の減少が抑制される。また、電波透過部品10は、高さh1、高さh2に基づいて、ハニカム構造体24の各筒体22の開口幅wを定めることで、電波の透過量の減少を更に抑制することができる。即ち、電波透過部品10は、意匠部材16を形成する誘電体における誘電正接(tanδ)が電波の透過性に影響を及ぼすのを抑制するために、壁部26等の誘電体により形成される部位の厚さを電波の波長に対して1/20以下となるようにしている。また、電波透過部品10は、意匠部材16の比誘電率εrを1に近づけることにより、意匠部材16を透過する電波の屈折を抑制している。
【0084】
なお、第1の実施の形態では、基板部18及び凸状部20を、同じ大きさの筒体22を配列してハニカム構造体24を形成したが、これに限らず、例えば、枠体14の中心から離れるに従って、即ち、枠体14に近づくに従って筒体の開口幅wを大きくしたハニカム構造体を用いても良い。即ち、筒体に入射される電波の角度θは、意匠部材16の中心から離れるに従って大きくなることから、角度θが大きくなるのにしたがって、筒体の開口幅wを大きくしたハニカム構造体を用いて意匠部材16を形成する。これにより、意匠部材16を用いた電波透過部品10は、電波の透過量の減少がより一層抑制される。
【0085】
また、第1の実施の形態では、一例として、意匠部材16に、厚さが電波の波長λに対して1/20以下となる補強フィルム32を用いたが、これに限らず、電波の透過性に影響を与えない範囲の厚さで基板状に形成した補強シートを用いても良い。電波透過部品10は、補強フィルム32に替えて、基板状の補強シートを用いることで、ハニカム構造体24の横方向に対する耐荷重性をさらに高くすることができる。
【0086】
〔第2の実施の形態〕
以下に、第2の実施の形態を説明する。第2の実施の形態において基本的構成は、第1の実施の形態と同様であり、第2の実施の形態において第1の実施の形態と同等の機能部品については、第1の実施の形態の符号を付与して説明を省略する。
【0087】
図5には、第2の実施の形態に係る電波透過部品10Aの要部の概略断面を示している。第2の実施の形態では、第1の実施の形態に係る意匠部材16に替えて意匠部材40を用いている。従って、電波透過部品10Aは、意匠部材16に替えて意匠部材40を用いている点で、電波透過部品10と相違する。
【0088】
意匠部材40は、意匠部材16の基板部18に対応する基板部42、及び意匠部材16の凸状部20に対応する凸状部44が形成されている。意匠部材40は、基板部42及び凸状部44が、意匠部材16と同等の形状となるように形成されている。第2の実施の形態において、意匠部材40は、電波透過部の一例として機能し、基板部42は、基板部の一例として機能し、凸状部44は、凸状部の一例として機能する。
【0089】
図6(A)及び
図6(B)は、第2の実施の形態に係る意匠部材40の要部を示している。
図6(B)に示すように、意匠部材40は、一例として、六角形状の筒体22を複数配列した形状のハニカム構造体24が用いられて平板状の基板部42が形成されている。また、意匠部材40は、例えば、筒体22よりも開口幅wの小さい六角形状の筒体46を複数配列した形状のハニカム構造体48が用いられて凸状部44が形成されている。ハニカム構造体48は、筒体46の各々が壁部50により開口断面が六角形状となるように形成されている。
【0090】
第2の実施の形態において、凸状部44を形成するハニカム構造体48の筒体46は、第3筒体の一例として機能し、凸状部44の周囲で基板部42を形成する筒体22は、第1筒体の一例として機能する。また、第2の実施の形態において、凸状部44を形成するハニカム構造体48の筒体46、及び凸状部44が結合されるハニカム構造体24の筒体22は、第2筒体の一例として機能する。即ち、第2の実施の形態においは、一例として、第2筒体が筒体22と筒体46とにより形成されている。
【0091】
なお、第2の実施の形態では、一例として六角形状の筒体22、46を配列した形状とするが、これに限らず、三角形以上の多角形状の筒体を配列した形状を適用しても良い。また、第2の実施の形態では、筒体22、46の開口の大きさとして、対向する壁部26、50の間隔を示す開口幅wを用いるが、これに限らず、筒体の外接円(内面を形成する各頂点に接する円)の半径又は直径を適用しても良く、また、開口面積(筒体22、46の開口断面積)を適用しても良い。
【0092】
ハニカム構造体48は、互いに隣接する筒体46の間が誘電体により形成された壁部50により区画されている。壁部50は、例えば、壁部26と同様に、電波の波長λに対して1/20以下の厚さで形成されている。また、意匠部材40は、基板部42を形成するハニカム構造体24の周囲の壁部26と枠体14との間の空隙に充填材28が充填される。また、意匠部材40は、凸状部44を形成するハニカム構造体48の周縁で開放された筒体46に充填材34が充填されている。
【0093】
図6(A)に示すように、意匠部材40は、凸状部44を形成するハニカム構造体48の基板部42側の面に、補強フィルム32が貼付されて、基板部42を形成するハニカム構造体24に結合されている。基板部42への凸状部44の結合は、例えば、基板部42を形成しているハニカム構造体24の筒体22の開口と、凸状部44を形成しているハニカム構造体48の筒体46の開口とが重なるように結合されることが好ましい。
【0094】
基板部42を形成するハニカム構造体48は、裏面(凸状部44とは反対側の面)に補強フィルム32が貼付される。意匠部材40は、基板部42を形成するハニカム構造体24と凸状部44を形成するハニカム構造体48とが、ハニカム構造体48に接合された補強フィルム32を介して接合される。さらに、意匠部材40は、ハニカム構造体24の表面、及びハニカム構造体48の表面と側面(ハニカム構造体48の周囲)に被覆フィルム30が貼付される。これにより、意匠部材40は、第1の実施の形態に係る意匠部材16と同等の3次元形状に形成される。
【0095】
意匠部材40は、被覆フィルム30及び補強フィルム32を用いて、凸状部44を形成するハニカム構造体48の筒体46に閉断面を形成する。また、意匠部材40は、基板部42を形成するハニカム構造体24の各筒体22の一方の開口を補強フィルム32により閉塞し、他方の開口を被覆フィルム30又はハニカム構造体48の補強フィルム32により閉塞することで閉断面を形成する。意匠部材40は、ハニカム構造体24の各筒体22に閉断面が形成されることで、基板部42の高さ方向と交差する方向(横方向)に対する耐荷重力が高められ、ハニカム構造体48の各筒体46に閉断面が形成されることで、凸状部44の高さ方向と交差する方向(横方向)に対する耐荷重力が高められる。また、第2の実施の形態に係る電波透過部品10Aは、一例として、枠体14に保護カバー34が取り付けられ、凸状部44の表面が保護カバー34に当接されている。
【0096】
このように構成された意匠部材40を用いた電波透過部品10Aは、レーダ装置12の電波の伝搬経路上に配置されることで、レーダ装置12から枠体14内の意匠部材40に電波が放射される。意匠部材40に放射された電波は、意匠部材40及び保護カバー34を透過して、車両前方へ放射される。
【0097】
電波透過部品10Aは、意匠部材40が、複数の筒体22が配列されたハニカム構造体24により基板部42が形成され、複数の筒体46が配列されたハニカム構造体48により凸状部44が形成されている。これにより、電波透過部品10Aは、透過する電波に屈折が生じるのが抑えられ、また、電波の指向性に乱れが生じるのが防止されている。
【0098】
また、意匠部材40は、基板部42から車両前方へ突出した凸状部44を、ハニカム構造体24の筒体22よりも開口幅の小さい筒体46を複数配列した形状のハニカム構造体48を用いて形成されている。これにより、意匠部材40は、凸状部44にハニカム構造体24を用いた場合(第1の実施の形態の意匠部材16)に比べ、車両前方側からの荷重に対する耐荷重性が向上される。
【0099】
さらに、電波透過部品10Aは、枠体14を閉塞する保護カバー34が設けられていることで、意匠部材40が保護されている。電波透過部品10Aは、ハニカム構造体48を用いた凸状部44の先端で保護カバー34を支持して、保護カバー34の耐荷重性をさらに向上させている。なお、電波透過部品10Aは、ハニカム構造体24、48を用いて意匠部材40が形成されているので、保護カバー34を設けない構成であっても良い。
【0100】
一方、
図7には、意匠部材40の基板部42及び凸状部44の要部の概略断面を示している。
図7において、基板部42の高さ(基板部42を形成する筒体22の高さ)をh1、凸状部44の高さ(凸状部44を形成する筒体46の高さ)をh2とする。
【0101】
ハニカム構造体24、48を用いて形成した意匠部材40を比誘電率εrとみなすと、意匠部材40の内部を伝搬する電波の波長λgは、空気中の電波の波長λ、及び比誘電率εrから、λg=λ/εr
1/2として表される。
【0102】
意匠部材40の表裏両側の界面の各々で反射して、被覆フィルム30を透過した電波と、意匠部材40の界面で反射せずに被覆フィルム30を透過した電波とを、同相と見なすようにするための高さh1、h2は、h1=n・d/2、h2=n・d/2となる。但し、高さh1、h2において、nは、同じでも良く、異なっていても良い。
【0103】
電波透過部品10Aに用いる意匠部材40は、基板部42の高さh1、及び凸状部44の高さh2が、空気中の電波の波長λ、及び意匠部材40の比誘電率εrに基づいて形成されている。即ち、基板部18は、高さh1が、
h1=n・d/2=n・λ/(2・εr
1/2)=(n・λg)/2 ・・・(1)
に近い値となるように形成されている。但し、nは正の整数とする。
【0104】
また、基板部18の高さh1を、(1)式に近い値としているときに、凸状部20は、高さh2が、
h2=n・d/2=n・λ/(2・εr
1/2)=(n・λg)/2 ・・・(2)
に近い値となるように形成されている。但し、nは正の整数とする。
【0105】
これにより、意匠部材40内で反射せずに透過した電波と意匠部材40の表裏両側の界面の各々で反射して透過した電波とが同相と見なされる状態となり、電波透過部品10Aは、意匠部材40を透過する電波の透過量の減少が抑制される。
【0106】
一方、意匠部材40を形成する筒体22、46の内部は空気であるから、筒体22、46の内部は、空気中と同様に波長λの電波が伝搬する。この場合、ハニカム構造体24の筒体22内、及びハニカム構造体48の筒体46内を伝搬する電波の波長は、波長λgと波長λとが混在するが、各筒体22、46の厚み(壁部26、50の厚み)が薄く、その量も少ないため、空気中の電波の波長λと見なすことができる。即ち、第2の実施の形態では、複数の筒体22が配列されたハニカム構造体24及び複数の筒体46が配列されたハニカム構造体48を用いることで、意匠部材40の誘電率を空気の誘電率に近づくようにしている(比誘電率εrを1に近づくようにしている)。
【0107】
ここから、基板部42は、高さh1が、
h1=n・d/2=n・λ/2 ・・・(3)
に近い値となるように形成されていても良い。但し、nは正の整数とする。
【0108】
また、基板部42の高さh1を、(3)式に近い値としているときに、凸状部44は、高さh2が、
h2=n・d/2=n・λ/2 ・・・(4)
に近い値となるように形成されていても良い。但し、nは正の整数とする。
【0109】
これにより、意匠部材40は、被覆フィルム30及び補強フィルム32で反射せずに透過した電波と反射した後に被覆フィルム30を透過した電波とが同相と見なされる。これにより、意匠部材40を用いた電波透過部品10Aは、電波の透過量の減少が抑制される。
【0110】
なお、ハニカム構造体24、48は、例えば、枠体14の中心から離れるに従って、即ち、枠体14に近づくに従って筒体22、46の開口幅を大きくしても良い。これにより、意匠部材40を用いた電波透過部品10Aは、電波の透過量の減少がより一層抑制される。また、意匠部材40は、基板部42の裏面の補強フィルム32に替えて、電波の透過性に影響を与えない範囲の厚さで基板状に形成した補強シートを用いても良い。電波透過部品10Aは、補強フィルム32に替えて、基板状の補強シートを用いることで、意匠部材40の横方向に対する耐荷重性をさらに高くすることができる。
【0111】
〔第3の実施の形態〕
以下に、第3の実施の形態を説明する。第3の実施の形態において基本的構成は、第1及び第2の実施の形態と同様であり、第3の実施の形態において第1又は第2の実施の形態と同等の機能部品については、第1又は第2の実施の形態の符号を付与して説明を省略する。
【0112】
図8には、第3の実施の形態に係る電波透過部品10Bの要部の概略断面を示している。第3の実施の形態に係る電波透過部品10Bは、第1の実施の形態に係る電波透過部品10の意匠部材16に替えて意匠部材60を用いている。従って、電波透過部品10Bは、意匠部材16に替えて意匠部材60を用いている点で、電波透過部品10と相違する。意匠部材60は、意匠部材16の基板部18に対応する基板部62、及び意匠部材16の凸状部20に対応する凸状部64が形成されている。第3の実施の形態において、意匠部材60は、電波透過部の一例として機能し、基板部62は、基板部の一例として機能し、凸状部64は、凸状部の一例として機能する。
【0113】
第3の実施の形態において、意匠部材60は、一例として多孔質構造(ポーラス構造)を有する誘電体が用いられて基板部62及び凸状部64が形成されている。第3の実施の形態において多孔質構造を有する誘電体は、複数の空洞部を有する誘電体の一例として機能する。意匠部材60を形成する誘電体としては、スチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、シリコンなどの電気的絶縁性を有する各種の合成樹脂(例えば、プラスチック)を適用することができる。意匠部材60は、誘電体が用いられることでレーダ装置12から放射される電波を透過する。
【0114】
意匠部材60に適用する多孔質構造は、独立気泡及び連続気泡の少なくとも一方により複数の空洞部が形成される任意の構造が適用される。多孔質構造を有する誘電体(以下、多孔質誘電体という)としては、例えば、発泡スチロール、発泡ポリエチレンなどの発泡プラスチック(気泡プラスチック)を適用することができる。第1の実施の形態では、一例として、気泡率(JIS K 7138に規定される気泡率)が90%以上の発泡ポリエチレンを用いて意匠部材60の基板部62及び凸状部64を形成している。
【0115】
意匠部材60は、表面が被覆フィルム30により緊密に覆われている。第3の実施の形態において被覆フィルム30は、被覆シートの一例として機能する。被覆フィルム30は、多孔質誘電体を用いて形成された意匠部材60の表面(基板部62の表面62A、凸状部64の表面64A、及び凸状部64の側面64B)の気泡による開口を閉塞して、微細な凹凸のない滑らかな面とする。なお、凸状部64は、側面64Bが高さ方向に沿うように形成されても良く、また、側面64Bが高さ方向に対して傾斜されて断面形状が台形状となるように形成されていても良い。
【0116】
意匠部材60は、被覆フィルム30により被覆されることで、基板部62が有色塗装され、凸状部64が金属蒸着膜により加飾されて意匠性の向上が図られる。即ち、意匠部材60は、誘電体により形成された骨格構造を被覆フィルム30で覆うことで加飾されて高い意匠性が得られている。
【0117】
一方、電波透過部品10Bは、枠体14の車両前方側の端部に保護カバー34が取り付けられている。第3の実施の形態において保護カバー34は、保護カバーの一例として機能する。
【0118】
また、電波透過部品10Bは、枠体14の車両前方側の開口に保護カバー34が嵌め込まれていることにより、意匠部材60の凸状部64側が保護カバー34により閉塞される。電波透過部品10Bは、枠体14が保護カバー34により閉塞されることで、意匠部材60の意匠面が保護された状態で車両前方側から視認可能となっている。
【0119】
保護カバー34は、枠体14内に収容された意匠部材60の凸状部64の先端(金属蒸着により加飾された表面64A)が当接されて接着されている。これにより、電波透過部品10Bは、保護カバー34が意匠部材60の凸状部64により支持され、撓みが生じてしまうのが防止されると共に、保護カバー34の振動の発生が抑制されている。なお、凸状部64の表面64Aは、少なくとも一部が保護カバー34に当接すれば良く、これにより、保護カバー34と意匠部材60とが相互に補強し合うことができる。なお、
図8では、図示を省略しているが、電波透過部品10Bは、意匠部材60の基板部62の凸状部64と反対側の面に補強フィルム32が貼付されても良い。
【0120】
このように構成された電波透過部品10Bは、レーダ装置12の電波の伝搬経路上に配置されることで、レーダ装置12から枠体14内に電波が放射され、意匠部材60及び保護カバー34を透過して、車両前方へ放射される。
【0121】
ところで、第3の実施の形態に係る電波透過部品10Bは、多孔質誘電体を用いて意匠部材60が形成されている。一般に誘電体を透過する電波は、誘電体の比誘電率に応じて屈折が生じ、比誘電率が高い程、屈折が大きくなる。従って、誘電体は、厚さや比誘電率が、誘電体を透過した電波の指向性に大きく影響する。
【0122】
これに対して、内部に複数の空洞部(気泡)を有する多孔質構造とされた多孔質誘電体は、全容積に対する気泡の容積の割合として示される気泡率(又は発泡率)に応じて比誘電率が変化し、気泡率が高くなることで、気泡率が低い(例えば、気泡無し)場合に比べて比誘電率が低くなる。例えば、ポリエチレンは、比誘電率εr=2.30となっているのに対し、発泡ポリエチレンは、気泡率(発泡率)90%において比誘電率εr=1.11、気泡率95%において比誘電率εr=1.05となる。
【0123】
従って、多孔質誘電体により意匠部材60が形成された電波透過部品10Bは、電波の屈折が抑えられ、電波の指向性に乱れが生じるのが抑制される。
【0124】
一方、誘電体は、空気や他の材質の部材に接する界面において電波の一部に反射が生じ、反射により位相のずれた放射されることで、透過量に減少が生じることがある。多孔質誘電体を用いた意匠部材60においても、空気や被覆フィルム30に接する面が界面となって電波に反射が生じる。
【0125】
図9は、意匠部材60の要部の概略断面を示している。ここで、電波の放射方向(矢印FR方向)に沿う意匠部材60の基板部62の厚さを高さh1、基板部62の表面からの凸状部64の突出高さを高さh2とする。意匠部材60内における電波の波長λgは、空気中の電波の波長λ、及び意匠部材60の比誘電率εrから、λg=λ/εr
1/2として表される。なお、
図9では、意匠部材60の界面で反射された後に透過する電波の一例を破線で示し、意匠部材60の界面で反射せずに透過した電波を一点鎖線で示している。
【0126】
意匠部材60を透過する電波は、意匠部材60の表裏両側の界面の各々で反射して透過した電波が、反射せずに透過した電波と同相となることで干渉が防止され、透過量の減少が抑制される。意匠部材60の表裏両側の界面の各々で反射して透過した電波が、反射していない電波と同位相となって放射されるためには、反射していない電波の伝搬距離と意匠部材60の表裏両側の界面の各々で反射して透過した電波の伝搬距離との距離差dが波長λgに対して、d=n・λg/2であれば良い。但し、n=1、2、・・・(正の整数)とする。また、高さh1、h2と距離差dとは、h1=n・d/2、h2=n・d/2となる。但し、高さh1、h2において、nは、同じでも良く、異なっていても良い。
【0127】
ここから、第3の実施の形態では、意匠部材60の基板部62の高さh1、及び凸状部64の高さh2を、電波の波長λ、意匠部材60の比誘電率(多孔質誘電体の比誘電率)εrに基づいて定めている。
【0128】
先ず、基板部18は、高さh1が、
h1=n・d/2=n・λ/(2・εr
1/2)=(n・λg)/2 ・・・(1)
に近い値となるように形成されている。但し、nは正の整数とする。
【0129】
また、基板部18の高さh1を、(1)式に近い値としているときに、凸状部20は、高さh2が、
h2=n・d/2=n・λ/(2・εr
1/2)=(n・λg)/2 ・・・(2)
に近い値となるように形成されている。但し、nは正の整数とする。
【0130】
これにより、意匠部材60内で反射せずに透過した電波と意匠部材60の表裏両側の界面の各々で反射して透過した電波とが同相となり、電波透過部品10B、意匠部材60を透過する電波の透過量の減少が抑制される。
【0131】
なお、第3の実施の形態では、一例として、独立気泡及び連続気泡の少なくとも一方の気泡による多孔質誘電体を用いて意匠部材60を形成したが、誘電体により複数の空洞部が形成された任意の構造を適用することができる。例えば、意匠部材は、基板部及び凸状部が、誘電体の薄膜により骨格が形成されても良い。
【0132】
なお、以上説明した第1から第3の実施の形態は、一例を示すもので有り、本発明の構成を限定するものではない。例えば、第1及び第2の実施の形態では、一例として、筒体22、46の軸方向、即ち高さ方向を、電波の放射方向である車両前後方向に沿うように配列して意匠部材16、40を形成したが、筒体22、46の向きはこれに限るものではない。例えば、筒体22、46は、高さ方向が電波の放射方向に対して交差するように傾斜されて設けても良い。即ち、筒体22、46は、内部空間を、意匠部材16、40内に形成される複数の空洞部と見なすことができ、これにより、ハニカム構造体24、48は、気泡率の極めて高い多孔性誘電体と見なすことができる。
【0133】
したがって、筒体22、46の高さ方向を電波の放射方向に対して傾けられて基板部及び凸状部が形成されても、電波透過部品は、電波の透過量の減少が抑制され、且つ電波の指向性に乱れが生じるのが抑制される。
【0134】
また、第3の実施の形態では、多孔質誘電体を用い、第1及び第2の実施の形態では、ハニカム構造体を用いて意匠部材の基板部及び凸状部を形成したが、これに限らず、例えば、誘電体の薄膜を用いて、内部に複数の空洞部が形成されるトラスト構造等を適用しても良い。
【0135】
さらに、第1及び第2の実施の形態では、筒体の開口端が平面状となるように配列されたハニカム構造体を用いて、基板部及び凸状部を形成したが、基板部及び凸状部の構成はこれに限るものではない。例えば、基板部の平面形状に応じた枠体内、及び凸状部の平面形状に応じた枠体内を、誘電体を用いた壁部により網目状などの予め定めた形状で仕切ることで、第1筒体及び第2筒体が形成されるようにしても良い。
【0136】
本発明において、基板部は、第1の長さの第1筒体を、開口端の各々が平面状に並ぶように複数個隣接配列されて平板状に形成された任意の構成を適用でき、また、凸状部は、基板部の一方の表面から突出した第2の筒体の配列により形成したものであれば良い。この際、基板部に予め定めた形状の開口を形成し、この開口内に、第2筒体の配列により凸状部と基板部とを、第2筒体の基板部が第1筒体による基板部に形成された開口に嵌め込まれて結合されて電波透過部が形成された構成を含む。この際、第1筒体と第2筒体とは、開口の大きさ、開口の形状が異なった組み合わせを含む。
【0137】
また、凸状部を形成する第2筒体は、壁部により囲われた電波の伝搬路が、連続するものであれば、複数の筒体を連結した形状であっても良く、この際、連結される筒体の間で、開口の大きさが異なっても良い。