特許第6552330号(P6552330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552330
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】エンジン発電機
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/00 20060101AFI20190722BHJP
   F02B 63/04 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   F01M13/00 L
   F02B63/04 B
   F02B63/04 D
   F02B63/04 C
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-163535(P2015-163535)
(22)【出願日】2015年8月21日
(65)【公開番号】特開2017-40234(P2017-40234A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一郎
【審査官】 家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−075515(JP,U)
【文献】 特開2000−097040(JP,A)
【文献】 実開昭62−203930(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0250190(US,A1)
【文献】 特開2013−142326(JP,A)
【文献】 特開平02−112611(JP,A)
【文献】 特開2013−113244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 63/00
F02M 13/00
F01P 11/10
F01P 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの内部にエンジンと発電機とを収納し、前記ケーシングの一側にラジエータを配置したエンジン発電機において、前記ラジエータに、該ラジエータを通過した温風をケーシング内に導入するラジエータファンを設け
前記ラジエータファンは、前記ケーシングの内部温度があらかじめ設定された高温切替温度以上のときに、ケーシング内の空気を前記ラジエータを通してケーシングの外部に排出する排出運転と、あらかじめ設定された低温切替温度未満のときに、ケーシング外の空気を前記ラジエータを通してケーシングの内部に吸い込む吸込運転とに、送風方向が切り替えられることを特徴とするエンジン発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン発電機に関し、詳しくは、エンジンで発電機を回転駆動して発電するエンジン発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンなどの内燃機関には、シリンダとピストンとの間からクランクケース内に漏れ出したブローバイガスをガス還流管を通してエンジンの吸気側、通常はエアクリーナに還流させるブローバイガス還流装置が設けられている。還流するブローバイガスは、燃焼により発生した水分を多く含んでいるため、寒冷地でガス還流管が0℃以下になると、ガス還流管内で凝縮した水分が凍結し、ガス還流管を閉塞してブローバイガスの還流が正常に行われなくなることがある。特に、ガス還流管内に圧力及び流量調節用の絞りが設けられている場合、絞りの部分に凝縮した水分やオイルなどの油分が溜まりやすいため、凍結による流路の詰まりが発生しやすかった。このため、絞り(オリフィス)を設けたソケット管を熱伝導率の低い合成樹脂製にしたり(例えば、特許文献1参照。)、ガス還流管を排気マニホールドの熱で加熱したりすることが行われている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−137709号公報
【特許文献2】特開2011−127490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に記載された凍結防止構造は、一般的な低温下(0〜−10℃程度)では、凍結防止効果を期待できるが、−15℃を下回るような極低温下では、エンジンルーム内に流入する冷却風によって過冷却状態になり、十分な凍結防止効果を発揮することができなかった。
【0005】
そこで本発明は、極低温下でのブローバイガスの凍結を防止することができ、極低温下でも確実に運転を継続できるエンジン発電機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のエンジン発電機は、ケーシングの内部にエンジンと発電機とを収納し、前記ケーシングの一側にラジエータを配置したエンジン発電機において、前記ラジエータに、該ラジエータを通過した温風をケーシング内に導入するラジエータファンを設け、前記ラジエータファンは、前記ケーシングの内部温度があらかじめ設定された高温切替温度以上のときに、ケーシング内の空気を前記ラジエータを通してケーシングの外部に排出する排出運転と、あらかじめ設定された低温切替温度未満のときに、ケーシング外の空気を前記ラジエータを通してケーシングの内部に吸い込む吸込運転とに、送風方向が切り替えられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエンジン発電機によれば、ラジエータを通過した温風をケーシング内に導入することにより、極低温下での運転でも、ケーシング内の温度が低下することを防止でき、ブローバイガスの凍結を防止できる。これにより、極低温下でもエンジン発電機の運転を確実に継続できる。また、ケーシング内の温度に応じて温風の流れ方向を切り替えることにより、高温下での運転でオーバーヒートが発生することをより確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のエンジン発電機の第1形態例を示す説明図である。
図2】本発明のエンジン発電機の第2形態例を示すもので、通常運転中の状態を示す説明図である。
図3】同じく、ケーシング内保温運転中の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明のエンジン発電機の第1形態例を示す説明図である。このエンジン発電機は、防音構造を有する直方体形状のケーシング11の内部に、ディーゼルエンジン12と、該ディーゼルエンジン12によって駆動される発電機13とを収納し、ケーシング11のエンジン側の側壁11aに、エンジン冷却水を冷却するためのラジエータ14を設けている。
【0011】
前記ラジエータ14のケーシング内部側には、ディーゼルエンジン12のクランクシャフトに連結されたラジエータファン15が設けられ、ラジエータ14のケーシング外部側には、外部から冷却用及び燃焼用の空気を取り入れるための吸気口16が設けられている。また、ケーシング11の発電機側の側壁11bには、ケーシング11内の温風を外部に排出するための排気口17が設けられている。さらに、ケーシング11の下部には燃料タンク18が設けられ、発電機13側の上部には、制御装置19及びケーシング11内の温度を測定する温度測定手段20が設けられている。
【0012】
ディーゼルエンジン12は、過給器(ターボチャージャ)21を有しており、エアクリーナ22から吸気管23に吸い込まれた燃焼用空気は、過給器21で圧縮されてシリンダ内に流入し、シリンダ内に噴射される燃料と混合して燃焼し、ピストンを介してクランクシャフトを回転させる。燃焼後の排ガスは、過給器21の駆動源となった後、マフラ24を経て排気管25から外部に排出される。ディーゼルエンジン上部のクランクケースと吸気管23との間には、クランクケース内から吸気管23にブローバイガスを還流させるガス還流管26が設けられている。
【0013】
前記ラジエータファン15の送風方向は、ラジエータ14を介して外気をケーシング11内に吸い込む方向に設定されている。したがって、ケーシング11内の空気(冷却風)の流れは、図1に矢印で示すように、ラジエータファン15の送風作用により、吸気口16から吸い込まれた外気は、ラジエータ14でエンジン冷却水を冷却することによって昇温した後、ディーゼルエンジン12の周囲、発電機13の周囲を流れ、発電機側の側壁11bに設けられた排気口17から外部に排出される。
【0014】
したがって、ケーシング11内の空気を、ラジエータ14で昇温した空気(温風)にすることができるので、極低温下での運転でも、エアクリーナ22から吸気管23に吸い込む燃焼用空気の温度が低下することを防止できるとともに、ガス還流管26の周辺温度の低下も防止できるので、ガス還流管26を流れるブローバイガスが極低温下での運転中に凍結することを防止でき、極低温下でも確実に運転を継続できる。さらに、ケーシング11内に燃料タンク18を配置することによって燃料の凍結も防止できる。また、エンジン発電機の運転時は、ディーゼルエンジン12が一定回転数で回転しており、ラジエータファン15によって一定量の冷却用空気がケーシング11内を流れるので、一般的な環境温度でオーバーヒートすることはない。
【0015】
図2及び図3は、本発明のエンジン発電機の第2形態例を示している。なお、以下の説明において、前記第1形態例に示したエンジン発電機の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0016】
本形態例に示すエンジン発電機は、前記第1形態例と同様に、ケーシング11の内部に、ディーゼルエンジン12と発電機13とを収納し、ケーシング11のエンジン側の側壁11aにラジエータ14を設けるとともに、該ラジエータ14のケーシング内部側に、送風方向を切替可能な電動ラジエータファン31を設け、ラジエータ側の側壁11aには、第1の給排気兼用口32を、発電機13側の側壁11bには、第2の給排気兼用口33をそれぞれ設けている。また、電動ラジエータファン31の周囲には、送風効率を向上させるためのファンカバー34が設けられている。
【0017】
図2は、一般的な環境温度、例えば、−10〜40℃における通常の排出運転中の状態を示している。この一般的な環境温度範囲では、電動ラジエータファン31の送風方向を排出側に設定して排出運転を行う。すなわち、図2に矢印で示すように、ラジエータファン31の送風作用により、発電機側の側壁11bに設けた第2の給排気兼用口33から吸い込まれた外気は、発電機13の周囲、ディーゼルエンジン12の周囲を流れた後、ラジエータ14でエンジン冷却水を冷却することによって昇温し、ラジエータ側の側壁11aに設けた第1の給排気兼用口32から外部に排出される。
【0018】
図3は、外気温が−15℃を下回るような極低温下での吸込運転中の状態を示している。この極低温下での運転では、電動ラジエータファン31の送風方向を吸込側に設定して吸込運転を行う。すなわち、図3に矢印で示すように、ラジエータファン31の送風作用により、ラジエータ側の側壁11aに設けた第1の給排気兼用口32から吸い込まれた外気は、ラジエータ14でエンジン冷却水を冷却することによって昇温した後、ディーゼルエンジン12の周囲、発電機13の周囲を流れ、発電機側の側壁11bに設けられた第2の給排気兼用口33から外部に排出される。これにより、ケーシング11内に温風が供給されることになるので、ケーシング11内の温度低下を防止して保温することができる。
【0019】
前記排出運転と前記吸込運転との切替は、排出運転を行っているときに、前記温度測定手段20で測定したケーシング11内の温度が、あらかじめ設定された低温切替温度未満、例えば0℃未満となったときに吸込運転に切り替え、吸込運転を行っているときに、前記温度測定手段20で測定したケーシング11内の温度が、あらかじめ設定された高温切替温度以上、例えば20℃以上となったときに排出運転に切り替えるような制御を行うことができる。
【0020】
このように、回転方向を切替可能な電動ラジエータファン31を使用し、外気温に応じて電動ラジエータファン31の送風方向を切り替えることにより、極低温下での運転中にケーシング11内の温度が低下することを防止でき、エアクリーナ22から吸気管23に吸い込む燃焼用空気の温度が低下することを防止できるとともに、ガス還流管26の周辺温度の低下も防止できるので、ガス還流管26を流れるブローバイガスが極低温下での運転中に凍結することを防止でき、極低温下でも確実に運転を継続できる。さらに、ケーシング11内に燃料タンク18を配置することによって燃料の凍結も防止できる。また、外気温が高いときには、ラジエータ14で昇温した温風を第1の給排気兼用口32から直ちに排出することにより、ケーシング11内の温度上昇によるオーバーヒートを、外気温が40℃以上になる酷暑時でもより確実に防止できる。
【0021】
なお、電動ラジエータファンの制御は、制御装置に組み込んだ適宜な制御手段によって容易に行うことができ、送風方向(回転方向)の切り替えだけでなく、回転速度を制御することも可能である。また、ラジエータ側の側壁に設けた排気口や給排気兼用口の外側に、一般的なエンジン発電機の排風室と同様な区画を設置することもできる。
【符号の説明】
【0022】
11…ケーシング、11a,11b…側壁、12…ディーゼルエンジン、13…発電機、14…ラジエータ、15…ラジエータファン、16…吸気口、17…排気口、18…燃料タンク、19…制御装置、20…温度測定手段、21…過給器、22…エアクリーナ、23…吸気管、24…マフラ、25…排気管、26…ガス還流管、31…電動ラジエータファン、32…第1の給排気兼用口、33…第2の給排気兼用口、34…ファンカバー
図1
図2
図3