特許第6552350号(P6552350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社マンダムの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552350
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】油性ヘアトリートメント組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20190722BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20190722BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20190722BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20190722BHJP
   A61K 8/88 20060101ALI20190722BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20190722BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   A61K8/31
   A61K8/365
   A61K8/37
   A61K8/25
   A61K8/88
   A61K8/89
   A61Q5/12
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-176864(P2015-176864)
(22)【出願日】2015年9月8日
(65)【公開番号】特開2017-52716(P2017-52716A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】100137419
【弁理士】
【氏名又は名称】桂田 正徳
(72)【発明者】
【氏名】岡本 将典
(72)【発明者】
【氏名】土田 晃子
【審査官】 小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−303178(JP,A)
【文献】 特表2011−521933(JP,A)
【文献】 特表2002−513316(JP,A)
【文献】 特開2014−152230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 5/12
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜成分(D)を含有し、実質的に水を含有せず、常温で固形の炭化水素油を含有しないか又は含有し、常温で固形のロウを含有しないか又は含有し、常温で固形の炭化水素油および常温で固形のロウからなる群から選ばれた成分を含有する場合には、常温で固形の炭化水素油および常温で固形のロウからなる群から選ばれた成分の組成物中の含有量が2質量%以下であることを特徴とする油性ヘアトリートメント組成物。
成分(A):揮発性炭化水素油
成分(B):12−ヒドロキシステアリン酸
成分(C):ベヘン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリルおよびトリベヘン酸グリセリルからなる群より選ばれた化合物
成分(D):タルク、ナイロン末およびシリコーンパウダーからなる群より選ばれた粒子
【請求項2】
前記成分(A)の組成物中の含有量が30〜85質量%、前記成分(B)の組成物中の含有量が0.3〜4質量%、前記成分(C)の組成物中の含有量が3〜15質量%、前記成分(D)の組成物中の含有量が5〜55質量%である請求項1に記載の油性ヘアトリートメント組成物。
【請求項3】
前記成分(B)に対する前記成分(C)の質量割合((C)/(B))が1.5〜20であることを特徴とする請求項1又は2に記載の油性ヘアトリートメント組成物。
【請求項4】
さらに、下記成分(E)を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の油性ヘアトリートメント組成物。
成分(E):不揮発性シリコーン油
【請求項5】
アウトバストリートメント剤であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の油性ヘアトリートメント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性ヘアトリートメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナチュラルなヘアスタイルが好まれており、毛髪に対する手触り感の良さを重視する志向が高まってきていることから、ヘアトリートメント剤などの毛髪をケアする化粧料が注目されている。このようなヘアトリートメント剤の中でも、炭化水素油、脂肪酸エステル油、シリコーン油などのヘアケア効果を発揮する油性成分のみで構成されている油性のトリートメント剤が最も注目され、従来から、油性のトリートメント剤に関する種々の試みが提案されている(例えば、特許文献1〜5を参照)。
【0003】
しかしながら、従来の油性のトリートメント剤の多くは、毛髪に対して油剤特有のしなやかさを十分に付与し、優れたトリートメント効果を発揮させることができる反面、「べたつく」、「軽い仕上がり感が得られない」といった問題がある。特にこれら官能特性は、塗布後に洗い流さないアウトバストリートメント剤においてより顕著に表れる。
【0004】
そこで、べたつき感を低減し、サラりとした軽い仕上がりとするために、油性のトリートメント剤中に粉体成分を配合させることも考えられるが、べたつき感を低減して軽い仕上がり感が得られる量の粉体を配合すると、粉体成分特有の「きしみ感」が生じ易くなり、しなやかさが損なわれ、手触り感に劣るといった懸念がある。
【0005】
そのため、従来と同等の十分なトリートメント効果と、べたつき感やきしみ感のない優れた使用感の双方を満足する油性のトリートメント剤の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−269459号公報
【特許文献2】特開2008−273902号公報
【特許文献3】特開2011−105631号公報
【特許文献4】特開2011−207807号公報
【特許文献5】特開2014−193825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、しなやかなトリートメント効果を十分に発揮させることができ、かつ、べたつき感やきしみ感がなく、軽い仕上がり感が得られる油性ヘアトリートメント組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、
〔1〕下記成分(A)〜成分(D)を含有し、実質的に水を含有しないことを特徴とする油性ヘアトリートメント組成物、
成分(A):揮発性炭化水素油
成分(B):12−ヒドロキシステアリン酸
成分(C):ベヘン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリルおよびトリベヘン酸グリセリルからなる群より選ばれた化合物
成分(D):タルク、ナイロン末およびシリコーンパウダーからなる群より選ばれた粒子
〔2〕前記成分(A)の組成物中の含有量が30〜85質量%、前記成分(B)の組成物中の含有量が0.3〜4質量%、前記成分(C)の組成物中の含有量が3〜15質量%、前記成分(D)の組成物中の含有量が5〜55質量%である前記〔1〕に記載の油性ヘアトリートメント組成物、
〔3〕前記成分(B)に対する前記成分(C)の質量割合((C)/(B))が1.5〜20であることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の油性ヘアトリートメント組成物、
〔4〕さらに、下記成分(E)を含有することを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕の何れか一項に記載の油性ヘアトリートメント組成物、
成分(E):不揮発性シリコーン油
〔5〕アウトバストリートメント剤であることを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕の何れか一項に記載の油性ヘアトリートメント組成物
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の油性ヘアトリートメント組成物は、保存安定性に優れるとともに、毛髪に潤い感のあるしなやかなトリートメント効果を付与するという効果を発揮する。さらに、本発明の油性ヘアトリートメント組成物は、べたつき感やきしみ感がなく、サラりとした軽い仕上がり感が得られ、使用感に格段優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の油性ヘアトリートメント組成物は、下記成分(A)〜成分(D)を含有し、実質的に水を含有しないことを特徴とする。
成分(A):揮発性炭化水素油
成分(B):12−ヒドロキシステアリン酸
成分(C):ベヘン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリルおよびトリベヘン酸グリセリルからなる群より選ばれた化合物
成分(D):タルク、ナイロン末およびシリコーンパウダーからなる群より選ばれた粒子
【0011】
以下、本発明に係る油性トリートメント組成物に用いられる各成分の詳細を説明する。
【0012】
用いられる成分(A)は、揮発性炭化水素油である。本発明において揮発性炭化水素油とは、常温で揮発性を有する炭化水素油のことを言う。本発明において上記成分(A)を含有させることにより、油性の組成物であるにもかかわらず、油剤特有のべたつきを抑えて軽い使用感とすることができる。尚、本発明における「常温」とは、15〜25℃の温度範囲を表す。
【0013】
具体的な成分(A)としては、例えば、イソパラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、水添ポリイソブテン、水添(テトラデセニル/メチルペンタデセン)、イソドデカンなどが挙げられる。これら成分(A)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。好適な成分(A)としては、軽い使用感とする観点、並びに毛髪上での延展性を高める観点から、水添ポリイソブテン、イソドデカンを用いることが好ましい。
【0014】
上記成分(A)は、市販品を用いることができる。具体的には、水添ポリイソブテンの市販品としては、例えば、丸善石油化学社製、商品名「マルカゾールR」;出光興産社製、商品名「IPソルベント1620」;日油社製、商品名「パールリームEX」などが挙げられる。イソドデカンの市販品としては、例えば、CIT Sarl社製、商品名「Creasil ID CG」などが挙げられる。
【0015】
成分(A)の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、油性の組成物とする観点から、組成物100質量%中、30質量%以上とすることが好ましく、35質量%以上とすることがより好ましい。また、毛髪のカサつきを抑えて、潤い感のあるしなやかなトリートメント効果を付与する観点から、組成物100質量%中、85質量%以下とすることが好ましく、80質量%以下とすることがより好ましい。なお、上記成分(A)の含有量は、本発明に係る油性トリートメント組成物中に配合される成分(A)の合計量である。
【0016】
用いられる成分(B)は、12−ヒドロキシステアリン酸である。本発明において上記成分(B)を用いることにより、優れた保存安定性を有する油性の組成物を調製することができる。
【0017】
上記成分(B)は、市販品を用いることができる。具体的には、例えば、川研ファインケミカル社製、商品名「ヒドロキシステアリン」;KFトレーディング社製、商品名「12−ヒドロキシステアリン酸」などが挙げられる。
【0018】
成分(B)の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、格段に優れた保存安定性を有する油性の組成物を調製する観点から、組成物100質量%中、0.3質量%以上とすることが好ましく、0.5質量%以上とすることがより好ましい。また、塗布時の毛髪上での延展性の観点から、組成物100質量%中、4質量%以下とすることが好ましく、3.5質量%以下とすることがより好ましい。
【0019】
用いられる成分(C)は、ベヘン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリルおよびトリベヘン酸グリセリルからなる群より選ばれた化合物である。本発明において上記成分(C)を用いることにより、格段に優れた組成物の保存安定性を付与することができる。これら成分(C)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。上記成分(C)の中でも、格段に優れた保存安定性を発揮する観点から、ベヘン酸グリセリルを用いることが好ましい。
【0020】
上記成分(C)は、市販品を用いることができる。具体的には、ベヘン酸グリセリルの市販品としては、例えば、ガテフォッセ社製、商品名「コンプリトール 888 CG」などが挙げられる。ジベヘン酸グリセリルの市販品としては、例えば、ガテフォッセ社製、商品名「コンプリトール E ATO」などが挙げられる。トリベヘン酸グリセリルの市販品としては、例えば、ガテフォッセ社製、商品名「コンプリトール 888 ATO」などが挙げられる。また、本発明においては、上記成分(C)を含む混合原料を用いても良い。
【0021】
成分(C)の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、保存安定性を高める観点から、組成物100質量%中、3質量%以上とすることが好ましく、4質量%以上とすることがより好ましい。また、塗布時の毛髪上での延展性の観点から、組成物100質量%中、15質量%以下とすることが好ましく、13質量%以下とすることがより好ましい。なお、上記成分(C)の含有量は、本発明に係る油性トリートメント組成物中に配合される成分(C)の合計量である。
【0022】
本発明においては、格段に優れた保存安定性を発揮させる観点から、上記成分(B)の含有量と上記成分(C)の含有量とを、成分(B)に対する成分(C)の質量割合((C)/(B))として、1.5〜20の範囲となるように調製することが好ましく、2〜18の範囲となるように調製することがより好ましい。また、前記質量割合を満たして調製することにより、保存安定性を高める以外にも、手の平および毛髪上での延展性を高めることもできるようになる。
【0023】
用いられる成分(D)は、タルク、ナイロン末およびシリコーンパウダーからなる群より選ばれた粒子である。本発明において上記成分(D)は、感触付与剤として働き、主に塗布後の毛髪にサラりとした感触を付与することができる。また、上記成分(D)を含有させることで油性組成物特有の現象である保存時の安定性の悪化を抑制し、組成物の保存安定性を更に高めることもできる。
【0024】
上記成分(D)であるシリコーンパウダーの具体例としては、例えば、架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体、メチルシロキサン網状重合体などが挙げられる。上記成分(D)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0025】
上記成分(D)の中でも、サラりとした感触が得られるだけでなく、しっとりとした感触をも付与することができる観点から、ナイロン末、シリコーンパウダーからなる群より選ばれた粒子(少なくとも1種の粒子)を用いることが好ましい。本発明においては、これら好適な成分(D)の中でも、ナイロン末を用いることが最も好ましい。
【0026】
上記成分(D)は、市販品を用いることができる。具体的には、タルクの市販品としては、例えば、日本タルク社製、商品名「タルクMS」;松村産業社製、商品名「クラウンタルク局方PP」などが挙げられる。ナイロン末の市販品としては、例えば、アイカ工業社製、商品名「ガンツパール GPA−550」;東レ社製、商品名「SP−500」などが挙げられる。シリコーンパウダーの市販品としては、例えば、信越化学工業社製、商品名「KSP−100」;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製、商品名「TOSPEARL 2000B」などが挙げられる。
【0027】
成分(D)の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、しっとり、かつ、サラりとした感触を付与する観点から、組成物100質量%中、5質量%以上とすることが好ましく、8質量%以上とすることがより好ましい。また、きしみ感、パサつき感を抑える観点から、組成物100質量%中、55質量%以下とすることが好ましく、50質量%以下とすることがより好ましい。なお、上記成分(D)の含有量は、本発明に係る油性トリートメント組成物中に配合される成分(D)の合計量である。
【0028】
なお、本発明の油性ヘアトリートメント組成物は、実質的に水を含有しないものである。これにより、格段に優れた保存安定性と、耐湿性とを付与することが可能となる。本発明における「実質的に水を含有しない」とは、「別途、水を含有させることはしない」という意味であり、各配合成分に含有される少量の水までを除外するものではない。
【0029】
また、本発明の油性ヘアトリートメント組成物には、塗布後の毛髪を潤いのある柔軟(しなやか)な髪にする観点から、成分(E)として、不揮発性シリコーン油を含有させることができる。本発明において不揮発性シリコーン油とは、常温で揮発性を有さないシリコーン油のことを言う。
【0030】
用いられる成分(E)としては、25℃における粘度が例えば10mPa・s以上20,000,000mPa・s以下の鎖状シリコーン油;アミノ変性シリコーン油、カルボキシ変性シリコーン油、脂肪酸エステル変性シリコーン油、アルコール変性シリコーン油、エポキシ変性シリコーン油、フッ素変性シリコーン油、アルキル変性シリコーン油などの変性シリコーン油などが挙げられる。これら成分(E)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。上記成分(E)の中でも、きしみ感やごわつき感を低減し、格段に優れた潤いのある柔軟な髪にする観点から、鎖状シリコーン油、アミノ変性シリコーン油を用いることが好ましい。
【0031】
鎖状シリコーン油の具体例としては、25℃における粘度が例えば10mPa・s以上6,000mPa・s未満のメチルポリシロキサン、25℃における粘度が例えば6,000mPa・s以上20,000,000mPa・s以下であり、かつ数平均重合度が650以上である高重合メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチコノールなどが挙げられる。
【0032】
アミノ変性シリコーン油の具体例としては、アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体などが挙げられる。
【0033】
なお、上記成分(E)は、組成物への溶解性の観点から、低重合メチルポリシロキサンなどの鎖状シリコーン油;シクロペンタシロキサンなどの環状シリコーン油;水添ポリイソブテン・イソドデカンなどの揮発性炭化水素油などの溶剤に予め溶解して用いることが好ましい。また、前記溶剤に既に溶解された形態のものを用いても良い。
【0034】
上記成分(E)は、市販品を用いることができる。具体的には、鎖状シリコーン油の市販品としては、例えば、東レ・ダウコーニング社製、商品名「SH200C Fluid 350cs」、商品名「SH200 Fluid 1,000,000cs」、商品名「PMX−1501 Fluid」;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製、商品名「XF49−811」などが挙げられる。アミノ変性シリコーン油の市販品としては、東レ・ダウコーニング社製、商品名「SF8452C」などが挙げられる。
【0035】
成分(E)の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、潤いのある柔軟な髪へ導く観点から、組成物100質量%中、1質量%以上とすることが好ましく、2質量%以上とすることがより好ましい。また、きしみ感やごわつき感の観点から、組成物100質量%中、20質量%以下とすることが好ましく、15質量%以下とすることがより好ましい。なお、上記成分(E)の含有量は、本発明に係る油性トリートメント組成物中に配合される成分(E)の合計量である。
【0036】
また、本発明の油性ヘアトリートメント組成物には、しなやかなトリートメント効果を更に高める観点から、成分(F)として、上記成分(C)以外の脂肪酸エステル油を含有させても良い。
【0037】
用いられる成分(F)としては、例えば、直鎖脂肪酸と低級アルコールとのエステル油、直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油、直鎖脂肪酸と分岐アルコールとのエステル油、分岐脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油、分岐脂肪酸と分岐アルコールとのエステル油、脂肪酸と多価アルコールとのエステル油などが挙げられる。これら成分(F)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。上記成分(F)の中でも、トリートメント効果を更に高める観点から、直鎖脂肪酸と分岐アルコールとのエステル油、分岐脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油、分岐脂肪酸と分岐アルコールとのエステル油、脂肪酸と多価アルコールとのエステル油を用いることが好ましい。
【0038】
好適な成分(F)の具体例としては、例えば、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸イソセチル、2−エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0039】
成分(F)の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、しなやかさを更に高める観点から、組成物100質量%中、1質量%以上とすることが好ましく、2質量%以上とすることがより好ましい。また、べたつき感を抑える観点から、組成物100質量%中、25質量%以下とすることが好ましく、20質量%以下とすることがより好ましい。なお、上記成分(F)の含有量は、本発明に係る油性トリートメント組成物中に配合される成分(F)の合計量である。
【0040】
さらに、本発明の油性ヘアトリートメント組成物においては、通常、油性の組成物において整髪機能を発揮させる成分である、常温で固形の炭化水素油や常温で固形のロウを配合させても良いが、優れたトリートメント効果を十分に発揮させる観点から、その含有量は、組成物中、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、実質的に含有しないことが最も好ましい。
【0041】
また、本発明における「実質的に含有しない」とは、「別途、含有させることはしない」という意味であり、各配合成分に含有される少量の常温で固形の炭化水素油や常温で固形のロウまでを除外するものではない。
【0042】
常温で固形の炭化水素油や常温で固形のロウの具体例としては、例えば、セレシン、オゾケライト、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、高融点マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレン末、ポリエチレンワックス、ワセリン、高融点パラフィン、合成ワックス、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、コメヌカロウ、セラックロウ、鯨ロウ、ラノリン、モクロウなどが挙げられる。
【0043】
本発明の油性ヘアトリートメント組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に通常化粧料に用いられる成分、例えば、非イオン性界面活性剤、多価アルコール、高級アルコール、紫外線吸収剤、酸化防止剤、香料、着色剤、防腐・殺菌剤、保湿剤、清涼剤、植物抽出液、アミノ酸などの添加剤などを適宜、その用途、目的に応じて配合することができる。
【0044】
また、本発明の油性ヘアトリートメント組成物の使用形態としては、格段に優れたトリートメント効果を発揮し、かつ、その効果が持続することから、アウトバストリートメント剤として好適に用いることができる。
【0045】
なお、本発明の油性ヘアトリートメント組成物は、油性の組成物を容易に取り出すことが可能な容器に充填されることが好ましい。より具体的には、チューブ容器、広口ジャー容器に充填されることが好ましい。特に本発明の油性ヘアトリートメント組成物を広口ジャー容器に充填した場合には、従来の固形の油剤を多量に配合した油性の組成物が充填されたものと比べて指取れが格段に優れている。このような指取れの良さは、本発明の油性ヘアトリートメント組成物の特徴の一つでもある。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。尚、配合量は特記しない限り「質量%」を表し、配合成分は全て純分に換算した。また、評価はすべて23℃、湿度60%の恒温恒湿の一定条件下で実施した。
【0047】
実施例および比較例では、下記成分を用いた。
【0048】
(成分(A))
水添ポリイソブテン:商品名「マルカゾールR」(丸善石油化学社製)
イソドデカン:商品名「Creasil ID CG」(CIT Sarl社製)
【0049】
(成分(B))
12−ヒドロキシステアリン酸:商品名「12−ヒドロキシステアリン酸」(KFトレーディング社製)
【0050】
(成分(C))
ベヘン酸グリセリル:商品名「コンプリトール 888 CG」(ガテフォッセ社製)
ジベヘン酸グリセリル:商品名「コンプリトール E ATO」(ガテフォッセ社製)
トリベヘン酸グリセリル:商品名「コンプリトール 888 ATO」(ガテフォッセ社製)
【0051】
(成分(D))
タルク:商品名「タルクMS」(日本タルク社製)
ナイロン末:商品名「ガンツパール GPA−550」(アイカ工業社製)
シリコーンパウダー1:商品名「KSP−100」(信越化学工業社製)
シリコーンパウダー2:商品名「TOSPEARL 2000B」(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)
【0052】
(成分(E))
メチルポリシロキサン:商品名「SH200C Fluid 350cs」(東レ・ダウコーニング社製)
高重合メチルポリシロキサン:商品名「XF49−811」(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製;(重量比)水添ポリイソブテン:高重合メチルポリシロキサン=85:15)
アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体:商品名「SF8452C」(東レ・ダウコーニング社製)
【0053】
(その他成分)
イソノナン酸イソノニル:商品名「サラコス99」(日清オイリオ社製)
パルミチン酸2−エチルヘキシル:商品名「コーヨー POC」(交洋ファインケミカル社製)
シクロペンタシロキサン:商品名「KF−995」(信越シリコーン社製)
ドデカメチルシクロヘキサシロキサン:商品名「DOW CORNING TORAY DC 246」(東レ・ダウコーニング社製)
パルミチン酸デキストリン:商品名「レオパール KLC2」(千葉製粉社製)
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル:商品名「エキセパールTGO」(花王社製)
ミリスチン酸ミリスチル:商品名「NIKKOL MM」(日光ケミカルズ社製)
無水ケイ酸:商品名「サイリシア 320」(富士シリシア化学社製)
ケイ酸カルシウム:商品名「フローライトR」(富田製薬社製)
【0054】
(各試料の調製)
表1〜表2に記した組成に従い、実施例1〜10および比較例1〜10の油性ヘアトリートメント組成物を調製し、下記評価試験に供した。結果をそれぞれ表1〜表2に併記する。
【0055】
(試験例1:保存安定性の評価)
各実施例および各比較例で得られた試料を、30g容の透明ガラス容器に夫々充填し、40℃の恒温槽に2週間保管後の系の状態を目視観察して下記評価基準に従い目視評価した。
【0056】
<保存安定性の評価基準>
○(良好):製造直後と全く変化が認められない
△(不十分):僅かな離液(油浮き)が認められる
×(不良):明らかな離液(油浮き)が認められる
【0057】
(試験用毛束の調製)
23℃、湿度60%の恒温恒湿下で一晩放置した毛束(長さ30cm、幅1cm、重量2g)に各実施例および各比較例で得られた試料0.2gを均一に塗布した。次いで、ドライヤーを用いて、30秒間、毛束を乾燥させた後、23℃、湿度60%の恒温恒湿下で30分間放置し試験用毛束を調製した。
【0058】
(試験例2:トリートメント効果の評価)
女性官能評価パネル10名により、調製した試験用毛束の毛先に向かって10回指先で撫でてもらい、「潤い感」、「しなやかさ」、「べたつき感」、「きしみ感」、並びに「仕上がり感」の5項目について、下記評価基準に従い官能評価した。
尚、評価は、最も人数の多く得られた評価結果を各試料の成績とした。
【0059】
<潤い感の評価基準>
○(良好):毛髪に十分な潤いがある
△(不十分):毛髪に潤いがある
×(不良):毛髪に潤いがない
【0060】
<しなやかさの評価基準>
○(良好):毛髪に十分なしなやかさがある
△(不十分):毛髪にしなやかさがある
×(不良):毛髪にしなやかさがない
【0061】
<べたつき感の評価基準>
○(良好):毛髪にべたつき感がない
△(不十分):毛髪に若干のべたつき感がある
×(不良):毛髪にべたつき感がある
【0062】
<きしみ感の評価基準>
○(良好):毛髪にきしみ感がない
△(不十分):毛髪に若干のきしみ感がある
×(不良):毛髪にきしみ感がある
【0063】
<仕上がり感の評価基準>
○(良好):軽い仕上がり感があり、サラサラ感に優れる
△(不十分):軽い仕上がり感はあるが、サラサラ感に劣る
×(不良):サラりとした軽い仕上がり感がない
【0064】
(試験例3:指取れの評価)
各実施例および各比較例で得られた試料を、50g容の広口ジャー容器に夫々充填した。次いで、人差し指と中指とで充填した各試料をすくい取り、その時の指取れについて下記評価基準に従い官能評価した。
【0065】
<指取れの評価基準>
○(良好):非常に指取れが良く、思い通りの量をすくい取ることができる
△(不十分):指取れは良いが、思い通りの量をすくい取り難い
×(不良):硬くて指取れが悪く、思い通りの量を全くすくい取れない、又は、軟らかくて指取れが悪く、思い通りの量を全くすくい取れない
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
表1〜表2の結果から、各実施例の油性ヘアトリートメント組成物は、各比較例のものと対比して、保存安定性に優れるとともに、毛髪に潤い感のあるしなやかなトリートメント効果に優れていることが分かる。さらに、各実施例の油性ヘアトリートメント組成物は、べたつき感やきしみ感がなく、サラりとした軽い仕上がり感が得られ、使用感に格段優れた効果を発揮していることが分かる。加えて、各実施例の油性ヘアトリートメント組成物は、広口ジャー容器に充填した場合において指取れに優れていることも分かる。
【0069】
これに対し、本願発明の必須構成成分を充足しない比較例1〜4では、本願発明の効果を十分に奏し得ないものであることが分かる。さらに、本願発明の必須成分である成分(A)を他の揮発性油剤へ置き換えた比較例5、本願発明の必須成分である成分(B)を他のオイルゲル化剤へ置き換えた比較例6、本願発明の必須成分である成分(C)を他の脂肪酸エステル油へ置き換えた比較例7および比較例8、本願発明の必須成分である成分(D)を他の粒子へ置き換えた比較例9および比較例10においても、本願発明の効果を十分に発揮できていないことが分かる。これら結果からも、本発明の必須構成成分を充足する油性ヘアトリートメント組成物は、格段に優れた効果を発揮し得るものであることが分かる。