特許第6552362号(P6552362)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6552362サーマルプリントヘッド及びサーマルプリンタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552362
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド及びサーマルプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/335 20060101AFI20190722BHJP
   B41J 2/345 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   B41J2/335 101J
   B41J2/345 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-191913(P2015-191913)
(22)【出願日】2015年9月29日
(65)【公開番号】特開2017-65020(P2017-65020A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113322
【氏名又は名称】東芝ホクト電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082740
【弁理士】
【氏名又は名称】田辺 恵基
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】山内 恵
【審査官】 村石 桂一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2−72967(JP,A)
【文献】 特開2001−260405(JP,A)
【文献】 特開2003−220726(JP,A)
【文献】 特開平7−108697(JP,A)
【文献】 特開平5−261953(JP,A)
【文献】 特開2008−126512(JP,A)
【文献】 特開2014−188685(JP,A)
【文献】 米国特許第6154242(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/335−2/345
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
副走査方向に対し傾斜する端面が互いに対向するよう主走査方向に複数個の発熱体板が隣接して並んだ発熱体板組を有し、
一方の前記発熱体板において前記主走査方向に延び発熱部が形成された突条と、他方の前記発熱体板において前記主走査方向に延び発熱部が形成された突条とが、一方の前記発熱体板における前記突条が他方の前記発熱体板における前記突条よりも被印刷媒体の搬送方向の下流側に位置し、一部分が前記副走査方向に沿って重なるよう前記副走査方向に間隔を空けて配され、
一方の前記発熱体板における前記突条において、少なくとも他方の前記発熱体板における前記突条と前記副走査方向に沿って重なる箇所は、他方の前記発熱体板における前記突条よりも外形の曲率が大きく形成されている
サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
一方の前記発熱体板における前記突条は、該発熱体板における前記主走査方向の一端から他端までに亘って、他方の前記発熱体板における前記突条よりも外形の曲率が大きく形成されている
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
一方の前記発熱体板における前記突条は、他方の前記発熱体板における前記突条と前記副走査方向に沿って重なる箇所のみが、他方の前記発熱体板における前記突条よりも外形の曲率が大きく形成されている
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
一方の前記発熱体板における前記突条において、他方の前記発熱体板における前記突条よりも曲率が大きく形成された箇所は、他方の前記発熱体板における前記突条と同じ高さに形成されている
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
副走査方向に対し傾斜する端面が互いに対向するよう主走査方向に複数個の発熱体板が隣接して並んだ発熱体板組と、
被印刷媒体を前記発熱体板に押し付けるプラテンローラと
を有し、
一方の前記発熱体板において前記主走査方向に延び発熱部が形成された突条と、他方の前記発熱体板において前記主走査方向に延び発熱部が形成された突条とが、一方の前記発熱体板における前記突条が他方の前記発熱体板における前記突条よりも前記被印刷媒体の搬送方向の下流側に位置し、一部分が前記副走査方向に沿って重なるよう前記副走査方向に間隔を空けて配され、
一方の前記発熱体板における前記突条において、少なくとも他方の前記発熱体板における前記突条と前記副走査方向に沿って重なる箇所は、他方の前記発熱体板における前記突条よりも外形の曲率が大きく形成されている
サーマルプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタ等に用いられるサーマルプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリントヘッドは、被印刷媒体が搬送される方向に直交する主走査方向に沿って配列された複数の発熱抵抗体の発熱部を発熱させ、その熱により被印刷媒体に文字や図形等の画像を形成する出力用デバイスである。このサーマルプリントヘッドは、バーコードプリンタ、デジタル製版機、ビデオプリンタ、イメージャ、シールプリンタ等の記録機器に広く利用されている。
【0003】
一般的なサーマルプリントヘッドは、放熱板と、放熱板に取り付けられた発熱体板と、発熱体板と同じ側で放熱板に取り付けられた回路基板とを有している。この発熱体板の表面で帯状に延びる発熱領域には、発熱抵抗体が所定の間隔で直線状に配列されている。また、発熱抵抗体を駆動する駆動回路の一部となる駆動IC(Integrated Circuit)は、例えば回路基板に搭載されている。
【0004】
そのようなサーマルプリントヘッドには、複数個の発熱体板を主走査方向に沿って並べて放熱板に載置したものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−260405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなサーマルプリントヘッドにおいては、隣接する発熱体板の連結部を被印刷媒体が搬送される際に該被印刷媒体に印画不具合を発生させず、印画品質を保つことが望まれている。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、印画品質を高め得るサーマルプリントヘッド及びサーマルプリンタを提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明のサーマルプリントヘッドにおいては、副走査方向に対し傾斜する端面が互いに対向するよう主走査方向に複数個の発熱体板が隣接して並んだ発熱体板組を設け、一方の発熱体板において主走査方向に延び発熱部が形成された突条と、他方の発熱体板において主走査方向に延び発熱部が形成された突条とが、一方の発熱体板における突条が他方の発熱体板における突条よりも被印刷媒体の搬送方向の下流側に位置し、一部分が副走査方向に沿って重なるよう副走査方向に間隔を空けて配され、一方の発熱体板における突条において、少なくとも他方の発熱体板における突条と副走査方向に沿って重なる箇所は、他方の発熱体板における突条よりも外形の曲率が大きく形成されているようにした。
【0009】
また本発明のサーマルプリンタにおいては、副走査方向に対し傾斜する端面が互いに対向するよう主走査方向に複数個の発熱体板が隣接して並んだ発熱体板組と、被印刷媒体を発熱体板に押し付けるプラテンローラとを設け、一方の発熱体板において主走査方向に延び発熱部が形成された突条と、他方の発熱体板において主走査方向に延び発熱部が形成された突条とが、一方の発熱体板における突条が他方の発熱体板における突条よりも被印刷媒体の搬送方向の下流側に位置し、一部分が副走査方向に沿って重なるよう副走査方向に間隔を空けて配され、一方の発熱体板における突条において、少なくとも他方の発熱体板における突条と副走査方向に沿って重なる箇所は、他方の発熱体板における突条よりも外形の曲率が大きく形成されているようにした。
【0010】
これにより、搬送上流方向側に位置する突条から被印刷媒体に加わる圧力よりも搬送下流方向側に位置する突条から被印刷媒体に加わる圧力を小さくでき、搬送上流方向側の突条により被印刷媒体に転写されたインクが搬送下流方向側の突条によりインクリボンに逆転写されてしまうことを防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、搬送上流方向側に位置する突条から被印刷媒体に加わる圧力よりも搬送下流方向側に位置する突条から被印刷媒体に加わる圧力を小さくでき、搬送上流方向側の突条により被印刷媒体に転写されたインクが搬送下流方向側の突条によりインクリボンに逆転写されてしまうことを防止でき、かくして印画品質を向上し得るサーマルプリントヘッド及びサーマルプリンタを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】サーマルプリンタの構成を示す一部断面図である。
図2】第1の実施の形態による発熱体板の構成(1)を示す平面図である。
図3】第1の実施の形態による発熱体板及びプラテンローラの構成を示し、図2におけるX−X矢視断面図である。
図4】第1の実施の形態による発熱体板の構成(2)を示し、図2におけるX−X矢視断面図である。
図5】印画時の圧力と転写効率との関係を示すグラフである。
図6】印画時の様子を示し、図2におけるX−X矢視断面図である。
図7】第2の実施の形態による発熱体板の構成を示す平面図である。
図8】従来の発熱体板の構成を示す平面図である。
図9】従来の発熱体板及びプラテンローラの構成を示し、図8におけるX−X矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0014】
なお、図1図5及び図6図9では、副走査方向dsが、被印刷媒体60が搬送される方向を表し、該副走査方向dsに直交する主走査方向dmが、被印刷媒体60が搬送される方向に直交し発熱抵抗体23aが間隔をおいて複数配列され発熱領域24が延びる方向を表している。
【0015】
[1.第1の実施の形態]
[1−1.サーマルプリンタ及びサーマルプリントヘッドの構成]
図1に示すようにサーマルプリンタ1は、サーマルプリントヘッド10を有している。このサーマルプリントヘッド10は、放熱板30、回路基板40及び発熱体板組18を有している。発熱体板組18には、帯状に延びる発熱領域24が形成されている。またこのサーマルプリンタ1は、所定の弾性を持つ材料で円筒状に形成されたプラテンローラ50を有している。このプラテンローラ50は、主走査方向dmに平行な直線上に軸52を持つ。またプラテンローラ50は、該プラテンローラ50の周側面が発熱領域24に接するように配置され、軸52を中心に回転可能に設けられる。またこのサーマルプリンタ1は、インクリボン63を有している。インクリボン63は、プラテンローラ50の軸52に平行な軸65の周りにロール状に巻かれている。インクリボン63は、リボン素材72(図6)にインクが塗布されてインクリボン層73(図6)が形成されており、その軸65に平行な巻き取り側の軸66の周りに巻き取られる。軸66は、モータ等によって駆動される。インクリボン63は、プラテンローラ50の周側面とサーマルプリントヘッド10との間を通るように搬送される。被印刷媒体60は、インクリボン63とプラテンローラ50との間を通るようにサーマルプリントヘッド10に対し印画挿入側から印画排出側に向かって搬送下流方向dsdに沿って搬送される。またインクリボン63は、巻き取り方向に複数の種類の色の領域が形成されている。インクリボン63の各色の領域は、所定の温度以上になると発色し、その際に接触している被印刷媒体60にその色が転写される。
【0016】
サーマルプリンタ1は、駆動モータにより構成された図示しないヘッド押圧部によりサーマルプリントヘッド10における発熱体板組18をプラテンローラ50に押し付ける方向へ押圧することにより、発熱領域24をインクリボン63を介し被印刷媒体60に押し付けてニップ圧を加える。それとともにサーマルプリンタ1は、その被印刷媒体60を搬送下流方向dsdに移動させ、発熱領域24の発熱パターンを被印刷媒体60の移動と共に変化させることにより、加熱されたインクリボン63を被印刷媒体60に転写し、所望の画像を被印刷媒体60上に形成する。
【0017】
放熱板30は、例えばアルミニウム等の金属で形成された板である。回路基板40は、後述する発熱体板20m1及び発熱体板20m2それぞれとほぼ同様の主走査方向dmの長さに分割されており、それぞれ長方形の板状に形成され主走査方向dmに沿って並んで放熱板30に載置されている。また回路基板40は、駆動IC42が搭載されている。駆動IC42にはボンディングワイヤ45の一端が接続され、その他端は回路基板40上の回路パターンと接続されている。また駆動IC42にはボンディングワイヤ44の一端が接続され、その他端は発熱体板組18上の個別電極28a(後述する)のボンディングパッドと接続されている。回路基板40は、制御信号や駆動電力が外部から入力されると共に、発熱領域24に所定の発熱パターンを形成する制御信号や駆動電力をボンディングワイヤ44を介し発熱体板組18に供給する。駆動IC42及びボンディングワイヤ44は、樹脂48で封止されている。
【0018】
図2に示すように、発熱体板組18は、平面視で平行四辺形である発熱体板20m1及び20m2により構成されている。以下では発熱体板20m1及び20m2をまとめて発熱体板20とも呼ぶ。この発熱体板20m1と発熱体板20m2とは、互いに物理的及び電気的に独立している。発熱体板20m1及び20m2は、それぞれ板状に形成され主走査方向dmに沿って隣接して並んで、回路基板40における副走査方向dsの一端側、すなわち被印刷媒体60が搬送される搬送方向の下流側である搬送下流方向dsd側に隣接して放熱板30に載置されている。また発熱体板20m1と発熱体板20m2とは、主走査方向dmの両端面が、副走査方向dsに対し傾斜する直線状にダイシングにより切削されており、発熱体板組18における主走査方向dmの中央部分において連結部70で互いに連結されている。
【0019】
図4に示すように発熱体板20m1は、支持基板22と、発熱抵抗体層23と、電極層28と、保護層29とを有している。発熱体板20m2は、発熱体板20m1とほぼ同様に構成されているため、以下では主に発熱体板20m1について説明する。
【0020】
支持基板22は、例えばアルミナ(Al)等のセラミックの絶縁板22aと、この絶縁板22aの上面に25μmの厚みで層状に形成されたグレーズ層と称される保温層22bとを有している。保温層22bは、例えば酸化珪素(SiO)で形成される。また保温層22bには、2mm幅で主走査方向dmに延び外形が湾曲形状に上方へ突出する突条21m1(図2)が形成されている。この突条21m1は、発熱体板20m1における主走査方向dmの一端から他端までに亘って連続的に形成されている。
【0021】
発熱抵抗体層23は、保温層22bの上面の一部に層状に、例えばTaSiO等のサーメットで形成される。発熱抵抗体層23は、発熱抵抗体23aが主走査方向dmに間隔をおき、発熱体板20m1における主走査方向dmの一端側から他端側まで連続して一列に配列され、それぞれ突条21m1を跨いで副走査方向dsに延設している。
【0022】
電極層28は、例えばアルミニウム(Al)で形成されており、共通電極28b及び個別電極28aにより構成される。共通電極28bは、発熱体板20m1の主走査方向dmの一端側から他端側に亘って延びており、回路基板40上の回路パターンとボンディングワイヤで接続されることにより、駆動電力を供給される。個別電極28aは、発熱抵抗体23aの上面に層状に、主走査方向dmに等間隔をおき、発熱体板20m1における主走査方向dmの一端側から他端側まで連続して主走査方向dmに沿って一列に配列される。共通電極28b及び個別電極28aは、突条21m1の頂部に対し所定長さの間隙を副走査方向dsから挟むよう対向して配置される。共通電極28bを流れてきた電流は、該共通電極28bと個別電極28aとの間隙に位置する発熱抵抗体23aを通る。このため、共通電極28bと個別電極28aとの間隙が、サーマルプリントヘッド10が被印刷媒体60に印画する際に発熱する発熱部23bとなる。この発熱部23bは、主走査方向dmに等間隔をおいて複数個配列されることにより、主走査方向dmに延びる発熱部群を形成する。
【0023】
電極層28及び発熱抵抗体層23は、例えば酸窒化珪素(SiON)でなる保護層29で覆われている。この保護層29は、電極層28の一部の表面には設けられておらず、この部分にボンディングワイヤ44が接続される。保護層29は、膜厚が20μm程度となっている。
【0024】
発熱体板20m2(図2)は、突条21m2が、発熱体板20m2における主走査方向dmの一端から他端までに亘って連続的に形成されている。突条21m1と突条21m2とは、副走査方向dsのピッチが0.8mm以上となるよう、副走査方向dsに間隔を空けて、すなわち副走査方向dsに位置ずれして配置されている。このように突条21m1と突条21m2とは、主走査方向dmに沿って互い違いに配置されている。発熱体板20m1における発熱部群と、発熱体板20m2における発熱部群とにより、発熱体板20m1と発熱体板20m2とが接合された発熱体板組18の主走査方向dmの一端から他端まで主走査方向dmに延びる発熱領域24が形成される。また、発熱体板20m1における突条21m1と、発熱体板20m2における突条21m2とは、連結部70近傍において副走査方向dsに沿って互いに一部分が重なるよう配置されている。以下では突条21m1及び21m2をまとめて突条21とも呼ぶ。
【0025】
図2図3及び図4に示すように発熱体板20m1における突条21m1は、発熱体板20m2における突条21m2に対し、絶縁板22aの上面に垂直な方向に沿う高さが同一であるものの、外形の曲率が大きく形成されている。なお図3図6及び図9において発熱抵抗体層23、電極層28及び保護層29は図示せず省略する。
【0026】
ここで、図5に、印画時において突条21m1及び21m2から被印刷媒体60に加わる圧力と、転写効率との関係である圧力転写効率グラフG1を示す。圧力転写効率グラフG1においては、印画時に突条21m1から被印刷媒体60に加わる圧力に対する転写効率を示す曲線が曲率大曲線L1で、印画時に突条21m2から被印刷媒体60に加わる圧力に対する転写効率を示す曲線が曲率小曲線L2で示されている。印画時の圧力が所定の値である印画時圧力P1の場合、曲率小曲線L2が示す転写効率の値である曲率小時転写効率よりも曲率大曲線L1が示す転写効率の値である曲率大時転写効率の方が小さくなる。具体的に曲率大時転写効率は、曲率小時転写効率よりも30%程低下した値となっている。これは、突条21の曲率を大きくすると該突条21から被印刷媒体60に加わる単位面積当たりの圧力が下がるためである。このように、印画時の圧力が所定の印画時圧力P1のとき、曲率大時転写効率と曲率小時転写効率とには、30%程度の転写効率差D1が発生する。
【0027】
[1−2.効果等]
ここで、図8に従来の発熱体板組1018を示すように、発熱体板組1018は、発熱体板1020m1及び20m2が主走査方向dmに沿って隣接して並んでいる。また発熱体板1020m1と発熱体板20m2とは、主走査方向dmの中央部分において、副走査方向dsに対し傾斜する直線状に形成された連結部70で互いに連結されている。発熱体板組1018は、発熱体板組18(図2)と比べて、発熱体板1020m1が発熱体板20m1と異なっているものの、それ以外は同様に構成されている。また、発熱体板1020m1における突条1021m1と、発熱体板20m2における突条21m2とは、連結部70近傍において副走査方向dsに沿って互いに一部分が重なるよう配置されている。
【0028】
図8及び図9に示すように発熱体板1020m1には、発熱体板20m2における突条21m2と同一断面形状であり、高さと外形の曲率とが同様の突条1021m1が、該発熱体板1020m1における主走査方向dmの一端から他端までに亘って連続的に形成されている。このため発熱体板組1018においては、印画時に突条1021m1から被印刷媒体60に加わる圧力に対する転写効率と、突条21m2から被印刷媒体60に加わる圧力に対する転写効率とがほぼ等しいものとなる。印画が行われる際に、印画挿入側(搬送上流方向dsu側)から印画排出側(搬送下流方向dsd側)へ向かって副走査方向dsに沿って被印刷媒体60(図示せず)が搬送されると、連結部70近傍において被印刷媒体60は、搬送上流方向dsu側に位置する突条21m2と、搬送下流方向dsd側に位置する突条1021m1との両方に接触する事となる。ここで、突条1021m1と突条21m2とは同一の曲率であるため、突条1021m1から被印刷媒体60に加わる圧力と、突条21m2から被印刷媒体60に加わる圧力とは等しいものとなる。このため発熱体板組1018においては、連結部70近傍において突条21m2により被印刷媒体60に転写されたインクがインクリボン63に戻ってしまう逆転写が発生し、被印刷媒体60に転写されたインクがかすれてしまい、印画された内容がかすれたりムラになったりして印画品質を保てない可能性があった。
【0029】
これに対しサーマルプリンタ1は、突条21m1の曲率を突条21m2よりも大きくするようにした。印画を行う際、サーマルプリンタ1は、印画挿入側(搬送上流方向dsu側)から印画排出側(搬送下流方向dsd側)へ向かって副走査方向dsに沿って被印刷媒体60を搬送し、まず、被印刷媒体60において突条21m2に対応するエリアの印画を突条21m2により行う。図6に示すように、連結部70近傍においては、搬送上流方向dsu側に位置する突条21m2においてインクリボン63からインクが溶けて被印刷媒体60に押し込まれて転写される。続いてサーマルプリンタ1は、搬送下流方向dsd側へ被印刷媒体60を搬送し、被印刷媒体60において突条21m1に対応するエリアの印画を突条21m1により行う。このとき連結部70近傍において突条21m2と突条21m1とが副走査方向dsに沿って互いに一部分が重なる箇所においては、サーマルプリンタ1は突条21m1により印画を行わない。
【0030】
このとき、突条21m2と突条21m1とが副走査方向dsに沿って互いに一部分が重なる箇所においては、被印刷媒体60は突条21m2と突条21m1との両方に接触するが、突条21m1から被印刷媒体60に加わる圧力は、突条21m2から被印刷媒体60に加わる圧力よりも小さくなる。このためサーマルプリンタ1においては、連結部70近傍において突条21m2により被印刷媒体60に転写されたインクが突条21m1においてインクリボン63に戻ってしまうことを防止できる。これによりサーマルプリンタ1は、逆転写を防止できるため、印画された内容がかすれたりムラになったりすることを抑え、印画品質を保つことができる。
【0031】
ここで、突条21m1の曲率は突条21m2よりも大きいため、突条21m1の体積は突条21m2よりも大きくなるために蓄熱し易くなると共に、被印刷媒体60への印画圧力は突条21m2よりも小さくなる。これに対しサーマルプリンタ1は、突条21m1に加える印加エネルギーと突条21m2に加える印加エネルギーとを異なるように調整することにより、突条21m1と突条21m2とで印画濃度が同等になるように印画する。
【0032】
以上の構成によればサーマルプリンタ1は、副走査方向dsに対し傾斜する端面が互いに対向するよう主走査方向dmに複数個の発熱体板20が隣接して並んだ発熱体板組18と、被印刷媒体60を発熱体板20に押し付けるプラテンローラ50とを設け、一方の発熱体板20m1において主走査方向dmに延び発熱部23bが形成された突条21m1と、他方の発熱体板20m2において主走査方向dmに延び発熱部23bが形成された突条21m2とを、一方の発熱体板20m1における突条21m1が、他方の発熱体板20m2における突条21m2よりも被印刷媒体60の搬送方向の下流側に位置し、一部分が副走査方向dsに沿って重なるよう副走査方向dsに間隔を空けて配し、一方の発熱体板20m1における突条21m1において、少なくとも他方の発熱体板20m2における突条21m2と副走査方向dsに沿って重なる箇所を、他方の発熱体板20m2における突条21m2よりも外形の曲率が大きく形成するようにした。
【0033】
これによりサーマルプリンタ1は、連結部70近傍において、搬送上流方向dsu側に位置する突条21m2から被印刷媒体60に加わる圧力よりも搬送下流方向dsd側に位置する突条21m1から被印刷媒体60に加わる圧力を小さくでき、突条21m2により被印刷媒体60に転写されたインクが突条21m1によりインクリボン63に逆転写されてしまうことを防止できる。
【0034】
[2.第2の実施の形態]
[2−1.サーマルプリンタ、サーマルプリントヘッド及び発熱体板の構成]
図1と、図2と対応する部材に同一符号を付した図7とに示すように、第2の実施の形態によるサーマルプリンタ101におけるサーマルプリントヘッド110は、第1の実施の形態によるサーマルプリンタ1におけるサーマルプリントヘッド10と比べて、発熱体板組118が発熱体板組18と異なっているものの、それ以外は同様に構成されている。
【0035】
発熱体板組118は、発熱体板120m1及び20m2により構成されている。発熱体板組118は、発熱体板組18と比べて、発熱体板120m1が発熱体板20m1と異なっているものの、それ以外は同様に構成されている。発熱体板120m1における突条121m1は、連結部70近傍において突条21m2と突条121m1とが副走査方向dsに沿って互いに一部分が重なる箇所において、発熱体板20m2における突条21m2に対し、高さが同一であり且つ外形の曲率が大きい大曲率部80が形成されている。また突条121m1は、大曲率部80よりも連結部70から離隔する側において、突条21m2に対し高さと外形の曲率とが同様の通常曲率部82が形成されている。
【0036】
このようにサーマルプリントヘッド10は、連結部70近傍において突条21m2と突条121m1とが副走査方向dsに沿って互いに一部分が重なる箇所のみ、突条121m1の曲率を突条21m2よりも大きく形成するようにした。
【0037】
発熱体板組118においては、突条121m1のうち実際に印画に用いられる、連結部70近傍以外の箇所は、突条21m2と同様の曲率となっている。このため突条121m1の通常曲率部82における蓄熱能力と被印刷媒体60への印画圧力とは突条21m2と同等となる。これによりサーマルプリンタ101は、突条121m1に加える印加エネルギーを突条21m2に加える印加エネルギーと同等にすれば、突条121m1と突条21m2との印画濃度を同等にして印画できる。その他第2の実施の形態によるサーマルプリントヘッド110は、第1の実施の形態によるサーマルプリントヘッド10とほぼ同様の作用効果を奏する。
【0038】
[3.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、印画時圧力P1における転写効率差D1を30%程度にする場合について述べた。本発明はこれに限らず、逆転写が発生しなければ、被印刷媒体60、インクリボン63及び突条21の曲率に応じて転写効率差D1を任意の値にして良い。
【0039】
また上述した第2の実施の形態においては、突条21m2と突条121m1とが副走査方向dsに沿って互いに一部分が重なる箇所にのみ大曲率部80を形成するようにした。本発明はこれに限らず、大曲率部80を、突条21m2と突条121m1とが副走査方向dsに沿って互いに一部分が重なる箇所よりも、発熱体板120m1において連結部70から離隔する端部側までに亘って形成しても良い。
【0040】
また上述した実施の形態においては、2枚の発熱体板が主走査方向dmに並んだ発熱体板組に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、1枚の発熱体板内で、発熱する突条が副走査方向dsに2列以上並んで形成された発熱体板に本発明を適用しても良い。
【0041】
さらに上述した実施の形態においては、2枚の発熱体板が主走査方向dmに並んだ発熱体板組に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、3枚以上の任意の枚数の発熱体板が主走査方向dmに並んだ発熱体板組に本発明を適用しても良い。3枚以上の枚数の発熱体板を主走査方向dmに並べる場合、発熱体板を平面視で台形とすることが望ましい。
【0042】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【0043】
さらに上述した第1の実施の形態においては、発熱体板組としての発熱体板組18によってサーマルプリントヘッドとしてのサーマルプリントヘッド10を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる発熱体板組によってサーマルプリントヘッドを構成しても良い。
【符号の説明】
【0044】
1、101……サーマルプリンタ、10、110…サーマルプリントヘッド、18、118、1018……発熱体板組、20m1、20m2、120m1、120m2、1020m1、1020m2……発熱体板、21……突条、22……支持基板、22a……絶縁板、22b……保温層、23……発熱抵抗体層、23a……発熱抵抗体、23b……発熱部、24……発熱領域、28……電極層、28a……個別電極、28b……共通電極、29……保護層、30…放熱板、40……回路基板、42……駆動IC、44……ボンディングワイヤ、45……ボンディングワイヤ、48……樹脂、50……プラテンローラ、52……軸、60……被印刷媒体、63……インクリボン、65……軸、66……軸、70……連結部、72……リボン素材、73……インクリボン層、80……大曲率部、82……通常曲率部、G1……圧力転写効率グラフ、L1……曲率大曲線、L2……曲率小曲線、D1……転写効率差、P1……印画時圧力、dm……主走査方向、ds……副走査方向、dsd……搬送下流方向、dsu……搬送上流方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9