(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0019】
図1はワイパ装置を搭載した車両を示す概略図を、
図2は
図1のワイパ装置の詳細を示す斜視図を、
図3はマウントラバーの装着状態を示す断面図を、
図4はカラー部材が装着されたマウントラバーを示す斜視図を、
図5は
図4のマウントラバーの断面図をそれぞれ示している。
【0020】
図1に示すように、自動車等の車両10の前方側には、フロントウィンドシールド11が設けられている。フロントウィンドシールド11上には、フロントウィンドシールド11の表面に付着した雨水や埃等を払拭する第1ワイパ部材12および第2ワイパ部材13が設けられている。
【0021】
第1ワイパ部材12は、運転席側に対応して設けられ、第1ワイパブレード12aと第1ワイパアーム12bとを備えている。第1ワイパブレード12aは第1ワイパアーム12bの先端部に回動自在に取り付けられている。一方、第2ワイパ部材13は、助手席側に対応して設けられ、第2ワイパブレード13aと第2ワイパアーム13bとを備えている。第2ワイパブレード13aは第2ワイパアーム13bの先端部に回動自在に取り付けられている。
【0022】
第1,第2ワイパブレード12a,13aは、フロントウィンドシールド11上の下反転位置LRPと上反転位置URPとの間に形成される第1,第2払拭範囲11a,11bを、それぞれ同期して同一方向に往復払拭動作するようになっている。つまり、第1,第2ワイパブレード12a,13aの払拭パターンは、タンデム型となっている。
【0023】
第1,第2ワイパブレード12a,13aは、ワイパ装置(駆動装置)14によって揺動駆動される。ワイパ装置14は、
図2に示すように、第1ホルダ部材15aおよび第2ホルダ部材15bを備えている。第1ホルダ部材15aは、車両10の車体構造部材を形成するダッシュアッパーパネル(図示せず)の固定部(固定対象物)Aに固定される取付腕(被固定部)16aを備えている。一方、第2ホルダ部材15bは、ダッシュアッパーパネルの固定部(固定対象物)Bに固定される取付腕(被固定部)16bを備えている。
【0024】
図2に示すように、各取付腕16a,16bには、支持装置としてのマウントラバー60がそれぞれ装着されている。そして、各取付腕16a,16bは、各固定部A,Bに対して、それぞれマウントラバー60を介してフローティング状態となるように、固定部材70(
図3参照)で固定されている。これにより、ワイパ装置14の各取付腕16a,16bは、マウントラバー60によって弾性支持される。なお、マウントラバー60の詳細構造については、後述する。
【0025】
第1ホルダ部材15aおよび第2ホルダ部材15bは、それぞれ中空のパイプ材よりなるフレーム部材17によって互いに連結されている。このように、ワイパ装置14は、所謂、フレーム一体型のモジュラー型ワイパ装置となっている。
【0026】
第1,第2ホルダ部材15a,15bは、運転席側に対応した第1駆動軸18aおよび助手席側に対応した第2駆動軸18bをそれぞれ回動自在に支持している。これらの第1,第2駆動軸18a,18bの先端部分は、カウルトップパネル(図示せず)を介して車両10(
図1参照)の外部に延出されている。そして、
図1に示すように、第1駆動軸18aの先端部分には、第1ワイパアーム12bの基端部分が固定されている。一方、第2駆動軸18bの先端部分には、第2ワイパアーム13bの基端部分が固定されている。
【0027】
第1,第2駆動軸18a,18bの基端部分には、運転席側に対応した第1駆動レバー19aおよび助手席側に対応した第2駆動レバー19bの一端部分がそれぞれ固定されている。これらの第1,第2駆動レバー19a,19bの他端部分には、それぞれボールジョイント(図示せず)を介して連結ロッド20の両端部分が回動自在に連結されている。
【0028】
また、第2駆動レバー19bの他端部分には、さらに別のボールジョイント(図示せず)を介して、駆動ロッド21の一端部分が回動自在に連結されている。そして、駆動ロッド21の他端部分は、ボールジョイント(図示せず)を介してクランクアーム22の一端部分に回動自在に連結されている。
【0029】
クランクアーム22の他端部分は、ワイパモータ30の出力軸33(
図1参照)に固定されており、クランクアーム22は、出力軸33の回転に伴ってその一端部分、つまり駆動ロッド21との連結部分が回転するようになっている。ここで、クランクアーム22,駆動ロッド21,第2駆動レバー19b,連結ロッド20および第1駆動レバー19aによりリンク機構が形成されている。このリンク機構は、出力軸33の回転運動を揺動運動に変換して、第1,第2駆動軸18a,18bをそれぞれ揺動させるようになっている。
【0030】
図2に示すように、フレーム部材17の軸方向に沿う第1ホルダ部材15a寄りの部分には、減速機構付きのワイパモータ(駆動源)30が固定されている。ワイパモータ30は、モータ部40とギヤ部50とを備えており、モータ部40およびギヤ部50は、複数の締結ネジ31(図示では1つのみ示す)によって互いに連結されている。そして、ギヤ部50のギヤハウジング51は、一対の締結ボルト32によってフレーム部材17に強固に固定されている。これにより、ワイパモータ30は、フレーム部材17に対してがたつくこと無く固定される。
【0031】
モータ部40のモータハウジング41内には、固定子としての永久磁石(図示せず)が固定されている。また、永久磁石の径方向内側には、回転子としてのアーマチュア(図示せず)が回転自在に設けられている。そして、アーマチュアの回転は、ギヤハウジング51内の減速機構(図示せず)に伝達されて、当該減速機構により減速されて高トルク化された回転力が、出力軸33(
図1参照)からクランクアーム22に伝達される。なお、ワイパモータ30の減速機構には、小型で大きな減速比が得られるウォーム減速機を採用している。
【0032】
ギヤ部50は、ギヤハウジング51とギヤカバー52とを備えている。ギヤハウジング51は、溶融したアルミ材料等を鋳造成形することで略バスタブ形状に形成され、ギヤカバー52は、溶融したプラスチック材料等を射出成形することにより略バスタブ形状に形成されている。ギヤハウジング51およびギヤカバー52は、それぞれの開口部分を互いに突き合わせて密着させ、その状態のもとで複数の固定ネジS(図示では1つのみ示す)によって連結されている。
【0033】
ギヤカバー52の内側には、制御基板(図示せず)が装着されている。また、ギヤカバー52のモータ部40側とは反対側には、コネクタ接続部52aが一体に設けられている。コネクタ接続部52aには、車両10側の外部コネクタ(図示せず)が電気的に接続され、外部コネクタには、車両10に設けたコントローラや操作スイッチ等(図示せず)が電気的に接続されている。これにより、操作スイッチをオン操作することで、コントローラから制御基板を介してモータ部40に駆動電流が流れる。
【0034】
ギヤハウジング51のモータ部40側とは反対側には、第1ホルダ部材15a側に向けて突出するようにして、取付腕(被固定部)51aが設けられている。この取付腕51aには、各取付腕16a,16bに装着したものと同じマウントラバー60が装着されている。そして、取付腕51aは、固定部(固定対象物)Cに対して、マウントラバー60を介してフローティング状態となるように、固定部材70(
図3参照)で固定されている。ここで、固定部Cは、ダッシュアッパーパネルではなく、例えば、車両10の車体構造部材を形成するサスペンションマウント(図示せず)に設けられている。このように、ワイパ装置14の取付腕51aについても、マウントラバー60によって弾性支持される。
【0035】
図3に示すように、マウントラバー60は、車両10(
図1参照)の車体構造部材である各固定部A,B,Cに、それぞれ固定部材70によって固定されている。つまり、ワイパ装置14(
図2参照)の各取付腕16a,16b,51aは、各固定部A,B,Cに対して、それぞれマウントラバー60によって弾性支持されている。ここで、各固定部A,B,Cは、車両10の略水平方向に延在しており、本発明における第1支持部を構成している。
【0036】
固定部材70は、ボルト71およびナット72と、ボルト71のナット72に対するねじ込み量を規制するカラー部材73とを備えている。ここで、ボルト71およびカラー部材73は、各固定部A,B,Cの延在方向と交差する方向(直交方向)に延ばされている。すなわち、固定部材70は、本発明における第2支持部を構成している。
【0037】
ボルト71の頭部71aには、略円盤状に形成された鍔部71bが一体に設けられている。この鍔部71bの直径寸法D1(例えば32.0mm)は、マウントラバー60の直径寸法D2(例えば28.0mm)よりも大きい寸法に設定されている(D1>D2)。これにより、固定部材70の軸方向上方(図中上側)からボルト71を見たときに、マウントラバー60は鍔部71bによって隠される。
【0038】
ここで、鍔部71bは、固定部材70の軸方向から各固定部A,B,Cと対向しており、各固定部A,B,Cとともに、マウントラバー60をその軸方向から挟持している。このように、鍔部71bにおいても、車両10の略水平方向に延在しており、本発明における第1支持部を構成している。ただし、鍔部71bは、頭部71aに一体に設けなくても良い。例えば、鍔部71bに換えて、頭部71aとは別体の円盤状の平座金を用いても良い。
【0039】
なお、ボルト71にねじ結合されるナット72は、溶接等の固定手段により、各固定部A,B,Cの内側(裏側)に予め固定されている。これにより、ワイパ装置14の車両10への搭載時において、ボルト71をナット72に対して容易にねじ結合することができる。よって、作業性を向上させることができる。
【0040】
カラー部材73は、鋼板等を湾曲させることで筒状に形成されている。カラー部材73は、ボルト71のナット72に対するねじ込み量を規制し、ボルト71のナット72に対する過剰なねじ込みやねじ込み不足を無くす機能を有している。これにより、マウントラバー60は、設計通りの防振性能を発揮することができる。
【0041】
図3ないし
図5に示すように、マウントラバー60は、天然ゴム等の弾性材料を射出成形等することで筒状に形成されている。マウントラバー60は、筒状部61を備えており、この筒状部61は、カラー部材73の外周部に装着されている。筒状部61は、カラー部材73の周囲全体を覆うように設けられ、マウントラバー60を各固定部A,B,Cにそれぞれ装着した状態のもとで、各固定部A,B,Cと鍔部71bとの間に挟持され、その軸方向への移動が規制された状態となっている。また、筒状部61は、カラー部材73の周囲全体を覆うように設けられるため、カラー部材73によって、その径方向への移動が規制された状態となっている。
【0042】
筒状部61の径方向内側、つまりカラー部材73が装着される側には、カラー部材73の周囲を取り囲むようにして環状の内側凸部61aが設けられている。この内側凸部61aは、カラー部材73に向けて突出され、断面が円弧形状に形成されている。内側凸部61aの円弧形状の直径寸法はD3(例えば5.0mm)に設定されている。また、内側凸部61aは、筒状部61の軸方向中央部に設けられている。
【0043】
そして、筒状部61における内側凸部61aの頂部のみが、カラー部材73の外周部かつ軸方向中央部に接触されている。すなわち、筒状部61の軸方向に沿う内側凸部61aの両側(図中上下側)は、カラー部材73に対して非接触の状態となっている。なお、内側凸部61aとカラー部材73との接触部分を接触部P1とする。
【0044】
筒状部61の軸方向長さL1(例えば18.3mm)は、カラー部材73の軸方向長さL2(例えば17.3mm)よりも若干長く設定されている(L1>L2)。そして、内側凸部61aの頂部が、カラー部材73の軸方向中央部に接触されるので、筒状部61およびカラー部材73の軸方向両側には、寸法がT1(=(L1−L2)/2)の段差、例えば0.5mmの段差が形成される。
【0045】
筒状部61の径方向外側、つまりカラー部材73が装着される側とは反対側には、環状凹部61bが設けられている。この環状凹部61bは、筒状部61の径方向内側に向けて窪んでおり、かつ筒状部61の軸方向中央部に設けられている。環状凹部61bには、ワイパ装置14の各取付腕16a,16b,51aの先端部分(
図2参照)が入り込んで装着されるようになっている。これにより、ワイパ装置14(各取付腕16a,16b,51a)は、各固定部A,B,Cに対して、マウントラバー60を介してフローティング状態で支持される(
図3参照)。
【0046】
環状凹部61bの底部側には、各取付腕16a,16b,51aに向けて突出された環状の外側凸部61cが設けられている。この外側凸部61cは、断面が円弧形状に形成されている。外側凸部61cの円弧形状の直径寸法はD3(例えば5.0mm)に設定されている。そして、外側凸部61cは、筒状部61の径方向から内側凸部61aと対向している。また、筒状部61における外側凸部61cの頂部のみが、各取付腕16a,16b,51aに接触されている。すなわち、筒状部61の軸方向に沿う外側凸部61cの両側(図中上下側)は、各取付腕16a,16b,51aに対して非接触の状態となっている。なお、外側凸部61cと各取付腕16a,16b,51aとの接触部分を接触部P2とする。
【0047】
図5に示すように、内側凸部61aおよび外側凸部61cは、マウントラバー60およびカラー部材73の軸線C1と交差する方向(直交方向)に延びる基準線(線分)BL上に、それぞれ配置されている。つまり、
図3に示すように、マウントラバー60を各固定部A,B,Cにそれぞれ装着した状態のもとで、内側凸部61aおよび外側凸部61cは、各固定部A,B,Cの延在方向(図中左右方向)と平行な基準線BL上に、それぞれ配置されている。具体的には、内側凸部61aの頂部および外側凸部61cの頂部は、それぞれ基準線BL上に配置されており、接触部P1および接触部P2についても、それぞれ基準線BL上に配置されている。これにより、基準線BL上には隙間等が存在しないので、マウントラバー60の横剛性を、従前に比して高くすることができる。
【0048】
筒状部61の径方向外側で、かつ軸方向両端部には、環状の荷重受け部61d,61eがそれぞれ設けられている。これらの荷重受け部61d,61eは、基準線BLを挟んでそれぞれ対向配置され、マウントラバー60の径方向に沿う幅寸法はT2(例えば2.0mm)に設定されている。また、各荷重受け部61d,61eは、筒状部61の軸方向から、環状凹部61bと対向している。つまり、各荷重受け部61d,61eは、各取付腕16a,16b,51aの上下動に伴って、上下動するようになっている。
【0049】
図3に示すように、マウントラバー60を各固定部A,B,Cにそれぞれ装着した状態のもとで、荷重受け部61dの先端部分と各固定部A,B,Cとの間の離間寸法はT3(例えば1.5mm)となっている。また、荷重受け部61eの先端部分と鍔部71bとの間の離間寸法についてもT3となっている。すなわち、マウントラバー60の自然状態(マウントラバー60に大きな荷重が掛かっていない状態)においては、
図3に示すように、各荷重受け部61d,61eは、各固定部A,B,Cおよび鍔部71bにそれぞれ接触することが無く、ワイパ装置14(
図2参照)からの荷重を受けない。これにより、各荷重受け部61d,61eが各固定部A,B,Cおよび鍔部71bにそれぞれ接触するまでのマウントラバー60の縦剛性を、従前に比して低くすることができる。
【0050】
図5に示すように、筒状部61の軸方向両側には、環状の凹部61f,61gが設けられている。これらの凹部61f,61gの径方向内側は、断面が円弧形状に形成されており、その半径寸法はR1(例えば5.0mm)に設定されている。一方、各凹部61f,61gの径方向外側は、筒状部61の軸方向に沿って真っ直ぐに延ばされている。このように、各凹部61f,61gのそれぞれを、円弧形状と真っ直ぐな壁とで形成することで、マウントラバー60を射出成形する際に用いる金型(図示せず)の型抜きを容易にしつつ、各荷重受け部61d,61eの剛性を設定し易くしている。すなわち、各荷重受け部61d,61eの幅寸法T2を適宜変更することで、各荷重受け部61d,61eの剛性を任意に設定することができる。
【0051】
次に、以上のように形成したマウントラバー60の車両10への装着手順について、図面を用いて詳細に説明する。
【0052】
図6(a),(b)はマウントラバーの車両への装着手順を説明する断面図を示している。
【0053】
まず、
図6(a)に示すように、筒状部61の径方向内側にカラー部材73を装着したマウントラバー60を準備するとともに、当該マウントラバー60を各取付腕16a,16b,51aの先端部分にそれぞれ装着しておく。このとき、カラー部材73の軸方向中央部の位置と、マウントラバー60の軸方向中央部の位置とを一致させておく。
【0054】
次いで、ワイパ装置14の各取付腕16a,16b,51aを、車両10の各固定部A,B,Cに載置する。その後、それぞれのカラー部材73に、ボルト71をそれぞれ挿通する。そして、各固定部A,B,Cに対応した各ボルト71を、それぞれボックストレンチ等の工具(図示せず)を用いて、破線矢印M方向に回転させる。これにより、ボルト71がナット72にねじ込まれていく。
【0055】
その後、
図6(b)の破線矢印Mに示すように、ボルト71のナット72へのねじ込み作業を進めていくと、
図3に示すように、筒状部61の軸方向長さL1が、カラー部材73の軸方向長さL2よりも若干長く設定されているため、筒状部61の軸方向両側が、各固定部A,B,Cおよび鍔部71bによって押し潰される。これにより、筒状部61の軸方向に押圧力F1がバランス良く作用して、各固定部A,B,Cと鍔部71bとの間の正規位置(中央部)にマウントラバー60が配置される。
【0056】
また、押圧力F1は、内側凸部61aと外側凸部61cとの双方に伝達される。その後、押圧力F2として、内側凸部61aからカラー部材73に作用するとともに、外側凸部61cから各取付腕16a,16b,51aに作用する。ここで、押圧力F2は、内側凸部61aとカラー部材73との接触部P1(
図5参照)、および外側凸部61cと各取付腕16a,16b,51aとの接触部P2(
図5参照)上に伝達される。
【0057】
つまり、押圧力F2を、基準線BL上の1箇所に伝達させることができ、各固定部A,B,Cにおいて、マウントラバー60の横剛性がばらつくのを抑制することができる。ここで、仮に、従前のように軸方向両側寄りの2箇所で支持するマウントラバー(支持装置)の場合には、押圧力F2が分散されてしまい、横剛性にばらつきが発生する虞がある。
【0058】
その後、鍔部71bがカラー部材73に接触して、それ以上のボルト71のナット72に対するねじ込み量が規制されて、ボルト71のナット72へのねじ込み作業が終了する。そして、各固定部A,B,Cについて、それぞれ同様にねじ込み作業をすることで、ワイパ装置14(
図2参照)の車両10(
図1参照)への搭載が完了する。このようにして、各固定部A,B,Cに対応したマウントラバー60が、それぞれ車両10に装着される。
【0059】
次に、以上のように形成したマウントラバー60の防振性能について、図面を用いて詳細に説明する。
【0060】
図7は本発明のマウントラバーと比較例のマウントラバーとの振動特性を比較したグラフを、
図8はワイパ装置からの縦荷重が大きい時のマウントラバーの変形状態を説明する断面図を、
図9は本発明のマウントラバーと比較例のマウントラバーとの縦剛性の大きさを比較したグラフをそれぞれ示している。
【0061】
ここで、比較例のマウントラバーは、
図7および
図9の破線円の内部に示す形状とされる。具体的には、比較例のマウントラバーは、本発明のマウントラバー60における荷重受け部61d,61e(
図5参照)を備えていない。また、比較例のマウントラバーは、従前のものと同様に、マウントラバーの径方向内側がカラー部材の軸方向両側寄りの2箇所で支持され、マウントラバーの軸方向中央部とカラー部材との間に環状の隙間が形成されている。
【0062】
図7に示すように、ワイパ装置14の通常作動時、つまり各ワイパアーム12b,13b(
図1参照)に対して、落雪等の大きな荷重が掛かっていない作動時において、本発明のマウントラバー60および比較例のマウントラバーは、何れも略同様の防振性能(振動特性)を発揮する。しかしながら、中間周波数領域においては、本発明のマウントラバー60の方が、比較例のマウントラバーに比して、振動の大きさ[dB]が小さくなっている。
【0063】
これは、比較例のマウントラバーにおいては、その径方向内側がカラー部材の軸方向端部寄りで支持されるため、筒状部の軸方向端部における縦剛性が、本発明に比して高くなっていることに起因するものである。したがって、本発明のマウントラバー60の方が、比較例のマウントラバーに比して、防振性能に優れていると言える。
【0064】
また、
図8に示すように、ワイパ装置14の通常作動時の荷重に比して、各ワイパアーム12b,13bに落雪等の大きな荷重が掛かると、各取付腕16a,16b,51aから、マウントラバー60の軸方向に対して大きな荷重F3が負荷される。これにより、マウントラバー60の各固定部A,B,C側(図中下側)が圧縮されて、各取付腕16a,16b,51aが、各固定部A,B,Cに近接する。これにより、各固定部A,B,C側にある荷重受け部61dの先端部分が、各固定部A,B,Cに接触される。その後、荷重受け部61dが弾性変形して、ワイパ装置14の大きな振動を減衰する。
【0065】
すなわち、本発明のマウントラバー60の縦剛性と、比較例のマウントラバーの縦剛性とを比較すると、
図9に示すような特性となる。具体的には、本発明のマウントラバー60においては、マウントラバーの撓み量がT3[mm](
図3参照)となった後は、荷重受け部61dが各固定部A,B,Cに接触し、かつ荷重受け部61dが弾性変形を始めるので、縦剛性の大きさの変化の割合(グラフの傾斜角度)が大きくなる。これに対し、比較例のマウントラバーにおいては、本発明のような荷重受け部を備えないので、縦剛性の大きさの変化の割合は略一定のままである。
【0066】
このように、本発明のマウントラバー60では、大きな荷重F3を受けないワイパ装置14の通常作動時においては、マウントラバー60の縦剛性は十分な柔軟性を有しており、ワイパ装置14の振動が各固定部A,B,Cに伝達されるのを効果的に抑えることができる。一方、大きな荷重F3を受けるような異常作動時(大荷重負荷動作時)においては、マウントラバー60の縦剛性が高くなって、ワイパ装置14の大きな振動を減衰するようになる。
【0067】
ここで、
図9に示すように、撓み量が少ない領域においては、比較例のマウントラバーの方が、本発明のマウントラバー60に比して、縦剛性が若干大きくなっている。これは、上述のように、比較例のマウントラバーにおいては、その径方向内側がカラー部材の軸方向端部寄りで支持されるため、筒状部の軸方向端部における縦剛性が、本発明に比して高くなっていることに起因するものである。
【0068】
ただし、上述においては、荷重F3の負荷方向が図中下方であり、荷重受け部61dが各固定部A,B,Cに接触されて弾性変形する場合を示したが、荷重F3の負荷方向が図中上方の場合には、上述とは逆に、荷重受け部61eが鍔部71bに接触されて弾性変形される。
【0069】
以上詳述したように、本実施の形態に係るマウントラバー60によれば、筒状部61に設けられる内側凸部61aおよび外側凸部61cが、各固定部A,B,Cの延在方向と平行な基準線BL上にそれぞれ配置されるようにし、かつ筒状部61の軸方向端部に、筒状部61の軸方向に沿う各取付腕16a,16b,51aからの荷重が、ワイパ装置14の通常作動時の荷重よりも大きい荷重(荷重F3)の時に、各固定部A,B,Cに接触される荷重受け部61dを設けた。
【0070】
これにより、マウントラバー60の横剛性を高めつつ、マウントラバー60の縦剛性を低くして、これらの剛性の差を小さくすることができる。よって、ワイパ装置14の大きな移動を抑えつつ、ワイパ装置14の振動が各固定部A,B,Cに伝達されるのを抑制できる。
【0071】
また、筒状部61の軸方向に沿う各取付腕16a,16b,51aからの荷重が、ワイパ装置14の通常作動時の荷重よりも大きい荷重(荷重F3)の時に、荷重受け部61dが各固定部A,B,Cに接触されるので、ある程度の大きさまでのワイパ装置14の振動を各固定部A,B,Cに伝達し難くでき、かつそれ以上に大きなワイパ装置14の振動を減衰することができる。
【0072】
さらに、本実施の形態に係るマウントラバー60によれば、内側凸部61aが、筒状部61の軸方向中央部に設けられ、筒状部61の軸方向に沿う内側凸部61aの両側が、カラー部材73に対して非接触の状態とされる。
【0073】
これにより、マウントラバー60の径方向に沿う各取付腕16a,16b,51aからの荷重を、カラー部材73の1箇所に集中させて分散させることが無いので、マウントラバー60における荷重分布を簡素化できる。よって、製品毎にマウントラバー60の防振性能がばらつくのを抑えることができ、かつマウントラバー60の設計作業を容易に行えるようになる。
【0074】
また、本実施の形態に係るマウントラバー60によれば、外側凸部61cが、筒状部61の軸方向中央部に設けられ、筒状部61の軸方向に沿う外側凸部61cの両側が、各取付腕16a,16b,51aに対して非接触の状態とされる。
【0075】
したがって、これによっても、マウントラバー60における荷重分布を簡素化して、製品毎のマウントラバー60の防振性能のばらつきを抑え、さらにはマウントラバー60の設計作業を容易に行えるようになる。
【0076】
さらに、本実施の形態に係るマウントラバー60によれば、ワイパ装置14の車両10への搭載時に、筒状部61の径方向内側にカラー部材73を予め装着しておくので、ワイパ装置14を正確かつ容易に車両10に搭載することができる。よって、車両10毎にマウントラバー60の防振性能がばらつくのを抑制することができる。
【0077】
また、本実施の形態に係るマウントラバー60によれば、
図5に示すように、筒状部61の軸方向長さL1が、カラー部材73の軸方向長さL2よりも長いので、マウントラバー60を各固定部A,B,Cにそれぞれ装着した状態のもとで、筒状部61に初期荷重を与えることができる。
【0078】
これにより、内側凸部61aと外側凸部61cとを、カラー部材73の軸方向中央部(正規位置)に確実に配置させて、マウントラバー60の横剛性がばらつくのを抑制することができる。
【0079】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。上記実施の形態では、内側凸部61aおよび外側凸部61cの断面を、それぞれ円弧形状に形成したものを示したが、本発明はこれに限らず、断面が三角形や四角形等の内側凸部および外側凸部としても良い。要は、
図3および
図5に示す基準線BL上に、マウントラバー60の径方向に沿う各取付腕16a,16b,51aからの荷重が作用するようにすれば良い。
【0080】
また、上記実施の形態では、マウントラバー60を、振動を発生し得るワイパ装置14に適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、車両10に設けられるパワーウィンド装置や電動サンルーフ装置、さらには電動スライドドア装置等、振動を発生し得る他の駆動装置にも適用することができる。