特許第6552413号(P6552413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552413
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】双方向伝送を用いたシンセサイザー
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/00 20060101AFI20190722BHJP
   G10H 3/18 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   G10H1/00 Z
   G10H3/18
【請求項の数】19
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-553889(P2015-553889)
(86)(22)【出願日】2014年1月21日
(65)【公表番号】特表2016-503197(P2016-503197A)
(43)【公表日】2016年2月1日
(86)【国際出願番号】US2014012316
(87)【国際公開番号】WO2014113788
(87)【国際公開日】20140724
【審査請求日】2017年1月19日
(31)【優先権主張番号】61/754,293
(32)【優先日】2013年1月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515190928
【氏名又は名称】フィッシュマン トランスデューサーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】シャライ アンドラス
(72)【発明者】
【氏名】フィッシュマン ローレンス
【審査官】 大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−237652(JP,A)
【文献】 特開2003−150166(JP,A)
【文献】 特開平02−067899(JP,A)
【文献】 特開平10−340085(JP,A)
【文献】 特表2006−527393(JP,A)
【文献】 特開2008−008924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00
G10H 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽器の本体上に位置決めされるまたは前記楽器の本体内に位置決めされるピックアップであって、前記楽器の各弦によって生成され振動信号を個別に検出し、前記振動信号を、前記振動信号を表す各弦毎の電気信号に変換するように構成されるピックアップと、
前記楽器の本体上に位置決めされまたは前記楽器の本体内に位置決めされ、前記ピックアップと連結されるエンコーダであって、前記楽器からの音楽制御メッセージデータの送信前に、前記ピックアップによって検出された前記各弦毎の電気信号を個別の音楽制御メッセージデータに符号化するエンコーダと、
前記楽器の本体上に位置決めされまたは前記楽器の本体内に位置決めされ、前記エンコーダに連結される第1の無線トランシーバであって、前記音楽制御メッセージデータを、前記楽器の本体上に位置決めされないまたは前記楽器の本体内に位置決めされない第2の無線トランシーバに無線送信するように構成されている第1の無線トランシーバと、
を備え、
別個の弦から生成される同じ周波数の振動信号を個別の音楽制御メッセージデータに符号化し、
前記音楽制御メッセージデータに基づいてメディア信号を作り出すことが可能である、
楽器。
【請求項2】
前記音楽制御メッセージデータが、Music Instrument Digital Interface(MIDI)形式に従う、請求項1に記載の楽器。
【請求項3】
プロセッサが、前記電気信号をMIDIデータに符号化するためのMIDIパラメータを編集するためである、請求項1に記載の楽器。
【請求項4】
前記楽器によって作り出された音を検出し、前記音を、前記エンコーダによって符号化された電気信号に変換するピックアップデバイスを備える、請求項1に記載の楽器。
【請求項5】
前記メディア信号が、音声信号、映像信号、または照明効果のための信号を含む、請求項1に記載の楽器。
【請求項6】
前記第2の無線トランシーバが、MIDIパラメータを前記第1の無線トランシーバに送信するためである、請求項1に記載の楽器。
【請求項7】
前記エンコーダが、前記電気信号を前記音楽制御メッセージデータに符号化するためのパラメータを記憶するメモリを含む、請求項1に記載の楽器。
【請求項8】
前記エンコーダが、MIDIパラメータを選択する制御装置を含む、請求項1に記載の楽器。
【請求項9】
プロセッサが、MIDIパラメータを制御または編集するためのシンセサイザーとフットスイッチとを備えるストンプボックスの中に包含される、請求項1に記載の楽器。
【請求項10】
振動信号を楽器の各弦によって生成することと、
前記楽器の本体上に位置決めされるまたは前記楽器の本体内に位置決めされるピックアップによって、前記弦楽器の各弦によって生成される振動信号を個別に検出し、前記振動信号を、前記振動信号を表す各弦毎の電気信号に変換することと、
前記楽器の本体上に位置決めされまたは前記楽器の本体内に位置決めされ、前記ピックアップと連結されるエンコーダによって、前記楽器からの音楽制御メッセージデータの送信前に、前記各弦毎の電気信号を個別の音楽制御メッセージデータに符号化することと、
前記楽器の本体上に位置決めされまたは前記楽器の本体内に位置決めされ、前記エンコーダに連結される第1の無線トランシーバによって、前記音楽制御メッセージデータを前記エンコーダから、前記楽器の本体上に位置決めされないまたは前記楽器の本体内に位置決めされない第2の無線トランシーバに無線送信することと、
を備え、
別個の弦から生成される同じ周波数の振動信号を個別の音楽制御メッセージデータに符号化し、
前記送信された音楽制御メッセージデータに基づいてメディア信号を作り出すことが可能である
方法。
【請求項11】
前記音楽制御メッセージデータがMIDIデータ形式に従う、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
プロセッサによって、前記電気信号をMIDIデータに符号化するためのMIDIパラメータを編集することを備える、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記弦楽器がギターである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記エンコーダに連結されたメモリ内に、前記電気信号をMIDIデータに符号化するための、1つまたは複数のセットのMIDIパラメータを記憶することを備える、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記楽器がエレキギターである、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
ピックアップに連結されたMIDIエンコーダであって、前記MIDIエンコーダ及び前記ピックアップが、電気楽器の本体上に位置決めされまたは前記電気楽器の本体内に位置決めされ、前記ピックアップが、前記電気楽器の各弦によって生成される振動信号を個別に検出し、前記振動信号を、前記振動信号を表す各弦毎の電気信号に変換するように構成され、前記MIDIエンコーダが、前記電気楽器からのMIDIデータの送信前に、前記各弦毎の電気信号を個別の前記MIDIデータに符号化するように構成される、MIDIエンコーダと、
前記電気楽器の本体上に位置決めされまたは前記電気楽器の本体内に位置決めされ、前記MIDIエンコーダと連結された第1の無線トランシーバであって、前記MIDIエンコーダから前記MIDIデータを受信し、前記電気楽器の本体上に位置決めされないまたは前記電気楽器の本体内に位置決めされない第2の無線トランシーバに前記MIDIデータを無線送信する、第1の無線トランシーバと、
を備え、
別個の弦から生成される同じ周波数の振動信号を個別のMIDIデータに符号化し、
前記第2の無線トランシーバは、MIDIパラメータを前記第1の無線トランシーバに送信するように構成される、
システム。
【請求項17】
前記第2の無線トランシーバが、プロセッサとメモリとを備え、受信された前記MIDIデータに関連するMIDIパラメータの可視化したものを表示するように構成されたコンピューティングシステムに連結されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記コンピューティングシステムが前記MIDIデータをメディア信号に合成するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記コンピューティングシステムが前記MIDIパラメータの編集を可能にするように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の楽器と共に演奏され得るギターシンセサイザーまたは他のシンセサイザーに関する。
【背景技術】
【0002】
キーボードシンセサイザーは、合成音またはサンプル音に変換することができるMIDIデータまたはMIDIノートなどの音楽制御メッセージデータを作成するための良く知られたツールであるかもしれない。ギターシンセサイザーまたは他の楽器では、設定がより複雑になり得る。たとえば、ギターでは、別のMIDIコンバータボックスをギターに、コードを通して直接連結することができる。ギターと外部ボックスとの間の接続は、(Shadow GTM−6とPassac Sentient Six MIDI controller boxとによって使用される)多重化アナログ信号、または(IVL Pitchrider、Korg Z3、およびK−Muse Photon MIDI controllerなどの)固有のマルチワイヤケーブル、(RolandまたはIbanez EVIG−2010 MIDI controller boxなどの)標準的な24ピンマルチワイヤケーブル、または(Yamaha G50またはAxon MIDI controller boxなどの)13ピンケーブルであることができる。しかしながら、演奏中、ミュージシャンはこれらの種類のボックスに束縛され得る。演奏中のミュージシャンの自由を可能にし、音をMIDIに変換する際の遅延を小さく保つ方法が必要とされ得る。
【発明の概要】
【0003】
音声システムまたはビジュアルシステムは、楽器によって生成された電気信号を、MIDIデータなどの音楽制御メッセージデータに符号化するエンコーダを含むことができる。エンコーダに連結された第1の無線トランシーバは、MIDIデータを第2の無線トランシーバに送信することができる。第2の無線トランシーバに連結されたプロセッサは、メディア信号(たとえば、音声信号、映像)をMIDIデータに基づいて作り出すことができる。
【0004】
本発明とみなされる主題を、本明細書の結論部分において具体的に指摘し、直接的に特許請求する。しかしながら、本発明は、機構と動作方法の両方に関して、本発明の目的と特徴と利点と共に、以下の詳細な説明を参照し、添付図面と共に読まれる時に、最もよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本発明の実施形態による、音声システムまたはビジュアルシステムの図である。
図2】本発明の実施形態による、独立型の受信機ボックスを使用する音声システムまたはビジュアルシステムの概略図である。
図3】本発明の実施形態による、パーソナルコンピュータを使用する音声システムまたはビジュアルシステムの概略図である。
図4A】本発明の実施形態による、エンコーダとピックアップとの図である。
図4B】本発明の実施形態による、エンコーダとピックアップとの図である。
図4C】本発明の実施形態による、エンコーダとピックアップとの図である。
図4D】本発明の実施形態による、エンコーダとピックアップとの図である。
図5】本発明の実施形態による、MIDIパラメータを編集するための例示的ユーザインターフェースの図である。
図6】本発明の実施形態による、MIDIパラメータを編集し、音声信号をミキシングするためのユーザインターフェースの図である。
図7】本発明の実施形態による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
説明の単純化と明確化とのために、図に示す要素が必ずしも正しい縮尺率で描かれていないことを理解されたい。たとえば、要素のうちのいくつかの寸法は、明確化のために、他の要素に対して増大されていることがある。さらに、適切な場合は、参照番号が図面間で繰り返されて、対応する要素または類似の要素を示すことがある。
【0007】
以下の説明において、本発明の様々な態様を説明する。説明の目的のために、具体的な構成および詳細が、本発明の深い理解を提供するために記載される。しかしながら、本発明が本明細書で提示する具体的な詳細なしに実践され得ることも、また、当業者にとって明白である。さらに、本発明を不明瞭にしないために、良く知られている特徴は省略または簡略化され得る。
【0008】
そうでないと特別に述べていない限り、以下の検討から明白な通り、本明細書を通して、「処理」、「演算」、「計算」、「決定」などの用語を活用する検討が、コンピュータ、コンピューティングシステム、またはコンピューティングシステムのレジスタおよび/またはメモリ内の電子などの物理的な量として表わされるデータを、コンピューティングシステムのメモリ、レジスタ、または他のそのような情報ストレージ内の物理的な量として同様に表わされる他のデータに、操作および/または変換する同様の電子コンピューティングデバイス、送信デバイスまたは表示デバイスの動作および/または処理を指すことが理解される。
【0009】
本発明の実施形態は、メディア信号を、演奏者の楽器に対する動作に基づいて作り出すためのシステムまたは方法を提供することができ、楽器には、たとえば、エレキギター、アコースティックギター、エレキベース、アコースティックバイオリン、フルート、またはクラリネットなどの、音響楽器、電気楽器、または電子楽器が含まれる。メディア信号は、既存の録音からのサンプルであり得る音声または映像、合成ハードウェアまたは合成ソフトウェアを使用して合成した音声信号、ステージ上の照明効果の構成を指示する信号、またはオーディオビジュアル性能または表示を制御または指示する他の信号であることができる。楽器に対する動作は、標準的なMusic Instrument Digital Interface(MIDI)形式、つまり多種多様なデジタル楽器、コンピュータ、シンセサイザー、および他の関連デバイスが、お互いに接続し、通信することを可能にする、電子楽器業界のデータ形式仕様などの形式に適合するデータに変換することができる。データまたはMIDIデータは、たとえば、ピッチと、音量と、音が持続する時間とについての情報を含むことができる。ギターシンセサイザーシステムの音楽的用法は、音がギタリストの動作にどのように反応するかということを決定するパラメータの複雑な構造を必要とし得る。そのようなパラメータのセットは、いろいろな音の間の分割を、演奏されるフレットの範囲または弦の範囲、ピッキングの強さへの反応、またはMIDIノートを全く引き起こさないピッキングの限界、および他の多くのパラメータに従って表すことができる。そのようなセットは、MIDI用語では、たとえば、「プリセット」または「パッチ」または「プログラム」と呼ばれる。ミュージシャンは、いろいろなパッチを各曲について通常使用することができるが、数個のパッチが1曲の中でさえも必要とされ得ることが多い。各パッチ内には、複数の分割があり得、それらは、音特性を、どの音符が演奏されるかにより分ける。たとえば、1つのパッチでは、演奏される低い方のオクターブはピアノの音によって特徴付けることができ、演奏される高いオクターブはバイオリンの音によって特徴付けることができる。他の構成を使用することができる。パラメータのセットまたはパッチは、メモリ内に記憶されたデータであることができる。
【0010】
作り出されるメディア信号は、たとえば、音楽制御データ(たとえば、MIDIデータによって制御されるメディアサンプルまたは合成音であることができ、演奏家が演奏している楽器とは異なる音質を有して作り出すことができる。たとえば、演奏家はギターを演奏していることができ、ギターに対する動作をMIDIデータに変換することができ、MIDIデータは、無線送信され、サンプルまたは合成されたピアノの音、または合成されたフルートの音を他のデバイスにおいて引き起こしまたは制御するために使用することができる。他の種類の音を引き起こし、または制御することができ、それによって、たとえば、他の楽器、雑音、話し声、または電子的に生成された音を模倣することができる。映像記録またはサンプルも、音楽制御データ、制御信号、制御メッセージ、またはMIDIデータによって引き起こされてよい。たとえば、ギタリストのギターに対する動作は、たとえば、曲の所望の部分において表示される、特定のビデオ画像を引き起こすことができる。音楽制御データ(たとえば、制御信号、制御メッセージまたはMIDIデータ)は、レーザー光効果、閃光効果、色彩効果、または演奏中に見ることができる他の照明効果などの、ステージ上の照明効果を制御することができる。MIDI以外の、音楽情報または音符情報、または制御メッセージ(たとえば、記譜法を規定するイベントメッセージ、ピッチとベロシティ、音量、ビブラート、オーディオパンニング、キュー、およびクロック信号などのパラメータのための制御信号)を含むデバイスと通信するためのデータ形式を使用することができる。
【0011】
シンセサイザー、たとえば、MIDIシンセサイザーは、たとえば、MIDIデータなどの音楽データまたは音符情報を受信し、音声信号を出力することができる。他の音楽基準または記譜法の基準、または音楽メッセージまたは制御メッセージを送信するためのデータ形式を使用することができる。本明細書で説明するいくつかの実施形態は主にギターに向けられているが、特許請求される発明は、その音を電気信号に、たとえば、ギターまたは他の弦楽器のピックアップを通して変換することができる他の音響楽器または電気楽器にさらに適用することができる。さらに、本発明の実施形態は、データの無線送信を、楽器と、スピーカまたはアンプに接続され得る受信機との間で可能にすることができる。無線送信は、2.4GHzの民生帯域幅などの無線カスタム非標準プロトコルを介して、または、たとえば、IEEE802.11、Bluetooth(登録商標)、またはWi−Fiなどの標準プロトコルを介して発生することができ、産業科学医療用(ISM)無線帯域などのいろいろな無線帯域を介して通信することができる。
【0012】
本発明の実施形態は、MIDIデータの出力のために、アナログ音声信号の処理を可能にすることができる。処理は楽器自体において発生し、MIDIデータ出力を、スピーカ、アンプ、アナライザ、またはMIDIデータをさらに読み込み、処理でき得る他の機器および出力デバイスに無線で送信することができる。楽器は、ピックアップを備えることができる。ピックアップは、たとえば、電磁コイルピックアップ、圧電ピックアップ、マイク、加速度計、光ピックアップ、または楽器によって生成された振動情報を、測定された時、時間に対する信号の大きさとして振動を表す電気信号に変換する他のデバイスであることができる。楽器は、また、ピックアップによって出力された電気信号をMIDIデータに符号化または変換するエンコーダを備えることができる。エンコーダは、アナログ電気信号をデジタル形式に変換するアナログ・デジタル(A/D)コンバータ(ADC)を含むことができ、デジタル形式は、後に、たとえば、デジタル信号プロセッサ(DSP)デバイス、プロセッサ、またはマイクロプロセッサによって処理され得る。代替的に、ADCをピックアップに連結することができる。エンコーダ上のアナログ処理は、電気信号を、楽器によって作り出されたピッチを計算するピッチ検出アルゴリズムを使用して処理することができる。このピッチ情報を、受信デバイスに無線送信されるMidiノート番号、または他の制御メッセージに変換することができる。このMidiノート番号は、たとえば、出力モジュールの音響発生デバイスによって鳴らされ得る音のピッチを決定することができる。
【0013】
弦楽器では、各弦は、個別に検出される振動を有することができ、他の弦のデータチャンネルとは独立して処理され得るデータチャンネル(たとえば、MIDIデータチャンネルまたは他の音楽データチャンネル)を提供することができる。具体的には、6本の弦を有するエレキギターは、6つのMIDIデータチャンネルを提供することができる。ピックアップは、6本の弦の各々における振動を感知または検出することができる。エンコーダは、6つの別々のADCを含んで各弦の振動情報をデジタル形式に変換することができ、デジタル形式は、次いで、多重化または結合されてDSPによって処理され得る。フレットまたは各弦における音の位置を、たとえば、いろいろな音特性を有する分割にさらに分けることができる。各音符をMIDI情報またはMIDIメッセージを用いてプログラムすることができるピアノキーボードと異なり、同じギター音を、いろいろな弦において鳴らすことができ(たとえば、220HzでのAの音は、G弦の2番目のフレットまたはD弦の7番目のフレットにおいて鳴らすことができる)、特定の音にいろいろなMIDI設定を与えることは実用的でないことがある。各弦をMIDIデータに別々に変換することにより、ギター演奏者に、広範囲な演奏性を提供することができる。
【0014】
Midiノート番号に加えて、出力モジュールによって作り出される音の動的挙動を定義する他の制御メッセージを、DSPによって生成することができる。動的制御情報は、音が楽器の上で鳴らされる時の音の音楽的ニュアンスを表す。これらの制御メッセージの例は、ピッチベンドまたはベロシティまたは鳴らされるべき特定の楽器の音を特定するものである。
【0015】
MIDIエンコーダまたは他の音楽情報エンコーダが、楽器の演奏家または演奏者(たとえば、ギタリスト)の動作に反応する方法を決定するパラメータをさらに定義することができる。これらのパラメータは、制御メッセージとして出力される正しい値を決定することにおいて(DSPまたはエンコーダに連結された他のプロセッサ)によって使用される境界を設定することができる。これらの境界のうちのいくつかの例は、ノートオン値−正しいノートオンイベントを表すことができる楽器の最低励起、ノートオフ値−正しいノートオフイベントを決定することができる最低振動レベル、ピッチベンド範囲−楽器において作り出された実際のピッチベンドに応答して、音響発生モジュールによってピッチ変更が作り出され得る方法、音量制御メッセージ−出力デバイスに送信されて、作り出される音の音量を制御する、楽器によって生成された音のエンベロープに従うことができるメッセージ、量子化−従来の音の範囲に入る、検出されたピッチを変換する方法を決定する設定、またはエンコーダがミュージシャンの演奏における音量の変化を解釈する方法を制御することができる動的センシティビティを含む。これらのパラメータの値は、ユーザが楽器を演奏する方法、またはユーザが彼らの演奏をどのように鳴らしたいかに従って設定することができる。これらのパラメータは、一般的な入力センシティビティ、チューニング基準(たとえば、Aの音が440Hz(A440)または441Hz(A441)などであるかどうか)などの、本来グローバルなものであることができる。これらは、また、ピアノ音を鳴らしている時にピッチベンドをオフにするなどの、鳴らされている特定の音を補足するために特に設定することもできる。グローバルでないパラメータのセットを、「プリセット」、「パッチ」、またはこれらの制御メッセージを特定のMIDIチャンネルに割り当てられた特定の音とセットにする他のプログラムに割り当てることができる。これらのパラメータまたはパッチは、エンコーダのメモリ内に記憶することができる。エンコーダは、パッチを調整するつまみとボタン、または他の制御装置を提供することができる。代替的に、エンコーダは、エンコーダとは別のユーザインターフェースと通信することができ、ユーザインターフェースは、ユーザがパラメータをユーザインターフェース上で変更することを可能にする。パッチは、代替的に、出力モジュールのメモリ内に記憶され、パラメータ値が変更された時、エンコーダに無線で通信し返すことができる。
【0016】
本発明の実施形態は、ギターから送信されている信号の編集または操作を可能にすることができる。ギターは、ギターからの信号をMIDIデータに符号化するエンコーダを含むことができる。MIDIデータを、無線で、たとえば、無線通信を介して、編集または合成ソフトウェアを有するコンピュータまたは他のデバイスに送信することができる。ギター自体が、ギターによって作り出された音または音声信号を操作することができる、つまみとボタンとポテンショメータとを有することができる。コンピュータを通してアクセス可能であり得る、1つまたは複数のユーザインターフェースを提供することができる。ユーザインターフェースは、ギターまたはコンピュータ自体によって操作されているパラメータを示し、または可視化することができる。送信機および受信機は、トランシーバとして、双方向で通信する(各々が、お互いにデータを送信し、お互いからデータを受信する)能力を有することができる。エンコーダ内に記憶されたパラメータは、エンコーダ上の制御装置によって、または受信機に連結されたユーザインターフェース上の制御装置によって、変更することができる。新しいパラメータをエンコーダに記憶しようとする時、受信機は、新しいパラメータをエンコーダに無線送信することができる。次いで、エンコーダは、新しいパラメータを保存することができる。パラメータを、コンピューティングデバイスのメモリなどの、受信機に連結されたメモリ内にさらに記憶することができる。これらのパラメータを、ユーザインターフェースによって、またはエンコーダ上の制御装置によって変更することができる。新しいパラメータをユーザインターフェース内に記憶しようとする時、エンコーダは、新しいパラメータをコンピュータに無線で送信することができる。次いで、コンピュータは新しいパラメータを保存することができる。パラメータを、エンコーダ内とコンピュータ内とに同時に記憶することができる。受信機(たとえば、コンピューティングデバイスに連結された受信機は、送信機と、送信におけるエラーを減少させるプロトコルを通して通信することができる。プロトコルは、パラメータの完全な同期をエンコーダとユーザインターフェースとの間で可能にすることができる。
【0017】
送信機を、楽器の上に配置し、ピックアップから受信した電気信号をMIDIデータに変換するエンコーダに連結することができる。受信機は、確認信号を送信機に送信することができ、送信機が、接続が受信機と送信機との間に存在することを確認できるようにする。送信機は、受信機との通信を常に開始するデバイスであることができる。送信機内と受信機内とのハードウェアは、MIDIデータを作成し、送信することにおける遅延を短く保つことができ、ギタリストまたは演奏者が、本明細書の実施形態を用いた演奏中または録音中に、楽器の自然な感覚を維持することができるようにする。ユーザは、また、送信機と受信機との間のペアリングを開始することができる。
【0018】
使用される無線回路は、送信機または受信機のいずれかとして、一時に一方向にのみ通信することができてよい。無線ギターシンセサイザーの場合、ギターから受信機ボックス/音波発生装置に向けて一方向のみを主に使用することができるが、逆方向への通信はさらなる利点を提供することができる。ギター上に、比較的「低能力の」送信機から成るシステムを構築することは可能であるが、未加工データを、実際のパッチに従って、受信機側で修正する必要があり得る。これは、システムの「インテリジェンス」がギターと受信機との間で分割されるという結果を招き得る。これは、いくつかの短所を有し得、それらは、各受信機のオプションそれぞれに対するより多くのソフトウェア開発作業、より強力なプロセッサとより容量の多いメモリとを有する受信機のためのより高いコスト、いくつかのパッチのパラメータ(たとえば、ピックトリガーセンシティビティ)が、ギター内で行われ得る信号処理に影響を与えざるを得ないために解決することができない妥協、である。代わりに、システムのインテリジェンスを、ギターユニット上などの中心位置に集中させることがより現実的であり得る。したがって、受信機ボックス上に配置された全種類のモディファイヤ(フットスイッチ、ペダル、リモコン)は、ギター上の中央装置への逆方向へのデータ経路を有することができる。パッチを、また、中央装置の中に、コンピュータ上でパッチを達成する方法と共に記憶することができ、パッチをコンピュータからギターに、逆向きデータ経路を使用してリロードすることが可能であり得る。本発明の実施形態は、データの無線単一方向送信(たとえば、ギター上の送信機から受信機ボックスまたはコンピュータに連結された受信機に)、またはデータの無線双方向送信(たとえば、ギター上の送信機と受信機との間の2方向の通信)を包含することができる。
【0019】
ほとんどのデータ送信チップセットは、送信機と受信機との間のハンドシェイクの方法を含むことができ、受信機は確認信号を送信機に返送することができ、送信機が、メッセージが到着し、メッセージを繰り返す必要がないということを確かめることができるようにする。いくつかの実施形態において使用されるチップセットでは、ユーザメッセージを確認信号の中に隠すという追加的な可能性もあり得る。したがって、データを、受信機から送信機に逆方向に送信することが可能であるが、通信は純粋に対称でないことがあり、開始は送信機によってのみ実行され得、受信機は、そのデータを、開始への返答の中に詰め込むことができる。
【0020】
ギターシンセサイザーシステムでは、音の遅延が重大なパラメータになり得、一般的に最小限に抑えられ得る。逆方向通信の遅延も合理的な限度内(送信機から受信機への通信ほど小さい必要はない)に抑えられる場合、システムは、あたかも有線の双方向通信を有しているかのように、まさに使用可能であることができる。逆方向通信の合理的な遅延は、たとえば、フットスイッチを押すようなリアルタイムの動作によって制限され得る。逆方法通信(たとえば、受信機ボックスからギターへ)が、せいぜい約10ミリ秒の遅延で到達する場合、遅延の感覚はギタリストには現れず、それはリアルタイムとして現れ得る。したがって、送信機が7ミリ秒の時間内に送信するデータを有さない場合、受信機がそのメッセージを返送する方法を提供するために、送信機がダミーメッセージを送信することができるような方法で、実施形態を構築することができる。このようにして、受信機は、新しいデータパッケージを送信機にせいぜい7ミリ秒のうちに送信することができる。同時に、送信機からのメッセージは、「動作中」メッセージを受信機に送信する目的(MIDI用語では「アクティブセンシング」)を果たすことができ、それによって、送信機と受信機との間の通信が何らかの理由で途切れた場合、音波発生器において応答していない音をオフにする方法を提供することができる。他の遅延を使用することができる。
【0021】
図1は、本発明の実施形態による、音声システムまたはビジュアルシステムの図である。エレキギターなどの楽器102において、ピックアップ100は、楽器102の弦からの振動を検出することができ、これは、たとえば、ピックアップ100が楽器102の弦103にごく近接しているためである。ピックアップ100は、これらの振動を電気信号に変換し、電気信号をエンコーダ104に送信することができる。電気信号は、最初アナログであり、アナログ/デジタル(A/D)コンバータを通して処理して、それらを、さらなる処理のためのデジタル信号に変換することができる。各弦103の振動を、別々のADCを通して処理し、次いでDSPに送信することができる。メモリ104aとプロセッサ104bとを含むエンコーダ104は、ピックアップ102からの電気信号をMIDIデータまたは他の種類の音符、または音楽制御メッセージもしくはデータに、符号化または変換することができる。エンコーダはA/Dコンバータを含むことができ、または、代替的に、A/Dコンバータをピックアップ100上に配置することができる。エンコーダ104を、送信機またはトランシーバ106に連結することができる。トランシーバ106は、MIDIデータ、または音楽制御メッセージもしくはデータを、無線で(たとえば、無線通信を介して)受信機または第2のトランシーバ108に送信することができる。受信機−トランシーバ108は、たとえば、コンピュータ110に接続可能なユニバーサルシリアルバス(USB)デバイスであることができる。代替的に、受信機−トランシーバ108を、ストンプボックスまたは独立型の受信機ボックスの中に埋め込むことができる。
【0022】
コンピュータ110は、メモリ110aとプロセッサ110bとを含むことができる。メモリ110aは、たとえば、デジタルワークステーション111a、音声エディタ111b、音声ミキサー111cなどのソフトウェアを記憶することができる。メモリ110aは、また、シンセサイザー111dまたはサンプラー111eのためのソフトウェアを含むことができる。メモリ110aは、MIDIパラメータを編集または可視化するためのソフトウェアをさらに含むことができる。そのようなプログラムは、AvidのPro Toolsと、AppleのGarageBandおよびLogicソフトウェアと、SteinbergのCubaseソフトウェアと、Ableton Liveソフトウェアと、PresonusのStudio Oneソフトウェアとを含むことができ、またはそれらと互換性があり得る。コンピュータ110は、ユーザが、ピックアップ100からの電気信号をMIDIデータに符号化するためのMIDIパラメータを編集することを可能にするディスプレイ116を含むことができる。プロセッサ110bおよびプロセッサ104bはそれぞれ、本明細書で述べた方法の実施形態の全部または一部を実行することができ、または、たとえば、プロセッサによって実行された時、プロセッサに方法の実施形態を実行させるコードまたはソフトウェアを記憶するメモリ110aとメモリ104bとに関連している、またはそれらに接続されている実施形態を実行するように構成することができる。
【0023】
シンセサイザー111dまたはサンプラー111eは、別々であることができ、またはコンピュータ110と一体化することができる。シンセサイザー111dは、たとえば、プロセッサ110bによって、受信機108から受信したMIDIデータまたは音符または音楽制御データもしくはメッセージと、生成する楽器音の種類(たとえば、電子バイオリン)などの、デジタルワークステーション111a上で選択されたパラメータとに基づいて、音声信号などのメディア信号を生成することができる。サンプラー111eは、記録された音またはビデオクリップまたは他の命令(たとえば、照明制御命令)のセットをメモリ内に記憶し、記録された音または映像を再生する音声信号または映像信号を生成することができる。受信機108から受信したデータは、再生する録音を決定づけることができる。デジタルワークステーション111は、録音が再生される方法を(たとえば、ハイパスフィルタを用いて)さらに制御することができる。


【0024】
コンピュータ110は、(たとえば、ディスプレイ116上に表示されたユーザインターフェースまたはキーボード118などの入力デバイスを介して、)たとえば、音量またはリバーブなどの、たとえば、音楽制御メッセージデータパラメータ(たとえば、MIDIパラメータ)115の設定を可能にすることができる。これらのパラメータ115は、コンピュータメモリ110a内に保存または記憶することができる。コンピュータ110は、音楽制御メッセージデータまたはMIDIパラメータ115を、受信機−トランシーバ108を通して、ギター102上の送信機−トランシーバ106にさらに無線送信することができる。パラメータ115は、エンコーダのメモリ104a上の記憶することができる。したがって、双方向データ送信が、ギター102とコンピュータ110との間で可能であり得る。たとえば、コンピュータ110のユーザは、低音のE弦の上で演奏されるCの音が、大音量で、長く伸ばして鳴らされる電子バイオリンの音のように聞こえるべきであると選択または決定することができる。ユーザは、MIDIパラメータ115を、入力デバイス118を介して入力することができる。MIDIパラメータ115は、ギター102上のトランシーバ106に送信され、エンコーダのメモリ104a内に記憶され得る。ユーザが特定の弦の上(しかし必ずしも同じギターの別の弦の上ではない)でCの音を鳴らした時、ピックアップは弦の振動を検出することができ、エンコーダのADCは電気信号をデジタル信号に変換することができる。エンコーダのDSPは、デジタル信号を変換し、大きな音量値を有し、音を長く伸ばした電子バイオリンのように鳴らされるべきCの音を示すMIDIメッセージまたは制御メッセージを生成または作成することができる。演奏中、MIDIメッセージを、送信機−トランシーバ106から受信機108に送信することができる。シンセサイザー111dは、プロセッサ110bを介してMIDIメッセージを受信し、Cの音を大きく、ギターの1回のつま弾きを介して生成される音の典型的なものよりも長い時間鳴らしている電子バイオリンと、類似した音を出す音声信号をMIDIメッセージの命令に従って、(スピーカまたはアンプなどの)出力デバイス114に作り出ことができる。加えて、サンプラー111eは、記憶された映像サンプルまたは他の記憶された画像(たとえば、コンピュータグラフィック)から映像信号を、出力デバイス114に生成することができる。出力デバイス114は、映像クリップまたは信号を、受信機108によって受信された音楽制御データ(たとえば、制御信号、制御メッセージまたはMIDIメッセージ)に基づいて再生するディスプレイ114aを含むことができる。
【0025】
プロセッサ110bは、ソフトウェアまたはコードを実行して、本発明の実施形態を実行することができる。たとえば、プロセッサ110bは、シンセサイザー111d、サンプラー111e、ワークステーション111a、音声エディタ111b、または音声ミキサー111cとして動作することができる。コンピュータ110は、ソフトウェアがロードされた典型的な民生のPCまたは他のノートパソコンであることができ、または、コンピュータ110は、リアルタイムの音声のミキシングタスクと編集タスクとを実装し、たとえば、音楽の演奏中での使用に特に適し得る独立型のコンピューティングデバイスまたは受信機ボックスであることができる。
【0026】
図2は、本発明の実施形態による、独立型の受信機ボックスを使用する音声システムまたはビジュアルシステムの概略図である。ピックアップ200は、データをギター201から、これもまたギターに取り付けられたエンコーダ202に送信することができる。ピックアップ200およびエンコーダ202は、演奏中に、取り外し可能にギター201に取り付けることができる。ピックアップ200およびエンコーダ202は、接着剤またはVelcro(登録商標)などの接着性物質を含むことができ、または磁性であることができ、ミュージシャンが演奏している間、ギターの上にくっついていることができる。ピックアップ200およびエンコーダ202は、ミュージシャンが合成システムを使用することを望まない場合、取り外すことができる。エンコーダ202は、代替的に、標準的なピックアップ200に接続可能であり得、両者は、ギター201と共に最初に製造され、ギター201の中に埋め込まれ、またはギター201に一体化され得る。
【0027】
エンコーダ202は、ピックアップ200からのアナログ電気信号をデジタルデータまたはデジタル信号に変換するADC203を含むことができる。エンコーダ202は、ADC203からのデジタルデータを処理するためのプロセッサ204をさらに含むことができる。プロセッサは、ピックアップ200から生じたデジタルデータをMIDIデータまたは他のデータに変換または符号化することができる。エンコーダ202は、ADC203からのデジタルデータをMIDIデータに変換する方法に影響を与えるMIDIパラメータを記憶するメモリ205を含むことができる。MIDIパラメータは、たとえば、音量、量子化、またはピッチベンドを含むことができる。MIDIデータは、ピッチの周波数およびピッチを持続させる時間の長さなどの情報を含むことができる。エンコーダ202は、無線(たとえば、無線通信)トランシーバ206に連結することができる。制御要素208を、音声データからMIDIデータへの処理に影響を与えるMIDIパラメータまたはMIDIパラメータのセット(たとえば、パッチ)を選択するために、エンコーダ202の中に含むことができる。制御要素208は、たとえば、押しボタンとポテンショメータとを含むことができる。
【0028】
トランシーバ206は、MIDIデータを第2の(たとえば、無線通信)トランシーバ210に伝送または送信することができる。受信機を、ストンプボックスまたは独立型の受信機ボックス212に一体化することができる。受信機ボックス212は、プロセッサ214aとメモリ214bとを有する独立型のデバイスであることができる。受信機ボックス212は、スイッチとペダル、または他の制御要素216を含んで、フェルマータ、アルペジオ、ルーパー、または他のパッチもしくはMIDIパラメータのセットなどの機能を制御することができる。受信機ボックス212は、演奏中に容易に使用できるように構成または最適化することができる。受信機ボックス212を、受信したMIDIデータと、ストンプボックス212上のスイッチによって有効にされたパッチとに基づいて音を生成するシンセサイザー218に接続することができる。ストンプボックスは、情報を表示し、ユーザが、受信機によって受信されたMIDIデータを編集または操作することを可能にすることができるユーザインターフェース215aを含むまたは生成するディスプレイ215を含むことができる。タッチパッドまたは他の入力装置を含むユーザインターフェース215aは、ユーザが、電気信号をMIDIデータに符号化するためのMIDIパラメータを編集することをさらに可能にし、ユーザが、MIDIパラメータのセットをエンコーダ202に送信することを可能にすることができる。代替的に、制御装置216をユーザインターフェース215aに一体化することができ、その反対も可能である。エンコーダ202は、受信機ボックス212から受信したMIDIパラメータを、メモリ205内の別のセットまたはパッチとして記憶することができる。演奏中、たとえば、ミュージシャンは、メモリ205内に記憶されたいろいろなパッチを、制御装置208を操作することを通してすばやく選択することができる。別の例では、パッチは、受信機ボックス212上のメモリ214b内に保存することができ、ミュージシャンは、受信機ボックス上の制御装置216を操作して、エンコーダ202のメモリ内に保存されたいろいろなパッチにアクセスすることができる。このようにして、本発明の実施形態は、MIDIパラメータの同期をエンコーダ202と受信機ボックス212との間で可能にすることができる。
【0029】
図3は、本発明の実施形態による、パーソナルコンピュータを使用した音声システムまたはビジュアルシステムの概略図である。ギター201、ピックアップ200、およびエンコーダ202は、図1図2とにおいて説明したものと同様または同じ要素を含み、同様の構成を有することができる。いくつかの実施形態では、トランシーバ206は、MIDIデータまたは制御データを、受信機300として動作するペンドライブまたはUSBドライブに送信することができる。ペンドライブ受信機を、ノートパソコンまたはデスクトップコンピュータなどのコンピュータ302に接続することができる。コンピュータ302は、プロセッサ303aとメモリ303bとを含んで、ソフトウェアシンセサイザー304またはサンプラーなどのソフトウェアを実装することができる。ソフトウェアシンセサイザー304は、これもまたプロセッサ303aとメモリ303bとによって実装することができる音声編集ソフトウェアまたは音声ミキシングソフトウェアと連携することができ、または互換性があり得る。ディスプレイ306またはユーザインターフェース306aは、ユーザが、ピックアップ200からの電気信号のMIDIデータへの変換に影響を与えるMIDIパラメータを入力することを可能にすることができる。ディスプレイ306またはユーザインターフェース306aは、コンピュータのキーボードまたはマウスなどの入力デバイスまたは制御デバイス308と連携することができる。USBペンドライブである代わりに、受信機300を、たとえば、内蔵型無線カードなど、コンピュータに埋め込み、または一体化することができる。シンセサイザー304とプロセッサ303aとによって生成された音声信号は、スピーカまたはアンプ、または他の出力デバイス310への出力であることができる。
【0030】
MIDIデータのデータ送信が無線であり得るため、通信が同じチャンネルまたは周波数において発生するために、ペアリングを、送信機−トランシーバ206と受信機−トランシーバ210または受信機−トランシーバ300との間で実行する必要があり得る。ペアリングの開始後、送信機は、「ここにいる」メッセージを、すべての利用可能なチャンネルの1つずつで、各チャンネルで短い時間の間に、1つずつ増加させて、その後始めから繰り返して送信することができる。「ここにいる」メッセージを送信した後、トランシーバ206は、第2のトランシーバ(たとえば、210または300)が、「了解」メッセージを、トランシーバ206のメッセージに応答する確認信号の中に隠したかどうかを確認することができる。確認信号が認識された場合、「ペアリング終了」メッセージを受信機210または受信機300に送信して、ペアリング処理を完了することができ、トランシーバ206は、通常の送信モードに戻ることができる。「ペアリング終了」メッセージを受信した後、受信機210または受信機300は、通常の受信モードに切り替わることができ、データ通信を開始することができる。両方のデバイスのチャンネル設定を、ペアリングの後に自動的に保存することができ、次回電源を入れた時に呼び出す。
【0031】
図4Aおよび図4Bは、本発明の実施形態による、ギターピックアップ400の図である。ギターピックアップ400は、ギター弦からの振動を、弦がつま弾かれるにつれて感知または検出することができる。ピックアップ400は、ユーザによって、または製造時にギター内に埋め込まれるかのいずれかで、ギターの上に直接付けることができる。ピックアップ400は、たとえば、検出される各弦のための感知コイル部402を含むことができる。各感知コイル部402は、その周りに磁場を有し得る磁気棒406の周りに巻かれたワイヤコイル404または他の種類のコイル(たとえば、プリントコイル)を含むことができる。金属製のまたは軟質金属製の弦が磁気棒406の近くで振動すると、振動は、磁気棒406の周りの磁場を変化させ、ワイヤコイル404の内部に電流を誘発することができる。ワイヤコイル404内の電流を、エンコーダまたはプロセッサに、ワイヤコイル404へのワイヤまたは接続部407を介して伝送または送信することができる。
【0032】
図4Cは、本発明の実施形態による、エンコーダ408とピックアップ400との図である。ピックアップ400は、楽器上で、近くの弦の音または振動を感知することができる。エンコーダ408は、MIDIパラメータまたは他のパラメータを調整するために、いくつかの制御部を含むことができる。音量つまみ410は、各仮想楽器について、音量を設定することができる。ギター/シンセセレクタ412スイッチは、最終的な合成音が生成された時に、どのチャンネルまたは音が聞こえるかを制御することができる。たとえば、中間位置では、ギター音および追加的な合成音を一緒に聞くことができる。ギターモードを選択すると、「シンセ」チャンネルを消音することができ、ギターの音のみを聞くことができる。シンセモードを選択すると、ギターチャンネルを消音することができ、仮想楽器のみを聞くことができる。制御ボタン420のセットは、別のコンピューティングデバイス上のユーザインターフェースまたはパッチ編集ソフトウェアの操作を可能にすることができる。状態ライト422は、バッテリ残量と、エンコーダと受信機426との間の接続とを確認することができる。充電指示LEDまたは状態ライト424は、エンコーダを再充電する必要がある時を示すことができる。受信機LEDまたは状態ライトは、エンコーダが無線受信機426との接続をスキャンしている時を示す、または確認することができる。他の制御装置をエンコーダ上に存在させることができる。無線受信機426は、コンピュータまたはコンピュータシステム(たとえば、212または302)と互換性のあり得るUSBキーまたはマイクロUSBキーであることができる。無線受信機426は、たとえば、エンコーダが、MIDIデータをコンピュータに合成のために送信することを可能にすることができる。
【0033】
図4Dは、本発明の実施形態による、ギター439上の取り付けデバイス440を示している。取り付けデバイス440を、ギター439に固定し、またはしっかりと取り付けることができる。エンコーダを、ギターまたは楽器に、取り付けデバイス440を通して取り付けることができる。磁石442を、取り付けデバイス440上に配置してエンコーダを固定することができる。取り付けデバイス440は、ユーザが、システムの機器部分全体(たとえば、エンコーダおよびピックアップ)を楽器に、楽器を損なったり改造したりせずに、取り外し可能に取り付けることを可能にすることができる。取り付けデバイス440は、また、エンコーダとピックアップとを、それらが使用されていない時に、楽器から取り外すことを可能にする。ピックアップは、また、それをギター439または楽器に取り外し可能に取り付けるための、または弦への近さを調節するための、別の取り付けシステムを含むことができる。他の実施形態では、ピックアップおよびエンコーダを、ギターまたは他の楽器の内部に、製造時に埋め込むことができる。
【0034】
図5は、本発明の実施形態による、MIDIパラメータを編集するための例示的ユーザインターフェース500である。ユーザインターフェース500を、コンピュータまたは独立型の受信機ボックス(たとえば、図2図3とを参照)上のディスプレイと一体化することができる。ユーザインターフェース500は、ユーザが、MIDIパラメータまたは制御パラメータを編集し、または、MIDIパラメータまたは制御パラメータのセットであり得るパッチを編集することを可能にすることができる。その後、ユーザは、パッチをギターに取り付けられたエンコーダに送信することができる。いくつかの制御パラメータまたはMIDIパラメータは、たとえば、以下を含むことができる(他のパラメータを使用することができる)。
・モード(たとえば、MIDIモード)セレクタ502:モノとポリとの間で切り替え可能。ポリモードでは、全てのチャンネル(たとえば、ギターの6本の弦全部からの音)を同じMIDI制御メッセージを用いて送信することができる。たとえば、ギターの6本の弦全部が同じピッチベンドメッセージの対象になることができる。モノモードでは、各チャンネル(たとえば、各弦)は、それ自身のMIDIメッセージを含むことができる。たとえば、ピッチベンドを弦のうちの1本のみに適用することができる。
・タッチセンシティビティ制御504:各パッチについて動的反応を独立して設定する。
・ ピック/フィンガースタイルセレクタ506:ピック演奏またはフィンガースタイル演奏に対するタッチ反応を最適化する。
・ 持続ペダル508:演奏された音符を持続させる(たとえば、音のタイムスタンプを伸ばす)。
・ サウンドバッジ510:パッチのチャンネルまたは音を表示する。
・ 動的センシティビティスライダ512。エンコーダが、演奏中の音量の変化を解釈する方法を制御する。MIDI楽器は、音量を0から127の基準で解釈することができる。動的センシティビティを最も右の設定にすると、最大動的範囲は、最も大きい音が127(あるシステムでは最大の大きさの音)に近い値を送信することを可能にすることができ、最も小さい音を0(無音)に近くすることができる。スライダを中央の設定にすると、すべての音が、たとえば、64の固定値を送信することができ、楽器をどれだけ強くまたは弱く演奏したとしても、全部の音が同じレベルを有することができる。これは、オルガンおよびハープシコードなどの、ユーザがどれだけ強く演奏したかに従って変化しない音を有する楽器を模倣する時に便利であり得る。
・ 動的オフセットスライダ514。(動的センシティビティスライダによって定義された)動的基準全体を、たとえば、±64シフトする。相対的な動的値は変化しない−すべてが、設定により、音が大きくまたは小さくなる。(これは、たとえば、デフォルト設定の64以外の固定の音量の音を動的レベルにおいて望む場合に便利である。)
・ 転調制御516。ユーザは、各シンセサイザーを他から独立して転調することができる。1が半音を表し、24が最大転調である2オクターブを表して、たとえば、±1〜24で調整可能である。(ユーザは、たとえば、低音に対して−12の設定に合わせて、ギターの通常範囲よりも低い音を得ることができ、またはフルートの音に対して+12の設定に合わせて、ギターの範囲よりも高い音を得ることができる。)上矢印と下矢印とをクリックすると、転調が半音ずつ増加して変わる。
・ 量子化モードセレクタ518。TriplePlayが、ベントノートおよびリバースベンドなどの、フレットとフレットとの間の「範囲内にある」ピッチをどのように解釈するかを定義する。(しかしながら、結果は、また、仮想楽器の内部の設定にも従うことを念頭に置くこと。量子化モード設定は、これらの個別のプラグイン設定を無効にすることはできない。)一実施形態では、4つの可能な設定がある。
・ オフ。音を最も近い半音にしない。
・ オン。音を最も近い半音にする。
・ 自動:量子化オンモードと量子化オフモードとの間の妥協。量子化オンモードと同様、小さなピッチの不一致を無視することができる。しかし、ピッチの変化が、ノートベンドにおけるもののように、ユーザによるより故意的なものである場合、量子化オフを使用することができ、ピッチのベンドは再現される。
・ トリガ。このモードでは、ベンドを使用することができない。たとえば、ユーザが音CをDフラットまでベンドした場合、これを、2つの別々のアタックを有する2つの別々の音と解釈することができる。これは、隣接する半音と半音との間に位置するピッチを作り出すことができないことがあるピアノおよびオルガンなどの楽器を模倣する時に最適な選択であり得る。
【0035】
図6は、本発明の実施形態による、MIDIパラメータなどの音楽制御メッセージパラメータを編集し、音声信号をミキシングするためのユーザインターフェース600である。ユーザインターフェース600を、たとえば、コンピュータシステム(たとえば、110または302)または受信機ボックス(たとえば、212)上で表示することができる。パッチ読み出しエリア602は、ユーザが、パッチをプレビューし、選択し、たとえば、コンピュータまたはエンコーダにロードし、保存することを可能にすることができる。センシティビティ調節エリア604は、ユーザが、ギターの各弦605について動的センシティビティを調節することを可能にすることができる。ミキサエリア606は、ユーザが、各パッチに含まれ得るギター音と合成音との音量と、パンニングと、独奏/消音状態を調整することを可能にすることができる。フレットボード/分割エリア608は、演奏される各音をリアルタイムで表示することができ、ユーザが、「分割」−いろいろな音をフレットボードのいろいろな部分に割り当てるパッチを作成することを可能にすることができる。たとえば、図示する通り、パッチ612に「カダヴァーベース」とタイトルを付けることができる。パッチ612は、「ギター」614と「シンセ1」616という2つの音を含むことができ、それらを、フレットボード608上の2つの異なるエリア614aと616aとに割り当てることができる。各音について、いろいろなセンシティビティレベル604を各弦605に対して設定することができる。音量は、「ギター」と「シンセ1」との間で調整することができ、たとえば、ギターはシンセサイザーよりも小さい音量であることができる。カダヴァーベースパッチ設定を、ギターのエンコーダに送信することができる。ミュージシャンがギターを演奏すると、フレットボード608のエリア614aに対応する音がギター音を作り出すことができ、フレットボード608のエリア616aに対応する音は合成音を作り出すことができる。エリアに割り当てられる他の設定を、MIDI制御メッセージなどの制御データとして、エンコーダによって受信機に送信することができる。フレットボード608は、また、ユーザが、音声サンプルもしくは映像サンプル、または他の音声効果もしくは視覚効果を、ギターの特定のエリアに割り当てることを可能にすることができ、ユーザがギターの関連エリア上で演奏した時、音声サンプルまたは映像サンプルがユーザと同時に再生することが可能であるようにする。ユーザは、また、照明、たとえば、ステージ照明効果を制御するコマンドを割り当てることができる。
【0036】
図7は、本発明の実施形態による方法のフローチャートである。動作702では、楽器は電気信号を生成することができる。これは、楽器に取り付けられたピックアップを通して発生することができ、ピックアップは、楽器からの振動を感知または検出し、振動を電気信号に変換することができる。動作704では、電気信号を、音楽制御データ(たとえば、制御信号、メッセージ、またはMIDIデータ)に符号化することができる。制御データまたはMIDIデータは、ピッチおよび音を楽器で演奏する長さなどの情報を含むことができる。MIDIデータは、ピッチおよび音を楽器で演奏する長さなどの情報を含むことができる。動作705では、受信機は、たとえば、電気信号を符号化するためのパラメータをエンコーダに無線送信することができる。動作706では、MIDIデータを受信機に無線送信することができる。受信機を、音声信号を合成するプロセッサまたはコンピュータデバイスに連結することができる。動作706および動作705は、順番を交換可能であることができ、または同時にもしくはほぼ同時に発生することができる。動作708では、コンピュータデバイスは、音声信号、映像信号、画像、または照明制御メッセージなどのメディア信号を、送信されたMIDIデータに基づいて出力または生成することができる。コンピュータデバイスは、ユーザが、楽器によって生成された電気信号からMIDIデータを符号化する方法に影響を与えるMIDIパラメータを編集することを、さらに可能にすることができる。
【0037】
1つまたは複数のプロセッサを、デジタル信号またはアナログ信号の処理、送信、受信、編集、操作、合成、またはパッチのために使用することができる。プロセッサを、1つまたは複数のメモリデバイスに連結することができる。コンピュータは、動作をそれぞれ実行するための1つまたは複数のコントローラまたはプロセッサと、プロセッサによって実行可能なデータおよび/または命令(たとえば、ソフトウェア)をそれぞれ記憶するための1つまたは複数のメモリユニットとを含むことができる。プロセッサは、たとえば、中央処理装置(CPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、マイクロプロセッサ、コントローラ、チップ、マイクロチップ、集積回路(IC)、または他の適切な多目的または特殊プロセッサまたはコントローラを含むことができる。メモリユニットは、たとえば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ダイナミックRAM(DRAM)、フラッシュメモリ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、キャッシュメモリ、バッファ、短期記憶ユニット、長期記憶ユニット、または他の適切なメモリユニットまたは記憶ユニットを含むことができる。コンピュータは、入力をユーザまたはエージェントから(たとえば、ポインティングデバイス、クリックホイールまたはマウス、キー、タッチ画面、レコーダ/マイク、他の入力部品を介して)受信するための1つまたは複数の入力デバイスと、データを顧客とエージェントにそれぞれ表示するための出力デバイスとを含むことができる。
【0038】
追加的な実施形態では、本技術は、その上で具体化させたコンピュータプログラムを含む非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に向けられ得る。いくつかの実施形態では、コンピュータプログラムは、本明細書で説明した方法を実行するコンピューティングシステム中のプロセッサによって実行可能であり得る。
図1
図2
図3
図4A-4B】
図4C
図4D
図5
図6
図7