特許第6552417号(P6552417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552417
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】3次元造形装置及び3次元造形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/141 20170101AFI20190722BHJP
   B29C 64/188 20170101ALI20190722BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20190722BHJP
   B29C 64/321 20170101ALI20190722BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20190722BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20190722BHJP
【FI】
   B29C64/141
   B29C64/188
   B29C64/245
   B29C64/321
   B33Y30/00
   B33Y10/00
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-763(P2016-763)
(22)【出願日】2016年1月6日
(65)【公開番号】特開2017-121719(P2017-121719A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2018年6月15日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)/革新的設計生産技術 三次元異方性カスタマイズ化設計・付加製造拠点の構築と地域実証」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 当正
(72)【発明者】
【氏名】寺西 正俊
(72)【発明者】
【氏名】車谷 和道
(72)【発明者】
【氏名】古重 徹
【審査官】 ▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−029245(JP,A)
【文献】 特開平9−085835(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0290880(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C64/00−64/40,67/00
B33Y10/00,30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブロックから成る被造形物を3次元造形して造形物を製造する3次元造形装置であって、
前記ブロックが配置されて造形領域となる装置テーブルと、
前記装置テーブルに設けられて前記ブロックを固定する構成の自動サポート部と、
あらかじめ用意された前記ブロックを前記装置テーブル上に供給して前記被造形物を配置するブロック供給装置と、
供給された前記被造形物を加工する加工装置と、
前記ブロックを加熱する温度制御部と
を有し、前記ブロックはブロック本体と前記ブロック本体より融点の低い材料で形成されるブロック凸部と前記ブロック本体に形成されるブロック凹部とから構成され、前記ブロックの積層状態で一方のブロックの前記ブロック凸部が他方のブロック凹部に挿入される構成であり、
前記自動サポート部は先端が前記ブロック凹部に挿入された状態で前記ブロックを固定する構成である
ことを特徴とする3次元造形装置。
【請求項2】
前記ブロックは直方体であり、前記ブロック凸部および前記ブロック凹部は四角錐形状であることを特徴とする請求項1記載の3次元造形装置。
【請求項3】
前記ブロックは六角柱形状であり、前記ブロック凸部および前記ブロック凹部は三角錐形状であることを特徴とする請求項1記載の3次元造形装置。
【請求項4】
前記自動サポート部を前記装置テーブル内に収納し前記装置テーブルから突出させる自動サポート部駆動部をさらに有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の3次元造形装置。
【請求項5】
前記ブロックを冷却する冷却部をさらに有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の3次元造形装置。
【請求項6】
前記被造形物が複数種類の形状の前記ブロックから構成されることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の3次元造形装置。
【請求項7】
自動サポート部を備える装置テーブル上に配置される複数のブロックから成る被造形物を3次元造形して造形物を製造する3次元造形方法であって、
前記ブロックはブロック本体と前記ブロック本体より融点の低い材料で形成されるブロック凸部と前記ブロック本体に形成されるブロック凹部とから構成されており、
前記造形物の形状に対応する前記ブロックの配置を決定する工程と、
前記自動サポート部または前記ブロック凸部が上段のブロックの前記ブロック凹部に挿入されるように、決定した前記配置に応じて前記ブロックを配置する工程と、
前記ブロックを加熱して前記ブロック凸部を溶融する工程と、
前記ブロック凸部を冷却して積層される前記ブロックを互いに接着させて前記被造形物を形成する工程と、
前記被造形物を3次元造形して前記造形物を製造する工程と
を有することを特徴とする3次元造形方法。
【請求項8】
前記造形物を製造した後に、
前記自動サポート部を前記造形物の方向に突き出す工程と
をさらに有することを特徴とする請求項7記載の3次元造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被造形物を加工して造形物を製造する3次元造形装置及び3次元造形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の3次元造形技術としては、押出し法やインクジェット法があった。図14は特許文献1に記載された従来の押出し法の概念を示す図、図15は特許文献2に記載された従来の押出し法の概念を示す図である。図14図15に示すように、熱で溶かして流動性を持たせた材料を細い糸状に押出し、一筆書きの要領で積層しながら立体物を作っていた。あるいは、複数のブロックを積層して被造形物を構成し、被造形物を加工して造形物を製造していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−288974号公報
【特許文献2】特開平7−227895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、糸と糸が接触する界面が線接触となるため、積層方向に対して横からの衝撃強度が弱いという課題があった。さらに、糸と糸とを積層しているため立体物(3次元造形物)の表面等が設計通りに成形されず、製造精度が悪くなる場合があった。また、単にブロックを積層した場合、加工中にブロックがずれ、設計どおりの造形物が製造できない場合があった。
【0005】
本発明の目的は、3次元造形により製造された造形物を精度良く製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の3次元造形装置は、複数のブロックから成る被造形物を3次元造形して造形物を製造する3次元造形装置であって、前記ブロックが配置されて造形領域となる装置テーブルと、前記装置テーブルに設けられて前記ブロックを固定する構成の自動サポート部と、あらかじめ用意された前記ブロックを前記装置テーブル上に供給して前記被造形物を配置するブロック供給装置と、供給された前記被造形物を加工する加工装置と、前記ブロックを加熱する温度制御部とを有し、前記ブロックはブロック本体と前記ブロック本体より融点の低い材料で形成されるブロック凸部と前記ブロック本体に形成されるブロック凹部とから構成され、前記ブロックの積層状態で一方のブロックの前記ブロック凸部が他方のブロック凹部に挿入される構成であり、前記自動サポート部は先端が前記ブロック凹部に挿入された状態で前記ブロックを固定する構成であることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の3次元造形方法は、自動サポート部を備える装置テーブル上に配置される複数のブロックから成る被造形物を3次元造形して造形物を製造する3次元造形方法であって、前記ブロックはブロック本体と前記ブロック本体より融点の低い材料で形成されるブロック凸部と前記ブロック本体に形成されるブロック凹部とから構成されており、前記造形物の形状に対応する前記ブロックの配置を決定する工程と、前記自動サポート部または前記ブロック凸部が上段のブロックの前記ブロック凹部に挿入されるように、決定した前記配置に応じて前記ブロックを配置する工程と、前記ブロックを加熱して前記ブロック凸部を溶融する工程と、前記ブロック凸部を冷却して積層される前記ブロックを互いに接着させて前記被造形物を形成する工程と、前記被造形物を3次元造形して前記造形物を製造する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明の3次元造形装置によれば、2層構造のブロックを積層し接着することで積層界面の衝撃強度を向上し、積層・接着したブロック同士を加工することで3次元造形物の精度向上を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1における3次元造形装置の構成を例示する斜視図
図2】本発明の実施の形態1における3次元造形装置の構成を例示する平面図
図3】本発明の実施の形態1の3次元造形装置における2層構造のブロックの構造を例示する図
図4】本発明の実施の形態1における3次元造形装置の自動サポート部の構成を例示する図
図5】本発明の実施の形態1における造形プロセスのフローチャートを例示する図
図6】本発明の実施の形態1における積層後のブロックの状態を例示する図
図7】本発明の実施の形態1における切削後の造形物の状態を例示する図
図8】本発明の実施の形態1における造形工程ごとの各部温度プロファイルを例示する図
図9】実施の形態2におけるハニカムブロックの構成を例示する図
図10】実施の形態2における3次元造形装置の装置テーブルの構成とハニカムブロックの配置状態を例示する図
図11】本発明の実施の形態3における複数種類のブロック形状を例示する図
図12】本発明の実施の形態3における複数種類のブロック形状を例示する図
図13】本発明の実施の形態3における複数種類のブロック形状を例示する図
図14】特許文献1に記載された従来の押出し法の概念を示す図
図15】特許文献2に記載された従来の押出し法の概念を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における3次元造形装置の構成を例示する斜視図、図2は本発明の実施の形態1における3次元造形装置の構成を例示する平面図である。図2において、図1と同じ構成については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0011】
図1図2に示す3次元造形装置108は、装置テーブル部107の前方から作業アクセスされ、両側奥に雰囲気温度制御部101を備え、2つの雰囲気温度制御部101の間に多軸ロボット部104を備える。また、装置テーブル部107は、作業面の全面に自動サポート部105が配置さる。多軸ロボット部104は、先端にチャック部102及び切削部103が選択的に交換可能に取り付けられる。ブロック供給装置と切削装置とを兼ねる1つの多軸ロボット部104にチャック部102または切削部103を取り付ける構成でも良いが、それぞれブロック供給装置と切削装置等の加工装置が独立する構成でも良い。また、ブロック供給部110はブロック106を蓄蔵する構成で、チャック部102はブロック供給部110から装置テーブル部107にブロック106を供給するものである。
【0012】
図3は、本発明の実施の形態1の3次元造形装置における2層構造のブロックの構造例を示す。
ブロック106は、ブロック本体である高融点材料203上に高融点材料203より融点の低い低融点材料202が積層される構成である。高融点材料203は直方体形状であり、底面にはブロック凹部112を備える。低融点材料202は四角錐もしくは三角錐形状のブロック凸部111である。1つのブロック106におけるブロック凹部112とブロック凸部111とは、直上に積層した場合に対応する位置に形成されても良いが、ブロック凹部112は余分に形成されても良い。ブロック凹部112は余分に形成される場合はブロック106を互いにずらせて積層する際に、ブロック凸部111を挿入するブロック凹部112を選択することができ、積層構成の自由度が向上する。ブロック凹部112とブロック凸部111の形状及び体積が同一であると、ブロック106同士の接着強度が確保しやすく好ましい。ブロック106の外形寸法の関係は、例えば装着テーブル107の表面と平行な平面において短辺と長辺から構成され、ブロック106の高さは、高融点材料203を造形する時にブロック形状を維持できる容積とするために、ブロック106の短辺の1/2以上のブロックの高さとするのが望ましい。
【0013】
ここで3次元造形物の形状によっては、ブロック106を積層するのみでは自重によって倒れてしまうため、従来の3次元造形装置では3次元造形物をテーブル部上で保持できないという場合があった。そこで、本発明の実施の形態1に係る3次元造形装置は、自動サポート部105を有する。
【0014】
図4は、本発明の実施の形態1の3次元造形装置における自動サポート部105の構造例を示す。
自動サポート部105は、自動サポート部の先端部105aの形状が積層するブロック凸部111と同じ形状であり、先端部105aから下の部分は自動サポート部の軸部105bになり、その形状は三角柱もしくは四角柱形状等任意の形状である。自動サポート部105は、駆動部105cにより上下に駆動することができる。
【0015】
次に、図4にて装置テーブル107側の温度制御の構成を説明する。
図4において、3次元造形装置108の温度制御に係る構成は、装置テーブル部107の下部に高熱伝導材料402が配置され、その端部の一方あるいは両端にサポート温度制御部401が配置される。自動サポート部105は、高熱伝導材料402と常時接触している。サポート温度制御部401は、ヒータや冷却水等により高熱伝導材料402の温度を制御し、自動サポート部105を加熱冷却し、自動サポート部105の熱により装置テーブル部107は加熱冷却される。また、自動サポート部105にブロック凹部112を介して接するブロック106も加熱冷却される。更に加熱冷却効率を向上させるには自動サポート部105の内部に配管を設置し水や冷媒ガスなどを循環させても良い。なお、周囲の空気を加熱冷却しても良い。ここで、更にブロック106の内部の温度変化を促進するために、自動サポート部105の軸部105bの四角柱及び三角柱の部分がブロック106のブロック凹部112内部へ挿入できる形状とされても良い。
【0016】
図5に本発明の実施の形態1における造形プロセスのフローチャートを示す。以下の説明において、図1図2で示した構成物については図1図2で用いた符号を用いる。
動作の概略は、始めに3D−CADデータを作成し(STEP1)、ブロック106の高さを1層の厚みとするスライスデータに変換する(STEP2)。次に、そのスライスデータから造形物を効率的に作るためのブロックの選定とブロックの配置を積層されるブロックの各層ごとに演算する(STEP3)。次に、多軸ロボット部104が動作してチャック部102にてブロック供給部110に必要なブロックを取りに行き、自動サポート部105を備える装置テーブル107上にブロック106を1層ずつ必要数積層するまで積層する動作を繰り返す。自動サポート部105は、装置テーブル部107に設けられたマス目の中央に予め自動サポート部の先端105aのみ突き出す態様で構成されている。配置された複数のブロック106からなる被造形物の底面全面が装置テーブル部107と接する場合は、先端105aのみが突き出された自動サポート部105が底面を構成する各ブロック106のブロック凹部112に挿入されて各ブロック106が固定される(STEP6〜STEP8)。ここで、造形物の形状によっては、配置された複数のブロック106からなる被造形物の底面の一部が装置テーブル部107に接しない場合がある。つまり、ブロック106が形成された領域において、装置テーブル部107の表面とブロック106との間に空間が形成される場合がある。この空間を中空と称し、例えば、図4の中空113のような状態である。このように、造形物201の下側に中空113が形成される場合は、別途、先端105aが中空113の直上のブロック106のブロック凹部112に挿入されるように、自動サポート部105を突き出してブロック106を支えながら造形を進める(STEP4,STEP5)。
ブロック106の積層が終了したら、雰囲気温度制御部101及び自動サポート部105により加温して低融点材料202の表面を溶かし(STEP9)、その後に雰囲気温度制御部101を送風にすると共に自動サポート部105によりブロック106を冷却することでブロック106同士を接着する。つまり、低融点材料202は積層された複数のブロック106を接着することに用いられる(STEP10)。
【0017】
その後、中空部分の自動サポート部105を収納し切削部103により積層されたブロック106を切削加工することで造形物201を形成する(STEP11)。図6にブロックが積層された被造形物の状態を示し、図7に切削後の造形物201の状態を示す。図6において、積層されたブロック106は、それぞれの上下に隣り合うブロックとの界面で低融点材料202により接着されており、さらに、装置テーブル107とも低融点材料202により接着されても良い。この場合、自動サポート部の先端部105aに低融点材料202が設けられる。図7において、切削部103により、積層されたブロック106の不要な部分が除去され、最終的に必要な造形物201の形状が完成する。最後に、造形物201と接触している自動サポート部105を収納し、その後に自動サポート部105を突き上げ、造形物201を装置テーブル部の表面から0.2mm以上離して造形物201の取外しが完了する(STEP12)。
【0018】
図8に、本発明の実施の形態1における造形工程ごとの各部温度プロファイルを例示する。図8を用いて、自動サポート部105の動作と動作時の各部の温度変化について説明する。図1図4で示した構成物については図1図4で用いた符号を用いる。
【0019】
ブロック106の積層を開始前の自動サポート部105は常温(23度)で装置テーブル107内に軸部105bが入った状態で先端部105aのみ突き出ている。この時の各部の温度は、装置内雰囲気温度109・雰囲気温度制御部101・装置テーブル部107・自動サポート部105・サポート温度制御部401・高熱伝導材料402・造形物(表面)403・造形物(内部)404の全てが常温(23℃)である。
【0020】
次に、ブロック106の積層を開始する際の各部の温度は、装置内雰囲気温度109・雰囲気温度制御部101は低融点材料202が溶融せず且つ、造形スタートするための加熱時間ロスが発生しない温度の90℃で、装置テーブル部107・自動サポート部105・サポート温度制御部401・高熱伝導材料402は上記の90℃より低融点材料が溶融される温度TAと高融点材料が溶融される温度TBの温度差である10℃〜50℃の範囲で低い例えば60℃で、造形物(表面)403・造形物(内部)404は常温(23℃)である。そこから、ブロック106を積層するが、下部が中空の場合は積層ができる位置まで自動サポート部105を突き出して積層を繰り返す。この時の積層中の各部の温度は、装置内雰囲気温度109・雰囲気温度制御部101は90℃で、装置テーブル部107・自動サポート部105・サポート温度制御部401・高熱伝導材料402・造形物(表面)403・造形物(内部)404は60℃である。上記の工程から積層完了後と接着スタート前の上記の各部温度は同じである。
【0021】
次に、接着の準備中・接着中・接着時と工程が移行していく。具体的には、雰囲気温度制御部101及び自動サポート部105により加熱されてブロック106表面の低融点材料202が溶かされる。この時の自動サポート部105の温度はサポート温度制御部401により低融点材料202が溶融される温度TAに設定され、この温度は高融点材料が溶融される温度TBに比べ約10℃〜50℃低い。熱の伝達は、高熱伝導材料402に伝わって自動サポート部105を加熱し、そこから装置テーブル部107を加熱する。この工程での各部の温度は、装置内雰囲気温度109・雰囲気温度制御部101は170℃で、装置テーブル部107・自動サポート部105・サポート温度制御部401・高熱伝導材料402・造形物(表面)403は高融点材料203が溶融される温度TBに比べ約10℃〜50℃低い。造形物(内部)404は、低融点材料202が溶融される温度TAと同じである。
【0022】
次に接着時から接着完了に移行するが、雰囲気温度制御部101の送風及び自動サポート部105により低融点材料202を冷却することでブロック106間を接着する。この工程での各部の温度は、装置内雰囲気温度109・雰囲気温度制御部101・装置テーブル部107・自動サポート部105・サポート温度制御部401・高熱伝導材料402・造形物(表面)403・造形物(内部)404の全てが常温(23℃)である。
【0023】
次に、切削加工の工程へ移行していくが、その前に中空部で突き出ていた自動サポート部105を収納する。切削加工時の各部の温度は全て常温(23℃)であり、造形物201は装置テーブル部107に接着されている。
【0024】
切削加工後、取外しの工程へ移行する。図4の左2本の自動サポート部105のように、装置テーブル部107の中に自動サポート部105の全てを収納する。自動サポート部105の収納完了時の各部の温度は、装置内雰囲気温度109・雰囲気温度制御部101・装置テーブル部107・自動サポート部105・サポート温度制御部401・高熱伝導材料402・造形物(表面)403・造形物(内部)404は60℃である。
【0025】
次に、装置テーブル部107に接触している造形物201を取外す工程に移行するが、動作は自動サポート部105を装置テーブル部の上面より0.2mm以上突き上げることで造形物の取外しが完了する。この時の各部の温度は、装置内雰囲気温度109・雰囲気温度制御部101・造形物(内部)404は60℃で、自動サポート部105・装置テーブル部107・サポート温度制御部401・高熱伝導材料402・造形物(表面)403は90℃である。
【0026】
次に、装置テーブル部107の上面から自動サポート部105を再収納する。自動サポート部105の収納完了時の各部の温度は、装置内雰囲気温度109・雰囲気温度制御部101・造形物(表面)403・造形物(内部)404は、常温(23℃)で装置テーブル部107・自動サポート部105・温度制御部401・高熱伝導材料402は、60℃である。
【0027】
最後に、各部の全ての温度を常温(23℃)まで下げることで造形完了となる。
本発明の実施の形態1における3次元造形装置および3次元造形方法は、被造形物の造形領域となる装置テーブル107内に収納され、装置テーブル107表面から突出可能な自動サポート部を備え、被造形物は複数のブロック106から構成され、ブロック106の被造形部分は高融点材料203からなり、ブロック106の底面にはブロック凹部112が形成され、ブロック106の上面上には高融点材料203より融点の低い低融点材料202材料からなるブロック凸部111が形成され、ブロック106が積層される際には下段のブロック106のブロック凸部111が上段のブロック106のブロック凹部112内に挿入される構成である。そして、複数のブロック106を集めて被造形物を構成する際に、ブロック106が積層された状態で加熱によりブロック凹部112内の低融点材料202を溶融した後冷却することにより、低融点材料202で上下のブロック106を接着すると共に、装着テーブル107の表面から自動サポート部105を突出させることにより、最下段のブロック106のブロック凹部112内に自動サポート部105を挿入して、複数のブロック106からなる被造形物を固定しながら造形を行うことができる。これにより、造形された造形物は、ブロック106間の界面が面接触となり、さらに接着されているため、従来方法より衝撃強度が向上できる。また、自動サポート部105を有するために、積層中に造形物の下に中空部が存在しても自重により倒れることが無く構造を維持できる。このように、造形物の材料強度向上・精度向上を図ることができ、医療歯科技術分野の疑似歯等の製作用途にも適用できる。また、自動サポート部105は造形完了後の造形物取外しにも利用することができる。
(実施の形態2)
図1図2図4図9図10を用いて本発明の実施の形態2における3次元造形装置について説明する。図9は実施の形態2におけるハニカムブロックの構成を例示する図、図10は実施の形態2における3次元造形装置の装置テーブルの構成とハニカムブロックの配置状態を例示する図である。図9図10において、図1図2と同じ構成については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0028】
実施の形態2における3次元造形装置は、実施の形態1におけるブロック106に代わり六角柱形状のハニカムブロック309が用いられ、装置テーブル部107をハニカムマス目で区切り、さらに自動サポート部105の先端部105a形状が三角錐形状とされる。ブロックの形状は、立方体やそれを複数個繋いだ形状でも良い。その他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0029】
3次元造形方法は、始めに3D−CADデータをスライスデータに変換し、そのスライスデータからハニカムブロック309の配置を演算する。装置テーブル部107のハニカムマス目の中央に予め自動サポート部105の先端部105aのみ突き出させ、ハニカムブロック309をチャック部102にて掴みながら1層ずつ積層する動作を繰り返す。この時に、造形物(回転軸対象)301の下側が中空の場合は、自動サポート部105を自動制御により出して造形を進める。
【0030】
ハニカムブロック309の積層が終了したら、雰囲気温度制御部101及び自動サポート部105により加温して表面の低融点材料202を溶かし、その後に雰囲気温度制御部101から送風し自動サポート部105により冷却することでハニカムブロック309同士を接着する。
【0031】
その後、中空部分の自動サポート部105を収納し、切削部103により切削加工で造形物301を形成する。
最後に、造形物301と接触している自動サポート部105を収納し、その後に0.2mm以上突き上げることで造形物の取外しが完了する。
【0032】
このような構成においても、実施の形態1と同様に、造形された造形物は、ブロック106間の界面が面接触で接着されているため、従来方法より衝撃強度が向上できる。また、自動サポート部105を有するために、積層中に造形物の下に中空部が存在しても自重により倒れることが無く構造を維持できる。また、自動サポート部105は造形完了後の造形物取外しにも利用することができる。本実施の形態2の3次元造形装置は、自動サポート部105を軸とする回転方向においてブロックを強固に保持することができるため、回転対称形状の造形物を作製する際に有効である。
(実施の形態3)
図11図13に、本実施の形態3で使用する複数種類の形状のブロックを例示する。実施の形態1、2では、1種類の形状のブロックを用いる3次元造形装置について説明した。本実施の形態3は、複数種類の形状のブロックを用いる点以外は、実施の形態1と同じである。
【0033】
実施の形態3における3次元造形装置及び3次元造形方法では、スライスデータからブロック配置データを作成する時に、各層で最もブロック数が少なくなるように複数の形状のブロックを配置するブロック配置データを作成する。
【0034】
このように、複数種類のブロックを用い、効率的にブロックの配置を行うことにより、使用するブロック数を少なくできるため、積層に要する時間を短縮することができる。
なお、実施の形態1,2,3に示したブロックを接着する際の温度上昇は、温風を吹き付けることや、周囲の雰囲気温度を上げるなどの方法を用いてもよい。また、温度下降は、冷風を吹き付けることや、周囲の雰囲気温度を下げるなどの方法を用いてもよく、冷却装置を設けずに加熱を停止することにより放冷してもよい。
【0035】
また、自動サポート部105は上下に移動する構成を例に説明したが、固定された構成であっても良い。自動サポート部105が上下に移動する構成である場合は、造形物の取り出しが容易になる等有用である。
【0036】
また、上記説明では上面にブロック凸部を設け下面にブロック凹部を設けるブロックを例に説明したが、周囲の面にブロック凸部およびブロック凹部を設けるブロックとしても良い。ブロックの周囲の面にブロック凸部およびブロック凹部を設けることにより、積層方向だけでなく横方向に隣接するブロック間を接着することができ、衝撃強度をより向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、3次元造形により製造された造形物を精度良く製造することができ、被造形物を加工して造形物を製造する3次元造形装置及び3次元造形方法等に有用である。
【符号の説明】
【0038】
101 雰囲気温度制御部
102 チャック部
103 切削部
104 多軸ロボット部
105 自動サポート部
105a 自動サポート部の先端部
105b 自動サポート部の軸部
105c 自動サポート部の駆動部
106 ブロック
107 装置テーブル部
108 3次元造形装置
109 装置内雰囲気温度
110 ブロック供給部
111 ブロック凸部
112 ブロック凹部
113 中空
201 造形物
202 低融点材料
203 高融点材料
301 造形物(回転軸対象)
309 ハニカムブロック
401 サポート温度制御部
402 高熱伝導材料
403 造形物(表面)
404 造形物(内部)
TA 低融点材料が溶融する温度
TB 高融点材料が溶融する温度
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