(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1はブラシレスモータのワイパ装置への適用例を示す概要図を、
図2は
図1のDR側ワイパモータを出力軸側から見た斜視図を、
図3はモータ部の構造を説明する部分拡大断面図を、
図4はハウジング内の詳細を示す斜視図(ギヤカバー無し)を、
図5はギヤカバーの内側を示す分解斜視図を、
図6(a),(b),(c)はモータカバーのハウジングへの装着手順を説明する
図3の破線円A部に対応した拡大断面図をそれぞれ示している。
【0018】
図1に示すように、自動車等の車両10の前方側には、ウィンドシールドとしてのフロントガラス11が設けられている。フロントガラス11の前端部側(図中下側)で、かつ車両10の車幅方向(図中左右方向)に沿う運転席側および助手席側には、それぞれDR側ワイパ装置20およびAS側ワイパ装置30が搭載されている。このように、本実施の形態に係るワイパ装置は、運転席側および助手席側にそれぞれワイパ装置を備えた対向払拭式ワイパ装置を採用している。ここで、DR側は運転席側を、AS側は助手席側をそれぞれ示している。
【0019】
DR側ワイパ装置20およびAS側ワイパ装置30は、それぞれ駆動源としてのDR側ワイパモータ21およびAS側ワイパモータ31を備えている。各ワイパモータ21,31は、フロントガラス11上に設けられたDR側ワイパアーム22およびAS側ワイパアーム32(詳細図示せず)を、それぞれ所定の揺動角度で揺動駆動する。これにより、各ワイパアーム22,32の先端部にそれぞれ設けた各ワイパブレード(図示せず)が、フロントガラス11上を往復払拭動作し、ひいてはフロントガラス11に付着した雨水等の付着物を払拭して良好な視界が確保される。
【0020】
車両10の前方側で、かつフロントガラス11の前端部分の近傍には、車両10の車体を形成するカウルトップパネル12が設けられている。カウルトップパネル12は、車両10のDR側とAS側との間、つまり車両10の左右方向を横切るようにして延びている。また、車両10のDR側およびAS側には、車両10の前後方向(図中上下方向)に延び、かつ車体を形成するフロントサイドメンバー13がそれぞれ設けられている。さらに、カウルトップパネル12の前方側には、ダッシュパネルアッパー14が設けられている。このダッシュパネルアッパー14においても、カウルトップパネル12と同様に、車両10の左右方向を横切るようにして延びている。
【0021】
DR側ワイパ装置20は、ダッシュパネルアッパー14に溶接等により固定されたDR側差し込み固定部14aと、DR側のフロントサイドメンバー13に溶接等により固定されたDR側第1ねじ固定部13a、DR側第2ねじ固定部13bに固定されている。これに対し、AS側ワイパ装置30は、ダッシュパネルアッパー14に溶接等により固定されたAS側第1ねじ固定部14bと、AS側のフロントサイドメンバー13に溶接等により固定されたAS側第2ねじ固定部13cと、AS側のフロントサイドメンバー13およびカウルトップパネル12の双方に溶接等により固定されたAS側差し込み固定部12aに固定されている。
【0022】
このように、DR側ワイパ装置20およびAS側ワイパ装置30は、車両10の車体にそれぞれ3点支持で固定されている。なお、DR側ワイパモータ21およびAS側ワイパモータ31は、
図1に示すようにそれぞれ同じものを用いている。そして、各ワイパモータ21,31は、それぞれ3つの取付部a,b,cを備えており、各取付部a,b,cのうちの取付部aは、差し込み式で車体に固定されている。これに対し、各取付部a,b,cのうちの各取付部b,cは、それぞれ固定ボルト(図示せず)を介して車体に固定されている。
【0023】
各ワイパモータ21,31は、それぞれ同じものであるため、以下、DR側ワイパモータ21を代表して、その詳細構造について図面を用いて説明する。
【0024】
図2ないし
図5に示すように、DR側ワイパモータ(ブラシレスモータ)21は、アルミニウム製のハウジング40、プラスチック等よりなる樹脂製のモータカバー60およびギヤカバー80を備えている。これらのハウジング40、モータカバー60およびギヤカバー80は、互いに複数の締結ねじS(
図2では2つのみ示す)によって互いに連結されている。
【0025】
ここで、
図3に示すように、ハウジング40とモータカバー60との間には、断面が略Z字形状(迷路形状)に形成された環状の隙間部Gが形成されており、この隙間部Gには、ハウジング40とモータカバー60との間をシールするブチルゴム(イソブチエン・イソプレンゴム(IIR))よりなるシール剤SLが充填されている。これに対し、ハウジング40とギヤカバー80との間には、Oリング等のシール部材(図示せず)が設けられている。これにより、DR側ワイパモータ21の内部への雨水等の進入が防止される。
【0026】
ハウジング40は、溶融したアルミ材料を鋳造成形等することで所定形状に形成され、モータ収容部41と減速機構収容部42とを備えている。モータ収容部41は、
図3に示すように有底筒状に形成されている。モータ収容部41の軸方向一端側(
図3中上側)は開口されており、この開口部分には、モータカバー60のカバー側装着部110が装着されるハウジング側装着部100が設けられている。このように、モータカバー60は、モータ収容部41の開口部分を閉塞している。
【0027】
一方、モータ収容部41の軸方向他端側(
図3中下側)には、環状底部41aが設けられ、当該環状底部41aの中心部分には、回転軸46が回転自在に貫通される貫通孔41bが形成されている。
【0028】
モータ収容部41の内側には、環状の段差部43が設けられている。段差部43は、環状の底壁43aと筒状の側壁43bとから構成されている。そして、段差部43の内側には、ステータ(固定子)44が固定されている。ステータ44は、磁性体よりなる複数の鋼板44aを積層して互いに接着することで略円筒形状に形成されている。ステータ44の外周部の軸方向に沿う減速機構収容部42側の略半分が、モータ収容部41の内周部を形成する側壁43bに圧入され、これにより両者は強固に固定されている。なお、ステータ44の外周部と側壁43bの内周部との間には、図示しない凹凸係合部が設けられている。これによりDR側ワイパモータ21の駆動時において、ステータ44がハウジング40に対して相対回転することが無い。
【0029】
ステータ44の軸方向両側には、絶縁体である樹脂製のコイルボビン44bが突出して設けられている。コイルボビン44bには、U相,V相,W相(3相)のコイル44cが所定の巻き数で巻装されている。これらのU相,V相,W相のコイル44cにおける端部(図示せず)は、スター結線(Y結線)の巻き方となるように電気的に接続されている。ただし、各コイル44cの結線方法としては、スター結線に限らず、例えばデルタ結線(三角結線)等、他の結線方法を採用しても良い。
【0030】
なお、ステータ44の径方向内側には、コイルボビン44bを介してコイル44cが巻装された6つのティース(図示せず)が一体に設けられ、これらのティースはステータ44の周方向に等間隔(60度間隔)で配置されている。また、隣り合うティースの間には、コイル44cが配置される6つのスロット(図示せず)が設けられている。
【0031】
そして、各コイル44cは、ハウジング40の内部に設けられた配線ユニット(図示せず)を介して、ギヤカバー80の内側に固定された制御基板90(
図5参照)に電気的に接続されている。各コイル44cには、制御基板90に設けられたFETモジュール96(
図5参照)から、所定のタイミングで駆動電流が供給される。これにより、ステータ44に電磁力が発生して、当該ステータ44の内側にあるロータ45が、所定の回転方向に所定の駆動力で回転駆動される。
【0032】
図3に示すように、ステータ44の径方向内側には、所定の隙間(エアギャップ)を介してロータ(回転子)45が回転自在に設けられている。ロータ45は、磁性体である複数の鋼板(図示せず)を積層して互いに接着することで略円柱形状に形成されている。そして、ロータ45の径方向外側の表面には、略円筒形状に形成された永久磁石45aが装着されている。このように、ステータ44およびロータ45は、それぞれハウジング40の内部に収容されている。
【0033】
永久磁石45aは、ロータ45の回転方向に沿って磁極(N極およびS極)が交互に配置されるように4極に着磁されている。このように、DR側ワイパモータ21は、ロータ45の表面に永久磁石45aが装着されたSPM(Surface Permanent Magnet)構造のブラシレスモータを採用している。ただし、SPM構造のブラシレスモータに限らず、ロータ45に複数の永久磁石を埋め込んだIPM(Interior Permanent Magnet)構造のブラシレスモータを採用しても良い。また、略円筒形状の1つの永久磁石45aに換えて、ロータ45の軸線と交差する方向の断面形状が略円弧形状に形成された4つの永久磁石を、ロータ45の周方向に沿って磁極が交互に配置されるように等間隔で設けたものを採用しても良い。
【0034】
ここで、本実施の形態のDR側ワイパモータ21においては、ステータ44,コイルボビン44b,コイル44c,ロータ45,永久磁石45aおよび回転軸46によって、モータ部を形成している。
【0035】
図3および
図4に示すように、ロータ45の軸心には、回転軸46の軸方向一端側が固定されている。また、回転軸46の軸方向他端側には、転造加工等により形成された螺旋状の歯部46aを備えたウォーム46bが一体に設けられている。ここで、回転軸46に設けられるウォーム46bは、貫通孔41bよりも減速機構収容部42側に配置され、ウォーム46bに噛み合うウォームホイール50とともに減速機構SDを構成している。
【0036】
回転軸46の軸方向に沿うロータ45とウォーム46bとの間には、第1ボールベアリング47が設けられている。第1ボールベアリング47は、鋼材よりなる外輪47aおよび内輪47bと、外輪47aと内輪47bとの間に設けられる複数の鋼球47cとから形成されている。そして、内輪47bは、回転軸46に止め輪やカシメ等の固定手段(図示せず)によって固定されている。外輪47aは、ハウジング40のモータ収容部41と減速機構収容部42との間にある第1軸受装着部48に装着されている。
【0037】
ここで、第1ボールベアリング47は、第1軸受装着部48に対して、弾性を有するストッパ部材48aにより押圧されて固定されている。これにより、第1ボールベアリング47を第1軸受装着部48に固定することで、回転軸46は軸方向へ移動不能となる。したがって、ハウジング40の内部において、回転軸46は軸方向にがたつくこと無くスムーズに回転することができる。
【0038】
図4に示すように、回転軸46の軸方向他端側には、第2ボールベアリング49が装着されている。第2ボールベアリング49は、第1ボールベアリング47と同様に、鋼材よりなる外輪および内輪と、外輪と内輪との間に設けられる複数の鋼球(何れも図示せず)とから形成されている。そして、第2ボールベアリング49は、第1ボールベアリング47よりも小型のボールベアリングを採用している。
【0039】
ここで、第1ボールベアリング47は、回転軸46を回転自在に支持し、かつ回転軸46を軸方向に移動不能に支持する機能を有するため、大型として頑丈にしている。これに対し、第2ボールベアリング49は、回転軸46の軸方向他端側の回転振れを抑制する機能のみを有するため、小型で十分に対応することができる。なお、DR側ワイパモータ21の仕様(低速回転型や低減速比型等)によっては、第2ボールベアリング49を省略することもできる。
【0040】
図2および
図4に示すように、減速機構収容部42は、有底の略バスタブ形状に形成されている。減速機構収容部42は、底部42aおよび当該底部42aを囲うようにして側壁42bが設けられている。また、側壁42bの底部42a側とは反対側(
図4中上側)には開口部42cが設けられている。底部42aおよび開口部42cは、ウォームホイール50の軸方向に対向しており、開口部42cは、ギヤカバー80(
図5参照)によって密閉される。
【0041】
減速機構収容部42の底部42aには、減速機構収容部42の外部(
図2中上側)に向けて突出されたボス部42dが一体に設けられている。また、減速機構収容部42の側壁42bには、ボス部42dを中心に放射状に突出された3つの取付脚(固定脚)42eが一体に設けられている。これらの取付脚42eのうちの2つには、固定ボルト(図示せず)が貫通するゴムブッシュRBがそれぞれ装着されている。また、各取付脚42eのうちの1つには、DR側差し込み固定部14a(
図1参照)に差し込まれる差し込みゴムIRが装着されている。
【0042】
これにより、DR側ワイパモータ21は、各ゴムブッシュRBおよび差し込みゴムIRを介して車両10(
図1参照)に固定され、各ゴムブッシュRBおよび差し込みゴムIRが緩衝部材として機能する。よって、DR側ワイパモータ21を車両10に固定した際に、DR側ワイパモータ21の振動が車両10に伝達され難くなって静粛性が向上する。また、これとは逆に、車両10の振動もDR側ワイパモータ21に伝達され難くなり、DR側ワイパモータ21を振動から保護することができる。
【0043】
図3および
図4に示すように、減速機構収容部42の内部には、ウォームホイール50が回転自在に収容されている。ウォームホイール50は、例えばPOM(ポリアセタール)プラスチック等により略円板状に形成され、外周部分にはギヤ歯(歯部)50aが形成されている。そして、ウォームホイール50のギヤ歯50aには、ウォーム46bの歯部46aが噛み合わされている。
【0044】
ウォームホイール50の回転中心には、出力軸51の軸方向一端側が固定されており、当該出力軸51は、減速機構収容部42のボス部42dにより回転自在に支持されている。出力軸51の軸方向他端側は、減速機構収容部42の外部に延在しており、出力軸51の軸方向他端部には、DR側ワイパアーム22(
図1参照)の基端部が固定されている。これにより、出力軸51はロータ45(
図3参照)によって回転される。具体的には、ロータ45(回転軸46)の回転速度が減速機構SDによって減速され、減速されて高トルク化された回転力が、出力軸51から外部のDR側ワイパアーム22に伝達される。このように、減速機構SDは、ロータ45の回転を減速して、減速されて高トルク化された回転力をDR側ワイパアーム22に伝達するものであり、減速機構収容部42は、ロータ45の回転を減速する減速機構SDを収容している。
【0045】
図4に示すように、減速機構収容部42の側壁42bには、第2軸受装着部52が設けられている。第2軸受装着部52は第1軸受装着部48(
図3参照)と同軸上に配置され、第2軸受装着部52の内部には、第2ボールベアリング49が収容されている。ここで、第2ボールベアリング49の第2軸受装着部52への装着は、第2ボールベアリング49を回転軸46の軸方向他端側に装着した状態のもとで、第2ボールベアリング49を貫通孔41bと第1軸受装着部48とを通過させることにより行われる。
【0046】
なお、第2ボールベアリング49は、第2軸受装着部52に対して、圧入嵌合させるのでは無く、若干のクリアランスを持って遊嵌させている。これにより、例えば、ハウジング40の製造時等において、第1軸受装着部48と第2軸受装着部52とが若干軸ズレを起こした場合であっても、回転軸46の回転抵抗が増大するようなことが無い。
【0047】
ここで、本実施の形態のDR側ワイパモータ21においては、ウォーム46b,ウォームホイール50および出力軸51によって、ギヤ部を形成している。
【0048】
図2ないし
図4に示すように、モータカバー60は、モータ収容部41の開口部分を、ロータ45の軸方向から閉塞している。具体的には、モータカバー60は有底筒状に形成され、略円盤状に形成された底部61と、当該底部61を囲うようにして設けられた筒状壁部62とを備えている。底部61の中心部分には、筒状壁部62側に窪んだ凹部61aが設けられ、当該凹部61aは、底部61の強度を高めて撓み難くするために設けている。
【0049】
図3に示すように、筒状壁部62のモータ収容部41側には、当該モータ収容部41のハウジング側装着部100に装着されるカバー側装着部110が設けられている。カバー側装着部110の径方向内側は段付き形状に形成されており、ハウジング側装着部100の径方向外側の段付き形状と整合するようになっている。
【0050】
図5に示すように、ギヤカバー80は、減速機構収容部42の開口部42c(
図4参照)を密閉するもので、開口部42cと同様の外郭形状を成している。ギヤカバー80は、底壁部81および側壁部82を備えている。ギヤカバー80の内側で、かつ底壁部81には、第1固定ねじSC1によって制御基板(基板)90が固定されている。
【0051】
また、ギヤカバー80の側壁部82には、車両10側の外部コネクタ(図示せず)が接続されるコネクタ接続部82aが一体に設けられている。コネクタ接続部82aの内側には、複数の導電部材CMの一端側の端子(図示せず)が露出されている。一方、複数の導電部材CMの他端側の端子TMは、制御基板90に電気的に接続される。なお、車両10側の外部コネクタには、車載バッテリやワイパスイッチ(図示せず)が電気的に接続されている。
【0052】
図5に示すように、制御基板90は、ギヤカバー80の底壁部81側とは反対側、つまり回転軸46および出力軸51がある側(図中上側)に向けられる第1面91と、ギヤカバー80の底壁部81側、つまり第1面91側とは反対側(図中下側)に向けられる第2面92とを備えている。
【0053】
制御基板90の第1面91には、DR側ワイパモータ21を統括的に制御するCPU93と、回転軸46に設けたセンサマグネット(図示せず)と対向する第1ホールIC94a,第2ホールIC94b,第3ホールIC94cと、ウォームホイール50に設けたセンサマグネットSM(
図4参照)と対向するMRセンサ95とが設けられている。
【0054】
これに対し、制御基板90の第2面92には、駆動系の電子部品であるFETモジュール96と、他の電子部品であるキャパシタCPとが設けられている。ここで、FETモジュール96は、3相の各コイル44c(
図3参照)への通電状態を高速で切り替える複数のスイッチング素子により構成されている。したがって、FETモジュール96は発熱し易くなっている。よって、FETモジュール96の放熱性を向上させるために、当該FETモジュール96は、熱伝導部材97aおよび熱伝導シート97bを介してハウジング40(
図4参照)に接続されている。
【0055】
なお、
図5に示すように、FETモジュール96は、制御基板90をギヤカバー80の底壁部81に装着する前に、一対の第2固定ねじSC2によってギヤカバー80の底壁部81に固定される。その後、FETモジュール96は、はんだ付け等の接続手段によって、制御基板90の第2面92に実装される。
【0056】
ここで、CPU93およびFETモジュール96は、DR側ワイパモータ21に駆動電流を供給して、ロータ45(
図3参照)の回転を制御するようになっている。そして、CPU93は、各ホールIC94a,94b,94cおよびMRセンサ95で検出された検出値(矩形波信号)に基づいて、FETモジュール96を制御する。これにより、ロータ45の回転が制御される。
【0057】
次に、ハウジング40に設けたハウジング側装着部100と、モータカバー60に設けたカバー側装着部110との装着構造について、図面を用いて詳細に説明する。
【0058】
図3および
図6に示すように、ハウジング40のハウジング側装着部100は、モータ収容部41の開口部分でかつ径方向外側に設けられ、環状に形成されるとともに段付き形状となっている。
図6に示すように、ハウジング側装着部100は、ロータ45(
図3参照)の径方向に延びるハウジング側第1環状平面101を備えている。また、ハウジング側第1環状平面101の延在方向に沿う両側には、ロータ45の軸方向に延びるハウジング側第2環状平面102およびハウジング側第3環状平面103が設けられている。ここで、ハウジング側第2環状平面102は、ハウジング側第3環状平面103よりもロータ45の径方向内側に配置されている。このようにして、ハウジング側装着部100は、略階段形状に形成されている。
【0059】
これに対し、モータカバー60のカバー側装着部110は、モータカバー60の開口部分でかつ径方向内側に設けられ、環状に形成されるとともに段付き形状となっている。カバー側装着部110は、ロータ45の径方向に延びるカバー側第1環状平面111を備えている。また、カバー側第1環状平面111の延在方向に沿う両側には、ロータ45の軸方向に延びるカバー側第2環状平面112およびカバー側第3環状平面113が設けられている。ここで、カバー側第2環状平面112は、カバー側第3環状平面113よりもロータ45の径方向内側に配置されている。このようにして、カバー側装着部110は、略階段形状に形成されている。
【0060】
そして、ハウジング側装着部100およびカバー側装着部110をそれぞれ略階段形状に形成することで、モータカバー60をハウジング40に装着した状態のもとで、ハウジング側装着部100およびカバー側装着部110は、ロータ45の軸方向および径方向から互いに対向するようになっている。
【0061】
具体的には、ハウジング側第1環状平面101とカバー側第1環状平面111とが、ロータ45の軸方向から互いに対向される。また、ハウジング側第2環状平面102とカバー側第2環状平面112とが、ロータ45の径方向から互いに対向される。さらに、ハウジング側第3環状平面103とカバー側第3環状平面113とが、ロータ45の径方向から互いに対向される。これにより、ハウジング40のハウジング側装着部100と、モータカバー60のカバー側装着部110との間に、断面が略Z字形状(迷路形状)に形成された環状の隙間部G(
図6(c)参照)が形成される。ここで、環状の隙間部Gは、ロータ45の軸方向および径方向に延びるように屈曲して形成されている。
【0062】
隙間部Gは、
図6(c)に示すように、ロータ45の径方向に延びる第1隙間部G1と、当該第1隙間部G1の延在方向両側にそれぞれ設けられ、ロータ45の軸方向に延びる第2隙間部G2および第3隙間部G3とを備えている。より具体的には、第1隙間部G1は、ハウジング側第1環状平面101とカバー側第1環状平面111との間に形成され、第2隙間部G2は、ハウジング側第2環状平面102とカバー側第2環状平面112との間に形成され、第3隙間部G3は、ハウジング側第3環状平面103とカバー側第3環状平面113との間に形成されている。
【0063】
モータカバー60をハウジング40に装着した状態のもとで、第1隙間部G1の厚み寸法、つまりハウジング側第1環状平面101とカバー側第1環状平面111との離間寸法は、微小寸法S1(例えば0.5mm)とされる。すなわち、モータカバー60をハウジング40に装着してDR側ワイパモータ21を組み立てたときに、第1隙間部G1の厚み寸法が微小寸法S1となるようにしている。これにより、第1隙間部G1に十分な量のシール剤SLを介在(残留)させて、モータカバー60とハウジング40との間のシール性を高めている。
【0064】
ここで、微小寸法S1の第1隙間部G1は、モータカバー60をハウジング40に対して、複数の締結ねじS(
図2参照)で連結することにより、自動的に形成される。すなわち、複数の締結ねじSの締め付け力にばらつきが生じたとしても、微小寸法S1の第1隙間部G1を、容易かつ確実に形成することができる。ここで、微小寸法S1の第1隙間部G1が形成されるのは、
図4に示すように、ハウジング40側に設けられ、締結ねじSがねじ込まれる雌ねじ部FSと、モータカバー60側に設けられ、締結ねじSの頭部を支持する支持フランジHSとが、ハウジング側第1環状平面101とカバー側第1環状平面111とが接触する前に互いに接触するからである。
【0065】
図6に示すように、第2隙間部G2は、第3隙間部G3よりもロータ45の径方向内側に設けられ、第2隙間部G2のロータ45の径方向に沿う幅寸法はS2とされる。これに対し、第2隙間部G2よりもロータ45の径方向外側に設けられた第3隙間部G3のロータ45の径方向に沿う幅寸法は、第2隙間部G2の幅寸法S2よりも小さい幅寸法S3とされる(S3<S2)。これにより、モータカバー60のハウジング40への装着時に流動するシール剤SLが、ハウジング40の外側よりもハウジング40の内側に向けて流動するようにしている。つまり、シール剤SLは、上記幅寸法の関係(S3<S2)により、第3隙間部G3には流動し難く、第2隙間部G2には流動し易くなっている。
【0066】
次に、以上のように形成されたDR側ワイパモータ21の組み立て作業、特にモータカバー60のハウジング40への装着手順について、図面を用いて詳細に説明する。
【0067】
まず、
図6(a)の破線矢印(1)に示すように、モータカバー60のカバー側第1環状平面111に、シール剤(ブチルゴム)SLを所定量塗布する。ここで、シール剤SLの塗布作業は、作業者の手作業でも良いし、シール剤供給装置(ディスペンサ)により自動的に行っても良い。より具体的には、モータカバー60を、その軸心を中心に回転させるようにして、カバー側第1環状平面111の全面にシール剤SLを塗布するようにする。なお、シール剤SLの量は、モータカバー60をハウジング40に装着した状態、つまり
図6(c)に示す状態のもとで、第2隙間部G2および第3隙間部G3のそれぞれからはみ出ない量とする。
【0068】
次いで、
図6(a)の破線矢印(2)に示すように、シール剤SLが塗布されたモータカバー60の開口部分を、ハウジング40(モータ収容部41)の開口部分に臨ませて、モータカバー60をハウジング40に向けて移動させる。すると、
図6(b)に示すように、シール剤SLがハウジング側第1環状平面101に接触するようになる。その後、モータカバー60のハウジング40への移動をさらに進めることで、シール剤SLはハウジング側第1環状平面101とカバー側第1環状平面111との間で押し潰される。
【0069】
すると、第1隙間部G1が徐々に狭くなる(小さくなる)ことで、第1隙間部G1に充填されたシール剤SLが、第2隙間部G2および第3隙間部G3にそれぞれ流れ込む。このとき、第2隙間部G2の幅寸法S2の方が、第3隙間部G3の幅寸法S3よりも大きいため、第2隙間部G2の方により多くのシール剤SLが流動する。これにより、シール剤SLの第3隙間部G3への流動が抑えられて、シール剤SLがハウジング40およびモータカバー60の外部にはみ出ることが防止される。したがって、DR側ワイパモータ21の見栄えが悪くなるようなことが防止される。
【0070】
次いで、
図4に示すように、ハウジング40の雌ねじ部FSとモータカバー60の支持フランジHSとを突き合わせて、複数の締結ねじSにより、ハウジング40とモータカバー60とを固定する。これにより、DR側ワイパモータ21の組み立てが完了する。このとき、第1隙間部G1には、
図6(c)に示すように、所定量のシール剤SLが介在されるので、十分なシール性が確保される。
【0071】
以上詳述したように、本実施の形態によれば、モータカバー60とハウジング40との間に、ロータ45の軸方向および径方向に延びる迷路状の隙間部Gを設け、この迷路状の隙間部Gに、モータカバー60とハウジング40との間をシールするシール剤SLを充填して設けたので、シール剤SLを迷路状の隙間部Gに封じ込めることができる。
【0072】
したがって、シール剤SLの量に多少のばらつきが生じたとしても、シール剤SLの外部へのはみ出しを抑えることができる。よって、DR側ワイパモータ21の見栄えが悪化するのを防止しつつ適切なシール性の確保することができ、ひいては信頼性の向上を図ることができる。
【0073】
また、本実施の形態によれば、隙間部Gは、ロータ45の径方向に延びる第1隙間部G1と、当該第1隙間部G1の延在方向両側にそれぞれ設けられ、ロータ45の軸方向に延びる第2隙間部G2および第3隙間部G3と、を備えるので、第1隙間部G1に充填された余剰のシール剤SLを、第2隙間部G2および第3隙間部G3の双方に流動させることができる。
【0074】
さらに、本実施の形態によれば、第2隙間部G2は、第3隙間部G3よりもロータ45の径方向内側に設けられ、第2隙間部G2のロータ45の径方向に沿う幅寸法S2の方が、第3隙間部G3のロータ45の径方向に沿う幅寸法S3よりも大きい(S2>S3)ので、DR側ワイパモータ21の外部へのシール剤SLのはみ出しを、より確実に防止することができる。
【0075】
また、本実施の形態によれば、モータカバー60樹脂製であるので、カバー側装着部110の段付き形状を、射出成形等により容易に形成することができる。さらには、DR側ワイパモータ21の軽量化を実現できる。
【0076】
また、本実施の形態によれば、シール剤SLがブチルゴムであるので、流動性を良好にして作業性を向上させつつ、耐熱性,耐寒性,耐候性等に優れ、長期に亘り良好なシール性を維持することができる。
【0077】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態においては、DR側ワイパモータ21に3つの取付脚42eを設け、3つの取付脚42eのうちの1つを差し込み式とし、他の2つをボルト固定式としたが、本発明はこれに限らず、3つの取付脚42eの全てをボルト固定式としても構わない。
【0078】
また、上記実施の形態においては、DR側ワイパモータ21を、フロントガラス11上を揺動するDR側ワイパアーム22を駆動するものとしたが、本発明はこれに限らず、リヤガラス上を揺動するワイパアームを駆動するものにも採用することができる。
【0079】
さらに、上記実施の形態においては、本発明に係るブラシレスモータを、ワイパ装置の駆動源に適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、サンルーフ装置やパワーウィンド装置等、他の装置の駆動源にも適用することができる。