(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ノズルを覆う開閉可能な蓋体を更に備え、該蓋体は、閉塞時に、上方に変位しているノズルを下方に押圧するための押圧部を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の吐出容器用キャップ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のキャップでは、2つのヒンジを用いたキャップが一般に広く用いられていないため、利用者にとって操作が分かり難い場合があった。また、2つのヒンジを用いたキャップは、第1ヒンジ側がしっかり閉じられていない状態で第2ヒンジを開いて吐出した場合に、第1ヒンジが開いて内容物が注出孔以外から漏れ出るおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、簡便な操作によって吐出態様の切り換えが可能な吐出容器用キャップ、及び吐出容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内容物を収容するスクイズ可能な容器本体に装着可能な吐出容器用キャップであって、
前記容器本体の口部に装着されるキャップ本体と、
該キャップ本体の開孔を上方から覆うと共に内容物の吐出を制御するスリット弁を有し、上下に移動可能なノズルと、
前記キャップ本体から下方に延び、前記ノズル及び前記容器本体の内部に連通する有底筒状部材と、
該有底筒状部材の内部空間に配置された弁体、及び該有底筒状部材の底部とは対向する位置に設けられる弁座を有する弁部と
を備え、
前記ノズルが移動範囲の下端にあるとき、前記弁体は、前記容器本体の倒立姿勢によって前記ノズルの一部に当接して、前記弁部は開放状態となり、
前記ノズルが移動範囲の上端にあるとき、前記弁体は、前記容器本体の倒立姿勢によって前記弁座に着座して、前記弁部は閉塞状態となり、
前記スリット弁は、前記容器本体の押圧により開放状態となることを特徴とする吐出容器用キャップである。
【0007】
また、前記弁体は、側面が前記有底筒状部材の内壁に隙間を介して緩合する筒状形状を有することが好ましい。
【0008】
また、前記有底筒状部材は側面に開孔を有することが好ましい。
【0009】
また、前記有底筒状部材は前記底部に開孔を有することが好ましい。
【0010】
また、前記ノズルの一部は、前記ノズルの下方に突出する棒状部材であることが好ましい。
【0011】
また、前記ノズルを覆う開閉可能な蓋体を更に備え、該蓋体は、閉塞時に、上方に変位しているノズルを下方に押圧するための押圧部を有することが好ましい。
【0012】
また、本発明は、内容物を収容するスクイズ可能な容器本体に吐出容器用キャップを装着した吐出容器であって、
前記吐出容器用キャップは、
前記容器本体の口部に装着されるキャップ本体と、
該キャップ本体の開孔を上方から覆うと共に内容物の吐出を制御するスリット弁を有し、上下に移動可能なノズルと、
前記キャップ本体から下方に延び、前記ノズル及び前記容器本体の内部に連通する有底筒状部材と、
該有底筒状部材の内部空間に配置された弁体、及び該有底筒状部材の底部とは対向する位置に設けられる弁座を有する弁部と
を備え、
前記ノズルが移動範囲の下端にあるとき、前記弁体は、前記容器本体の倒立姿勢によって前記ノズルの一部に当接して、前記弁部は開放状態となり、
前記ノズルが移動範囲の上端にあるとき、前記弁体は、前記容器本体の倒立姿勢によって前記弁座に着座して、前記弁部は閉塞状態となり、
前記スリット弁は、前記容器本体の押圧により開放状態となることを特徴とする吐出容器である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の吐出容器用キャップ、及び吐出容器によれば、簡便な操作によって吐出態様の切り換えが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態である吐出容器用キャップ1が、これに適合する容器本体2に装着された状態の吐出容器100を示す。なお、本明細書、特許請求の範囲、要約書および図面では、後述する蓋体30が位置する側を上方(
図1における上側)とし、容器本体2の底部が位置する側を下方(
図1における下側)とする。吐出容器用キャップ1は、内容物を収容する容器本体2の口部4aに装着するキャップ本体10と、内容物を注出するスリット弁28を有し上下に移動可能なノズル20と、キャップ本体10とヒンジ38を介して一体成形され、スリット弁28を覆う蓋体30と、キャップ本体10から下方に延び、ノズル20及び容器本体2に連通する有底筒状部材40と、有底筒状部材40の内部空間に配置された弁体50とを備える。キャップ本体10と蓋体30とは一体成形されており、外周壁11の上端、及び蓋体周壁33の下端において、ヒンジ38によって連結されている。なお、
図1は、ノズル20の注出孔21fが蓋体30によって閉じられた、保管に適した状態を示す。
【0017】
まず、容器本体2について説明する。本実施形態では、容器本体2は、低密度ポリエチレン(LDPE)又は高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)によって形成されるパリソンに対し、押出しブロー成形を行うことによって形成されている。特にLDPEを用いた場合には高いスクイズ性を付与することができる。しかし、この態様に限定されず、例えば二軸延伸ブロー成形を行うことによって容器本体2を形成する場合には、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いてもよい。更に、容器本体2は、外層体と内層体とからなる積層剥離容器であってもよい。
図1に示すように、容器本体2は、その内側に内容物を収容する収容空間Sを備えている。
【0018】
容器本体2は、
図1に示す円筒状の口部4aに、復元自在な可撓性を有する図示しない胴部、及び胴部の下端を閉鎖する図示しない底部を連結したものである。口部4aの外周面には、後述するキャップ本体10の外周壁11に設けた雌ねじ部12にねじ係合させるための雄ねじ部4bを設けている。このように、容器本体2は、雄ねじ部4bによりキャップ本体10を強固に固定することができる。
【0019】
次に、吐出容器用キャップ1を構成するキャップ本体10について
図2を用いて説明する。
図2は、
図1の吐出容器用キャップ1部分を拡大した正面断面図であり、蓋体30は省略している。キャップ本体10は、口部4aを取り囲む外周壁11を備えており、外周壁11の内周面には、口部4aの雄ねじ部4bにねじ係合する雌ねじ部12が形成されている。また、外周壁11の上部には、頂壁19が一体に連結されている。そして、雌ねじ部12を雄ねじ部4bにねじ係合させ、容器本体2の口部4aの上端を後述する有底筒状部材40の天壁41を介してキャップ本体10の頂壁19の下面に当接させることによって、キャップ本体10を容器本体2の口部4aにしっかりと固定することができる。このとき、有底筒状部材40も容器本体2に固定される。頂壁19の内周端から上方に向かって中央壁14が延びると共に、中央壁14のやや外周寄りから下方に向かって内周壁17が垂下している。中央壁14の外周面にはストッパ14dが設けられ、後述するノズル内側部材25の摺動外壁25fに設けられたストッパ25hに当接すると共にノズル20の上方への移動を制限している。また、中央壁14の内周面に設けられたストッパ14eもまた、ノズル内側部材25の摺動内壁25dに設けられたストッパ25kと当接する。頂壁19の内周側下面は弁座18を形成している。すなわち、後述する容器本体2の倒立姿勢において、弁体筒45の弁体空間Rに配置された弁体50は自重によってスリット弁28の方向へ移動を開始し、更に胴部の押圧による収容空間S内の圧力上昇に付勢されて、頂壁19の内周側下面として設けられた弁座18に着座する。なお、弁体50の移動の態様は上記に限定されず、例えば弁体50の質量を大きくして、弁体50が自重のみによって弁座18に到達可能なように構成してもよい。また、弁体50の表面又は弁体筒45の内周面に凹凸を設けて摺動抵抗を加える等によって、胴部の押圧のみによって弁体50が弁座18の方向に移動を開始するようにしてもよい。弁座18は、後述する有底筒状部材40の底部45bと対向する位置に設けられている。外周壁11の上端には、蓋体30を連結するためのヒンジ38が設けられている。すなわち、
図1に示すように蓋体30とキャップ本体10とは、ヒンジ38を介して一体成形されている。ヒンジ38と対向する側の頂壁19の外周部には、蓋体30がアンダーカット係合するための係合突部19dが設けられている。
【0020】
なお、本実施形態において、蓋体30は、ヒンジ38を介してキャップ本体10と一体成形されているが、この態様には限定されない。例えば、蓋体30がキャップ本体10とは別体のものとして構成され、両者が更なる連結手段によって連結されるように構成されていてもよい。また、蓋体30は、ねじやアンダーカットでキャップ本体10に装着するように構成してもよい。
【0021】
キャップ本体10に設けられた中央壁14は、
図2に示すように、容器本体2の内部と、後述するノズル20のスリット弁28とを連通する開孔を形成している。そして、中央壁14が、ノズル20の摺動内壁25dと摺動外壁25fとの間の空間に嵌合し摺動可能とすることによって、ノズル20は、キャップ本体10に対して上下方向に移動可能に構成されている。
【0022】
次に、ノズル20の構成について説明する。本実施形態において、ノズル20は、外側部分を形成するノズル外側部材21、内側部分を形成するノズル内側部材25、及びスリット弁28の3つの部材から構成されている。
【0023】
ノズル外側部材21は、円筒形状のノズル周壁21aの上端にノズル天壁21bが連結され、ノズル天壁21bの内周端から上方に向けてノズル筒壁21cが延びている。ノズル筒壁21cの上端には、更に内周方向に延びて注出孔21fを形成するノズル頂壁21dが設けられている。ノズル頂壁21dの内周端には上方に突出する注出壁21eが形成されており、
図1に示すように、蓋体30が閉じられたとき、蓋体30の上壁31下面に設けられている押圧部32aの内周面に嵌合する。なお、
図2において、ノズル天壁21bの外周端は、ノズル周壁21aよりも外周方向に突出して天壁突部21gを形成しており、吐出容器100の利用者が、後述する定量吐出を行う際に、この天壁突部21gを把持する等してノズル20を上方に移動させることができる。
【0024】
ノズル内側部材25は、円筒形状を有する摺動内壁25dが、その上端において水平方向外側に延びる当接壁25eと連結され、当接壁25eの外周端において、更なる円筒形状を有する摺動外壁25fと連結されている。摺動内壁25dの内周面には、水平方向に延びる開孔板25cが設けられており、開孔板25cには、ノズル開孔25aが周方向に4箇所等間隔で配置されている。また、開孔板25cの中央から下方に棒状部材25bが垂下しており、後述するように、連続吐出時において棒状部材25bの下端が弁体50に当接する。
【0025】
スリット弁28は、軟質弾性材料製の有頂筒体で、弁側壁28bの上端に、球弧殻状に湾曲して陥没したスリット弁体28aを連結し、このスリット弁体28aに、十字形状のスリットが形成されている。また、弁側壁28bの下端には外周方向に延びる弁脚壁28cを連結して構成している。
【0026】
図2に示すように、スリット弁28の弁脚壁28cが、ノズル内側部材25の当接壁25eの上面と、ノズル外側部材21のノズル天壁21bの下面との間に狭持され、ノズル周壁21a下端の内周面に設けられた係合突部21hが、摺動外壁25f下端の外周面に設けられた係合突部25jにアンダーカット係合することによって、3つの部材は強固に結合される。なお、スリット弁28は、弁側壁28bが、ノズル筒壁21cの内周面に嵌合すると共に、当接壁25eの上面に設けられた当接壁突部25gが弁脚壁28cの下面に設けられた脚壁凹部28dに嵌入することによって、半径方向に位置決めされている。上述のように、摺動内壁25dと摺動外壁25fとの間の空間には、キャップ本体10の中央壁14が嵌合し、ノズル20は、中央壁14に対して摺動することによって、キャップ本体10に対して上下方向に移動可能となっている。
【0027】
図2に示すように、ノズル20の上端には、ノズル頂壁21dが設けられており、注出孔21fを形成している。容器本体2内の内容物は、後述するノズル開孔25aを通過した後、容器本体2の押圧によって開放状態となったスリット弁28を更に通って、注出孔21fから吐出される。なお、ノズル20の下方への変位は、中央壁14の上端が当接壁25eの下面に当接することによって制限されている(
図1の状態)。他方、ノズル20の上方への変位は、摺動外壁25fの内周面の下方寄りに設けられたストッパ25h、及び摺動内壁25dの外周面の下方寄りに設けられたストッパ25kが、それぞれ中央壁14の外周面上方寄りに設けられたストッパ14d、及び中央壁14の内周面上方寄りに設けられたストッパ14eに当接することによって制限されている(
図5の状態)。
【0028】
ノズル20の容器本体2側と注出孔21f側とは、ノズル開孔25aを通じて連通する。本実施形態において、ノズル開孔25aは、摺動内壁25dの内側の空間に設けられた水平方向に延びる開孔板25c上に、周方向に4箇所等間隔で配置されている。また、この開孔板25cの中心から下方に棒状部材25bが垂下している。棒状部材25bは、後述するように、ノズル20が移動範囲の下端にあるときに、容器本体2の倒立姿勢によって弁体50がこの棒状部材25bに当接し、弁部の開放状態を維持するためのものである。
【0029】
なお、ノズル開孔25aの形状は、上記の態様に限定されず、さまざまな形状を選択することが可能である。また、容器本体2の倒立姿勢において弁部の開放状態を維持するための部材は棒状部材25bに限定されることなく、弁体50の弁座18への着座を妨げるあらゆる部材の使用が可能である。
【0030】
次に蓋体30の構成について
図1により説明する。蓋体30は、先述のように、キャップ本体10の外周壁11の上端においてヒンジ38を介して連結されており、ヒンジ38を折り曲げることによってスリット弁28、及び注出孔21fを覆い隠すことができる。蓋体30の周囲は蓋体周壁33によって覆われている。また、ヒンジ38と対向する側の蓋体周壁33の下端には係合突部33dが設けられており、キャップ本体10の頂壁19の外周部に設けられた係合突部19dとアンダーカット係合して、蓋体30を閉塞状態でキャップ本体10に対して固定することができる。また、蓋体30には、蓋体周壁33の上端において水平方向に延びる上壁31が設けられている。蓋体周壁33におけるヒンジ38と対向する側の下端には、周壁突部33aが設けられ、利用者がこの周壁突部33aに指をかけることによって蓋体30を容易に開放することができる。上壁31の中央には、ノズル20の注出孔21fと対向する位置に押圧部32a,32bが設けられている。押圧部32aは、リング形状を有しており、上壁31の下面から下方に突出する。ノズル20が上方に移動した状態で蓋体30を閉じると、押圧部32aが注出壁21eの外周面に当接し、ノズル20を押圧して下方へと移動させる。また、押圧部32bは、蓋体30の閉塞状態において、
図1に示すようにスリット弁体28aを上方から押圧して、スリット弁体28aが下方に僅かに変位して開いた状態に維持する。この構成によって、保管時に内容物の付着によってスリット弁28同士が相互にくっつき、開放不能となることを防止する。
【0031】
次に有底筒状部材40の構成について
図2により説明する。有底筒状部材40は、キャップ本体10の頂壁19の下面から下方に延びる有底筒状形状の弁体筒45と、弁体筒45を容器本体2及びキャップ本体10に対して固定するための天壁41及び外周壁42と、弁体筒45と天壁41とを連結する縦アーム43及び横アーム44とを有する。
【0032】
弁体筒45は、円筒形状を有する側面上端において対向する2箇所に配置された側壁開孔45aを有すると共に、底部45bには底部開孔45cを有する。側壁開孔45aの一方は、ヒンジ38側に設けられ、他方はヒンジ38と対向する側に設けられている。なお、側壁開孔45aの数は2箇所に限定されることなく、任意の数の側壁開孔45aを設けることができる。また、側壁開孔45aと底部開孔45cのいずれか一方のみを設けるようにしてもよい。
【0033】
天壁41の内周面には、キャップ本体10の頂壁19から下方に垂下する内周壁17の外周面が液密に嵌合している。そして、天壁41がキャップ本体10の外周壁11の内周面及び頂壁19の下面に当接した状態でキャップ本体10の雌ねじ部12を容器本体2の雄ねじ部4bにねじ係合させることによって、天壁41がキャップ本体10と容器本体2との間にしっかりと挟み込まれて固定される。このとき、天壁41の下面から下方に垂下している外周壁42の外周面が口部4aの内周面に液密に嵌合する。
【0034】
弁体筒45の弁体空間Rには、有頂筒状形状の弁体50が配置されている。弁体50の側壁は、弁体筒45の弁体空間Rの内径よりもやや小さな外径を有しており、
図1に示す容器本体2の正立姿勢においては、底部45bに当接する一方、例えば
図4に示す倒立姿勢においては、ノズル20側に移動する。なお、本実施形態において、弁体50は、有頂筒状形状を有するものとして構成したが、この態様には限定されず、有底筒状形状や円筒形状等であってもよい。また、球状など、弁体筒45の弁体空間Rを上下に移動可能なあらゆる形状とすることができる。
【0035】
次に本実施形態の吐出容器用キャップ1を容器本体2に装着した吐出容器100から内容物を吐出する方法について具体的に説明する。
【0036】
図1は、容器本体2の収容空間S内の内容物が注出孔21fから吐出されることがない保管時の状態を示している。具体的には、蓋体30が閉じられ、蓋体30の上壁31の下面に設けられた押圧部32aが注出壁21eの外周面に嵌合すると共に、押圧部32bがスリット弁体28aに当接して、スリット弁28の開放、及び注出孔21fからの内容物の吐出が防止されている状態である。
【0037】
図3は、
図1の保管時の状態から利用者が蓋体30を開放し、容器本体2の胴部を把持して吐出容器100を倒立姿勢へと移行させた状態を示している。この
図3では、弁体50が弁体筒45の底部45bに当接しているが、弁体50自身の自重によって、注出孔21fの方向に動き始める。容器本体2の収容空間S内の内容物は、側壁開孔45a及び底部開孔45cを通って弁体空間Rに入り、更にノズル開孔25aを通過することができる。しかし、容器本体2の胴部が押圧(スクイズ)されておらず、容器本体2内に正圧が発生していないため、スリット弁28が開放されておらず、内容物は吐出されない。
【0038】
図3の状態から、利用者が容器本体2の胴部を押圧すると、収容空間S内の圧力が上昇し、底部開孔45cから弁体空間R内に流入した内容物が、弁体50と弁体筒45の内周面との隙間を通って注出孔21fの方向に流動する。そして、
図4に示すように、内容物がその隙間を流れる際に、弁体50も更に注出孔21fの方向へと移動していく(移動前の弁体50の位置を二点鎖線で示す)。また、収容空間S内の圧力が高まるため、スリット弁28が開放状態となる。収容空間S内の内容物は、
図4に破線矢印で示すように、側壁開孔45a及び底部開孔45c、ノズル開孔25a、並びにスリット弁体28aを通過して、注出孔21fから吐出される。
【0039】
このように、底部開孔45cから弁体空間R内に流入した内容物が弁体50と弁体筒45の内周面との隙間を通って注出孔21fの方向に流動するときに、弁体50はその流れにのって注出孔21fの方向に移動する。従って、胴部を押圧したときの弁体50の移動速度は、弁体50と弁体筒45の内周面との隙間の大きさによってコントロールすることができる。
【0040】
注出孔21fの方向に移動を開始した弁体50は、ノズル20から容器本体2側に突出した棒状部材25bに当接する。弁体50が棒状部材25bに当接している
図4の状態においては、弁体50は弁座18に当接していない。また、弁体50と弁体筒45の内周面との間には所定の隙間が存在するため、弁体空間R内に進入した内容物は、弁体50と弁体筒45との間の空間及び弁体50と弁座18との間の空間を通ってノズル開孔25aへと向かう。そして、ノズル開孔25aを通過した内容物は、注出孔21fから外部に吐出される。この
図4の状態では、収容空間Sから注出孔21fまでが連通しているので、容器本体2の内容物が弁体空間Rを経由して注出孔21fから連続的に吐出される(連続吐出の状態)。
【0041】
図4において、利用者が容器本体2の胴部の押圧を停止すると、容器本体2はそれ自身の剛性によって元の形状に戻るため、収容空間S内は負圧となり、スリット弁28は閉塞状態へと移行する。また、この負圧によるサックバック機能によって、スリット弁28近傍の内容物は容器本体2側に引き込まれるため、内容物の吐出が瞬時に停止し、液切れが良くなる。
【0042】
なお、連続吐出を終了し、利用者が吐出容器100を正立姿勢へ戻したとき、弁体空間R内に進入している内容物は、主に底部開孔45cを通じて容器本体2へと戻る。これによって、棒状部材25bに当接していた弁体50は、速やかに底部45bまで戻ることができる。
【0043】
次に、容器本体2内の内容物の定量吐出を行う場合について説明する。
【0044】
図5は、蓋体30を開放状態とした
図2の状態から、利用者がノズル20の天壁突部21gを掴んで図の矢印の方向(上方)へと移動させた状態を示している。このノズル20の上方への移動は、先述のように摺動内壁25d及び摺動外壁25fに設けられたストッパ25k及び25hが、それぞれ中央壁14に設けられたストッパ14e及びストッパ14dに当接する位置で制限される。
【0045】
図5の状態から利用者が容器本体2の胴部を把持して吐出容器100を
図6に示す倒立姿勢へと移行させると、弁体50は、弁体筒45の弁体空間R内をノズル20の方向に移動する。吐出容器100を倒立姿勢としてから弁体50が弁座18に当接するまでの間、利用者が容器本体2の胴部を押圧すると、容器本体2内部に正圧が発生して、スリット弁28が開放状態となる。そして、側壁開孔45a、及び底部開孔45cを通って弁体筒45の弁体空間R内に進入した内容物は、ノズル開孔25a、スリット弁体28a及び注出孔21fを経由して外部に吐出される。
【0046】
図6においては、ノズル20が上方(吐出容器100を倒立姿勢とした
図6の状態においては下方)に移動しているため、ノズル20の方向に移動した弁体50は、棒状部材25bには当接せず、弁座18に当接する(当接した状態を
図7に示す)。弁体50が弁座18に当接すると、弁体空間Rと注出孔21fとが非連通状態となるため、弁体50よりも容器本体2側の内容物は弁部を通過することができず、弁体空間R内に留まる。これによって、ノズル20を上方に移動させたときの内容物の吐出は、弁部が閉塞状態になる前に弁座18を通過する一定量に制限される。このため、利用者はノズル20の上方への移動という簡便な操作によって内容物の定量吐出を行うことができる。なお、利用者が再度定量吐出を行いたい場合は、吐出容器100を一旦
図5の正立姿勢まで戻した後に、再度
図6の倒立姿勢とすればよい。
【0047】
なお、
図7において、弁体50が弁座18に当接して容器本体2からの内容物の供給が停止すると、スリット弁28にかかっていた正圧が低下する。そのため、スリット弁28はまもなく閉塞状態へと移行する。これによって、スリット弁28から内容物が漏れ出ることがない。
【0048】
利用者は、容器本体2内の内容物の定量吐出を終了すると、吐出容器100を
図5の正立姿勢まで戻した後に、蓋体30を閉じる。定量吐出の際は、ノズル20が上方に移動しているため、蓋体30を閉じるときに押圧部32aの下面がノズル頂壁21dの上面を押圧し、ノズル20を下方へと移動させる。これによって、ノズル20は蓋体30からの押圧力によって
図2に示す連続吐出に対応した位置まで戻される。そして、押圧部32aは、蓋体30の閉塞状態において、
図1に示すように注出壁21eの外周面に嵌合して、保管時に容器本体2内部の内容物が注出孔21fから漏れ出るのを防止する。この構成によって、蓋体30を閉じた状態から開いた場合には、ノズル20は常に連続吐出に対応した位置に維持されていることになる。
【0049】
以上述べたように、本実施形態によれば、ノズル20を上下方向に移動可能に構成し、ノズル20を下側位置に維持した場合には、吐出容器100の倒立姿勢の際に弁体50が有底筒状形状を有する弁体筒45内を移動してノズル20の一部に当接して弁部が開放状態に維持される一方、ノズル20を上側位置に移動させた場合には、吐出容器100の倒立姿勢に伴い弁体50が弁座18に当接して弁部を閉塞状態へと移行させるように構成した。これによって、ノズル20の上下方向への移動という簡便な操作によって、吐出容器100の吐出態様を、連続吐出と定量吐出との間で切り換えることが可能となる。また、注出孔21fの容器本体2側にスリット弁28を設けたので、容器本体2の胴部の押圧によって吐出量を任意に調節することができる。また、容器本体2を押圧していない時は、スリット弁28が閉塞状態となり、サックバック機能によって内容物の吐出が瞬時に停止するため、液切れが良くなる。
【0050】
また、本実施形態によれば、弁体50が有頂筒状形状を有するように構成した。これによって、弁体筒45の内周面に対向する弁体側壁50aの面積を大きくすることができるので、弁体50が弁体筒45内を移動するときの抵抗が大きくなる。従って、吐出容器100を倒立姿勢にしたときに、弁体50が弁座18に当接するまでの時間を長くして内容物の吐出量を大きくすることができる。これは、弁体50が有底筒状形状や円筒形状等であっても同様である。
【0051】
また、本実施形態によれば、弁体筒45の側面に側壁開孔45aを有するように構成したので、吐出容器100を倒立姿勢とした場合に、容器本体2内の内容物を側壁開孔45aを通じて注出孔21fへと迅速に導くことが可能となる。特に、
図4に示すように側壁開孔45aをヒンジ38側とそれに対向する側に設けることにより、ヒンジ38に対向する側の側壁開孔45aを通じて内容物を注出孔21fへと迅速に導くことができると共に、ヒンジ38側の側壁開孔45aを通じて外部の空気を容器本体2内に導くことができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、弁体筒45は、底部45bに底部開孔45cを有するように構成したので、容器本体2の胴部を押下して減容変形させた場合には、収容空間S内の圧力が高まり、底部開孔45cを通じて内容物が迅速に弁体空間Rに供給されるため、勢いよく内容物を吐出することができる。また、吐出終了後に、利用者が吐出容器100を正立姿勢へ戻したとき、弁体空間R内に進入している内容物がこの底部開孔45cを通じて迅速に容器本体2へと戻ることができる。従って、注出孔21f側に移動していた弁体50を速やかに底部45bまで戻すことができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、ノズル20の開孔板25cから一体成形された棒状部材25bを容器本体2側に突出させて弁体50を開放状態に対応した位置に維持するように構成したので、部品点数を増やすことなく、弁部の制御が可能となる。
【0054】
また、本実施形態によれば、蓋体30を閉じる際に押圧部32aによってノズル頂壁21dを押圧するように構成したので、蓋体30を閉じた状態から開いた場合には、ノズル20は常に連続吐出に対応した位置に維持されるようになる。
【0055】
なお、上述したところは、本発明の実施形態を示したにすぎず、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。そして、そのような構成は本発明の範囲内であると理解すべきである。