(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明にかかるブレードクリーニング装置の一実施形態を装備する印刷装置の構成を示す斜視図である。印刷装置1は、主たる構成として、基台2と、版ステージユニット10と、版アライメントユニット20と、インク充填ユニット30と、ローラユニット40と、インク供給充填ユニット50と、ワークアライメントユニット60と、ワークステージユニット70と、版ステージユニット10およびワークステージユニット70を移動させる搬送ユニット80と、制御ユニット90とを備えている。この印刷装置1では、制御ユニット90が予めインストールされたプログラムに従って印刷装置1の各部を制御することで、平板状の凹版3に設けられる凹部(
図3中の符号3a)に本発明の「印刷材料」の一つであるインクを充填する充填工程と、ローラユニット40に凹版3のインクを受理させる受理工程と、受理されたインクを平板状のワーク4に転写する転写工程とを行う。これによって、凹版3の凹部3aにより規定されるパターンでインクがワーク4に印刷される。なお、ブレードクリーニング装置は、インク充填ユニット30およびインク供給充填ユニット50に組み込まれている。
【0015】
基台2は
図1に示すように水平方向Yに延設されている。基台2の上面には、一対の直動ガイド81、これらの直動ガイド81の間に配設されたリニアモータなどの直動駆動部82および図示しないリニアスケールがY方向に延設されている。また、直動ガイド81および直動駆動部82には、2つの搬送ステージ83、84が設けられており、直動駆動部82の駆動を受けてY方向に直線移動する。これら2つの搬送ステージのうち一方側の搬送ステージ83上に版ステージユニット10が搭載され、他方側の搬送ステージ84上にワークステージユニット70が搭載されている。これによって、版ステージユニット10およびワークステージユニット70が互いに独立して水平方向Yに往復移動可能となっている。この明細書では、
図1および後で説明する各図では、装置各部の配置関係を明確にするために、搬送ステージ83、84の搬送方向Yのうち版ステージユニット10に向かう方向を「Y1」と称し、ワークステージユニット70に向かう方向を「Y2」と称する。また、水平方向Yと直交する水平方向を「X方向」と称する。また、水平方向Xのうち装置正面に向かう方向を「X1」と称するとともに装置背面に向かう方向を「X2」と称する。さらに、鉛直方向を「Z方向」と称する。
【0016】
版ステージユニット10は、搬送ステージ83の上面に配置される支持台11と、支持台11の上面に取り付けられ、その上面で凹版3を保持する版ステージ12とを有している。このため、制御ユニット90からの動作指令に応じて直動駆動部82が搬送ステージ83をY方向に移動させることで、版ステージ12に保持される凹版3をY方向に搬送することが可能となっている。
【0017】
一方、ワークステージユニット70は、搬送ステージ84の上面に配置される位置調整機構71と、位置調整機構71の上面に取り付けられ、その上面でワーク4を保持するワークステージ72と、2つの基準マスク(較正部材)731、732で構成される較正部73とを有している。この位置調整機構71は、ワークステージ72を搬送ステージ84に対してX方向およびR1方向(鉛直軸回りの回転方向)に駆動する機能を有している。このため、制御ユニット90からの動作指令に応じて直動駆動部82が搬送ステージ84をY方向に移動させ、また制御ユニット90からの動作指令に応じて位置調整機構71がワークステージ72をX方向およびR1方向に移動させることで、ワークステージ72に保持されるワーク4をX方向、Y方向およびR1方向に位置決めすることが可能となっている。
【0018】
基台2の上面では、Y方向における略中央部にローラユニット40が配置されている。このローラユニット40では、当該中央部のX方向の両端部において昇降機構41によって昇降テーブル42が鉛直方向Zに昇降可能に設けられている。この実施形態では、一対の昇降テーブル42は、版ステージユニット10およびワークステージユニット70が移動する空間(以下「ステージ移動空間」という)よりもX方向外側に設けられている。これによって、版ステージユニット10およびワークステージユニット70との干渉が回避されている。
【0019】
このように互いに離間して配置された一対の昇降テーブル42を橋渡しするように転写ローラ43が配置されている。この転写ローラ43は、X方向に延びる回転軸回りに回転自在な円筒形状のブランケット胴の外周面にブランケットを装着したものであり、制御ユニット90からの動作指令に応じて回転駆動モータ(
図5中の符号44)が駆動されると、回転軸回りの回転方向R2に回転する。また、昇降機構41の昇降モータ(
図5中の符号45)に対し、制御ユニット90から昇降指令が与えられると、それに応じて昇降モータが作動して転写ローラ43が昇降テーブル42とともに一体的に昇降する。これによって、鉛直方向Zにおける転写ローラ43の位置が高精度に調整される。
【0020】
上記ローラユニット40のY1方向側およびY2方向側には、インク充填ユニット30およびインク供給充填ユニット50がそれぞれ隣接して配置されている。これらのうちインク供給充填ユニット50では、インク供給部(
図4中の符号55)による凹版3の上面(
図3中の符号3b)へのインク供給と、ドクターブレード(
図4中の符号54)による凹版3の凹部3aへのインク充填および余分のインクの掻取とを行う。また、インク充填ユニット30では、ドクターブレード(
図2、3中の符号34)による凹版3の凹部3aへのインク充填および余分のインクの掻取を行う。なお、本実施形態では、インク充填ユニット30およびインク供給充填ユニット50の2カ所でインク充填を行っているが、その技術的意義が相違している。つまり、インク供給充填ユニット50で実行されるインク充填は、凹版3の上面3bの全体あるいは一部にインクが薄く残留する程度にインクを粗く均すとともに凹部3aにインクを充填することを意味しており、本明細書では「仮充填」と称する。一方、インク充填ユニット30で実行されるインク充填は、凹版3の上面3b上のインクを掻き取るとともに凹部3aにインクを充填することを意味しており、本明細書では「本充填」と称する。ただし、インク充填を実行するドクターブレード34、54ならびにドクターブレード34、54に付着する余分なインクをクリーニングするブレードクリーニング装置の構成および動作については基本的に共通しており、インク充填ユニット30がインク供給充填ユニット50と相違するのはインク供給部55を有しない点のみである。そこで、以下においては、インク充填ユニット30の構成を
図1ないし
図3を参照しつつ詳述する一方で、インク供給充填ユニット50の構成については
図4を参照しつつ簡単に説明する。
【0021】
図2はインク充填ユニットの構成を示す斜視図であり、ローラユニット40側から見た図である。また、
図3はドクターブレードおよびブレードクリーニング装置の構成および動作を模式的に示す図であり、同図中の(a)欄では概略平面が示され、同図中の(b)欄では(a)欄中のA−A線断面が示されている。インク充填ユニット30では、上記ステージ移動空間よりもX方向外側で基台2の上面からフレーム本体31A、31Bが立設されている。より詳しくは、
図2に示すように、X1方向側にフレーム本体31Aが配置されている。このフレーム本体31Aは、基台2の上面に載置されるベース部311と、ベース部311の上面から上方向Z1に延設された支持部312とを有している。ベース部311には、2つの長穴形状の締結孔313、313が設けられている。そして、ボルトなどの締結部材314、314がそれぞれ締結孔313、313を介して基台2に連結されることでフレーム本体31Aが基台2に固定される。なお、もう一方のフレーム本体31Bもフレーム本体31Aと同様に構成されており、ベース部311に設けられた2つの長穴形状の締結孔313、313を介して締結部材314、314が基台2に連結されることでフレーム本体31Bが基台2に固定される。
【0022】
また、フレーム本体31A、31Bの上端部同士を連結するように梁部材32、32が設けられ、上記ステージ移動空間を上方から跨ぐようにアーチ形状のフレーム33が形成されている。そして、フレーム33に対し、ドクターブレード34がブレード昇降機構36を介して取り付けられるとともにブレードクリーニング装置37が取り付けられている。
【0023】
ブレード昇降機構36では、
図2に示すように、フレーム本体31BのX1方向側面にモータ361およびボールネジ機構362が固定されている。ボールネジ機構362はモータ361の回転軸(図示省略)と接続されており、制御ユニット90からの動作指令に応じてモータ361が回転すると、その回転方向および回転量に応じてスライダー363をZ方向に移動させる。このスライダー363には、角度調整部材364が取り付けられており、後で説明するように、ドクターブレード34の高さ位置や姿勢調整が可能となっている。また、ブレード昇降機構36では、フレーム本体31AのX2方向側面にモータ(
図2では不図示)およびボールネジ機構(
図2では不図示)が固定されている。そして、フレーム本体31B側と同様に、制御ユニット90からの動作指令に応じてモータが回転することで、角度調整部材364が取り付けられたスライダー363をZ方向に移動させることが可能であり、フレーム本体31A側でも、ドクターブレード34の高さ位置や姿勢調整が可能となっている。
【0024】
さらに、ブレード昇降機構36は、フレーム本体31A側の角度調整部材364とフレーム本体31B側の角度調整部材364とを相互に連結するブレード支持部材365を有しており、当該ブレード支持部材365にドクターブレード34が固定されている。このため、制御ユニット90によりモータ361を駆動制御することで、
図3の(b)欄に示すように、ドクターブレード34の先端部を、凹版3やワーク4の移動経路よりも高い位置(退避位置)H1、凹版3の上面3bと同じ高さ位置、つまり掻取位置H2およびドクターブレード34のクリーニングを行うブレードクリーニング位置H3に位置決め可能となっている。また、オペレータによる角度調整部材364、364の操作によって、
図3に示すドクターブレード34に関する2つの角度
θ1:ドクターブレード34の先端部が凹版3の上面3bと摺接する際の角度(以下「ブレード摺接角度」という)と、
θ2:ドクターブレード34により凹版3の上面3bに付着するインクを掻取方向Yに掻き取る際のドクターブレード34の角度(以下「ブレード掻取角度」という)と、
を調整可能となっている。なお、本実施形態では、ブレード掻取角度θ2を50度から80度までの範囲で調整可能となっている。そして、予めブレード摺接角度θ1およびブレード掻取角度θ2が調整されたドクターブレード34を掻取位置H2に位置決めした状態で凹版3をY2方向に搬送し、インク充填ユニット30を通過させると、上記したようにドクターブレード34の先端部によって本充填とともに凹版3の上面3bから余分のインクを掻き取って除去する。このとき、余分のインクはドクターブレード34のY1方向側面341に付着し、これが上記した垂れ落ちや再現性の低下などの問題を引き起こす。そこで、本実施形態では、ドクターブレード34のY1方向側面341から付着インクを取り除くためのブレードクリーニング装置37がインク充填ユニット30に設けられている。なお、本実施形態では、Y1方向側面341が本発明の「被クリーニング面」に相当しており、以下においては「被クリーニング面341」と称する。
【0025】
ブレードクリーニング装置37は、ドクターブレード34の被クリーニング面341に摺接可能な先端稜線部371aを有する板状のクリーナー371と、クリーナー371を下方から支持するとともにクリーナー371から垂れるインクを受け皿372と、クリーナー371および受け皿372を一体的に掻取方向Yに移動させるクリーナー移動機構373と、を備えている。このクリーナー371は、
図3に示すように、2つの角度
θ3:先端稜線部371aの稜線方向371bが被クリーニング面341に対してなす角度(以下「クリーナー掻取角度」という)、
θ4:水平面(XY平面)に対してなす角度(以下「クリーナー摺接角度」という)、が所定値となるように受け皿372に固定されている。より具体的には、クリーナー掻取角度θ3はゼロより大きく、90度より小さい値に設定される、つまり先端稜線部371aの稜線方向371bが被クリーニング面341と非平行となっている。なお、クリーナー掻取角度θ3については、1度以上30度以下が好ましく、本実施形態では2度に設定されている。また、クリーナー摺接角度θ4はブレード摺接角度θ1よりも小さい値、例えば本実施形態では45度に設定しており、ドクターブレード34よりも浅い角度で受け皿372に取り付けられている。このような角度関係でクリーナー371を設けたことで、後で説明するようにドクターブレード34の被クリーニング面341に付着したインクを良好に掻取可能となっている。
【0026】
クリーナー移動機構373では、
図2に示すように、フレーム本体31BのX1方向側面にブラケット373aが取り付けられるとともに、当該ブラケット373aの上面にモータ373bおよびボールネジ機構373cが固定されている。ボールネジ機構373cはモータ373bの回転軸(図示省略)と接続されており、制御ユニット90からの動作指令に応じてモータ373bが回転すると、その回転方向および回転量に応じてスライダー373dを掻取方向Yに移動させる。このスライダー373dには、受け皿372のX2方向側端部を下方から支持する支持部材373eが取り付けられている。また、クリーナー移動機構373では、フレーム本体31Aに対してフレーム本体31B側と同様の構成が設けられている。すなわち、フレーム本体31AのX2方向側面にブラケット373aが取り付けられるとともに、制御ユニット90からの動作指令に応じてモータ(
図2では不図示)が回転することで、スライダー373dを掻取方向Yに移動させる。このスライダー373dには、受け皿372のX1方向側端部を下方から支持する支持部材373eが取り付けられている。このため、制御ユニット90がモータ373bを同期して作動させることで、先端稜線部371aの稜線方向371b(
図3)が被クリーニング面341と非平行となっている姿勢のままクリーナー371は掻取方向Yに移動する。
【0027】
図4はインク供給充填ユニットの構成を示す平面図である。インク供給充填ユニット50がインク充填ユニット30と相違する点はインク供給部55を有する点であり、その他の構成はインク充填ユニット30と同一である。そこで、同一構成については相当する符号を付して説明を省略する。
【0028】
インク供給充填ユニット50では、フレーム本体51A、51Bおよび梁部材52、52によりフレーム53が設けられており、当該フレーム53に対し、ドクターブレード54がブレード昇降機構56を介して取り付けられるとともにブレードクリーニング装置57が取り付けられている。また、ドクターブレード54のY1方向側にインク供給部55が配置されている。このインク供給部55は、X方向に移動自在に設けられたインクヘッド551と、制御ユニット90からの移動指令に応じてインクヘッド551をX方向に移動させるヘッド移動機構552とを有している。そして、仮充填工程を実行する際には、ヘッド移動機構552がインクヘッド551を凹版3の上方空間でX方向に移動させ、その移動中にインクヘッド551からインクを吐出させて凹版3の上面3bにインクを供給する。なお、供給されたインクの一部はドクターブレード54によって凹版3の凹部3aに充填される。一方、余分のインクについては、ドクターブレード54の被クリーニング面(図面への図示を省略)に掻き取られ、さらに適当なタイミングでクリーナー571によって被クリーニング面から受け皿572に除去される。
【0029】
図1に戻って印刷装置1の構成説明を続ける。上記インク充填ユニット30のY1方向側には、版アライメントユニット20が配置されている。この版アライメントユニット20においても、インク充填ユニット30およびインク供給充填ユニット50と同様のアーチ状の支持部23が基台2の上面に設けられている。すなわち、4本の柱部材21、21の頂部同士を連結するように梁部材22が設けられている。そして、梁部材22に対して2つのアライメントカメラ24、25がそれぞれ位置調整機構26、27を介して取り付けられている。
【0030】
位置調整機構26は第1版アライメントカメラ24を梁部材22に対してX方向およびZ方向に駆動する機能を有している。このため、制御ユニット90からの動作指令に応じて位置調整機構26が第1版アライメントカメラ24をX方向およびZ方向に移動させることで、版ステージ12に保持されている凹版3の一部を高精度に撮像可能となっている。
【0031】
また、もう一方の位置調整機構27は第2版アライメントカメラ25を第2版アライメントカメラ25のX2方向側で梁部材22に対してX方向およびZ方向に駆動する機能を有している。このため、制御ユニット90からの動作指令に応じて位置調整機構27が第2版アライメントカメラ25をX方向およびZ方向に移動させることで、第1版アライメントカメラ24で撮像した領域と異なる凹版3の表面領域を高精度に撮像可能となっている。なお、このようにして撮像される2つの画像は制御ユニット90に転送されてメモリ(
図5中の符号92)に保存される。
【0032】
また、インク供給充填ユニット50のY2方向側には、ワークアライメントユニット60が配置されている。このワークアライメントユニット60では、ガントリークレーン状の支持部61、62がワークステージユニット70のステージ移動空間からX2方向側に離れて基台2の上面でそれぞれY方向に移動自在に配置されている。一方の支持部61の梁部材63に対してアライメントカメラ64がX方向およびZ方向に移動自在に取り付けられている。また、他方の支持部62の梁部材66に対してアライメントカメラ67がX方向およびZ方向に移動自在に取り付けられている。
【0033】
本実施形態では、第1ワークアライメントカメラ64をX方向、Y方向およびZ方向に移動させるために、位置調整機構65が設けられている。この位置調整機構65は、第1ワークアライメントカメラ64を支持する支持部61を基台2に対してY方向に駆動することで第1ワークアライメントカメラ64をY方向に位置決めする駆動部と、支持部61の梁部材63に対して第1ワークアライメントカメラ64をX方向およびZ方向に駆動して位置決めする駆動部とを有している。このため、制御ユニット90からの動作指令に応じて位置調整機構65がアライメントカメラ64をX方向、Y方向およびZ方向に移動させることで、ワークステージ72に保持されているワーク4の一部を高精度に撮像可能となっている。
【0034】
また、第2ワークアライメントカメラ67をX方向、Y方向およびZ方向に移動させるために、位置調整機構68が設けられている。この位置調整機構68は、第2ワークアライメントカメラ67を支持する支持部62を基台2に対してY方向に駆動することで第2ワークアライメントカメラ67をY方向に位置決めする駆動部と、支持部62の梁部材66に対して第2ワークアライメントカメラ67をX方向およびZ方向に駆動して位置決めする駆動部とを有している。このため、制御ユニット90からの動作指令に応じて位置調整機構65がアライメントカメラ64をX方向、Y方向およびZ方向に移動させることで、先に説明した第1ワークアライメントカメラ64と同様にして、第1ワークアライメントカメラ64により撮像された部位と異なるワーク4の部位を高精度に撮像可能となっている。なお、このようにして撮像される2つの画像についても制御ユニット90に転送されてメモリ(
図5中の符号92)に保存される。
【0035】
図5は
図1の印刷装置の電気的構成を示すブロック図である。この印刷装置1の制御ユニット90には、予め定められた処理プログラムを実行して各部の動作を制御するCPU91と、CPU91により実行される処理プログラムや処理中に生成されるデータ等を記憶保存するためのメモリ92と、処理の進行状況や異常の発生などを必要に応じてユーザーに報知するとともにユーザーからの入力を受け付けるための操作表示部93とが設けられている。そして、処理プログラムにしたがってCPU91が装置各部を制御することで、以下に詳述する印刷動作と、ドクターブレード34、54に付着したインクを掻き取って除去するブレードクリーニング動作とを行う。以下、印刷動作とブレードクリーニング動作とをこの順序で説明する。
【0036】
図6は
図1に示す印刷装置による1枚目の印刷動作を示す図である。また、
図7は
図1に示す印刷装置による2枚目の印刷動作を示す図である。なお、1枚目の印刷動作を示している
図6において破線で示す工程は2枚目の印刷動作を示している。一方、2枚目の印刷動作を示している図において1点鎖線で示す工程は1枚目の印刷動作を示し、破線で示す工程は3枚目の印刷動作を示している。ここでは、新たな凹版3により規定されるパターン、例えば配線パターン(印刷パターン)をインクでワーク4に印刷する動作の2枚分について
図6および
図7を参照しつつ説明する。
【0037】
搬送ユニット80により版ステージユニット10が凹版供給回収装置(図示省略)との間で凹版3の受渡しを行うロード/アンロード位置に位置決めされた後で、凹版供給回収装置から凹版3が版ステージ12に搬入される。また、当該凹版3に対応するワーク4が準備される。すなわち、搬送ユニット80によりワークステージユニット70がワーク供給回収装置(図示省略)との間でワーク4の受渡しを行うロード/アンロード位置に位置決めされた後で、ワーク供給回収装置から印刷前のワーク4がワークステージ72に搬入される。このように印刷条件が変更されたことから、版アライメントカメラ24、25は凹版3に対応する位置に移動して位置決めされ、ワークアライメントカメラ64、67はワーク4に対応する位置に移動して位置決めされる。こうして、印刷動作の準備が完了すると、制御ユニット90は装置各部を制御して1枚目の印刷動作を開始する。
【0038】
凹版3を保持したまま版ステージユニット10が版アライメントユニット20に移動し、凹版3の上面に予め形成されている2つのアライメントマークをそれぞれ版アライメントカメラ24、25の鉛直直下位置に位置させる。これによって、凹版3の上面3bに設けられた2つのアライメントマーク(図示省略)がそれぞれ版アライメントカメラ24、25の撮像視野内に入り、版アライメントカメラ24、25によってアライメントマーク像がそれぞれ撮像される。そして、制御ユニット90は版アライメントに必要となる版アライメント情報を算出する(版アライメント工程:ステップSP1)。
【0039】
この版アライメント工程が完了すると、インク供給工程(ステップSP2:第1工程)が実行される。このインク供給工程では、凹版3の上面3bを上方に向けた水平姿勢で保持しながら版ステージユニット10がY2方向に移動するとともに、当該移動中にインクヘッド551が凹版3の上方位置に移動して凹版3の上面3bへのインク供給を行う。これによって、凹版3にインク溜りが形成される。
【0040】
インク供給が完了すると、版ステージユニット10の移動方向がY2方向からY1方向に切り替えられ、凹版3の上面3bでインク溜りを担持しながら版ステージユニット10がY1方向に移動する。そして、インク溜りが本充填位置(ドクターブレード34により本充填が行われる位置)を越えた時点で版ステージユニット10は移動を停止する。これに続いて、ドクターブレード34が掻取位置H2(
図3参照)に下降して先端を凹版3の上面3bに押し付ける。この状態のまま版ステージユニット10がY2方向に移動する。このとき、ドクターブレード34によって、インク溜りの一部が凹部3aに充填されるとともに、残りの余分なインクが掻き取られる。ここでは、ドクターブレード34の押付力は比較的強く設定されているため、ドクターブレード34が通過した後の凹版3の上面3bにインクは残留することはなく、凹部3aのみにインクが充填される(本充填工程:ステップSP3)。それに続いて、ドクターブレード34が退避位置H1(
図3参照)に上昇するとともに、版ステージユニット10がY2方向に移動して凹版3を受理転写位置(転写ローラ43により受理および転写が行われる位置)に移動させてローラユニット40において受理工程を実行する(ステップST1)。
【0041】
この受理工程では、転写ローラ43が下降して受理転写位置に位置決めされる。そして、転写ローラ43の位置決めとともに、転写ローラ43が凹版3をY2方向に送る方向に回転する(以下、この回転を「正回転」という)。また、この正回転動作に同期して、本充填工程を受けた凹版3を保持しながら版ステージユニット10が受理転写位置を通過してY2方向に移動する。このときに、凹部3aに充填されたインクが転写ローラ43の外周面(ローラ面)に転写され、受理される。この受理工程は凹版3が受理転写位置を完全に通過するまで継続される。なお、本実施形態では、上記のようにして1枚目の受理工程を行うが、当該受理工程を継続している間に、2枚目のインク供給工程(ステップSP4:第1工程)、仮充填工程(ステップSP5:第2工程)を行っている。これらについては後で説明する。
【0042】
こうして受理工程が完了するまでに、ワークステージ72に搬入されたワーク4に対してワークアライメント工程を実行する(ステップSW1)。このワークアライメント工程では、ワーク4を保持したままワークステージユニット70がワークアライメントユニット60に移動し、ワーク4の上面に予め形成されている2つのアライメントマークをそれぞれワークアライメントカメラ64、67の鉛直直下位置に位置させる。これによって、2つのアライメントマークがそれぞれワークアライメントカメラ64、67の撮像視野内に入り、ワークアライメントカメラ64、67によってアライメントマーク像がそれぞれ撮像され、当該アライメントマーク像に基づいて制御ユニット90は後のアライメント工程に必要となる各種データを算出する。
【0043】
受理工程が完了し、さらに上記インク供給工程(ステップSP4)および仮充填工程(ステップSP5)が完了すると、凹版3を保持しながら版ステージユニット10がY1方向に移動する。また、これに追従して印刷前のワーク4を保持したままワークステージユニット70がY1方向に移動し、ワーク4が受理転写位置を通過した時点で移動を停止する。それに続いて転写ローラ43は下降し、受理転写位置に位置決めされる。そして、転写ローラ43の正回転と同期してワークステージユニット70がY2方向に移動して受理転写位置を通過する。このときに、転写ローラ43の外周面(ローラ面)に担持されているインクが転写ローラ43からワーク4の上面に転写される(転写工程:ステップST2)。この転写工程を開始する位置を制御ユニット90が補正することで高精度な印刷を可能としている。凹版3から転写ローラ43に受理されたインクをワーク4に正確に転写することができ、その結果、凹版3に形成されたパターンをワーク4の上面に高精度に印刷することができる。なお、本実施形態では、こうした1枚目の転写工程と並行して2枚目の本充填工程を実行している。この点については2枚目の印刷動作において説明する。
【0044】
ワーク4への印刷が完了すると、当該ワーク4を保持しながらワークステージユニット70がY2方向に移動し、ワーク用のロード/アンロード位置に移動する。そして、このワークステージユニット70に対し、図示を省略するワーク供給回収装置がアクセスしてワーク4の入替えを行う。すなわち、ワーク供給回収装置により、パターンが印刷された1枚目のワーク4がワークステージユニット70から搬出される(ワーク搬出工程:ステップSW2)。これによって、1枚目の印刷動作が完了する。
【0045】
次に、2枚目の印刷動作について
図7を参照しつつ簡単に説明する。本実施形態では、上記したように受理工程を行っている間に、2枚目のインク供給工程を開始している。というのも、本実施形態では、受理転写位置とインク供給位置との距離は凹版3の搬送方向Yの長さよりも短く、1枚目の受理工程を継続している間に、凹版3の上面3bがインク供給位置に到達するからである。そこで、2枚目の印刷動作のために、当該到達タイミングでインク供給を行い、凹版3の上面3bにインク溜りを形成するインク供給工程を実行する(ステップSP4)。
【0046】
ここで、凹版3の上面3bのうち受理工程を受けた表面領域では、凹部3aからインクの大部分が転写ローラ43に移行しているものの、一部インクが凹版3に残留することがある。このまま次回のインク供給まで放置すると、残留インク中の溶媒成分が揮発して凹版3に固体状態で付着してしまうことがある。このような乾燥インクが付着した凹版3を用いて印刷動作を継続させると、印刷不良を招くおそれがある。そこで、本実施形態では、2枚目の印刷用インクとして形成されたインク溜りを仮充填位置(ドクターブレード54により仮充填が行われる位置)に位置決めされるドクターブレード54によって凹版3の上面3b全体に粗く均す、いわゆる仮充填工程を実行する(ステップSP5)。
【0047】
この仮充填工程が完了すると、凹版3を保持しながら版ステージユニット10がY1方向に移動し、凹版3のY2方向側端部が本充填位置に到達した時点で移動を停止する。それに続いてドクターブレード34が降下して先端が凹版3の上面3bに押し付けられる。これによって2枚目の本充填工程が開始される。さらに、1枚目の転写工程を行うためにY2方向に移動しているワークステージユニット70に追従して版ステージユニット10がY2方向に移動して本充填工程を進行させる。そして、凹版3全体が本充填位置を通過すると、ドクターブレード34は上方に退避して2枚目の本充填工程を完了する(ステップSP6)。
【0048】
それに続いて、1枚目と同様に、版ステージユニット10がY2方向に移動して凹版3を受理転写位置に移動させてローラユニット40において受理工程を実行する(ステップST3)。また、当該受理工程を継続している間に、3枚目のインク供給工程(ステップSP7)、仮充填工程(ステップSP8)を行う。
【0049】
こうして2枚目の受理工程が完了するまでに、ワークステージユニット70では、1枚目のワーク4の搬出に続いて2枚目のワーク4の搬入(ワーク搬入工程:ステップSW3)およびワークアライメント工程(ステップSW4)が実行される。そして、上記3枚目のインク供給工程(ステップSP7)および仮充填工程(ステップSP8)が完了して版ステージユニット10がY1方向に移動すると、それに追従してワークステージユニット70がY1方向に移動し、ワーク4が受理転写位置を通過した時点で移動を停止する。それに続いて、1枚目と同様にして転写工程(ステップST4)およびワーク搬出工程(ステップSW5)が実行され、2枚目の印刷動作が完了する。なお、上記転写工程に並行して3枚目の本充填工程(ステップSP9)が実行される。
【0050】
次に、ブレードクリーニング装置37、57によるブレードクリーニング動作について説明する。なお、各ブレードクリーニング装置37、57で実行されるブレードクリーニング動作は基本的に同一であるため、ここでは、ブレードクリーニング装置37によるブレードクリーニング動作について
図8を参照しつつ説明し、ブレードクリーニング装置57によるブレードクリーニング動作の説明を省略する。
【0051】
図8はブレードクリーニング装置によるブレードクリーニング動作を模式的に示す図である。上記印刷動作を実行すると、
図8に示すように、ドクターブレード34の被クリーニング面341にインクIKが付着する。そこで、本実施形態では、適切なタイミング(例えば、電源投入直後のタイミング、印刷動作の完了タイミング、一定の印刷枚数毎、ユーザーが予め設定したタイミング、あるいはユーザーからのクリーニング指示を受けたタイミングなど)で制御ユニット90のCPU91が装置各部を以下のように制御して被クリーニング面341に付着したインクIKを掻き取って除去する(ブレードクリーニング動作)。
【0052】
まず、
図8の(a)欄に示すように、ドクターブレード34が退避位置H1に退避している状態で、クリーナー移動機構373によってクリーナー371および受け皿372が一体的にY1方向に移動する。そして、上方からの平面視でクリーナー371全体がドクターブレード34を通過した時点でクリーナー371および受け皿372の移動が停止される。それに続いて、
図8の(b)欄に示すように、ブレード昇降機構36によってドクターブレード34がZ2方向に下降し、ドクターブレード34の先端部をブレードクリーニング位置H3に位置決めする。これによって、ブレードクリーニング位置H3において、クリーナー371の先端稜線部371aが被クリーニング面341に付着したインクIKと対向する。その後で、クリーナー移動機構373によってクリーナー371および受け皿372が一体的にY2方向に移動する。ここで、本実施形態では、クリーナー371は、先端稜線部371aの稜線方向371b(
図3)が被クリーニング面341と非平行となっている姿勢のままY2方向に移動する。
【0053】
この移動初期段階で、被クリーニング面341のうちX2方向側の端部領域でクリーナー371の先端稜線部371aが摺接して当該端部領域に付着しているインクIKを掻き取って除去する。そして、クリーナー371および受け皿372のY2方向への移動進行に伴って被クリーニング面341に対してクリーナー371の先端稜線部371aが摺接する摺接領域SRがX1方向側に移行し、それに伴って被クリーニング面341に付着しているインクIKが順次掻き取られてドクターブレード34から除去される。したがって、クリーナー371がドクターブレード34全体を通過してドクターブレード34からY2方向に離れると、被クリーニング面341からのインクIKの除去が完了する、なお、上記のようにして掻き取られたインクIKはクリーナー371とともに移動する受け皿372により回収され、装置周辺へのインクIKの飛散が確実に防止されている。また、こうして回収したインクIKについては、回収して再利用に供したり、ユーザーにより拭き取って装置から除去することが可能となっている。
【0054】
以上のように、インク充填ユニット30に組み込まれたブレードクリーニング装置37では、先端稜線部371aの稜線方向371bが被クリーニング面341と非平行となるようにクリーナー371が配置されているため、クリーナー371の先端稜線部371aとドクターブレード34の被クリーニング面341とが部分的に摺接して摺接領域SR(
図8参照)を形成し、当該摺接領域SRでインクIKが掻き取られる。しかも、非平行状態を維持したままクリーナー371がドクターブレード34に対して掻取方向Yに相対移動して上記摺接領域SRを稜線方向371bに変位させていく。このように摺接領域SRを変位させながら被クリーニング面341に付着するインクIKを掻き取っていくため、被クリーニング面341から印刷材料を良好に除去することができる(第1作用効果)。
【0055】
また、上記実施形態では、ブレード摺接角度θ1とクリーナー摺接角度θ4とが次式、 θ1>θ4
を満足するようにドクターブレード34に対するクリーナー371の角度姿勢を調整している。つまり、クリーナー371のほうがドクターブレード34よりも浅い角度であるため、被クリーニング面341からインクIKを良好に掻き取ることができる(第2作用効果)。
【0056】
また、本実施形態では、フレーム33に対してドクターブレード34およびクリーナー371が一体的に取り付けられているため、ブレードクリーニング動作中においてドクターブレード34に対するクリーナー371の姿勢は固定されている。このため、ブレードクリーニング動作を安定して行うことができる(第3作用効果)。
【0057】
また、長穴形状の締結孔313、313を介して締結部材314、314を基台2に取り付けることで基台2にフレーム33を固定している。したがって、締結部材314、314の基台2への取付時に当該基台2へのフレーム33の取付姿勢を容易に調整することができ、凹版3に対するドクターブレード34の角度を高精度に調整することができる(第4作用効果)。しかも、このような角度調整を行った場合であっても、上記したようにドクターブレード34に対するクリーナー371の姿勢は不変であり、ブレードクリーニング動作の安定性を確保することができる(第5作用効果)。
【0058】
さらに、このような作用効果は、インク充填ユニット30に組み込まれたブレードクリーニング装置37のみならずインク供給充填ユニット50に組み込まれたブレードクリーニング装置57においても発揮される。
【0059】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、印刷材料としてインクを例示したが、例えば有機EL用ポリマーインク、電極配線に用いられる銅や銀などを含むナノメタルインクなどが含まれる。また、印刷材料が転写されるワーク(平板状の基材)としては、有機ELディスプレイ用の基板、タッチパネルやプリント配線に用いられる基板などが含まれる。しかしながら、本発明の「印刷材料」および「平板状の基材」については上記したものに限定されるものではなく、種々の印刷材料や平板状の基材に適用できる。
【0060】
また、上記実施形態では、凹版3をY方向に移動させて印刷処理を行う印刷装置に本発明を適用しているが、その適用対象はこれに限定されるものではなく、例えばインク充填ユニット30およびインク供給充填ユニット50をY方向に移動させて印刷処理を行う印刷装置に適用してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、クリーナー371,571を移動させてブレードクリーニング動作を実行しているが、ドクターブレード34,54を移動させてもよい。つまり、ドクターブレードに対してクリーナーを相対移動させてブレードクリーニング動作を実行するブレードクリーニング技術全般に本発明を適用することができる。
【0062】
また、上記実施形態では、仮充填および本充填を行う、つまり2つのドクターブレード34、54を有する印刷装置に本発明を適用しているが、単一のドクターブレードで印刷処理を行う印刷装置に対しても本発明を適用することができる。
【0063】
以上説明したように、上記実施形態においては、クリーナー371、571が本発明の「板状部材」の一例に相当している。また、クリーナー移動機構373、573が本発明の「移動機構」の一例に相当している。また、フレーム本体31Aおよびフレーム本体31Bがそれぞれ本発明の「第1フレーム本体」および「第2フレーム本体」の一例に相当している。また、フレーム本体31Aに設けられた締結孔313が本発明の「第1締結孔」の一例に相当するとともに、当該締結孔313に挿通されて基台2と締結される締結部材314が本発明の「第1締結部材」の一例に相当している。また、フレーム本体31Bに設けられた締結孔313が本発明の「第2締結孔」の一例に相当するとともに、当該締結孔313に挿通されて基台2と締結される締結部材314が本発明の「第2締結部材」の一例に相当している。また、版ステージユニット10が本発明の「版保持部」の一例に相当している。また、ワークステージユニット70が本発明の「基材保持部」の一例に相当している。また、インク供給部55が本発明の「供給部」の一例に相当している。また、インク充填ユニット30およびインク供給充填ユニット50が本発明の「充填部」の一例に相当している。また、転写ローラ43が本発明の「転写部」の一例に相当している。また、直動駆動部82が本発明の「版搬送部」および「基材搬送部」として機能している。また、ステップSP2、SP4、SP7が本発明の「第1工程」の一例に相当し、ステップSP3、SP5、SP6、SP8、SP9が本発明の「第2工程」の一例に相当し、ステップST1、ST3が本発明の「第3工程」の一例に相当し、ステップST2、ST4が本発明の「第4工程」の一例に相当し、ブレードクリーニング動作が本発明の「第5工程」の一例に相当している。